JP2016134467A - 色素増感型太陽電池、色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents

色素増感型太陽電池、色素増感型太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】開放電圧をより高める。【解決手段】色素増感型太陽電池モジュール10は、色素増感型太陽電池40を複数備えている。この色素増感型太陽電池40は、電子輸送層24を光透過導電性基板14上に備えた電極20と、電極20に向かい合うように配置された対極30と、電極20と対極30との間に介在する介在層26と、介在層26と対極30との間に存在するホール輸送層28とを備えている。介在層26には、ポルフィリン構造を1つ以上有するポルフィリン色素と、一価のアニオンを有する無機塩と、ホール輸送材料とが含まれている。【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池、色素増感型太陽電池モジュールに関する。
従来、色素増感型太陽電池において、電解質中にアルカリ系無機塩であるLiIを添加すると、短絡電流密度Jscが向上することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、CuIを用いた固体色素増感型太陽電池において、SとNとを含む色素(インドリン−ロダニン色素やカルバゾール−チオフェン−シアノカルボン酸色素など)に、アルカリ系無機塩や遷移金属系無機塩を複合させると、色素の太陽光に対する分光感度特性が長波長側に拡大して、短絡電流密度Jscが増加することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−32847号公報
J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 3456-3462
しかしながら、非特許文献1のように、電解液にLiIを添加すると、短絡電流密度Jscが向上するが、開放電圧Vocが低下することがあった。また、特許文献1のように、特定の色素と無機塩とを組み合わせると、短絡電流密度Jscは向上するが、開放電圧Vocを向上させる効果は得られないことがあった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、開放電圧をより高めることができる色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、ポルフィリン構造を1つ以上有するポルフィリン色素と、一価のアニオンを有する無機塩と、ホール輸送材料とを組み合わせて用いると、開放電圧をより高められることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の色素増感型太陽電池は、
電子輸送層を光透過導電性基板上に備えた電極と、
前記電極に向かい合うように配置された対極と、
前記電極と前記対極との間に介在する介在層と、を備え、
前記介在層には、ポルフィリン構造を1つ以上有するポルフィリン色素と、一価のアニオンを有する無機塩と、ホール輸送材料とが含まれるものである。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、上述した色素増感型太陽電池を複数備えているものである。
本発明の色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールでは、開放電圧をより高めることができる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。一般に、太陽電池特性の開放電圧は、電子輸送材料とホール輸送材料との間のキャリアの再結合反応速度が早いほど低下する。ポルフィリン色素と一価のアニオンを有する無機塩と、ホール輸送材料とを組み合わせて用いた場合には、キャリアの再結合反応が抑制され、それにより再結合反応速度が低下するため、開放電圧を向上させることができると推察される。
色素増感型太陽電池モジュール10の構成の概略の一例を示す断面図。 色素増感型太陽電池40の構成の概略の一例を示す断面図。 実験例1〜7の開放電圧を示すグラフ。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、色素増感型太陽電池モジュール10の構成の概略の一例を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る色素増感型太陽電池モジュール10は、光透過導電性基板14に複数の色素増感型太陽電池40(以下セルとも称する)が順次配列した構成となっている。これらのセルは直列に接続されている。この色素増感型太陽電池モジュール10では、各セルの間を埋めるように、シール材32が形成されており、光透過導電性基板14とは反対側のシール材32の面に平板状の保護部材34が形成されている。本実施形態に係る色素増感型太陽電池40は、電子輸送層24を下地層22を介して光透過導電性基板14上に備えた電極20と、電極20に向かい合うように配置された対極30と、電極20と対極30との間に介在し、光増感剤である色素と無機塩とホール輸送材料とを含む介在層26と、介在層26と対極30との間に存在するホール輸送層28とを備えている。電極20は、光が透過する光透過基板11の表面に光が透過する光透過導電膜12が形成されている光透過導電性基板14と、光透過導電膜12に形成された電子輸送層24と、を備えている。電子輸送層24は、光透過基板11の受光面13の反対側の面に分離形成された光透過導電膜12に配設され受光に伴い電子を放出する層である。本発明の色素増感型太陽電池40は、色素には、少なくとも、ポルフィリン構造を1つ以上有するポルフィリン色素が含まれている。また、無機塩には、一価のアニオンを有する一価アニオン塩が含まれている。
