本発明の実施の形態について、以下、具体的に説明する。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、水と、酸化銅を溶解させる成分とを含み、鉄イオン濃度が1000ppm以下であることを特徴とする。さらに、銅イオン濃度が1000ppm以下であることが好ましい。鉄イオンや銅イオンの不純物イオンは、レジスト残渣に影響を与え、パターン均一性に影響を与えることからエッチング液に含まれる含有量を規制した。
すなわち上記のように鉄イオン量を規定することにより、エッチングを阻害する鉄イオンとエッチング液との反応の副生成物、又は鉄イオンとレジスト材との反応の副生成物の発生を抑制することができる。これにより、副生成物がパターンに付着してエッチングを阻害し、レジスト材の残渣が発生するのが防がれるため、均一な微細パターンの形成が可能となる。また、上記のように、銅イオン量を規定することにより、平衡の観点からエッチング反応の阻害を抑制でき、より均一な微細パターンの形成が可能となる。
本実施の形態では、水に溶存する鉄イオン濃度は800ppm以下、銅イオン濃度は800ppm以下であることが好ましく、鉄イオン濃度は500ppm以下、銅イオン濃度は500ppm以下であることがより好ましく、鉄イオン濃度は300ppm以下、銅イオン濃度は300ppm以下であることがさらに好ましく、鉄イオン濃度は50ppm以下、銅イオン濃度は50ppm以下であることがさらに好ましく、鉄イオン濃度は10ppm以下、銅イオン濃度は10ppm以下であることが最も好ましい。上記のように、鉄イオン濃度を少なくすることで、エッチング液で溶解し、エッチング液中に溶存する銅イオンを再び析出させ残渣を発生させることを防止できる。
また本実施の形態の酸化銅用エッチング液は、主溶媒としての水以外に、酸化銅を溶解可能な酸や塩基を含み、具体的にはキレート剤としてのアミノ酸又はその塩と、アミノ酸以外のキレート剤又はその塩とを含有することができる。
なお、本明細書中においては、単に「アミノ酸」又は「他のキレート剤」と記した場合には、特段の説明がない限り、「アミノ酸又はその塩」、或いは、「他のキレート剤又はその塩」を意味するものとする。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、比較的エッチング速度が遅く選択性の高いアミノ酸と、比較的エッチング速度が速く選択性の低い、他のキレート剤を混合して用いている。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液における、他のキレート剤に対するアミノ酸の重量比は、0.01以上0.98以下が好ましく、0.10超0.80未満がより好ましく、0.20超0.80未満がさらに好ましく、0.30以上0.60以下が特に好ましい。
本発明のエッチング液において、使用する水が、抵抗値が1MΩ・cm以上であることが好ましい。本発明のエッチング液において、前記水が、0.5μm超のパーティクルが100個/ml未満であることが好ましい。エッチング液に用いる水の純度が高い方が所望のエッチングが実施でき、得られたパターンを用いた時の転写性が高い。
エッチング液に用いる水の抵抗値が1MΩ・cm未満の場合、水に溶解している溶存イオンの量がより多くなり、エッチング時に酸化銅の溶解を妨げ所望のパターンを得ることができない。本発明のエッチング液に用いる水の抵抗値は、5MΩ・cm以上が好ましく、10MΩ・cm以上がより好ましく、15MΩ・cm以上がさらに好ましく、18MΩ・cm以上が最も好ましい。水の抵抗値が高くなるに従い、水に溶解している溶存イオンの量が少なくなり、エッチング時に酸化銅が効果的に溶解でき、所望のパターンを得ることができる。なお、前記水の抵抗値は、水温25℃における値である。
本発明のエッチング液に用いる水は、本発明のエッチング液において、前記水が、0.5μm超のパーティクルが100個/ml未満であることが好ましい。エッチング液に用いる水にパーティクルが含まれていると、パターンに付着して、エッチングを妨げる原因や、エッチング終了後にパターンに付着して所望のパターンを得られない、又は転写時に転写性を悪くする等の原因になる。従って、本発明のエッチング液に用いる水に含まれるパーティクルは、0.5μm超のパーティクルが50個/ml未満であることがより好ましく、0.5μm超のパーティクルが10個/ml未満であることがさらに好ましく、0.5μm超のパーティクルが3個/ml未満であることが最も好ましい。なお、0.5μm以下のパーティクルに関しても少ない方が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが5個/ml以下であり、かつ0.5μm超のパーティクルが1個/ml以下であることがさらに最も好ましい。
