JP2016137537A - 耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれた表面被覆切削工具 - Google Patents

耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれた表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】高負荷切削加工においてすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】下地層と上部層からなる表面被覆切削工具において、前記下地層は、組成式:(AlxV1−x)Nで表したとき、0.70≦x≦0.95(但し、xは原子比)を満足する平均組成を有する六方晶構造のAlとVの複合窒化物層からなり、また、好ましくは、前記下地層は、(110)面および(100)面のそれぞれの回折ピーク強度h(110)、h(100)が、0.2≦h(110)/h(100)≦0.9の関係を満足し、前記上部層は、組成式:(AlyM1−y)Nで表したとき、0.45≦y<0.70(但し、yは原子比であり、かつ、Mは周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上である)を満足する平均組成を有する立方晶構造のAlとMの複合窒化物層からなる表面被覆切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を備えた表面被覆切削工具に関し、さらに詳しくは、高硬度合金鋼などの高負荷切削加工に供した場合においても、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサート、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またインサートを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミルなどが知られている。
従来から、被覆工具としては、例えば、WC基超硬合金、TiCN基サーメット、cBN焼結体を工具基体とし、これに硬質被覆層を形成した被覆工具が知られており、切削性能の改善を目的として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体の表面に、AlとCrの複合窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が提案されており、かかる被覆工具は、硬質被覆層を構成する(Al,Cr)N層が、すぐれた高温硬さ、耐熱性、高温強度、高温耐酸化性等を有することから、すぐれた切削性能を発揮することが知られている。
また、特許文献2には、工具基体表面に、TiとAlの窒化物、炭窒化物、窒酸化物、炭酸化物、炭窒酸化物の単層または多層からなる被膜を被覆し、該被膜は、X線回折により測定した(200)面のピーク強度が最大になるように結晶配向させることにより、耐剥離性、耐酸化性、耐熱衝撃性および広範な温度域にわたりすぐれた耐摩耗性を備えた被覆工具が提案されている。
また、特許文献3には、基材表面に硬質皮膜を形成した切削工具において、基材側に第1層を、また、表面側に第2層を形成し、第1層は、5〜500nmの層厚からなる4a,5a,6a族の金属層で構成し、第2層は、組成式:(AlpTiqr)(Nu1-u)で表した場合、p,q,rは0.20≦p≦0.75,0.20≦q≦0.75,0.1≦r≦0.5,p+q+r=1を満足し、また、0.6≦u≦1を満足する層で構成し、さらに、第1層及び第2層の合計層厚を0.8〜20μmとすることによって、密着性と耐摩耗性を改善した表面被覆切削工具が提案されている。
特許第3969230号明細書 特開平10−317123号公報 特開2000−129423号公報
前記特許文献1、2で提案されている被覆工具は、その硬質被覆層の硬さ、耐熱性等がすぐれているため、高硬度合金鋼の切削においてすぐれた耐摩耗性を発揮するが、その一方、高切り込み、高送り等の高負荷切削加工においては硬質被覆層と工具基体間の密着性が十分でないため、剥離が発生することがあった。
そのため、前記特許文献3で提案されているように、硬質被覆層と工具基体間の密着性を改善した被覆工具が提案されたが、密着性は改善されるものの、高硬度合金鋼の高負荷切削においては密着層自体が破壊されてしまうために、結果的に、硬質被覆層全体としては欠損や剥離が生じ、工具寿命が短命であるという問題があった。
したがって、高硬度合金鋼の高負荷切削加工に供した場合であっても、耐チッピング性と耐摩耗性にすぐれ、長期にわたって安定した切削性能を発揮する被覆工具が求められている。
そこで、本発明者らは、前記課題を解決すべく硬質被覆層の構造について鋭意検討したところ、次のような知見を得た。
本発明者らは、工具基体表面に、例えば図1に示すアークイオンプレーティング装置を用いて硬質被覆層を蒸着成膜するにあたり、下地層として、ウルツ鉱型六方晶(以下、単に「六方晶」という)構造を有する(Al1−x)N層(但し、原子比で、0.70≦x≦0.95)を工具基体表面に予め被覆し、この上に、従来知られている硬質被覆層、例えば、(Al1−y)N層(但し、原子比で、0.45≦y≦0.70であり、かつ、Mは、周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)を上部層として被覆することによって、工具基体と硬質被覆層の密着強度が改善されるばかりか、下地層の有する緩衝作用によって、高硬度合金鋼の高負荷切削加工においてもすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮することを見出した。
