JP2016136599A - 基板処理方法および基板処理装置 - Google Patents

基板処理方法および基板処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】基板上の液膜を良好に排除できる基板処理方法および基板処理装置を提供する。【解決手段】水平に保持された基板の上面に有機溶剤を供給して、基板上面全域を覆う有機溶剤の液膜が形成される(T1,T2)。基板を加熱して基板の上面に接する有機溶剤を蒸発させて、基板の上面と有機溶剤液膜との間に気相層が形成される(T3)。気相層が形成された後、基板上の液膜に小流量で不活性ガスを吹き付けて、液膜に穴が開けられる(T5)。基板を加熱することにより、液膜の穴を基板の外周に向かって広げるとともに、大流量で液膜の穴内の領域に不活性ガスを吹き付けて、気相層上で液膜が移動させられる(T6)。その後、基板が低速に回転され、外周部の液膜が振り落とされる(T7)。【選択図】図9

Description

この発明は、基板を処理液で処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板の表面が処理液で処理される。基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板の表面に処理液を供給するためのノズルとを備えている。
典型的な基板処理工程では、スピンチャックに保持された基板に対して薬液が供給される。その後、リンス液が基板に供給され、それによって、基板上の薬液がリンス液に置換される。その後、基板上のリンス液を排除するためのスピンドライ工程が行われる。スピンドライ工程では、基板が高速回転されることにより、基板に付着しているリンス液が振り切られて除去(乾燥)される。一般的なリンス液は脱イオン水である。
基板の表面に微細なパターンが形成されている場合に、スピンドライ工程では、パターンの内部に入り込んだリンス液を除去できないおそれがあり、それによって、乾燥不良が生じるおそれがある。そこで、特許文献1に記載されているように、リンス液による処理後の基板の表面に、イソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol: IPA)液等の有機溶剤の液体を供給して、パターンの内部に入り込んだリンス液を有機溶剤の液体に置換することによって基板の表面を乾燥させる手法が提案されている。
図16に示すように、基板の高速回転により基板を乾燥させるスピンドライ工程では、液面(空気と液体との界面)が、パターン内に形成される。この場合、液面とパターンとの接触位置に、液体の表面張力が働く。この表面張力は、パターンを倒壊させる原因の一つである。
特許文献1のように、スピンドライ工程の前に有機溶剤の液体を基板に供給する場合には、有機溶剤の液体がパターンの間に入り込む。有機溶剤の表面張力は、典型的なリンス液である水よりも低い。そのため、表面張力に起因するパターン倒壊の問題が緩和される。
ところが、近年では、基板処理を利用して作製される装置(たとえば半導体装置)の高集積化のために、微細で高アスペクト比のパターン(凸状パターン、ライン状パターンなど)が基板の表面に形成されるようになってきた。微細で高アスペクト比のパターンは、強度が低いので、有機溶剤の液面に働く表面張力によっても、倒壊を招くおそれがある。
この課題を解決するために、特許文献2では、基板の表面に有機溶剤の液膜を形成した後、基板を加熱して、基板の上面全面に有機溶剤の気相膜を形成している。そして、その気相膜によって支持された有機溶剤の液膜が排除される。気相膜が微細パターンの間およびその上方に形成されることにより、有機溶剤の液面が微細パターンにほとんど接触しない状態となる。したがって、有機溶剤の液体が微細パターンに接触した状態で乾燥しないので、微細パターンに働く表面張力が大幅に軽減されるから、微細パターンの倒壊を抑制できる。
特開平9−38595号公報 特開2014−112652号公報 特開2008−034553号公報
本願の発明者の研究によれば、特許文献2の方法において、液膜を排除するときに気相膜を保つために基板の加熱を継続すると、有機溶剤液膜に不定の複数位置に穴が形成される(図15A参照)。すなわち、気相膜上に支持された有機溶剤の液体が蒸発し尽くして、不特定位置に複数の穴が空き、基板の表面を露出させる。この複数の位置に形成された穴がそれぞれ広がることにより(図15B参照)、基板上に有機溶剤の液滴が残留するおそれがある(図15C参照)。この残留した液滴が最終的に乾燥するときに、表面張力によるパターン倒壊が生じるおそれがある。また、液膜の排除が基板の面内で不均一に生じることによって、基板の面内温度が不均一になり、それによって、基板に反りが生じ、有機溶剤液膜の排除の妨げになる場合がある。
特許文献2には、有機溶剤液膜に窒素ガスを吹き付けて有機溶剤液膜に穴を開け、基板の回転により液膜に働く遠心力によってその穴を広げて、液膜を基板外に排除することが開示されている。しかし、この方法では、液膜に遠心力が作用することによって、液膜が分裂するおそれがある。したがって、基板上での液滴の残留、および液膜の不均一な排除の問題を解消できない。
そこで、この発明の一つの目的は、基板上の液膜を良好に排除できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、水平に保持された基板の上面に処理液を供給して前記基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記基板を加熱して前記基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、前記気相層が形成された後、前記基板上の前記液膜に第1流量で気体を吹き付けて処理液を部分的に排除することによって前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記基板を加熱することにより、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させることにより、前記液膜を構成する処理液を基板外に排除する加熱排除工程と、前記穴開け工程の後、前記基板の表面における前記穴内の領域に、前記第1流量よりも大きい第2流量で気体を吹き付け、前記穴を基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させることにより、前記液膜を構成する処理液を前記基板外に排除する気体排除工程とを含む、基板処理方法である。
この方法によれば、基板の上面全域を覆う処理液の液膜が形成され、基板を加熱することによって、その液膜と基板の上面との間に処理液が蒸発した気体からなる気相層が形成される。この気相層上に処理液の液膜が形成される。この状態で処理液の液膜を排除し尽くすことにより、処理液の表面張力による基板表面のパターンの倒壊を抑制または防止できる。気相層は、処理液との界面が基板表面のパターン外に位置するように形成されることが好ましい。これにより、基板表面のパターンに処理液の表面張力が働くことを回避でき、表面張力が働かない状態で処理液の液膜を基板外に排除できる。
処理液の液膜を排除するために、液膜に第1流量で気体が吹き付けられる。気体が吹き付けられた領域の処理液が気体によって押されることにより、液膜に穴が空き、基板の表面が露出する。その状態で基板が加熱されると、穴が空いた領域には処理液が存在しないので、基板の温度が速やかに上昇する。それによって、穴の周縁においては、その内側と外側とで温度差が生じる。具体的には、穴の内側では基板の温度が高く、穴の外側では基板の温度が低くなる。この温度差によって、処理液が低温側に移動するので、穴が広がって行き、それによって、処理液が基板外に排除される。
一方、本願発明者の研究によれば、温度差を利用した処理液の移動では、或る程度まで穴を広げられるものの、基板上面の周縁部にまで穴の周縁が至ると、処理液の移動が停止するおそれがある。より詳細には、処理液は基板の内方への移動と外方への移動とを繰り返す平衡状態となる。この場合、処理液が基板の内方に戻るときに、気相層が失われた基板表面に処理液が直接接するおそれがある。そのため、処理液の表面張力によるパターン倒壊や乾燥不良によるパーティクルが生じるおそれがある。
そこで、この発明では、処理液の液膜に穴開けした後、第1流量よりも大きい第2流量で穴内の領域に気体が吹き付けられる。それにより、気体の勢いで処理液を基板の外側に押して、穴を広げることができる。これにより、処理液が停止することなく基板の上面から排除されるので、パターン倒壊やパーティクルの発生を抑制または防止できる。
気体を吹き付けて液膜に穴を開ける位置は、基板の中央領域が好ましく、基板の中央がより好ましい。処理液の液膜を形成するときやその他の工程において、基板が回転される場合には、基板の回転中心において液膜に穴を開けることが好ましい。
第1流量から第2流量への気体流量の増加は、ステップ的増加であってもよいし、漸次的増加であってもよい。漸次的増加は段階的な増加であってもよいし、連続的な増加であってもよい。
第2流量での気体の吹き付けの際(気体排除工程)に、基板を回転させてもよい。ただし、基板の回転を停止している方が、遠心力に起因する液膜の分裂を確実に回避できるので好ましい。
請求項2記載の発明は、前記穴開け工程では前記基板を静止状態とする、請求項1に記載の基板処理方法である。この方法では、基板を静止状態(より具体的には非回転状態)として、液膜に第1流量で気体が吹き付けられる。基板が非回転状態であっても、加熱排除工程によって、液膜に形成された穴が広げられ、処理液の移動が生じる。この場合、基板が非回転状態での処理液の移動であるので、処理液が分裂することを抑制または防止しながら処理液を基板外に排除できる。
請求項3記載の発明は、加熱排除工程の後、前記基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに外周振り落とし速度で回転することにより、前記基板の外周部の処理液を前記基板外に振り落とす回転振り落とし工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法である。
この方法では、加熱排除工程の後に、基板を回転させることにより、遠心力によって、基板の外周部(とくに周端面)の処理液が基板外に振り落とされる。温度差を利用した処理液の移動により、処理液が基板の周縁領域に移動した後に基板を回転させるので、遠心力による液膜の分裂はほとんど生じない。また、基板の周縁領域には、製品に使用するための有効なパターンが形成されていない場合がほとんどであるので、たとえ液膜の分裂が生じても問題とはならない。
基板を回転させる回転振り落とし工程は、第2流量で気体を吹き付ける気体排除工程と並行する期間があってもよいし、気体排除工程の後に実行されてもよい。
請求項4記載の発明は、前記回転振り落とし工程の後、前記基板を前記回転軸線まわりに、前記外周振り落とし速度よりも高速な乾燥速度で回転させる高速回転乾燥工程をさらに含む、請求項3に記載の基板処理方法である。
この方法では、回転振り落とし工程の後に、基板の回転速度を増加して、基板が乾燥させられる。換言すれば、回転振り落とし工程は、比較的低速な基板回転工程である。したがって、液膜が分裂するほどの遠心力は発生しないので、液塊の状態で処理液を基板外に振り落とすことができ、その後に、高速回転による基板乾燥を行うことができる。
請求項5記載の発明は、前記液膜形成工程は、前記基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに液供給速度で回転する液供給速度回転工程と、前記液供給速度回転工程中に前記基板の上面への処理液の供給を開始して、前記基板の上面全域を覆う前記液膜を形成する処理液供給工程と、前記処理液供給工程の実行中に、前記液膜が前記基板の上面全域を覆う状態を保持しながら、前記基板の回転を前記液供給速度から停止まで減速する減速工程と、前記減速工程の後に、前記処理液の前記基板の上面への供給を停止する供給停止工程と
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板を回転させながら処理液が供給されることにより、基板の上面全域を覆う液膜を速やかに形成できる。その後、処理液の供給を継続している状態で、基板の回転が減速させられて、その回転が停止させられる。この回転停止に至るまでの減速の過程において、処理液の液膜が基板の上面全域を覆っている状態が維持される。それにより、基板の上面の至るところで処理液が失われることがないので、処理液の液面がパターン内に位置する状況を回避でき、それによって、表面張力によるパターンの倒壊を回避できる。そして、基板の回転が停止した後に処理液の供給が停止されるので、基板の上面に厚い液膜を形成できる。厚い液膜は分裂しにくいので、パターンの倒壊を確実に抑制または防止できる。
