図面を参照して、実施形態としての車両用空調装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
本実施形態の車両用空調装置1(以下、空調装置1という)は、図1に例示する車両2に搭載され、車室3内の温度や湿度を調節する。この車両2は、バッテリ4の電力で車両2を駆動するモータ5を搭載した電気自動車又はハイブリッド自動車である。バッテリ4は、例えば複数のセルを内蔵するユニット型のリチウムイオン二次電池である。また、モータ5は、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた交流電動発電機である。
バッテリ4とモータ5とを繋ぐ回路上にはインバータ6が介装される。インバータ6は、バッテリ4側の直流電力とモータ5側の交流電力とを相互に変換する変換器である。モータ5の力行時には、インバータ6を介してバッテリ4側からモータ5側へと交流の駆動電力が供給される。一方、モータ5の回生時には、インバータ6を介してモータ5側からバッテリ4側へと直流の回生電力が供給される。
図1に示すように、車両2には、バッテリ4の状態を管理するバッテリ制御装置7(BMU,Battery Management Unit)が搭載される。バッテリ制御装置7は、バッテリ4の充電状態や劣化状態の判断等を実施して、バッテリ4の状態を管理するものである。本実施形態のバッテリ制御装置7は、バッテリ4の充電率[%](SOC,State of Charge)を、後述の空調ECU30へと伝達する。なお、車室3には、バッテリ4の充電状態を表示するディスプレイ(図示略)が設けられる。乗員は、ディスプレイの表示内容からバッテリ4の電力残量や走行可能距離(航続距離)を把握することができる。
空調装置1は、図1及び図2に示すように、車室3内の空調を行う空調部10と、空気の除湿を行う除湿部20と、空調部10及び除湿部20の動作を制御する空調ECU30とを備える。空調部10及び除湿部20に含まれる各装置は、コンバータ(図示略)で降圧されたバッテリ4の電力で作動する。
まず、空調部10及び除湿部20の構成について、図3を用いて説明する。空調部10は、メインファン12,エバポレータ13,エアミックスダンパ14,暖房用ヒータ15がハウジング11内に配置されて構成される。これらの装置は、ハウジング11内に空気を取り入れる入口側から、空気を放出する出口側に向かってこの順で配置される。
メインファン12は、ハウジング11内に空気を取り入れて、その空気を車室3へと送るプロペラファンである。メインファン12は、空調装置1がオン状態のとき(車室3内の空調時)に作動して、空気の流れを生成する。エバポレータ13は、通過する空気の熱を吸収して空気を冷却するものであり、車室3内の冷房時に作動する。なお、エバポレータ13を通過する空気中の水分は、通過時にエバポレータ13の表面で凝縮され、水滴となって車外(車両の外部)へと排出される。つまり、エバポレータ13はこれを通過する空気を除湿する機能も有する。
エアミックスダンパ14は、ハウジング11内に二つの通路(空気の通り道)を形成する板状の部材であり、車室3内の冷房時と暖房時とでその通路を切り替えるように動作する。暖房用ヒータ15は、通過する空気に熱を与えて空気を加温する加熱器であり、車室3内の暖房時に作動する。暖房用ヒータ15は、エアミックスダンパ14で形成される二つの通路のうちの一方に配置される。エアミックスダンパ14は、車室3内の暖房時には暖房用ヒータ15に空気が流れるように通路を切り替え、車室3内の送風・冷房時には暖房用ヒータ15に空気が流れないように(暖房用ヒータ15を迂回するように)通路を切り替える。
ハウジング11は、車室3へ空気を放出するための出口として、三つの開口11d〜11fを有する。各開口11d〜11fには、車室3内に設けられた複数の吹出口へと繋がるダクト(何れも図示略)がそれぞれ接続される。吹出口は、フロントガラス,乗員の上半身付近及びサイドガラス,乗員の足元付近の三方向に向かって空調後の空気が吹き出されるような位置に配置される。なお、ハウジング11内の出口付近には、空気の流れる方向を決める二つの送風ダンパ19a,19bが配置される。
ハウジング11は、空気を取り入れるための入口として、三つの開口11a〜11cを有する。各開口11a〜11cには、外気導入通路16,内気導入通路17,除湿通路21がそれぞれ接続される。以下、これらの通路16,17,21が接続される三つの開口11a〜11cを、それぞれ外気開口11a,内気開口11b,除湿内気開口11cとも呼ぶ。本実施形態では、内気開口11bの両側に隣接して外気開口11a及び除湿内気開口11cが配置される。
外気導入通路16は、車外の空気(外気)をハウジング11内に導入するためのものであり、車外とハウジング11とを連通する。これに対し、内気導入通路17及び除湿通路21は、車室3内の空気(内気)をハウジング11内に導入するためのものであり、車室3内とハウジング11とを連通する。内気導入通路17は、車室3内の空気をそのままハウジング11内に導入する通路である。一方、除湿通路21は、車室3内の空気を除湿してからハウジング11内に導入する通路である。これらの通路16,17,21の連通状態は、内外気切替ダンパ18,再生切替ダンパ26によって切り替えられる。
