JP2016139556A - 固体酸化物形燃料電池装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シャットダウン停止時及びブラックアウト停止時に、燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されることを抑制する。
【解決手段】固体酸化形燃料電池装置1は、燃料電池セル収容容器8と、燃料電池セル収容容器8の外表面を覆うように設けられ、ヒートブリッジ発生部を一部分に有する真空断熱層7と、改質部94と、燃焼部10aと、燃料供給装置38と、水供給装置28と、酸化剤ガス供給装置45と、コントローラ106とを有し、ヒートブリッジ発生部を冷却するように酸化剤ガス及び/又は水が流れる流路が形成されており、真空断熱層7と燃料電池セル収容容器8との間に設けられた第1の補助断熱材131及び第2の補助断熱材132を更に有し、これにより、水及び酸化剤ガスの供給が停止する発電停止モード時に、ヒートブリッジ発生部を介して燃料電池セル収容容器8内の熱が外部に放熱されることを抑制する。
【選択図】図2

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池装置に関し、特に、燃料ガスと酸化剤ガスを反応させることにより発電する固体酸化物形燃料電池装置に関する。
固体酸化物形燃料電池装置(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも呼ぶ。)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤ガス(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で動作する燃料電池である。
従来から、上記のような固体酸化物形燃料電池装置において、燃料電池モジュール内部の熱効率(熱利用率)を高めると共に、燃料電池モジュール外部の補機への熱影響を防止するために、燃料電池モジュール外部への熱の放出を抑制する試みがなされている。その一つとして、燃料電池セル収容容器の周囲を真空断熱する方法、つまり燃料電池セル収容容器の外表面を真空断熱層で覆う方法が知られている。このような真空断熱層を適用する技術が、例えば特許文献1及び2に開示されている。特許文献1には、燃料電池スタックの上部及び側面部を真空断熱容器で覆い、燃料電池スタックの下部を断熱材で支持する技術が提案されている。また、特許文献2には、燃料電池組立体の外周部に真空断熱空間を設ける技術が提案されている。
特開平8−138721号公報 特開2005−63806号公報
上記のように燃料電池セル収容容器の外表面を真空断熱層で覆う構成においては、真空断熱層を形成する外壁を他の部材に溶接や接合する部分などが必ず存在する。そのような溶接部分や接合部分などでは、燃料電池セル収容容器内で発生した発電熱や排熱が真空断熱層を形成する外壁を伝って真空断熱層の外部へと放熱してしまう現象(以下では適宜「ヒートブリッジ」と呼ぶ。)が発生する。ヒートブリッジにより真空断熱層の外部へ放熱されると、燃料電池モジュール内部の熱効率が低下してしまったり、燃料電池モジュール外部の補機に熱影響を与えてしまったりする。
このようなヒートブリッジへの対応策として、固体酸化物形燃料電池装置の作動に用いる水や空気を、真空断熱層においてヒートブリッジが発生する部分(以下では適宜「ヒートブリッジ発生部」と呼ぶ。)の周囲に流すことで、ヒートブリッジ発生部を冷却する方法が考えられる。この方法によれば、ヒートブリッジ発生部が外部へと伝熱する熱量を低減することができ、燃料電池セル収容容器内の熱がヒートブリッジ発生部を介して真空断熱層外部へと放出されることを抑制することができるものと考えられる。
ところで、固体酸化物形燃料電池装置では、稼働中の燃料電池を停止させる際に、迅速な降温やコスト的な観点から、燃料、空気及び水の供給を停止させるシャットダウン停止が行われることがある。このようなシャットダウン停止が行われると、上記したようなヒートブリッジ発生部の周囲に水や空気を流すことでヒートブリッジ発生部を冷却する方法では、水や空気の供給の停止により、ヒートブリッジ発生部を適切に冷却することができなくなる。そのため、ヒートブリッジにより真空断熱層の外部へ放熱されて、燃料電池モジュール外部の補機に熱影響を与えてしまう場合がある。このような問題は、災害等の理由により燃料、空気及び水の供給が停止されるブラックアウト停止時にも同様に生じる。
従って、本発明は、燃料電池セル収容容器の周囲を真空断熱層で覆い、真空断熱層のヒートブリッジ発生部の周囲に酸化剤ガス及び水を流してヒートブリッジ発生部を冷却する固体酸化形燃料電池装置において、シャットダウン停止時及びブラックアウト停止時に、燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されてしまうことを適切に抑制することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する複数の燃料電池セルを有する固体酸化形燃料電池装置において、複数の燃料電池セルを収容する燃料電池セル収容容器と、燃料電池セル収容容器の外表面を覆うように設けられ、この燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されることを抑制する真空断熱層であって、燃料電池セル収容容器内の熱を伝熱するヒートブリッジが発生するヒートブリッジ発生部を一部分に含む真空断熱層と、燃料電池セル収容容器内に設けられ、水蒸気によって原燃料ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、この燃料ガスを複数の燃料電池セルに供給する改質部と、燃料電池セル収容容器内に設けられ、複数の燃料電池セルにおいて発電に利用されずに残った燃料ガスを燃焼させ、燃焼熱により改質部を加熱する燃焼部と、改質部に原燃料ガスを供給するための燃料供給装置と、改質部内で水蒸気改質させるための水又は水蒸気を供給するための水供給装置と、複数の燃料電池セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給装置と、燃料供給装置、水供給装置、及び酸化剤ガス供給装置を制御すると共に、複数の燃料電池セルからの電力の取り出しを制御するコントローラと、を有し、真空断熱層のヒートブリッジ発生部を冷却するように、酸化剤ガス供給装置から供給された酸化剤ガスが流れる流路、及び/又は、水供給装置から供給された水又は水蒸気が流れる流路が、燃料電池セル収容容器内に形成されており、真空断熱層と燃料電池セル収容容器との間に設けられた補助断熱材を更に有し、この補助断熱材によって、水供給装置による水の供給及び酸化剤ガス供給装置による酸化剤ガスの供給がともに停止した固体酸化形燃料電池装置の発電停止モードにおいて、真空断熱層のヒートブリッジ発生部を介して燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されることを抑制する、ことを特徴とする。
このように構成された本発明においては、燃料電池モジュール内部の熱効率を高めると共に、燃料電池モジュール外部の補機への熱影響を防止するために、燃料電池セル収容容器の周囲を真空断熱層で覆っている。この真空断熱層は、燃料電池セル収容容器内の熱を外部に伝熱するヒートブリッジが発生するヒートブリッジ発生部を一部分に有する。本発明では、このような真空断熱層のヒートブリッジ発生部を介した燃料電池セル収容容器内の熱の真空断熱層外部への放熱を抑制すべく、真空断熱層のヒートブリッジ発生部の周囲に水及び/又は酸化剤ガスを流している。これにより、水及び/又は酸化剤ガスによって真空断熱層のヒートブリッジ発生部を冷却し、ヒートブリッジ発生部が外部へと伝熱する熱量を低減することができる、つまりヒートブリッジ発生部による伝熱を緩和することができる。そのため、燃料電池セル収容容器内の熱がヒートブリッジ発生部を介して真空断熱層外部へと放出されることに起因する、燃料電池モジュール内の熱効率の低下及び燃料電池モジュール外の補機ユニットへの熱影響を適切に抑制することが可能となる。
ここで、上述したシャットダウン停止時又はブラックアウト停止時のような発電停止モードにおいては、水及び酸化剤ガスの供給が停止されるため、水及び/又は酸化剤ガスによって真空断熱層のヒートブリッジ発生部を冷却することができなくなるが、本発明では、そのような発電停止モードにおいて、燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されてしまうことを抑制すべく、真空断熱層と燃料電池セル収容容器との間に補助断熱材を設けている。これにより、シャットダウン停止又はブラックアウト停止により、水及び/又は酸化剤ガスによって真空断熱層のヒートブリッジ発生部を冷却することができなくなっても、補助断熱材の断熱機能により、燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されてしまうことを適切に抑制することが可能となる。
本発明において、好ましくは、燃料電池セル収容容器の最外周部分に、酸化剤ガス供給装置から供給された酸化剤ガスが通過する酸化剤ガス供給流路が形成されており、この酸化剤ガス供給流路が、内部の酸化剤ガスによって断熱層を構成する。
