JP2016140930A - 研磨シート、研磨具、及び、研磨方法 - Google Patents

研磨シート、研磨具、及び、研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の研磨シートや研磨具で極めて除去困難な、鏡やガラスに付着した水垢、特にウロコ状態となった水垢をも、鏡やガラスに傷を付けることなく、小さな力で容易に除去可能な研磨シートおよび研磨具を提供する。
【解決手段】研磨シートは、一方の面側に表面10bから突出して前記表面10bに平行な上面10a1を有する凸部10aが複数設けられたシート10の、前記凸部10aの上面10a1に第一の砥粒1が、そして、前記表面10bに前記第一の砥粒よりも硬度の高い第二の砥粒3が、それぞれ複数配置された構成を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、研磨シート、研磨具、及び、研磨方法に関する。
浴室、洗面場などに設置されている鏡やガラスの表面、調理用具、水道の蛇口、浴槽、流し台などには、水が使用される環境の影響により、水垢が堆積する。特に、鏡やガラス表面の水垢は炭酸カルシウムや、シリカが主成分であり、非常に強固で除去しにくい。特に、水垢が厚く、かつ、ガラスなどに食い込んでいる、いわゆるウロコ状態となっていると、スポンジによるこすり洗浄では完全除去が困難な場合がある。
市販のサンドペーパーを用いて鏡やガラスの表面の水垢除去を試みることも行われている。しかし、サンドペーパーの砥粒の材質はアルミナ、シリカ、ジルコニアなどであり、これらは鏡やガラスよりも硬度が高いために、水垢除去は可能となるが、鏡やガラスの表面にも傷がついてしまうと云う欠点がある。
特許文献1に記載された技術は、ガラス、シリコンウェーハなどを対象とした研磨工具に関するものである。ここで、この技術による研磨シートの例を図12にモデル的に示した。この例では砥粒1がバインダ層2によりシート状の基材26の一方の面に配置されている。
この技術による研磨シートを用いて、鏡やガラス表面の水垢除去を試みたが十分な効果が得られず、特にウロコ状態となった水垢の除去には非常に大きな力を加えながら研磨(洗浄)しても、その効果は非常に低いものであった。
本発明では、上記従来技術の問題を解決する、すなわち、従来の研磨シートや研磨具では極めて除去困難な、鏡やガラスに付着した水垢、特にウロコ状態となった水垢を、鏡やガラスに傷を付けてしまうリスクを低減しつつ、迅速に除去することを可能にできる研磨シート、研磨具、及び、研磨方法を提供することを目的とする。
本発明の研磨シートは、上記課題を解決するために、一方の面側に表面から突出した凸部が設けられたシートの、前記凸部の上面に第一の砥粒が、そして、前記表面に前記第一の砥粒よりも硬度の高い第二の砥粒が、それぞれ複数配置されていることを特徴とする。
本発明の研磨シートによれば、一方の面側に表面から突出した凸部が設けられたシートの、前記凸部の上面に第一の砥粒が、そして、前記表面に前記第一の砥粒よりも硬度の高い第二の砥粒が、それぞれ複数配置されている構成により、研磨作業時に、凸部の上面に配置された、比較的硬度の低い第一の砥粒が被研磨材に比較的高い接触圧力で接して研磨に寄与するとともに、シートの凸部が変形して、シートの表面部分に配置された比較的硬度の高い第二の砥粒が被研磨材に比較的低い接触圧力で接して研磨に寄与するので、第一の砥粒の研磨能力に、被研磨材に対して傷を付けない範囲で第二の砥粒による研磨能力が加わり、被研磨材に対して傷を付けてしまうリスクを低減しつつ、水垢等を迅速に除去することが可能となる。
