以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建築現場において鉄骨軸組工法により構築中の2階建て建物を対象として、本発明の支柱支持具が使用される。まず、建築中の建物10について図1、図2を参照しつつ説明する。図1は建築中の建物10を示す概略斜視図、図2は床パネル固定部材21周辺の床パネル16の縦断面図である。
図1に示すように、建築中の建物10は、基礎11の上において下階部としての一階部分12及び上階部としての二階部分13が構築されている途中の状態である。この建物10の外壁は、外壁パネル15が柱や大梁等の躯体に対して取り付けられることで構築されるものであり、一階部分12においては外壁パネル15の取り付け作業が終了しており、二階部分13においては外壁パネル15が部分的に取り付けられた状態になっている。なお、外壁パネル15は、窯業系サイディングボード等の外壁面材と、その外壁面材に取り付けられた下地フレームとを有している。
建物10の周囲には、外壁パネル15の取り付け作業などを行う際に使用する足場(図示略)が組まれており、作業者は、自身に装着した安全帯を、足場やその足場に取り付けられた親綱に連結した状態で、足場の上に乗って作業を行うことになる。
図2に示すように、二階部分13の床部は、軽量気泡コンクリート(ALC)等の床パネル16が床大梁17の上に設置されることで構築されるものであり、二階部分13においては、床大梁17の上に床パネル16を載せる作業が終了している。床パネル16は、長方形状に形成されており、横並びに複数配置されている。各床パネル16は、互いに平行に延びている複数の床大梁17に架け渡されている。なお、床パネル16が床面材に相当する。
床パネル16は、床パネル固定部材21を用いて床大梁17に対して固定されている。床パネル16には、床パネル固定部材21が挿し入れられた固定孔22が設けられている。固定孔22は、床パネル16の周縁部に沿って複数設けられており、各固定孔22は、床パネル16を上下に貫通する貫通孔になっている。固定孔22は、床パネル16の上面から下方に向けて延びた座掘り部23を有しており、固定孔22の下端が床大梁17に上下に重ならない位置に配置されている。床大梁17は、ウェブ17aと、そのウェブ17aを挟んで上下に設けられた一対のフランジ17b,17cとを有しており、床パネル16は、上側フランジ17bの上に載せられている。
床パネル固定部材21は、固定孔22に挿入されている挿入部24と、座掘り部23の底面に載せられた座板部25と、座板部25を貫通した状態で挿入部24に螺着されているボルト部26と、挿入部24から側方に突出した状態で床大梁17に下方から引っ掛かっているフック部27とを有している。フック部27は、挿入部24の下端部から側方に延びていることで床大梁17の上側フランジ17bの下側に配置されており、ボルト部26が挿入部24にねじ込まれることで、座板部25との間に床パネル16及び上側フランジ17bを挟み込んだ状態になっている。なお、ボルト部26の頭部26a及び座板部25は座掘り部23内に収納されている。
フック部27は、挿入部24に対して回動可能に軸支されており、挿入部24に重なる向きに回動することで突出状態から折り畳み状態に移行可能になっている。床パネル固定部材21を用いて床パネル16の固定作業を行う場合、まず、フック部27を折り畳み状態に移行させ、その状態のまま挿入部24及びフック部27の両方を固定孔22に上方から挿入する。そして、挿入部24を回動させて突出状態に移行させ、床大梁17の上側フランジ17bに下方から引っ掛け、その状態でボルト部26を挿入部24に対してねじ込むことで、床パネル16を床大梁17に固定する。このように、作業者は、床パネル固定部材21を用いることで、床パネル16の上に居ながらにして床パネル16の固定作業を行うことができる。
図1の説明に戻り、作業者は、二階部分13において床パネル16を設置した後、外壁パネル15の設置作業を開始する前に、安全支柱としてのスタンション31を外壁パネル15の設置位置よりも屋内側に設置する。スタンション31は、円筒状の鋼管により形成された仮設支柱であり、外壁パネル15の設置位置に沿って所定間隔で複数並べられている。作業者は、隣り合うスタンション31に架け渡すようにして親綱32を設置し、スタンション31や親綱32に自身の安全帯を連結した状態で、外壁パネル15の設置作業等を行う。この場合、作業者が建物外側の足場や親綱に安全帯を連結した場合とは異なり、安全帯が外壁パネル15の設置位置を屋内側に横断することがないため、外壁パネル15の設置作業等に支障にならない状態で安全帯をスタンション31や親綱32に連結することができる。なお、スタンション31は、仮設支柱と称することもできる。