このように構成された本発明においては、燃料電池セル収容容器の最外周部分に酸化剤ガスが通過する酸化剤ガス供給流路を設けているので、つまり燃料電池セル収容容器内の最も外側の空間を酸化剤ガスで覆っているので、発電停止モード時に、上記した補助断熱材に加えて、酸化剤ガス供給流路内の酸化剤ガスが断熱層として機能することで、燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されてしまうことを適切に抑制することができる。
本発明において、好ましくは、補助断熱材は、燃料電池セル収容容器の外表面のほぼ全体を覆うように設けられ、それにより、真空断熱層と燃料電池セル収容容器との非接触状態が確保されている。
このように構成された本発明においては、補助断熱材を、真空断熱層のヒートブリッジ発生部の周囲だけに設けるのではなく、燃料電池セル収容容器の外表面のほぼ全体を覆うように設けて、真空断熱層と燃料電池セル収容容器との非接触状態を形成しているので、発電停止モード時において、燃料電池セル収容容器内の熱が真空断熱層の内側壁に伝わることを適切に抑制することができる。よって、真空断熱層のヒートブリッジ発生部を介して燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されてしまうことを効果的に抑制することができる。
本発明において、好ましくは、真空断熱層は、下面が開放された容器形状に形成され、下端部にのみヒートブリッジ発生部を有する。
このように構成された本発明においては、真空断熱層を下面が開放された容器形状に形成し、ヒートブリッジ発生部を真空断熱層の下端部にのみ設けているので、下面開放型の真空断熱層で燃料電池セル収容容器を覆うことにより、ヒートブリッジ発生部を下端部に限定することができ、簡易な構成にてヒートブリッジ発生部が受ける熱量を小さくすることが可能となる。
本発明において、好ましくは、補助断熱材は、燃料電池セル収容容器の上面を覆うように設けられた第1の補助断熱材と、燃料電池セル収容容器の側面を覆うように設けられた第2の補助断熱材と、を含み、第2の補助断熱材は、第1の補助断熱材よりも厚みが薄く構成されている。
このように構成された本発明においては、燃料電池セル収容容器の上面に、ある程度の厚みを有する第1の補助断熱材を設けることで、最も温度が高くなる燃料電池セル収容容器の上面からの熱を第1の補助断熱材によって適切に断熱することができ、一方で、燃料電池セル収容容器の側面に、薄く構成された第2の補助断熱材を設けることで、第2の補助断熱材によって燃料電池セル収容容器の側面全体を適切に覆うことができると共に、燃料電池モジュールの横幅を小さくすることができ、燃料電池モジュールの設置面積を小さくすることが可能となる。
本発明において、好ましくは、第2の補助断熱材は、第1の補助断熱材よりも、熱伝導率が低く、断熱性能が高い。
このように構成された本発明においては、第2の補助断熱材に熱伝導率が低く断熱性能が高い材料を適用するので、上記のように第2の補助断熱材を薄く構成しても、第2の補助断熱材の断熱性能を確保することができる。つまり、燃料電池モジュールの横幅を小さくしつつ、燃料電池セル収容容器の側面についての断熱性能を適切に確保することが可能となる。
本発明において、好ましくは、補助断熱材は、撥水性を有する材料で構成されているか、若しくは表面が撥水処理されている。
このように構成された本発明においては、補助断熱材に撥水性を具備させることで、燃料電池セル収容容器の外部に存在する水蒸気が凝縮した水が、補助断熱材の気孔部に入り込み、補助断熱材が劣化してしまうことを適切に抑制することができる。
本発明によれば、燃料電池セル収容容器の周囲を真空断熱層で覆い、真空断熱層のヒートブリッジ発生部の周囲に酸化剤ガス及び水を流してヒートブリッジ発生部を冷却する固体酸化形燃料電池装置において、シャットダウン停止時及びブラックアウト停止時に、燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されてしまうことを適切に抑制することができる。
本発明の一実施形態による燃料電池モジュールを備えた固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。 本発明の一実施形態による燃料電池モジュールの断面図である。 本発明の一実施形態による燃料電池モジュールの主な部材を分解して示した断面図である。 本発明の一実施形態による燃料電池モジュールに内蔵されている排気集約室の部分を拡大して示す断面図である。 図2におけるV−V断面である。 本発明の一実施形態による蒸発部の説明図である。 (a)下端がカソードにされている燃料電池セルの下端部を拡大して示す断面図であり、(b)下端がアノードにされている燃料電池セルの下端部を拡大して示す断面図である。 本発明の一実施形態による燃料電池セル収容容器における配線形態の説明図であって、本発明の一実施形態による燃料電池モジュールの一部分の断面図である。 本発明の実施形態の変形例による排気ガス排出流路の拡大断面図である。 本発明の実施形態の変形例による真空断熱容器の断面図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による燃料電池モジュールを備えた固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池モジュールを備えた固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、固体酸化物形燃料電池装置(SOFC)1は、本発明の一実施形態による燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、真空断熱層7を形成する真空断熱容器6を備え、この真空断熱容器6は、燃料電池セル収容容器8を覆うように設けられている。この燃料電池セル収容容器8内の内部には発電部としての発電室10が構成され、この発電室10の中には複数の燃料電池セル16が同心円状に配置されており、これらの燃料電池セル16により、燃料ガスと酸化剤ガスである空気の発電反応が行われる。
各燃料電池セル16の上端部には、排気集約室18が取り付けられている。各燃料電池セル16において発電反応に使用されずに残った残余の燃料(オフガス)は、上端部に取り付けられた排気集約室18に集められ、この排気集約室18の上部に設けられた複数の噴出口から流出される。流出した燃料は、発電室10内で発電に使用されずに残った空気により燃焼され、排気ガスが生成されるようになっている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この純水タンクから供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された炭化水素系の原燃料ガスの流量を調整する燃料供給装置である燃料ブロア38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
なお、燃料ブロア38を通過した原燃料ガスは、燃料電池モジュール2内に配置された脱硫器36を介して燃料ガス供給流路20(図2)に供給される。また、脱硫器36においては、原燃料ガスに水素ガスを添加しておくことにより、原燃料ガス中の硫黄成分を除去することができる。このため、補機ユニット4には、原燃料ガスに水素ガスを添加するための凝縮器33、オリフィス34及び電磁弁35が内蔵されている。これらの構成及び作用については後述する。
また、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気の流量を調整する酸化剤ガス供給装置である空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)を備えている。
さらに、補機ユニット4には、燃料電池モジュール2からの排気ガスの熱を回収するための温水製造装置50が備えられている。この温水製造装置50には、水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュール2により発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
さらに、固体酸化物形燃料電池装置1はコントローラ106を備え、コントローラ106は、マイクロプロセッサ、各種インターフェイス、メモリ、及びこれらを作動させるためのプログラム(以上図示せず)から構成されている。コントローラ106は、内蔵されたプログラムにより、補機ユニット4に内蔵された各装置(具体的には水流量調整ユニット28、燃料ブロア38及び空気流量調整ユニット45)を制御すると共に、インバータ54を制御して、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しを制御するように構成されている。例えば、コントローラ106は、SOFC1の稼働を停止させる場合に、迅速な降温やコスト的な観点から、燃料、空気及び水の供給を停止させるように、燃料ブロア38、空気流量調整ユニット45及び28水流量調整ユニット28を制御するシャットダウン停止を実行する。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による燃料電池モジュール2に内蔵された燃料電池セル収容容器の内部構造を説明する。図2は燃料電池モジュール2の断面図であり、図3は燃料電池セル収容容器2の主な部材を分解して示した断面図である。図2では、燃料ガス(水蒸気、原燃料ガス、原燃料ガスを水蒸気改質して生成される燃料ガスを含む)と、酸化剤ガスとしての空気と、排気ガスとの流れを矢印で示している。