一次粒子同士が互いに部分的にかつ空隙が形成された状態で結合している粒状の多孔質体により構成された砥粒のモデル図である。 本発明で用いる、凸部が設けられたシート(基材)の一例を示すモデル図(b)とその製造方法の一例を示すモデル説明図(a)である。 本発明の研磨シートの一例の製造方法の例を示すモデル説明図である。 本発明の研磨具の一例を示すモデル断面図である。 図4に示した研磨具を用いた研磨(洗浄)の効果を示す写真である。 図4に示した研磨具による水垢除去作業の能率向上効果のメカニズムのモデル説明図である。 本発明の研磨シートで用いるシートの他の一例の製造方法の一例を示すモデル説明図である。 図7に示した方法で製造されたシートを用いた本発明の研磨具の一例を示すモデル断面図である。 図8に示した研磨具での、水垢除去作業の能率向上効果のメカニズムのモデル説明図である。 本発明の研磨具の別の実施形態例を示すモデル断面図である。 図10に示した研磨具での、水垢除去作業の能率向上効果のメカニズムのモデル説明図である。 従来技術による研磨具の一例を示すモデル断面図である。
以下、図面に基づいて本発明について説明する。
<第一の実施形態例>
<<第一の砥粒>>
図1は、本実施態様例で第一の砥粒として用いる、一次粒子同士が互いに部分的にかつ空隙が形成された状態で結合している粒状の多孔質体(以下、「粒状の多孔質体」と云う。)により構成された砥粒1のモデル図である。
この粒状の多孔質体は、硬質な無機材料からなる一次粒子1aが凝集して形成された二次粒子が、一次粒子1a同士の結合点に1葉双曲面状(鼓状)のネック1bが形成される温度で加熱処理して得られる粒状の多孔質体である。さらに、その多数の一次粒子1aが部分的に、かつ、それらの間に空隙が形成されている状態で結合している。このような粒状の多孔質体は、例えば特許文献1に提示された方法で製造することができる。
一次粒子1aとしては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム(セリア)、シリカ、アルミナ、酸化チタン、または、それらの混合物を用いることができる。これらは、いずれも高い硬度を有するので、これらから構成された粒状の多孔質は高い研磨効果ないし洗浄効果が得られる砥粒となる。
本実施形態例では、第一の砥粒として、酸化ジルコニウム(ジルコニア)の一次粒子を用い、水を加えてスラリーとした後、スプレードライヤ法により二次粒子を形成し、さらに加熱処理して得た粒状の多孔質体を用いた。加熱処理の際、一次粒子同士の結合力がウロコ状態となった水垢の除去に適したものとなるように処理温度、および、処理時間を設定した。この粒状の多孔質体を砥粒として用いることで、水垢よりも硬い鏡やガラスに傷、スクラッチの発生なしに、高品位な研磨面を得ることができる。
なお、この粒状の多孔質体の粒径を、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて測定した結果、数平均粒径は60μmであり、最大粒径は80μmであることが判った。
本実施形態例では、第一の砥粒として、上記のように粒状の多孔質体を用いたが、本発明は、これに限定されず、後述する第二の砥粒よりも硬度の低い砥粒であれば、第一の砥粒として用いることができる。
<<第二の砥粒>>
本発明で、第二の砥粒として、第一の砥粒の硬度よりも高い硬度を有するものを用いる。例えば、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化セリウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン等、または、それらの混合物を高温で焼結もしくは溶融して得た塊状のセラミックスを、粉砕機により粉砕して得られた粒子を第二の砥粒として用いることができる。また、白色溶融アルミナ等の溶融セラミックスを粉砕して得た粒子も第二の砥粒として用いることができる。さらに、上記の粒状の多孔質体を、ただし、硬度がより高くなるように加熱処理条件を変更したものも用いることもできる。本実施形態例では、白色溶融アルミナを粉砕して得た砥粒を用いた。この第二の砥粒の数平均粒径は10μm、最大粒径は20μmであった。
ここで、上記の粒状の多孔質体の硬度とこの粉砕アルミナの硬度とをモース硬度計により比較したところ、粉砕アルミナの硬度が粒状の多孔質体の硬度に比べて高いことが確認された。
<<研磨シート>>
本発明では基材となるシートとしては、樹脂から構成された、通常、エンボスシートと云われる、凸部が形成されたシートを用いる(なお、本発明では、一般に厚さが200μm以下である「フィルム」も含めて、「シート」と云う。)。