スタンション31は、支柱支持具としてのスタンション台座33を介して床パネル16や床大梁17に対して固定されている。ここで、スタンション31が設置されている状態では、床パネル16の全ての固定孔22に対して床パネル固定部材21が取り付けられているわけではなく、床パネル固定部材21が取り付けられていない固定孔22Aが存在しており、スタンション台座33は、この固定孔22Aを利用して床パネル16や床大梁17に取り付けられている。固定孔22Aは、外壁パネル15の設置位置に沿って並ぶ複数の固定孔22に含まれている。例えば、1つの床パネル16において、2つの固定孔22が外壁パネル15の設置位置に沿って並んでいる構成では、これら固定孔22のうち一方に床パネル固定部材21が取り付けられ、他方が床パネル固定部材21の取り付けられない固定孔22Aとして利用される。
ちなみに、二階部分13において外壁パネル15の設置作業が終了するなどして、作業者が安全帯をスタンション31や親綱32に連結する必要がなくなった場合には、スタンション台座33が固定孔22Aから取り外され、その固定孔22Aに対しても床パネル固定部材21が取り付けられる。これにより、建物10が完成した状態では、二階部分13において、床大梁17に対する床パネル16の固定強度が適正に確保されることになる。
スタンション台座33が床パネル16に取り付けられた状態について、図3を参照しつつ説明する。図3はスタンション台座33周辺の床パネル16の縦断面図である。
まず、スタンション台座33が固定孔22Aを介して床パネル16及び床大梁17に対して固定された状態について説明する。図3に示すように、スタンション台座33は、固定孔22Aに上方から挿し入れられている台座本体41と、台座本体41に対して上下方向に移動可能な移動軸部材42と、台座本体41に対して下方から係止された係止片43とを有している。この場合、スタンション台座33が支柱支持具に相当し、台座本体41が支持具本体に相当し、移動軸部材42が軸部材に相当し、係止片43が引っ掛け部材に相当する。
台座本体41は、スタンション31を支持しているスタンション支持部45と、移動軸部材42を支持している移動軸支持部46と、床パネル16の上に載せられる載置板部47とを有しており、これら支持部45,46及び載置板部47は金属材料により一体成型されている。スタンション支持部45及び移動軸支持部46は、いずれも円筒状に形成されており、移動軸支持部46の長さ寸法(例えば25〜30cm)がスタンション支持部45の長さ寸法(例えば15〜20cm)より大きくなっている。これら支持部45,46においては、それぞれの内部空間が上方及び下方の両方に向けて開放されており、スタンション支持部45の内径は移動軸支持部46の外径よりも大きくされている。移動軸支持部46は、スタンション支持部45の内部空間を上下方向に貫通した状態で設けられており、スタンション支持部45から上方及び下方の両方に突出している。
スタンション支持部45は、その底面を形成する底部45aを有している。この底部45aは、そのスタンション支持部45の下端部と内周面と移動軸支持部46の外周面とを連結している。スタンション31は、スタンション支持部45の内部空間に上方から挿し入れられていることで、底部45aの上に載った状態になっている。移動軸支持部46は、底部45aから上下両方に延びた状態になっており、上方に延びた部分は、スタンション31の内部空間に下方から入り込んでいる。
スタンション31においては、その外径がスタンション支持部45の内径より小さくされており、その内径が移動軸支持部46の外径より大きくされている。スタンション支持部45には、スタンション支持部45に対してスタンション31を固定する固定ボルト51が取り付けられている。固定ボルト51は、スタンション支持部45の外周部を貫通して内部に入り込むことが可能な状態で、スタンション支持部45の外周部に対して設けられたボルト受け部52に対して螺着されている。この場合、固定ボルト51が、スタンション支持部45の内部においてスタンション31の外周部を押圧していることで、そのスタンション31がスタンション支持部45に対して固定されている。