図2に示すように、真空断熱容器6は、全体で見るとカップ状の部材であり、ジャケット式に構成され、内部空間に真空断熱層7を形成する(図3も参照)。真空断熱容器6は、燃料電池セル収容容器8の上面及び側面の全体を取り囲むように設けられており、それにより、燃料電池セル収容容器8の外表面のほぼ全体が、真空断熱容器6により形成される真空断熱層7によって覆われている。真空断熱層7は、下端部のみが開放されている。言い換えると、真空断熱層7を形成する内側壁と外側壁とが下端部において連結されている。このような真空断熱層7の下端部を構成する真空断熱容器6の下端部6aは、燃料電池セル収容容器8内の熱を、真空断熱層7を形成する内側壁などから真空断熱層7を形成する外側壁へと伝熱させて、真空断熱容器6の外部に放出させるヒートブリッジが発生する部分(つまりヒートブリッジ発生部)に相当する。
また、図2に示すように、燃料電池セル収容容器8の外表面の全体を覆うように、第1の補助断熱材131、第2の補助断熱材132及び第3の補助断熱材133が設けられており、それにより、真空断熱容器6と燃料電池セル収容容器8との非接触状態が確保されている。具体的には、第1の補助断熱材131は、燃料電池セル収容容器8の上面全体を覆うように設けられ、第2の補助断熱材132は、燃料電池セル収容容器8の側面全体を覆うように設けられ、第3の補助断熱材133は、燃料電池セル収容容器8の下面(底面)全体を覆うように設けられている。また、第1及び第3の補助断熱材131、133は、ある程度の厚みを有するブロック状に形成されており、第2の補助断熱材132は、第1及び第3の補助断熱材131、133よりも厚みが薄い薄板状に形成されており、フレキシブル性を有している。
好適には、第2の補助断熱材132は、第1及び第3の補助断熱材131、133の材料よりも熱伝導率が低く断熱性能が高い材料を適用するのがよい。また、第1の補助断熱材131及び第2の補助断熱材132並びに第3の補助断熱材133は、撥水性を有する材料で構成するか、若しくは表面を撥水処理するのがよい。
また、図2に示すように、燃料電池セル収容容器8内の空間には、複数の燃料電池セル16が同心円状に配列され、その周囲を取り囲むように燃料ガス供給流路20排気ガス排出流路21、酸化剤ガス供給流路22が順に同心円状に形成されている。燃料電池セル収容容器8は、概ね円筒状の密閉容器であり、その底面には、発電用の空気を供給する酸化剤ガス流入口である酸化剤ガス導入パイプ56が接続されると共に、排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58が接続されている。
図2及び図3に示すように、燃料電池セル収容容器8の内部には、燃料電池セル16の周囲を取り囲むように、内側から順に、発電室構成部材である内側円筒部材64、外側円筒部材66、内側円筒容器68、外側円筒容器70が配置されている。上述した燃料ガス供給流路20、排気ガス排出流路21、及び酸化剤ガス供給流路22は、これらの円筒部材及び円筒容器の間に夫々構成される流路であり、隣り合う流路の間で熱交換が行われる。即ち、燃料ガス供給流路20は発電室10を取り囲むように配置され、排気ガス排出流路21は燃料ガス供給流路20を取り囲むように配置され、酸化剤ガス供給流路22は排気ガス排出流路21を取り囲むように配置されている。また、燃料電池セル収容容器8の下端側の空間には、排気ガス排出流路21によって導かれた排気ガスが流入する排気ガス室21cが設けられている。
内側円筒部材64は、概ね円筒状の中空体であり、その上端及び下端は開放されている。また、内側円筒部材64の内壁面には、集約室形成板である円形の第1固定部材63が気密的に溶接されている。この第1固定部材63の下面と、内側円筒部材64の内壁面と、集約室底部材72の上面により、燃料ガス集約部としての燃料ガス集約室76(言い換えると燃料ガス分散室)が画定される。また、第1固定部材63には、各々燃料電池セル16を挿通させる複数の挿通穴63aが形成されており、各燃料電池セル16は、各挿通穴63aに挿通された状態で、セラミック接着剤により第1固定部材63に接着されている。このように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池装置1においては、燃料電池モジュール2を構成する部材間相互の接合部には、セラミック接着剤が充填され、硬化されることにより、各部材が相互に気密的に接合されている。
外側円筒部材66は、内側円筒部材64の周囲に配置される円筒状の管であり、内側円筒部材64との間に円環状の流路が形成されるように、内側円筒部材64と概ね相似形に形成されている。さらに、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間には中間円筒部材65が配置されている。中間円筒部材65は、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間に配置された円筒状の管である。中間円筒部材65の外周面と外側円筒部材66の内周面と間の空間上部には改質部94が構成されている。また、中間円筒部材65の外周面と、外側円筒部材66の内周面の間の円環状の空間は、燃料ガス供給流路20として機能する。このため、改質部94及び燃料ガス供給流路20は、燃料電池セル16における発熱及び排気集約室18上端における残余燃料の燃焼により熱を受ける。また、内側円筒部材64の上端部と外側円筒部材66の上端部は溶接により気密的に接合されており、燃料ガス供給流路20の上端は閉鎖されている。さらに、中間円筒部材65の下端と、内側円筒部材64の外周面は、溶接により気密的に接合されている。
内側円筒容器68は、外側円筒部材66の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、外側円筒部材66との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が外側円筒部材66と概ね相似形に形成されている。この内側円筒容器68は、内側円筒部材64の上端の開放部を覆うように配置される。外側円筒部材66の外周面と、内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間は、排気ガス排出流路21(図2)として機能する。この排気ガス排出流路21は、内側円筒部材64の上端部に設けられた複数の小穴64aを介して内側円筒部材64の内側の空間と連通している。また、外側円筒部材66の下部内周面と、内側円筒部材64の下部外周面を接続するように、排気ガス横断通路21bが設けられている。この排気ガス横断通路21bにより、燃料ガス供給流路20を横断して、排気ガス排出流路21と排気ガス室21cが連通される。
なお、排気ガス排出流路21、排気ガス横断通路21b及び排気ガス室21cは、それぞれ、排気ガスを燃料電池セル収容容器8から排出するための排気ガス排出流路を構成し、当該排気ガス排出流路は、排気ガス排出流路21と排気ガス横断通路21bとの接続箇所である屈曲部22aにおいて流路が燃料電池セル収容容器8の中央方向に屈曲される。これにより、この屈曲部22aよりも下流側の排気ガスの流路が、酸化剤ガス供給流路22と離隔されることとなる。
排気ガス排出流路21の下部には、燃焼触媒器60及びこれを加熱するためのヒーターであるシースヒーター61が配置されている。
燃焼触媒器60は、排気ガス横断通路21bよりも上方に、外側円筒部材66の外周面と内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間に充填された触媒である。排気ガス排出流路21を下降した排気ガスは、燃焼触媒器60を通過することにより一酸化炭素が除去され、排気ガス横断通路21bを通って排気ガス室21cに流入する。
シースヒーター61は、燃焼触媒器60の下方の、外側円筒部材66の外周面を取り囲むように取り付けられた電気ヒーターである。固体酸化物形燃料電池装置1の起動時において、シースヒーター61に通電することにより、その近傍に配置されている燃焼触媒器60が活性温度まで加熱される。
外側円筒容器70は、内側円筒容器68の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、燃料電池セル収容容器8の下端部にまで延びており、内側円筒容器68との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が内側円筒容器68と概ね相似形に形成されている。内側円筒容器68の外周面と、外側円筒容器70の内周面の間の円環状の空間は、酸化剤ガス供給流路22として機能する。また、外側円筒容器70の下端部には、酸化剤ガス導入パイプ56が接続されており、酸化剤ガス供給流路22が酸化剤ガス導入パイプ56に連通される。
また、外側円筒容器70の下端の部分は、それよりも上方に位置する部分よりも、大きな径を有するように構成されており、それにより、酸化剤ガス供給流路22の上流端部分に酸化剤ガス供給部22aを形成している。酸化剤ガス供給部22aは、排気ガス排出流路21の屈曲部21aよりも下方の位置に設けられ、燃料電池セル収容容器8内に空気を流入させる酸化剤ガス供給流路22の上流端部分を構成する。具体的には、酸化剤ガス供給部22aを形成する流路は、この酸化剤ガス供給部22aよりも下流側を形成する流路よりも広く構成されている。つまり、酸化剤ガス供給部22aを形成する流路が拡大形成されている。上述した真空断熱層7を形成する内側壁の下端部分は、このような酸化剤ガス供給部22aに沿って形成されている。更に、酸化剤ガス供給部22aを形成する外側円筒容器70の内壁面には、円環状の蓄熱材115が設けられ、この蓄熱材115は、外側円筒容器70の側壁(真空断熱層7を形成する内側壁も含む)を伝わる熱を蓄熱するように機能する。