シートの材質としては、一般に用いられる樹脂を用いることができるが、ポリカーボネート、ポリエチエンナフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチエンテレフタレートなどが挙げられ、このうち、ポリエチレンテレフタレートであると、機械的な強度が高く、可撓性にも優れているために好ましい。
シートの厚さとしては、形成される凸部が、研磨作業時に適度に変形して本発明の効果が得られるように、シートの材質を勘案して適宜選択するが、例えば10μm以上100μm以下である。
図2には、一方の面側に複数の凸部が形成されたシートの製造方法の一例を示すモデル説明図(図2(a))と、この方法で製造されたシート10のモデル上面図(図2(b))と、を示す。
すなわち、図2(b)に図示したような、一方の面(以下、「凸部形成面」とも云う。)側に複数の、シート10の表面10bと平行な上面10a1を有する凸部10aがシート10の表面10bから突出して設けられ、他方の面(以下、「裏面」とも云う。)が平面となっているシート10は、例えば、樹脂シートを図2(a)に示したローラ対の間を通過させて製造することができる。
このようなローラ対は、周面に凹凸が形成された凹凸ローラ(図中、上側のローラ)と平面ローラ(図中、下側ローラ)とにより構成されたローラ対である。なお、凸部10a形成の際には、必要に応じてシート、及び/または、少なくとも一方のローラを加熱しながら通過させることができる。
凸部10aの上面10a1のシート10の表面10bからの高さ(以下、「凸部高さ」と云う。)は、用いる砥粒の大きさにもよるが、通常、10μm以上600μm以下、好ましくは40μm以上200μm以下である。
なお、上記では凸部10aの上面10a1は、シート10の表面10bと平行な例を示したが、必ずしも平行である必要はなく、本発明の効果が得られる限りにおいて、上面10a1が表面10bに対して斜めに設けられていてもよい。また、上面10a1が凸面あるいは凹面であってもよく、さらには凹凸を有する曲面等であってもよい。
本発明の研磨シートの基材となるシート10において、シート10全体の面積(100%)に対する凸部10aの上面10a1の総面積は、20%以上80%以下とすることが、水垢を小さい力で容易に除去できるので好ましい。より好ましい範囲は40%以上60%以下である。
本実施形態例では、厚さが100μmのポリエチエンナフタレート製のシートを用い、図2(a)にモデル的に示したようにエンボス加工を施して、凸部10aの上面10a1の、シート10の表面10bからの高さが50μm、シート10全体の面積(100%)に対する上面10a1の総面積が50%のシート(エンボスシート)を得た。
なお、図2では、四角錐台形状の凸部10a同士の間のシート10の表面10b部分が碁盤目状となるように配置された例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、凸部の形状は円、楕円、自由曲線、渦巻状(この場合、1つの凸部だけで本発明の研磨シートを形成することが可能となる。)などや、これらを任意に組み合わせて配置することができる。
次いで、砥粒をシート10の凸部形成面の表面に配置し固定する方法の一例について、図3を用いて説明する。
<<塗布工程1(第二の砥粒の配置:図3(a)参照)>>
図3(a)にモデル的に示すように、表面10bに平行な上面10a1を有する凸部10aが形成されたシート10に、その凸部10aの上面10a1のみをマスキングするマスク20を配置する。次いで表面10bにバインダを塗布してバインダ層2を形成し、その後、第二の砥粒3をバインダ層2上に供給する。第二の砥粒3は、バインダ層2により保持され、その一部がバインダ層2から突出して配置される。その後、マスク20を除去する。
なお、このようなバインダは、ワイヤバーコータ、ダイコータ、コンマコーター、グラビアコータ、ナイフコータなどにより塗布できる。
バインダは、接着性に優れるものであることが、砥粒の脱離やバインダ層自体のシートからの剥離を未然に防ぐために必要である。さらに、浴室や室外の鏡やガラスを研磨する場合には、耐水性があるものであることが必要となる。このようなものとして、例えばウレタン系、ポリエステル系、あるいは、ポリオレフィン系のバインダなどが、挙げられる。