たとえば、処理液を一定の流量で供給しながら基板の回転を急減速させて停止する場合を考える。基板の回転が速いときに基板の上面に達した処理液は大きな遠心力を受けて、基板の外方に向かう速い液流を形成する。一方、回転が遅いときに基板の上面に達した処理液が受ける遠心力は小さく、回転が停止しているときには、処理液は遠心力を受けない。したがって、基板の回転を急減速させると、基板の周縁領域では処理液が速やかに基板外に流れ出すのに対して、基板の内方(とくに処理液の供給位置付近)では処理液の流れが遅い。これにより、基板の周縁領域の処理液の液膜が薄くなり、液切れが生じて、処理液の液面がパターンの内方に入り込むおそれがある。これにより、周縁領域におけるパターン倒壊が生じるおそれがある。
前記の方法では、このような周縁領域での液切れを回避しながら、基板の回転が減速および停止されるので、液切れに起因するパターン倒壊を回避しながら、基板の回転を停止できる。
請求項6記載の発明は、前記減速工程が、前記基板の回転速度を漸次的に減少させる漸次減速工程を含む、請求項5に記載の基板処理方法である。この方法では、基板の回転が漸次的に減速される。減速度は、基板の上面全域が液膜で覆われた状態を維持できるように設定すればよい。
漸次的減速は、請求項7に記載されているように、段階的な減速であってもよい。また、漸次的減速は、請求項8に記載されているように、連続的な減速であってもよい。
請求項9記載の発明は、前記減速工程が、前記処理液の供給流量を増加させた状態で前記基板の回転速度を減速させる増流量減速工程を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法では、減速時に処理液の供給流量を増加させることで、基板の上面における液切れが回避される。この場合、基板回転を速やかに減速して停止でき、かつ液切れに起因するパターン倒壊を回避できる。
請求項10記載の発明は、前記処理液供給工程が、前記処理液としての有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程であり、前記有機溶剤供給工程の前に、前記基板の上面に前記有機溶剤とは別の処理液を供給する工程をさらに含み、前記減速工程が、前記基板上の全ての前記別の処理液を前記有機溶剤が置換した後に開始される、請求項5〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法では、有機溶剤以外の処理液で基板の上面を処理した後に、有機溶剤によってその処理液が置換される。基板上面の処理液が置換し尽くされると、減速工程が開始される。したがって、有機溶剤以外の処理液の液面がパターン内に入り込むことを抑制できる。有機溶剤は表面張力が低いので、パターンの倒壊の抑制または防止に有効である。
請求項11記載の発明は、前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程を含み、前記液膜形成工程が、前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給工程と、前記熱量増加工程の開始よりも後に前記処理液の供給を停止する供給停止工程とを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法では、基板に与える熱量を増加させることによって、基板に接する処理液が蒸発して気相層が形成される。基板上面への処理液の供給は、熱量の増加を開始した後に停止される。これにより、熱量の増加に伴って処理液が急激に失われることを回避できるので、処理液の液膜で基板の上面が覆われた状態を保持しながら、気相層を形成できる。それにより、パターンの倒壊を回避できる。
請求項12記載の発明は、前記液膜形成工程中に、前記気相層形成工程よりも少ない熱量で前記基板を予熱する基板予熱工程をさらに含み、前記熱量増加工程が、前記基板に与える熱量を前記基板予熱工程よりも増加させる工程である、請求項11に記載の基板処理方法である。
この方法では、液膜形成工程中に基板が予熱されるので、基板に与える熱量を増加させたときに、気相層を速やかに形成できる。それにより生産性を向上できる。また、液膜形成工程中に基板に与えられる熱量は少ないので、基板の上面を乾燥させることなく、液膜を形成できる。
請求項13記載の発明は、前記基板予熱工程が、ヒータユニットを前記基板の下面から所定距離だけ離れた離隔位置に配置して、前記ヒータユニットからの輻射熱で前記基板を加熱する工程を含み、前記熱量増加工程が、前記基板予熱工程における前記離隔位置よりも前記ヒータユニットを前記基板の下面に接近させる工程を含む、請求項12に記載の基板処理方法である。
この方法では、ヒータユニットからの輻射熱で基板が予熱され、その後、ヒータユニットを基板の下面に接近させることで基板に与える熱量を増加させて、基板の上面に気相層が形成される。ヒータユニットを基板に接近させることによって、基板は速やかに昇温する。このとき、処理液の供給が継続していることにより、液膜を保持することができ、基板表面の乾燥を回避できる。
請求項14に記載されているように、ヒータユニットを基板の下面に接触させてもよい。これにより、ヒータユニットからの熱伝導によって基板を速やかに昇温させて、気相層を形成できる。ヒータユニットを基板の下面に接触させるときには、処理液の供給が継続しているので、液膜が基板上面全域を覆っている状態を保持することができ、基板表面の乾燥を回避できる。
前記加熱排除工程は、前記ヒータユニットを基板の下面に接近または接触させる工程を含んでいてもよい。温度差による処理液の移動を効果的に生じさせるには、ヒータユニットを基板の下面に接触させることが好ましい。また、気相層を確実に保持するためにも、ヒータユニットを基板の下面に接触させることが好ましい。ヒータユニットを基板の下面に接触させることにより、遠心力を利用しなくても、温度差によって処理液の移動を確実に生じさせることができる。遠心力を利用するためには基板を回転させなければならないから、ヒータユニットを基板に接触させることができない。この場合、基板上面の気相層を確実に保持できないおそれがある。輻射熱による加熱では熱量が不足するおそれがあり、また基板温度が不均一になるおそれがあるからである。
請求項15記載の発明は、前記穴開け工程が、処理液の前記基板の上面への供給を停止した後に実行される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、処理液の供給を停止することによって、処理液の供給位置においても基板上面と処理液との間に介在される気相層が形成される。その後に穴開け工程が行われることによって、気相層上に処理液が支持されている状態で、その処理液を気体の吹き付けによって外方へと押しやって穴開けすることができる。
請求項16記載の発明は、前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程と、前記熱量増加工程の後に、前記基板に与える熱量を減少させる熱量減少工程と、を含み、前記加熱排除工程が、前記熱量減少工程の後に、前記基板に与える熱量を再び増加させる再熱量増加工程を含み、前記熱量減少工程によって前記基板に与える熱量が減少させられた状態で、前記穴開け工程が開始される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、基板に与える熱量が減少させられた状態で穴開け工程が行われる。吹き付けられる気体の温度が基板の温度と相違する場合、気体が吹き付けられた位置では基板の温度が変化する。このとき、基板の下面から大きな熱量が与えられていると、基板の上面と下面との間の温度差が大きくなり、基板の反りが生じるおそれがある。とくに、気体の温度が基板の温度よりも低い場合には、基板の上面が凹状となる反りが生じるから、液膜の排除が困難となる。そこで、この方法では、基板に与える熱量を減少した状態で、気体が吹き付けられる。それにより、基板の上面および下面の温度差を少なくして、基板の反りを抑制または防止している。これにより、液膜の排除を効率的に行える。穴開け工程の後には、再度、大きな熱量で基板が加熱されるので、気相層を維持できる。
請求項17記載の発明は、前記穴開け工程の開始と前記再熱量増加工程の開始とがほぼ同時である、請求項16に記載の基板処理方法である。
この方法によれば、気体の吹き付けとほぼ同時に、基板に与えられる熱量が増加させられる。とくに、吹き付けられる気体が基板温度よりも低温である場合には、気体が吹き付けられた位置で基板温度が低下する。そのため、熱量の増加までに時間をおくと、基板の温度差を利用した処理液の移動が止まるおそれがある。すなわち、液膜に空いた穴の縁部が内方に向かったり外方に向かったりする平衡状態となる。このとき、基板の表面に形成されたパターン内に処理液が流れ込み、その液膜の液面がパターン内に存在する状況となると、表面張力によるパターン倒壊のおそれがある。そこで、この方法では、気体の吹き付けとほぼ同時に熱量を再度増加させることで、処理液の流れが停止することを回避している。これにより、パターン倒壊を抑制または防止できる。
請求項18記載の発明は、前記穴開け工程が、室温よりも高温の気体を吹き付ける工程を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この方法によれば、高温の気体を用いて穴開け工程が行われるので、気体の吹き付けに伴う基板の反りを軽減できる。それにより、基板上の液膜を効率的に排除できる。
請求項19記載の発明は、前記処理液が有機溶剤である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の基板処理方法である。有機溶剤は、表面張力が低いので、基板上のパターンの倒壊を一層確実に抑制または防止できる。
請求項20記載の発明は、基板を水平に保持する基板保持手段(5)と、前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段(11)と、前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段(6)と、基板上の処理液に気体を吹き付ける気体吹き付け手段(12)と、制御手段(3)とを含む、基板処理装置である。制御手段は、基板上に前記気相層によって支持されている処理液の液膜に前記気体吹き付け手段から第1流量で気体を吹き付けて、当該液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記加熱手段によって基板を加熱することにより前記穴を基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させて処理液を基板外に排除する加熱排除工程と、前記穴内の領域に前記気体吹き付け手段から前記第1流量よりも大きい第2流量で気体を吹き付けて前記穴を基板の外周に向かって広げることにより処理液を基板外に排除する気体排除工程とを実行する。なお、括弧内の数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表す。以下、この項において同じ。
請求項21記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに回転させる基板回転手段(23)をさらに含み、前記制御手段は、前記加熱排除工程よりも後に、前記基板回転手段によって基板を外周振り落とし速度で回転することにより、基板の外周部の処理液を基板外に振り落とす回転振り落とし工程をさらに実行する、請求項20に記載の基板処理装置である。