なお、真空断熱層7を形成する真空断熱容器6の内壁面及び/又は外側円筒容器70の内壁面に、排気ガス排出流路21において発生する輻射熱を反射する輻射反射部(例えば銅箔やアルミ箔などのメッキ)などを適用してもよい。これにより、高温となる排気ガス排出流路21において発生する輻射熱を低減することができる。
また、酸化剤ガス供給部22aの下端部は、熱伝導性の低いセラミック接着剤117、118により接合されている。具体的には、セラミック接着剤117は、外側円筒容器70の下端部と真空断熱容器6の下端部6aとを接合し、セラミック接着剤118は、外側円筒容器70の下端部と内側円筒容器68の下端部とを接合する。この場合、下端部が開放されたカップ状の真空断熱容器6、外側円筒容器70、内側円筒容器68などを重ね合わせて、それらをセラミック接着剤117、118などにより接合することで、上述した複数の流路を容易に形成することができる(図3)。
集約室底部材72は、概ね円形の皿状の部材であり、内側円筒部材64の内壁面にセラミック接着剤により気密的に固定される。これにより、第1固定部材63と集約室底部材72の間に、燃料ガス集約室76が構成される。また、集約室底部材72の中央には、バスバー80(図2)を挿通させるためのバスバー通路である挿通管72aが設けられている。各燃料電池セル16に電気的に接続されたバスバー80は、この挿通管72aを通して燃料電池セル収容容器8の外部に引き出される。また、挿通管72aには、セラミック接着剤が充填されることにより、バスバー80が固定され、燃料ガス集約室76の気密性が確保されている。また、セラミック接着剤は断熱性が高いため、燃料ガス集約室76から、挿通管72aを介した熱の流失も抑制することができる。
さらに、内側円筒部材64の内周面、集約室底部材72の底面、及び挿通管72aの外周面によって画定される円環状の空間は、排気ガス室21cとして利用される。この排気ガス室21cには、その側面上部に排気ガス横断通路21bが接続され、排気ガスが導入される。また、排気ガス室21cの底面には、排ガス排出パイプ58が接続され、この排ガス排出パイプ58を通して排気ガスが燃料電池モジュール2の外部へ排出される。
図2に示すように、内側円筒部材64の内周面、集約室底部材72の底面、及び挿通管72aの外周面によって画定される円環状の空間内には断熱材が配置されている。この断熱材は、燃料ガス集約室76(集約室底部材72の底面)に沿って配置された断熱材板状部73aと、この断熱材板状部73aから挿通管72aの周囲を取り囲むように延びる断熱材突出部73bから構成されている。これらの断熱材板状部73a及び断熱材突出部73bは、燃料ガス集約室76と排気ガス室21cとの間を断熱するように配置されている。
また、排気ガス室21c内には、断熱材突出部73bを取り囲むように、水添脱硫器である脱硫器36が配置されている。この脱硫器36は、排気ガス室21cに導入される排気ガスにより、触媒作用が可能な温度に加熱される。
一方、内側円筒容器68の天井面から垂下するように、円形断面の酸化剤ガス噴射用パイプ74が取り付けられている。この酸化剤ガス噴射用パイプ74は、内側円筒容器68の中心軸線上を鉛直方向に延び、その周囲の同心円上に各燃料電池セル16が配置される。酸化剤ガス噴射用パイプ74の上端が内側円筒容器68の天井面に取り付けられることにより、内側円筒容器68と外側円筒容器70の間に形成されている酸化剤ガス供給流路22と酸化剤ガス噴射用パイプ74が連通される。酸化剤ガス供給流路22を介して供給された空気は、酸化剤ガス噴射用パイプ74の先端から下方に噴射され、第1固定部材63の上面に当たって、発電室10内全体に広がる。
燃料ガス集約室76は、第1固定部材63と集約室底部材72の間に構成される円筒形の気密性のあるチャンバーであり、その上面に各燃料電池セル16が林立されている。第1固定部材63の上面に取り付けられた各燃料電池セル16は、その内側の燃料極が、燃料ガス集約室76の内部と連通されている。各燃料電池セル16の下端部は、第1固定部材63の挿通穴63aを貫通して燃料ガス集約室76の内部に突出し、各燃料電池セル16は第1固定部材63に、接着により固定されている。
図2に示すように、内側円筒部材64には、第1固定部材63よりも下方に複数の小穴64bが設けられている。内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間は、複数の小穴64bを介して燃料ガス集約室76内に連通されている。供給された燃料は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の空間を一旦上昇した後、内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間を下降し、複数の小穴64bを通って燃料ガス集約室76内に流入する。燃料ガス集約室76に流入した燃料は、燃料ガス集約室76で集約されて、その天井面(第1固定部材63)に取り付けられた各燃料電池セル16の燃料極に分配される。
さらに、燃料ガス集約室76内に突出している各燃料電池セル16の下端部は、燃料ガス集約室76内でバスバー80に電気的に接続され、挿通管72aを通して電力が外部に引き出される。バスバー80は、各燃料電池セル16により生成された電力を、燃料電池セル収容容器8の外部へ取り出すための細長い金属導体であり、碍子78を介して集約室底部材72の挿通管72aに固定されている。バスバー80は、燃料ガス集約室76の内部において、各燃料電池セル16に取り付けられた集電体82と電気的に接続されている。また、バスバー80は、燃料電池セル収容容器8の外部において、インバータ54(図1)に接続される。なお、集電体82は、排気集約室18内に突出している各燃料電池セル16の上端部にも取り付けられている(図4)。これら上端部及び下端部の集電体82により、複数の燃料電池セル16が電気的に並列に接続されると共に、並列に接続された複数組の燃料電池セル16が電気的に直列に接続され、この直列接続の両端が夫々バスバー80に接続される。
次に、図4及び図5を参照して、排気集約室の構成を説明する。
図4は排気集約室の部分を拡大して示す断面図であり、図5は、図2におけるV−V断面である。
図4に示すように、排気集約室18は、各燃料電池セル16の上端部に取り付けられたドーナツ型断面のチャンバーであり、この排気集約室18の中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74が貫通して延びている。
図5に示すように、内側円筒部材64の内壁面には、排気集約室18支持用の3つのステー64cが等間隔に取り付けられている。図4に示すように、各ステー64cは金属製の薄板を折り曲げた小片であり、排気集約室18を各ステー64cの上に載置することにより、排気集約室18は内側円筒部材64と同心円上に位置決めされる。これにより、排気集約室18の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の隙間、及び排気集約室18の内周面と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面との間の隙間は、全周で均一になる(図5)。
排気集約室18は、集約室上部材18a及び集約室下部材18bが気密的に接合されることにより構成されている。
集約室下部材18bは、上方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための円筒部が設けられている。
集約室上部材18aは、下方が開放された段付き円形カップ状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための開口部が設けられている。集約室上部材18aの下部は、集約室下部材18bの上方に開口したドーナツ型断面の領域に嵌め込まれる形状に構成されている。
集約室下部材18bの周囲の壁の内周面と集約室上部材18aの外周面の間の隙間にはセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、大径シールリング19aが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。大径シールリング19aは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
一方、集約室下部材18b中央の円筒部の外周面と、集約室上部材18a中央の開口部の縁の間にもセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、小径シールリング19bが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。小径シールリング19bは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
集約室下部材18bの底面には複数の円形の挿通穴18cが設けられている。各挿通穴18cには燃料電池セル16の上端部が夫々挿通され、各燃料電池セル16は各挿通穴18cを貫通して延びている。各燃料電池セル16が貫通している集約室下部材18bの底面上にはセラミック接着剤が流し込まれ、これが硬化されることにより、各燃料電池セル16の外周と各挿通穴18cの間の隙間が気密的に充填されると共に、各燃料電池セル16が集約室下部材18bに固定されている。