また、前記六方晶構造を有する(Al1−x)N層(但し、原子比で、0.70≦x≦0.95)について、X線回折を行い、測定された(110)面の回折ピーク強度をh(110)、また、(100)面の回折ピーク強度をh(100)としたとき、h(110)/h(100)の値が0.2以上0.9以下を満足する場合に、工具基体と硬質被覆層の密着強度がより一段と向上するとともに耐摩耗性も向上することにより、高硬度合金鋼の高負荷切削加工において、チッピングを発生することなく、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
本発明は、前記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 工具基体の表面に、下地層と上部層からなり、全体平均層厚が1.5〜5μmの硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(a)前記下地層は、
組成式:(Al1−x)Nで表したとき、0.70≦x≦0.95(但し、xは原子比)を満足する平均組成を有し、0.05〜1.0μmの平均層厚を有するウルツ鉱型六方晶構造のAlとVの複合窒化物層からなり、
(b)前記上部層は、
組成式:(Al1−y)Nで表したとき、0.45≦y<0.70(但し、yは原子比であり、かつ、Mは周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上である)を満足する平均組成を有する立方晶構造のAlとMの複合窒化物層からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記下地層について、X線回折を行って測定した(110)面の回折ピーク強度をh(110)、また、(100)面の回折ピーク強度をh(100)としたとき、回折ピーク強度比h(110)/h(100)の値が0.2以上0.9以下であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
以下、本発明の被覆工具について、より詳細に説明する。
下地層の組成と平均層厚:
本発明の被覆工具の下地層を構成する六方晶構造の(Al1−x)N層は、Al成分の含有割合xが、V成分との合量に占める原子比で0.70未満であると、立方晶構造のAlとVの複合窒化物が形成されるようになるため、工具基体と下地層の密着強度が低下し、一方、xの値が0.95を超えると、下地層の硬度が不十分となり、硬質被覆層全体としての耐摩耗性が低下傾向を示すようになることから、(Al1−x)N層におけるAlのVとの合量に占める含有割合x(但し、原子比)は0.70以上0.95以下とする。
また、下地層の平均層厚が、0.05μm未満では、下地層としての密着強度向上効果が十分でなく、また、高付加切削時に硬質被覆層に加わる衝撃を緩和する作用(緩衝作用)が十分に発揮でないため上部層のチッピングを抑制できなくなる、一方、下地層の平均層厚が1.0μmを超えると、比較的低硬度である下地層が厚くなることによって、硬質被覆層全体としての耐摩耗性低下を招くようになることから、下地層の平均層厚は、0.05μm以上1.0μm以下と定めた。
なお、上記(Al1−x)N層の組成、平均層厚、また、後記する(Al1−y)N層の組成、平均層厚については、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:EDS)、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)を用いた断面測定により、測定することができる。
下地層のh(110)/h(100)の値:
本発明では、下地層についてX線回折を行い、(110)面の回折ピーク強度をh(110)、また、(100)面の回折ピーク強度をh(100)として求めたとき、h(110)/h(100)の値が0.2以上0.9以下であることが望ましい。
回折ピーク強度比h(110)/h(100)の値が0.2未満の場合には、下地層を設けたことによる密着強度向上効果が十分でなく、また、高付加切削時に硬質被覆層に加わる衝撃を緩和する作用(緩衝作用)が十分に発揮でないため上部層のチッピングを抑制できなくなる、一方、h(110)/h(100)の値が0.9を超えると、上部層との密着力が小さくなり、下地層と上部層との層界面で剥離が生じやすくなり、結果として被覆工具の耐摩耗性を低下させることになるからである。
したがって、下地層の回折ピーク強度比h(110)/h(100)の値は0.2以上0.9以下とすることが望ましい。
本発明では、硬質被覆層を蒸着形成するに際し、例えば、図1に示すアークイオンプレーティング装置を用いて成膜するが、特に、下地層を成膜するにあたり、ターゲットの背面に配置した磁力発生源により、ターゲット表面の磁束密度を調整することで、下地層の回折ピーク強度h(110)、h(100)の大きさを制御し、その結果として、回折ピーク強度比h(110)/h(100)を所定の値とすることができる。
なお、上部層が立方晶構造であることは、下部層の影響を除去するため薄膜X線回折法により確認し、一方、下部層が六方晶であることは、上部層を集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)法などの手法で加工・除去したのち、X線回折を行うことによって確認することができる。
上部層の組成と平均層厚:
本発明の上部層は、組成式:(Al1−y)Nで表したとき、0.45≦y<0.70(但し、yは原子比であり、かつ、Mは周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上である)を満足する平均組成を有する立方晶構造のAlとMの複合窒化物層からなる。
AlとMの複合窒化物をより具体的に言えば、AlとTi、AlとCr、AlとTiとSi、AlとCrとSi、AlとCrとB、AlとZr、AlとNbの組合せからなる立方晶構造の各種複合窒化物を挙げることができ、また、立方晶構造のAlとVの複合窒化物を用いることができる。