その他、前記制御手段は、請求項1〜19のいずれか一項に記載の基板処理方法を実行するようにプログラムされていてもよい。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。 図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。 図3は、前記処理ユニットに備えられたスピンチャックおよびヒータユニットの平面図である。 図4は、前記スピンチャックに備えられたチャックピンの構造例を説明するための斜視図である。 図5Aおよび図5Bはチャックピンの平面図であり、図5Aは閉状態を示し、図5Bは開状態を示す。 図6は、前記処理ユニットに備えられた第1移動ノズルの構成例を説明するための模式的な縦断面図である。 図7は、基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。 図8は、基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。 図9は、有機溶剤処理(図8のS4)の詳細を説明するためのタイムチャートである。 図10A〜図10Cは、有機溶剤処理(図8のS4)の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図である。 図10D〜図10Fは、有機溶剤処理(図8のS4)の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図である。 図10Gおよび図10Hは、有機溶剤処理(図8のS4)の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図である。 図10Iは乾燥処理(図8のS5)の様子を説明するための図解的な断面図である。 図11Aは、穴開けステップにおける液膜の状態を示す平面図である。図11Bは、加熱のみにより液膜を移動しようとした場合の液膜の状態を示す平面図である。 図12Aおよび図12Bは、基板の表面における気相層の形成を説明するための図解的な断面図であり、図12Cは、液膜の分裂を説明するための断面図である。 図13Aおよび図13Bは、基板の温度差による有機溶剤液膜の移動を説明するための図である。 図14は、有機溶剤パドルステップの初期における基板回転速度の漸次的減速による効果を説明するための図である。 図15A、図15Bおよび図15Cは、穴開けステップおよび穴広げステップを省いた場合(比較例)の課題を説明するための図解的な平面図である。 図16は、表面張力によるパターン倒壊の原理を説明するための図解的な断面図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。処理ユニット2は、一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、基板Wを下面側から加熱するヒータユニット6と、ヒータユニット6を基板Wの下方で上下動させる昇降ユニット7と、スピンチャック5を取り囲む筒状のカップ8と、基板Wの下面に処理流体を供給する下面ノズル9と、基板Wの上面にリンス液としての脱イオン水(DIW)を供給するDIWノズル10と、基板Wの上方で移動可能な第1移動ノズル11と、基板Wの上方で移動可能な第2移動ノズル12とを含む。処理ユニット2は、さらに、カップ8を収容するチャンバ13(図1参照)を含む。図示は省略するが、チャンバ13には、基板Wを搬入/搬出するための搬入/搬出口が形成されており、この搬入/搬出口を開閉するシャッタユニットが備えられている。
スピンチャック5は、チャックピン20(チャック部材)と、スピンベース21と、スピンベース21の下面中央に結合された回転軸22と、回転軸22に回転力を与える電動モータ23とを含む。回転軸22は回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びており、この実施形態では中空軸である。回転軸22の上端に、スピンベース21が結合されている。スピンベース21は、水平方向に沿う円盤形状を有している。スピンベース21の上面の周縁部に、複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン20は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。また、複数のチャックピン20は、開状態において、基板Wの周縁部の下面に接触して、基板Wを下方から支持することができる。
チャックピン20を開閉駆動するために、チャックピン駆動ユニット25が備えられている。チャックピン駆動ユニット25は、たとえば、スピンベース21に内蔵されたリンク機構26と、スピンベース21外に配置された駆動源27とを含む。駆動源27は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。チャックピン駆動ユニット25の具体的な構成例は、特許文献3などに記載がある。
ヒータユニット6は、スピンベース21の上方に配置されている。ヒータユニット6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸30が結合されている。昇降軸30は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔24と、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸30の下端は、回転軸22の下端よりもさらに下方にまで延びている。この昇降軸30の下端に、昇降ユニット7が結合されている。昇降ユニット7を作動させることにより、ヒータユニット6は、スピンベース21の上面に近い下位置から、基板Wの下面を支持してチャックピン20から持ち上げる上位置までの間で上下動する。
昇降ユニット7は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。これにより、昇降ユニット7は、下位置および上位置の間の任意の中間位置にヒータユニット6を配置できる。たとえば、ヒータユニット6の上面である加熱面6aを基板Wの下面との間に所定の間隔を開けた離隔位置に配置した状態で、加熱面6aからの輻射熱によって基板Wを加熱することができる。また、ヒータユニット6で基板Wを持ち上げれば、加熱面6aを基板Wの下面に接触させた接触状態で、加熱面6aからの熱伝導により、基板Wをより大きな熱量で加熱することができる。
第1移動ノズル11は、第1ノズル移動ユニット15によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル11は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心に対向する処理位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動させることができる。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。基板Wの上面に対向しないホーム位置とは、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。第1移動ノズル11は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。第1ノズル移動ユニット15は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。アーム駆動機構は、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させ、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第1移動ノズル11はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル11が水平方向および垂直方向に移動する。
第2移動ノズル12は、第2ノズル移動ユニット16によって、水平方向および垂直方向に移動される。第2移動ノズル12は、水平方向への移動によって、基板Wの上面の回転中心に対向する位置と、基板Wの上面に対向しないホーム位置(退避位置)との間で移動させることができる。ホーム位置は、平面視において、スピンベース21の外方の位置であり、より具体的には、カップ8の外方の位置であってもよい。第2移動ノズル12は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近させたり、基板Wの上面から上方に退避させたりすることができる。第2ノズル移動ユニット16は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、アームを駆動するアーム駆動機構とを含む。アーム駆動機構は、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させ、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第2移動ノズル12はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第2移動ノズル12が水平方向および垂直方向に移動する。
第1移動ノズル11は、この実施形態では、有機溶剤を吐出する有機溶剤ノズルとしての機能と、窒素ガス等の不活性ガスを吐出するガスノズルとしての機能とを有している。第1移動ノズル11には、有機溶剤供給管35および不活性ガス供給管36が結合されている。有機溶剤供給管35には、その流路を開閉する有機溶剤バルブ37が介装されている。不活性ガス供給管36には、その流路を開閉する不活性ガスバルブ38が介装されている。有機溶剤供給管35には、有機溶剤供給源から、イソプロピルアルコール(IPA)等の有機溶剤が供給されている。不活性ガス供給管36には、不活性ガス供給源から、窒素ガス(N2)等の不活性ガスが供給されている。
第2移動ノズル12は、この実施形態では、酸、アルカリ等の薬液を供給する薬液ノズルとしての機能と、窒素ガス等の不活性ガスを吐出するガスノズルとしての機能とを有している。より具体的には、第2移動ノズル12は、液体と気体とを混合して吐出することができる二流体ノズルの形態を有していてもよい。二流体ノズルは、気体の供給を停止して液体を吐出すれば液体ノズルとして使用でき、液体の供給を停止して気体を吐出すればガスノズルとして使用できる。第2移動ノズル12には、薬液供給管41および不活性ガス供給管42が結合されている。薬液供給管41には、その流路を開閉する薬液バルブ43が介装されている。不活性ガス供給管42には、その流路を開閉する不活性ガスバルブ44と、不活性ガスの流量を可変する流量可変バルブ45とが介装されている。薬液供給管41には、薬液供給源から、酸、アルカリ等の薬液が供給されている。不活性ガス供給管42には、不活性ガス供給源から、窒素ガス(N2)等の不活性ガスが供給されている。
薬液の具体例は、エッチング液および洗浄液である。さらに具体的には、薬液は、フッ酸、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などであってもよい。
DIWノズル10は、この実施形態では、基板Wの上面の回転中心に向けてDIWを吐出するように配置された固定ノズルである。DIWノズル10には、DIW供給源から、DIW供給管46を介して、DIWが供給される。DIW供給管46には、その流路を開閉するためのDIWバルブ47が介装されている。DIWノズル10は固定ノズルである必要はなく、少なくとも水平方向に移動する移動ノズルであってもよい。
下面ノズル9は、中空の昇降軸30を挿通し、さらに、ヒータユニット6を貫通している。下面ノズル9は、基板Wの下面中央に臨む吐出口9aを上端に有している。下面ノズル9には、流体供給源から流体供給管48を介して処理流体が供給されている。供給される処理流体は、液体であってもよいし、気体であってもよい。流体供給管48には、その流路を開閉するための流体バルブ49が介装されている。
図3は、スピンチャック5およびヒータユニット6の平面図である。スピンチャック5のスピンベース21は、平面視において、回転軸線A1を中心とする円形であり、その直径は基板Wの直径よりも大きい。スピンベース21の周縁部には、間隔を空けて複数個(この実施形態では6個)のチャックピン20が配置されている。
ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有しており、プレート本体60と、支持ピン61と、ヒータ62とを含む。プレート本体60は、平面視において、基板Wの外形とほぼ同形同大で、回転軸線A1を中心とする円形に構成されている。より正確には、プレート本体60は、基板Wの直径よりも僅かに小さい直径の円形の平面形状を有している。たとえば、基板Wの直径が300mmであり、プレート本体60の直径(とくに加熱面6aの直径)がそれよりも6mmだけ小さい294mmであってもよい。この場合、プレート本体60の半径は基板Wの半径よりも3mm小さい。
プレート本体60の上面は、水平面に沿う平面である。プレート本体60の上面に複数の支持ピン61(図2を併せて参照)が突出している。支持ピン61は、たとえば、それぞれ半球状であり、プレート本体60の上面から微小高さ(たとえば0.1mm)だけ突出している。したがって、基板Wが支持ピン61に接触して支持されるとき、基板Wの下面はたとえば0.1mmの微小間隔を開けてプレート本体60の上面に対向する。これにより、基板Wを効率的かつ均一に加熱することができる。
プレート本体60の上面は、支持ピン61を有していなくてもよい。支持ピン61を有していない場合には、基板Wをプレート本体60の上面に接触させることができる。ヒータユニット6の加熱面6aは、支持ピン61を有している場合には、プレート本体60の上面および支持ピン61の表面を含む。また、支持ピン61が備えられていない場合には、プレート本体60の上面が加熱面6aに相当する。以下では、支持ピン61が基板Wの下面に接している状態を、加熱面6aに基板Wの下面が接しているなどという場合がある。
ヒータ62は、プレート本体60に内蔵されている抵抗体であってもよい。図3には、複数の領域に分割されたヒータ62を示している。ヒータ62に通電することによって、加熱面6aが室温(たとえば20〜30℃。たとえば25℃)よりも高温に加熱される。具体的には、ヒータ62への通電によって、第1移動ノズル11から供給される有機溶剤の沸点よりも高温に加熱面62aを加熱することができる。図2に示すように、ヒータ62への給電線63は、昇降軸30内に通されている。そして、給電線63には、ヒータ62に電力を供給するヒータ通電ユニット64が接続されている。ヒータ通電ユニット64は、基板処理装置1の動作中、常時、通電されてもよい。
