JP4435500B2 - 基板の両面研磨方法および両面研磨用ガイドリングならびに基板の両面研磨装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板を平坦化するための両面研磨方法および両面研磨用ガイドリング並びに両面研磨装置に関し、特に被研磨基板がホトマスクに使用される合成石英ガラス基板である場合の研磨技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
DRAMの高集積化に伴い、微細化の要求は年々高くなっており、種々の技術が検討されている。その中で、リソグラフィ工程でLSI回路パターンをシリコンウエーハに転写する際に使用するホトマスクの精度を向上することも重要な課題の一つである。
【0003】
ホトマスクの原料基板は、一般的には合成石英ガラス基板が使用されている。合成石英ガラス基板の製造工程を簡単に説明すると、四塩化珪素などを原料とするガスと酸水素炎による火炎加水分解によりガラスインゴットを形成する。これらのインゴットを熱溶融させて角形に成型し、さらにそれをスライス、粗研磨から精密な研磨と精度をあげるため数回の研磨を行うことで、基板を得ることができる。その後は、基板上にクロムやモリブデンシリサイドなどを主成分にしたターゲットを用いたスパッタリングにより成膜し、次にレジスト塗布、露光、現像、エッチング等を経てホトマスクを得る。
【0004】
ホトマスク、また、その原料基板である合成石英ガラス基板は、清浄度、スクラッチフリー、平坦度等が求められる。特に、その中の平坦度は露光時の焦点に影響を与えるため重要な項目であり、そのため合成石英ガラス基板、ホトマスクの平坦度をより向上させる技術が求められている。
【0005】
ホトマスク製造における基板の研磨としては、複数枚の基板を両面研磨により研磨するのが一般的に行われてきた。それは、両面研磨は量産に有利である点と、ホトマスクは露光光を透過させるためホトマスク基板の両面にスクラッチ等の欠陥がないことが要求されるが、両面研磨はスクラッチ対策に有効である点が主な理由として挙げられる。
【0006】
ホトマスク用の合成石英ガラス基板の両面研磨方法について説明する。一般に行われる両面研磨方法は、円盤状のガイドリングに形成された保持孔に基板を保持し、スラリーを供給しながら、研磨布が貼付された上定盤および下定盤の間で基板を保持したガイドリングを運動させて、上下定盤の研磨布により基板に研磨荷重をかけつつ、基板の表裏面を同時に研磨する(例えば特許文献1参照)。
【0007】
上記の研磨方法では、基板の表裏両面が同時に研磨される。しかし、図3に示すように、例えば定盤4の研磨布5により研磨される基板Wは、基板の中心部に比べて、斜線部で示す基板周縁部Waが多く削られ、図3に示すような角形基板の場合は特に基板Wの4隅が多く削られる傾向がある。それは研磨時に基板が回転運動する際、基板周縁部は研磨布の弾性などの影響により基板の削れが基板中央部に比べ速く、研磨時間が長くなればなるほど、周縁部が削れて面内平坦性は悪くなる傾向があるからである。
【0008】
すなわち、図4に示すように、研磨時に被研磨基板Wが研磨布5に加圧される際、加圧荷重により被研磨基板Wが研磨布5に沈む。小円で示した箇所のように、研磨布5が研磨荷重を受ける部分と受けない部分の境界部は研磨布の弾性力が大きく働くことから、図3に示す基板Wの内接円の外側に相当する基板周縁部(斜線部)Waの箇所において、研磨布5からの摩擦が大きくなる。特に、被研磨基板Wが角形基板である場合は、被研磨基板Wが回転することにより、斜線部Waは加圧と加圧の開放が連続して起こるため、円形基板よりはるかに研磨布5の弾性力を多く受ける機会が多く、過研磨され平坦度が悪化する。これは、上定盤2の研磨布3と基板Wの上面についても同様である。
【0009】
