以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)を得ることが可能である。
本実施形態において、タイヤ検査装置10は、一例として完成したタイヤの表面、例えばタイヤのトレッド面(接地面)と両サイド面(ショルダー部、サイドウォール部、ビード部等)を検査(表面検査)のために撮影する。タイヤ検査装置10は、撮影された画像情報に基づき、タイヤの表面形状(例えば変形の有無)や表面状態(例えば傷や汚れの有無)に関する検査を実行する。検査の項目や検査方法(撮影方法や画像情報の処理方法等)は、周知の技術が適用可能であり、その説明は省略する。
タイヤ検査装置10は、停留ステーション14、タイヤ把持装置16、検査ユニット(撮影部、検査部)18、昇降機構22、制御盤1000等を含んで構成されている。なお、タイヤ検査装置10は、タイヤ28を把持した状態で検査ユニット18で検査を行うためにタイヤ28の姿勢を変更する。そのため、周囲の安全を確保するためにフレーム等でタイヤ検査装置10全体を覆ってもよい。また、検査時に、周囲から外乱光の影響を受けることを抑制するために、タイヤ検査装置10またはフレームをカバー等で覆ってもよい。
停留ステーション14は、検査対象であるタイヤ28(例えば車両用)を受け入れ可能で、例えば搬送力の伝達と非伝達を切り替えることにより一時的にタイヤを停留ステーション14上で停留させることができる。停留ステーション14の前後(矢印Mに沿う方向の前後、検査工程より上流側から下流側に向かう方向)には、図示しない搬送コンベア(例えばローラコンベア14a)が配置されている。そして、他工程からのタイヤ28の受入搬送及び他工程へのタイヤ28の排出搬送を行う。タイヤ28は、例えば平置き状態(寝かされた状態)で停留ステーション14に搬送される。そして、停留ステーション14で停留したタイヤ28は、タイヤ把持装置16のチャック機構を構成するチャックユニット20で把持されて検査ユニット18の検査領域に移動させられる。後述するが、チャック機構は、タイヤ28のビード部の開放端部に当接可能な当接部材を複数個円周状に配置したチャック部をタイヤ28の幅方向に一対で備え、当接部材のタイヤ径方向への拡径動作とタイヤ幅方向への拡張動作によりタイヤ28の把持を行う。検査の終了後(例えば画像の撮影後)、タイヤ把持装置16は、タイヤ28を平置き姿勢にしてから停留ステーション14上に戻して把持を解放する。停留ステーション14は、把持から解放されたタイヤを排出側の搬送コンベアに送り出す。
タイヤ把持装置16のチャックユニット20は、停留ステーション14で停留しているタイヤ28を把持して、検査ユニット18に含まれる撮影部の撮影領域にタイヤ28を移動させる。本実施形態のタイヤ検査装置10の場合、タイヤ把持装置16は、一例として、平置き状態で停留ステーション14の所定位置に移動してきたタイヤ28を把持して、その把持状態のままタイヤ28を鉛直方向に90°旋回させて、当該タイヤ28のトレッド面や両サイド面が撮影領域に入るようにする。なお、図1は、タイヤ把持装置16のチャックユニット20が、鉛直方向に90°旋回してタイヤ28の検査が可能な姿勢になっている状態を示している。
タイヤ把持装置16は、チャックユニット20、昇降機構22、旋回機構24等で構成されている。チャックユニット20の詳細は後述するが、図2に示すように、拡縮自在な複数の当接部材26(チャック爪、把持爪)がタイヤ28を把持する。なお、図2では当接部材26が1個のみ図示されている。昇降機構22は、モータ、流体圧シリンダ(例えば空気圧、油圧)等の駆動源によりチャックユニット20及び旋回機構24を上下方向(図1中矢印N方向)に移動する。昇降機構22が下降状態に移行した場合に、チャックユニット20は停留ステーション14上のタイヤ28を把持または、把持を解放する。また、昇降機構22が上昇状態に移行した場合に、チャックユニット20は検査ユニット18の撮影領域でタイヤ28の姿勢を維持する。なお、昇降機構22による昇降の途中または上昇完了状態で、旋回機構24は旋回を実行して、タイヤ28の姿勢を検査姿勢(把持/回転姿勢)と搬送姿勢(把持または解放姿勢)に切り替える。
旋回機構24(図1の場合は、昇降ブラケット22aの裏面側に存在)は、一例としてモータや流体圧シリンダ等の駆動源からの動力により、チャックユニット20を旋回軸20aを中心に例えば、90°旋回させる。なお、この場合の旋回角度は、停留ステーション14と検査ユニット18の撮影領域との位置関係に応じて適宜選択することが望ましい。
検査ユニット18は、一例としてタイヤ28のトレッド面と両サイド面を撮影可能な撮影部(撮影装置、カメラ)を例えば3台備える。また検査ユニット18は、撮影部の撮影領域に所定の光を照射する光照射部(照明装置)等を含む。検査ユニット18は、図示を省略した撮影移動機構によって図中矢印W方向に移動自在に支持され、タイヤ28に対して撮影部や光照射部を最適な位置に移動できるように構成されている。
光照射部は、例えば、ライトシート(シート状の光、平坦なカーテン状の光、スリット光、一例としてはレーザーライトシート)を出射する。撮影部は、例えば、二次元に配列された光電変換素子(光電変換部)を有したエリアセンサ(固体撮像素子、例えば、CCD(charge coupled device)イメージセンサや、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサ等)とすることができる。
その他、タイヤ検査装置10には、当該タイヤ検査装置10が稼働中であることを示す運転表示灯やタイヤ28に異常が発見された場合に、報知するエラー表示灯、制御盤(制御部)1000、表示装置1002(一例として制御盤1000上に配置)等が備えられてもよい。制御盤1000は、タイヤ検査装置10全体の制御部として機能し、停留ステーション14、タイヤ把持装置16(昇降機構22)、検査ユニット18等を個別にまたは連携して制御する。制御盤1000には、制御部として機能するCPUやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、NVRAM(Non Volatile Ram)、センサコントローラ、モータコントローラ、通信インタフェース、及び操作スイッチ(キーボード)等が含まれる。ROMには、後述するタイヤ検査装置10の制御に関する制御プログラムや検査プログラムが保持される。CPUは、ROM等の記憶部に記憶されたコンピュータ読み取り可能な各種プログラムをRAM上で実行すると共に、各種センサからの信号や操作指示にしたがい停留ステーション14、タイヤ把持装置16、検査ユニット18等のモータや撮影部、光照射部を制御する。また、撮影された検査画像を用いた検査をROMに保持された検査プログラムにしたがってRAM上で実行する。ROMは、CPUが実行する各種データや、各種プログラムを記憶する。RAMは、CPUが各種プログラムを実行する際に一時的にデータやプログラムを記憶する。また、NVRAMは、電源がオフされた状態でも、各種データを記憶することができる。CPUは、通信インタフェースを介して検査結果やタイヤ検査装置10の稼働状況を上位のシステムに転送することもできる。
表示装置1002には、タイヤ検査装置10の稼働状態を示す情報や検査結果(例えば良否判定)、タイヤ検査装置10の起動手順や停止からの復帰手順等の案内メッセージ等を表示することができる。また、CPUは、このメッセージと同様の内容音声メッセージをスピーカ等を介して出力してもよい。なお、図1の場合、一例として表示装置1002を制御盤1000上に配置する例を示しているが、別の構成として、表示装置1002を独立的に配置してもよい。また、制御盤1000や表示装置1002をタイヤ検査装置10から独立した構成としてもよい。また、制御盤1000や表示装置1002をタイヤ検査装置10が含まれる製造工程の全体を制御する制御ユニットまたは他の装置を制御する制御ユニットと一体化してもよい。
図2は、チャックユニット20の詳細構造を説明するための斜視図であり、チャックユニット20に含まれるチャック部本体38がタイヤ28を把持した状態を示している。チャックユニット20は、チャック部本体38、ブラケット40、把持/回転アクチュエータ42、クラッチ部44、主軸ブレーキ46、幅拡張アクチュエータ48等を含んで構成されている。
チャック部本体38は、例えば一対のチャック部38a,38b(図9、図12等参照)で構成され、当該チャック部38a,38bのそれぞれがリンク機構を利用した、タイヤ28の径方向に拡縮自在な複数の当接部材26を有している。そして、当接部材26をタイヤ28のビード部の内径側に挿入された状態で拡径させることでタイヤ28を把持する。また、当接部材26がタイヤ28を把持した状態で、一対のチャック部38a,38bをタイヤ28の幅方向に移動(一対のチャック部38a,38bを相対的に離間)させることにより、タイヤ28に幅方向の張力を与えて検査のために形状(外形)を矯正する。
ブラケット40は、図1に示す昇降ブラケット22aに支持されると共にチャックユニット20全体を支持する。ブラケット40には、図示しないモータ等のアクチュエータやギア装置等が配置され、アクチュエータを駆動することで、当該アクチュエータと共にブラケット40がチャック部本体38を支持した状態でタイヤ28の把持/解放姿勢位置と検査姿勢位置との間で旋回する。