光透過導電性基板14は、光透過基板11と光透過導電膜12とにより構成され、光透過性及び導電性を有するものである。具体的には、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)コートガラス等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした光透過電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものも使用できる。この光透過導電性基板14の光透過導電膜12側の両端には、集電電極16,17が設けられており、この集電電極16,17を介して色素増感型太陽電池40で発電した電力を利用することができる。
光透過基板11としては、例えば、透明ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが挙げられ、このうち、透明ガラスが好ましい。この光透過基板11は、透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものなどとしてもよい。光透過導電膜12は、例えば、光透過基板11上に酸化スズを付着させることにより形成することができる。特に、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等の金属酸化物を用いれば、好適な光透過導電膜12を形成することができる。光透過導電膜12は、所定の間隔に溝18が形成されており、この溝18の幅に相当する間隔を隔てて複数の光透過導電膜12の領域が分離形成されている。
下地層22は、光透過導電性基板14から介在層26やホール輸送層28へのリーク電流(逆電子移動)を抑制もしくは防止する層であり、例えば、透光性及び導電性のある材料が好ましく、例えば、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化スズなどのn型半導体などが挙げられ、このうち酸化チタンがより好ましい。酸化チタンは、リーク電流を抑制・防止し、且つ電子輸送層24から光透過導電性基板14へ電子を流しやすいからである。下地層22では、電子輸送層24に比してより緻密な材料とすることが好ましい。なお、この下地層22を形成しないものとしても色素増感型太陽電池40として十分機能することから、この下地層22を省略しても構わない。
電子輸送層24は、電子輸送材料の層であり、多孔質のn型半導体層により形成されているものとしてもよい。n型半導体としては、金属酸化物半導体や金属硫化物半導体などが適しており、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)のうち少なくとも1以上であることが好ましく、このうち多孔質の酸化チタンがより好ましい。これらの半導体材料を微結晶又は多結晶状態にして薄膜化することにより、良好な多孔質のn型半導体層を形成することができる。特に、多孔質の酸化チタン層は、電極20のn型半導体層として好適である。また、酸化チタンとしては、伝導帯の下端のエネルギー準位がより高く、開放端電圧がより高いことから、ルチル型TiO2よりもアナターゼ型TiO2が好ましい。
介在層26は、ポルフィリン構造を1つ以上有するポルフィリン色素を少なくとも含む色素と、一価のアニオンを有する一価アニオン塩を少なくとも含む無機塩と、ホール輸送材料とを含むものである。この介在層26には、色素と、無機塩と、ホール輸送材料とが混在した状態で含まれるものとしてもよい。例えば、ホール輸送材料中に、色素と無機塩とが形成されたものとしてもよい。介在層26の一部又は全部は、電子輸送層24の細孔内に存在しているものとしてもよい。
介在層26に含まれるポルフィリン色素は、電子供与性官能基Dと第1置換基R1と第2置換基R2とアンカー基Aとがそれぞれ別に結合したポルフィリン構造(第1ポルフィリン構造とも称する)を有しているものとしてもよい。この第1ポルフィリン構造は、結合基Jを介してアンカー基Aと結合しているものとしてもよい。このポルフィリン色素は、例えば、基本式(1)や、基本式(2)で表されるものとしてもよい。但し、式(1)、(2)において、Aはアンカー基である。また、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよい置換基である。また、Jは結合基である。Dは電子供与性官能基である。また、式(1)において、M1は金属イオンであり、式(2)において、式(1)における金属イオンM1は省略されている。金属イオンM1としては、例えば、Mgイオン、Feイオン、Coイオン、Niイオン及びZnイオンなどが挙げられ、このうちZnイオンが好ましい。