支持ピン61は、プレート本体60の上面にほぼ均等に配置されている。プレート本体60の外周端よりも外方に、チャックピン20が配置されている。チャックピン20の全体がプレート本体60の外周端よりも外方に配置されている必要はなく、ヒータユニット6の上下動範囲に対向する部分がプレート本体60の外周端よりも外方に位置していればよい。
図4は、チャックピン20の構造例を説明するための斜視図である。また、図5Aおよび図5Bはチャックピン20の平面図であり、図5Aは閉状態を示し、図5Bは開状態を示す。
チャックピン20は、鉛直方向に延びたシャフト部53と、シャフト部53の上端に設けられたベース部50と、シャフト部53の下端に設けられた回動支持部54とを含む。ベース部50は、把持部51と、支持部52とを含む。回動支持部54は、鉛直方向に沿うチャック回動軸線55まわりに回動可能にスピンベース21に結合されている。シャフト部53は、チャック回動軸線55から離れた位置にオフセットされて、回動支持部54に結合されている。より具体的には、シャフト部53はチャック回動軸線55よりも、回転軸線A1から離れた位置に配置されている。したがって、チャックピン20がチャック回動軸線55まわりに回動されると、ベース部50は、その全体が基板Wの周端面に沿って移動しながら、チャック回動軸線55まわりに回動する。回動支持部54は、スピンベース21の内部に設けられたリンク機構26(図2参照)に結合されている。このリンク機構26からの駆動力によって、回動支持部54は、チャック回動軸線55まわりに所定角度範囲で往復回動する。
ベース部50は、平面視において、くさび形に形成されている。ベース部50の上面には、チャックピン20の開状態で基板Wの周縁部下面に当接して基板Wを下方から支持する支持面52aが設けられている。換言すれば、ベース部50は支持面52aを上面とする支持部52を有している。把持部51は、ベース部50の上面において、支持部52とは別の位置で上方に突出している。把持部51は、基板Wの周端面に対向するようにV字状に開いた保持溝51aを有している。
回動支持部54が図5Bに示す開状態からチャック回動軸線55まわりに時計まわり方向に回動されるとき、把持部51は基板Wの周端面に接近し、支持部52は基板Wの回転中心から離反する。また、回動支持部54が図5Aに示す閉状態からチャック回動軸線55まわりに反時計まわり方向に回動されるとき、把持部51は基板Wの周端面から離反し、支持部52は基板Wの回転中心に接近する。
図5Aに示すチャックピン20の閉状態では、保持溝51aに基板Wの周端面が入り込む。このとき、基板Wの下面は、支持面52aから微小距離だけ上方に離間した高さに位置する。図5Bに示すチャックピン20の開状態では、保持溝51aから基板Wの周端面が脱していて、平面視において、把持部51は基板Wの周端面よりも外方に位置する。チャックピン20の開状態および閉状態のいずれにおいても、支持面52aは、少なくとも一部が基板Wの周縁部下面の下方に位置している。
チャックピン20が開状態のとき、基板Wを支持部52で支持できる。その開状態からチャックピン20を閉状態に切り換えると、断面V字状の保持溝51aに案内されてせり上がりながら基板Wの周端面が保持溝51a内へと案内され、保持溝51aの上下の傾斜面によって基板Wが挟持された状態に至る。その状態からチャックピン20を開状態に切り換えると、基板Wの周端面が保持溝51aの下側傾斜面に案内されながら滑り降り、基板Wの周縁部下面が支持面52aに当接する。
図5Aおよび図5Bに示すように、ベース部50は、平面視において、ヒータユニット6のプレート本体60に対向する縁部が、プレート本体60の周縁形状に倣っている。すなわち、支持部52は、平面視において、プレート本体60よりも回転中心に対して外方に位置する側面52bを有している。それにより、基板Wよりも若干小さい円形の加熱面6aを有するプレート本体60は、ヒータユニット6が上下動するときに、チャックピン20と干渉しない。この非干渉位置関係は、チャックピン20が閉状態および開状態のいずれにおいても保たれる。すなわち、チャックピン20が閉状態のときも開状態のときも、支持部52の側面52bは、平面視において、ヒータユニット6の加熱面6aから外方に離隔している。それによって、ヒータユニット6は、チャックピン20が閉状態か開状態かを問わず、加熱面6aを側面52bの内側を通過させながら、昇降することができる。
基板Wの直径は、たとえば300mmであり、プレート本体60の上面の直径はたとえば294mmである。したがって、加熱面6aは、基板Wの下面の中央領域および周縁領域を含むほぼ全域に対向している。チャックピン20の閉状態および開状態のいずれにおいても、加熱面6aの外周縁の外側に所定の微小間隔(たとえば2mm)以上の間隔を確保した状態で、支持部52が配置される。
把持部51は、チャックピン20の閉状態において、その内側縁が、プレート本体60の外周縁の外側に所定の微小間隔(たとえば2mm)以上の間隔を確保した状態で位置するように構成されている。したがって、ヒータユニット6は、チャックピン20の閉状態および開状態のいずれにおいても、加熱面6aを把持部51の内側で上下させて、基板Wの下面に接触するまで上昇させることができる。
チャック回動軸線55は、平面視において、回転軸線A1(図2および図3参照)を中心とし、加熱面6aの半径よりも小さな半径の円周上に位置している。
図6は、第1移動ノズル11の構成例を説明するための模式的な縦断面図である。第1移動ノズル11は、有機溶剤ノズル71を備えている。有機溶剤ノズル71は、鉛直方向に沿った直管で構成されている。有機溶剤ノズル71に、有機溶剤供給管35が結合されている。
有機溶剤ノズル71に、基板Wの上方を不活性ガス雰囲気で覆うためのガスノズル72が結合されている。ガスノズル72は、下端にフランジ部73を有する円筒状のノズル本体74を有している。フランジ部73の側面である外周面には、上側気体吐出口75および下側気体吐出口76が、それぞれ環状に外方に向けて開口している。上側気体吐出口75および下側気体吐出口76は、上下に間隔を空けて配置されている。ノズル本体74の下面には、中心気体吐出口77が配置されている。
ノズル本体74には、不活性ガス供給管36から不活性ガスが供給される気体導入口78,79が形成されている。気体導入口78,79に対して、個別の不活性ガス供給管が結合されてもよい。ノズル本体74内には、気体導入口78と上側気体吐出口75および下側気体吐出口76とを接続する筒状の気体流路81が形成されている。また、ノズル本体74内には、気体導入口79に連通する筒状の気体流路82が有機溶剤ノズル71のまわりに形成されている。気体流路82の下方にはバッファ空間83が連通している。バッファ空間83は、さらに、パンチングプレート84を介して、その下方の空間85に連通している。この空間85が中心気体吐出口77に開放している。
気体導入口78から導入された不活性ガスは、気体流路81を介して上側気体吐出口75および下側気体吐出口76に供給され、これらの気体吐出口75,76から放射状に吐出される。これにより、上下方向に重なる2つの放射状気流が基板Wの上方に形成される。一方、気体導入口79から導入された不活性ガスは、気体流路82を介してバッファ空間83に蓄えられ、さらにパンチングプレート84を通って拡散された後に、空間85を通って中心気体吐出口77から基板Wの上面に向けて下方に吐出される。この不活性ガスは、基板Wの上面にぶつかって方向を変え、放射方向の不活性ガス流を基板Wの上方に形成する。
したがって、中心気体吐出口77から吐出される不活性ガスが形成する放射状気流と、気体吐出口75,76からの吐出される二層の放射状気流とを合わせて、三層の放射状気流が基板Wの上方に形成されることになる。この三層の放射状気流によって、基板Wの上面が保護される。とくに、後述するとおり、基板Wを高速回転するときに、三層の放射状気流によって基板Wの上面が保護されることにより、液滴やミストが基板Wの表面に付着することを回避できる。
有機溶剤ノズル71は、気体流路82、バッファ空間83およびパンチングプレート84を貫通して上下方向に延びている。有機溶剤ノズル71の下端の吐出口71aは、パンチングプレート84の下方に位置しており、基板Wの上面に向けて鉛直上方から有機溶剤を吐出する。
図7は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御ユニット3は、マイクロコンピュータを備えており、所定の制御プログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。とくに、制御ユニット3は、搬送ロボットIR,CR、スピンチャック5を回転駆動する電動モータ23、第1ノズル移動ユニット15、第2ノズル移動ユニット16、ヒータ通電ユニット64、ヒータユニット6を昇降する昇降ユニット7、チャックピン駆動ユニット25、バルブ類37,38,43,44,45,47,49などの動作を制御する。
図8は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(S1)。このとき、制御ユニット3は、ヒータユニット6を下位置に配置するように昇降ユニット7を制御する。また、制御ユニット3は、チャックピン20が開状態になるようにチャックピン駆動ユニット25を制御する。その状態で、搬送ロボットCRは、基板Wをスピンチャック5に渡す。基板Wは、開状態のチャックピン20の支持部52(支持面52a)に載置される。その後、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を閉状態とする。それにより、複数のチャックピン20の把持部51によって基板Wが把持される。
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、薬液処理(S2)が開始される。制御ユニット3は、電動モータ23を駆動してスピンベース21を所定の薬液回転速度で回転させる。その一方で、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方の薬液処理位置に配置する。薬液処理位置は、第2移動ノズル12から吐出される薬液が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、薬液バルブ43を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第2移動ノズル12から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。
一定時間の薬液処理の後、基板W上の薬液をDIWに置換することにより、基板W上から薬液を排除するためのDIWリンス処理(S3)が実行される。具体的には、制御ユニット3は、薬液バルブ43を閉じ、代わって、DIWバルブ47を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けてDIWノズル10からDIWが供給される。供給されたDIWは遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。このDIWによって基板W上の薬液が洗い流される。この間に、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方からカップ8の側方へと退避させる。
一定時間のDIWリンス処理の後、基板W上のDIWを、より表面張力の低い処理液(低表面張力液)である有機溶剤に置換する有機溶剤処理(S4)が実行される。制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して、第1移動ノズル11を基板Wの上方の有機溶剤リンス位置に移動させる。有機溶剤リンス位置は、第1移動ノズル11に備えられた有機溶剤ノズル71(図6参照)から吐出される有機溶剤(たとえばIPA)が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、DIWバルブ47を閉じて、有機溶剤バルブ37を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第1移動ノズル11(有機溶剤ノズル71)から有機溶剤(液体)が供給される。供給された有機溶剤は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板W上のDIWを置換する。
有機溶剤処理において、制御ユニット3は、昇降ユニット7を制御して、ヒータユニット6を基板Wに向けて上昇させ、それによって、基板Wを加熱する。また、制御ユニット3は、スピンチャック5の回転を減速して基板Wの回転を停止し、かつ有機溶剤バルブ37を閉じて有機溶剤の供給を停止する。それにより、静止状態の基板W上に有機溶剤液膜が支持されたパドル状態とされる。基板Wの加熱によって、基板Wの上面に接している有機溶剤の一部が蒸発し、それによって、有機溶剤液膜と基板Wの上面との間に気相層が形成される。その気相層に支持された状態の有機溶剤液膜が排除される。