バインダ層2の厚さとしては、バインダ層2から第一の砥粒1の一部が突出する必要があるので、用いる砥粒の大きさにもよるが、2μm以上150μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下である。なお、本実施形態例では、ウレタン系のバインダを用い、バインダ層2の厚さは5μmとした。
<<塗布工程2(第一の砥粒の配置):図3(b)参照>>
シート10に、表面10b部分のみをマスキングするマスク21を配置する。
その後、凸部10aの上面10a1にバインダを塗布してバインダ層2を形成し、上記の第一の砥粒1をバインダ層2上に供給する。第一の砥粒1は、バインダ層2により保持され、その上部がバインダ層2から突出して配置される。その後、マスク21を除去する。
このようにして形成された第一の実施形態例の研磨シートA1では、図3(c)に示すように凸部10aの上面10a1には第一の砥粒1としてのジルコニア製の粒状の多孔質体が複数配置され、シート10の表面10bには第二の砥粒であるアルミナが複数配置されている。
<<研磨具の作製>>
図4には、上記のようにして形成された研磨シートA1の裏面にシート状の裏打ち材23を接着剤(両面テープ等を用いてもよい。)を用いて接着して形成した、本実施形態例の研磨具Aのモデル断面図を示す。
裏打ち材23としては、被研磨材との接触性が低下しないように、弾性体からなり可撓性を有するものであることが好ましく、このようなものとして、例えば天然ゴム、シリコーンゴムなどのゴム系材料や、発泡ポリエチレン、発泡ウレタンなどの発泡材料が挙げられる。
さらに、裏打ち材23として、そのゴム硬度(アスカーC硬度(ASKER C))が40未満のものであることが好ましい。硬度が高すぎると高い研磨能率が得られにくい。
本実施形態例では、三福工業株式会社製の、アスカーC硬度が38で厚さ30mmの裏打ち材23を、上記の研磨シートA1の裏面に接着して本実施形態例の研磨具Aを得た。
<<水垢洗浄効果の確認実験>>
上記で作成した本実施形態例の研磨具Aを用いて、水で濡らしながら、鏡(ガラス)に付着した水垢の除去(以下、「洗浄」とも云う。)を手作業で行った。すると、従来の、すなわち、特許文献1に記載の技術による研磨具を用いた場合に比べて、小さな力で容易に水垢除去が可能となり、作業時間も約1/3となった。さらに、鏡(ガラス)表面には、目視で判るようなスクラッチや傷などの発生もなかった。
図5に、本実施形態例の研磨具Aを用い、水垢が付着したガラス(図中、「洗浄前」。)に対して水垢除去を行ったもの(図中、「洗浄後」。)の、両者による照明器具の反射像を撮影した写真を示す。図5により、本実施形態例の研磨具によれば、スクラッチや傷などの発生なしに、水垢除去が可能となることが理解される。
図6に、本発明の研磨具である研磨具Aを用いた時に得られる水垢除去作業の能率向上効果のメカニズムのモデル説明図(断面図)を示す。
研磨具Aを押圧しながら水垢31が付着したガラス30に接触させて研磨を行うと、研磨具Aの凸部10aが圧縮されて弾性変形する(図6では、シート10の表面10bと本来、平行な上面10a1が凹状に弾性変形している状態がモデル的に示されている。)。このような変形の結果、研磨具Aの上面10a1に配置された第一の砥粒1と、研磨具Aの表面10aに配置された第二の砥粒3と、が同時に、ガラス30ないし水垢31と接触する。
このとき、硬度が相対的に低い第一の砥粒1が高い接触圧力で、そして、硬度が相対的に高い第二の砥粒3が低い接触圧力で、同時にガラス30ないし水垢31に接してそれぞれ水垢31の除去に寄与する。その結果、第一の砥粒1による水垢31の除去効果と、硬度が相対的に高い第二の砥粒3による高い水垢31の除去効果と、を複合させた高い研磨能率向上効果を得ながらも、傷およびスクラッチの発生抑制効果をも同時に得ることができる。
このように、本発明の研磨シートを用いることにより、従来の研磨シートもしくは研磨具では、除去が極めて困難であった、強固なウロコ状態となった水垢を、鏡ないしガラスに傷を付けるおそれを低減させながら、小さな力で容易に除去することが可能となる。