把持/回転アクチュエータ42は、クラッチ部44に接続された駆動シャフト50を回転させることにより、チャック部本体38の当接部材26の拡縮動作と、チャック部本体38全体の回転動作(タイヤ28を把持固定した姿勢での回転動作)を実現する。把持/回転アクチュエータ42、クラッチ部44の動作及びチャック部本体38の挙動については後述する。
主軸ブレーキ46は、チャック部本体38全体がタイヤ28を把持した姿勢で回転する場合にブレーキを解放して、チャック部本体38全体の回転を許容する。一方、主軸ブレーキ46は、当接部材26の拡縮動作の際には、チャック部本体38全体の回転を停止させるブレーキ力を発生する。別の実施形態において、主軸ブレーキ46は、ラッチやギアを動作させるタイプでもよいし、電磁ブレーキを動作させるタイプでもよい。
幅拡張アクチュエータ48は、例えばモータ等により構成され、駆動シャフト48aを回転させることにより、チャック部本体38を構成する一対のチャック部38a,38b(後述するチャックベースプレート)を接離動作させる。この接離動作により、チャック部38a,38bにおいて円周状に複数個配置された当接部材26で把持されたタイヤ28のビード部がタイヤ28の幅方向に拡張させられる。その結果、タイヤ28の両サイド面に所定の張力が付与されると共に、サイド面の形状が安定し(検査用に矯正され)、形状に起因する検査ノイズの軽減に寄与できる。
チャック部本体38は、前述したように一対のチャック部38a,38bで構成されている。図3に示すように、チャック部38aは、例えば、略円形板状のチャックベースプレート54上に複数のリンク機構52を円周状に備え、当該リンク機構52がそれぞれ対応する当接部材26を拡縮する。同様に、チャック部38bは、例えば、略円形板状のチャックベースプレート94(図8参照)上にチャックベースプレート54上のリンク機構52と同様な構成の複数のリンク機構52を円周状に備え、当該リンク機構52がそれぞれ対応する当接部材26を拡縮する。チャック部38a(チャックベースプレート54)とチャック部38b(チャックベースプレート94)は、タイヤ28の幅方向(図1参照)に平行配置されている。なお、本実施形態において、チャック機構を構成するチャック部本体38は、一方のチャック部38aを第1チャック部または下側チャック部と称する場合もあるし、チャックベースプレート54を第1チャック部または下側チャック部と称する場合もある。また、一対のうちの他方のチャック部38bを第2チャック部または上側チャック部と称する場合もあるし、チャックベースプレート94を第2チャック部または上側チャック部と称する場合もある。なお、図3の場合は、チャック部38a(第1チャック部)を構成するチャックベースプレート54のみを示し、チャック部38b(第2チャック部)を構成するチャックベースプレート94は図示を省略して、リンク機構52及び当接部材26のみを図示している。なお、図8において、駆動シャフト50の先端側に位置するチャックベースプレート54を外側(前方側)のチャックベースプレート54と称し、把持/回転アクチュエータ42に近い側のチャックベースプレート(不図示)を内側(後方側)のチャックベースプレート94と称する場合もある。
前述したように、チャック部本体38は、タイヤ28を把持するために、複数の当接部材26をタイヤ28の径方向と幅方向に移動させる。この当接部材26におけるタイヤ28の径方向の移動動作は、第1駆動機構として機能する把持/回転アクチュエータ42及びそれにより回転駆動する駆動シャフト50によって実現する。図8に示すように、把持/回転アクチュエータ42は、当該把持/回転アクチュエータ42の出力軸に固定されたプーリ42aと、駆動シャフト50の端部に固定されたプーリ50aとの間に掛け渡された駆動ベルト56によって把持/回転アクチュエータ42の駆動力を駆動シャフト50に伝達する。なお、本実施形態において、駆動シャフト50は、外側のチャックベースプレート54(チャック部38a)側のみに接続されている。また、当接部材26におけるタイヤ28の幅方向の移動動作は、第2駆動機構として機能する幅拡張アクチュエータ48及びそれにより回転駆動する駆動シャフト48aを介して駆動力がチャック部本体38側に伝達されることによって実現される(図2参照)。すなわち、幅拡張アクチュエータ48の駆動力により、外側のチャックベースプレート54(チャック部38a)に対して内側のチャックベースプレート94(チャック部38b;図8参照)が当該チャックベースプレート94を間接的に支持する連動シャフト70に沿って移動することで、幅方向の移動が実現される。なお、第1駆動機構と第2駆動機構とをまとめて駆動機構と称する場合もある。
図3〜図5を用いて、チャックベースプレート54(チャック部38a)に支持された当接部材26を動作させるリンク機構52の構成を説明する。なお、図5は、リンク機構52が1セット図示され、他の3セットは図示を省略している。また、チャックベースプレート54とチャックベースプレート94(チャック部38b;図8参照)の当接部材26を動作させるリンク機構52の構成は実質的に同じなので、チャックベースプレート54(チャック部38a)の構造を代表して説明する。
本実施形態の場合、チャックベースプレート54には、一例として4個のリンク機構52が円周方向(円周状)に略等間隔(90°間隔)で配置されている。なお、チャックベースプレート54(94)に配置するリンク機構52の数は一例であり、4個に限定されるものではなく、5個以上でもよいし、3個でもよい。リンク機構52は、図5に示すように、複数の円盤状のプレートとリンクアームで構成されている。把持/回転アクチュエータ42により回転する駆動シャフト50の一端には、チャックベースプレート54に回転自在に支持された第1リンクプレート58が固定されている。第1リンクプレート58は、例えば略円盤形状であり、外縁近傍に略等間隔でリンク機構52を支持する。第1リンクプレート58は、タイヤ28の回転動作時(検査のための撮影時)、つまりリンク機構52の把持状態維持姿勢では、タイヤ28の必要回転数(検査のための撮影に必要回転数)にしたがって全周回転する。
リンク機構52は、第1リンクアーム60、第2リンクプレート62、第2リンクアーム64、第3リンクアーム66、ベースプレート68、当接部材26等で構成される。第1リンクアーム60は、例えば略長方形の板状部材であり、一端が回転自在に第1リンクプレート58の外縁部近傍で支持され、他端が第2リンクプレート62の外縁部近傍で回転自在に支持されている。第2リンクプレート62は、例えば略円盤形状の部品で、図示を省略しているチャックベースプレート54(図3参照)に回転自在に支持されている。第2リンクプレート62は、第1リンクアーム60が接続された位置に対して、例えば回転中心62aを挟んで対向する位置に第2リンクアーム64の一端を回転自在に支持している。なお、第2リンクプレート62における第1リンクアーム60と第2リンクアーム64の取り付け位置は、リンク機構52に要求される動作態様(動作ストローク)にしたがって適宜選択される。また、第2リンクプレート62の回転中心62aには、連動シャフト70が固定されている。連動シャフト70は、第1リンクプレート58の回動に伴う第2リンクプレート62の回動に連動して回転するように、第2リンクプレート62の回転中心62aに固定されると共にチャックベースプレート54にベアリング等を介して回転自在に支持されている。連動シャフト70が回動することにより、図示を省略しているチャックベースプレート94(図8参照)に支持された当接部材26の拡縮動作が実行される。また、前述したように、連動シャフト70は、チャックベースプレート54とチャックベースプレート94(図8参照)の離間動作の際に、ガイド部材として機能して、タイヤ28のビード部が幅方向の拡張する動作の安定化に寄与する。また、連動シャフト70は、タイヤ28の表面の撮影のためにチャック部本体38全体が回転させる場合の回転力伝達部材としても機能する。
第2リンクアーム64は、例えば略長方形の板状部材であり、一端が回転自在に第2リンクプレート62の外縁部近傍に支持され、他端が第3リンクアーム66の中央部から偏った位置に回転自在に支持されている。第3リンクアーム66は、例えば略長方形の板状部材であり、一端が図示を省略しているチャックベースプレート54(図3参照)の外縁部近傍に固定されたベアリング66aに接続されて回転自在に支持されている。また、第3リンクアーム66の他端は、当接部材26を支持するベースプレート68(揺動部材)を回動自在(揺動自在)に支持している。第3リンクアーム66は、第2リンクアーム64が動作することによりベアリング66aを中心に揺動して、当接部材26をタイヤ28のビード部に押圧させる。第3リンクアーム66は、付勢部材として機能する例えばスプリング72の一端が固定されている。スプリング72の他端は、当接部材26を支持するベースプレート68の一部に接続され、定常状態でベースプレート68の一方側(第2当接部材76,76a側)をベアリング66a側に引き寄せている。ベースプレート68は、例えば略長方形の板状部材であり、長手方向の両端部に当接部材26として機能する第1当接部材74と第2当接部材76とを支持する。後述するが、スプリング72の付勢力により、ベースプレート68の姿勢を前述した所定の付勢姿勢に保ち、第2当接部材76が第1当接部材74より先にビード部に当接することを回避している。なお、第2当接部材76が第1当接部材74より先にビード部に当接することを回避するための付勢力の発生手段はスプリング72に限らず、例えば、リンク機構により実現してもよいし、アクチュエータを用いて実現してもよく、同様の効果を得ることができる。