載置板部47は、スタンション支持部45の外周部から側方に向けて突出したフランジになっている。載置板部47は、スタンション支持部45の下端部から上方に離間した位置に配置されており、スタンション支持部45の下端部が固定孔22Aの座掘り部23に上方から入り込んだ状態で、その座掘り部23の外側において床パネル16の上面に上方から引っ掛かっている。なお、載置板部47からのスタンション支持部45の下方への突出寸法は、座掘り部23の深さ寸法と同じ又はそれよりも小さくされており、スタンション支持部45の下端面が座掘り部23の底面に接触しているか否かに関係なく、載置板部47が床パネル16の上面に当接した状態になっている。
移動軸支持部46は、床パネル16よりも下方に突出している一方で、床大梁17の上側フランジ17bより下方には突出していない。
移動軸部材42は、長尺状のボルト部材とされており、上端に配置された頭部42aを有している。移動軸部材42においては、雄ネジ部が頭部42aから下方に向けて延びており、雄ネジ部が形成されていない非雄ネジ部分42bが移動軸部材42の下端から所定長さ(例えば5cm)だけ上方に向けて延びている。移動軸部材42は、移動軸支持部46の内部空間を上下方向に貫通した状態で設けられており、移動軸支持部46から上方及び下方の両方に突出している。この場合、移動軸部材42の外径が移動軸支持部46の内径よりも小さくされており、移動軸部材42の長さ寸法(例えば35〜40cm)は移動軸支持部46の長さ寸法よりも大きくされている。
移動軸部材42は、その雄ネジ部にナット部材55が螺着された状態で移動軸支持部46に挿通されており、そのナット部材55は、移動軸部材42の頭部42aと移動軸支持部46との間に配置されている。ナット部材55は、移動軸支持部46の内径よりも大きい外径を有しており、移動軸支持部46に上方から引っ掛かっていることで、移動軸部材42が移動軸支持部46に対して下方に移動することを規制する規制部材に相当する。
係止片43は、移動軸部材42の非雄ネジ部分42bに取り付けられており、床パネル16の下面に沿って延びた状態で、床大梁17の上側フランジ17bに下方から引っ掛けられている。この場合、係止片43は、スタンション台座33が床パネル16及び床大梁17に対して相対的に上方に移動することを規制している。係止片43は、非雄ネジ部分42bの下端部に対して回動軸部61により回動可能に軸支されている。この場合、係止片43は、回動先端側である回動先端部56と、この回動先端部56よりも回動基端側に配置された回動基端部57とを有している。
また、係止片43は、移動軸部材42に直交する方向に延びており、移動軸支持部46の下端面46aに下方から引っ掛かった状態になっている。この場合、係止片43は、移動軸部材42の軸線方向に対して所定角度(90度程度)になっており、移動軸部材42が移動軸支持部46に対して相対的に上方に移動することを規制している。このように、係止片43は、移動軸支持部46及び床大梁17の両方に下方から引っ掛かっており、仮に床大梁17に引っ掛かっていなくても、移動軸支持部46に引っ掛かっていることで、移動軸支持部46に対する移動軸部材42の相対的な位置を保持することになる。本実施形態では、スタンション台座33のこの状態を自己保持状態と称する。なお、スタンション台座33が自己保持状態にある場合、係止片43は移動軸支持部46に下方から引っ掛かった引っ掛かり状態にあることになる。また、移動軸支持部46の下端面46aは、移動軸部材42に対して直交している。
スタンション台座33が自己保持状態にある場合、このスタンション台座33においては、係止片43とナット部材55との離間距離が、台座本体41の高さ寸法と同じになっている。この場合、台座本体41が係止片43とナット部材55との間に挟み込まれた状態になっている。
次に、床パネル16に取り付けられていない状態のスタンション台座33について、図4〜図6を参照しつつ説明する。図4はスタンション台座33の正面図、図5は係止片43の斜視図、図6は係止片の動作を説明するための図である。なお、図4においては、(a)に移動軸支持部46に係止片43が引っ掛かった状態を示し、(a)に係止片43が移動軸支持部46から離間した状態を示す。