なお、パーティクルの原因は、大気中に浮遊する浮遊物や人体からの発塵物、配管やエッチング槽に付着していた異物や錆等があげられる。なお上記パーティクルは少ない方が好ましいことから、研磨剤等の研磨粒子を加えることは好ましくない。なお、水中のパーティクルの測定は、特に指定はないが、JISJ 0554等を参考に測定することができる。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、価数の異なる酸化銅を含有する酸化銅含有層から特定の価数の酸化銅を選択的に除去するための酸化銅のエッチング液であって、特に酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト層(以下、酸化銅含有層とも言う)のエッチングに好適に用いられる。すなわち、例えば、基材上に成膜した酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト層の一部を、レーザー光で露光し、酸化銅(II)を熱分解して酸化銅(I)を生成する。この酸化銅(I)を本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液を用いて選択的に溶解することができる。この際、本実施の形態によれば、レジスト残渣の発生を抑制でき、均一な微細パターンを形成することが可能になる。
本明細書においてパターンとは、酸化銅含有層に形成された凹凸構造である。凹凸構造は、例えば、凹部及び/又は凸部の繰り返しである。互いに離間した凸部の間を連続した凹部が繋いでいる、いわゆるドット型や、互いに離間した凹部の間を連続した凸部が繋いでいる、いわゆるホール型、連続した凹部と連続した凸部が交互に配置されているライン&スペース型等がある。
また、ここで、熱反応型レジスト層、すなわち酸化物含有層が酸化銅(II)を主成分とするとは、酸化銅含有層の構成成分の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上が酸化銅(II)で構成されていることを意味する。酸化銅(II)の割合が50重量%未満の場合は、酸化銅(II)の分解反応が均一に進行しなくなるため選択的にエッチングすることが難しくなる。一方、酸化銅(II)の割合が90重量%以上の場合は、分解反応が特に均一に進行するため選択性高くエッチングすることができる。
熱反応型レジスト層の膜厚は、10nm以上80nm以下であることが好ましい。熱反応型レジスト材料の加熱は、露光等の光を熱反応型レジスト材料が吸収して熱に変化することで達成される。したがって、加熱を達成するためには、熱反応型レジスト材料が光を吸収する必要があり、この光の吸収量は膜厚に大きく依存する。熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚が10nm以上だと、光の吸収量が多くなるため、効率よく加熱しやすくなる。したがって、本発明の熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚は10nm以上が好ましい。なお、膜厚が薄い場合でも、熱反応型レジスト材料からなる薄膜の上方と下方の両方、又はいずれか一方に光吸収層等を配置することで、光の吸収量を補うことができる。
一方、熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚が80nmであると、露光による膜厚方向への均一性が確保しやすい。すなわち、深さ方向だけでなく、膜面方向の微細パターンの加工精度も好ましいものとなる。以上のことから、熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚は、10nm以上80nm以下であり、最も好ましくは15nm以上30nm以下である。熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚を、最も好ましい15nm以上30nm以下の範囲にすることで、露光等による光の吸収量が適度にあり、膜厚方向と膜深さ方向の熱の均一性が保てるという利点があり、かつ、膜厚変化に対する光吸収量の変化率が小さいため、膜厚斑が生じた場合でも加熱斑になりにくく、より効果的に均一なパターン形成が可能となる。
以下、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液の各構成について詳細に説明する。本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液には例えばアミノ酸を含まむことができる。酸化銅用エッチング液に用いるアミノ酸は、具体的には、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン又はバリンである。本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液においては、アミノ酸は、これらのうち少なくとも一種類以上を含むことが好ましい。これらの中でも、水への溶解性が高く濃度調整が容易であるという点で、グリシン、アラニン、メチオニン又はリジンのうち少なくとも一種類以上を含むことが好ましく、グリシン、アラニンのうち少なくとも一種類以上を含むことがより好ましく、グリシンを少なくとも含むことが最も好ましい。アミノ酸としてグリシンを選択することで好適なエッチングができるだけでなく、コストの面で好ましい。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液には例えば他のキレート剤を含むことができる。