図6に、チャックベースプレート54(チャック部38a)に設けられたリンク機構52(図5参照)の当接部材26(第1当接部材74及び第2当接部材76)の形状を説明する平面図が示されている。第1当接部材74と第2当接部材76の外形は略同一であり、テーパ部(テーパ面)を有する円錐台である本体部78と、当該本体部78の小径側に連結された円盤状のフランジ部80とで構成されている。チャックベースプレート54に設けられるリンク機構52が備える第1当接部材74と第2当接部材76は、フランジ部80側がベースプレート68に接続されている。第1当接部材74は、例えば内部に配置されたベアリング82を用いた自転機構を有し、ベースプレート68に固定された回転軸82aを中心に回転自在である。一方、第2当接部材76は、ベースプレート68に固定されて非回転になっている。前述したように、スプリング72の付勢力により第2当接部材76側がベアリング66a側に引き寄せられて、タイヤ28のビード部に当接部材26が当接する場合、必ず第1当接部材74が第2当接部材76より先に当接するように構成されている。つまり、第1当接部材74とタイヤ28のビード部とが当接した後、さらにチャック部本体38が拡径動作して第2当接部材76がビード部に当接するまでの初期段階(第1当接段階)が形成される。この初期段階(第1当接段階)では、チャック部本体38の拡径動作に伴いビード部と接触している第1当接部材74が自転する。その結果、第1当接部材74とタイヤ28のビード部との当接位置が相対的に変化可能となる。つまり、第1当接部材74は、第1当接段階において、当接位置の相対移動を可能(許容)する相対移動許容状態で当接する。このような相対移動許容状態で第1当接部材74とビード部とを当接させることで、把持力の偏り(ビード部への押圧力の偏り)を緩和することができる。
ここで、比較例として、当接部材26が相対移動許容状態でビード部と接触しない場合を考える。例えば、チャック部本体38の機械中心位置(例えば第1リンクプレート58の中心)と停留ステーション14上で停留するタイヤ28の中心位置がずれた状態で把持動作を開始した場合を考える(図1参照)。この場合、チャック部本体38が有する複数の当接部材26のうち一部の当接部材26が、チャック部本体38の機械中心位置から最も近いタイヤ28のビード部に接触する。当接部材26の拡径動作が継続された場合、チャック部本体38の機械中心位置にタイヤ28の中心位置を合わせるようにタイヤ28を移動させる方向の押圧力が当接部材26からビード部に与えられる。この場合、停留ステーション14上でタイヤ28を摺動させるための押圧力がビード部の一部に集中してしまい、タイヤ28の形状を変形させてしまう(歪めてしまう)ことがある。タイヤ28の変形量(歪み)は、チャック部本体38とタイヤ28の位置ずれ量等に応じて変化する。このような変形が生じた状態でタイヤ28の把持が完了して、検査ユニット18により検査のための撮影が実行されると、歪んだ形状に基づく検査になりタイヤ28の検査精度の低下を招く。
一方、本実施形態のチャック部本体38のように、当接の初期段階(第1当接段階)でビード部(開放端部)の当接面と第1当接部材74とが相対移動許容状態で接触することで、押圧力を分散させることができる。つまり、押圧時の応力集中を緩和してタイヤ28の部分的な変形(歪み)を抑制することができる。このように応力集中を抑制しつつ、チャック部本体38の機械中心位置とタイヤ28の中心位置が一致するようにタイヤ28を停留ステーション14上で移動させる。その後、第1当接段階に続く第2当接段階で第1当接部材74に続いてビード部の当接面に第2当接部材76を当接させる。第2当接部材76は、ベースプレート68に固定されているので、第2当接部材76がタイヤ28のビード部の当接面に当接した状態でチャック部本体38が拡径動作しても前述した第1当接部材74のように第2当接部材76とタイヤ28のビード部との間で相対移動が生じることなく、ビード部を拡径方向に押し広げる。つまり、第2当接部材76は、第2当接段階において、当接位置で相対移動を生じない非相対移動状態で当接する。このような第2当接部材76が非相対移動状態で当接することにより当接部材26全体が非相対移動状態になり、チャック部本体38の機械中心位置とタイヤ28の中心位置が略一致された状態(センタリングされた状態)で、ビード部を把持できる。つまり、バランスのよい姿勢でタイヤ28の把持を完了する。
図7には、チャックベースプレート94(チャック部38b;図8参照)に設けられたリンク機構52(図5参照)の当接部材26(第1当接部材74a及び第2当接部材76a)の形状を説明する平面図が示されている。チャックベースプレート94用の第1当接部材74a及び第2当接部材76aの外形は、チャックベースプレート54用の第1当接部材74及び第2当接部材76に類似する。ただし、本実施形態の場合、第1当接部材74a及び第2当接部材76aの本体部78の長さが、第1当接部材74及び第2当接部材76のそれより長い。この長さの違いは、後述する本実施形態の把持手順を実行する場合に、当接部材26による把持動作をスムーズに行うためのものであり、必ずしも本体部78の長さを異ならせる必要はなく同じ長さでもよい。また、把持手順によっては、第1当接部材74及び第2当接部材76の本体部78の長さを第1当接部材74a及び第2当接部材76aのそれより長くしてもよい。第1当接部材74a及び第2当接部材76aの本体部78もテーパ部を有する円錐台であり、本体部78の小径側に円盤状のフランジ部80が連結されている。ただし、チャックベースプレート94に設けられるリンク機構52の第1当接部材74aと第2当接部材76aは、本体部78の大径側(フランジ部80が連結されていない側)がベースプレート68に接続されている。なお、第1当接部材74aは第1当接部材74と同様に、内部にベアリング82を備えた自転機構を有し、ベースプレート68に固定された回転軸82aを中心に回転自在である。第1当接部材74aの自転機構によって、チャックベースプレート94に支持された当接部材26がタイヤ28のビード部に当接して把持を行う際にも、チャックベースプレート54に支持された当接部材26と同様に応力集中が抑制された把持が実行される。一方、第2当接部材76aは、ベースプレート68に固定されて非回転になっている。その結果、第2当接部材76と同様に、チャック部本体38の機械中心位置とタイヤ28の中心位置が略一致された状態(センタリングされた状態)で、ビード部を把持できる。つまり、バランスのよい姿勢でタイヤ28の把持を完了する。
図5に戻り、チャックベースプレート94(図8参照)の当接部材26を動作させる連動シャフト70は、例えばスプライン溝70aを有するスプライン軸であり、当該スプライン軸に外筒部84aが装着されてボールスプライン84を構成している。外筒部84aの端面には、第2リンクプレート86及び図示を省略しているチャックベースプレート94が固定されている。図5では、チャックベースプレート94(図示省略)にベアリング88aを介して回転自在に第3リンクアーム88が支持され、当該第3リンクアーム88の裏面側に、第2リンクアーム64(不図示)が接続されている。また、第3リンクアーム88の一端には回転自在にベースプレート68が接続され、当該ベースプレート68に第1当接部材74a、第2当接部材76aが支持されている(図7参照)。したがって、第2リンクプレート86及びチャックベースプレート94(不図示)、さらには当該チャックベースプレート94に支持される第3リンクアーム88、ベースプレート68、第1当接部材74a、第2当接部材76a等は、外筒部84aと共に連動シャフト70の軸方向に移動可能となる。そして、本実施形態では、図2に示す幅拡張アクチュエータ48の駆動シャフト48aが例えばチャックベースプレート94に接続されている。その結果、幅拡張アクチュエータ48の駆動により、チャックベースプレート94をタイヤ28の幅方向に移動させて、幅拡張動作を実現する。
このように構成されるリンク機構52は、駆動シャフト50の回転、つまり第1リンクプレート58の回転によりタイヤ28を把持する把持状態と、その把持を解放する解放状態との2態様をとり得る。図3は、リンク機構52がタイヤ28の解放状態である場合を示し、図4は、リンク機構52がタイヤ28の把持状態である場合を示している。図3に示すように、タイヤ28の解放状態の場合、タイヤ検査装置10で検査可能となる最小タイヤサイズのリム径TSより所定量小径の最小縮径サイズSよりさらに内径側に当接部材26(第1当接部材74、第2当接部材76)が位置するようにリンク機構52が縮む(縮径状態)。その結果、タイヤ28の把持または解放のためにタイヤ28のビード部内径側にチャック部本体38がスムーズに進入可能となる。なお、図3に示すようなリンク機構52が縮径状態の場合、第2当接部材76を支持するベースプレート68は、スプリング72の付勢力によって第1姿勢に維持されている。この第1姿勢は、第1当接部材74が第2当接部材76より先行してビード部の当接面と当接するように第2当接部材76をビード部から離反させるような姿勢である。また、図4に示すように、タイヤ28の把持状態の場合、タイヤ検査装置10で検査可能となる最大タイヤサイズのリム径TLより所定量大径の最大拡径サイズLより外形側に当接部材26(第1当接部材74、第2当接部材76)が位置するようにリンク機構52が伸張する。その伸張に伴い、ベースプレート68がスプリング72の付勢力に抗して揺動して第2姿勢に移行して、第2当接部材76がビード部に当接してタイヤ28を確実に把持する。その結果、タイヤ28を持ち上げて姿勢変更及び回転を安全かつスムーズに行うことができる。なお、本実施形態のタイヤ検査装置10の検査可能タイヤサイズは、例えば14インチ及び15インチとすることができる。この場合、第1リンクプレート58(駆動シャフト50)の回転量に応じてリンク機構52の伸張量を制御できる。例えば14インチタイヤの場合、第1伸張量になるように第1リンクプレート58を回転制御し、15インチタイヤの場合、第2伸張量になるように第1リンクプレート58を回転制御すればよい。そして、第1リンクプレート58(駆動シャフト50)の回転制御は、例えば、把持/回転アクチュエータ42の回転数制御やトルク制御によって実現することができる。なお、他の実施形態では、タイヤサイズごとにリンク機構52の伸張量が定まるので、リンク機構52の伸張量に基づいて把持/回転アクチュエータ42の制御を行ってもよい。