図4(a)に示すように、自己保持状態にあるスタンション台座33においてナット部材55が、移動軸部材42に対する回転に伴って係止片43から遠ざかった(移動軸部材42の頭部42aに近付いた)場合、係止片43とナット部材55との間に台座本体41が挟み込まれた状態が解除される。この場合、移動軸部材42は、移動軸支持部46に対して相対的に移動可能な状態になり、本実施形態では、スタンション台座33のこの状態を動作可能状態と称する。つまり、スタンション台座33は、ナット部材55が移動軸支持部46に対して緩められることで、自己保持状態から動作可能状態に移行する。なお、スタンション台座33が動作可能状態にある場合、係止片43は、移動軸支持部46から離間することで非引っ掛かり状態に移行することになる。
図4(b)に示すように、動作可能状態にあるスタンション台座33においては、頭部42aが移動軸支持部46に近付く向きに移動軸部材42が移動軸支持部46に対して相対的に移動することで、係止片43が移動軸支持部46から離間した状態になる。
上述したように、係止片43は、回動軸部61を回転軸として回動可能になっており、回動軸部61の軸線は、移動軸部材42に直交する方向に延びている。この場合、係止片43は、その回動先端部が上下方向に移動する向きで回動することになる。係止片43は、回動軸部61を中心に回動することで、移動軸部材42に交差する方向に延びた交差状態(実線で示した状態)と、移動軸部材42に沿って延びている延び状態(破線で示した状態)と、に移行可能になっている。回動軸部61の回動軸は、移動軸部材42の中心線に重なる位置に配置されている。
図5に示すように、係止片43は、全体として円筒状に形成されている。係止片43においては、円筒の中心線が延びる方向(長手方向)に回動先端部56と回動基端部57とが横並びに配置されており、これら回動先端部56及び回動基端部57は金属材料により一体成型されている。係止片43においては、その中心線が回動先端部56及び回動基端部57の中心線になっており、その外径D1が、回動先端部56及び回動基端部57の各外径になっている。なお、係止片43の外径D1は、移動軸支持部46の外径D2(図6(a)参照)よりも小さくなっている。
移動軸部材42は、係止片43の内部空間に入り込んだ状態になっている。回動基端部57は、係止片43の内部空間を径方向に開放した外周開口部65,66と、係止片43の内部空間を長手方向に開放した端面開口部67とを有している。外周開口部65,66は、係止片43の外周部において周方向に離間した位置に配置されており、係止片43の中心線を挟んで対向している。端面開口部67は、係止片43の一端に配置されており、外周開口部65,66のうち第1外周開口部65は、端面開口部67から回動基端部57に向けて延び、第2外周開口部66は、端面開口部67から回動基端部57側に離間している。
係止片43の外周部は、外周開口部65,66を挟んで対向する一対の側面部分71と、これら側面部分71を連結する連結部分72,73とを有している。各側面部分71には、回動軸部61を取り付けるための軸孔71aがそれぞれ設けられており、回動軸部61は、これら軸孔71aに架け渡された状態で移動軸部材42を軸支している。移動軸部材42は、第1外周開口部65及び端面開口部67により形成された開放領域から一対の側面部分71の間に入り込んだ状態になっており、係止片43に対して相対的に回動することで、第1外周開口部65と端面開口部67との間を行き来することが可能になっている。
係止片43が交差状態にある場合、移動軸部材42は、第1外周開口部65を通じて係止片43の内部空間に入り込み、第2外周開口部66を通じて係止片43から突出している。この場合、係止片43が第2外周開口部66を有していることで、移動軸部材42の端部が係止片43の外周部に引っ掛からずに交差状態に移行できるようになっている。一方、係止片43が延び状態にある場合、移動軸部材42は、端面開口部67を通じて係止片43の内部空間に入り込み、そのまま回動基端部57に向けて延びている。
回動軸部61は、係止片43の長手方向においてその係止片43の中央位置よりも端面開口部67寄りの位置に配置されている。また、係止片43の内部空間は、回動基端部57内に形成されている一方で、回動先端部56内には形成されていない。つまり、回動基端部57が中空部を有している一方で、回動先端部56は中空部を有していない。これらのことにより、回動軸部61は、係止片43の中心位置よりも端面開口部67寄りの位置に配置されている。このため、係止片43は、回動軸部61を介して移動軸部材42により吊り下げられた場合に、端面開口部67が上端になる向きで、回動先端部56が回動基端部57から下方に向けた延びた状態になる。