具体的には、例えば、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、α,ω−ジアミン酢酸、α,ω−ジアミンコハク酸、α,ω−ジアミンプロピオン酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、クエン酸、イソクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びバソクプロインジスルホン酸、並びにそれらのアンモニウム塩、アンモニア、ビピリジル、フェナントロリンである。本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液においては、他のキレート剤は、これらのうち少なくとも一種類以上を含むことが好ましい。これらの中でも、シュウ酸、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アンモニア、ビピリジル、又は、フェナントロリン及びこれらの誘導体のうち少なくとも一種類以上を含むことがより好ましい。他のキレート剤と酸化銅(I)との錯形成速度が高く、かつ、他のキレート剤と酸化銅(II)の錯形成速度が低いことを考慮すると、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム又はコハク酸ナトリウムのうち少なくとも一種類以上を含むことがさらに好ましく、中でもシュウ酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム又はコハク酸アンモニウムのうち少なくとも一種類以上を含むことがいっそう好ましく、シュウ酸アンモニウムを少なくとも含むことが特に好ましい。他のキレート剤としてシュウ酸アンモニウムを選択することで好適なエッチングできるだけでなく、コストの面やナトリウム等の残留イオンフリーの面で好ましい。なお、他のキレート剤の塩は、最初から塩になっているものを添加してもよく、別々に混合してエッチング液内で生成させてもよい。例えば、シュウ酸アンモニウムを用いる場合、シュウ酸アンモニウムそのものを用いてもよく、シュウ酸とアンモニアを別々に混合して、液内でシュウ酸アンモニウムを生成させてもよい。
また、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液において、他のキレート剤には、カルボン酸とカルボン酸塩とが共存している状態も含まれる。アンモニウム塩を例にとると、アンモニウムが微量添加されている状態、例えばシュウ酸とシュウ酸アンモニウムとが共存している組成も他のキレート剤に含まれる。また、逆にカルボン酸アンモニウムと過剰のアンモニウム又はアンモニアとが共存している状態、例えばシュウ酸アンモニウムと他のアンモニウム塩とが共存している組成も他のキレート剤に含まれる。すなわち、キレート剤とその塩の当量関係は、本発明で開示されるキレート化反応を大きく阻害しない範囲で任意に決定することができる。例えば、シュウ酸1当量に対して、アンモニアを2当量添加してシュウ酸アンモニウムの生成に必要な量論量としてもよく、アンモニアを2当量未満添加してシュウ酸を過剰にしてもよく、逆にアンモニアを2当量より多く添加してアンモニアを過剰にしてもよい。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は水溶液であるが、水とともに、水と相溶性のある溶媒、例えばアルコール、アセトニトリル、グリコール系といった有機溶媒を含んでいてもよい。水と、水と相溶性のある溶媒の比率は、上記アミノ酸及び他のキレート剤が溶解する範囲において任意に設定が可能である。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、ペルオキソ基、ペルオキソ2硫酸基、チオール基を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。硫黄元素と銅元素は強く結合するため、エッチング後のレジストにも硫黄が残留し、その後の工程に悪影響を及ぼす可能性がある。以上のことから、所望のパターンが得られ難くなるため、本実施の形態に係るエッチング液には、ペルオキソ基、ペルオキソ2硫酸基、チオール基を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、アゾール化合物、チアゾール化合物、グリコール類を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。エッチング液にこれらの化合物が含まれることで、エッチングの選択性の制御が低下する。以上のことから、所望のパターンが得られ難くなるため、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液には、アゾール化合物、チアゾール化合物、グリコール類を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液においては、酸化剤、還元剤、界面活性剤等の他の成分を適宜添加しても構わない。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、還元剤として過酸化水素を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。エッチング液に過酸化水素が含まれることで、エッチングの選択性の制御が低下する。以上のことから、所望のパターンが得られ難くなるため、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液には、過酸化水素を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。