<第2の実施形態例>
図4に示された第一の実施形態例である研磨具Aでは、一方の面に凸部10aが設けられ、他方の面が平面となっているシート10を用いたが、第二の実施形態例では、一方の面に凸部が設けられ、他方の面側の、前記凸部に対応する位置に、凹部が形成されているシートを用いる。
図7に、このようなシート11の製造方法をモデル的に示す。この例で用いるローラ対を構成する2つのローラはともにその周面に凹凸が形成された凹凸ローラである。そして、一方のローラの周面の凸部が原料シートの一方の面に接するときに、他方のローラの周面の凹部が被加工シートの他方の面側に位置するように回転駆動されている。このローラ対により、一方の面に凸部11aが設けられ、他方の面側の凸部11aに対応する位置に凹部11cが形成されているシート11が得られる。本実施態様例ではエンボス加工に用いたローラ対のみ上記研磨具Aと異なり、原料シートとしては同じものを用いて、エンボスシートであるシート11を得た。
図8には、第一の実施形態例の研磨具Aと同様にして、ただし、シート10の代わりにシート11を、また、研磨シート側の面が研磨シートの裏面の凹部11cに対応した凸部24aが設けられている以外は裏打ち材23と同様の裏打ち材24を、それぞれ用いて作製した、本実施形態例の研磨具Bのモデル断面図を示す。この研磨具Bでは、凸部11aの上面11a1には第1の砥粒1が、そして、表面11bには第2の砥粒3が、それぞれバインダ層2により保持されて、これら砥粒の上部がバインダ層2から突出して配置されている。
この研磨具Bを用いて、水で濡らしながら、鏡やガラスに付着したウロコ状態となった水垢の除去を手作業で行った。研磨具Aを用いた場合と同様に、従来の研磨具を用いた場合に比べて,小さな力で容易に水垢を除去でき、作業時間も約1/3となった。さらに、鏡およびガラスの表面には、目視で判るようなスクラッチや傷などは発生しなかった。
この研磨具Bにおいても、図9にその水垢除去作業の能率向上効果のメカニズムをモデル的に示す。図示したように研磨作業時に、シート11の凸部11aが弾性変形する。その結果、比較的硬度の低い第一の砥粒1が比較的高い接触圧力で、比較的硬度の高い第二の砥粒3が比較的低い接触圧力で、同時にガラス30ないし水垢31に接して共に水垢31の除去に寄与する。このため、高い研磨能率を得ながらも、傷およびスクラッチの発生抑制効果を同時に得ることができる。
<第三の実施形態例>
第三の実施形態例として、第二の実施形態例同様に、上記のシート11を用い、ただし裏打ちシートとしては、研磨シート側の面が平面となっている、第一の実施形態例で用いた裏打ち材23を用いて、図10に断面をモデル的に示した研磨具Cを作製した。この研磨具Cでは、シート11と裏打ち材23との間に空隙25が形成されている。
この研磨具Cを用いて、研磨具Aや研磨具Bと同様にウロコ状態となった水垢の除去を手作業で行ったところ、これらの場合と同様に、小さな力で容易に水垢が除去でき、鏡およびガラスの表面には、目視で判るようなスクラッチや傷などは発生しなかった。
なお、この研磨具Cでは、上記のように、研磨具Aや研磨具Bとは異なり、シート11と裏打ち材23との間に空隙25が形成されている。このため、研磨作業持に、研磨具Aや研磨具Bよりも小さい力でもシート11の凸部11aが弾性変形するので、第二の砥粒による水垢除去効果をこれら研磨具Aや研磨具Bよりも得られやすい。
この研磨具Cにおいても、図11にその水垢除去作業の能率向上効果のメカニズムをモデル的に示す。図示したように、研磨作業時に、シート11の凸部11aが弾性変形する。その結果、比較的硬度の低い第一の砥粒1が比較的高い接触圧力で、比較的硬度の高い第二の砥粒3が比較的低い接触圧力で、同時にガラス30ないし水垢31に接して共に水垢31の除去に寄与する。このため、研磨具Cを用いることにより、高い研磨能率を得ながらも、傷およびスクラッチの発生抑制効果をも同時に得ることができる。
<第四の実施形態例(セラミックス焼結体により構成された砥粒を用いる例(その1))>