内外気切替ダンパ18は、外気導入通路16と内気導入通路17との合流箇所に配置され、外気導入通路16,内気導入通路17の何れか一方の開口11a,11bを閉鎖するように動作する。一方、再生切替ダンパ26は、内気導入通路17と除湿通路21との合流箇所に配置され、内気導入通路17,除湿通路21の何れか一方の開口11b,11cを閉鎖するように動作する。二つのダンパ18,26は、三本の通路16,17,21のうちの何れか一つをハウジング11に接続するように機能する。
具体的には、内外気切替ダンパ18が外気開口11aを閉鎖すると外気導入通路16の連通状態が遮断され、外気が導入されない。このとき、後述の除湿暖房を実施する場合には再生切替ダンパ26が内気開口11bを閉鎖するように制御される。これにより、除湿通路21が連通状態となり、除湿通路21からハウジング11内に除湿された内気が導入される。一方、車室3内の冷房時には再生切替ダンパ26が除湿内気開口11cを閉鎖するように制御される。これにより、内気導入通路17が連通状態となり、内気導入通路17からハウジング11内に内気が導入される。
また、内外気切替ダンパ18が外気開口11aを開放して内気開口11bを閉鎖すると、外気導入通路16の連通状態が維持されて外気が導入される。このとき、再生切替ダンパ26は除湿内気開口11cを閉鎖するように制御される。つまりこの場合は、ハウジング11内に内気が導入されない。内外気切替ダンパ18及び再生切替ダンパ26がこの状態に制御されるのは、後述の外気暖房を実施する場合である。なお、外気暖房を実施しない場合であっても、後述の再生制御を実施する場合に、内外気切替ダンパ18及び再生切替ダンパ26をこの状態に制御してもよい。以下、内気がハウジング11内に導入されて車室3へと排出される(車室3内とハウジング11内とを循環する)ことを、内気循環という。
次に、除湿部20について説明する。除湿部20は、空調装置1の空調効率を高めるとともに、車室3内の窓曇りを防止するために設けられるものである。車室3内を冷房する場合は、エバポレータ13が作動して空気中の水分が除去されることから、空調部10から車室3へと放出される空気の湿度が低下する。したがってこの場合は、窓曇りが発生することなく内気循環による空調(冷房)が可能である。
これに対し、車室3内を暖房する場合は、エバポレータ13が停止するため、内気導入通路17からハウジング11内へと内気を取り入れて暖房用ヒータ15で加温したのでは、車室3へ放出される空気の湿度が上昇し、窓曇りが発生しうる。他方で、車室3内の暖房時に窓曇りを防止するためにエバポレータ13を作動させたのでは、空調効率の低下が懸念される。そこで、空調装置1は、空調効率の向上と窓曇りの防止とを両立するために、除湿部20を備える。なお、本実施形態の除湿部20は、車室3内の暖房時に利用される。以下、除湿部20を利用した暖房を除湿暖房という。
図3に示すように、除湿部20は、ヒータダンパ24,再生用ヒータ23,デシカント材22,サブファン25が除湿通路21内に配置されるとともに、除湿通路21の下流端に再生切替ダンパ26が配置されて構成される。これらの装置は、除湿通路21内に空気を取り入れる入口側から除湿内気開口11cに向かってこの順で配置される。また、除湿通路21のデシカント材22よりも下流側の部分には排出通路27が接続され、この接続部には排出ダンパ28が設けられる。
デシカント材22(除湿部材)は、空気中の水分を吸着する水分吸着材であり、例えばハニカム状の担体にシリカゲルやゼオライトといった乾燥剤が担持されて構成される。デシカント材22は、除湿通路21内において通路断面の全体に亘って配置され、除湿通路21内を流れる空気の全てが通過する。デシカント材22は、通過する空気から水分を除去して空気を除湿する。一方で、デシカント材22には、通過した空気に含まれていた水分が蓄積されていく。
デシカント材22は、吸着できる水分量の上限(容量)が決まっており、吸着した水分量が増加するに連れて除湿性能が低下する。そこで、本実施形態の空調装置1は、デシカント材22を再生させる必要性がある場合に、デシカント材22に蓄積された水分を除去してデシカント材22の除湿性能を回復させる再生制御を実施する。デシカント材22の直上流,直下流には、空気の温度T[℃]及び相対湿度H[%](以下、単に湿度Hという)を検出する第1センサ29a及び第2センサ29bがそれぞれ配置される。第1センサ29aはデシカント材22に流入する直前の空気の温度Ta及び湿度Haを検出し、第2センサ29bはデシカント材22を通過した直後の空気の温度Tb及び湿度Hbを検出する。これらのセンサ29a,29bで検出された空気の温度Ta,Tb及び湿度Ha,Hbの各情報は空調ECU30に伝達され、後述の再生制御部31において再生制御の必要性の判断に用いられる。
デシカント材22は、高温の風が流通することで吸着している水分を脱離させて放出する。このため、空調装置1は、再生制御が必要な場合に、デシカント材22の上流側の空気を加熱し、高温となった空気をデシカント材22へと供給する。この再生制御では、ヒータダンパ24,再生用ヒータ23,サブファン25,再生切替ダンパ26,排出ダンパ28が用いられる。これらの装置は、後述の再生制御部31からの指令に応じてデシカント材22の水分を脱離させる。以下、これらの装置を総称して再生処理部ともいう。