連結部分72,73は、回動基端部57の径方向において一対の側面部分71の間に配置されている。これら連結部分72,73のうち、第1連結部分72は、係止片43の長手方向において端面開口部67と第2外周開口部66との間に配置されており、第2連結部分73は、係止片43の長手方向において回動先端部56と第1外周開口部65との間に配置されている。なお、これら連結部分72,73に加えて、回動先端部56も一対の側面部分71を連結していることになる。また、一対の側面部分71が一対の側面部に相当し、第1連結部分72が連結部に相当する。
係止片43は、その径方向及び長手方向の両方に延びる平坦面75,76を有している。これら平坦面75,76は、いずれも円筒状の係止片43の弦に沿って延びており、第1平坦面75は回動先端部56に配置され、第2平坦面76は回動基端部57に配置されている。係止片43の長手方向において、第1平坦面75は回動先端部56の全体に亘って延びており、第2平坦面76は回動基端部57の全体に亘って延びている。これら平坦面75,76は、係止片43の長手方向において横並びに配置されており、第2平坦面76が第1平坦面75より係止片43の中心線から遠い位置に配置されていることで、平坦面75,76の境界部には段差が形成されている。
回動基端部57においては、第2平坦面76が第1外周開口部65の周縁部に沿って延びている。この場合、第2平坦面76は、一対の側面部分71及び第2連結部分73の各側端面とされており、コ字状に形成されている。
係止片43の両端面のうち回動基端部57側の端面は、係止片43の径方向に対して傾斜した傾斜端面43aになっている。傾斜端面43aは、一対の側面部分71及び第1連結部分72の各端面により形成されており、外側に向けて曲面的に膨らんだ湾曲形状になっている。回動軸部61の軸線に直交する方向において、傾斜端面43aと回動軸部61との離間距離は均一にはなっておらず、傾斜端面43aにおいて第1連結部分72側の部分と回動軸部61との離間距離が最も大きくなっており、第2平坦面76側の部分と回動軸部61との離間距離が最も小さくなっている。また、傾斜端面43aにおいては、係止片43の径方向に対する傾斜角度も均一にはなっておらず、第1連結部分72側の部分の傾斜角度が最も小さくなっており、第2平坦面76側の部分の傾斜角度が最も大きくなっている。
回動軸部61の軸線に直交する方向においては、第1平坦面75と回動軸部61との離間距離が、傾斜端面43aと回動軸部61との離間距離よりも小さくなっている。回動軸部61に対する離間距離は、第1平坦面75において傾斜端面43aとの接続部分が最も大きく、係止片43の径方向において回動軸部61に横並びになっている部分が最も小さくなっている。
図6(a)に示すように、係止片43が移動軸支持部46から離間した位置において延び状態にある場合、移動軸支持部46の下端面46aと係止片43の傾斜端面43aとが対向した状態になっている。この場合、傾斜端面43aは下端面46aに対して傾斜しており、これら端面43a,46aの離間距離は、係止片43の径方向において第1平坦面75(第1外周開口部65)側から第2外周開口部66側に向けて徐々に小さく(漸減)している。特に、回動軸部61の軸線方向から係止片43を見た場合に傾斜端面43aが移動軸支持部46に向けて膨らんだ形状になっていることに起因して、傾斜端面43aと下端面46aとの離間距離の減少率は、係止片43の径方向において第1平坦面75側から第2外周開口部66側に向けて徐々に小さくなっている。
なお、移動軸支持部46の下端面46aと係止片43の傾斜端面43aとがそれぞれ対向面に相当する。また、移動軸支持部46の下端面46aは、係止片43が下方から押し付けられる受け面に相当する。
移動軸部材42が移動軸支持部46に対して相対的に移動することで、係止片43が延び状態のまま移動軸支持部46に近付き、係止片43の傾斜端面43aが移動軸支持部46の下端面46aに押し付けられた場合、図6(b)に示すように、第1平坦面75が上方を向く側(交差状態に移行する側)に係止片43が移動軸部材42に対して回動し始める。なお、係止片43においては、回動基端部57が移動軸支持部46に押し付けられる押し付け部に相当する。
係止片43においては、その径方向のうち回動軸部61の軸線に直交する方向において、傾斜端面43aが一方から他方に向けて下端面46aに対して膨らむように傾斜しているため、傾斜端面43aが移動軸支持部46の下端面46aに重なっている状態では、図6(c)に示すように、係止片43は、移動軸支持部46に近付くことで回動角度が更に大きくなる。この場合、係止片43の傾斜端面43aは、移動軸支持部46の下端面46aに押し付けられることで、移動軸部材42に対する係止片43の回動を促進する回動促進面に相当する。