研磨具Aと同様に、ただし、粉砕アルミナの代わりに炭化ケイ素焼結体を粉砕して得た粒子を第二の砥粒としてを用いて、研磨具Dを作製した。このときの第二の砥粒の数平均粒径は10μm、最大粒径は18μmであった。また、第一の砥粒とした粒状の多孔質体の硬度とこの粉砕炭化ケイ素焼結体の硬度とを比較したところ、粉砕炭化ケイ素焼結体の硬度が粒状の多孔質体の硬度に比べて高いことが確認された。この研磨具Dを用いて、ウロコ状態となった水垢の除去を手作業で行ったところ、研磨具Aを用いた場合と同様に、小さな力で容易に水垢が除去でき、鏡およびガラスの表面には、目視で判るようなスクラッチや傷などは発生しなかった。
<第四の実施形態例(セラミックス焼結体により構成された砥粒を用いる例(その2))>
研磨具Bと同様に、ただし、粉砕アルミナの代わりにジルコニアアルミナ焼結体を粉砕して得た粒子を第二の砥粒としてを用いて、研磨具Eを作製した。このときの第二の砥粒の数平均粒径は20μm、最大粒径は30μmであった。また、第一の砥粒とした粒状の多孔質体の硬度とこの粉砕ジルコニアアルミナ焼結体の硬度とを比較したところ、ジルコニアアルミナ焼結体の硬度が粒状の多孔質体の硬度に比べて高いことが確認された。この研磨具Eを用いて、ウロコ状態となった水垢の除去を手作業で行ったところ、研磨具Bを用いた場合と同様に、小さな力で容易に水垢が除去でき、鏡およびガラスの表面には、目視で判るようなスクラッチや傷などは発生しなかった。
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の研磨シート、研磨具、及び、研磨方法は上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明の研磨シート、研磨具、及び、研磨方法の用途としてもガラスや鏡の研磨用途以外の用途にも用い得る。
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の研磨シート、研磨具、及び、研磨方法を適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明の研磨シート、研磨具、及び、研磨方法の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
1 砥粒(粒状の多孔質体)
1a 一次粒子
1b 1葉双曲面状(鼓状)のネック
10、11 複数の凸部が設けられたシート
10a、11a 凸部
10a1、11a1 上面
10b、11b シートの表面
11c 凹部
23、24 裏打ち材
特開2003−105324号公報

Claims (6)

  1. 一方の面側に表面から突出した凸部が設けられたシートの、前記凸部の上面に第一の砥粒が、そして、前記表面に前記第一の砥粒よりも硬度の高い第二の砥粒が、それぞれ複数配置されていることを特徴とする研磨シート。
  2. 前記第一の砥粒が、一次粒子同士が互いに部分的にかつ空隙が形成された状態で結合している粒状の多孔質体により構成された砥粒であり、かつ、
    前記第二の砥粒が、セラミックス焼結体により構成された砥粒であることを特徴とする請求項1に記載の研磨シート。
  3. 前記第一の砥粒および前記第二の砥粒が、前記シートにバインダを介して配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨シート。
  4. 前記シートの他方の面側の、前記凸部に対応する位置に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の研磨シート。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の研磨シートを有し、かつ、他方の面側にアスカーC硬度が40未満の裏打ち材が配置されていることを特徴とする研磨具。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の研磨シートか、または、請求項5に記載の研磨具を用いて研磨作業を行うことを特徴とする研磨方法。
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