JP2016141805A - グリースの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のグリースの製造方法は、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1、および増ちょう剤前駆体2を含有する基油2のうち少なくともいずれかに対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記基油1と前記基油2とを、前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
ウレアグリースの一般的な製造方法では、基油にイソシアネートを混合して60℃程度に加熱、撹拌しながら、基油にアミンを混合した60℃程度の溶液を加えてしばらく撹拌し、160℃程度に昇温した後、室温まで放冷する。しかしながら、このような方法では製造に時間を要する上、ダマが生成しやすい。また、大きなダマは、グリースをベアリング等の摺動機器に適用した際に音響特性を低下させることが知られている。さらに、大きなダマからなる不均一構造はグリース本来の性能への寄与が小さいため、増ちょう剤としての効率を低下させる。言い換えれば、一定の硬さにするために多くの増ちょう剤が必要となる。
本発明においては、一つの反応容器において、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、増ちょう剤前駆体2を含有する基油2に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記基油1と前記基油2とを、各々の前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成することが好ましい。
また、本発明においては、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記最低せん断速度を維持しながら、増ちょう剤前駆体2を含有する基油2を、前記基油1に加えて混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成することが好ましい。
本発明の一実施形態におけるグリースの製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)では、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1、および増ちょう剤前駆体2を含有する基油2のうち少なくともいずれかに対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記基油1と前記基油2とを、前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成する。
また、この実施形態においては、さらに、一つの反応容器において、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、増ちょう剤前駆体2を含有する基油2に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記基油1と前記基油2とを、各々の前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成することが好ましい。あるいは、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記最低せん断速度を維持しながら、増ちょう剤前駆体2を含有する基油2を、前記基油1に加えて混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成することも好ましい。
上記いずれの実施態様においても、混合液(混合基油)の高いせん断速度を維持してダマの生成を抑制しながら、増ちょう剤前駆体1と増ちょう剤前駆体2とを反応させて増ちょう剤とすることが特徴である。以下、本製造方法について詳細に説明する。
(基油)
本製造方法で用いられる基油1および基油2としては、特に限定はなく、通常のグリース製造に使用される鉱油系基油や合成系基油が挙げられる。これらは、単独で、または混合物として使用することができる。
鉱油系基油としては、減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、および水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。また、合成系基油としては、ポリアルファオレフィン(PAO)系基油、その他の炭化水素系基油、エステル系基油、アルキルジフェニルエーテル系基油、ポリアルキレングリコール系基油(PAG)、およびアルキルベンゼン系基油などが挙げられる。基油1や基油2の40℃動粘度は、10mm2/s以上600mm2/s以下であることが好ましく、20mm2/s以上300mm2/s以下であることがより好ましく、30mm2/s以上100mm2/s以下であることがさらに好ましい。
基油1と基油2の相溶性を考慮すれば同様な極性さらには同様な粘度特性を有することが好ましい。したがって、基油1と基油2は同じ基油を用いることが最も好ましい。
本製造方法では、2種類の増ちょう剤前駆体から増ちょう剤を形成する。このような増ちょう剤前駆体としては特に限定されないが、増ちょう剤がウレアの場合、増ちょう剤前駆体としてはモノアミンおよびイソシアネート(ジイソシアネート)が挙げられる。
モノアミンの例として、芳香族モノアミンではアニリン、p−トルイジン、およびナフチルアミン等が挙げられ、脂肪族モノアミンではヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、およびエイコシルアミン等が挙げられる。
ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンでは、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、およびジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
イソシアネートの例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、およびナフチレン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられる。上記した各アミンは単独で用いてもよく、複数のアミンを混合して用いてもよい。また、上記した各イソシアネートも同様に単独で用いてもよく、複数のイソシアネートを混合し用いても良い。