さらに、集約室下部材18bの底面上に流し込まれたセラミック接着剤の上には、円形薄板状のカバー部材19cが配置され、セラミック接着剤の硬化により集約室下部材18bに固定されている。カバー部材19cには、集約室下部材18bの各挿通穴18cと同様の位置に複数の挿通穴が設けられており、各燃料電池セル16の上端部はセラミック接着剤の層及びカバー部材19cを貫通して延びている。
一方、集約室上部材18a上段の側面には、排気集約室18内に集約された燃料ガスを噴出させるための複数の噴出口18dが設けられている(図4)。各噴出口18dは、集約室上部材18a上段の側面に、等間隔に配置されている。発電に使用されずに残った燃料は、各燃料電池セル16の上端から排気集約室18内に流出し、排気集約室18内で集約された燃料は各噴出口18dから流出し、そこで燃焼される。従って、この発電室10上方の排気集約室18の周囲の空間は燃焼部10aとして機能する(図4)。
次に、図2及び図6を参照して、燃料供給源30から供給される原燃料ガスを改質するための構成について説明する。図6は、本発明の一実施形態による蒸発部の説明図である。
まず、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間の空間で構成されている燃料ガス供給流路20の下部には、水蒸気改質用の水蒸気を生成するための蒸発部86が設けられている(図2)。蒸発部86は、外側円筒部材66の下部内周に取り付けられたリング状の傾斜板86a及び水供給パイプ88から構成されている。また、蒸発部86は、排気ガス排出流路21内に配置されたシースヒーター61と、排気ガス室21c内に配置された断熱材板状部73aとの間に配置されている。傾斜板86aは、リング状に形成された金属の薄板であり、その外周縁が外側円筒部材66の内壁面に取り付けられる。一方、傾斜板86aの内周縁は外周縁よりも上方に位置し、傾斜板86aの内周縁と、内側円筒部材64の外壁面との間には隙間が設けられている。
水供給パイプ88は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプであり、水流量調整ユニット28から供給された水蒸気改質用の水が、水供給パイプ88を介して蒸発部86に供給される。水供給パイプ88の上端(吐出口88a)は、傾斜板86aを貫通して傾斜板86aの上面側まで延び、傾斜板86aの上面側に供給された水Wは、傾斜板86aの上面と外側円筒部材66の内壁面の間に留まる、詳しくは、水Wは、毛細管現象によって、傾斜板86aの外周縁の全周に沿って分散される(図6)。従って、このような傾斜板86aの上面と外側円筒部材66の内壁面との間隙は、蒸発すべき水を溜める水溜め部86cとして機能する。こうして水溜め部86cに溜まった水Wは、シースヒーター61や排気ガス排出流路21を通る排気ガスにより加熱されて、蒸発して水蒸気となる。
また、蒸発部86の下方には、原燃料ガスを燃料ガス供給流路20内に導入するための燃料ガス導入部が設けられている。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、脱硫器36及び燃料ガス供給パイプ90を介して燃料ガス供給流路20に導入される(図2)。燃料ガス供給パイプ90は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプである。また、燃料ガス供給パイプ90の上端は、傾斜板86aよりも下方に位置している。燃料ガス供給パイプ90から流出した原燃料ガスは、傾斜板86aの下側に導入され、傾斜板86aの傾斜により流路を絞られながら傾斜板86aの上側へ上昇する。傾斜板86aの上側へ上昇した原燃料ガスは、蒸発部86で生成された水蒸気と共に上昇しながら、十分に混合される。
さらに、中間円筒部材65の上部、内周側及び外周側の円環状の空間には、改質部94が設けられている。改質部94は、各燃料電池セル16の上部と、その上方の排気集約室18の周囲を取り囲むように配置されている。改質部94は、内側円筒部材64の外壁面及び中間円筒部材65の外壁面に取り付けられた触媒保持板(図示せず)と、これにより保持された改質触媒96によって構成されている。
原燃料ガスと水蒸気の混合ガスは、中間円筒部材65の外周と外側円筒部材66の内周の間の流路を上方に流れた後、折り返して、内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の流路を下方に流れる。改質部94内に充填された改質触媒96に、混合された原燃料ガス及び水蒸気が接触すると、改質部94内においては、式(1)に示す水蒸気改質反応SRが進行する。
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (1)
この水蒸気改質反応SRにより、原燃料ガスは、水素が豊富に含まれる燃料ガスに改質される。改質部94において改質された燃料ガスは、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の空間を下方に流れ、燃料ガス集約室76に流入して、各燃料電池セル16に供給される。水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるが、反応に要する熱は、排気集約室18から流出するオフガスの燃焼熱により供給される。
次に、図1及び図2を参照して、原燃料ガスに水素ガスを添加するための構成を説明する。
図2に示すように、燃料ガス集約室76には、水素取出管92が接続されている。この水素取出管92は、燃料ガス集約室76の内部と連通し、断熱材板状部73aを貫通し、さらに排気ガス室21cを貫通して燃料電池モジュール2の外部まで延びている。図1に示すように、水素取出管92は、補機ユニット4に内蔵された凝縮器33に接続されている。燃料ガス集約室76内の燃料ガスは、水素ガスと共に多くの水蒸気を含んでいる。凝縮器33においては、燃料ガスに含まれている水蒸気が凝縮され、水素ガスと分離される。水蒸気を分離された水素ガスは、オリフィス34及び電磁弁35を介して、燃料供給源30から供給された原燃料ガスに、燃料ブロア38の上流側で混合される。水素ガスが添加された原燃料ガスは、燃料ブロア38により脱硫器36に送り込まれる。
燃料ガス集約室76内の圧力は燃料ブロア38の上流側の圧力よりも高いため、この圧力差により、改質された燃料ガスが燃料ガス集約室76から取り出される。オリフィス34は、燃料ガス集約室76から燃料ブロア38の上流側へ戻る流路に適度な流路抵抗を与え、適量の水素ガスが原燃料ガスに添加されるように調整されている。また、原燃料ガスへの水素の添加を行わないときは、電磁弁35が閉弁される。
次に、図7を参照して、燃料電池セル16について説明する。
本発明の実施形態による燃料電池モジュール2においては、燃料電池セル16として、固体酸化物を用いた円筒横縞型セルが採用されている。各燃料電池セル16上には、複数の単セル16aが横縞状に形成されており、これらが電気的に直列に接続されることにより1本の燃料電池セル16が構成されている。各燃料電池セル16は、その一端がアノード(陽極)、他端がカソード(陰極)となるように構成され、複数の燃料電池セル16のうちの半数は上端がアノード、下端がカソードとなるように配置され、残りの半数は上端がカソード、下端がアノードとなるように配置されている。
図7(a)は、下端がカソードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図であり、図7(b)は、下端がアノードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図である。
図7に示すように、燃料電池セル16は、細長い円筒状の多孔質支持体97と、この多孔質支持体97の外側に横縞状に形成された複数の層から形成されている。多孔質支持体97の周囲には、内側から順に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101が夫々横縞状に形成されている。このため、燃料ガス集約室76を介して供給された燃料ガスは、各燃料電池セル16の多孔質支持体97の内部を流れ、酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射された空気は、空気極層101の外側を流れる。燃料電池セル16上に形成された各単セル16aは、一組の燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、及び空気極層101から構成されている。1つの単セル16aの燃料極層98は、インターコネクタ層102を介して、隣接する単セル16aの空気極層101に電気的に接続されている。これにより、1本の燃料電池セル16上に形成された複数の単セル16aが、電気的に直列に接続される。
図7(a)に示すように、燃料電池セル16のカソード側端部には、多孔質支持体97の外周に電極層103aが形成され、この電極層103aの外側にリード膜層104aが形成されている。カソード側端部においては、端部に位置する単セル16aの空気極層101と電極層103aが、インターコネクタ層102により電気的に接続されている。これらの電極層103a及びリード膜層104aは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103aは、リード膜層104aよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103aに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの空気極層101がインターコネクタ層102、電極層103aを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104aの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104aの外周で第1固定部材63に固定される。