前述したように、把持/回転アクチュエータ42の駆動力の伝達態様は、クラッチ部44(図2参照)によって切り替えることが可能である。すなわち、クラッチ部44は、把持動作力伝達状態と回転動作力伝達状態とを切り替える。把持動作力伝達状態は、チャック部本体38の当接部材26の拡縮動作を実現するための動力を把持/回転アクチュエータ42側から伝達する状態である。また、回転動作力伝達状態は、チャック部本体38全体の回転(タイヤ28を把持した姿勢での回転)を実現するための動力を把持/回転アクチュエータ42側から伝達する状態である。このように、クラッチ部44を用いて把持/回転アクチュエータ42の動力伝達状態を切り替えることにより、装置全体の小型化やコスト削減に寄与できる。
図8を用いて、クラッチ部44が切断状態にある場合を説明する。なお、チャックベースプレート54,94上には図3等に示すように、それぞれ複数の当接部材26(リンク機構52)が配置されるが、図8および後述する図9では、図示の簡略化のため当接部材26(リンク機構52)をチャックベースプレート54,94上にそれぞれ1セットのみ図示している。駆動シャフト50上の所定位置、例えば中間位置付近にはクラッチ部44が配置されている。クラッチ部44は、例えば制御盤1000からの指令に基づく電圧を印加することにより、所定のタイミングで接続/切断状態を切り替えることができる。また、クラッチ部44は、例えばソレノイドやモータ、流体圧シリンダ等のアクチュエータを制御することにより接続/切断状態を切り替えるような構成でもよい。クラッチ部44は接続状態の場合、駆動シャフト50と当該駆動シャフト50を内包するパイプ状の回転主軸90とを機械的に接続して一体的に回転させる。一方、クラッチ部44が切断状態の場合、駆動シャフト50と回転主軸90との機械的な接続は解消され、駆動シャフト50のみが回転する。なお、この場合、回転主軸90は、主軸ブレーキ46(図2参照)によりブレーキ力が付与されロック状態(非回転状態)になる。したがって、クラッチ部44が切断状態の場合、把持/回転アクチュエータ42の回転力は、プーリ42a、駆動ベルト56、プーリ50aを介して駆動シャフト50のみに伝達される。その結果、図3〜図5で示したように、駆動シャフト50がチャックベースプレート54の当接部材26及びチャックベースプレート94の当接部材26の拡縮動作を実現する。なお、回転主軸90には、複数(例えば4本)の連動シャフト70を回転自在かつ軸方向に摺動自在支持するガイドプレート92が固定されている。また、ガイドプレート92は、チャックベースプレート94に固定された複数(例えば4本)のガイドシャフト96を軸方向に摺動自在に支持している。
次に図9を用いて、クラッチ部44が接続状態にある場合を説明する。クラッチ部44は、接続状態の場合に駆動シャフト50と当該駆動シャフト50を内包するパイプ状の回転主軸90とを機械的に接続して一体的に回転させる。この場合、回転主軸90にブレーキ力を付与する主軸ブレーキ46(図2参照)は、解放されて回転主軸90の回転を許容する。前述したように、ガイドプレート92は、複数の連動シャフト70及びガイドシャフト96を軸方向に摺動自在に支持している。その結果、ガイドプレート92が回転主軸90と一体的に回転する場合、連動シャフト70を支持するチャックベースプレート54が回転する。同様に、ガイドプレート92が回転主軸90と一体的に回転する場合、ガイドシャフト96が固定されたチャックベースプレート94が回転する。このとき、回転主軸90と共に駆動シャフト50が回転するため、チャックベースプレート54及びチャックベースプレート94の当接部材26には、拡開方向の駆動力が付与された状態が継続されるので、タイヤ28の把持力を維持した状態でチャック部本体38全体が回転する。つまり、チャック部本体38と共にタイヤ28が回転する。なお、チャックベースプレート94は、連動シャフト70を軸方向に摺動自在に支持していると共に、ガイドプレート92は、連動シャフト70及びガイドシャフト96を軸方向に摺動自在に支持している。したがって、幅拡張アクチュエータ48によって、チャックベースプレート94がチャックベースプレート54に対して接離方向に移動可能である。その結果、チャックベースプレート54の当接部材26及びチャックベースプレート94の当接部材26は、把持状態を維持したままタイヤ28の幅方向に拡張できる。つまり、チャック部本体38は、タイヤ28を径方向及び幅方向に把持した姿勢のままでタイヤ28の回転を実行することができる。
このように構成されるリンク機構52及び当接部材26の動作を模式的な図10〜図13を用いて説明する。なお、図10〜図13は、図示の簡略化のため、リンク機構52は4個の当接部材26のうち1個にのみ図示している。
まず、図10に示すように、チャック部本体38がタイヤ28の把持を開始する場合、チャック部本体38(チャック部38a、チャック部38b)は図3に示す縮径状態でタイヤ28のビード部内側で規定される開口部100に進入する。そして、クラッチ部44を切断状態に移行させた後、第1駆動機構として機能する把持/回転アクチュエータ42及び駆動シャフト50により第1リンクプレート58を矢印A方向(反時計周り方向)に所定角度回転させる。この回転により、第1リンクアーム60が矢印B方向に移動し、第2リンクプレート62が矢印C方向(反時計回り方向)に回転し、第2リンクアーム64が矢印D方向に移動する。その結果、第3リンクアーム66は、ベアリング66aを中心にタイヤ28の径方向外側に揺動してベースプレート68に支持された第1当接部材74がタイヤ径方向外側(矢印E)に付勢される。この段階を第1当接段階という。前述したように、第1当接部材74は回転自在にベースプレート68に支持されている。したがって、チャック部本体38の機械中心位置とタイヤ28の中心位置が一致していない状態でも、第1当接部材74が自転してビード部との相対位置を変化させながら、タイヤ28を停留ステーション14(図1参照)上で移動(摺動)させる。その結果、チャック部本体38は、タイヤ28の移動時の応力集中を緩和しながらその中心位置のずれを修正する。なお、図10では、図示を省略しているが、スプリング72(図3参照)により、ベースプレート68が第1姿勢に移行していて、第2当接部材76がビード部(開口部100)から離間した状態が維持されている。この第1当接段階では、ベースプレート68は第1当接部材74が第2当接部材76より先行してビード部の当接面と当接するようになっている。言い換えれば、タイヤ28との中心位置あわせの段階で、自転しない第2当接部材76(非相対移動状態の第2当接部材76)がビード部の当接面と当接してタイヤ28を変形させてしまうことを防止している。
次に、ベースプレート68(揺動部材)が第2姿勢に移行して、タイヤ28の径方向の把持を完了する様子を図11を用いて説明する。ベースプレート68の第2姿勢は、図10に示すベースプレート68の第1姿勢から駆動シャフト50(第1リンクプレート58)が引き続き回転することで移行する姿勢である。第1リンクプレート58がさらに矢印A方向に回転することで、第1リンクアーム60が矢印B方向にさらに移動し、第2リンクプレート62がさらに矢印C方向に回転し、第2リンクアーム64をさらに矢印D方向に移動させる。この場合、既にベースプレート68が一端に支持する第1当接部材74は、ビード部(開口部100)に当接している。したがって、ベースプレート68がスプリング72(図4参照)に抗して揺動して、自転しない第2当接部材76がビード部(開口部100)に当接することでタイヤ径方向外側(矢印E)に付勢力を付与する。この段階を第2当接段階という。前述したように、第1当接段階でチャック部本体38の機械中心位置とタイヤ28の中心位置が略一致した状態(センタリング状態)になっているので、略均等配置された当接部材26(第2当接部材76)は、ビード部(開口部100)の内径を全周に渡りほぼ均等に押圧する。つまり、タイヤ28に部分的な変形を生じさせることなく、タイヤ28をしっかりと把持することが可能になる。
