本発明は、自動車等の車両におけるフェンダライナ取付構造において、バンパ等の取付対象部品に固定されるフェンダライナ取付用挟持部材の構成を工夫することにより、車両の見栄えの向上や、取付対象部品についての汎用性の向上や、フェンダライナの組付け性を向上等を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、車両としての自動車の車体1の前部においては、フロントタイヤ2が位置するホイルハウス3が形成されており、このホイルハウス3に、フェンダライナ4が設けられている。フェンダライナ4は、ホイルハウス3内に配置されるフロントタイヤ2の上半部を覆うように全体的に半円弧状ないし半円筒状に形成された合成樹脂材料等からなる板状の部材である。
車体1の前部において、フロントタイヤ2の周囲には、車体1の外装部品として、車体1の前下端部を構成する合成樹脂製のバンパ5と、バンパ5と連続して車体1の外被部分を構成する金属製のフロントフェンダパネル6とが設けられている。フロントフェンダパネル6は、車体1の車幅方向両外側に設けられており、左右のフロントフェンダパネル6間には、ボンネット7が設けられている。バンパ5の上方には、自動車の左右に配置されるヘッドライト8が配置され、各ヘッドライト8の下方には、フォグランプ9が配置される。
バンパ5およびフロントフェンダパネル6により、フロントタイヤ2の外形に沿うようにアーチ状をなすホイルアーチ1aが形成される。このため、バンパ5およびフロントフェンダパネル6それぞれのフロントタイヤ2側の縁端部には、互いに連続してホイルアーチ1aを形成するホイルアーチ部5a,6aが形成されている。
上記のとおりフロントタイヤ2の上半部を覆うように設けられたフェンダライナ4は、バンパ5およびフロントフェンダパネル6に対して複数箇所で固定された状態で取り付けられる。本実施形態に係るフェンダライナ取付構造(以下単に「取付構造」という。)10は、バンパ5に対するフェンダライナ4の固定部において採用される。つまり、本実施形態に係る取付構造10は、自動車の車体1を構成するバンパ5を取付対象部品とし、バンパ5にフェンダライナ4を取り付けるためのものである。
図1に示す例では、フェンダライナ4は、バンパ5に対して2箇所の固定部で固定されており、各固定部において取付構造10が採用される。なお、図1は、自動車の車体1の前部の右側面を示しているが、フェンダライナ4は、自動車の各タイヤのホイルハウス3に設けられる。このため、取付構造10は、車体1の前部の左側のホイルハウス3に設けられるフェンダライナ4についても用いられ、また、車体1の後部に設けられるバンパ(図示略)も前側のバンパ5と同様にフェンダライナ4の取付対象部品となる。
バンパ5は、射出成形による樹脂成形品である。バンパ5の材料は、例えばポリプロピレン系の樹脂である。図2および図4に示すように、バンパ5のホイルアーチ部5aには、そのアーチ形状に沿ってフランジ部5bが形成されている。フランジ部5bは、全体として略板状の部材であるバンパ5の本体部分に対する内側(図2において左側)への略直角状の屈曲部分である。つまり、フランジ部5bは、バンパ5のフロントタイヤ2側の縁端部であるホイルアーチ部5aにおいて、図2に示すような断面視で、バンパ5の本体部分とともに略「L」字状をなす部分である。バンパ5のフランジ部5bは、フロントフェンダパネル6のホイルアーチ部6aに形成されたフランジ部6bと連続してアーチ状をなす。なお、図2は、図1におけるA−A位置の断面図である。
また、図1に示すように、バンパ5においては、自動車の左右のフォグランプ9を配置するためのフォグランプ開口部5cが形成されている。フォグランプ開口部5cは、バンパ5の本体部分を貫通するように形成されている。
以上のような構成において、本実施形態に係る取付構造10は、図2および図3に示すように、取付クリップ20およびスクリュ11を用い、バンパ5の内面(以下「バンパ内面」という。)5dに形成されたリブ12に、フェンダライナ4の縁端部を固定する。すなわち、本実施形態に係る取付構造10は、バンパ5に設けられたリブ12と、リブ12に取り付けられる取付クリップ20と、取付クリップ20に対する締結部材であるスクリュ11とを備える。
リブ12は、支持板部としてバンパ内面5dに設けられた板状の突出部分である。本実施形態において、リブ12は、バンパ5のフレアライン5FLに沿って形成されている。フレアライン5FLは、バンパ5において、ホイルアーチ1aのアーチ形状に沿う稜線部分により形成される。具体的には次のとおりである。
バンパ5およびフロントフェンダパネル6のホイルアーチ1aを形成する側の縁部には、意匠的な観点から、略一定の幅でホイルアーチ1aのアーチ形状に沿うように形成された略鉛直面に沿う平面部であるアーチ状平面部1bが設けられている。アーチ状平面部1bは、例えば、バンパ5およびフロントフェンダパネル6により連続的に形成される車体1のボディ形状において、ホイルアーチ1aに沿ってアーチ状に車体1の車幅方向外側に膨出するように形成された膨出部1cの車幅方向外側の端面部をなす部分である。膨出部1cは、概略的には、アーチ状平面部1bと、これに連続する面部であって車幅方向外側から内側にかけて徐々に拡径する斜面部とにより形成されることになる。
したがって、バンパ5およびフロントフェンダパネル6は、それぞれアーチ状平面部1bを含む膨出部1cを形成する部分を有する。フェンダライナ4の取付対象部品であるバンパ5に着目した場合、バンパ5は、アーチ状平面部1bを形成するとともに縁端部にホイルアーチ部5aを有するアーチ平面部5eと、アーチ平面部5eに連続するとともに膨出部1cの斜面部を形成する部分を含む主面部5fとを有する。
アーチ平面部5eは、主面部5fに対してわずかに屈曲した面部となる。つまり、アーチ平面部5eと主面部5fとは、互いに所定の角度をなす屈曲面部を形成する。そして、アーチ平面部5eと主面部5fとの境界部分(R形状部)に、フレアライン5FLが形成される。すなわち、フレアライン5FLは、バンパ5の表面側においては、アーチ平面部5eと主面部5fとの境界部に形成される稜線として表れ、バンパ5の裏面側においては、アーチ平面部5eと主面部5fとの境界部に形成される谷線として表れる。