式(1)及び式(2)において、置換基R1及びR2としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基などが挙げられる。このアルキル基やアリール基は、更に置換基を有していてもよく、N,O,Sを含んでいてもよい。例えば、置換基R1及びR2は、式(3)や式(4)で表される官能基であるものとしてもよい。
式(1)及び式(2)において、電子供与性官能基Dは、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、アルキル基などが挙げられる。電子供与性官能基Dは、窒素を含むものとしてもよく、この窒素に官能基、例えば、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数6〜16のアリール基のうち1以上が結合しているものとしてもよい。このアルキル基やアリール基は、更に置換基を有していてもよく、N,O,Sを含んでいてもよい。電子供与性官能基Dは、例えば、式(5)に示すカルバゾール構造を有する官能基としてもよく、式(6)に示す官能基であるものとしてもよい。カルバゾール構造には、3位および6位に三級ブチル基が結合しているものとしてもよい。なお、式(5)の官能基において、ベンゼン環同士が結合していないものとしてもよいし、式(6)の官能基において、ベンゼン環同士が結合しているものとしてもよい。
式(1)及び式(2)において、アンカー基Aは、例えば、電子輸送層24(n型半導体)に結合する官能基であり、例えば、カルボキシル基などが挙げられる。また、式(1)及び式(2)において、第1ポルフィリン構造とアンカー基Aとを結合する結合基Jは、炭素間三重結合を有する基としてもよく、例えば、式(7)や式(8)で表される構造を有するものとしてもよく、式(7)や式(8)で表されるものとしてもよい。また、結合基Jは、第1ポルフィリン構造と同じであっても異なっていてもよい第2ポルフィリン構造を有するものとしてもよい。この第2ポルフィリン構造は、第1ポルフィリン構造と結合する結合基J1と第3置換基R3と第4置換基R4とアンカー基Aとがそれぞれ別に結合した構造を有しているものとしてもよい。また、この第2ポルフィリン構造は、結合基J2を介してアンカー基Aと結合しているものとしてもよい。この結合基Jは、例えば、式(9)で表される結合基としてもよい。但し、式(9)において、R3及びR4は、同じであっても異なっていてもよい置換基である。また、J1及びJ2は、同じであっても異なっていてもよい結合基である。M2は金属イオンであり、この金属イオンM2は省略されていてもよい。式(9)において、置換基R3及びR4としては、上述した置換基R1及びR2で例示したものと同様のものが挙げられ、置換基R1やR2と同じであっても異なっていてもよい。式(9)において、結合基J1及びJ2は、炭素間三重結合を有する結合基としてもよく、例えば、上述した式(7)や式(8)で表されるものとしてもよい。また、アンカー基Aに接続する結合基J2は、式(8)において三重結合を有さないものとしてもよい。式(9)において、金属イオンM2としては、上述した金属イオンM1と同様のものが挙げられ、M1と同じであっても異なっていてもよい。
介在層26は、2種以上の色素を含むものとしてもよく、2種以上のポルフィリン色素を含むものとしてもよいし、1種以上のポルフィリン色素と1種以上の非ポルフィリン色素とを含むものとしてもよい。非ポルフィリン色素としては、例えば、インドリン系色素(D131,D149,D205,D358など)、ロダニン系色素(D149,D205,D358など)、BODIPY系色素(BODIPY−FLなど)、カルバゾール系色素(MK2など)、クマリン系色素(C343,NKX−2587,NKX−2677など)及びルテニウム錯体(Ruthenizer470(Ru470),N719,Z907など)などが挙げられる。このうち、インドリン系色素やロダニン系色素が好ましく、ロダニン構造を有さないインドリン系色素としてもよいし、インドリン構造を有さないロダニン系色素としてもよいし、インドリン構造とロダニン構造とを有するインドリンロダニン系色素としてもよい。非ポルフィリン色素を含む場合、ポルフィリン色素のモル数Aに対する非ポルフィリン色素のモル数Bのモル比B/Aが、0.01以上100以下の範囲内となるように、非ポルフィリン色素を含むことが好ましい。このモル比B/Aは、0.1以上10以下の範囲内であることがより好ましい。