上記したイソシアネートとモノアミンをモル比1:2で反応容器(グリース製造装置)に順次導入し、後述するように、高速せん断を与えながら混合・反応させることで大きなダマが生成しにくいジウレアグリースを製造することができる。
本製造方法では、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1、および増ちょう剤前駆体2を含有する基油2のうち少なくともいずれかに対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記基油1と前記基油2とを、前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成する。
また、一つの反応容器において、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、増ちょう剤前駆体2を含有する基油2に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、前記基油1と前記基油2とを、各々の前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、前記混合液中で増ちょう剤を形成させてもよい。あるいは、増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し102s−1以上の最低せん断速度を与えた後、基油1に対し、増ちょう剤前駆体2を含有する基油2を、上記の最低せん断速度を維持しながら混合させてもよい。そして、基油1と基油2とを混合分散させながら反応させて増ちょう剤を形成させ、グリース化を行う。
すなわち、上記いずれの場合も、基油1か基油2の少なくともいずれかの最低せん断速度を102s−1以上に維持した状態で混合することが極めて重要である。このように基油1と基油2が所定の高速せん断下で混合されることによりダマの生成および粗大化を抑制することが可能となる。
ただし、装置の安全性、せん断等による発熱とその除熱の観点より、上述の最低せん断速度は107s−1以下であることが好ましい。
このような高いせん断速度は、例えば、対向する壁面間の相対運動によりせん断を発生させる反応容器内に混合液を導入することで付与することができる。なお、最低せん断速度は、後述する最低せん断速度と同義であり、反応容器内において、せん断を混合液に付与する部位におけるせん断速度の下限値を意味する。
なお、高せん断部滞留時間(s)は、以下のように定義できる。
高せん断部滞留時間(s)=高せん断部の容積(mL)/{基油1の流量(mL/s)+基油2の流量(mL/s)}
図1の製造装置は、基油1を所定の最低せん断速度に維持した後に基油2を混合し、混合液に対して高速せん断を付与・維持できる構造を備えている。高速せん断は、高速回転部と反応容器内壁との隙間(ギャップa、b)により混合液に付与される。高速回転部は径が回転軸方向に一定でもよく(a=b)、ギャップが異なる構造であってもよい。このようなギャップは、高速回転部の径を回転軸方向で変えることにより、あるいは、高速回転部を円錐台状とし、テーパを設けた反応容器内壁に対しこの高速回転部を上下することにより調整してもよい。
さらにギャップが大きい部分を連続的に傾斜させたスクリュウまたはスパイラル形状とすることで押出能力を持たせてもよい。
ここで、最高せん断速度(Max)とは、混合液に対してせん断部で付与される最高のせん断速度であり、最低せん断速度(Min)とは、混合液に対してせん断部で付与される最低のせん断速度であって、図1に記載された反応容器を例にとると、下記のように定義されるものである。
Max=(高速回転部表面と容器内壁面とのギャップが最小になる部分における高速回転部表面の線速度/当該ギャップ)
Min=(高速回転部表面と容器内壁面とのギャップが最大になる部分における高速回転部表面の線速度/当該ギャップ)
なお、図1においては、Maxの計算におけるギャップがaであり、Minの計算におけるギャップがbである。
上記したように、Max/Minは、小さい方が好ましいので、理想的にはa=bである。すなわち、図1のタイプの反応容器であれば、高速回転部は上下に均一な直径を有する円柱状であることが最も好ましい。
本製造方法では、上述した製造方法により得られたグリースに対し、さらに混練してもよい。この混練には、グリース製造で一般的に使用されるロールミルを用いることができる。上述のグリースはロールミルを2回以上通してもよい。
また、本製造方法では、上述した製造方法により得られたグリースに対し、ちょう度の制御のため加熱することが好ましい。加熱温度としては80℃以上200℃以下が好ましく、100℃以上180℃以下がより好ましく、130℃以上170℃以下がさらに好ましい。さらにまた、均一に加熱するために混練、撹拌してもよい。なお、加熱の際は、加熱炉等を用いてもよい。
本製造方法で得られたグリースには、さらに種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、酸化防止剤、極圧剤、および防錆剤などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、および4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤の好ましい配合量は、グリース全量基準で0.05質量%以上2質量%以下程度である。
以上のような各種添加剤は、単独で、または任意に数種を組み合わせて配合してもよい。
〔実施例1〕
図1の反応容器(高分散製造装置)でグリースを製造した。
MDI(ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート)を6.03質量%含有させ、70℃に加熱した基油1(PAO:40℃動粘度47mm2/s)を反応容器内に流量5.0mL/sで連続的に導入しながら、シクロヘキシルアミンを3.35質量%、ステアリルアミンを13.68質量%含有させ、同じく70℃に加熱した基油2(PAO:40℃動粘度47mm2/s)を反応容器内の高せん断部に流量2.9mL/sで連続的に導入した。ここで、最高せん断速度は33,000s−1であり、最低せん断速度は6,600s−1であった。また、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は5であり、混合液の高せん断部滞留時間は、0.25秒であった。