上部層の組成式:(Al1−y)Nにおいて、Al成分の含有割合yが、M成分との合量に占める原子比で0.45未満であると、硬質被覆層の硬度や耐酸化性が小さいため、十分な耐摩耗性をえることができず、一方、yの値が0.70以上になると六方晶構造の結晶粒が形成されるようになるため、硬度が低下し十分な耐摩耗性が得られない。
したがって、本発明の上部層におけるAl成分の含有割合y(但し、原子比)は、0.45以上0.70未満とする。
全体平均層厚が1.5〜5μm:
本発明の被覆工具では、硬質被覆層の全体平均層厚が1.5μm未満であると、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性を発揮することができず、一方、全体平均層厚が5.0μmを超えると、チッピング発生を抑制し難くなるので、硬質被覆層の全体平均層厚は1.5μm以上5.0μm以下と定めた。
本発明の被覆工具は、工具基体表面に、下地層として、六方晶構造を有する(Al1−x)N層(但し、原子比で、0.70≦x≦0.95)を被覆し、この上に、立方晶構造の(Al1−y)N層(但し、原子比で、0.45≦y<0.70であり、かつ、Mは、周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上)を上部層として被覆して硬質被覆層を構成することにより、工具基体と硬質被覆層の密着強度が改善されるばかりか、下地層の有する緩衝作用によって、高硬度合金鋼等の高切り込み、高送りの高負荷切削加工においてもすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
特に、前記下地層を成膜するにあたり、ターゲット表面に印加する磁束密度を調整することで、下地層の回折ピーク強度h(110)、h(100)の大きさを制御し、回折ピーク強度比h(110)/h(100)を所定の値とした場合には、高硬度合金鋼等の高切り込み、高送りの高負荷切削加工において、より一段とすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
硬質被覆層を蒸着形成するためのアークイオンプレーティング装置の概略図であり(a)が正面図、を(b)が側面図を示す。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、具体的な説明としては、工具基体として超硬合金を用いた被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットあるいはcBN焼結体を工具基体とする被覆工具についても同様である。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒炭化タングステン(以下、WC)粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が6.5mm、10.5mmの2種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の2種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表3に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×12mmおよび10mm×18mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃ボール形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)1〜8をそれぞれ製造した。
(a)ついで、前記の工具基体1〜8のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って装着し、装置内にボンバード洗浄用のTiカソード電極(図示せず)を配置するとともに、一方に下地層形成用の所定成分組成のAl−V合金からなるターゲット(カソード電極)を、他方側に上部層形成用の所定成分組成のAl−M合金(但し、Mは、周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上とした)からなるターゲット(カソード電極)を、回転テーブルを挟んで対向配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒータで装置内を500℃に加熱した後、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、前述のTiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、それによって、工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)ついで、装置内に導入する反応ガスとしての窒素ガスの流量を調整して4〜10Paの反応雰囲気とすると共に、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、Al−V合金ターゲットの表面に、その背面に配置した磁力発生源から表2に示すターゲット表面最大磁束密度になるように種々の磁束密度を印加して、Al−V合金ターゲットとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定の目標層厚、目標組成の(Al1−x)N層からなる硬質被覆層の下地層を蒸着形成した。
(d)ついで、装置内に導入する反応ガスとしての窒素ガスの流量を調整して4〜10Paの反応雰囲気とすると共に、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、Al−M合金ターゲットとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定の目標層厚、目標組成の(Al1−y)N層からなる硬質被覆層の上部層を蒸着形成した。