ヒータダンパ24は、除湿通路21内に二つの通路(空気の通り道)を形成する板状部材であり、再生制御時と除湿暖房時とでその通路を切り替えるように動作する。再生用ヒータ23(加熱手段)は、通過する空気に熱を与えて空気を加熱する加熱器であり、再生制御時に作動する。再生用ヒータ23は、ヒータダンパ24で形成される二つの通路のうちの一方に配置される。ヒータダンパ24は、再生制御時では再生用ヒータ23に空気が流れるように通路を切り替え、車室3内の除湿暖房時では再生用ヒータ23に空気が流れないように(再生用ヒータ23を迂回するように)通路を切り替える。
再生用ヒータ23には、再生用ヒータ23の温度Trを検出する温度センサ23aが設けられる。温度センサ23aで検出された温度情報は空調ECU30へ伝達される。なお、ここでいう温度Trは、再生用ヒータ23の表面温度(電熱線温度,PTC発熱体温度など)であってもよいし、再生用ヒータ23によって加熱された空気の温度(雰囲気温度,再生用ヒータ23の下流温度など)であってもよい。
サブファン25(送風手段)は、除湿通路21内に空気の流れを生成するものであり、再生制御時及び除湿暖房時に作動する。サブファン25は、バッテリ4から供給される電力量が変わるとその回転数が変わるものである。すなわち、サブファン25の電力量(例えば、電流値や電圧値)を調節することでサブファン25の回転数が制御され、除湿通路21内を流れる空気の流量が変更される。本実施形態のサブファン25は、車室3内の空調時(すなわち除湿暖房時)に最大電力量で稼動するものとする。以下、最大電力量に対する実際の電力量の割合を電力割合という。すなわち、サブファン25は、除湿暖房時では電力割合100[%]で稼動する。
再生切替ダンパ26は、再生制御時と除湿暖房時とで空気の流れを切り替えるものである。再生切替ダンパ26は、再生制御時に除湿内気開口11cを閉鎖して除湿通路21をハウジング11から分離する。一方、除湿暖房時には、再生切替ダンパ26は除湿内気開口11cを開放するとともに内気開口11bを閉鎖することで、除湿通路21を通過して除湿された空気をハウジング11内に流入させる。
排出通路27は、除湿通路21内の空気を車外に排出するためのものであり、除湿通路21内と車外とを連通する。排出ダンパ28は、排出通路27の上流端に配置され、除湿通路21に対する排出通路27の連通状態を切り替える。排出ダンパ28は、再生制御時に排出通路27の連通状態を維持し、除湿通路21内を流れた空気を車外へと排出させる。一方、除湿暖房時では、排出ダンパ28は排出通路27の連通状態を遮断し、除湿通路21内を流れた空気が車外へと排出されないようにする。
図1及び図2に示すように、車室3内には、乗員によって入力操作される操作スイッチ8と、車室3内の温度及び湿度を検出する温湿度センサ9とが設けられる。操作スイッチ8は、乗員が車室3内を空調する場合に入力操作するものである。操作スイッチ8には、空調を作動又は停止させる空調スイッチ(オンオフスイッチ),冷房又は暖房を選択する冷暖房スイッチ,車室3内の温度を設定する温度設定ボタン,吹出口からの風量を設定する風量設定ボタン,フロントガラスへ温風を送るデフロスタスイッチなどが含まれる。空調装置1は、空調スイッチをオン操作したときに作動状態(オン状態)となる。操作スイッチ8で入力された情報(乗員の空調要求等)は、空調ECU30に伝達される。温湿度センサ9は、温度センサと湿度センサとが一体で構成されたものであり、例えば吹出口の近傍や窓ガラスの近傍などに設置される。温湿度センサ9で検出された情報は、空調ECU30に伝達される。
空調ECU30は、例えば周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置である。空調ECU30は、車載ネットワークの通信ラインを介して車両2に搭載された他の電子制御装置(例えば車両制御装置やモータ制御装置)と通信可能に接続される。空調ECU30は、操作スイッチ8,温湿度センサ9,第1センサ29a,第2センサ29b,温度センサ23aから伝達された各種情報を用いて、再生制御及び空調制御を実施する。
[2.制御構成]
再生制御とは、上述のように、デシカント材22に蓄積された水分を除去してデシカント材22の除湿性能を回復させる制御である。再生制御は、デシカント材22の除湿能力が低下している場合(デシカント材22に蓄積された水分量が多い場合)に実施される。以下、再生制御が実施される制御モードを再生モードという。本実施形態では、車両2が走行可能な場合(電源オンの場合)だけでなく、車両2が外部充電中である場合にも、必要に応じて再生モードが設定される。
空調制御とは、乗員の空調要求と車室3内の環境とに応じて冷房と暖房とを切り替える制御である。空調制御には、エバポレータ13を使用して車室3内を冷房する冷房モードと、暖房用ヒータ15を使用して車室3内を暖房する暖房モードとの二つの制御モードが含まれる。さらに暖房モードには、除湿暖房モードと外気暖房モードとの二種類がある。