介在層26に含まれる無機塩は、一価のアニオンを有する一価アニオン塩である。無機塩は、一価のアニオンとして、ハロゲン化物イオンを有するものとしてもよい。ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)などが好ましく、ヨウ化物イオンがより好ましい。また、無機塩は、一価のアニオンとして、例えば、チオシアン酸イオン(SCN-)などを有するものとしてもよく、チオシアン酸イオンが好ましい。介在層26に含まれる無機塩は、カチオンとして、例えば、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンを有するものとしてもよいし、遷移金属イオンを有するものとしてもよい。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Scが好ましく、アルカリ土類金属としては、Mg、Caが好ましく、遷移金属としては、Co、Ni、Cu、Feが好ましい。介在層26に含まれる無機塩としては、例えば、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化マグネシウム(MgI2)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、ヨウ化コバルト(CoI2)、ヨウ化ニッケル(NiI2)、ヨウ化銅(CuI)、ヨウ化鉄(FeI2)、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、チオシアン酸マグネシウム(Mg(SCN)2)、チオシアン酸カルシウム(Ca(SCN)2)、チオシアン酸コバルト(Co(SCN)2)、チオシアン酸ニッケル(Ni(SCN)2)、チオシアン酸銅(CuSCN)、チオシアン酸鉄(Fe(SCN)2)などが挙げられる。このうち、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、チオシアン酸リチウム(LiSCN)、ヨウ化カリウム(KI)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、ヨウ化マグネシウム(MgI2)などが好ましい。介在層26に含まれる無機塩は、1種でもよいし、2種以上としてもよい。
介在層26に含まれるホール輸送材料は、Cuを含む半導体により形成されたものとしてもよい。このCuを含む半導体としては、例えば、CuI、CuSCN、Cu2O、CuO及びCuAlO2のうち1以上を用いることが好ましく、CuIを用いるのがより好ましい。
介在層26は、添加剤として、エチルメチルイミダゾリウムチオシアネート(EMISCN)のような有機塩を含むものとしてもよい。
ホール輸送層28は、ホール輸送材料からなるものである。ホール輸送材料としては、介在層26に含まれるホール輸送材料と同様のものが挙げられ、介在層26に含まれるホール輸送材料と同種のものとしてもよいし、異種のものとしてもよい。ホール輸送層28は、添加剤として、エチルメチルイミダゾリウムチオシアネートのような有機塩を含むものとしてもよい。ホール輸送層28は、その一部が、介在層26とともに電子輸送層24に形成されていてもよい。なお、このホール輸送層28を形成しないものとしても、ホール輸送材料を含む介在層26がホール輸送層28と同様の役割を果たし色素増感型太陽電池40として十分機能することから、このホール輸送層28を省略しても構わない。
セパレータ29は、下地層22、電子輸送層24、介在層26及びホール輸送層28が積層された電極20の1つの側面に隣接するように断面I字状に形成されている。セパレータ29の一端は光透過導電性基板14上の溝18と接触している。これにより、電極20と対極30との直接接触が回避される。セパレータ29は、絶縁性の材料からなり、例えば、ガラスビーズ、二酸化ケイ素(シリカ)及びルチル型の酸化チタンなどで形成されていてもよい。このセパレータ29としては、シリカ粒子を焼結した絶縁体が好ましい。シリカ粒子は、屈折率が低く光散乱が小さく、良好な透明性を有するため、セパレータに好ましい。このセパレータ29は、良好な透明性を確保する観点から、平均粒径が5〜200nmであることが好ましい。
対極30は、セパレータ29の外面とホール輸送層28の裏面27とに接触するよう、断面L字状に形成されている。この対極30は、一端がホール輸送層28の裏面に接続されていると共に、他端が接続部21を介して隣側の光透過導電膜12に接続されている。この対極30の裏面27と接触する面は、電極20に対して所定の間隔を隔てて対向している。対極30としては、導電性及びホール輸送層28との接合性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pt,Au,カーボンなどが挙げられ、このうちカーボンが好ましい。
シール材32は、絶縁性の部材であれば特に限定されずに用いることができる。このシール材32としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。
保護部材34は、色素増感型太陽電池40の保護を図る部材であり、例えば、防湿フィルムや保護ガラスなどとすることができる。
この色素増感型太陽電池40に対して、光透過基板11の受光面13側から光を照射すると、光透過導電膜12の受光面15及び下地層22の受光面23を介して光が電子輸送層24へ到達し、色素が光を吸収して電子が発生する。電子は電極20から光透過導電膜12、接続部21を経由して隣の対極30へ移動する。色素増感型太陽電池40では、この電子の移動により起電力が発生し、電池の発電作用が得られる。この色素増感型太陽電池モジュール10では、色素としてポルフィリン色素が含まれ、この色素の近傍に一価アニオン塩やホール輸送材料が存在することにより、開放電圧をより向上することができる。