上記工程(a)〜(d)により、表2に示す本発明表面被覆切削工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆工具と云う)1〜12を製造した。
なお、本発明被覆工具1〜2については、下地層の形成にあたり、Al−V合金ターゲットへの磁束密度印加を行わなかった。
また、比較の目的で、前記工具基体1〜8を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるAIP装置に装入し、装置内にボンバード洗浄用のTiカソード電極(図示せず)、カソード電極(蒸発源)としてのAl−V合金、Al−M合金を装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒータで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生さて工具基体表面をボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、工具基体に−50Vのバイアス電圧を印加し、Al−M合金のカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて工具基体1〜6のそれぞれの表面に、所定の目標層厚、目標組成の(Al1−y)N層からなる硬質被覆層(以下、この層を便宜上「上部層」という)を蒸着形成することにより、表3に示される比較例表面被覆超硬製エンドミル(以下、比較例被覆工具と云う)1〜6をそれぞれ製造した。
また、さらに比較の目的で、前記工具基体1〜8を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるAIP装置に装入し、装置内にボンバード洗浄用のTiカソード電極(図示せず)、カソード電極(蒸発源)としてのAl−V合金、Al−M合金を装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒータで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生さて工具基体表面をボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、工具基体に−50Vのバイアス電圧を印加し、Al−V合金ターゲットの表面に、その背面に配置した磁力発生源から表3に示すターゲット表面最大磁束密度になるように種々の磁束密度を印加して、Al−V合金ターゲットとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定の目標層厚、目標組成の(Al1−x)N層からなる硬質被覆層の下地層を蒸着形成した。
ついで、装置内に導入する反応ガスとしての窒素ガスの流量を調整して4〜10Paの反応雰囲気とすると共に、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、Al−M合金ターゲットとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定の目標層厚、目標組成の(Al1−y)N層からなる硬質被覆層の上部層を蒸着形成することにより、表3に示す比較例被覆工具7〜12をそれぞれ製造した。
上記で作製した本発明被覆工具1〜12および比較例被覆工具1〜12の工具基体表面に垂直な硬質被覆層の縦断面について、工具基体表面に平行な方向の幅が10μmであり、硬質被覆層の厚み領域が全て含まれるよう設定された視野について、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いた断面測定により、(Al1−x)N層からなる下地層および(Al1−y)N層からなる上部層の組成、層厚を複数箇所で測定し、これを平均することにより、平均組成、平均層厚を算出した。
次に、(Al1−x)N層からなる下地層の回折ピーク強度h(110)、h(100)を、Cu管球を用いたX線回折によって測定し、h(110)とh(100)の比の値(h(110)/h(100))を求めた。
また、上部層の結晶構造は下地層の影響を除去するため薄膜X線回折法により確認することができ、一方、下地層の結晶構造は、上部層を集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)法などの手法で加工・除去したのち、X線回折を行うことによって確認した。
表2、表3に、その値を示す。



つぎに、本発明被覆工具1〜12および比較例被覆工具1〜12について、次の切削条件A,Bで焼入れ鋼の高切り込み・高送り側面切削加工試験を実施した。
≪切削条件A≫
被削材:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法のJIS・SKD61(HRC52)の板材、
切削速度: 300 m/min.、
切り込み: ae0.3mm,ap2.0mm、
テーブル送り: 1700 mm/min.、
の条件での焼入れ鋼の乾式高速高切り込み・高送り側面切削加工試験(なお、通常の切り込みはae0.15mm,ap1.0mm、送りは1000mm/min)。
≪切削条件B≫
被削材:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法のJIS・SKD11(HRC60)の板材、
切削速度: 100 m/min.、
溝深さ(切り込み): ae0.2mm,ap2mm、
テーブル送り: 540 mm/min.、
の条件での合金工具鋼の乾式高速高切り込み・高送り側面切削加工試験(なお、通常の切り込みはae0.1mm,ap1.5mm、送りは350mm/min)。