冷房モードは、内気導入通路17を通じてハウジング11内に内気を導入し、エバポレータ13を作動させて内気を冷却しつつ除湿するモードである。冷房モードは、例えば乗員による操作スイッチ8の操作によって冷房が選択された場合や、車室3内の温度が設定温度よりも高い場合などに設定される。一方、暖房モードは、例えば乗員による操作スイッチ8の操作によって暖房が選択された場合や、車室3内の温度が設定温度よりも低い場合などに設定される。
除湿暖房モードは、除湿通路21を通じてハウジング11内に除湿した内気を導入し、暖房用ヒータ15を作動させて内気を加温するモードである。外気暖房モードは、外気導入通路16を通じてハウジング11内に外気を導入し、暖房用ヒータ15を作動させて外気を加温するモードである。除湿暖房モードと外気暖房モードとは、再生制御の実施の有無に応じて切り替えられる。再生制御が必要な場合は外気暖房モードが設定され、再生制御が不要な場合は除湿暖房モードが設定される。つまり、再生モードと外気暖房モードとが同時に設定されることはあるが、再生モードと除湿暖房モードとが同時に設定されることはない。
空調ECU30は、上記の再生制御を実施するための要素として再生制御部31を有し、上記の空調制御を実施するための要素として空調制御部32を有する。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[2−1.再生制御部]
再生制御部31は、再生制御の必要性の有無を判定するとともに、必要性があると判定した場合に再生モードを設定して再生制御を実施するものである。さらに、再生制御の開始後は、デシカント材22の再生が完了したか否かを判定するとともに、完了したと判定した場合に再生モードを解除して再生制御を終了するものである。再生制御部31は、これらの判定において、第1センサ29aから伝達された温度Ta及び湿度Haと、第2センサ29bから伝達された温度Tb及び湿度Hbとを用いる。また、再生制御部31は、再生モードを設定,解除したときには、その情報を空調制御部32に伝達する。
再生制御部31は、再生モードを設定していない場合に、二つのセンサ29a,29bからの情報に基づきデシカント材22が水分の吸着限界状態であるか否かを判定する。そして、デシカント材22が吸着限界状態のときに再生制御の必要性がある(再生制御が必要である)と判定し、吸着限界状態でないときに再生制御の必要性がない(再生制御が不要である)と判定する。なお、吸着限界状態とは、デシカント材22に吸着した水分量が上限に達した状態をいう。
再生制御部31は、例えば、以下の条件A,条件Bの少なくとも一方が成立した場合に再生制御が必要であると判定し、何れの条件も成立しない場合に再生制御が不要であると判定する。
条件A:温度差ΔT=Tb-Taが第一閾値T1以下である(ΔT≦T1)
条件B:湿度差ΔH=Ha-Hbが第二閾値H2以下である(ΔH≦H2)
条件Aは、デシカント材22が水分を吸着するときに発熱(放熱)するという特性に基づいた条件である。すなわち、デシカント材22が水分を吸着できる状態のときは、デシカント材22を通過した空気がデシカント材22の発熱によって暖められる。このことから、デシカント材22の通過直後の空気の温度Tbから通過直前の空気の温度Taを減算した値ΔTが、所定の第一閾値T1よりも高ければデシカント材22の除湿能力があり、第一閾値T1以下であれば吸着限界状態であると判定することができる。なお、第一閾値T1は予め設定された判定閾値であり、例えば0に近い小さな値である。
条件Bは、デシカント材22が水分を吸着するという特性に基づいた条件である。すなわち、デシカント材22が水分を吸着できる状態のときは、デシカント材22を通過した空気がデシカント材22によって除湿される。このことから、デシカント材22の通過直前の空気の湿度Haから通過直後の空気の湿度Hbを減算した値ΔHが、所定の第二閾値H2よりも高ければデシカント材22の除湿能力があり、第二閾値H2以下であれば吸着限界状態であると判定することができる。なお、第二閾値H2は予め設定された判定閾値であり、例えば0〜数[%]である。
再生制御部31は、再生制御が必要であると判定したときは再生モードを設定し、除湿部20の各装置を制御する。具体的には、再生切替ダンパ26で除湿内気開口11cを閉鎖するとともに、排出通路27が連通状態となるように排出ダンパ28の位置を制御する。また、再生用ヒータ23及びサブファン25を作動させるとともに、再生用ヒータ23に空気が流通するようにヒータダンパ24の位置を制御する。
このとき、再生制御部31は、再生用ヒータ23を通過する空気の流量が、車室3内の空調時(除湿暖房時)に空調部10へ供給する空気の流量よりも少なくなるように、サブファン25を制御する。具体的には、サブファン25の電力量(電力割合)を調節することでサブファン25の回転数を制御し、除湿通路21内を流れる空気の流量を変更する。なお、再生制御時に内外気切替ダンパ18が外気開口11aを開放していれば、外気導入通路16から車室3内に外気が導入され、内外気切替ダンパ18が外気開口11aを閉鎖していれば、車両に設けられた公知の通気口から車室3内に外気が導入される。このため、再生制御中に車室3内が負圧になることはない。