以上のようにバンパ5に形成されるフレアライン5FLに沿うように、リブ12が設けられている。詳細には、アーチ平面部5eと主面部5fとがなすR形状部における、アーチ平面部5eと主面部5fとの境界を中心とする所定の幅の範囲内にリブ12が設けられる。したがって、リブ12は、バンパ内面5dにおいて、ホイルアーチ部5aから奥側、つまりホイルハウス3における径方向外側にオフセットした位置に存在する。リブ12は、例えば、ホイルアーチ部5aに沿うようにバンパ5におけるフロントフェンダパネル6側の縁端部から車体1において下端側となる縁端部までの範囲で全体的に形成される。
このようにリブ12がバンパ5のフレアライン5FLに沿って形成されることは、射出成形品であるバンパ5においてリブ12を形成することによるヒケ(シンクマーク)の見栄えへの影響を低減することに基づく。射出成形品であるバンパ5においては、リブ12の付け根部分の肉厚が必然的に厚くなり、この部分におけるバンパ5の表面側には、ヒケが生じる場合がある。ヒケは、射出圧力の不足や冷却不足等に起因して生じる窪みであり、例えば数マイクロメートル程度の深さであっても外観不良の原因となる。そこで、リブ12をフレアライン5FLに沿って形成することにより、リブ12をバンパ5における平面部分に形成する場合と比べて、リブ12の突出側と反対側、つまりバンパ5の表面側においてヒケが生じることを防止したりヒケを目立たなくしたりすることができ、見栄えを向上することができる。
取付クリップ20は、リブ12を挟持した状態でリブ12に取り付けられ、フェンダライナ4の支持部を構成するフェンダライナ取付用挟持部材である。取付クリップ20は、樹脂材料により形成された可撓性を有する一体の部材である。取付クリップ20の材料は、例えばポリアセタール(POM)樹脂である。
取付クリップ20は、全体として略矩形板状の外形を有し、その一方の長辺側において板状のリブ12を板面に垂直な方向に挟持する。取付クリップ20は、その略矩形板状の外形における板面をリブ12の板面と平行ないし略平行とする向きでリブ12を挟持する。取付クリップ20は、その略矩形板状の外形における長手方向を、リブ12の延設方向に略沿わせる態様で、リブ12を挟持する。したがって、取付クリップ20は、その略矩形板状の外形における一方の板面側を、リブ12の一方の板面側、つまりホイルアーチ部5a側に向け、同外形における他方の板面側を、リブ12の他方の板面側、つまりホイルアーチ部5aと反対側に向けた状態でリブ12に取り付けられる。そして、取付クリップ20は、リブ12に取り付けられた状態(以下「取付状態」という。)でホイルアーチ部5a側を向く面部を、フェンダライナ4の支持面部とする。
スクリュ11は、取付クリップ20にフェンダライナ4を固定させるとともに取付クリップ20をリブ12に固定させるフェンダライナ固定用の固定部材である。スクリュ11は、取付状態の取付クリップ20をその板面方向、つまりリブ12の挟持方向に貫通することで、取付状態の取付クリップ20とフェンダライナ4とを共締めする。本実施形態では、スクリュ11は、直接的にはリブ12に作用することなく、フェンダライナ4および取付クリップ20を貫通して締結されることで、フェンダライナ4を取付クリップ20に固定するとともに、取付クリップ20をリブ12に対して挟持固定させる。
本実施形態に係る取付クリップ20について詳細に説明する。なお、以下の説明では、取付クリップ20において、取付状態でホイルアーチ部5a側となる側(図10において左側)を正面側とし、その反対側(同図において右側)を背面側とし、リブ12を挟持する側(図8において下側)を下側とし、その反対側(同図において上側)を上側とする。また、取付クリップ20の正面視(図8)における左右方向を取付クリップ20における左右方向とする。
取付クリップ20は、フェンダライナ4をバンパ内面5dに設けられたリブ12に取り付けるための部材である。取付クリップ20は、その本体部を構成する部分であって互いに対向する一対の板状部23,24を含む板状本体部21と、板状本体部21の下側の端部に設けられバンパ内面5dに対して板状本体部21を支持する弾性支持部としての弾性支持板部22とを有する。取付クリップ20は、その略矩形板状の外形における長手方向を左右方向(幅方向)とし、左右方向について対称な形状を有するように構成されている。
まず、板状本体部21について説明する。板状本体部21は、全体として略矩形板状の外形を有し、一辺側同士が互いに接続される一対の板状部23,24を有する。一対の板状部23,24は、それぞれが略矩形板状の外形を有し、所定の間隔を隔てて互いに略平行に設けられ、一方の長辺側である一辺側(上辺側)にて互いに一体的に接続される。板状本体部21は、一対の板状部23,24の上辺側同士を互いに接続する接続部25を有し、側面視で略逆「U」字状をなす(図10参照)。
板状本体部21は、上下方向について、一対の板状部23,24の接続部25による接続側と反対側(下側)を開放させ、この開放側においてリブ12を挟持する。つまり、取付クリップ20は、板状本体部21を構成する一対の板状部23,24間においてリブ12の挟持空間20aを形成し、一対の板状部23,24の他方の長辺側である他辺側(下辺側)の辺部において、挟持空間20aにリブ12を差し込ませる態様で板状部23,24間にリブ12を位置させてリブ12を挟持する。板状本体部21の下側の挟持部分における一対の板状部23,24間の間隔は、リブ12の板厚と略同じである。
本実施形態の取付クリップ20では、板状本体部21は、リブ12の高さ(バンパ内面5dからの突出量)に対して略3倍程度の高さ(上下方向の寸法)を有する(図14参照)。また、板状本体部21は、その下端部をリブ12の付け根部分に位置させた状態で、リブ12を挟持する。したがって、取付状態の取付クリップ20において、板状本体部21の下側の略1/3の部分がリブ12を挟持する部分となる。つまり、一対の板状部23,24それぞれの下側の略1/3の部分同士の間に、リブ12が挟み込まれる。このように、板状本体部21は、一対の板状部23,24により接続部25による接続側と反対側の部分にてリブ12を挟持する。