上記のいずれの側面切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削長を測定し、チッピングの有無を確認した。
表4、表5に、その測定結果を示す。


実施例1で作製したWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)5〜7に対して、本発明被覆工具1〜12の作製方法と同様な方法により、目標層厚、目標組成の(Al1−x)N層からなる硬質被覆層の下地層と、目標層厚、目標組成の(Al1−y)N層からなる硬質被覆層の上部層を蒸着形成することにより、表6に示す本発明表面被覆切削工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆工具と云う)13〜15を製造した。
ただし、表6に示すように、本発明被覆工具13では、M成分としてTi及びSiを、本発明被覆工具14では、M成分としてCr及びSiを、また、本発明被覆工具15では、M成分としてTi及びBを使用した。
また、比較のため、実施例1で作製したWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)5に対して、比較例被覆工具1〜6と同様な方法により、目標層厚、目標組成の(Al1−y)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、表6に示す比較例表面被覆切削工具としての比較例被覆超硬製エンドミル(以下、比較例工具と云う)13を製造した。
さらに比較のために、実施例1で作製したWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)6,7に対して、比較例被覆工具7〜12と同様な方法により、目標層厚、目標組成の(Al1−x)N層からなる硬質被覆層の下地層と、目標層厚、目標組成の(Al1−y)N層からなる硬質被覆層の上部層を蒸着形成することにより、表6に示す比較例工具14,15を製造した。
なお、表6に示すように、比較例被覆工具13では、M成分としてTi及びSiを、比較例被覆工具14では、M成分としてCr及びSiを、また、比較例被覆工具15では、M成分としてTi及びBを使用した。
本発明被覆工具13〜15及び比較例被覆工具13〜15について、実施例1と同様な方法で、下地層および上部層の平均組成、平均層厚を求めるとともに、下地層のh(110)/h(100)を求め、更に、下地層と上部層の結晶構造を確認した。
表6にその値を示す。
次いで、本発明被覆工具13〜15及び比較例被覆工具13〜15について、実施例1と同様な切削条件A,切削条件Bで焼入れ鋼の高切り込み・高送り側面切削加工試験を実施し、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削長を測定し、チッピングの有無を確認した。
表6に、その測定結果を示す。

表4、表5、表6に示される結果から、本発明被覆工具1〜15は、硬質被覆層を、(Al1−x)N層からなる下地層と(Al1−y)N層からなる上部層とで形成していることによって、硬質被覆層と工具基体の密着性にすぐれ、チッピングの発生が抑制されるとともに長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
特に、下地層のh(110)/h(100)を0.2以上0.9以下とした本発明被覆工具3〜15においては、より一段と耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれることは明らかである。
これに対して、下地層を形成しなかった比較例被覆工具1〜6,13においては、チッピング発生を原因として、短時間で寿命となり、また、下地層を形成したものであっても、xの値、yの値あるいは、下地層の層厚が本発明範囲外である比較例被覆工具7〜12,14,15においては、本発明被覆工具1〜15に比して、耐チッピング性、耐摩耗性はいずれも劣るものであった。
前述のように、本発明の被覆工具は、高硬度の合金鋼の高切り込み・高送り切削加工ですぐれた切削性能を発揮したが、その他、炭素鋼、鋳鉄等の切削においても耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれることから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. 工具基体の表面に、下地層と上部層からなり、全体平均層厚が1.5〜5μmの硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    (a)前記下地層は、
    組成式:(Al1−x)Nで表したとき、0.70≦x≦0.95(但し、xは原子比)を満足する平均組成を有し、0.05〜1.0μmの平均層厚を有するウルツ鉱型六方晶構造のAlとVの複合窒化物層からなり、
    (b)前記上部層は、
    組成式:(Al1−y)Nで表したとき、0.45≦y<0.70(但し、yは原子比であり、かつ、Mは周期律表の4a、5a、6a族の元素、SiおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上である)を満足する平均組成を有する立方晶構造のAlとMの複合窒化物層からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記下地層について、X線回折を行って測定した(110)面の回折ピーク強度をh(110)、また、(100)面の回折ピーク強度をh(100)としたとき、回折ピーク強度比h(110)/h(100)の値が0.2以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。






























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