そして、図4(b)に示すように、係止片43が交差状態に移行するまで、移動軸部材42が移動軸支持部46に対して相対的に移動した場合、係止片43の第2平坦面76が移動軸支持部46の下端面46aに重なることになる。この場合、第1平坦面75及び下端面46aはいずれも外側に膨らむ形状にはなっていないため、係止片43が移動軸支持部46に対して更に押し付けられたとしても、係止片43が移動軸部材42に対して回動することがない。このため、係止片43の第1平坦面75は、移動軸支持部46の下端面46aに押し付けられることで係止片43を交差状態にて保持する状態保持面に相当する。
次に、建物10において床パネル16にスタンション台座33を取り付ける手順について、図3、図6〜図8を参照しつつ説明する。図7、図8は、床パネル16に対するスタンション台座33の取り付け手順を示す図である。
床パネル16に対するスタンション台座33の取り付け作業は、建物10の二階部分13において外壁パネル15の取り付け作業を行う前に行われる。まず、図7(a)に示すように、スタンション台座33の係止片43を床パネル16の固定孔22Aに上方から挿し入れる。この場合、スタンション台座33については、ナット部材55を十分に緩めて係止片43を移動軸支持部46から下方に離間させておくことで、係止片43がその重心のずれにより延び状態で保持されるようになっている。
ここで、係止片43においては、移動軸部材42の側方に第1連結部分72が配置されているため、固定孔22Aに挿し入れる際に係止片43が床パネル16に引っ掛かったとしても、係止片43の回動方向のうち第1連結部分72が移動軸部材42に近付く側への回動が規制される。この場合、作業者は、係止片43が回動方向のうち交差状態に移行する側に回動しないように気を付ければ済むため、係止片43を固定孔22Aに挿し入れる作業を容易化できる。
係止片43を固定孔22Aに挿し入れることで、図7(b)に示すように、スタンション台座33を床パネル16の上に載せる。この場合、スタンション台座33においては、載置板部47が床パネル16の上面に重ねられ、移動軸支持部46の下端部が固定孔22Aから下方に突出した状態になっている。
そして、図8(a)に示すように、移動軸部材42を上方に引き上げる。この場合、上述したように、係止片43の傾斜端面43aが移動軸支持部46の下端面46aに下方から押し付けられることで、係止片43が回動して交差状態に移行し、係止片43の第2平坦面76が移動軸支持部46の下端面46aに重なり、第1平坦面75が床大梁17の上側フランジ17bの下面に重なる。その後、ナット部材55を移動軸支持部46に対して締め付けることで、図8(b)に示すように、スタンション台座33を自己保持状態に移行させる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
スタンション台座33は、係止片43が移動軸支持部46に対して引っ掛かり状態になっていることで自己保持状態に保持されるため、係止片43が意図せずに非引っ掛かり状態に移行するということを抑制できる。このため、引っ掛かり状態になっている係止片43を利用してスタンション台座33が床パネル16に対して固定されていれば、スタンション31を利用した安全対策において安全性が低下するということを抑制できる。また、係止片43が床パネル16や床大梁17に接触していることで引っ掛かり状態に保持される構成とは異なり、係止片43と移動軸支持部46との離間距離を床パネル16の厚みや床大梁17の形状等に厳密に適合させなくても係止片43を引っ掛かり状態に保持できるため、スタンション台座33の構造が複雑になることを抑制できる。
移動軸部材42を移動軸支持部46に対して上方に引き上げるという容易な作業を行うことで、係止片43が非引っ掛かり状態から引っ掛かり状態に移行するため、スタンション台座33を床パネル16に対して固定する際の作業負担を低減できる。
係止片43の傾斜端面43aが曲面的に外側に膨らんでいるため、移動軸支持部46に対する移動軸部材42の上方への移動距離を大きくするほど、移動軸部材42に対する係止片43の回動角度が大きくなる。したがって、作業者は、特別な技術を駆使しなくても係止片43を非引っ掛かり状態から引っ掛かり状態に容易に移行させることができる。