本実施形態では、上述したように取付状態で一方の板面側をホイルアーチ部5a側に向ける取付クリップ20において、板状本体部21を構成する一対の板状部23,24のうち、正面側(ホイルアーチ部5a側)に位置する板状部を「正面側板状部23」とし、背面側に位置する板状部を「背面側板状部24」とする。すなわち、板状本体部21は、リブ12の両板面のうち、ホイルアーチ部5a側の面である外側面12aに正面側板状部23を接触させるとともに、ホイルアーチ部5a側と反対側の面である内側面12bに背面側板状部24を接触させた状態で、リブ12を挟持する。
正面側板状部23は、その上半部において台形状に沿う形状を有し、下半部において左右方向を長手方向とする矩形状に沿う形状を有する(図8参照)。したがって、正面側板状部23は、左右方向の両側の辺部(略矩形状の外形における短辺部)において、下側から上側にかけて徐々に正面側板状部23の幅寸法(左右方向の寸法)を小さくする斜辺部23aを有する。このため、正面側板状部23の上辺部は下辺部よりも短い。
背面側板状部24は、略矩形板状の部分であり、正面側板状部23と略同じ高さ寸法(上下方向の寸法)を有し、正面側板状部23の上辺部と略同じ幅寸法を有する。このように互いに略同じ幅寸法となる背面側板状部24の上辺部と正面側板状部23の上辺部とが、略水平状の板面部である接続部25によって互いに繋がれる。つまり、接続部25は、板状本体部21において正面側板状部23と背面側板状部24とによる折返し部を形成する。
背面側板状部24は、上下方向について略一定の幅寸法を有する。このため、正面側板状部23は、取付クリップ20の背面視において、斜辺部23aを形成する部分を含み、左右両側に張り出す部分であるはみ出し部23b,23bを有する(図9参照)。つまり、正面側板状部23は、その大部分について、背面側板状部24よりも幅方向の寸法が大きく、幅方向の両側に、一対の板状部23,24の互いの対向方向について重ならずに内側の板面を露出させたはみ出し部23bを有する。
このように、板状本体部21を構成する一対の板状部23,24のうち、一方の板状部である正面側板状部23は、他方の板状部である背面側板状部24よりも幅方向についての寸法が大きい。これにより、正面側板状部23は、リブ12の挟持方向(図10における左右方向)について背面側板状部24が重ならないはみ出し部23bを有する。
また、背面側板状部24においては、正面側板状部23とともにリブ12を挟持する下側の部分が、正面側板状部23との間の間隔の寸法を部分的に狭くするように部分的に背面側板状部24側に位置する段差面部24aとして形成されている。つまり、正面側板状部23と背面側板状部24との間の間隔について、背面側板状部24において段差面部24aが設けられた下側の部分における間隔D1は、他の上側の部分における間隔D2に対して相対的に狭くなっている(図10参照)。このように段差面部24aによって板状部23,24間の間隔が部分的に狭くなっている部分が、板状本体部21におけるリブ12の挟持部分となる。
以上のような正面側板状部23および背面側板状部24を有する板状本体部21は、一対の板状部23,24にスクリュ11を貫通させる。このため、正面側板状部23および背面側板状部24のそれぞれには、スクリュ11が螺挿されるネジ孔が形成されている。かかるネジ孔は、板状本体部21において中心部の1箇所に設けられている。
具体的には、正面側板状部23においては、正面側板状部23の中心部に、正面側板状部23を板厚方向に貫通する螺挿孔23cが形成されている。また、背面側板状部24においては、背面側板状部24の中心部に、背面側板状部24を板厚方向に貫通する螺挿孔24cが形成されている。螺挿孔24cにおいては、背面側板状部24の外側の板面に円筒状に突出するボス部24dが設けられている。ボス部24dは、スクリュ11の螺挿部分の長さを確保する。
正面側板状部23および背面側板状部24のそれぞれにおいて、螺挿孔23c,24cは、正面側板状部23および背面側板状部24によるリブ12の挟持部分よりも上側の位置に設けられている。つまり、スクリュ11は、リブ12に対しては直接的に作用することなく、フェンダライナ4を介して板状本体部21に螺挿される。スクリュ11は、板状本体部21に対し、正面側板状部23側から螺挿される。このため、板状本体部21に螺挿された状態のスクリュ11の頭部11aは、正面側板状部23の外面側に位置する(図3参照)。
正面側板状部23および背面側板状部24のそれぞれに設けられた螺挿孔23c,24cに螺挿されるスクリュ11の締結力により、リブ12を挟み込んだ状態の取付クリップ20がリブ12に対して挟持方向に圧接してリブ12に固定される。ここで、平面状の正面側板状部23および背面側板状部24によるリブ12の挟持作用を確実に得る観点から、リブ12において取付クリップ20に挟持される被挟持部12c(図4参照)を含む部分は、上述したようにフレアライン5FLに沿って曲面状(曲面状)に形成されるリブ12において、部分的に平面状(直線状)に形成される。つまり、いずれも平面状の正面側板状部23および背面側板状部24が全面的にリブ12に接触した状態でリブ12が挟持されるように、リブ12の被挟持部12cを含む部分を部分的に平面状とする構成が採用される。ただし、リブ12は、被挟持部12cを含み全体的に曲面状に形成された部分であってもよい。
以上のようにスクリュ11によってリブ12を挟持した状態でリブ12に固定される取付クリップ20は、その板状本体部21によってリブ12からの突出部分を形成し、フェンダライナ4の支持部を構成する。本実施形態では、板状本体部21における正面側板状部23の正面側の板面である正面側板面23fが、フェンダライナ4の支持面となる。つまり、正面側板状部23の正面側板面23fに対してフェンダライナ4の縁端部が重ねられた状態で、正面側板状部23側から板状本体部21にスクリュ11が螺挿されることで、フェンダライナ4の縁端部が取付クリップ20に固定される。このため、フェンダライナ4の縁端部において、板状本体部21のネジ孔に対応する部分には、スクリュ11を貫通させる孔部4aが形成されている(図14参照)。