有機溶剤液膜の排除に際して、制御ユニット3は、第1ノズル移動ユニット15を制御して、第1移動ノズル11を基板Wの上方からカップ8の側方へと退避させる。そして、制御ユニット3は、第2ノズル移動ユニット16を制御して、第2移動ノズル12を基板Wの上方の気体吐出位置に配置する。気体吐出位置は、第2移動ノズル12から吐出される不活性ガス流が基板Wの上面の回転中心に向けられる位置であってもよい。そして、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ44を開いて、基板W上の有機溶剤液膜に向けて不活性ガスを吐出する。これにより、不活性ガスの吐出を受ける位置、すなわち、基板Wの中央において、有機溶剤液膜が不活性ガスによって排除され、有機溶剤液膜の中央に、基板Wの表面を露出させる穴が空けられる。この穴を広げることによって、基板W上の有機溶剤が基板W外へと排出される。
こうして、有機溶剤処理を終えた後、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ44を閉じ、第2移動ノズル12を退避させた後、電動モータ23を制御して、基板Wを乾燥回転速度で高速回転させる。それにより、基板W上の液成分を遠心力によって振り切るための乾燥処理(S5:スピンドライ)が行われる。
その後、制御ユニット3は、電動モータ23を制御してスピンチャック5の回転を停止させる。また、昇降ユニット7を制御して、ヒータユニット6を下位置に制御する。さらに、制御ユニット3は、チャックピン駆動ユニット25を制御して、チャックピン20を開位置に制御する。これにより、基板Wは、チャックピン20の把持部51に把持された状態から、支持部52に載置された状態となる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S6)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
図9は、有機溶剤処理(図8のS4)の詳細を説明するためのタイムチャートである。また、図10A〜図10Hは、有機溶剤処理の各ステップの様子を説明するための図解的な断面図であり、図10Iは乾燥処理(図8のS5)の様子を説明するための図解的な断面図である。
有機溶剤処理は、有機溶剤リンスステップT1と、有機溶剤パドルステップT2と、持ち上げパドルステップT3と、ノズル入れ替えステップT4と、穴開けステップT5と、穴広げステップT6と、外周液落としステップT7とを含み、これらが順に実行される。
有機溶剤リンスステップT1は、基板Wを回転しながら、基板Wの上面に有機溶剤を供給するステップ(処理液供給工程、有機溶剤供給工程)である。図10Aに示すように、基板Wの上面に有機溶剤ノズル71から有機溶剤が供給される。供給された有機溶剤は、遠心力を受けて基板Wの上面の中心から外方へと向かい、基板Wの上面を覆う液膜90を形成する。液膜90が基板Wの上面全域を覆うことにより、DIWリンス処理(図8のS3)で基板Wの上面に供給されたDIW(別の処理液)が全て有機溶剤に置換される。
有機溶剤リンスステップT1の期間中、基板Wは、スピンチャック5によって、有機溶剤リンス処理速度(液供給速度。たとえば300rpm程度)で回転させられる(液供給速度回転工程)。第1移動ノズル11(有機溶剤ノズル71)は、基板Wの回転中心の上方に配置される。有機溶剤バルブ37は開状態とされ、したがって、有機溶剤ノズル71から吐出される有機溶剤(たとえばIPA)が基板Wの上面の回転中心に向けて上方から供給される。チャックピン20は閉状態とされ、基板Wは把持部51によって把持され、スピンチャック5とともに回転する。ヒータユニット6は、下位置よりも上方に位置制御され、基板Wの下面から所定距離(たとえば2mm)だけ下方に離隔した離隔位置にその加熱面6aが配置される。これにより、基板Wは、加熱面6aからの輻射熱によって予熱される(基板予熱工程)。ヒータユニット6の加熱面の温度は、たとえば150℃程度であり、面内で均一である。第2移動ノズル12は、カップ8の側方のホーム位置に退避している。薬液バルブ43および不活性ガスバルブ38,44は閉状態に制御される。したがって、第2移動ノズル12は、不活性ガス(たとえば窒素ガス)を吐出しない。
有機溶剤パドルステップT2は、図10Bに示すように、基板Wの回転を減速して停止させ、基板Wの表面に有機溶剤の厚い液膜90を形成して保持するステップである。
基板Wの回転は、この例では、有機溶剤リンス処理速度から段階的に減速される(減速工程、漸次減速工程、段階的減速工程)。より具体的には、基板Wの回転速度は、300rpmから、50rpmに減速されて所定時間(たとえば10秒)維持され、その後、10rpmに減速されて所定時間(たとえば10秒)維持され、その後、0rpm(停止)に減速されて所定時間(たとえば10秒)維持される。一方、有機溶剤ノズル71は、回転軸線A1上に保持され、引き続き、基板Wの上面の回転中心に向けて有機溶剤を吐出する。有機溶剤ノズル71からの有機溶剤の吐出は、有機溶剤パドルステップT2の全期間において継続される。すなわち、基板Wが停止しても、有機溶剤の吐出が継続される。このように、基板Wの回転の減速から停止に至る全期間において有機溶剤の供給が継続されることにより、基板Wの上面の至るところで処理液が失われることがない。また、基板Wの回転が停止した後も有機溶剤の供給が継続されることにより、基板Wの上面に厚い液膜90を形成できる。
ヒータユニット6の位置は、有機溶剤リンスステップのときと同じ位置であり、加熱面6aが基板Wの下面から所定距離(たとえば2mm)だけ下方に離隔した離隔位置である。これにより、基板Wは、加熱面6aからの輻射熱によって予熱される(基板予熱工程)。チャックピン20は、基板Wの回転が停止した後、その停止状態が保持されている間に、閉状態から開状態へと切り換わる。それにより、基板Wの周縁部下面がチャックピン20の支持部52によって下方から支持された状態となり、把持部51が基板Wの上面周縁部から離れるので、基板Wの上面全域が開放される。第2移動ノズル12は、ホーム位置のままである。
持ち上げパドルステップT3は、図10Cに示すように、ヒータユニット6で基板Wを持ち上げた状態で、すなわち、加熱面6aを基板Wの下面に接触させた状態で、基板Wを加熱しながら、基板Wの上面に有機溶剤液膜90を保持するステップである。
ヒータユニット6が離隔位置から上位置まで上昇させられて、所定時間(たとえば10秒間)保持される。ヒータユニット6が上位置まで上昇させられる過程で、チャックピン20の支持部52から加熱面6aに基板Wが渡され、加熱面6a(より具体的には支持ピン61。図2参照)によって基板Wが支持される(ヒータユニット接近工程、ヒータユニット接触工程)。第1移動ノズル11(有機溶剤ノズル71)からの有機溶剤の吐出は、持ち上げパドルステップT3の途中まで継続される。したがって、ヒータユニット6の加熱面6aが基板Wの下面に接触し、加熱面6aからの熱伝導による基板Wの急加熱が開始され、基板Wに与えられる熱量が増加(熱量増加工程)するときには、有機溶剤の供給は継続している。それにより、基板Wの急激な昇温に伴う有機溶剤の蒸発によって有機溶剤の液膜90に不特定の位置で穴があくことを回避している。有機溶剤の供給は、ヒータユニット6の加熱面6aが基板Wの下面に接触した後(熱量増加工程の後)、所定時間の経過の後に停止される(供給停止工程)。すなわち、制御ユニット3は、有機溶剤バルブ37を閉じて、有機溶剤ノズル71からの有機溶剤の吐出を停止させる。
スピンチャック5の回転は停止状態であり、第2移動ノズル12はホーム位置にあり、不活性ガスバルブ44は閉状態である。第1移動ノズル11(有機溶剤ノズル71)は基板Wの回転中心の上方に位置している。
有機溶剤の供給が停止された後、所定時間が経過するまで、ヒータユニット6は上位置に保持される。基板Wに供給された有機溶剤は、中心に供給される新たな有機溶剤によって外周側へと押しやられ、その過程で、ヒータユニット6によって加熱された基板Wの上面からの熱で加熱されて昇温していく。有機溶剤の供給を継続している期間には、基板Wの中央領域の有機溶剤の温度は比較的低い。そこで、有機溶剤の供給を停止した後、所定の短時間だけヒータユニット6の接触状態を保持することによって、基板Wの中央領域における有機溶剤を昇温できる。それにより、基板Wの上面に支持された有機溶剤の液膜90の温度を均一化できる。
基板Wの上面からの熱を受けた有機溶剤液膜90では、基板Wの上面との界面において蒸発が生じる。それによって、基板Wの上面と有機溶剤液膜90との間に、有機溶剤の気体からなる気相層が生じる。したがって、有機溶剤液膜90は、基板Wの上面の全域において、気相層上に支持された状態となる(気相層形成工程)。
ノズル入れ替えステップT4は、図10Dに示すように、第1移動ノズル11を回転軸線A1上から退避させ、代わって、第2移動ノズル12を回転中心上に配置するステップである。具体的には、有機溶剤の供給を停止した後に、第1移動ノズル11は、カップ8の側方に設定したホーム位置に退避させられる。その後、第2移動ノズル12が、ホーム位置から回転軸線A1上の中心位置に移動させられる。ノズル入れ替えステップT4の期間中、ヒータユニット6は上位置から若干下に下降させられる。それにより、基板Wは、ヒータユニット6からチャックピン20の支持部52に渡され、加熱面6aは、基板Wの下面から所定の微小距離だけ間隔を空けた非接触状態で基板Wの下面に対向する。これにより、基板Wの加熱は加熱面6aからの輻射熱による加熱に切り換わり、基板Wに与えられる熱量が減少する(熱量減少工程)。これによって、ノズルを入れ替えている間に基板Wが過熱することを回避し、蒸発によって有機溶剤液膜90に亀裂(とくに基板Wの外周領域での亀裂)が生じることを回避している。
穴開けステップT5は、図10Eに示すように、第2移動ノズル12から基板Wの中心に向けて小流量(第1流量。たとえば3リットル/分)で不活性ガス(たとえば窒素ガス)を吹き付け、有機溶剤液膜90の中央部に小さな穴91を開けて基板Wの上面の中央部を露出させるステップである(穴開け工程)。基板Wの回転は停止状態のままであり、したがって、静止状態の基板W上の液膜90に対して穴開けステップが行われる。有機溶剤液膜90の中央部に穴開けした状態の平面図を図11Aに示す。明瞭化のために、図11Aにおいて、有機溶剤液膜90は斜線を付して示す。
制御ユニット3は、不活性ガスバルブ44を開き、かつ流量可変バルブ45の開度を制御することによって、第2移動ノズル12から小流量で不活性ガスを吐出させる。不活性ガスの吐出とほぼ同時にヒータユニット6が上昇させられる。それにより、不活性ガスによって有機溶剤液膜90の中央部に小さな穴91が開けられたタイミングよりも微小時間(たとえば1秒)だけ遅れて、加熱面6aが基板Wの下面に接触し、基板Wがヒータユニット6によって持ち上げられる。
したがって、不活性ガスが基板Wの上面に到達する時点ではヒータユニット6から基板Wに与えられる熱量が少ないので、不活性ガスによる基板Wの冷却とヒータユニット6による加熱とに起因する基板Wの上下面間の温度差を少なくできる。それにより、基板Wの上下面の温度差に起因する基板Wの反りを回避できる。不活性ガスを供給したときにヒータユニット6を基板Wの下面に接触させていると、基板Wの上面側の温度がその下面側の温度よりも低くなり、基板Wは上面側が窪むように反るおそれがある。この場合、基板Wの上面は、中心部が低く周縁部が高くなるので、有機溶剤液膜90の外方への移動が妨げられる。そこで、この実施形態では、ヒータユニット6を基板Wの下面から離隔させた状態で不活性ガスを基板Wの上面中央に供給し、基板Wの上下面における温度差を緩和している。
一方、有機溶剤液膜90の穴開けの直後から(すなわち、ほぼ同時に)、基板Wの急加熱が始まる(再熱量増加工程)。それにより、不活性ガスによる穴開けによって液膜90の外方への移動が始まると、基板Wの加熱が速やかに(ほぼ同時に)開始され、それによって、液膜90は止まることなく基板Wの外方へと移動していく。
より具体的には、穴開けされて液膜90がなくなった中央領域では、液膜90が存在しているその周囲の領域に比較して、基板Wの温度が速やかに上昇する。それによって、穴91の周縁において基板W内に大きな温度勾配が生じる。すなわち、穴91の周縁の内側が高温で、その外側が低温になる。この温度勾配によって、図10Fに示すように、気相層上に支持されている有機溶剤液膜90が低温側、すなわち、外方に向かって移動を始め、それによって、有機溶剤液膜90の中央の穴91が拡大していく。
こうして、基板Wの加熱により生じる温度勾配を利用して、基板W上の有機溶剤液膜90を基板W外へと排除できる(加熱排除工程、液膜移動工程)。より具体的には、基板Wの上面において、パターンが形成された領域内の液膜90は、温度勾配による有機溶剤の移動によって排除できる。