このため、従来の両面研磨機では、外周削れの傾向が強い。そして、先述した粗研磨から精密研磨と数回の研磨を経ると研磨時間が長くなるため、外周削れによる面内平坦性が悪くなるという問題点がある。そのため、このような基板周縁部の過研磨を回避する方策が望まれている。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−202511号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点に鑑みなされたもので、ホトマスク用合成石英ガラス基板等の両面研磨において、高い平坦度を得ることができる両面研磨方法、両面研磨用ガイドリングおよび両面研磨装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、ガイドリングに形成された保持孔に基板を保持し、スラリーを供給しながら、研磨布が貼付された上定盤および下定盤の間で前記ガイドリングを運動させて、上下定盤の研磨布により基板に研磨荷重をかけつつ、前記基板の表裏面を同時に研磨する基板の両面研磨方法であって、前記研磨の際に、前記ガイドリングによって少なくとも下定盤の研磨布を加圧し、前記ガイドリングから下定盤の研磨布への加圧荷重を、前記基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍として研磨を行うことを特徴とする基板の両面研磨方法である。
【0013】
このように、ガイドリングによって少なくとも下定盤の研磨布を加圧し、ガイドリングから下定盤の研磨布への加圧荷重を、基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍として研磨を行うことにより、下定盤の研磨布と基板が接触する部分の周辺部を加圧することができるので、被研磨基板の周縁部の過研磨を防止することができ、高い平坦度で研磨を行うことができる。
【0014】
この場合、前記ガイドリングによって上定盤の研磨布を加圧し、前記ガイドリングから上定盤の研磨布への加圧荷重は、前記基板と上定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍として研磨を行うことが好ましい。
【0015】
このように、ガイドリングによって上定盤の研磨布と基板が接する部分の周辺部も加圧し、ガイドリングから上定盤の研磨布への加圧荷重を、基板と上定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍として研磨を行うことにより、被研磨基板の表裏両面を高い平坦度で研磨することができる。
【0016】
この場合、前記ガイドリングとして、研磨布を加圧するための弾性体を具備するガイドリングを用いることが好ましい。
このようにガイドリングとして、研磨布を加圧するための弾性体を具備するガイドリングを用いることにより、両面研磨装置の上下定盤の両方の研磨布を加圧することができ、被研磨基板の表裏両面の平坦度を向上させることができる。
【0017】
この場合、前記ガイドリングの研磨布と接触する部位の材質を、前記研磨される基板の材質と同じにすることが好ましい。
このようにガイドリングの研磨布と接触する部位の材質を研磨される基板の材質と同じにすることにより、ガイドリングから出る研磨屑が基板から出る研磨屑と同じ材質となるため、研磨時におけるガイドリングの研磨屑起因によるスクラッチの発生を回避することができる。
【0018】
この場合、前記ガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものを用いて、合成石英から成る基板を両面研磨することが好ましい。
このように、ガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものを用いて、合成石英から成る基板を両面研磨すれば、ガイドリングからは基板と同じ材質の合成石英の研磨屑が生じるため、合成石英基板をスクラッチを生じさせずに高い平坦度で研磨することができる。
【0019】
この場合、ガイドリングの基板保持孔と研磨される基板との隙間を2mm以内とすることが好ましい。
ガイドリングの基板保持孔と研磨される基板との隙間が2mm以内であれば、その隙間で研磨布の弾性力が復活して基板に作用し、基板の周縁部が過研磨されることがなく、ガイドリングが研磨布を加圧することによって平坦度を高める効果が高まるからである。
【0020】
この場合、角形基板を研磨することが好ましい。
本発明の両面研磨方法は、被研磨基板の周縁部の過研磨を効果的に防止することができるため、特に基板の4隅が過研磨され易い角形基板を研磨する際に用いるのが効果的である。
【0021】
また本発明は、基板の表裏面を研磨する際に基板を保持し、上定盤および下定盤の間に配置される両面研磨用ガイドリングであって、少なくとも、研磨される基板を保持する基板保持孔と、前記ガイドリングの表裏面から下定盤または上下定盤に圧力を加える加圧手段を具備するものであることを特徴とする両面研磨用ガイドリングである。
【0022】