次に、弾性支持板部22について説明する。弾性支持板部22は、板状本体部21の各板状部23,24の下側の端部から一対の板状部23,24が互いに対向する側と反対側に向けて各板状部23,24に対して略垂直状に設けられた板状の部分である。弾性支持板部22は、正面側板状部23および背面側板状部24のそれぞれに対して設けられており、各板状部23,24の下端部から互いに反対向きに延出され、各板状部23,24に対して略直角状をなす板状部分である。
正面側板状部23に設けられた弾性支持板部22は、正面側板状部23の下端部から正面側(図10において左側)に直角状に折れ曲がるように形成された板状部分であり、背面側板状部24に設けられた弾性支持板部22は、背面側板状部24の下端部から背面側(図10において右側)に直角状に折れ曲がるように形成された板状部分である。したがって、各弾性支持板部22は、正面側板状部23または背面側板状部24とともに側面視で略「L」字状をなし、板状本体部21および弾性支持板部22の全体としては、側面視で略逆「T」字状をなす(図10参照)。以下の説明では、適宜、正面側板状部23側に設けられる弾性支持板部22を「正面側弾性支持板部22A」とし、背面側板状部24側に設けられる弾性支持板部22を「背面側弾性支持板部22B」とする。
各弾性支持板部22は、それぞれ板状部23,24の下端部の幅方向(左右方向)の寸法と同じ寸法で延出され、その幅方向を長手方向とする略矩形形状を有する。したがって、弾性支持板部22の幅方向(長手方向)の寸法については、正面側弾性支持板部22Aの方が背面側弾性支持板部22Bよりも長い。両弾性支持板部22の短手方向(板状部23,24からの突出方向)の寸法については、互いに略同じである。本実施形態では、弾性支持板部22の短手方向の寸法は、板状本体部21の高さ寸法、つまり取付クリップ20の全体的な高さ寸法の略1/3程度の寸法である。なお、各弾性支持板部22は、突出側端部の両側の角部に丸め形状部を有する。
弾性支持板部22は、バンパ内面5dに接触することでバンパ内面5dに対して板状本体部21を支持する。すなわち、板状本体部21の下端部をリブ12の付け根部分に位置させる取付クリップ20の取付状態において、各弾性支持板部22は、バンパ内面5dに接触した状態となり、板状部23,24との間の剛性によって板状本体部21を正面側および背面側で支持する。弾性支持板部22によるバンパ内面5dに対する板状本体部21の支持に関し、各弾性支持板部22の下面22aが、バンパ内面5dに対する接触面、つまり支持面となる。このように、弾性支持板部22は、板状本体部21が正面側または背面側に倒れることを防止するための倒れ防止形状部分である。
また、弾性支持板部22は、板状部23,24よりも薄く弾性変形しやすい板状部分として設けられている。すなわち、弾性支持板部22については、板状部23,24も板厚を薄くすることで、剛性を低く、可撓性を高くし、弾性変形として湾曲しやすい、つまり撓みやすい性質を持たせている。本実施形態では、弾性支持板部22の板厚は、正面側板状部23の板厚の略1/2程度である。
このような弾性支持板部22についての弾性変形のしやすさは、後述するように、リブ12が設けられる部分のバンパ5の形状、特にリブ12が沿うフレアライン5FLを形成するアーチ平面部5eと主面部5fとがなす角度に対応するための性質である。したがって、弾性支持板部22の板厚としては、取付クリップ20の材料による特性も踏まえ、上述したようなバンパ内面5dに対する板状本体部21の支持機能と、バンパ5のフレアライン5FL近傍部分における意匠的な形状に対応するための弾性変形のしやすさとの両立が図れるような厚さが採用される。
また、本実施形態の取付クリップ20においては、正面側板状部23および背面側板状部24のそれぞれに、当接支持部としての三角リブ26が設けられている。三角リブ26は、各板状部23,24の弾性支持板部22が突出する側の板面に設けられている。つまり、正面側板状部23においては、三角リブ26は、正面側板面23fに設けられており、背面側板状部24においては、三角リブ26は、背面側板状部24の背面側の板面である背面側板面24fに設けられている。
三角リブ26は、弾性支持板部22の上面22bに対して所定の間隔を隔てて対向する面である当接面26aを形成する部分である。当接面26aは、弾性支持板部22が湾曲することで弾性支持板部22と板状部23,24とが相対的に近付く方向、つまり弾性支持板部22の自然状態では略直角となる板状部23,24と弾性支持板部22とがなす角度を小さくする方向の弾性支持板部22の弾性変形の範囲で、上面22bが接触する位置に設けられる。言い換えると、弾性支持板部22の上面22bと三角リブ26の当接面26aとの間隔の寸法E1(図10参照)の大きさは、弾性支持板部22の弾性変形により上面22bが当接面26aに当接可能な大きさに設定される。
本実施形態では、三角リブ26は、各板状部23,24の板面に対して側面視で略直角三角形状をなすとともに正面視で矩形状をなすように突設された板状の部分である。具体的には、三角リブ26は、その側面視形状である略直角三角形状における斜辺部を、三角リブ26の基部側(板状部23,24の板面側)から突出方向先端側にかけて下る向きとするように設けられている。すなわち、三角リブ26は、その側面視形状である略直角三角形状において直角をなす一方の辺部を、当接面26aを形成する下側の辺部とする。
本実施形態では、三角リブ26は、各板状部23,24において、左右方向の両側の2箇所に設けられている。詳細には、正面側板状部23においては、三角リブ26は、正面側板状部23の下半部における左右両側のはみ出し部23b,23bのそれぞれに設けられている。また、背面側板状部24においては、三角リブ26は、正面側板状部23に設けられた三角リブ26と同じ高さ位置であって、背面側板状部24の左右両側の縁端寄りの位置に設けられている。
三角リブ26は、弾性支持板部22のバンパ内面5dに接触する側の面である下面22aと反対側の面、つまり上面22bに接触することで、弾性支持板部22の板状部23,24とのなす角度を小さくする方向への変形量を制限する。すなわち、三角リブ26は、弾性支持板部22に対して上方に所定量の間隔(寸法E1)を隔てた位置に設けられ、その所定量の間隔によって、弾性支持板部22が板状部23,24に近付くように(屈曲角度を小さくするように)湾曲する弾性変形を所定量許容しながら、弾性支持板部22の変形量が所定量以上となると、当接面26aを弾性支持板部22の上面22bに接触させ、弾性支持板部22の変形を規制する。