本実施形態の再生制御部31は、再生制御時に温度センサ23aで検出された再生用ヒータ23の温度Trに応じて、サブファン25の電力割合を複数の段階(例えば三段階)に制御する。再生用ヒータ23は、再生制御の開始時点でオフからオンに切り替えられるが、その種類や状態によっては、オン状態になった直後は温度が低く、温まるまでに時間がかかるものがある。そこで、再生制御部31は、再生制御の実施時に、再生用ヒータ23の温度Trが低いほど再生用ヒータ23を通過する空気の流量を減少させることで、再生用ヒータ23を速やかに温度上昇させる。一方で、再生用ヒータ23の温度Trが高いほど空気の流量を増加させることで、デシカント材22の再生を促進する。
本実施形態の再生制御部31は、再生制御の実施中に、温度センサ23aで検出された温度Trが第一温度Tr1(例えば20[℃])未満(Tr<Tr1)であれば、サブファン25の電力割合を、比較的小さい第一割合Fa1(例えば20[%])に制御する。これにより、再生用ヒータ23を通過する空気の流量が除湿暖房時と比べて大幅に減り、再生用ヒータ23の温度上昇が促進される。
再生制御部31は、温度センサ23aで検出された温度Trが第一温度Tr1以上かつ第二温度Tr2(例えば50[℃])未満(Tr1≦Tr<Tr2)であれば、サブファン25の電力割合を、第一割合Fa1よりも大きい第二割合Fa2(例えば35[%])へ段階的に制御する。これにより、再生用ヒータ23を通過する空気の流量がやや増加し、再生用ヒータ23の温度上昇を促進しつつデシカント材22に供給される空気が増量される。
再生制御部31は、温度センサ23aで検出された温度Trが第二温度Tr2以上(Tr2≦Tr)であれば、サブファン25の電力割合を、第二割合Fa2よりも大きい第三割合Fa3(例えば50[%])へ段階的に制御する。なお、第三割合Fa3は、除湿暖房時での電力割合(すなわち100[%])よりも小さい値である。上記の第一温度Tr1,第二温度Tr2,第一割合Fa1,第二割合Fa3,第三割合Fa3は、例えばサブファン25の性能,再生用ヒータ23の性能,デシカント材22が再生されるときの温度等に応じて予め設定される。
したがって、車室3内から除湿通路21に流入した空気は、その風量が除湿暖房時に比べて制限された状態で再生用ヒータ23によって加熱される。これにより、風量が制限されない場合と比較して、より高温な乾いた空気となって、デシカント材22を通過する。そして、デシカント材22に吸着した水分を除去したのち、排出通路27を通って車外へと排出される。
再生制御部31は、再生モードを設定している場合に、二つのセンサ29a,29bからの情報に基づきデシカント材22の再生が完了したか否かを判定する。再生制御部31は、例えば、再生モードを少なくとも所定時間実施した後に、以下の条件C,条件Dの少なくとも一方が成立した場合に再生が完了したと判定し、何れの条件も成立しない場合に再生が完了していないと判定する。
条件C:温度差ΔT′=Ta-Tbが第三閾値T3以下である(ΔT′≦T3)
条件D:湿度差ΔH′=Hb-Haが第四閾値H4以下である(ΔH′≦H4)
条件Cは、デシカント材22が水分を脱離(放出)するときに吸熱するという特性に基づいた条件である。すなわち、デシカント材22が水分を脱離している状態のときは、デシカント材22を通過した空気がデシカント材22の吸熱によって冷やされる。このことから、デシカント材22の通過直前の空気の温度Taから通過直後の空気の温度Tbを減算した値ΔT′が、所定の第三閾値T3よりも高ければデシカント材22に未だ水分が残った状態(再生が完了していない状態)であり、第三閾値T3以下であれば再生が完了したと判定することができる。なお、第三閾値T3は予め設定された判定閾値であり、例えば0に近い小さな値である。
条件Dは、デシカント材22から脱離する水分量が減少する(再生完了に近づく)に連れて、デシカント材22の通過直後の空気の湿度Hbと通過直前の空気の湿度Haとの差ΔH′が減少することに基づいた条件である。なお、第四閾値H4は予め設定された判定閾値であり、例えば0〜数[%]である。
また、上記の所定時間を設ける理由は、再生モードが設定された直後に上記の条件C,条件Dの少なくとも一方が成立してしまうことから、これを除外するためである。例えば上記の条件Aが成立して再生モードが設定された場合、除湿通路21内を流通する空気は再生用ヒータ23によって加熱され、デシカント材22の通過直前の空気の温度Taも通過直後の空気の温度Tbも、再生モードの設定と共に上昇していく。この上昇過程の間に上記の条件Cが成立している期間が存在する。しかし、この期間はデシカント材22の再生が行われた結果、条件Cが成立した訳ではなく、完了判定でチェックしたい状態はこの期間ではない。そこで、再生モードを少なくとも所定時間実施した後に、条件Cや条件Dを判定して誤判定を防止する。