図7(b)に示すように、燃料電池セル16のアノード側端部においては、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が延長されており、燃料極層98の延長部が電極層103bとして機能する。電極層103bの外側にはリード膜層104bが形成されている。これらの電極層103b及びリード膜層104bは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103bは、リード膜層104bよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103bに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が、一体的に形成された電極層103bを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104bの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104bの外周で第1固定部材63に固定される。
図7(a)(b)においては、各燃料電池セル16の下端部の構成を説明したが、各燃料電池セル16の上端部における構成も同様である。なお、上端部においては、各燃料電池セル16は、排気集約室18の集約室下部材18bに固定されているが、固定部分の構成は下端部における第1固定部材63に対する固定と同様である。
次に、多孔質支持体97及び各層の構成を説明する。
多孔質支持体97は、本実施形態においては、フォルステライト粉末、及びバインダーの混合物を押し出し成形し、焼結することにより形成されている。
燃料極層98は、本実施形態においては、NiO粉末及び10YSZ(10mol%Y23−90mol%ZrO2)粉末の混合物により構成された導電性の薄膜である。
反応抑制層99は、本実施形態においては、セリウム系複合酸化物(LDC40。すなわち、40mol%のLa23−60mol%のCeO2)等により構成された薄膜であり、これにより、燃料極層98と固体電解質層100の間の化学反応を抑制している。
固体電解質層100は、本実施形態においては、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.23の組成のLSGM粉末により構成された薄膜である。この固体電解質層100を介して酸化物イオンと水素又は一酸化炭素が反応することにより電気エネルギーが生成される。
空気極層101は、本実施形態においては、La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.23の組成の粉末により構成された導電性の薄膜である。
インターコネクタ層102は、本実施形態においては、SLT(ランタンドープストロンチウムチタネート)により構成された導電性の薄膜である。燃料電池セル16上の隣接する単セル16aはインターコネクタ層102を介して接続される。
電極層103a、103bは、本実施形態においては、燃料極層98と同一の材料で形成されている。
リード膜層104a、104bは、本実施形態においては、固体電解質層100と同一の材料で形成されている。
次に、図8を参照して、本発明の実施形態による燃料電池セル収容容器8における配線形態について説明する。図8は、燃料電池モジュール2の一部分の断面図である。
図8に示すように、燃料電池セル収容容器8の内部には、図示しない点火ヒーター(点火装置)に接続された配線122を収容する連通通路121が設けられ、この連通通路121を用いて配線122が設置されている。具体的には、連通通路121は、排気ガス排出流路21内をその流路に沿って上方向に通過して、外側円筒部材66及び内側円筒部材64を貫通して燃料ガス供給流路20を横断し(より詳しくは改質部94の改質触媒96を横断する)、燃焼部10aにまで延びるように設けられている。このような連通通路121を用いて配線122を燃料電池セル収容容器8内に引き込むことで、配線122を通過させるための開口などを真空断熱容器6に設ける必要がない。そのため、真空断熱容器6内の真空の維持や、真空断熱容器6の剛性(強度)の向上や、真空断熱容器6の構造の簡易化を実現することができる。
なお、上記したような連通通路121及び配線122を点火ヒーターに適用することに限定はされず、点火ヒーターに加えて、若しくは点火ヒーターの代わりに、燃料電池セル収容容器8内に設置すべきセンサ(温度センサや圧力センサなど)に連通通路121及び配線122を適用してもよい。また、図8で示した例では、連通通路121が排気ガス排出流路21内をその流路に沿って上方向に通過していたが、他の例では、燃料ガス供給流路20又は酸化剤ガス供給流路22内にこれらの流路に沿って上方向に通過するように連通通路121を設けてもよい。
また、連通通路121を用いて配線することに限定はされず、他の例では、図8に示すように配線124を設けてもよい。具体的には、燃料電池セル収容容器8の外壁面(詳しくは上面及び側面)と第1及び第2の補助断熱材131、132との間に、配線124を配置するための空間を設けて、この空間に配線124を配置してもよい。この場合、配線124は、燃料電池セル収容容器8の外側円筒容器70の側面及び上面に沿って延びて、外側円筒容器70に設けられた開口を通過して燃料電池セル収容容器8の内部にまで延びる。
次に、図1及び図2を参照して、固体酸化物形燃料電池装置1の作用を説明する。
まず、固体酸化物形燃料電池装置1の起動工程において、燃料ブロア38が起動され、燃料の供給が開始されると共に、シースヒーター61への通電が開始される。シースヒーター61への通電が開始されることにより、その上方に配置された燃焼触媒器60が加熱されると共に、内側に配置された蒸発部86も加熱される。燃料ブロア38により供給された燃料は、脱硫器36を介して、燃料ガス供給パイプ90から燃料ガス供給流路20に流入する。流入した燃料は、燃料ガス供給流路20内を上昇して改質部94に至り、次いで、中間円筒部材65と内側円筒部材64の間の燃料ガス供給流路20を下降し、内側円筒部材64の下部に設けられた多数の小穴64bを通って燃料ガス集約室76に流入する。なお、固体酸化物形燃料電池装置1の起動直後においては、改質部94内の改質触媒96の温度が十分に上昇していないため、燃料の改質は行われない。
燃料ガス集約室76に流入した燃料ガスは、燃料ガス集約室76の第1固定部材63に取り付けられた各燃料電池セル16の内側(燃料極側)を通って排気集約室18に流入する。なお、固体酸化物形燃料電池装置1の起動直後においては、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇しておらず、また、インバータ54への電力の取り出しも行われていないため、発電反応は発生しない。
排気集約室18に流入した燃料は、排気集約室18の噴出口18dから噴出される。噴出口18dから噴出された燃料は、点火ヒーター(図示せず)により点火され、各噴出口18dの周りの空間である燃焼部10aにおいて燃焼される。この燃焼により、高温の燃焼ガスが生成され、燃焼部10aを取り囲むように配置されている改質部94、及び燃焼部10a下方の発電室10内が加熱される。また、燃焼により生成された排気ガス(燃焼ガス)は、内側円筒部材64の上部に設けられた小穴64aを通って排気ガス排出流路21に流入する。高温の排気ガスは、排気ガス排出流路21内を下降し、その内側に設けられた改質部94、及び外側に設けられた酸化剤ガス供給流路22内を流れる発電用の空気を加熱する(つまり排気ガスと酸化剤ガスとしての空気との間で熱交換が行われる)。
このように、燃焼部10aにおける燃焼熱、及び排気ガス排出流路21内を流れる排気ガスの熱により、改質部94は原燃料ガスを水蒸気改質可能な温度まで速やかに加熱される。さらに、排気ガスは、排気ガス排出流路21内に配置された燃焼触媒器60を通ることにより一酸化炭素が除去される。一酸化炭素が除去された排気ガスは、屈曲部21aを介して排気ガス横断通路21bを通って半径方向内方に流れ、排気ガス室21cに流入する。排気ガス室21cに流入した排気ガスは、排気ガス室21c内に配置された脱硫器36を加熱し、排ガス排出パイプ58を通って燃料電池モジュールから排出される。
排気ガス及びシースヒーター61により蒸発部86が加熱されると、蒸発部86に供給された水蒸気改質用の水が蒸発され、水蒸気が生成される。水蒸気改質用の水は、水流量調整ユニット28により、水供給パイプ88を介して燃料電池セル収容容器8内の蒸発部86に供給される。蒸発部86で生成された水蒸気と、燃料ガス供給パイプ90を介して供給された原燃料ガスは、燃料ガス供給流路20内で十分に混合される。
なお、蒸発部86は、シースヒーター61に隣接して配置されているため、起動後早期に温度が上昇し、水蒸気を生成できる状態となる。また、蒸発部86は、シースヒーター61と断熱材板状部73aの間に配置されているため、シースヒーター61の熱が逃げにくく、早期に温度上昇する。さらに、蒸発部86の下方、近傍には排気ガス横断通路21bが設けられているため、蒸発部86は排気ガス横断通路21b内を流れる排気ガスの熱によっても加熱される。