反応容器から吐出したグリースを90℃に予熱した容器に取り、30分程度かけて160℃に昇温し、その後160℃に1時間保持した。その後、撹拌を維持したまま放冷した。製造されたグリースの増ちょう剤量は約10質量%であった。得られたグリースを、遊星式撹拌脱泡装置(倉敷紡績株式会社(クラボウ)製、マゼルスター(MAZERUSTAR)型式KK-V300SS-I)により撹拌、脱泡した後、混和ちょう度(JIS K 2220)を測定するとともにBeQuiet法による音響測定に供した。結果を表1に示した。
実施例1と同じ反応容器によりグリースを製造した。
MDI(ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート)を7.70質量%含有させ、70℃に加熱した基油1(PAO:40℃動粘度47mm2/s)を反応容器内に流量4.0mL/sで連続的に導入しながら、シクロヘキシルアミンを2.42質量%、ステアリルアミンを9.89質量%含有させ、同じく70℃に加熱した基油2(PAO:40℃動粘度47mm2/s)を反応容器内の高せん断部に流量4.1mL/sで連続的に導入した。ここで、最高せん断速度は11,000s−1であり、最低せん断速度は5,600s−1であった。また、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は2.0であり、混合液の高せん断部滞留時間は、0.20秒であった。
反応容器から吐出したグリースを90℃に予熱した容器に取り、30分程度かけて160℃に昇温し、その後160℃に1時間保持した。その後、撹拌を維持したまま放冷した。製造されたグリースの増ちょう剤量は約10質量%であった。得られたグリースについて実施例1と同様に評価し、結果を表1に示した。
図4に示す反応容器を用いて従来法によりグリースを製造した。
60℃に保たれた基油1(PAO:40℃動粘度47mm2/s、MDI 7.25質量%含有)に対し、60℃の基油2(PAO:40℃動粘度47mm2/s、シクロヘキシルアミンを2.59質量%、ステアリルアミンを10.05質量%含有)を250rpmで撹拌しながら滴下した。ここで、最高せん断速度は約100s−1であり、最低せん断速度は1.23s−1であった。また、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は約81であった。
アミン溶液を滴下した後、撹拌を継続しながら160℃に昇温し1時間保持した。その後、撹拌しながら放冷した。製造されたグリースの増ちょう剤量は約10質量%であった。得られたグリースについて実施例1と同様に評価し、結果を表1に示した。
表1の結果より、本実施形態の製造方法で得られた実施例1、2の各ウレアグリースは、いずれもBeQuiet法によるGNクラスが4であり音響特性に極めて優れることがわかる。
これに対して、従来の方法で製造された比較例1のウレアグリースは、BeQuiet法による音響特性が劣っている。
Claims (9)
- 増ちょう剤前駆体1を含有する基油1、および増ちょう剤前駆体2を含有する基油2のうち少なくともいずれかに対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、
前記基油1と前記基油2とを、前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、
前記混合液中で増ちょう剤を形成する
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1に記載のグリースの製造方法において、
一つの反応容器において
増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、
増ちょう剤前駆体2を含有する基油2に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、
前記基油1と前記基油2とを、各々の前記最低せん断速度を維持しながら混合して混合液とし、
前記混合液中で増ちょう剤を形成する
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1に記載のグリースの製造方法において、
増ちょう剤前駆体1を含有する基油1に対し、102s−1以上の最低せん断速度を与え、
前記最低せん断速度を維持しながら、
増ちょう剤前駆体2を含有する基油2を、前記基油1に加えて混合液とし、
前記混合液中で増ちょう剤を形成する
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のグリースの製造方法において、
前記基油1と前記基油2を含んでなる前記混合液の最低せん断速度を102s−1以上に維持する時間が0.002秒以上である
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のグリースの製造方法において、
前記混合液の最低せん断速度が107s−1以下である
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のグリースの製造方法において、
前記混合液に与えるせん断速度における最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)が50以下である
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のグリースの製造方法において、
前記前駆体1がモノアミンであり前記前駆体2がジイソシアネートであるか、あるいは、
前記前駆体1がジイソシアネートであり前記前駆体2がモノアミンである
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のグリースの製造方法において、
前記混合液を、対向する壁面間の相対運動によりせん断を発生させる容器内に導入して前記最低せん断速度を得る
ことを特徴とするグリースの製造方法。 - 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のグリースの製造方法により得られたグリースに対し、さらに80℃以上の温度に加熱する
ことを特徴とするグリースの製造方法。
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