このように三角リブ26が弾性支持板部22の弾性変形量を制限することは、板状本体部21が弾性支持板部22に対して傾く量を制限することに相当する。つまり、三角リブ26は、弾性支持板部22の上方において板状部23,24から突出することで、板状本体部21の倒れ防止用の形状部分として機能する。取付状態の取付クリップ20において、スクリュ11の螺挿時などに板状本体部21が傾いた際、弾性支持板部22が三角リブ26に対して底付くことで、板状本体部21の傾動範囲が制限され、取付クリップ20が倒れることが防止される。
また、本実施形態の取付構造10は、リブ12に対する取付クリップ20の位置決め用の構造として、次のような構成を備える。すなわち、リブ12の被挟持部12cには、嵌合突部12dが設けられており、取付クリップ20には、嵌合突部12dを嵌合させる開口部である嵌合孔部27が設けられている。
嵌合突部12dは、図4に示すように、リブ12の被挟持部12cの板面からバンパ5のホイルアーチ部5a側に突出するように設けられている。つまり、嵌合突部12dは、リブ12の外側面12aにおいて突設されている。嵌合突部12dは、横断面形状として略矩形状をなす突条部として、リブ12の上縁に沿って設けられている。
一方、取付クリップ20において、嵌合突部12dが嵌合する嵌合孔部27は、板状本体部21を構成する一対の板状部23,24のうちホイルアーチ1a側の板状部である正面側板状部23に設けられている。一対の板状部23,24間にリブ12が挟み込まれる構成において、リブ12の外側面12a側への突出部分である嵌合突部12dは、正面側板状部23側への突出部分となり、かかる突出部分を受け入れるため、正面側板状部23に嵌合孔部27が形成されている。
嵌合孔部27は、正面側板状部23を板厚方向に貫通する孔を形成する部分であり、リブ12の嵌合突部12dに対応するように、板状本体部21において挟持されるリブ12の上縁部に対応する位置に形成されている。本実施形態では、嵌合孔部27は、正面側板状部23において、左右の三角リブ26の間に、嵌合突部12dの形状に対応した左右方向に細長い略矩形状の開口を形成するように設けられている(図8参照)。
嵌合突部12dが嵌合孔部27の開口に対して略全範囲に嵌合するように、嵌合孔部27の開口形状・寸法は、嵌合突部12dの突出形状・寸法と略同じとなっている。また、リブ12における外側面12aからの嵌合突部12dの突出量は、正面側板状部23の板厚と略同じである。したがって、嵌合孔部27に嵌合突部12dが嵌合した状態においては、嵌合突部12dの突出側の端面部12eは、嵌合孔部27を介して正面側板状部23の正面側に臨み、正面側板面23fと略面一となる。
以上のような本実施形態の取付構造10によるフェンダライナ4の取付手順について、図15を用いて説明する。図15(a)に示すように、バンパ5にフェンダライナ4の取付けに際しては、まず、バンパ内面5dに形成されたリブ12の被挟持部12c(図4参照)に、取付クリップ20が取り付けられる。
取付クリップ20のリブ12に対する取付けに際しては、取付クリップ20の板状本体部21における正面側板状部23と背面側板状部24との下側の開放側に、リブ12が差し込まれる。ここで、上述したように板状本体部21の挟持部分における一対の板状部23,24間の間隔はリブ12の板厚と略同じであり、また、リブ12の被挟持部12cにおける上縁部には嵌合突部12dが設けられていることから、取付クリップ20のリブ12への取付けに際しては、取付クリップ20の弾性変形をともなう。
具体的には、リブ12を板状本体部21の挟持部分に差し込むようにリブ12に対して取付クリップ20を押さえ付けることで、正面側板状部23と背面側板状部24が、リブ12の嵌合突部12dの部分を受け入れるために下側の開放部分が広がるように撓む。リブ12が差し込まれて嵌合突部12dが嵌合孔部27に嵌合することで、正面側板状部23および背面側板状部24は撓んだ状態から元の状態に戻る。これにより、取付クリップ20がリブ12における所定の被挟持部12cに対して位置決めされ取り付けられた状態となる。
取付クリップ20の取付状態においては、正面・背面両側の弾性支持板部22は、バンパ内面5dを形成するアーチ平面部5eおよび主面部5fの屈曲形状に対応し、各面部に沿った状態となる。図2に示す例では、アーチ平面部5eは、リブ12に対して略直角であり、正面側弾性支持板部22Aは、ほぼ変形することなくアーチ平面部5eに接触した状態となっている。また、主面部5fは、リブ12に対して約80°の角度をなし、背面側弾性支持板部22Bは、背面側板状部24側に折れ曲がるように弾性変形することで主面部5fの傾斜に追従し、主面部5fに接触した状態となっている。
取付クリップ20が取付状態となることで、リブ12の被挟持部12cにおいて、フェンダライナ4の支持部が構成される。つまり、取付クリップ20の正面側板状部23の正面側板面23fにより、フェンダライナ4の支持面が形成される。
したがって、図15(b)に示すように、取付状態の取付クリップ20に対し、その正面側から、フェンダライナ4の縁端部が重ねられる(矢印F1参照)。つまり、フェンダライナ4の縁端部が、取付クリップ20の正面側から、取付クリップ20においてフェンダライナ4の支持面となる正面側板面23fに対して所定の位置にあてがわれる。これにより、フェンダライナ4の縁端部は、取付クリップ20において正面側板面23fに対して外側面4cを全面的に接触させた状態となる。ここで、フェンダライナ4においては、正面側板状部23の正面側板面23fから突出する2箇所の三角リブ26との干渉を避けるための切欠部4bが形成されている(図14参照)。
そして、図15(c)に示すように、フェンダライナ4があてがわれた取付クリップ20の正面側から、スクリュ11が螺挿される(矢印F2参照)。スクリュ11は、フェンダライナ4の孔部4aを貫通するとともに、取付クリップ20における正面側板状部23および背面側板状部24の螺挿孔23c,24cに螺挿される。これにより、取付状態の取付クリップ20がリブ12に対して挟持固定されるとともに、取付クリップ20に対してフェンダライナ4が固定される。