係止片43が引っ掛かり状態にある場合、係止片43の第2平坦面76が移動軸支持部46の下端面46aに重なっているため、移動軸部材42が移動軸支持部46に対して下方に移動しない限りは係止片43が意図せずに回動するということが生じないようになっている。しかも、係止片43においては、第2平坦面76が傾斜端面43aの端部から延びているため、移動軸支持部46の下端面46aに対する接触対象が傾斜端面43aから第2平坦面76に移行しやすくなっている。つまり、係止片43が延び状態から交差状態に移行しやすくなっている。
係止片43においては、傾斜端面43aを形成する一対の側面部分71の間に移動軸部材42が配置されているため、移動軸部材42を上方に引き上げても係止片43が交差状態から延び状態に移行しにくい場合に、移動軸部材42をその軸線を中心に左右に回転させて係止片43の状態移行を促したとしても、係止片43が移動軸支持部46の下方位置から側方にずれてしまうということを抑制できる。つまり、移動軸支持部46を上方に引き上げる際の操作性を高めることができる。
係止片43においては、回動基端部57が中空になっている一方で、回動先端部56が中実になっているため、回動基端部57の重さを利用することで、スタンション台座33が自己保持状態にない場合に係止片43が延び状態に移行しやすい構成を実現できる。このため、作業者がスタンション台座33を床パネル16の固定孔22Aに上方から挿し入れる際に、係止片43が意図せずに交差状態に移行してしまうということを抑制できる。
スタンション台座33を床パネル16の固定孔22Aに対して設置した場合に、移動軸支持部46が床パネル16から下方に突出するため、移動軸部材42が上下方向に移動する際に床パネル16に接触することを防止できる。このため、移動軸部材42の雄ネジ部によって床パネル16に傷が付いたり破損したりすることを抑制できる。その一方で、移動軸支持部46は床大梁17の上側フランジ17bよりも下方に突出していないため、引っ掛かり状態にある係止片43が上側フランジ17bに下方から当接する構成を容易に実現できる。例えば、移動軸支持部46が上側フランジ17bよりも下方に突出している構成では、係止片43が移動軸支持部46の下端部よりも上方に回り込んだ形状にしないと上側フランジ17bに当接させることが困難になってしまう。つまり、係止片43を状態移行させる構造が複雑になることが懸念される。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、スタンション台座33が床パネル16に取り付けられた状態で、係止片43が床大梁17の上側フランジ17bに下方から引っ掛かっていたが、係止片43が引っ掛かっている対象は、下側フランジ17cでもよい。また、係止片43は、床大梁17に引っ掛かっているのではなく、床パネル16の下面に下方から引っ掛かっていてもよい。この場合でも、床パネル16が床材としての強度を有していることで、スタンション台座33が床パネル16に固定された状態を好適に保持できる。
(2)上記実施形態では、スタンション台座33が床パネル16に載せられた状態で、移動軸支持部46が床パネル16よりも下方に突出していたが、移動軸支持部46は、床パネル16よりも下方に突出していなくてもよい。また、移動軸支持部46は、床大梁17の上側フランジ17bよりも下方に突出していてもよい。
(3)上記実施形態では、スタンション台座33において、載置板部47がスタンション支持部45から側方に向けて延びていたが、載置板部47は、移動軸支持部46から側方に向けて延びていてもよい。この場合、床パネル16とスタンション支持部45との間に載置板部47が配置されることになるため、スタンション支持部45は、固定孔22Aの座掘り部23に入り込んでいるのではなく、固定孔22Aから上方に離間した位置に配置されることになる。
(4)係止片43は、移動軸部材42に対して回動可能に設けられていれば、その移動軸部材42に対して軸支されていなくてもよい。例えば、回動軸に直交する方向において移動軸部材42に対して移動可能に設けられていてもよい。
(5)上記実施形態では、係止片43の傾斜端面43aが外側に向けて曲面的に膨らんだ形状になっていたが、傾斜端面43aは、複数の平坦面により段階的に外側に向けて膨らんだ形状になっていてもよい。また、傾斜端面43aは、外側に向けて膨らむのではなく、内側に向けて凹んでいてもよく、膨らみも凹みもせずに直線的に延びる平坦面とされていてもよい。