以上詳述した本実施形態の色素増感型太陽電池では、ポルフィリン色素を用いたものに一価アニオン塩を導入することによって、例えば、電子輸送材料とホール輸送材料との間におけるキャリアの再結合反応が抑制されるため、開放電圧Vocなど、太陽電池特性をより向上することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、色素増感型太陽電池モジュール10としたが、特にこれに限定されず、図2に示す、色素増感型太陽電池40としてもよい。図2は、色素増感型太陽電池40の構成の概略の一例を示す断面図である。図2では、図1で説明した構成と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。図2に示すように、色素増感型太陽電池40を単体とする場合は、対極30の断面をL字状ではなく平板状に形成するものとしてもよい。また、セパレータ29を省略するものとしてもよい。また、対極30は、例えば光透過導電性基板14と同じ構成を有するものを用いるものとしてもよいし、光透過導電膜12に白金を付着させたものや、白金などの金属薄膜などとしてもよい。
以下では、色素増感型太陽電池(以下セル)を具体的に作製した例について、実験例として説明する。なお、実験例2〜7,9,11,15が本発明の実施例に相当し、実験例1,8,10,12〜14が比較例に相当する。なお、本発明は下記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
(色素)
色素1として、式(10)で表されるポルフィリン色素を用いた。また、色素2として、式(11)で表される、赤色のインドリンロダニン色素(D358)を用いた。また、色素3として、式(12)で表される、シアノカルボン酸を有しロダニン構造を有さないインドリン色素(D131)を用いた。また、色素4として、式(13)で表されるポルフィリン色素を用いた。なお、色素1は緑色、色素2は赤色、色素3は黄色、色素4は緑色の色素である。
(セルの作製)
[実験例1]
透明導電性ガラス(TCO)基板上に、電子輸送層(n型半導体層)として多孔質TiO2膜をスクリーン印刷法で塗布し、150℃で乾燥したのち、電気炉内で450℃に加熱して、多孔質TiO2膜基板を作成した。色素1(0.0001mol/L)、色素2(0.0001mol/L)、色素3(0.0001mol/L)、ホール輸送材料としてのCuI(0.15mol/L)及び有機塩としてのEMISCN(0.01mol/L)を溶解したアセトニトリル溶液をそれぞれ調製し、上述した多孔質TiO2膜基板上に塗布し、アセトニトリルを蒸発させて、介在層を形成した。そして、この介在層の上に、対極としてのPt薄膜を配置し、セルを作製した。
[実験例2〜7]
無機塩としてのLiI(0.1mol/L)を溶解したアセトニトリル溶液を調製し、これを色素1〜3やCuIを溶解したアセトニトリル溶液とともに用いた以外は、実験例1と同様に実験例2のセルを作製した。LiIに代えてCaI2を用いた以外は、実験例2と同様に実験例3のセルを作製した。LiIに代えてLiSCNを用いた以外は、実験例2と同様に実験例4のセルを作製した。LiIに代えてKIを用いた以外は、実験例2と同様に実験例5のセルを作製した。LiIに代えてMgI2を用いた以外は、実験例2と同様に実験例6のセルを作製した。LiIに代えてKSCNを用いた以外は、実験例2と同様に実験例7のセルを作製した。
[実験例8,9]
色素3を用いなかった点以外は実験例1と同様に実験例8のセルを作製した。色素3を用いなかった点以外は実験例2と同様に実験例9のセルを作製した。
[実験例10,11]
色素2,3を用いなかった点以外は実験例1と同様に実験例10のセルを作製した。色素2,3を用いなかった点以外は実験例2と同様に実験例11のセルを作製した。
[実験例12,13]
色素1,2を用いなかった点以外は実験例1と同様に実験例12のセルを作製した。色素1,2を用いなかった点以外は実験例2と同様に実験例13のセルを作製した。
[実験例14,15]
ポルフィリン色素を色素1から色素4に変更し、色素3を用いなかった点以外は実験例1と同様に実験例14のセルを作製した。ポルフィリン色素を色素1から色素4に変更し、色素3を用いなかった点以外は実験例2と同様に実験例15のセルを作製した。
(セルの評価)
実験例1〜15の色素増感型太陽電池について、2光源式のソーラーシミュレータ(ワコム電創社製WXS−155S−L2型)を用い、1kWのキセノンランプと400WのハロゲンランプからAMフィルター(AM−1.5)を通して100mW/cm2の疑似太陽光を照射したときの電流−電圧特性(IV特性)をI−Vテスター(ワコム電創社製IV−9701)を用いて測定し、起動開始直後における開放電圧Voc(V)を求めた。
(無機塩の種類の検討)
図3及び表1に実験例1〜7の開放電圧Vocを示した。図3及び表1に示すように、無機塩を含まない実験例1の場合に比べて、無機塩を含む実験例2〜7では、開放電圧Vocが向上することがわかった。