このスクリュ11の螺挿の過程においては、取付状態の取付クリップ20が、倒れ防止機能を有する弾性支持板部22および三角リブ26によって支持されることで、スクリュ11の螺挿を受ける板状本体部21が過度に傾いたり曲がったりすることによって取付クリップ20がリブ12から外れることが防止される。
以上のようにして、本実施形態の取付構造10によってフェンダライナ4が取り付けられる。なお、例えば取付クリップ20の交換等の際には、取付クリップ20をリブ12から取り外すことが行われる。この場合、スクリュ11が取り外された後、取付クリップ20がリブ12から取り外される。取付クリップ20の取外しに際しては、取付クリップ20が有するはみ出し部23bが利用される。
取付クリップ20をリブ12から取り外すためには、嵌合孔部27に対する嵌合突部12dの嵌合を解除する必要があり、この嵌合を解除するためには、正面側板状部23と背面側板状部24とによるリブ12の挟持部分を押し広げる必要がある。そこで、正面側板状部23と背面側板状部24とによる挟持部分を押し広げるため、はみ出し部23bが押圧部として用いられる。すなわち、取付状態の取付クリップ20において、はみ出し部23bが指等により押圧されながら、弾性変形によって正面側板状部23と背面側板状部24との間の間隔が広げられて嵌合孔部27に対する嵌合突部12dの嵌合が解除され、取付クリップ20がリブ12から取り外される。
以上のような本実施形態に係る取付クリップ20を用いた取付構造10によれば、自動車の見栄えを向上させることができ、取付対象部品であるバンパ5を形成するための型構造の複雑化を回避することが可能であるとともに、バンパ5についての汎用性およびフェンダライナ4の組付け性を向上させることができる。このような効果が得られることについて、具体的に説明する。
本実施形態の取付構造10においては、フェンダライナ4は、取付クリップ20により、バンパ内面5dにおいてホイルアーチ部5aから奥側、つまりホイルハウス3における径方向外側にオフセットした位置に存在するリブ12に固定される。これにより、バンパ5に対するフェンダライナ4の固定部が、バンパ5のフロントタイヤ2側の縁端部であるホイルアーチ部5aに対して奥側に位置する。このため、フェンダライナ4の固定部がフロントタイヤ2の周囲において外観に現れにくくなり、フェンダライナ4の固定部が車両の見栄えに影響することを回避することができる。このように、本実施形態の取付構造10は、見栄えの向上に寄与することができる。
また、本実施形態の取付構造10は、フェンダライナ4の取付部分として、バンパ5のホイルアーチ部5aに沿うフランジ部5bを用いていない。このため、バンパ5のフランジ部5bの形状について、フェンダライナ4を取り付けるための制約がない。したがって、バンパ5のフランジ部5bの幅を可及的に細くすることが可能となり、このような点からも、見栄えを向上することができる。特に、バンパ5のフランジ部5bの幅を例えばフロントフェンダパネル6のフランジ部6bの幅に合わせ、ホイルアーチ1aに沿う全体的なフランジ部の幅を細くすることで、高い外観意匠性を得ることができる。さらに、取付状態の取付クリップ20に対しては、正面側から全体的にフェンダライナ4が被さることになるので、このような点からも、取付クリップ20が目立つことを防止することができ、意匠性を向上することができる。
また、本実施形態の取付構造10および取付クリップ20によれば、フェンダライナ4の取付対象部品であるバンパ5について高い汎用性を得ることができる。上述したように、バンパ5は、互いに所定の角度をなす屈曲面部であってフレアライン5FLを形成する部分として、アーチ平面部5eと主面部5fとを有する。そして、アーチ平面部5eと主面部5fとがなす角度(以下「フレア面角度」という。)は、例えば約150°から約180°までの範囲で、バンパ5における部位や車種等により様々である。取付クリップ20は、このフレアライン5FLに沿うリブ12に取り付けられる。リブ12に関し、バンパ5の本体部分に対するリブ12の立設角度(突出方向)や、リブ12が設けられる部位のバンパ5の屈曲・湾曲形状等のリブ周りのバンパ形状は、バンパ5における部位や車種等により様々である。
そこで、本実施形態の取付クリップ20は、バンパ内面5dに対する板状本体部21の支持部分であって弾性変形を意図した柔軟性を持つ薄板状の部分である弾性支持板部22を有する。弾性支持板部22は、リブ12の両面側のアーチ平面部5eと主面部5fの傾斜度合い、つまりフレア面角度に追従して弾性変形し、アーチ平面部5eおよび主面部5fそれぞれのバンパ内面5dに接触した状態で、板状本体部21を支持する。
図16(a)は、フレア面角度が約180°(フレア面角度α1=約180°)の場合を示している。この場合、取付クリップ20の正面・背面両側の弾性支持板部22は、ほぼ変形することなくアーチ平面部5eおよび主面部5fに接触した状態となっている。図16(b)は、フレア面角度が約170°(フレア面角度α2=約170°)の場合を示している。この場合、正面・背面両側の弾性支持板部22は、正面側板状部23または背面側板状部24に対して約85°をなすように弾性変形することでアーチ平面部5eおよび主面部5fの傾斜に追従してこれらの面部に接触した状態となっている。図16(c)は、フレア面角度が約160°(フレア面角度α3=約160°)の場合を示している。この場合、正面・背面両側の弾性支持板部22は、正面側板状部23または背面側板状部24に対して約80°をなすように弾性変形することでアーチ平面部5eおよび主面部5fの傾斜に追従してこれらの面部に接触した状態となっている。なお、これらのフレア面角度の例示においては、便宜上、リブ12がアーチ平面部5eおよび主面部5fそれぞれに対してなす角度が互いに等しい場合を想定している。