図12は、チャック部本体38のベースプレート68が図11に示す第2姿勢への移行を完了したあと、当接部材26がタイヤ28の幅方向に拡張する様子を説明する模式図である。図12の場合、紙面右側にチャックベースプレート54(チャック部38a)が支持する当接部材26(第1当接部材74、第2当接部材76)が示され、紙面左側にチャックベースプレート94(チャック部38b)が支持する当接部材26(第1当接部材74a、第2当接部材76a)が示されている。また、図面の簡略化のため当接部材26の本体部78のテーパ部は図示を省略している。当接部材26は本体部78の一端にフランジ部80を有しているので、本体部78をビード部102を構成するタイヤ28の内側のビードトウ102aとタイヤ28の外側のビードヒール102bのうちビードトウ102aに当接させることにより、容易にフランジ部80をビード部102におけるタイヤ28の幅方向内側に当接することができる。そして、第2駆動機構として機能する幅拡張アクチュエータ48及び駆動シャフト48a(図2参照)により、第1当接部材74a及び第2当接部材76aを支持するチャックベースプレート94(図8参照)をチャックベースプレート54から離間させる。その結果、図12に示すように、チャックベースプレート54が支持する第1当接部材74及び第2当接部材76と、チャックベースプレート94が支持する第1当接部材74a及び第2当接部材76aとは、相対的に離間して、タイヤ28をその幅方向に拡張する。なお、ビード部102の内部には、スチールワイヤ等を束ねたビードワイヤ102cが存在するので、フランジ部80の大きさを適宜選択することにより、ビード部102のビードトウ102aとフランジ部80との係合を安定させて、スムーズな拡張動作を実現することができる。
上述のように、タイヤ把持装置16は、タイヤ28を第1当接段階、第2当接段階の2段階でセンタリングしながら把持し、その把持状態を維持したままタイヤ幅方向に拡張している。その結果、把持するタイヤ28は、当該タイヤ28の中心位置を基準としてほぼ均一な押圧力(把持力)で半径方向外側に向かってバランスよく支持される。そして、把持動作による部分的な変形(歪み)が抑制できる。また、タイヤ28のサイド面は、自重により形状が変形して同一種類のタイヤ28でも形状にばらつきが生じて検査精度に影響する場合がある。本実施形態のチャック部本体38の場合、当接部材26の径方向の把持姿勢のままタイヤ幅方向に拡張することで、タイヤ28のサイド面の湾曲度を矯正することができる。そして、設定値までタイヤ28の幅を拡張することで、検査ユニット18による測定条件の統一及び検出面(検査面)の状態の均一化を行うことができる。その結果、検査ユニット18が撮影した検査画像(タイヤ画像)へのノイズ混入が低減可能となり、検査精度の向上に寄与できる。
図13は、当接部材26による把持/拡張が完了したタイヤ28を検査ユニット18による検査のためにチャック部本体38と共に回転させている状態を示す図である。タイヤ28に対する当接部材26による把持/拡張が完了した場合、クラッチ部44(図9参照)は、接続状態に切り替えられ、把持/回転アクチュエータ42の駆動力を回転主軸90を介してチャックベースプレート94及びチャックベースプレート54に伝達する。その結果、チャック部本体38は把持状態を維持したままタイヤ28を所定の速度で、例えば矢印R方向に回転することができる。検査ユニット18を構成する例えば3台の撮影部(撮影装置)は、回転するタイヤ28のトレッド面や両サイド面を撮影して、タイヤ28の形状や表面傷、汚れ等に関する検査を実行する。なお、タイヤ28の内面には、スプライスやプラダーとよばれる段差や模様が存在する。そのため、例えばチャック装置の把持部自体をタイヤ回転の駆動源とする方式の場合、スプライスやプラダーの部分を把持部が通過するたびに振動が生じる虞がある。つまり、その振動が検査画像の品質を低下させてしまう場合がある。一方、本実施形態のチャック部本体38は、タイヤ28を把持して、その把持状態を維持したまま全体として回転するので、スプライスやプラダーに起因する振動が発生しない。この点においても検査品質や精度の向上に寄与できる。
上述したように、チャック部本体38において、タイヤ28と直接接触するのは当接部材26である。タイヤ28は繊維や金属線を含む平ゴム材料を巻くことにより円環形状を形成するが、開放端部、例えばビード部の先端に「バリ」が残る場合がある。このバリが当接部材26に当接すると、把持姿勢がばらつく原因になる可能性がある。そこで、本実施形態の当接部材26は、図14に示すように、ビード部の先端にバリが存在していた場合に、そのバリを受け入れる(収容する)窪み部を形成している。窪み部としては、本体部78の側面であるテーパ部78aより小径とする小径部78bとすることができる。本体部78に窪み部を設けた場合、ビード部の端面の大部分は本体部78のテーパ部78a(大径部分、非窪み部)に当接する。一方、ビード部の端面(タイヤ径方向端部)から突出したバリは、小径部78bの窪み部に嵌り込むことにより、ビード部の端面と本体部78の側面部分との当接に影響しないようになる。また、図14のように小径部78bを設けることにより、ビード部のバリの受入効果を向上すると共に、フランジ部80によりタイヤ28を幅方向に拡張する場合の係合強度を向上させ、幅拡張動作の信頼性の向上に寄与することができる。なお、テーパ部78aを形成する場合、テーパ角度は、例えば5°〜9°程度が望ましいことが種々の試験により確認できている。このようなテーパ角度のテーパ部78aを設けることで、ビード部の先端をスムーズにフランジ部80の位置に導くことができる。
図15は、ビード部と当接部材26との当接状態を説明する説明図である。なお、図15において、図14の小径部78bは省略している。ところで、タイヤ28の種類によってビード部102の形状は種々存在する。本実施形態において、ビード部102のバリを受け入れるテーパ部78aは、タイヤ28の種類の違いに起因するビード部102先端部の形状の違いによる不整合も吸収し確実な係合及び把持を実現することができる。なお、当接部材26は、タイヤ28の種類に拘わらず同一で、テーパ部78aの形状も同じであってもよいし、把持するタイヤ28の種類に対応させてテーパ角度を変更してもよい。この場合、ビード部と当接部材26の当接状態をより密着させることが可能になり、把持性能を向上させることができる。
本実施形態の検査ユニット18は、光照射部によりタイヤ28を照明しながら撮影部でタイヤ28の表面を撮影している。この場合、光照射部は、例えばレーザライトシートを用いることができる。この場合、タイヤ28のみにスポット的に照明を行うことは困難であり、タイヤ28以外の部分、例えばタイヤ28と直接接触する当接部材26等にもレーザライトシートが当たってしまう。その結果、当接部材26等で反射した反射光がタイヤ28の撮影時に撮影領域に入り込む可能性がある。撮影画像に反射光が混入していた場合、ノイズとなる。そこで、本実施形態の場合、図16に示すように、当接部材26の本体部78の表面に反射抑制処理を施している。反射抑制処理は、例えば黒色クロムめっき等を用いた表面処理が利用できる。当接部材26に反射抑制処理を施すことにより、検査ユニット18が撮影する検査画像に反射光に起因するノイズが混入することが軽減され、検査精度の維持、向上ができる。なお、反射抑制処理は、黒色クロムめっき等に限らず反射抑制ができる塗料の塗布や皮膜の形成、表面加工等により乱反射を抑制する処理を施しても同様の効果を得ることができる。反射抑制処理は、当接部材26の全体(本体部78の側面及びフランジ部80が接続されていない上面及びフランジ部80)に施してもよいが、フランジ部80は、タイヤ28のビード部の内側に隠れてしまうので、本体部78部分(側面及び上面)のみに施してもよい。
図17には、当接部材26の別の実施形態が示されている。前述したように、当接部材26のうち第1当接部材74は、第1当接段階において、ビード部と第1当接部材74とが相対移動許容状態で当接させることにより、応力集中によるタイヤ28の変形発生を抑制するように構成している。そこで、本実施形態の第1当接部材74は、図17に示すように、回転自在に構成された第1当接部材74の本体部78の表面に回転誘導加工を施している。回転誘導加工としては、ビード部が当接する本体部78の側面部に例えば図17に一例として示すような第1当接部材74の自転方向と直交する方向の凹凸溝を形成することができる。また、回転誘導加工は、不規則な凹凸部を形成したり、表面荒さを高める処理(表面の滑らかさを低下させる処理や、ゴム材等の樹脂等の被覆による滑らかさの低下処理)を施してもよい。なお、凹凸溝や凹凸部は、本体部78の形成時に同時に設けてもよいし、本体部78の形成後の後加工で設けてもよい。また、第1当接部材74の本体部78に回転誘導加工を施すことにより、第1当接部材74が確実に自転するので、第2当接部材76が所定タイミング(タイヤ28のセンタリング完了前)にビード部に向かって揺動(当接)してしまうことが抑制できる。なお、第1当接部材74の本体部78に対して回転誘導加工を施した場合、加工の種類によっては、光照射部等の光が当たった場合に乱反射を起こす可能性がある。つまり、検査画像のノイズの原因になる可能性がある。そこで、図15に示すように、実験等によりビード部102と第1当接部材74の本体部78との接触領域Pを予め確認しておき、その接触領域Pのみに回転誘導加工を施し、他の部分(第1当接部材74の端面Qやフランジ部80)には、反射抑制処理を施すようにすることが望ましい。
次に、タイヤ検査装置10によるタイヤ28の検査手順を図1及び図18、図19を用いて説明すると共に、図20〜図25を用いて、チャック部本体38によるタイヤ28の把持手順を説明する。なお、タイヤ検査装置10は、図1の状態からチャックユニット20を90°下向きに旋回させて、チャックユニット20の下側のチャック部38a(チャックベースプレート54)が停留ステーション14の搬送面に対向する検査開始姿勢でタイヤ28の受け入れを待つものとする。