再生制御部31は、再生が完了したと判定したときは再生モードを解除し、除湿部20の各装置を制御する(再生制御を終了する)。具体的には、除湿通路21がハウジング11と連通状態となるように再生切替ダンパ26の位置を制御するとともに、排出ダンパ28で排出通路27を閉鎖する。また、再生用ヒータ23を停止させるとともに、再生用ヒータ23に空気が流通しないようにヒータダンパ24の位置を制御する。なお、サブファン25は、車室3内の除湿暖房が実施される場合には電力割合が100[%]となるように切り替えられ、除湿暖房が実施されない場合にはその作動が停止される。
[2−2.空調制御部]
空調制御部32は、空調装置1がオン状態のとき(乗員の空調要求がある場合)に、各種情報に基づいて空調装置1の制御モードを冷房モード,除湿暖房モード及び外気暖房モードの何れか一つに設定し、設定した制御モードに応じて各装置を制御するものである。具体的には、空調制御部32は、操作スイッチ8からの乗員の空調要求と温湿度センサ9からの車室3内の温度及び湿度情報とに基づき、冷房が必要であるか暖房が必要であるかを判定する。そして、冷房が必要であると判定した場合は冷房モードに設定し、暖房が必要であると判定した場合は、除湿暖房モード又は外気暖房モードを設定する。
空調制御部32は、暖房モードの設定では、再生制御部31から伝達された情報に基づいて、再生モードが設定されているか否かを判断する。そして、再生モードが設定されていれば外気暖房モードを設定し、再生モードが設定されていなければ除湿暖房モードを設定する。また、除湿暖房モードの設定中に再生モードが設定された場合は、除湿暖房モードから外気暖房モードに切り替える。反対に、外気暖房モードの設定中に再生モードが解除された場合は、外気暖房モードから除湿暖房モードに切り替える。なお、空調制御部32は、操作スイッチ8がオフ操作されたとき(乗員の空調要求がなくなったとき)は、全ての制御モードを解除して、空調装置1をオフとする。
空調制御部32は、設定した制御モードに応じて、空調装置1の各装置を制御する。空調制御部32による具体的な制御内容について説明する。冷房モードを設定した場合は、メインファン12及びエバポレータ13を作動させるとともに暖房用ヒータ15を停止状態とする。また、暖房用ヒータ15に空気が流れないようにエアミックスダンパ14の位置を制御する。さらに、内外気切替ダンパ18を、外気開口11aを閉鎖する位置に制御するとともに、再生切替ダンパ26を、除湿内気開口11cを閉鎖する位置に制御して、内気開口11bのみを開放させる。
除湿暖房モードを設定した場合は、メインファン12及び暖房用ヒータ15を作動させるとともにエバポレータ13を停止状態とする。また、サブファン25を電力割合100[%]で作動させる。また、暖房用ヒータ15に空気が流れるようにエアミックスダンパ14の位置を制御する。さらに、内外気切替ダンパ18を、外気開口11aを閉鎖する位置に制御するとともに、再生切替ダンパ26を、内気開口11bを閉鎖する位置に制御して、除湿内気開口11cのみを開放させる。つまり、除湿暖房モードでは、デシカント材22に内気を通過させ、除湿した空気(内気)を加温する。
外気暖房モードを設定した場合は、メインファン12及び暖房用ヒータ15を作動させるとともにエバポレータ13を停止状態とする。また、暖房用ヒータ15に空気が流れるようにエアミックスダンパ14の位置を制御する。さらに、内外気切替ダンパ18を、内気開口11bを閉鎖する位置に制御するとともに、再生切替ダンパ26を、除湿内気開口11cを閉鎖する位置に制御して、外気開口11aのみを開放させる。つまり、外気暖房モードでは、除湿通路21を閉鎖して外気を加温する。
[3.フローチャート]
図4は、上述の再生制御及び空調制御の手順を例示するフローチャートであり、空調ECU30内において所定の演算周期で繰り返し実行される。
ステップS1では、空調ECU30に各種情報が入力される。ステップS2では、前ステップで取得した情報に基づき、空調要求があるか否か(空調装置1がオン状態であるか否か)が判定され、空調要求があればステップS3へ進み、空調要求がなければステップS10へ進む。
ステップS3では、暖房の必要性が判定される。暖房が必要であればステップS5に進み、暖房が不要であればステップS4へ進む。ステップS4では冷房モードが設定されるとともに各装置が制御され、このフローをリターンする。一方、ステップS5では、デシカント材22の再生が必要であるか否かが判定される。このステップでは、例えば上記の条件A,条件Bの少なくとも一方が成立したか否かが判定される。再生が必要なときはステップS7へ進み、再生が不要なときはステップS6へ進む。
ステップS6では除湿暖房モードが設定されるとともに各装置が制御され、このフローをリターンする。このとき、サブファン25は電力割合100[%]で稼動する。一方、ステップS7では外気暖房モード及び再生モードが設定されるとともに各装置が制御される。このとき、サブファン25の電力割合は、ステップS1で取得した再生用ヒータ23の温度Trに応じた電力割合、例えば第一割合Fa1,第二割合Fa3,第三割合Fa3の三つのうちの何れか一つに制御される。