不活性ガスの吹き付けによって基板Wの回転中心に穴91を形成した後に、長い時間を空けてヒータユニット6を基板Wに接触させると、その間に、穴91の拡大が停止する。このとき、液膜90の内周縁は、内方に向かったり外方に向かったりする平衡状態となる。このとき、基板Wの表面に形成されたパターン内に有機溶剤の液面が入り込み、表面張力によるパターン倒壊の原因となるおそれがある。そこで、この実施形態では、不活性ガスガスによる穴開けとほぼ同時にヒータユニット6を基板Wの下面に接触させて、基板Wに与える熱量を瞬時に増加させている。
穴広げステップT6は、図10Gに示すように、第2移動ノズル12から吐出される不活性ガスの流量を増量し、大流量(第2流量。たとえば30リットル/分)の不活性ガスを基板Wの中心に吹き付けて、有機溶剤液膜90の中央の穴91を不活性ガスによってさらに広げるステップである(気体排除工程、液膜移動工程)。すなわち、制御ユニット3は、流量可変バルブ45を制御して、第2移動ノズル12に供給される不活性ガスの流量を増加させる。それにより、基板Wの上面の外周領域まで移動した液膜90がさらに基板W外へと押しやられる。基板Wの回転は停止状態に保持される。
具体的には、温度勾配によって穴91が広がっていく過程で、さらに不活性ガスの流量を増加させることで、液膜90の移動が停止することを回避して、液膜90の基板W外方に向かう移動を継続させることができる。温度勾配を利用する有機溶剤液膜90の移動だけでは、図11Bの平面図に示すように、基板Wの上面の周縁領域で液膜90の移動が止まってしまうおそれがある。そこで、不活性ガスの流量を増加させることで、液膜90の移動をアシストでき、それによって、基板Wの上面の全域から有機溶剤液膜90を排除できる。
不活性ガスの流量を増量した後に、ヒータユニット6が下降させられ、加熱面6aからチャックピン20の支持部52に基板Wが渡される。その後、大流量での不活性ガス吐出が終了するまでに、チャックピン20が閉状態とされ、その把持部51によって基板Wが把持される。図9に示した例では、ヒータユニット6は、チャックピン20に基板Wが渡された後、基板Wの下面に微小距離を隔てて対向する非接触加熱位置に短時間保持され、その後、さらに下降されて、基板Wの下面に所定距離だけ隔てて対向する離隔位置に配置される。
外周液落としステップT7は、図10Hに示すように、基板Wを回転させることによって、基板Wの外周部に残る有機溶剤液膜を振り落とすステップである。チャックピン20で基板Wが把持された後、第2移動ノズル12への不活性ガスの供給が停止され、第2移動ノズル12がホーム位置へと退避する。それとともに、スピンチャック5が低速の外周振り落とし速度で回転させられる。具体的には、たとえば30〜100rpmでスピンチャック5とともに基板Wが回転させられる。それにより、大流量の不活性ガスの供給によっても排除しきれずに基板Wの外周部(とくに周端面)に残る有機溶剤が振り落とされる。
温度差および大流量の不活性ガスの吹き付けによって、液膜90が外周部にまで移動した後であり、しかも、低速の外周振り落とし速度での回転であるので、遠心力によって液膜90が微小液滴に分裂することがなく、液塊の状態で基板Wから振り落とされる。また、基板Wの外周部には、製品に使用するための有効なパターンが形成されていない場合がほとんどであるので、たとえ液膜90の多少の分裂が生じても大きな問題ではない。
外周液落としステップT7に続けて、図10Iに示すように、スピンドライステップT8(乾燥処理。図8のS5)が実行される。具体的には、制御ユニット3は、第1移動ノズル11を、ホーム位置から回転軸線A1上に移動させる。さらに、制御ユニット3は、第1移動ノズル11を、基板Wの上面に接近した下位置に配置する。そして、制御ユニット3は、不活性ガスバルブ38を開く。それにより、第1移動ノズル11(ガスノズル72)は、三層の放射状不活性ガス流を基板Wの上方に形成する。その状態で、制御ユニット3は、スピンチャック5の回転を高速な乾燥回転速度(たとえば800rpm)まで加速される。これにより、遠心力によって、基板Wの表面の液成分を完全に振り切ることができる。基板Wの上面は放射状の不活性ガス流によって覆われているので、周囲に飛び散って跳ね返った液滴や周囲のミストが基板Wの上面に付着することを回避できる。
スピンドライステップT8の後は、スピンチャック5の回転が停止され、ヒータユニット6が下位置に下降させられる。また、不活性ガスバルブ38が閉じられて、ガスノズル72からの不活性ガスの吐出が停止される。そして、第1移動ノズル11は、ホーム位置に移動される。その後は、制御ユニット3は、チャックピン20を開状態とし、搬送ロボットCRによって、処理済みの基板Wを処理ユニット2から搬出させる。
図12Aおよび図12Bは、基板Wの表面における気相層の形成を説明するための図解的な断面図である。基板Wの表面には、微細なパターン101が形成されている。パターン101は、基板Wの表面に形成された微細な凸状の構造体102を含む。構造体102は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体102は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。ライン状の構造体102が隣接する場合には、それらの間に溝(溝)が形成される。この場合、構造体102の幅W1は10nm〜45nm程度、構造体102同士の間隔W2は10nm〜数μm程度であってもよい。構造体102の高さTは、たとえば50nm〜5μm程度であってもよい。構造体102が筒状である場合には、その内方に孔が形成されることになる。
有機溶剤パドルステップT2では、図12Aに示すように、基板Wの表面に形成された有機溶剤液膜90は、パターン101の内部(隣接する構造体102の間の空間または筒状の構造体102の内部空間)を満たしている。
持ち上げパドルステップT3では、基板Wが加熱され、有機溶剤の沸点(IPAの場合は82.4℃)よりも所定温度(たとえば、10〜50℃)だけ高い温度となる。それにより、基板Wの表面に接している有機溶剤が蒸発し、有機溶剤の気体が発生して、図12Bに示すように、気相層92が形成される。気相層92は、パターン101の内部を満たし、さらに、パターン101の外側に至り、構造体102の上面102Aよりも上方に有機溶剤液膜90との界面95を形成している。この界面95上に有機溶剤液膜90が支持されている。この状態では、有機溶剤の液面がパターン101に接していないので、有機溶剤液膜90の表面張力に起因するパターン倒壊が起こらない。
基板Wの加熱によって有機溶剤が蒸発するとき、液相の有機溶剤はパターン101内から瞬時に排出される。そして、形成された気相層92上に液相の有機溶剤が支持され、パターン101から離隔させられる。こうして、有機溶剤の気相層92は、パターン101の上面(構造体102の上面102A)と有機溶剤液膜90との間に介在して、有機溶剤液膜90を支持する。
図12Cに示すように、基板Wの上面から浮上している有機溶剤液膜90に亀裂93が生じると、乾燥後にウォータマーク等の欠陥の原因となる。そこで、この実施形態では、基板Wの回転を停止した後に有機溶剤の供給を停止して、基板W上に厚い有機溶剤液膜90を形成して、亀裂の発生を回避している。ヒータユニット6を基板Wに接触させるときには、基板Wの回転が停止しているので、液膜90が遠心力によって分裂することがなく、したがって、液膜90に亀裂が生じることを回避できる。さらに、ヒータユニット6の出力および基板Wとの接触時間を調節して、有機溶剤の蒸気が液膜90を突き破って吹き出さないようにし、それによって、亀裂の発生を回避している。より具体的には、ノズル入れ替えステップT4では、ヒータユニット6を基板Wから離隔させることで基板Wの過熱を回避し、それによって、有機溶剤液膜90に亀裂が生じることを回避している。
気相層92上に有機溶剤液膜90が支持されている状態では、有機溶剤液膜90に働く摩擦抵抗は、零とみなせるほど小さい。そのため、基板Wの上面に平行な方向の力が有機溶剤液膜90に加わると、有機溶剤液膜90は簡単に移動する。この実施形態では、有機溶剤液膜90の中央に穴開けし、それによって、穴91の縁部での温度差によって有機溶剤の流れを生じさせて、気相層92上に支持された有機溶剤液膜90を移動させて排除している。
図13Aおよび図13Bは、基板Wの温度差による有機溶剤液膜90の移動を説明するための図である。有機溶剤液膜90中の有機溶剤は、より低温の方に移動しようとする。穴開けステップT5で有機溶剤液膜の中央に穴91が形成されることにより、図13Aに示すように、穴91内の領域の基板Wの温度が比較的高くなる。それに応じて、穴91の近傍では有機溶剤液膜90の温度がその周囲よりも高くなる。これにより、有機溶剤液膜90中に温度差が生じるので、穴91の周縁部の有機溶剤が、基板Wの外方に向かって放射状に移動する。これにより、図13Bに示すように、気相層92上で、基板Wの周縁に向かう流れ94が生じ、有機溶剤液膜90の中央部の穴91が同心円状に広がる。
この温度差による有機溶剤の流れ94を利用した穴広げと並行して、不活性ガスの流量増大による穴広げステップT6が実行されるので、穴91は、途中で止まることなく、基板Wの外周縁まで広がる。それにより、途中で滞留を生じさせることなく、液膜90を基板W外に排除できる。
前述のとおり、温度勾配を利用する有機溶剤液膜90の移動だけでは、基板Wの上面の周縁領域で液膜90の移動が止まってしまうおそれがある。液膜90の移動が止まると、液膜90の内周縁では、有機溶剤が、基板Wの内方への移動と外方への移動とを繰り返す平衡状態となる。この場合、有機溶剤が基板Wの内方に戻るときに、気相層92が失われた基板Wの表面に有機溶剤が直接接するおそれがある。このとき、有機溶剤の液面がパターンの内部に入り込み、表面張力によるパターンの倒壊が生じるおそれがある。
図14は、有機溶剤パドルステップT2の初期における基板回転速度の漸次的減速による効果を説明するための図である。明瞭化のために、図14において、有機溶剤液膜90に斜線を付す。
基板Wに供給された処理液に働く遠心力は、基板Wの回転速度が大きいほど大きい。基板Wの回転を急減速させると、基板Wの外周領域には基板Wの回転が高速であったときに供給された有機溶剤が存在する一方で、基板Wの中央領域には基板Wの回転が低速になった後に供給された有機溶剤が存在する状態となる。したがって、外周領域の有機溶剤は、大きな遠心力を受けていて、速い流れを形成する。それに対して、中央領域の有機溶剤に働く遠心力は小さいので、中央領域では遅い流れが形成されるに過ぎない。基板の回転が停止すれば、遠心力による有機溶剤の流れが形成されることはない。この場合、継続して基板Wの中央に供給される有機溶剤によって基板W上の有機溶剤が外方に押し流されることによって、有機溶剤の遅い流れが基板W上に形成されるに過ぎない。
したがって、基板Wの回転を急停止すると、基板Wの外周部の有機溶剤が基板W外に速やかに流れ落ちるのに対して、基板Wの中心に供給される有機溶剤が基板Wの外周部に到達するのに長い時間を要する。その結果、図14に示すように、基板Wの外周領域における液切れが生じ、基板Wの外周領域には、有機溶剤液膜で覆われていない領域99が生じ得る。その領域99では、有機溶剤の液面がパターン内に存在する状態で有機溶剤が排除されるので、有機溶剤の表面張力によるパターン倒壊が生じるおそれがある。
そこで、この実施形態では、有機溶剤パドルステップT2では、基板Wの回転を漸次的に(より具体的には段階的に)減速することで、基板Wの外周部での液切れを回避し、基板Wの表面が有機溶剤液膜90で覆われている状態を保持しながら、基板Wの回転を停止している。
基板Wの回転を停止するときの減速度(負の加速度の絶対値)が十分に小さければ基板Wの外周における液切れを回避できる。したがって、基板Wの回転の漸次的減速は、段階的減速でなくてもよく、回転速度を連続的に減少させてもよい。基板Wの回転を停止するまでの減速度は一定である必要はない。
図15A、図15Bおよび図15Cは、穴開けステップT5および穴広げステップT6を省いた場合(比較例)の課題を説明するための図解的な平面図である。明瞭化のために、図15A〜図15Cにおいて、有機溶剤液膜90に斜線を付す。
静止状態の基板Wの上面全域を覆う有機溶剤液膜90が形成された状態から、ヒータユニット6を基板Wに接触させて基板Wの加熱を継続すると、液相の有機溶剤の蒸発が進み、やがて、基板W上のいずれかの位置で液相層がなくなる。穴開けステップT5を省いた場合には、図15Aに示すように、基板W上の不特定の複数の位置で液相層がなくなって複数の穴97が形成される。液相層が無くなった位置では基板Wの温度が上昇するので、図15Bに示すように、温度差によって、複数の穴97がそれぞれ広がっていく。ところが、このように不特定の複数位置から乾燥が始まると、図15Cに示すように、基板W上の複数の位置に、複数の分離した液膜90が分散して残留する。この残留した液膜90は、パーティクルやパターン倒壊の原因となる。
そこで、この実施形態では、気相層92上の液膜90が基板W上面の全域を覆っている状態で、基板Wの中央に不活性ガスを吹き付けて液膜90に一つの穴91を開けている(穴開けステップT5)。これにより、その一つの穴91から有機溶剤液膜90の排除が始まるので、液残りを生じることなく、有機溶剤液膜90を基板W外に排除できる。しかも、基板Wの回転を停止した状態で穴91を広げて有機溶剤液膜90が排除されるので、遠心力に起因する有機溶剤液膜90の分裂を回避できる。