このようにガイドリングであって、少なくとも、研磨される基板を保持する基板保持孔と、前記ガイドリングの表裏面から下定盤または上下定盤に圧力を加える加圧手段を具備するものであれば、定盤の研磨布と基板が接する部分の周辺部を加圧して、研磨布の弾性力を抑えて基板周縁部の過研磨を防ぐことができるため、これを用いて両面研磨を行うことにより、高い平坦度で基板を研磨することができる。
【0023】
この場合、前記加圧手段はガイドリング内に内蔵された弾性体から成るものであることが好ましい。
このように加圧手段がガイドリング内に内蔵された弾性体から成るものであれば、上下定盤の研磨布と基板が接する部分の周辺部を加圧して、基板の周縁部の過研磨を防ぎ、被研磨基板の表裏両面を高い平坦度で研磨できるものとなる。
【0024】
この場合、前記ガイドリング内に内蔵された弾性体は、バネまたはゴムから成るものとすることができる。
このように、ガイドリング内に内蔵された弾性体をバネまたはゴムから成るものとすれば、ガイドリングを簡単な構造とすることができ、簡単に加圧荷重を調整することができるものとなる。
【0025】
さらに、前記ガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものであることが好ましい。
このようにガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものであれば、合成石英基板を研磨する際に、ガイドリングから生じる研磨屑と基板から生じる研磨屑が同じ合成石英となり、基板にスクラッチを生じさせずに研磨することができる。
【0026】
また本発明は、基板の両面研磨装置であって、少なくとも、基板保持孔を有するガイドリング、研磨布が貼付された上定盤および下定盤、およびスラリー供給手段を有し、前記基板保持孔内に基板を保持して、スラリーを供給しながら、前記上下定盤間でガイドリングを運動させて、上下定盤により基板に研磨荷重をかけつつ基板の表裏面を同時に研磨するものであり、前記ガイドリングは少なくとも下定盤の研磨布を加圧するものであり、前記ガイドリングから下定盤の研磨布への加圧荷重は、前記基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍であることを特徴とする基板の両面研磨装置である。
【0027】
このように両面研磨装置であって、ガイドリングは少なくとも下定盤の研磨布を加圧するものであり、前記ガイドリングから下定盤の研磨布への加圧荷重は、前記基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍であれば、下定盤の研磨布と基板が接する部分の周辺部を加圧することができ、これによって研磨される基板の周縁部の過研磨を防止し、高い平坦度で研磨できる。
【0028】
この場合、前記ガイドリングは上定盤の研磨布を加圧するものであり、前記ガイドリングから上定盤の研磨布への加圧荷重は、前記基板と上定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍であることが好ましい。
【0029】
このようにガイドリングが上定盤の研磨布も加圧し、ガイドリングから上定盤の研磨布への加圧荷重を、基板と上定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍とするものであれば、上定盤の研磨布と基板が接する部分の周辺部を加圧することができるので、被研磨基板の表裏両面を高い平坦度で研磨することができる。
【0030】
この場合、前記ガイドリングは、研磨布を加圧するための弾性体を具備するものであることが好ましい。
このようにガイドリングが研磨布を加圧するための弾性体を具備するものであれば、上下定盤の研磨布と基板が接する部分の周辺部を加圧して、基板の周縁部の過研磨を防ぎ、被研磨基板の表裏両面を高い平坦度で研磨できるものとなる。
【0031】
この場合、前記研磨布を加圧するための弾性体は、バネまたはゴムから成るものとすることができる。
このように、研磨布を加圧するための弾性体がバネまたはゴムから成るものであれば、ガイドリングを簡単な構造とすることができ、簡単に加圧荷重を所定値に調整することができる。
【0032】
この場合、前記ガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものであることが好ましい。
このようにガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものであれば、合成石英基板を研磨する際に、ガイドリングから生じる研磨屑と基板から生じる研磨屑が同じ合成石英となり、基板にスクラッチを生じさせずに研磨することができるものとなる。
【0033】
この場合、前記ガイドリングの基板保持孔と研磨される基板との隙間が2mm以内であることが好ましい。
このようにガイドリングの基板保持孔と研磨される基板との隙間が2mm以内であれば、その隙間で研磨布の弾性力が復活して基板の周縁部が過研磨されることがなく、ガイドリングが研磨布を加圧することによって平坦度を高める効果が高まるからである。
【0034】
この場合、角形基板を研磨するものであることが好ましい。
本発明の両面研磨装置は、被研磨基板の周縁部の過研磨を効果的に防止することができるため、特に基板の4隅が過研磨され易い角形基板を研磨する際に効果的である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図2は、本発明の両面研磨装置の構造の一例を示す図である。図2(a)に示すように、この両面研磨装置20は、研磨布3が貼付された上定盤2と研磨布5が貼付された下定盤4を具備する。この上定盤2と下定盤4の間には、被研磨基板Wを保持するガイドリング1が単数あるいは複数配置される。上定盤2には、研磨スラリーを供給するためのスラリー供給手段6が単数あるいは複数設けられ、研磨時に上下定盤間にスラリーを供給できるようになっている。
【0036】
図2(a)(b)に示すように、ガイドリング1には基板Wを保持するための基板保持孔11が設けられている。図2(b)に示す、下定盤4の中心部にはサンギア7が配置され、外周部にはインターナルギア8が配置されている。また、ガイドリング1の外周部にも歯車状の刻みが入っており、ガイドリング1を下定盤4上に配置したときに、サンギア7と外周部のインターナルギア8と噛合うようにされている。これにより、下定盤4上にガイドリング1を配置して、その上に上定盤2を合せて上下定盤2,4を回転させると、上下定盤2,4間でガイドリング1が自転および公転する遊星運動をするようにされている。そして、これにより、ガイドリング1に保持された基板Wの表裏面が同時に研磨される。
【0037】
本発明では、少なくともガイドリングが下定盤の研磨布を加圧し、ガイドリングから下定盤の研磨布への加圧荷重を、基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍とする。これによりガイドリングが基板が接する部分の周辺部の研磨布を押すことにより、研磨布の弾性力が抑えられて基板の周縁部にも中央部と同じ研磨荷重がかかることになり、研磨布の弾性力による基板周縁部の過研磨を緩和することができる。ガイドリングの研磨布への加圧荷重は、基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍とする。0.5倍以下の場合は、研磨布への荷重が不十分で、基板の周縁部が過研磨される傾向が強くなる。また、ガイドリングの加圧荷重が高すぎると研磨布の劣化が進み研磨速度が遅くなり、研磨の効果が低下する。従って、0.5〜3倍の範囲内で、研磨布、被研磨基板の材質等により条件を設定すればよい。
【0038】
図1(a)〜(c)は、本発明の両面研磨用ガイドリングの構造と両面研磨に使用されるときの状態を示す図である。図1(a)〜(c)に示すように、研磨時には、ガイドリング1の基板保持孔11に保持された基板Wが、上下定盤2,4の間で所定の研磨荷重をかけられ、表裏面を同時に研磨されることになる。
【0039】
両面研磨において、基板の片面のみ高い平坦度を所望する場合は、図1(a)に示すように、基板Wと下定盤4の研磨布5との研磨荷重に対し、ガイドリング1の重量を調整することで研磨布5への加圧荷重を、研磨荷重の0.5〜3倍の荷重になるようにする。例えば、従来は、ガイドリング1本体は、塩化ビニル等の軽量物を使用し、ほとんどガイドリングでは研磨布に荷重がかからないようになっていたが、本発明では、ガイドリング1内部にはSUSなどの重量物を埋め込み、重量調節をする。これにより、ガイドリング1は下定盤4の研磨布5と基板Wが接する部分の周辺部を上記加圧荷重で加圧し、この部分の研磨布の弾性力を抑えて基板周縁部の過研磨を抑制することができる。
【0040】