このように、本実施形態の取付クリップ20は、フレア面角度に応じて弾性支持板部22を弾性変形させて弾性支持板部22をバンパ内面5dに接触させることができるので、バンパ5における部位によりあるいは車種により異なるフレア面角度に対応して板状本体部21を支持する機能を発揮することができる。つまり、本実施形態の取付クリップ20は、その機能を維持しながら、バンパ5における部位や車種により異なるバンパ5における意匠的な形状に柔軟に追従することができる。言い換えると、バンパ5において取付クリップ20が取り付けられる部分の意匠的な形状についての自由度を向上させることができる。これにより、取付クリップ20の汎用性を向上させることができ、取付クリップ20を、バンパ5における部位ごとや車種ごと等の専用部品ではなく、複数の車種等に対して汎用的な部品として用いることが可能となる。
また、本実施形態の取付構造10および取付クリップ20によれば、フェンダライナ4の取付性を向上させることができる。例えば従来の取付クリップにおいては、フェンダライナ4は、取付クリップにおいて挟み込まれた態様で支持固定される。これに対し、本実施形態の取付クリップ20は、正面側板面23fによりフェンダライナ4に対して片面側に接触した状態でフェンダライナ4を支持する構成である。このため、スクリュ11によるフェンダライナ4の取付クリップ20に対する固定に際しては、フェンダライナ4を取付クリップ20の正面側にあてがう(被せる)だけでよく(図15(b)、矢印F1参照)、例えばフェンダライナ4を曲げながら所定の部位に差し込む等といった煩雑な作業が不要となり、無理のない良好な組付け性を得ることができる。
また、本実施形態の取付構造10および取付クリップ20によれば、取付対象部品であるバンパ5を形成するための型構造の複雑化を回避することができる。型構造が複雑となる原因の一つに、バンパ内面5dに形成されるリブ12の高さが高いということがある。すなわち、バンパ内面5dに形成されるリブ12は、型構造における離型方向に対してアンダーカット部(負角部)となるため、リブ12の高さがある程度以上高くなり、強制脱型が可能な範囲を超えると、脱型のために大型の傾斜コアを含む型構造が必要となり、型構造が複雑となる。
この点、本実施形態の取付クリップ20によれば、弾性支持板部22の弾性変形によってバンパ5におけるフレア面角度に追従することができることから、リブ12の挟持部分を構成する板状本体部21の下端部をリブ12の付け根部に位置させることができるため、リブ12の高さ方向の全体を挟持部分とすることができる。このため、リブ12の高さを必要最小限にすることができ、リブ12の高さを可及的に抑えることができる。これにより、バンパ5の型構造が複雑化することを回避することができる。したがって、リブ12の高さは、例えば、バンパ5の型における脱型構造との関係で、強制脱型が可能な範囲内の高さに設定される。このことについて、バンパ5を形成するための型の一例を挙げて説明する。
本実施形態に係る5を形成するためには、図17に示すような金型30が用いられる。金型30において、バンパ5が有するフランジ部5bおよびリブ12が、離型方向(矢印G1参照)に対するアンダーカット部となる。
金型30は、バンパ5の大部分を形成する固定型である一般コア31と、バンパ5を脱型させるための第1脱型コア32および第2脱型コア33とを有する。これらの脱型コア32,33は、強制脱型を行うための構成であり、所定の方向にスライド動作することで、成形品を一般コア31に対して押し広げることにより、一般コア31とバンパ5のアンダーカット部との干渉を避けるための構成である。
バンパ5の離型に際しては、まず、第1脱型コア32が一般コア31に対して離間する方向に移動することで(矢印G2参照)、フランジ部5bの表面側が解放される。次に、第2脱型コア33が第1脱型コア32と同じ方向に移動することで(矢印G3参照)、バンパ5がフランジ部5b側の部分から外側に押し出され、バンパ5が弾性変形により押し広げられる(矢印G4参照)。この第2脱型コア33の動作により、リブ12の一般コア31に対する干渉が回避される。つまり、第2脱型コア33の動作により、バンパ5を少なくともリブ12の高さ以上に押し広げることが行われる。
このような金型30の脱型構造において、バンパ5のリブ12の高さが、一般コア31との干渉を回避することができる範囲内の高さに設定される。そして、本実施形態の取付クリップ20によれば、上述したようにリブ12の高さを可及的に抑えることができるため、上述のような強制脱型を行う型構造に容易に対応することができる。これにより、脱型のために大型の傾斜コアを含む型構造等を採用する必要がなく、型構造の複雑化を回避することができる。結果として、型費の増大や、バンパ5における他の部分(例えば、フォグランプ開口部5c等)の意匠上の制約を回避することができる。
また、本実施形態の取付クリップ20においては、弾性支持板部22の板状部23,24とのなす角度を小さくする方向への変形量を制限するための三角リブ26が設けられている。このような構成によれば、スクリュ11の螺挿時などに板状本体部21が傾いた際、弾性支持板部22が三角リブ26に対して底付くことで、板状本体部21の傾動範囲を制限することができるので、取付クリップ20が倒れることを防止することができる。これにより、スクリュ11の締結に際して板状本体部21がスクリュ11から逃げることを防止することができ、取付クリップ20に対するフェンダライナ4の組付け作業性を向上することができる。また、三角リブ26によって板状本体部21のリブ12に対する挟持作用による取付クリップ20の自立性を補強することができるので、板状本体部21により挟持されるリブ12の高さを効果的に低く抑えることが可能となる。
また、本実施形態の取付構造10においては、リブ12の嵌合突部12dと取付クリップ20の嵌合孔部27との嵌合構造が用いられている。このような構成によれば、取付クリップ20をリブ12に対して所定の部位に確実に取り付けることができる。また、この嵌合構造により、板状本体部21のリブ12に対する挟持作用による取付クリップ20の自立性を補強することができるので、板状本体部21により挟持されるリブ12の高さを効果的に低く抑えることが可能となる。
さらに、嵌合孔部27は、バンパ5のホイルアーチ部5a側となる正面側板状部23に設けられており、取付クリップ20の取付状態においては嵌合突部12dが嵌合孔部27を介して露出した状態となるため、嵌合突部12dの嵌合孔部27に対する嵌合状態を、ホイルアーチ1a側から容易に確認することができる。これにより、取付クリップ20の取付状態を容易に視認することができ、取付クリップ20のリブ12に対する取付作業性を向上することができる。