混合された原燃料ガス及び水蒸気は、燃料ガス供給流路20内を上昇し、改質部94に流入する。改質部94の改質触媒96が改質可能な温度まで上昇している状態においては、原燃料ガス及び水蒸気の混合気が改質部94を通過する際、水蒸気改質反応が発生し、混合気が水素を多く含む燃料ガスに改質される。改質された燃料ガスは、燃料ガス供給流路20内を下降し、小穴64bを通って燃料ガス集約室76に流入する。こうして燃料ガス供給流路20を下降する際に、燃料ガスの流速が低下し、改質された燃料ガスと、水蒸気改質反応に使用されずに残った水蒸気が十分に混合される。燃料ガスと水蒸気が十分に混合されることにより、燃料ガスの混合ムラに起因する燃料枯れを防止することができる。また、燃料ガス供給流路20内を流れる燃料ガスは、発電室10内の熱によって加熱されるので、固体酸化物形燃料電池セル16に導入される燃料ガスは適温に温度上昇され、固体酸化物形燃料電池セル16への悪影響を防止することができる。ここで、水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、改質部94内で水蒸気改質反応が発生すると、周囲の熱が奪われる。この水蒸気改質反応に要する熱は、外側円筒部材66を隔てて外側に位置する、排気ガス排出流路21内を流れる排気ガスの熱によって賄われる。
燃料ガス集約室76に流入した水素を豊富に含む燃料ガスは、各燃料電池セル16に流入する一方、一部が水素取出管92を通って燃料電池モジュール2の外へ取り出される。取り出された燃料ガス(水素)は、補機ユニット4の凝縮器33、オリフィス34、及び電磁弁35を通って、燃料ブロア38の上流側で原燃料ガスに添加される。水素が添加された原燃料ガスは、燃料ブロア38により脱硫器36に送り込まれる。排気ガス室21c内の脱硫器36が排気ガスにより所定温度まで加熱された状態においては、原燃料ガス中の硫黄成分が、添加された水素と脱硫触媒により反応され、除去される。脱硫器36において硫黄成分を除去された原燃料ガスは、上述したように、燃料ガス供給パイプ90を通って燃料ガス供給流路20に流入する。
一方、燃料ガス集約室76から各燃料電池セル16に流入した改質された燃料ガスは、各燃料電池セル16の内部(燃料極側)を上昇する。なお、燃料ガス集約室76の小穴64bは、その周囲に多数設けられ、燃料ガス集約室76として十分な容積が確保されているため、改質された燃料は、燃料ガス集約室76内に突出している各燃料電池セル16に均等に流入する。
一方、空気流量調整ユニット45により供給された酸化剤ガスである空気は、酸化剤ガス導入パイプ56を介して酸化剤ガス供給流路22に流入する。酸化剤ガス供給流路22に流入した空気は、内側を流れる排気ガスにより加熱されながら酸化剤ガス供給流路22内を上昇する。酸化剤ガス供給流路22内を上昇した空気は、燃料電池セル収容容器8内の上端部で中央に集められ、酸化剤ガス供給流路22に連通された酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入する。酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入した空気は下端から発電室10内に噴射され、噴射された空気は第1固定部材63の上面に当たって発電室10内全体に広がる。発電室10内に流入した空気は、排気集約室18の外周壁と内側円筒部材64の内周壁の間の隙間、及び排気集約室18の内周壁と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面の間の隙間を通って上昇する。
この際、各燃料電池セル16の外側(空気極側)を通って流れる空気の一部は発電反応に利用される。また、排気集約室18の上方に上昇した空気の一部は、排気集約室18の噴出口18dから噴出する燃料の燃焼に利用される。燃焼により生成された排気ガス、及び発電、燃焼に利用されずに残った空気は、小穴64aを通って排気ガス排出流路21に流入する。排気ガス排出流路21に流入した排気ガス及び空気は、燃焼触媒器60により一酸化炭素が除去された後、排出される。
このように、各燃料電池セル16が発電可能な温度である650℃程度まで上昇し、各燃料電池セル16の内側(燃料極側)に改質された燃料が流れ、外側(空気極側)に空気が流れると、化学反応により起電力が発生する。この状態において、燃料電池セル収容容器8から引き出されているバスバー80にインバータ54が接続されると、各燃料電池セル16から電力が取り出され、発電が行われる。
次に、本発明の実施形態による固体酸化形燃料電池装置の作用効果について説明する。
本実施形態では、燃料電池モジュール2内部の熱効率を高めると共に、燃料電池モジュール2外部の補機ユニット4への熱影響を防止するために、燃料電池セル収容容器8の周囲を真空断熱層7で覆っている(図2参照)。この真空断熱層7は下端部が開放されているため、つまり真空断熱層7を形成する内側壁と外側壁とが下端部において連結されているため(図2参照)、真空断熱層7の下端部を構成する真空断熱容器6の下端部6aは、燃料電池セル収容容器8内の熱を、燃料電池セル収容容器8内の流路を形成する側壁及び真空断熱層7を形成する内側壁などから、真空断熱層7を形成する外側壁へと伝熱させて、真空断熱容器6の外部に放出させるヒートブリッジ発生部となる。
本実施形態では、このような真空断熱層7のヒートブリッジ発生部を介した燃料電池セル収容容器8内の熱の真空断熱層7外部への放熱を抑制すべく、真空断熱層7のヒートブリッジ発生部の周囲に水及び空気を流している。具体的には、真空断熱層7のヒートブリッジ発生部が位置する燃料電池セル収容容器8の下端部において、酸化剤ガス供給流路22への空気の供給を行うと共に、燃料ガス供給流路20内に水供給パイプ88を介した水の供給を行っている。これにより、供給した水及び空気によって真空断熱層7のヒートブリッジ発生部を冷却し、ヒートブリッジ発生部が外部へと伝熱する熱量を低減することができる、つまりヒートブリッジ発生部による伝熱を緩和することができる。そのため、燃料電池セル収容容器8内の熱がヒートブリッジ発生部を介して真空断熱層7外部へと放出されることに起因する、燃料電池モジュール2内の熱効率の低下及び燃料電池モジュール2外の補機ユニット4への熱影響を適切に抑制することが可能となる。
ここで、シャットダウン停止時又はブラックアウト停止時(発電停止モードに相当する)には水及び空気の供給が停止されるため、水及び空気によって真空断熱層7のヒートブリッジ発生部を冷却することができなくなるが、本実施形態では、そのような発電停止モードにおいて、燃料電池セル収容容器8内の熱が外部に放熱されてしまうことを抑制すべく、真空断熱容器6と燃料電池セル収容容器8との間に第1乃至第3の補助断熱材131、132、133を設けている(図2参照)。これにより、シャットダウン停止又はブラックアウト停止により、水及び空気によって真空断熱層7のヒートブリッジ発生部を冷却することができなくなっても、第1乃至第3の補助断熱材131、132、133の断熱機能により、燃料電池セル収容容器8内の熱が外部に放熱されてしまうことを適切に抑制することができる。
特に、本実施形態では、第1乃至第3の補助断熱材131、132、133を、真空断熱層7のヒートブリッジ発生部の周囲だけに設けるのではなく、燃料電池セル収容容器8の外表面のほぼ全体を覆うように設けて、真空断熱層7と燃料電池セル収容容器8とを非接触状態にしているので(図2参照)、発電停止モード時において、燃料電池セル収容容器8内の熱が真空断熱層7の内側壁に伝わることを適切に抑制することができる。よって、真空断熱層7のヒートブリッジ発生部を介して燃料電池セル収容容器8内の熱が外部に放熱されてしまうことを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、燃料電池セル収容容器8の最外周部分に空気が通過する酸化剤ガス供給流路22を設けているので、つまり燃料電池セル収容容器8内の最も外側の空間を空気で覆っているので、発電停止モード時に、上記した第1乃至第3の補助断熱材131、132、133に加えて、酸化剤ガス供給流路22内の空気が断熱層として機能することで、燃料電池セル収容容器8内の熱が外部に放熱されてしまうことを適切に抑制することができる。
また、本実施形態では、真空断熱層7を下面が開放された容器形状に形成し、ヒートブリッジ発生部を真空断熱層7の下端部にのみ設けているので(図2参照)、下面開放型の真空断熱層7で燃料電池セル収容容器8を覆うことにより、ヒートブリッジ発生部が下端部に限定される上に、真空断熱容器6と燃料電池セル収容容器8との間に第1の補助断熱材131及び第2の補助断熱材132を設けているため、簡易な構成にてヒートブリッジ発生部が受ける熱量を小さくすることができる。
また、本実施形態では、燃料電池セル収容容器8の上面に、ある程度の厚みを有する第1の補助断熱材131を設けることで、最も温度が高くなる燃料電池セル収容容器8の上面からの熱を第1の補助断熱材131によって適切に断熱することができ、一方で、燃料電池セル収容容器8の側面に、薄く構成され、フレキシブル性を有する第2の補助断熱材132を設けることで、第2の補助断熱材132によって燃料電池セル収容容器8の側面全体を適切に覆うことができると共に、燃料電池モジュール2の横幅を小さくすることができ、燃料電池モジュール2の設置面積を小さくすることが可能となる。
また、本実施形態では、第2の補助断熱材132に熱伝導率が低く断熱性能が高い材料を適用するので、上記のように第2の補助断熱材132を薄く構成しても、第2の補助断熱材132の断熱性能を確保することができる。つまり、燃料電池モジュール2の横幅を小さくしつつ、燃料電池セル収容容器8の側面についての断熱性能を適切に確保することが可能となる。