(6)上記実施形態では、係止片43の傾斜端面43aが、係止片43の径方向の一端から他端に向けて傾斜した形状になっていたが、係止片43の径方向の中間位置から両端に向けて傾斜した形状になっていてもよい。
(7)上記実施形態では、係止片43の両端面のうち一方が傾斜端面43aとされていたが、両端面のそれぞれが傾斜端面43aとされていてもよい。この場合、係止片43は、上下方向に延びた状態になっていれば、係止片43の両端のいずれが移動軸支持部46の下端面46aに対向していても、移動軸部材42を上方に引き上げることで係止片43を引っ掛かり状態(交差状態)に移行させることができる。
(8)上記実施形態では、延び状態にある係止片43の上端面(傾斜端面43a)と移動軸支持部46の下端面46aとのうち、係止片43の上端面が水平方向に対して傾斜していたが、移動軸支持部46の下端面46aが水平方向に対して傾斜していてもよい。要は、係止片43の上端面と移動軸支持部46の下端面46aとが平行になっていなければ、係止片43の上端面が移動軸支持部46の下端面46aに押し付けられることで係止片43が移動軸支持部46に対して回動する構成を実現できる。
この場合、移動軸支持部46の下端面46aは、係止片43の上端面に対して傾斜していれば、下方に向けて曲面的に膨らんだ形状や、上方に向けて凹んだ形状、膨らみも凹みもせずに直線的に延びる平坦形状とされていてもよい。
(9)上記実施形態では、係止片43の径方向において、第1平坦面75が第2平坦面76よりも係止片43の中心線に対して近い位置に配置されていたが、第2平坦面76が第1平坦面75よりも係止片43の中心線に対して近い位置に配置されていてもよく、第2平坦面76と第1平坦面75とで係止片43の中心線までの距離が同じにされていてもよい。要は、スタンション台座33が床パネル16に設置された状態で、係止片43が引っ掛かり状態にある場合に、第2平坦面76が移動軸支持部46の下端面46aに重なり、且つ第1平坦面75が床大梁17の下面に重なる状態を実現できればよい。
(10)上記実施形態では、スタンション台座33が床パネル16に対して取り付けられた状態では、係止片43の回動先端部56(第1平坦面75)が床大梁17の上側フランジ17bの下面に重なっていたが、回動先端部56は床大梁17の上側フランジ17bから下方に離間していてもよい。この場合でも、係止片43は、床大梁17の上側フランジ17bに下方から引っ掛かることで、スタンション台座33の上方への移動を規制することができる。
(11)上記実施形態では、係止片43が引っ掛かり状態になっている場合、係止片43が移動軸部材42に直交していることで係止片43の第2平坦面76と移動軸支持部46の下端面46aとが重なっていたが、第2平坦面76と下端面46aとが重なっていれば、係止片43自体が移動軸部材42に直交していなくてもよい。例えば、係止片43が直線的に延びる円筒状ではなく、曲線的に延びる円筒状に係止された構成では、第2平坦面76と下端面46aとが重なっている状態でも、係止片43が移動軸部材42に直交していることにはならない。
(12)上記実施形態では、係止片43が移動軸支持部46に対して下方から係止される構成としたが、係止片43は、スタンション支持部45に対して下方から係止される構成としてもよい。例えば、スタンション支持部45が固定孔22Aを通じて床パネル16よりも下方に突出しており、係止片43の傾斜端面43aや第2平坦面76がスタンション支持部45の下端面に下方から重なる構成とする。
(13)上記実施形態では、スタンション台座33が床パネル16に対して固定された状態で、係止片43の回動先端部56が床大梁17に引っ掛かっていたが、回動基端部57が床大梁17や床パネル16に下方から引っ掛かっていてもよい。例えば、第2平坦面76が床大梁17の上側フランジ17bに下方から引っ掛かる構成とする。この構成では、係止片43が引っ掛かり状態にある場合、回動基端部57(第2平坦面76)が移動軸支持部46から上側フランジ17bに向けて側方に延びている。
(14)上記実施形態では、ナット部材55が移動軸支持部46に対して締め付けられることで、移動軸支持部46に対する移動軸部材42の移動が規制されていたが、移動軸部材42と移動軸支持部46との間に嵌め込み部材が嵌め込まれることで、移動軸支持部46に対する移動軸部材42の移動が規制されてもよい。
(15)スタンション台座33は、建築中の建物10に対して設置されるのではなく、リフォーム中の建物に対して設置されてもよい。要は、施工中の建物において、スタンション台座33が上階部の床パネル16に対して固定されればよい。