タイヤ検査装置10の制御部は、起動と共にCPUがROMに記憶された制御プログラムを読み出しRAM上で実行することで、以下の制御を実行する。タイヤ検査装置10の制御部は、停留ステーション14の周辺に配置されたセンナ(不図示)からの信号に基づき、検査対象のタイヤ28が前工程から停留ステーション14のタイヤ把持位置に到達したか否か判定する処理を実行する(S100)。タイヤ28がタイヤ把持位置に到達していない場合(S100のNo)、一旦このフローを終了し、タイヤ28がタイヤ把持位置に到達するのを待つ。S100において、タイヤ28がタイヤ把持位置に到達したことがセンサからの信号によって確認できた場合(S100のYes)、制御部は図20に示すように、下側のチャック部38a(チャックベースプレート54)の把持位置調整を行う処理を実行する(S102)。なお、この調整は、チャックベースプレート54の支持する当接部材26(第1当接部材74)が、停留ステーション14の停留面側のビード部102のビードトウ102a(ビード部102のうちタイヤ28の内側の開放端部)と当接することを可能にする調整である。この調整は、昇降機構22によりチャックユニット20全体を停留ステーション14の停留面に向かって移動させることで実行する。このときの移動制御量は、チャックベースプレート54から停留ステーション14の停留面に対する距離や下側(停留ステーション14側)のビード部102に対する距離を検出して実行してもよいし、予め試験等によって定めた停留ステーション14の停留面までの降下距離で制御してもよい。続いて、制御部は、図21に示すように、上側のチャック部38b(チャックベースプレート94)の把持位置調整を行う処理を実行する(S104)。なお、この調整は、チャックベースプレート94の支持する当接部材26(第1当接部材74a)が停留ステーション14の停留面から遠い側のビード部102のビードトウ102a(ビード部102のうちタイヤ28の内側の開放端部)と当接することを可能にする調整である。この調整は、幅拡張アクチュエータ48によりチャックベースプレート54に対してチャックベースプレート94を離反させる(タイヤ28の幅方向に拡張させる)ことにより実行できる。このときの拡張制御量は、検査対象のタイヤ28の幅方向に対向するビード部102の間隔を予め測定しておくことで決定することができる。また、センサ等によりビード部102のビードトウ102aの位置を検出して拡張制御量を定めてもよい。
続いて、図22に示すように、チャック部38a(チャックベースプレート54)及びチャック部38b(チャックベースプレート94)の当接部材26を第1当接段階に移行させる。つまり、図10の状態になるように、当接部材26の本体部78を第1拡径位置に拡径させる(S106)。そして、第1当接部材74(74a)とビード部102とを相対移動許容状態で当接させて、タイヤ28のセンタリングを実行する(センタリング工程)。第1拡径位置への移動は、把持/回転アクチュエータ42により第1リンクプレート58を回転制御することによって実行する(S108のNo)。制御部は、第1当接部材74(74a)が第1拡径位置に到達したと見なした場合(S108のYes)、言い換えれば、タイヤ28のセンタリングが実行できたと見なした場合、当接部材26の当接状態を第2当接段階に移行させる。つまり、制御部は、当接部材26の本体部78とビード部102(タイヤ径方向端部)との相対移動を終了させるように、第2当接部材76(76a)を第1拡径位置に移動させる処理を実行する(S110)。この場合、制御部は、把持/回転アクチュエータ42により第1リンクプレート58をさらにリンク拡径方向に回転させる処理を実行する。前述したように、第2当接部材76(76a)はビード部102に対して非相対移動状態で当接するので、両者間の相対移動が終了する。その結果、タイヤ28は、チャック部本体38に対してセンタリングが行われた状態で、第2当接部材76(76a)によって仮固定(仮把持)された状態になる(仮固定工程)。なお、当接部材26の第1拡径位置への移動は、タイヤ28の把持を目的とするものではなく、チャック部本体38に対してタイヤ28をセンタリングすることを主な目的としている。したがって、把持/回転アクチュエータ42の制御量は、タイヤ28を最終的な把持力で把持する場合の制御量より小さい。第1拡径位置への移動の完了は、実際の第1当接部材74,74aの移動量や第2当接部材76,76aの移動量によって検出してもよい。また、把持/回転アクチュエータ42等におけるトルク値によって検出してもよい。トルクに基づいて移動量を制御する場合、トルクが例えば6〜8kgfに到達した場合に、当接部材26が第1拡径位置に移動を完了したと見なすことができる。
続いて、タイヤ検査装置10の制御部は、径方向に拡径した当接部材26によってタイヤ28を仮把持した状態(センタリング状態)で、チャック部38b(チャックベースプレート94)の当接部材26のフランジ部80を上側のビード部102のビードトウ102aに押し付ける処理を実行する(S112)。つまり、図23に示すように、幅拡張アクチュエータ48の駆動力によりチャックベースプレート54からチャックベースプレート94を所定距離離間させる上側のチャック部38bの拡張工程を実行する。チャック部38b(チャックベースプレート94)を引き上げることによりタイヤ28の自重が作用してビード部102のビードトウ102aが第1当接部材74a及び第2当接部材76aに形成された窪み部(テーパ部78a、小径部78b)に押し込まれる。つまり、タイヤ28の幅方向の相対的な拡張動作と共に当接状態(把持状態)の向上を行う。この場合、チャック部38bの第1当接部材74aのフランジ部80及び第2当接部材76aのフランジ部80によるタイヤ幅方向(ビード幅方向)の拡張によって、タイヤ28は、停留ステーション14から「浮く」状態に近づく。その結果、タイヤ28の接地面積が減少すると共に自重による変形が緩和されるが、チャック部38aの第1当接部材74の本体部78及び第2当接部材76の本体部78の当接状態は維持されているので、タイヤ28のセンタリング状態は維持できる。
次に、タイヤ検査装置10の制御部は、チャック部38a(チャックベースプレート54)の当接部材26のフランジ部80を下側のビード部102のビードトウ102aに押し付ける処理を実行する(S114)。この場合、図24に示すように、昇降機構22(図1参照)を用いてチャックユニット20全体を所定量だけ、停留ステーション14に向かって降下させる下側のチャック部38aの拡張工程を実行する。チャック部38a(チャックベースプレート54)を押し下げることによりビード部102のビードトウ102aが第1当接部材74及び第2当接部材76に形成された窪み部(テーパ部78a、小径部78b)に押し込まれる。つまり、幅方向に拡張されたタイヤ28のビード部の状態を維持(拡張状態の維持)したまま当接状態(把持状態)の向上を行う。この場合、チャック部38bの第1当接部材74a及び第2当接部材76aの窪み部(テーパ部78a、小径部78b)にビード部102のビードトウ102aが嵌り込んでいるので、当接状態は維持される。このように、拡張工程では、一対のチャック部38a,38bをそれぞれタイヤ28の幅方向外側に移動させて、フランジ部80でビード部102のビードトウ102a(タイヤ幅方向内側端部)をタイヤ28の幅方向外側に押し広げる。
上述したように、ビード部102のビードトウ102aを当接部材26の本体部78の窪み部(小径部78b)に押し込むことにより、当接部材26による径方向外側への把持力(押圧力)は僅かであるが低下する。また、窪み部への嵌り込み状態のばらつきによる把持力のばらつきが発生している可能性もある。そこで、制御部は、把持動作の最終段階として、図25に示すように、再度当接部材26をタイヤ28の径方向外側に押圧する処理を実行する。つまり、最終的に必要となる把持力を例えば10kgfとした場合、それより大きな把持力(例えば14kgf)で一旦把持して、その後最終的に必要な把持力まで把持力を低下させることで、把持力の安定化を図る。具体的には、最終的に必要となる把持力を発生する第2拡径位置(第1拡径位置より大径の第2拡径位置)よりさらに大径の第3拡径位置まで当接部材26を一旦移動する(S116)。第3拡径位置への移動は、把持/回転アクチュエータ42により第1リンクプレート58を回転制御することによって実行する(S118のNo)。第3拡径位置に移動したか否かは、当接部材26の移動量または把持/回転アクチュエータ42等の制御トルクによって判定することができる。制御部は、当接部材26が第3拡径位置に到達したと見なした場合(S118のYes)、当接部材26の当接状態を第2拡径位置に縮径する処理を実行する(S120)。制御部は、第2拡径位置に縮径が完了するまで把持/回転アクチュエータ42を制御し(S122のNo)、第2拡径位置への縮径の完了が、当接部材26の移動量や制御トルクによって確認できた場合(S122のYes)、タイヤ28を撮影位置に移動する処理を実行する(S124)。