また、本実施形態の取付クリップ20においては、正面側板状部23と背面側板状部24との関係において正面側板状部23側にはみ出し部23bが設けられている。このような構成によれば、取付クリップ20をリブ12から取り外す場合に、はみ出し部23bを指等による押圧部として用いることで、正面側板状部23と背面側板状部24とによる挟持部を容易に押し広げることができる。これにより、工具等を用いることなく簡単に取付クリップ20をリブ12から取り外すことができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るフェンダライナ取付構造およびフェンダライナ取付用挟持部材は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態においては、リブ12は、バンパ5において、ホイルアーチ部5aに沿うようにバンパ5におけるフロントフェンダパネル6側の縁端部から車体1において下端側となる縁端部までの範囲で全体的に形成されているが、取付クリップ20に対する支持板部であるリブ12としては、少なくとも取付クリップ20により挟持される部分に設けられればよい。ただし、バンパ5の剛性を高めてバンパ5を補強する観点からは、リブ12は、上述した実施形態のようにバンパ5の所定の部位における縁端部間の全体に設けられた構成の方が好ましい。
また、バンパ5においてリブ12が設けられる位置は、バンパ5のフレアライン5FLに沿う位置に限定されるものではない。ただし、リブ12をフレアライン5FLに沿って形成することにより、上述したように、リブ12を形成することによるバンパ5の表面側のヒケを防止したりヒケを目立たなくしたりすることができ、見栄えを向上することができる。これにより、上述したような取付クリップ20が奥側に位置して目立たなくなることやバンパ5のフランジ部5bの幅を細くすることができること等と相俟って、フロントタイヤ2の周囲の外観意匠性を効果的に向上させることができる。
また、上述した実施形態においては、本発明に係る固定部材としてスクリュ11が採用されているが、これに限定されるものではなく、固定部材としては、ボルトとナットの組合せ、あるいは固定用のピンやクリップ等が採用されてもよい。
また、上述した実施形態においては、取付クリップ20が有する弾性支持板部22は、各板状部23,24の下端部の幅方向の寸法と同じ寸法で直角状に延出された略矩形形状の部分であるが、このような形状に限定されるものではなく、例えば複数の板状あるいは棒状の部分等であってもよい。つまり、本発明に係る弾性支持部としては、上述したようなバンパ内面5dに対する板状本体部21の支持機能と、バンパ5の意匠的な形状に対応するための弾性変形のしやすさとを兼ね備える部分であればよく、板状部23,24よりも弾性変形しやすい部分として各板状部23,24の下端部から直角状に設けられた部分であればよい。
また、上述した実施形態においては、取付クリップ20は、弾性支持板部22に対する当接支持部として略直角三角形状の三角リブ26を有するが、当接支持部の形状や数は特に限定されるものではない。当接支持部としては、板状部23,24から突出し、弾性支持板部22の上面22bに対して所定の間隔を隔てて対向する当接面26aを形成する部分であれば、その形状や数は特に限定されない。
また、上述した実施形態においては、取付クリップ20とリブ12との嵌合部として、取付クリップ20の幅方向を長手方向とする略矩形状の形状部分が採用されているが、かかる嵌合部の形状や数は特に限定されるものではない。
また、上述した実施形態においては、リブ12側に嵌合突部12dが設けられ、取付クリップ20側に嵌合孔部27が設けられているが、このような構成に限定されない。つまり、取付クリップ20とリブ12との嵌合部としては、リブ12および板状部23(24)のいずれか一方に、板面から突出する嵌合突部が設けられ、リブ12および板状部23(24)のいずれか他方に、嵌合突部を嵌合させる嵌合孔部が形成されればよい。
具体的には、図18(a)に示すように、取付クリップ20とリブ12との嵌合部としては、取付クリップ20の正面側板状部23の内側の板面から突出するように嵌合突部27xが設けられ、リブ12において嵌合突部27xを嵌合させる嵌合孔部12xが設けられてもよい。嵌合突部27xは、例えば、上述した嵌合突部12dと同様に略矩形状の横断面形状をなす突条部である。嵌合孔部12xは、リブ12を板厚方向に貫通する孔を形成する部分である。また、リブ12側に嵌合孔部12xが設けられる場合において、取付クリップ20側の嵌合突部は、背面側板状部24に設けられてもよい。この場合、図18(b)に示すように、取付クリップ20の背面側板状部24の内側の板面から突出するように嵌合突部27yが設けられる。さらに、図示は省略するが、リブ12においてバンパ5のホイルアーチ部5a側と反対側に突出するように嵌合突部を設け、取付クリップ20において背面側板状部24に嵌合孔部を設けた構成であってもよい。ただし、上述した実施形態のように、リブ12においてバンパ5のホイルアーチ部5a側に突出するように嵌合突部12dを設け、取付クリップ20において正面側板状部23に嵌合孔部27を設けた構成によれば、上述したように、取付クリップ20の自立性を補強することができることに加え、取付クリップ20の取付状態を容易に視認することができる。
また、上述した実施形態においては、取付クリップ20の正面側板状部23が有するはみ出し部23bは、取付クリップ20の幅方向の両側に張り出した部分であるが、その張り出す方向や形状や位置等は特に限定されるものではない。つまり、はみ出し部23bとしては、正面側板状部23が背面側板状部24よりも所定の方向についての寸法を大きくすることで、リブ12の挟持方向について背面側板状部24が重ならない部分であればよく、例えば、正面側板状部23の全体的な外形形状である略矩板形状から部分的に突出する突出部分等であってもよい。また、正面側板状部23よりも背面側板状部24の寸法を大きくすることで、背面側板状部24側にはみ出し部を設けてもよい。