また、本実施形態では、撥水性を有する材料で第1乃至第3の補助断熱材131、132、133(以下ではこれらを区別しない場合には単に「補助断熱材」と表記する。)を構成するか、若しくは補助断熱材の表面を撥水処理する。こうする理由は、以下の通りである。燃料電池セル収容容器8の外部に存在する水蒸気は、補助断熱材の外部が真空断熱容器6で覆われているため、補助断熱材の外部に逃げることができずに、燃料電池セル収容容器8と真空断熱容器6との間に停滞する。SOFC1の停止冷却時には、このような水蒸気が凝縮して水となり、この水が、燃料電池セル収容容器8と補助断熱材との間や、補助断熱材と真空断熱容器6との間に付着する。そして、補助断熱材の気孔部に水が入り込んで膨張と収縮とを繰り返すことにより、補助断熱材が劣化してしまう場合がある。本実施形態では、このような不具合を防止するために、撥水性を有する材料で補助断熱材を構成するか、若しくは補助断熱材の表面を撥水処理している。
次に、上述した本発明の実施形態の変形例について説明する。
図9を参照して、本発明の実施形態の変形例による排気ガス排出流路について説明する。図9は、本発明の実施形態の変形例による排気ガス排出流路の拡大断面図である。
図9に示すように、本変形例による排気ガス排出流路21は、屈曲部21eにおいて、上述した排気ガス横断通路21bの代わりに(図2参照)、湾曲管21fに連結されており、この湾曲管21fは、下端部で排ガス排出パイプ58と連結されている(排ガス排出パイプ58を別途適用せずに、湾曲管21fを延長して排出パイプ58として機能させてもよい)。このような排気ガス排出流路21及び湾曲管21fによって形成される流路も、屈曲部22eにおいて燃料電池セル収容容器8の中央方向に屈曲しており、それにより、屈曲部22eよりも下流側の流路が、酸化剤ガス供給流路22と離隔されることとなる。
図10を参照して、本発明の実施形態の変形例による真空断熱層について説明する。図10は、本発明の実施形態の変形例による真空断熱容器の断面図である。
図10に示すように、本変形例による真空断熱容器6’は、その内部に、輻射熱を反射させる反射板6cが設けられている。反射板6cは、真空断熱容器6’の上面及び側面のそれぞれの内壁面と非接触の状態で、これらの内壁面に沿って延び、下端部において真空断熱容器6’の内壁に固定されている。このような反射板6cにより、真空断熱容器6’内には二つの真空断熱層7a、7bが形成される、つまり二重の真空断熱構造が形成される。
上記の変形例によれば、真空断熱容器6’内に設けた反射板6cによって輻射熱を反射させることで、輻射熱が真空断熱容器6’の外壁に伝熱されることを抑制することができる。また、反射板6cは低温領域R2(図9参照)に対応する真空断熱容器6’の下部において固定されているため、反射板6cを介した熱の外部への放出を抑制することができる。つまり、反射板6cの真空断熱容器6’への固定箇所において熱が外部に伝熱されることとなるが、この固定箇所が低温領域R2に位置するため、反射板6cによって伝熱される熱量を低減することができる(伝熱を緩和することができる)。また、反射板6cによって仕切られた空間(真空断熱層7a、7b)は、反射板6cの下方で連通するため、輻射熱を低減しつつも、輻射熱対策に起因する真空断熱構造の複雑化を回避することができる。
なお、上記した実施形態で示した真空断熱容器6及び変形例で示した真空断熱容器6’について、輻射対策のために、それらの内壁面を銅箔やアルミ箔によって更にメッキしてもよい。
また、上記した実施形態及び変形例では、所謂ジャケット式に構成された真空断熱容器6及び真空断熱容器6’(図3、図10参照)にて真空断熱層を形成していたが、このように真空断熱層を形成することに限定はされない。他の例では、燃料電池セル収容容器を真空断熱容器としてのハウジングで覆い、このハウジングと燃料電池セル収容容器との間に真空断熱層を形成して、この真空断熱層の内部に上記したような流路を溶接することなどにより形成してもよい。
また、上記した実施形態では、補助断熱材として、第1の補助断熱材131、第2の補助断熱材132及び第3の補助断熱材133を適用していたが、他の例では、第1の補助断熱材131及び第2の補助断熱材132のみを補助断熱材として適用することとし、第3の補助断熱材133を適用しなくてもよい。前述したように、第1の補助断熱材131及び第2の補助断熱材132は、それらの断熱機能によって、燃料電池セル収容容器8の上面及び側面を介して真空断熱層7のヒートブリッジ発生部へと伝わる熱を抑制するのに有効なものであるため、第1の補助断熱材131及び第2の補助断熱材132のみを設けることとしてもよい。
1 固体酸化物形燃料電池装置
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
6、6’ 真空断熱容器
6a 真空断熱容器の下端部(ヒートブリッジ発生部)
6c 反射板
7 真空断熱層
8 燃料電池セル収容容器
10 発電室(発電部)
10a 燃焼部
16 燃料電池セル
20 燃料ガス供給流路
21 排気ガス排出流路
21a、21e 屈曲部
21f 湾曲管
21b 排気ガス横断通路
21c 排気ガス室
22 酸化剤ガス供給流路
22a 酸化剤ガス供給部
28 水流量調整ユニット(水供給装置)
36 脱硫器
38 燃料ブロア(燃料供給装置)
45 空気流量調整ユニット(酸化剤ガス供給装置)
60 燃焼触媒器
76 燃料ガス集約室(燃料ガス集約部)
86 蒸発部
86a 傾斜板
86c 水溜め部
94 改質部
96 改質触媒
106 コントローラ
115 蓄熱材
117、118 セラミック接着剤
121 連通通路
122、124 配線
131 第1の補助断熱材
132 第2の補助断熱材
133 第3の補助断熱材

Claims (7)

  1. 燃料ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する複数の燃料電池セルを有する固体酸化形燃料電池装置において、
    上記複数の燃料電池セルを収容する燃料電池セル収容容器と、
    上記燃料電池セル収容容器の外表面を覆うように設けられ、この燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されることを抑制する真空断熱層であって、上記燃料電池セル収容容器内の熱を伝熱するヒートブリッジが発生するヒートブリッジ発生部を一部分に含む上記真空断熱層と、
    上記燃料電池セル収容容器内に設けられ、水蒸気によって原燃料ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、この燃料ガスを上記複数の燃料電池セルに供給する改質部と、
    上記燃料電池セル収容容器内に設けられ、上記複数の燃料電池セルにおいて発電に利用されずに残った燃料ガスを燃焼させ、燃焼熱により上記改質部を加熱する燃焼部と、
    上記改質部に上記原燃料ガスを供給するための燃料供給装置と、
    上記改質部内で水蒸気改質させるための水又は水蒸気を供給するための水供給装置と、
    上記複数の燃料電池セルに上記酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給装置と、
    上記燃料供給装置、上記水供給装置、及び上記酸化剤ガス供給装置を制御すると共に、上記複数の燃料電池セルからの電力の取り出しを制御するコントローラと、
    を有し、
    上記真空断熱層の上記ヒートブリッジ発生部を冷却するように、上記酸化剤ガス供給装置から供給された酸化剤ガスが流れる流路、及び/又は、上記水供給装置から供給された水又は水蒸気が流れる流路が、上記燃料電池セル収容容器内に形成されており、
    上記真空断熱層と上記燃料電池セル収容容器との間に設けられた補助断熱材を更に有し、この補助断熱材によって、上記水供給装置による水の供給及び上記酸化剤ガス供給装置による酸化剤ガスの供給がともに停止した上記固体酸化形燃料電池装置の発電停止モードにおいて、上記真空断熱層の上記ヒートブリッジ発生部を介して上記燃料電池セル収容容器内の熱が外部に放熱されることを抑制する、ことを特徴とする固体酸化形燃料電池装置。
  2. 上記燃料電池セル収容容器の最外周部分に、上記酸化剤ガス供給装置から供給された酸化剤ガスが通過する酸化剤ガス供給流路が形成されており、この酸化剤ガス供給流路が、内部の酸化剤ガスによって断熱層を構成する、請求項1に記載の固体酸化形燃料電池装置。
  3. 上記補助断熱材は、上記燃料電池セル収容容器の外表面のほぼ全体を覆うように設けられ、それにより、上記真空断熱層と上記燃料電池セル収容容器との非接触状態が確保されている、請求項2に記載の固体酸化形燃料電池装置。
  4. 上記真空断熱層は、下面が開放された容器形状に形成され、下端部にのみ上記ヒートブリッジ発生部を有する、請求項3に記載の固体酸化形燃料電池装置。
  5. 上記補助断熱材は、上記燃料電池セル収容容器の上面を覆うように設けられた第1の補助断熱材と、上記燃料電池セル収容容器の側面を覆うように設けられた第2の補助断熱材と、を含み、
    上記第2の補助断熱材は、上記第1の補助断熱材よりも厚みが薄く構成されている、請求項4に記載の固体酸化形燃料電池装置。
  6. 上記第2の補助断熱材は、上記第1の補助断熱材よりも、熱伝導率が低く、断熱性能が高い、請求項5に記載の固体酸化形燃料電池装置。
  7. 上記補助断熱材は、撥水性を有する材料で構成されているか、若しくは表面が撥水処理されている、請求項4に記載の固体酸化形燃料電池装置。
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