以上のように、この実施形態によれば、DIWリンス処理の後に、基板Wの表面のDIWを有機溶剤で置換して、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤液膜90が形成される。この有機溶剤液膜90が基板Wの上面全域を覆う状態を維持しながら、基板Wの回転が減速させられて停止される。そして、基板Wの回転が停止し、さらに、ヒータユニット6が基板Wの下面に接触するまで、有機溶剤の供給が継続され、その後に有機溶剤の供給が停止される。それによって、基板Wの上面に有機溶剤の厚い液膜90が形成され、かつヒータユニット6の接触による基板Wの急激な昇温に際しても、その液膜90に亀裂が生じることがない。こうして、有機溶剤液膜90が基板Wの上面を覆っている状態を終始維持しながら、ヒータユニット6による基板Wの加熱によって、基板Wの上面と液膜90との間に有機溶剤の気相層92が基板Wの上面全域にわたって形成される。気相層92は、基板Wの表面のパターンの内部を満たし、かつパターンの上面よりも上に液膜90との界面を有する。したがって、パターン内に有機溶剤の液面が存在しないので、パターンは表面張力を受けない。よって、気相層92に支持された状態で液膜90を基板W外に排除することによって、パターンの倒壊を抑制または防止できる。
この実施形態では、液膜90の排除に際して、その中央に向けて不活性ガスが吐出され、それによって、一つの穴91が形成される。この一つの穴91が、温度勾配および大流量不活性ガス供給による液膜90の移動によって外方へと押し広げられる。このとき、基板Wの回転は停止しているので、液膜90は大きな厚さを保持したまま、分裂することなく、気相層92上を基板Wの外方へと移動して、基板W外に排除されていく。温度勾配に加えて大流量不活性ガス供給によって液膜90の移動を補助しているので、液膜90の移動が途中で止まることがなく、有機溶剤が基板Wの内方に戻ってパターン内にその液面を形成することがない。これにより、有機溶剤液膜90を排除する過程におけるパターン倒壊を回避できる。さらに、パターン形成領域よりも外方の外周に残った液膜90は基板Wを低速回転させることによって振り落とされ、それによって、基板Wの表面から液膜90が完全に排除される。
このようにして、有機溶剤液膜90は、気相層92の形成まで基板Wの上面全域を覆った状態を保ち、その後、基板W上からの排除が始まると、分裂することも、停止することもなく、基板Wの外方へと導かれる。これにより、基板W上のパターンの倒壊を効果的に抑制または防止しながら、基板W上の液成分を排除することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。この発明の範囲に含まれるいくつかの形態を以下に例示的に列挙する。
1.使用可能な有機溶剤は、IPAのほかにも、メタノール、エタノール、アセトン、HEF(ハイドルフルオロエーテル)を例示できる。これらは、いずれも水(DIW)よりも表面張力が小さい有機溶剤である。この発明は、有機溶剤以外の処理液にも適用可能である。たとえば、水などのリンス液を基板外に排除するためにこの発明を適用してもよい。リンス液としては、水のほかにも、炭酸水、電界イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)などを例示できる。
2.穴開け工程に使用可能な気体としては、窒素ガスのほかにも、清浄空気その他の不活性ガスを採用できる。
3.前述の実施形態では、第1移動ノズル11に有機溶剤ノズル71が備えられる一方で、穴開け等のための不活性ガスの供給は第2移動ノズル12から行われている。しかし、たとえば、第1移動ノズル11に有機溶剤ノズル71とともに、基板Wの回転中心に向けて不活性ガスを吐出できるガスノズルを備え、このガスノズルから穴開けのための不活性ガス供給を行ってもよい。なお、前述のガスノズル72の中心気体吐出口77は、パンチングプレート84によって拡散された気体流を吐出するので、穴開けステップの実行には必ずしも適さない。より狭い領域に向けて気体を吐出できる形態のノズル、具体的には直管状ノズルや二流体ノズルなどのようなチューブノズルを穴開けステップの実行のために用いることが好ましい。
4.第1移動ノズル11に有機溶剤ノズル71とともに穴開けステップのためのガスノズルが備えられる場合には、ノズル入れ替えステップは省かれてもよい。ただし、この場合でも、穴開けステップのためにガスノズルから吐出された不活性ガスが液膜90に到達する瞬間には、ヒータユニット6は基板Wの下面から離隔させておくことが好ましい。
5.穴開けステップにおいて、室温(たとえば25℃)よりも高温の不活性ガスを用いてもよい。この場合には、不活性ガスが基板Wに到達したときの基板Wの上下面間の温度差を少なくできる。したがって、ヒータユニット6を基板Wの下面に接触させたままで、穴開けステップのための高温不活性ガス吐出を行ってもよい。不活性ガスの温度は、基板Wの温度に近いほど好ましい。
6.前述の実施形態では、有機溶剤パドルステップT2における基板Wの回転の漸次的減速が段階的に行われているが、連続的に回転を減速してもよい。たとえば、10秒以上かけて300rpmから0rpmまで回転速度を連続的(たとえば直線的)に減速すれば、液膜90が基板Wの上面全域を覆う状態を保持できる。
7.有機溶剤パドルステップT2において基板Wの回転を減速するときに、第1移動ノズル11から吐出される有機溶剤の流量を増加させてもよい(増流量減速工程)。この場合に、基板Wの回転の減速はステップ的に行われてもよいし、前述の実施形態のように、漸次的に行われてもよい。有機溶剤の供給流量を増加させることによって、基板Wの上面の外周領域における液切れが生じ難くなるので、基板Wの回転を速やかに減速して停止させることができる。これにより、短時間で基板Wの回転を停止できるので、生産性を向上できる。
8.前述の実施形態では、ヒータユニット6から基板Wに与えられる熱量を増減するために、ヒータユニット6と基板Wとの距離を変更している。しかし、ヒータユニット6と基板Wとの間の位置関係の変更に代えて、またはそれとともに、ヒータユニット6の出力を変化させることにより、基板Wに与える熱量を増減してもよい。
9.前述の実施形態では、気相層92を形成するときに、ヒータユニット6を基板Wの下面に接触させている。しかし、ヒータユニット6からの輻射熱によって気相層92を形成できるのであれば、ヒータユニット6を基板Wの下面から離隔させたままで、気相層92の形成のための基板加熱を行ってもよい。ただし、ヒータユニット6の加熱面6aを基板Wに接触させる方が、雰囲気温度の変化等の外乱の影響を抑制できるので、加熱の面内均一性を高めることができる。また、基板Wに対しては、有機溶剤の蒸発によって奪われる気化熱を補って気相層92を形成および保持できる熱量を与える必要がある。したがって、加熱面6aを基板Wに接触させることにより、基板Wを効率的、安定的かつ速やかに加熱できる。
10.処理対象の基板は、円形である必要はなく、矩形の基板であってもよい。
11.前述の実施形態では、有機溶剤パドルステップT2の途中から基板Wの回転を完全に停止して静止状態にしている。また、有機溶剤パドルステップT2に続く持ち上げパドルステップT3、ノズル入れ替えステップT4、および穴開けステップT5を通して、基板Wの静止状態を維持している。しかし、基板Wの上に有機溶剤の液膜を保持し続けることができるのであれば、有機溶剤パドルステップT2から穴開けステップT5までの期間の全部または一部の期間において基板を静止状態とせず、静止状態と同一視できる程度の低速(たとえば10rpm程度)で回転させるようにしてもよい。たとえば、穴開けステップT5において基板Wをこのような速度で回転させてもよい。
12.回転軸線A1周りにヒータユニット6を回転させるための電動モータ等からなる回転ユニットをさらに備えてもよい。この場合、ヒータユニット6を基板Wの回転に同期して回転させることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書および添付図面からは、特許請求の範囲に記載した特徴以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
A.有機溶剤パドルステップに関連する特徴
A1.水平姿勢の基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに液供給速度で回転する液供給速度回転工程と、
前記供給速度回転工程中に前記基板の上面への処理液の供給を開始して、前記基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜形成工程の実行中に、前記処理液の液膜を保持しながら、前記基板の回転を前記液供給速度から停止まで減速する減速工程と、
前記減速工程の後に、前記処理液の前記基板の上面への供給を停止する供給停止工程と、
前記供給停止工程の後に、前記基板を加熱して基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、
前記気相層が形成された後、前記基板の外周へと前記液膜を移動させる液膜移動工程とを含む、基板処理方法。
A2.前記減速工程が、前記基板の回転速度を漸次的に減少させる漸次減速工程を含む、A1に記載の基板処理方法。
A3.前記漸次減速工程が、前記基板の回転速度を段階的に減少させる段階的減速工程を含む、A2に記載の基板処理方法。
A4.前記漸次減速工程が、前記基板の回転速度を連続的に減少させる連続的減速工程を含む、A2に記載の基板処理方法。
A5.前記減速工程が、前記処理液の供給流量を増加させた状態で前記基板の回転を減速させる増流量減速工程を含む、A1〜A4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
A6.前記液膜形成工程が、前記処理液としての有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程であり、
前記有機溶剤供給工程の前に、前記基板の上面に前記有機溶剤とは別の処理液を供給する工程を含み、
前記減速工程が、前記基板上の全ての前記別の処理液を前記有機溶剤が置換した後に開始される、A1〜A5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
A7.前記液膜形成工程中に、前記気相層形成工程よりも少ない熱量で前記基板を予熱する基板予熱工程をさらに含み、
前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を前記基板予熱工程よりも増加させる熱量増加工程を含む、A1〜A6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
A8.前記基板予熱工程が、ヒータユニットを前記基板の下面から所定距離だけ離れた離隔位置に配置して、前記ヒータからの輻射熱で前記基板を加熱する工程を含み、
前記熱量増加工程が、前記基板予熱工程における前記離隔位置よりも前記ヒータユニットを前記基板の下面に接近させる工程を含む、A7に記載の基板処理方法。
A9.前記熱量増加工程が、前記ヒータユニットを前記基板の下面に接触させる工程を含む、A8に記載の基板処理方法。
A10.基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段と、
前記基板保持手段、前記基板回転手段、前記処理液供給手段および前記加熱手段を制御して、A1〜A9のいずれか一項に記載の基板処理方法を実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
B.持ち上げパドルステップに関連する特徴
B1.水平に保持された基板の上面に処理液を供給し、前記基板の上面の全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記処理液の液膜が基板の上面に形成された後、前記処理液の供給を継続しながら前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程と、前記熱量増加工程の開始後に前記処理液の供給を停止する供給停止工程とを含み、前記基板を加熱して前記基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、
前記気相層が形成された後、前記基板の外周へと前記液膜を移動させる液膜移動工程とを含む、基板処理方法。
B2.前記液膜形成工程中に、前記気相層形成工程よりも少ない熱量で前記基板を予熱する基板予熱工程をさらに含み、
前記熱量増加工程が、前記基板に与える熱量を前記基板予熱工程よりも増加させる工程である、B1に記載の基板処理方法。
B3.前記基板予熱工程が、ヒータユニットを前記基板の下面から所定距離だけ離れた離隔位置に配置して、前記ヒータからの輻射熱で前記基板を加熱する工程を含み、