続くステップS8では、デシカント材22の再生が完了したか否かが判定される。このステップでは、例えば、再生モードを所定時間以上実施した場合に、上記の条件C,条件Dの少なくとも一方が成立したか否かが判定される。再生が完了していればステップS9へ進み、再生モードが解除されるとともに各装置が制御される。そして、ステップS6へ進んで、除湿暖房モードが設定されるとともに各装置が制御される。すなわち、デシカント材22の再生が完了したのちは、外気暖房モードから除湿暖房モードへと切り替えられ、除湿部20を用いた暖房実施される。一方、ステップS8で再生が完了していなければこのフローをリターンし、再生が完了するまでフローが繰り返し実行される。
ステップS2で空調要求がないと判定された場合、ステップS10では空調装置1がオフにされる。続くステップS11では、デシカント材22の再生の必要性が判定され、再生が必要であればステップS12へ進み、再生が不要であればこのフローをリターンする。ステップS12では、再生モードが設定されるとともに各装置が制御される。このときも、ステップS7と同様に、サブファン25の電力割合が、再生用ヒータ23の温度Trに応じた電力割合、例えば第一割合Fa1,第二割合Fa3,第三割合Fa3の三つのうちの何れか一つに制御される。
続くステップS13では、ステップS8と同様にデシカント材22の再生が完了したか否かが判定される。再生が完了していればステップS14へ進み、再生モードが解除されるとともに各装置が制御され、このフローをリターンする。一方、再生が完了していなければこのフローをリターンし、再生が完了するまでフローが繰り返し実行される。
[4.作用,効果]
図5(a)〜(d)は、再生モードの設定状態と空調制御のモード設定状態と再生用ヒータ23の温度とサブファン25の電力割合との関係を例示したグラフである。空調装置1がオン状態であって暖房の必要性がある状態を仮定する。再生モードが解除されているとき(再生が不要な場合)は、除湿暖房が行われる。このとき、サブファン25の電力割合は100[%]に制御される。
時刻t0において、デシカント材22の再生が必要であると判定されると、再生モードが設定されるとともに、除湿暖房モードから外気暖房モードに切り替えられる。これにより、エアミックスダンパ14,内外気切替ダンパ18,ヒータダンパ24,再生切替ダンパ26,排出ダンパ28の各位置が制御されるとともに、再生用ヒータ23がオン状態に制御される。この時刻t0では、温度センサ23aで検出された温度Trが第一温度Tr1よりも低いため、サブファン25の電力割合は第一割合Fa1に制御される。
時刻t1で温度Trが第一温度Tr1に達すると、サブファン25の電力割合は第二割合Fa2に制御される。そして、温度Trが第二温度Tr2に達した時刻t2で、サブファン25の電力割合は第三割合Fa3に制御される。その後、再生制御が終了されるまでの間、サブファン25の電力割合は第三割合Fa3のまま維持され、時刻t3で再生モードが解除されると、外気暖房モードから除湿暖房モードに切り替えられる。これにより、サブファン25の電力割合が再び100[%]に制御されるとともに、他の各装置も制御される。
したがって、上述の空調装置1では、再生制御の実施時に再生用ヒータ23を通過する空気の流量が、車室3内の空調時に空調部10に供給される空気の流量よりも少なくなるようにサブファン25が制御される。このため、再生用ヒータ23の温度を変えることなく、デシカント材22に流入する空気の温度を上昇させることができる。つまり、サブファン25の風量を下げることで高温の風を作り出すことができ、デシカント材22の再生時間を短縮することができる。これにより、デシカント材22を使用した内気循環による暖房(除湿暖房)を実施できる時間を長くすることができるため、空調効率を高めることができる。また、再生時間の短縮により、再生制御で消費される電力量を低減することができ、省エネ化を図ることができる。
また、上述の空調装置1では、サブファン25の電力量(電力割合)を調節することで除湿通路21内を流れる空気の流量が変更されるため、簡素な構成で流量制御を行うことができる。
さらに、上述の空調装置1では、再生用ヒータ23の温度Trが低いほど再生用ヒータ23を通過する空気の流量を減少させ、温度Trが高いほど再生用ヒータ23を通過する空気の流量を増加させる。すなわち、再生用ヒータ23の温度Trに応じて空気の流量を細かく制御することで、デシカント材22の再生を効率よく行うことができ、再生時間をより短縮することができる。
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、再生制御部31が、再生制御時にサブファン25の電力割合を三段階に制御する場合を説明したが、再生制御の具体的な制御内容は一例であって、上述のものに限られない。以下に、再生制御に関する三つの変形例を説明する。
第一変形例の再生制御部31Aは、再生制御を実施する場合に、サブファン25の電力割合を、除湿暖房時の電力割合(すなわち100[%])から所定の割合(例えば上記の第三割合Fa3)に切り替えるものである。すなわち、本変形例の再生制御部31Aは、再生制御時にサブファン25の電力割合を一段階に制御するものである。例えば、図6(a)〜(c)に示すように、時刻t0で再生モードが設定された場合、再生制御部31Aはサブファン25の電力割合を100[%]から第三割合Fa3に変更する。そして、時刻t3で再生が完了すると、再生モードが解除されるとともに、外気暖房モードから除湿暖房モードに切り替えられる。これにより、サブファン25の電力割合が再び100[%]に制御されるとともに、他の各装置も制御される。