ガイドリング1の研磨布5と接触する部位の材質は、被研磨基板Wと同じ材質とすることが好ましく、合成石英ガラス基板を研磨する場合は、合成石英から成るものとする。本発明の場合、ガイドリング自体にも相当の荷重がかかるため、ガイドリングが研磨布や研磨砥粒により研磨され、基板にスクラッチが発生する場合もあり得る。すなわち、研磨屑の材質が研磨される基板と異なると、基板にスクラッチが生じ易い。そのため、ガイドリングの材質は研磨される基板と完全に成分が同一のものが望ましい。例えば、被研磨基板が合成石英ガラス基板であるならば、研磨布接触部位は基板と成分が同じである合成石英ガラスが望ましく、基板とガイドリングの材質を同一とすることにより、研磨時におけるガイドリング起因によるスクラッチの発生や汚染等を回避できる。
【0041】
図1(a)の例では、ガイドリング1の下定盤4の研磨布5との接触する部位は、合成石英部材13となっており、ガイドリング1から生じる研磨屑により、被研磨基板Wにスクラッチが生じないようにされている。なお、図1(a)の例では、合成石英部材13をガイドリング1の下面全面に設けているが、場合によっては、図1(b)に示すように基板Wのスクラッチ発生に大きな影響があると思われる基板W周辺となる基板保持孔11周辺のみに、合成石英部材13を設けることもできる。
【0042】
ガイドリング1の基板保持孔11と被研磨基板Wとの隙間は2mm以内とすることが好ましい。基板保持孔11と被研磨基板Wとの隙間が大きいと、この隙間で研磨布の弾性力が復活し、ガイドリングの加圧により、基板周縁部の過研磨を防止する効果が低くなるおそれがある。
【0043】
図1(a)(b)に示すように、下定盤4の研磨布5にのみ加圧荷重をかける場合は、被研磨基板Wの上面について周縁部の過研磨を防止する効果はない。ホトマスクを用いた露光には、特に成膜表面側の均一性が重要であり、成膜面のみ平坦度を向上させても良いが、よりホトマスクの性能を一層向上させるには、非成膜面である裏面側の平坦度も重要である。そのためには、ガイドリングにて上定盤および下定盤両方の研磨布を加圧して研磨する必要がある。
【0044】
図1(c)は、ガイドリング1の表裏面から上下定盤2,4に圧力を加える加圧手段12を具備する。この例では、加圧手段12として、弾性体であるバネが設けられており、加圧荷重を所定の値に調整することができる。このバネとしては、コイルバネ、圧縮コイルバネ、円錐コイルバネ、薄板バネ、重ね板バネ、皿バネ、空気バネ、流体バネ等を用いることができる。また、バネの他にも弾力性のあるゴムを加圧手段として用いることができる。
【0045】
なお、この例では、上定盤2の研磨布3も加圧することに伴い、ガイドリング1からの研磨屑起因のスクラッチを防止するため、ガイドリング1の上定盤2の研磨布3と接触する部分にも、合成石英部材13が設けられている。
【0046】
このようなガイドリング1が設けられた両面研磨装置20を用い、スラリー供給手段6により、スラリーを供給しつつ上下定盤2,4の間で基板Wを保持したガイドリング1を自転・公転運動させることで、基板Wの表裏両面を同時に研磨することができる。研磨布3,5と基板Wが接する部分の周辺部は、ガイドリングにより研磨荷重の0.5〜3倍となる加圧荷重が加えられるため、基板の周縁部の過研磨を低減でき、平坦度を向上させることができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示すような両面研磨機に、角形合成石英ガラス基板152mm□×6.35mmt4枚をガイドリングの各保持孔に挿入して、研磨機にセットした。なお、研磨布はスエード状のものを用い、研磨砥粒はシリカを用いた。なお、合成石英ガラス基板の平坦度(そり)は0.4〜0.6μmのものを使用した。研磨時間は10分とし、研磨荷重は10kPaとした。
【0048】
なお、ガイドリング本体は塩化ビニル製で厚さ5mmのものを使用し、研磨布接触部(ガイドリング下部)は合成石英ガラスとした。また、ガイドリングの加圧荷重が10kPaになるようにSUSを塩化ビニル板の間に挟んで荷重を調整した。なお、この実施例1では、基板表面を下定盤の研磨布で研磨するようにした。
【0049】
研磨終了後、基板洗浄を実施し、基板のフラット測定及びスクラッチ検査を実施した。なお、この実験は25バッチ、計100枚実施した。測定結果を表1に示す。この表1において、平坦度変化量とは基板面内の高低差をマイナスの絶対値で示したものであり、マイナスの絶対値が大きいほど基板の周縁部が過研磨される傾向が大きいことになる。表1より、実施例1において研磨された基板は、表面の平坦度に優れ、表面スクラッチ数も少ないことがわかる。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例2)