把持したタイヤ28の撮影位置への移動は、昇降機構22でチャックユニット20を上昇させつつ、旋回機構24(図1参照)によりチャックユニット20を90°旋回させることにより実行する。制御部は、タイヤ28の撮影位置への移動をセンサ等により確認した場合、クラッチ部44を接続状態に切り替え、把持/回転アクチュエータ42の駆動力によりチャック部本体38を所定速度で回転させる処理を実行する(S126)。そして、検査ユニット18は、回転するタイヤ28に光照射部による検査光を照射すると共に、撮影部によりタイヤ28のトレッド面及び両サイド面を撮影する(撮影工程;S128)。タイヤ検査装置10は、撮影したタイヤ28のトレッド面及び両サイド面の検査画像を所定の手順にしたがい解析して、タイヤ28の良否を検査する(検査工程;S130)。
タイヤ28の良否判定等の検査終了後または、その検査と同時進行で、制御部は、クラッチ部44を切断状態に切り替える。そして、昇降機構22によりチャックユニット20を下降させつつ、旋回機構24によりチャックユニット20を90°旋回させて、タイヤ28を停留ステーション14のタイヤ停留位置に復帰させる(S132)。そして、タイヤ28が停留ステーション14に着地したことをセンサ等で確認した後、把持/回転アクチュエータ42により当接部材26を図3に示す最小縮径位置まで縮径させてタイヤ28を解放する(S134)。
チャックユニット20から解放されたタイヤ28の検査結果が良品である場合、タイヤ検査装置10の制御部は、停留ステーション14から下流側の良品搬送コンベアにタイヤ28を送り出す処理を実行する。一方、検査の結果、良品条件を満たさない場合、タイヤ検査装置10はエラー表示灯を点灯させると共に、良品搬送コンベアとは異なる排出コンベアにタイヤ28を送り出す処理を実行する。なお、検査結果は、良否に拘わらず製品データとして管理装置へ転送されることが望ましい。また、不要品に関する検査結果は、逐次タイヤ検査装置10に備えられた表示装置1002(図1参照)に表示するようにしてもよい。
このように、本実施形態のタイヤ把持装置16を搭載するタイヤ検査装置10によれば、タイヤ28のビード部102のビードトウ102a(ビード部102のうちタイヤ28の内側の開放端部)に当接部材26を当接して把持する場合に、タイヤ28の歪みを軽減または抑制可能になる。その結果、タイヤ28の把持による歪みや振動に起因するノイズの発生が抑制され、タイヤ28の検査精度の向上ができる。
なお、上述の実施形態において、チャック部本体38のチャックベースプレート54やチャックベースプレート94に搭載される当接部材26は、自転タイプの第1当接部材74と、固定タイプの第2当接部材76で構成される例を示した。他の実施形態においては、図26に示すように、当接部材110を1つで構成してもよい。なお、当接部材110以外のリンク機構52やチャックベースプレート54の構成は、図11等で説明したものと実質的に同じであるため、リンク機構52やチャックベースプレート54等の説明やその動作に関する説明は省略する。図26に示す当接部材110はブレーキ付きの回転自在な本体部を有する。ブレーキは、例えば電磁ブレーキ等用いることができるが、それに限定されない。当接部材110を用いる場合の第1当接段階では、ブレーキを解放して当接部材110の自転を許容して相対移動許容状態を実現する。すなわち、前述した第1当接部材74(74a)と同様に機能する。一方、第2当接段階では、当接部材110はブレーキ力を発生させて、自転を妨げて非相対移動状態を実現する。すなわち、前述した第2当接部材76(76a)と同様に機能する。その結果、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、他の実施形態では、図11等で説明した当接部材26と同様に異なる機能を有する第1当接部材と第2当接部材を有する。この場合、第1当接部材及び第2当接部材は、揺動部材であるベースプレート68に固定されている。すなわち第1当接部材は自転機構を有さない。それに代えて、非回転構造の第1当接部材は、相対移動許容状態を実現するために、非回転構造の第2当接部材の表面部の停止摩擦係数より小さな静止摩擦係数の表面部を備える。すなわち、非回転構造の第1当接部材は、第1当接段階において、ビード部に対して滑ることで相対移動許容状態を実現して、押圧時の応力集中を緩和してタイヤ28の部分的な変形(歪み)を抑制する。非回転構造の第1当接部材の表面部より静止摩擦係数が大きい非回転構造の第2当接部材は、ビード部に対して滑ることなく非相対移動状態で接触して、所望の把持力を実現する。なお、非回転構造の第1当接部材及び第2当接部材の静止摩擦係数は、各当接部材の表面部の表面処理によって適宜選択できる。例えば、表面荒さの調整や表面被覆材料の調整で静止摩擦係数を変化させることができる。
また、上述した実施形態では、当接部材26の外形が円錐台である場合を示した。これは、検査対象のタイヤ28のインチサイズが変更され、ビード部102の開放端部の曲率が変化する場合でも当接部材26との接触状態が変化し難い形状として円錐台を例示した。しかし、当接部材26の外形形状は、これに限定されず、第1当接部材は、ビード部との間で良好な相対移動許容状態を形成できる形状であればよい。同様に、第2当接部材は、ビード部との間で良好な非相対移動状態を形成できる形状であればよい。
また、本実施形態では、チャックベースプレート54及びチャックベースプレート94がそれぞれ備えるリンク機構52の数として、十分な効果を得ることができると共に、構造の理解のし易さの観点から4セットで構成する例を示したが、リンク機構52の数は適宜選択可能である。リンク機構52の数は多い方が拡径時の押圧力の分散効率がよく、タイヤ28の把持時の歪み抑制効果が向上できる。その一方でチャックベースプレート54(94)に配置するリンク機構52が増加すると、個々のリンク機構52が小型化され剛性が低下し、装置の耐久性が低下してしまう場合がある。逆に、載置するリンク機構52の数を減らせば、個々のリンク機構52の大型化が可能で剛性の確保が容易になる。その反面、押圧力の分散効率が低下し把持時の歪み抑制効果が低下する場合がある。したがって、リンク機構52の数は、把持時の歪み抑制効果と耐久性等を考慮して選択することが望ましい。
また、本実施形態では、当接部材26の拡縮動作をリンク機構52を用いて実行する例を示した。リンク機構52の場合、把持/回転アクチュエータ42の駆動に対して応答性がよく、スムーズな拡縮動作を実現できるという利点を有するが、他の機構を用いて当接部材26の拡縮動作を実現してもよい。例えば、歯車機構を用いて当接部材26の拡縮動作を実現してもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、リンク機構52の構成も、当接部材26の拡縮ができれば適宜変更可能であり、同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、クラッチ部44を用いることにより、把持/回転アクチュエータ42のみで当接部材26の拡縮動作と、チャック部本体38全体の回転動作を実現する例を示したが、当接部材26の拡縮動作と、チャック部本体38の回転動作を別々のアクチュエータで実現してもよい。
本実施形態のタイヤ把持装置16は、一例として、チャック機構と駆動機構を含む。チャック機構は、一例として、タイヤ28のビード部102の開放端部に当接可能で、第1当接段階で開放端部の当接面と相対移動許容状態となり、第1当接段階に続く第2当接段階で当接面と非相対移動状態となる当接部材26を複数個円周状に配置したチャック部本体38をタイヤ28の幅方向に一対で備える。また、駆動機構は、一例として、当接部材26をタイヤ28の径方向に移動させる第1駆動機構と、一対のチャック部本体38をタイヤ28の幅方向に移動させる第2駆動機構とを含む。この態様によれば、一例として、タイヤ28のビード部102の開放端部に当接部材26を当接して把持する場合に、タイヤ28の歪みを軽減または抑制できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の当接部材26は、一例として、第1当接段階で当接面に当接して相対移動許容状態を実現する第1当接部材74(74a)と、第2当接段階で第1当接部材74(74a)に続いて当接面に当接して非相対移動状態を実現する第2当接部材76(76a)とを備えてもよい。この態様によれば、一例として、相対移動許容状態を実現する第1当接部材74(74a)が最初に当接して、続いて、非相対移動状態を実現する第2当接部材76(76a)が当接するので、タイヤ28の歪みの軽減または抑制を効果的に実現できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の第1当接部材74(74a)と第2当接部材76(76a)は、一例として、揺動部材(ベースプレート68)に支持される。そして、揺動部材(ベースプレート68)は第1当接部材74(74a)が第2当接部材76(76a)より先行して当接面と当接する第1姿勢と、第2当接部材76(76a)が当接面と当接する第2姿勢とを取り得るようにしてもよい。この態様によれば、相対移動許容状態で当接する第1当接部材74(74a)が、非相対移動状態で当接する第2当接部材76(76a)より先に当接面に当接し、タイヤ28のセンタリングを行い、それに続いて第2当接部材76(76a)により把持を行う。その結果、タイヤ28の歪みの軽減または抑制が効果的に実現できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の第1当接部材74(74a)は、一例として、相対移動許容状態を実現するための自転機構を備えてもよい。