したがって、本変形例の再生制御部31Aを備えた空調装置1Aによっても、上述の実施形態の空調装置1と同様に、再生用ヒータ23の温度を変えることなく、デシカント材22に流入する空気の温度を上昇させることができ、デシカント材22の再生時間を短縮することができる。また、本変形例の空調装置1Aであれば、温度Trを検出する必要がないため、温度センサ23aを省略でき、装置構成を簡素化できる。また、サブファン25が一段階に制御されるため、制御構成も簡素化できる。なお、所定の割合は第三割合Fa3に限られず、サブファン25の性能や、再生用ヒータ23の性能,デシカント材22が再生されるときの温度等に応じて予め設定される値であればよい。
第二変形例の再生制御部31Bは、再生制御を実施する場合に、再生制御の開始時点でサブファン25の電力割合を100[%]から比較的小さな割合(例えば上記の第一割合Fa1)に変更し、再生用ヒータ23を通過する空気の流量を一気に減少させる。言い換えると、再生制御部31Bは、再生制御の開始時点で再生用ヒータ23を通過する空気の流量をステップ状に減少させる。その後は、時間の経過とともにサブファン25の電力割合を徐々に大きくして、再生用ヒータ23を通過する空気の流量を徐々に増加させる。このとき、上述の実施形態のようにステップ状に流量を増加させてもよいし、ランプ状に増加させてもよい。
したがって、本変形例の空調制御部31Bを備えた空調装置1Bであっても、再生用ヒータ23の温度を変えることなく、デシカント材22に流入する空気の温度を上昇させることができ、デシカント材22の再生時間を短縮することができる。また、本変形例の空調装置1Bであれば、温度Trを検出する必要がないため、温度センサ23aを省略でき、装置構成を簡素化できる。さらに、再生制御の開始時点でステップ状に空気の流量を減少させることで、デシカント材22の再生を効率よく行うことができ、再生時間をより短縮することができる。
第三変形例の再生制御部31Cは、再生制御時にバッテリ4の充電率が所定値以下であれば、再生用ヒータ23の電力量を制限する。再生制御では、除湿部20に含まれる各装置が作動することで電力消費量が増大する。中でも再生用ヒータ23が最も電力を消費する。そこで、本変形例の再生制御部31Cは、再生制御の実施時にバッテリ4の電力の残容量が少ない場合、再生用ヒータ23で消費される電力量を減らす。
したがって、本変形例の再生制御部31Cを備えた空調装置1Cによっても、上述の実施形態の空調装置1と同様に、再生用ヒータ23の温度を変えることなく、デシカント材22に流入する空気の温度を上昇させることができ、デシカント材22の再生時間を短縮することができる。また、本変形例の空調装置1Cであれば、バッテリ4の過放電を防止でき、バッテリ4の性能劣化を抑制することができる。
なお、上述の空調装置1の空調部10の構成は上記の構成に限られない。例えば、空調部10に含まれる各装置の配置を上述のものから変更してもよい。また、外気開口11a,内気開口11b,除湿内気開口11cの三つの開口をそれぞれ開閉するダンパを設けてハウジング11内に取り入れる空気を切り替える構成としてもよい。また、内気導入通路17と除湿通路21との上流側が共通のダクトで構成され、途中から二つの通路17,21に分岐して形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、除湿通路21に、デシカント材22の再生時に用いる再生用ヒータ23,ヒータダンパ24,サブファン25,排出通路27,排出ダンパ28が設けられた空調装置1を例示したが、これらの要素は上述したものに限られない。例えば、再生用ヒータ23を除湿通路21の通路断面に亘って設け、ヒータダンパ24を省略してもよい。また、暖房用ヒータ15及び再生用ヒータ23に代えて、エンジンやモータ5を冷却する冷却水の熱を利用して空気を加熱する熱交換器を用いてもよい。すなわち、空調制御に利用する加温手段及び再生制御に利用する加熱手段が、バッテリ4の電力で作動するヒータ15,23でなくてもよい。
また、サブファン25がバッテリ4から供給される電力量が変わるとその回転数が変わるものではなく、再生制御部31によって回転数が直接制御されるものであってもよい。また、排出通路27及び排出ダンパ28を省略し、デシカント材22の再生によって湿度が上昇した空気を外気導入通路16から排出できるような構成としてもよい。これらのような構成であっても、上記実施形態と同様にデシカント材22の再生時間を短縮することができるとともに、車室3内の窓曇りを防止しながら空調効率を向上させることができる。
上記実施形態では、デシカント材22の再生と車室3内の暖房とが並行して実施される場合を説明したが、これと同様に、デシカント材22の再生と車室3内の冷房とが並行して実施されるようにしてもよい。
なお、上述の空調装置1は、駆動源としての電動機を備えていないエンジン車にも適用可能である。すなわち、エンジン車に搭載されたバッテリの電力を用いてデシカント材22の再生を行うような構成としてもよい。