(色素の種類の検討)
表2に、実験例1と2、実験例8と9、実験例10と11、実験例12と13、実験例14と15のそれぞれにおけるVocの差を示した。表2に示すように、色素1(ポルフィリン色素)を含まない実験例12,13では、無機塩(LiI)を用いることにより開放電圧が低下するのに対して、色素1を含む実験例1,2や実験例8,9、実験例10,11では、無機塩を用いることにより開放電圧が向上した。また、色素1に代えて色素4(ポルフィリン色素)を用いた実験例14,15でも、無機塩を用いることにより開放電圧が向上した。このことから、色素として、ポルフィリン色素を含む必要があることがわかった。このうち、さらに色素2を含む実験例1,2や実験例8,9、実験例14,15では開放電圧がより向上し、さらに色素3を含む実験例1,2では開放電圧が一層向上した。このことから、色素として2種以上の色素を含むことがより好ましいことがわかった。また、ダブルポルフィリン色素(色素1)を用いた実験例8,9では、シングルポルフィリン色素(色素4)を用いた実験例14,15よりも、開放電圧が向上したことから、ポルフィリン色素としては、ダブルポルフィリン色素がより好ましいことがわかった。
本発明は、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールに好適に利用可能である。
10 色素増感型太陽電池モジュール、11 光透過基板、12 光透過導電膜、13 受光面、14 光透過導電性基板、15 受光面、16,17 集電電極、18 溝、20 電極、21 接続部、22 下地層、23 受光面、24 電子輸送層、25 裏面、26 介在層、27 裏面、28 ホール輸送層、29 セパレータ、30 対極、32 シール材、34 保護部材、40 色素増感型太陽電池。

Claims (15)

  1. 電子輸送層を光透過導電性基板上に備えた電極と、
    前記電極に向かい合うように配置された対極と、
    前記電極と前記対極との間に介在する介在層と、を備え、
    前記介在層には、ポルフィリン構造を1つ以上有するポルフィリン色素と、一価のアニオンを有する無機塩と、ホール輸送材料とが含まれる、
    色素増感型太陽電池。
  2. 前記無機塩は、一価のアニオンとしてハロゲン化物イオンを有する、請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記無機塩は、一価のアニオンとしてヨウ化物イオン(I-)を有する、請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記無機塩は、一価のアニオンとしてチオシアン酸イオン(SCN-)を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記無機塩は、カチオンとして、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び遷移金属イオンからなる群より選ばれる1種以上を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  6. 前記ポルフィリン色素は、電子供与性官能基と第1置換基と第2置換基とアンカー基とがそれぞれ別に結合したポルフィリン構造を有している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  7. 前記ポルフィリン色素は、ポルフィリン構造を2つ含むダブルポルフィリン色素である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  8. 前記介在層は、2種以上の色素を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  9. 前記介在層には、前記ポルフィリン色素と前記無機塩と前記ホール輸送材料とが混在した状態で含まれる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  10. 前記介在層と前記対極との間に存在する、ホール輸送材料からなるホール輸送層をさらに備えた、請求項1〜9のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  11. 前記ホール輸送層は、有機塩を含む、請求項10に記載の色素増感型太陽電池。
  12. 前記介在層は、有機塩を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  13. 前記電子輸送層は、酸化チタン及び酸化亜鉛のうちの少なくとも一方を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  14. 前記ホール輸送材料は、CuI、CuSCN、Cu2O、CuO及びCuAlO2の1以上を含むものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の色素増感型太陽電池を複数備えている、色素増感型太陽電池モジュール。
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