ガイドリング内に弾力性のあるゴムから成る加圧手段を設け、ガイドリングの表裏面から上下定盤に、研磨荷重と同じ10kPaの荷重がかかるように調整した以外は、実施例1と同様の研磨を実施した。なお、研磨布接触部であるガイドリング表裏面とも合成石英ガラスとした。
結果を表1に併記した。表1より実施例2により研磨された基板は、基板の表裏面両方における平坦度に優れ、スクラッチ数も少ないことが判る。
【0052】
(比較例1)
ガイドリングの荷重は、塩化ビニル製にて荷重は2kPa以下した以外は、実施例1と同様の研磨を実施した。
結果を表1に併記した。表1より、比較例1において研磨された基板は、表面および裏面における平坦度が悪く、表面および裏面のスクラッチ数も多いことが判る。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガイドリングにより研磨布と基板が接する部分の周辺部を加圧することにより、研磨される基板の平坦度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の両面研磨用ガイドリングの構造と両面研磨に使用されるときの状態を示す図である。
【図2】(a)(b)は、本発明の両面研磨装置の構造の一例を示す図である。
【図3】従来の両面研磨方法における基板の周縁部が過研磨される様子を説明するための図である。
【図4】従来の両面研磨方法における両面研磨時のガイドリングと基板および研磨布の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…ガイドリング、 2…上定盤、 3…研磨布(上定盤)、 4…下定盤、5…研磨布(下定盤)、 6…スラリー供給手段、 7…サンギア、 8…インターナルギア、 11…基板保持孔、 12…加圧手段、 13…合成石英部材、 20…両面研磨装置、 W…基板、 Wa…基板周縁部(斜線部)。
Claims (7)
- ガイドリングに形成された保持孔に基板を保持し、スラリーを供給しながら、研磨布が貼付された上定盤および下定盤の間で前記ガイドリングを運動させて、上下定盤の研磨布により基板に研磨荷重をかけつつ、前記基板の表裏面を同時に研磨する基板の両面研磨方法であって、前記研磨の際に、前記ガイドリングによって少なくとも下定盤の研磨布を加圧し、前記ガイドリングから下定盤の研磨布への加圧荷重を、前記基板と下定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍になるようにガイドリングの重量を調整しておくことで、前記研磨布と前記基板が接触する部分の周辺部を加圧して研磨を行うことを特徴とする基板の両面研磨方法。
- 請求項1に記載の基板の両面研磨方法であって、前記ガイドリングによって上定盤の研磨布を加圧し、前記ガイドリングから上定盤の研磨布への加圧荷重は、前記基板と上定盤の研磨布との研磨荷重の0.5〜3倍として研磨を行うことを特徴とする基板の両面研磨方法。
- 請求項1または請求項2に記載の基板の両面研磨方法であって、前記ガイドリングの研磨布と接触する部位の材質を、前記研磨される基板の材質と同じにすることを特徴とする基板の両面研磨方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の基板の両面研磨方法であって、前記ガイドリングの研磨布と接触する部位が合成石英から成るものを用いて、合成石英から成る基板を両面研磨することを特徴とする基板の両面研磨方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の基板の両面研磨方法であって、前記ガイドリングの基板保持孔と研磨される基板との隙間を2mm以内とすることを特徴とする基板の両面研磨方法。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の基板の両面研磨方法であって、角形基板を研磨することを特徴とする基板の両面研磨方法。
- 前記ガイドリングの重量の調整は、前記ガイドリングに重量物を埋め込むことによって行うことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の基板の両面研磨方法。
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