この態様によれば、一例として、第1当接部材74(74a)は当接面を周方向にスムーズに相対移動し、押圧時の応力集中を効果的に緩和してタイヤ28の歪みの軽減または抑制が実現できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の本体部78は、一例として、表面に回転誘導加工が施されてもよい。この態様によれば、一例として、回転自在に構成された第1当接部材74(74a)の相対移動許容状態を確実に形成することができる。また、第1当接部材74を確実に回転させることにより、第1当接部材74の当接に続く第2当接部材76の当接が所定タイミングより前(タイヤ28のセンタリング完了前)にビード部に向かって揺動(当接)してしまうことが抑制できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の当接部材26は、一例として、ビード部102におけるタイヤ径方向端部に当接する本体部78と、当該本体部78に連結されて前記ビード部102におけるタイヤ幅方向内側端部に当接するフランジ部80と、を有してもよい。この態様によれば、一例として、ビード部102を本体部78で押圧すると共に、フランジ部80にビード部102が引っ掛かることにより本体部78での押圧を安定化させることができる。また、フランジ部80によりタイヤ28の幅方向の拡張をスムーズかつ効果的に行うことができる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の本体部78は、一例として、フランジ部80との接続側の端部領域にタイヤ径方向端部を受け入れる窪み部(小径部78b)を有してもよい。この態様によれば、一例として、本体部78は、ビード部102の先端をスムーズにフランジ部80の位置に導くことができる。また、窪み部は、ビード部102の先端に例えば「バリ」が存在する場合でも、その「バリ」を確実に受け入れ、ビード部102の把持安定性の向上に寄与できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の本体部78は、一例として、表面に反射抑制処理が施されてもよい。この態様によれば、当接部材26からの反射光が抑制可能になり、例えば検査のために撮影した検査画像に当接部材26からの反射光がノイズとして含まれてしまうことが抑制できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の第1当接部材74(74a)は、一例として、相対移動許容状態を実現するために第2当接部材76(76a)の表面部の静止摩擦係数より小さな静止摩擦係数の表面部を備えてもよい。この態様によれば、一例として、自転機構を備えない容易な構成により、第1当接部材74(74a)は当接面を周方向にスムーズに相対移動し、押圧時の応力集中を効果的に緩和してタイヤ28の歪みの軽減または抑制が実現できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の駆動機構は、一例として、把持/回転アクチュエータ42(駆動源)からの動力を把持動作力伝達状態と回転動作力伝達状態とに切り替えるクラッチ部44を備えてもよい。把持動作力伝達状態は、例えば、把持/回転アクチュエータ42からの動力を、当接部材26によりタイヤ28を把持するために伝達する状態である。また、回転動作力伝達状態は、例えば、把持/回転アクチュエータ42からの動力を、当接部材26によりタイヤ28を把持した姿勢で当該タイヤ28を回転軸周りに回転させるために伝達する状態である。この態様によれば、一例として、当接部材26によりタイヤ28を把持するための動力と、当接部材26によりタイヤ28を把持した姿勢で当該タイヤ28を回転軸周りに回転させるための動力の切り替えが可能で、駆動源の共用化ができる。その結果、タイヤ把持装置16の小型化やコスト低減に寄与できる。
また、本実施形態のタイヤ検査装置10は、上述したタイヤ把持装置16と、タイヤ28の側面を少なくとも含むタイヤ画像を撮影する撮影部と、タイヤ画像に基づきタイヤの表面検査を実行する検査部と、を備える。この態様によれば、歪みが抑制された状態で把持されたタイヤ28の品質管理(形状検査や表面検査等)や生産管理(型番やロッドの確認等)のための処理が実行できる。その結果、検査精度の向上ができる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法は、一例として、センタリング工程と、仮固定工程と、拡張工程と、把持工程とを含む。センタリング工程は、一例としてビード部102のタイヤ径方向端部に本体部78を当接させて、当該本体部78がタイヤ径方向端部に対して相対移動許容状態でタイヤ28の径方向外側に向かい第1拡径位置まで移動させて、チャック機構に対してタイヤ28のセンタリングを実行する。仮固定工程は、一例として、本体部78とタイヤ径方向端部との相対移動を終了させて、タイヤ径方向端部に当接部材26を仮固定する。拡張工程は、一例として一対のチャック部本体38をそれぞれタイヤ28の幅方向外側に移動させて、フランジ部80でタイヤ幅方向内側端部をタイヤ28の幅方向外側に押し広げる。把持工程は、一例として当接部材26を第1拡径位置より大径の第2拡径位置まで移動させてタイヤ28を所定把持力で把持する。この態様によれば、一例として、タイヤ28の径方向の押圧把持をタイヤ28の歪みを抑制しつつ実現できる。また、タイヤ28の幅方向の拡張によりタイヤ28の形状の安定化(矯正)をスムーズに行うことができる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法のセンタリング工程は、一例として、当接部材26を構成する第1当接部材74(74a)をタイヤ径方向端部に対して自転または摺動させて相対移動許容状態で当接させてタイヤ28のセンタリングを実行してもよい。この態様によれば、一例として、タイヤ28のビード部102の一部に応力集中が生じることを抑制できる。その結果、タイヤ28を把持するときに歪みが生じすることを抑制できる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法の仮固定工程は、一例として、当接部材26を構成する第2当接部材76(76a)をタイヤ径方向端部に対して非相対移動状態で当接させてタイヤ径方向端部に当接部材26を仮固定してもよい。この態様によれば、一例として、センタリングが完了したタイヤ28の姿勢の維持が可能になる。つまり、センタリング精度の維持が容易になる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法の把持工程は、一例として、所定把持力を発生させる第2拡径位置より大径の第3拡径位置まで拡径した後、第2拡径位置に移行させて所定把持力を発生させるようにしてもよい。この態様によれば、一度、第3拡径位置まで拡径した後、第2拡径位置に縮径することで、把持力のばらつきを解消し、必要とする所定把持力の安定化ができる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法のセンタリング工程または把持工程の少なくとも一方は、一例として、当接部材26を移動させる駆動源の制御トルクまたは当接部材26の移動量に基づいて当接部材26の拡縮移動を制御するようにしてもよい。この態様によれば、一例として容易に高精度の縮径制御ができる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法の拡張工程は、一例として、本体部78においてフランジ部80との接続側に形成された窪み部(テーパ部78a、小径部78b)にタイヤ幅方向内側端部を受け入れて固定するようにしてもよい。この態様によれば、一例として、タイヤ28のビード部102の把持をスムーズかつ安定的に行うことができる。
また、本実施形態のタイヤ把持装置16の制御方法のセンタリング工程及び拡張工程は、一例として、平置きされたタイヤ28に対して一対のチャック部本体38をタイヤ幅方向に移動させて当接位置の調整を実行するようにしてもよい。この態様によれば、チャック部本体38の移動制御をタイヤ28の載置面(停留ステーション14の搬送面)を基準に高精度に実行できる。
また、本実施形態のタイヤ検査方法は、上述したタイヤ把持装置16と、タイヤ28の側面を少なくとも含むタイヤ画像を撮影する撮影部と、タイヤ画像に基づきタイヤ28の表面検査を実行する検査部と、を備える。この態様によれば、歪みが抑制された状態で把持されたタイヤ28の品質管理(形状検査や表面検査等)や生産管理(型番やロッドの確認等)のための処理が実行できる。その結果、検査精度の向上ができる。
なお、上述した各工程の制御は、制御盤(制御部)1000に含まれるROM等の記憶部に記憶されたコンピュータ上で実行可能なプログラムにしたがって実行される。また、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、DVD、磁気ディスク等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例である。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、実施形態の構成や形状は、部分的に他の構成や形状と入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造、種類、方向、角度、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。