前記熱量増加工程が、前記基板予熱工程における前記離隔位置よりも前記ヒータユニットを前記基板の下面に接近させる工程を含む、B2に記載の基板処理方法。
B4.前記熱量増加工程が、前記ヒータユニットを前記基板の下面に接触させる工程を含む、B3に記載の基板処理方法。
B5.前記気相層形成工程が、前記基板の下面に前記ヒータユニットを所定時間に亘って接触させる工程を含む、請求項3または4に記載の基板処理方法。
B6.基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段と、
前記基板保持手段、前記処理液供給手段および前記加熱手段を制御して、B1〜B5のいずれか一項に記載の基板処理方法を実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
C.外周液落としステップに関連する特徴
C1.水平に保持された基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板を加熱して基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、
前記気相層が形成された後、前記基板を静止状態に保持して、前記基板の外周へと前記液膜を移動させる液膜移動工程と、
前記液膜移動工程の後に、前記基板を鉛直な回転軸線まわりに振り落とし回転速度で回転して、前記基板の外周部に残る液膜を遠心力によって振り落とす回転振り落とし工程と、
前記回転振り落とし工程の後に、前記基板を前記回転軸線まわりに、前記振り落とし回転速度よりも高速な乾燥回転速度で回転させて基板を乾燥させる乾燥工程と
を含む基板処理方法。
C2.基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段と、
前記基板保持手段、前記基板回転手段、前記処理液供給手段および前記加熱手段を制御して、C1に記載の基板処理方法を実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
D.チャックピンに関連する特徴
D1.鉛直な回転軸線まわりに回転可能なスピンベースと、
前記スピンベースに設けられ、基板を把持する閉状態と、基板の把持を開放した開状態とに変位可能であり、基板を水平姿勢に保持するチャック部材と、
前記閉状態と前記開状態とに前記チャック部材を駆動するチャック部材駆動ユニットと、
前記スピンベースの上方に昇降可能に設けられ、基板の下面の中央領域および周縁領域を含むほぼ全域に対向する加熱面を有し、基板を下面側から加熱するヒータユニットと、
前記ヒータユニットを昇降させる昇降ユニットとを含み、
前記チャック部材が、前記閉状態において基板の周端面に接して基板を把持し、前記閉状態において基板の周端面から離間する把持部と、少なくとも前記開状態において基板の周縁部の下面に対向し、基板を下面から支持する支持部とを含み、
前記回転軸線に沿って見た平面視において、前記支持部が、前記閉状態および前記開状態のいずれにおいても前記ヒータユニットの前記加熱面の周縁から外方に離隔した側面を有し、前記ヒータユニットが前記閉状態および開状態のいずれにおいても前記加熱面を前記側面の内側を通過させて昇降可能であるように前記チャック部材が構成されている、基板処理装置。
D2.前記回転軸線に沿って見た平面視において、前記ヒータユニットが前記開状態および閉状態のいずれにおいても前記加熱面を前記把持部の内側を通過させて昇降可能であるように前記チャック部材が構成されている、D1に記載の基板処理装置。
W 基板
1 基板処理装置
2 処理ユニット
3 制御ユニット
5 スピンチャック
6 ヒータユニット
6a 加熱面
7 昇降ユニット
10 DIWノズル
11 第1移動ノズル
12 第2移動ノズル
15 第1ノズル移動ユニット
16 第2ノズル移動ユニット
20 チャックピン
21 スピンベース
22 回転軸
23 電動モータ
25 チャックピン駆動ユニット
35 有機溶剤供給管
37 有機溶剤バルブ
42 不活性ガス供給管
44 不活性ガスバルブ
45 流量可変バルブ
46 DIW供給管
47 DIWバルブ
50 ベース部
51 把持部
51a 保持溝
52 支持部
52a 支持面
53 シャフト部
54 回動支持部
55 チャック回動軸線
60 プレート本体
61 支持ピン
62 ヒータ
63 給電線
64 ヒータ通電ユニット
71 有機溶剤ノズル
90 有機溶剤の液膜
91 有機溶剤液膜の穴
92 気相層
93 液膜の亀裂
94 有機溶剤の流れ
95 気相層と液膜との界面
101 パターン
102 構造体

Claims (21)

  1. 水平に保持された基板の上面に処理液を供給して前記基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
    前記基板を加熱して前記基板の上面に接する処理液を蒸発させ、前記基板の上面と前記処理液との間に気相層を形成し、前記気相層上に前記液膜を保持する気相層形成工程と、
    前記気相層が形成された後、前記基板上の前記液膜に第1流量で気体を吹き付けて処理液を部分的に排除することによって前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、
    前記基板を加熱することにより、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させることにより、前記液膜を構成する処理液を基板外に排除する加熱排除工程と、
    前記穴開け工程の後、前記基板の表面における前記穴内の領域に、前記第1流量よりも大きい第2流量で気体を吹き付け、前記穴を基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させることにより、前記液膜を構成する処理液を前記基板外に排除する気体排除工程と
    を含む、基板処理方法。
  2. 前記穴開け工程では前記基板を静止状態とする、請求項1に記載の基板処理方法。
  3. 加熱排除工程の後、前記基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに外周振り落とし速度で回転することにより、前記基板の外周部の処理液を前記基板外に振り落とす回転振り落とし工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法。
  4. 前記回転振り落とし工程の後、前記基板を前記回転軸線まわりに、前記外周振り落とし速度よりも高速な乾燥速度で回転させる高速回転乾燥工程をさらに含む、請求項3に記載の基板処理方法。
  5. 前記液膜形成工程は、
    前記基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに液供給速度で回転する液供給速度回転工程と、
    前記液供給速度回転工程中に前記基板の上面への処理液の供給を開始して、前記基板の上面全域を覆う前記液膜を形成する処理液供給工程と、
    前記処理液供給工程の実行中に、前記液膜が前記基板の上面全域を覆う状態を保持しながら、前記基板の回転を前記液供給速度から停止まで減速する減速工程と、
    前記減速工程の後に、前記処理液の前記基板の上面への供給を停止する供給停止工程と
    を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  6. 前記減速工程が、前記基板の回転速度を漸次的に減少させる漸次減速工程を含む、請求項5に記載の基板処理方法。
  7. 前記漸次減速工程が、前記基板の回転速度を段階的に減速する段階的減速工程を含む、請求項6に記載の基板処理方法。
  8. 前記漸次減速工程が、前記基板の回転速度を連続的に減少させる連続的減速工程を含む、請求項6に記載の基板処理方法。
  9. 前記減速工程が、前記処理液の供給流量を増加させた状態で前記基板の回転速度を減速させる増流量減速工程を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  10. 前記処理液供給工程が、前記処理液としての有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程であり、
    前記有機溶剤供給工程の前に、前記基板の上面に前記有機溶剤とは別の処理液を供給する工程をさらに含み、
    前記減速工程が、前記基板上の全ての前記別の処理液を前記有機溶剤が置換した後に開始される、請求項5〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  11. 前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程を含み、
    前記液膜形成工程が、前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給工程と、前記熱量増加工程の開始よりも後に前記処理液の供給を停止する供給停止工程とを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  12. 前記液膜形成工程中に、前記気相層形成工程よりも少ない熱量で前記基板を予熱する基板予熱工程をさらに含み、
    前記熱量増加工程が、前記基板に与える熱量を前記基板予熱工程よりも増加させる工程である、請求項11に記載の基板処理方法。
  13. 前記基板予熱工程が、ヒータユニットを前記基板の下面から所定距離だけ離れた離隔位置に配置して、前記ヒータユニットからの輻射熱で前記基板を加熱する工程を含み、
    前記熱量増加工程が、前記基板予熱工程における前記離隔位置よりも前記ヒータユニットを前記基板の下面に接近させる工程を含む、請求項12に記載の基板処理方法。
  14. 前記熱量増加工程が、前記ヒータユニットを前記基板の下面に接触させる工程を含む、請求項13に記載の基板処理方法。
  15. 前記穴開け工程が、処理液の前記基板の上面への供給を停止した後に実行される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  16. 前記気相層形成工程が、前記基板に与える熱量を増加させる熱量増加工程と、前記熱量増加工程の後に、前記基板に与える熱量を減少させる熱量減少工程と、を含み、
    前記加熱排除工程が、前記熱量減少工程の後に、前記基板に与える熱量を再び増加させる再熱量増加工程を含み、
    前記熱量減少工程によって前記基板に与える熱量が減少させられた状態で、前記穴開け工程が開始される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  17. 前記穴開け工程の開始と前記再熱量増加工程の開始とがほぼ同時である、請求項16に記載の基板処理方法。
  18. 前記穴開け工程が、室温よりも高温の気体を吹き付ける工程を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  19. 前記処理液が有機溶剤である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  20. 基板を水平に保持する基板保持手段と、
    前記基板保持手段に保持されている基板の上面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜を形成する処理液供給手段と、
    前記基板保持手段に保持されている基板を、基板の上面全域が処理液の液膜で覆われている状態で、処理液の沸点以上の温度で加熱することにより、処理液を蒸発させて、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を形成する加熱手段と、
    基板上の処理液に気体を吹き付ける気体吹き付け手段と、
    基板上に前記気相層によって支持されている処理液の液膜に前記気体吹き付け手段から第1流量で気体を吹き付けて、当該液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記加熱手段によって基板を加熱することにより前記穴を基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で液膜を移動させて処理液を基板外に排除する加熱排除工程と、前記穴内の領域に前記気体吹き付け手段から前記第1流量よりも大きい第2流量で気体を吹き付けて前記穴を基板の外周に向かって広げることにより処理液を基板外に排除する気体排除工程とを実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
  21. 前記基板保持手段に保持された基板を鉛直方向に沿う回転軸線まわりに回転させる基板回転手段をさらに含み、
    前記制御手段は、前記加熱排除工程よりも後に、前記基板回転手段によって基板を外周振り落とし速度で回転することにより、基板の外周部の処理液を基板外に振り落とす回転振り落とし工程をさらに実行する、請求項20に記載の基板処理装置。
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