また、アミノ酸及び他のキレート剤の各々において、微細な部分を溶解させるために比較的分子サイズの小さいものを用いる一方で全体では溶解速度を高くするために比較的分子サイズの大きいものを用いる等、役割に応じて複数種類のアミノ酸及び/又は他のキレート剤を適宜選択して用いることも好ましい。
また、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液のpHは、概ね1以上11以下の値を取る。しかし、pHは3.50以上であることが望ましく、4.00以上であることが好ましく、4.50以上であることがより好ましく、6.00以上であることが特に好ましい。pHが高い方が、酸化銅の露光された部分のみをより選択的に溶解可能である。pHが3.5未満になるとエッチングの進行が顕著になり、所望の選択性が得られない場合がある。一般的な酸やアルカリの添加でpHの調整を行うことが可能であるが、このような酸、アルカリとしては具体的に塩酸、硫酸、硝酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムを挙げることができ、この中でも塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムが特に好ましい。
次に、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング方法について説明する。本実施の形態に係る酸化銅用エッチング方法は、まず、酸化銅(II)を主成分とする酸化銅含有層(熱反応型レジスト層)であって、熱によって酸化銅(II)を酸化銅(I)に熱分解を生ぜしめた酸化銅(I)含有部分を有するものを用意する。
例えば、このような酸化銅含有層は、次のようにして形成することができる。例えば、基材の表面に酸化銅(II)をターゲットとして用いたスパッタリング法で酸化銅(II)を主成分とする酸化銅含有層を成膜する。以下、酸化銅(II)を主成分とする酸化銅含有層を「エッチング層」という。
次に、エッチング層の表面の一部に例えばレーザー光を照射し、露光する。露光部分においてはレーザー光の熱により酸化銅(II)が熱分解して酸化銅(I)が生成する。この結果、エッチング層においては、酸化銅(II)を主成分とする未露光部分と、酸化銅(I)を主成分とする露光部分とが混在した状態となる。ここで、露光部分と未露光部分とが混在した酸化銅含有層を「露光後のエッチング層」という。
上述のような露光後のエッチング層に対して、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液を作用させる。本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、水と、酸化銅を溶解させる成分とを含み、鉄イオン濃度が1000ppm以下である。さらに銅イオン濃度が1000ppm以下であることが好ましい。
図3は、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング方法の各工程を示す断面模式図である。図3Aに示すように、基材11の表面にエッチング層12を形成する。次に、エッチング層12の一部にレーザー光を露光して、図3Bに示すように、露光部分12aと未露光部分12bとを形成し、露光後のエッチング層12を得る。露光部分12aは、上述のように、熱分解によって酸化銅(II)が酸化銅(I)に変化している。次に、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液を露光後のエッチング層12に作用させると、露光部分12aの酸化銅(I)が選択的に溶解し、未露光部分12bが、均一な微細パターンの形状となる。
上記したように本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、鉄イオン濃度が1000ppm以下になるように鉄イオン量を規定することにより、エッチングを阻害する鉄イオンとエッチング液との反応の副生成物、又は鉄イオンとエッチング層12との反応の副生成物の発生を抑制することができる。これにより、副生成物がパターンに付着してエッチングを阻害し、エッチング層12の残渣が発生するのを防ぐことができるため、均一な微細パターンの形成が可能である。
また、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液は、銅イオン濃度が1000ppm以下になるように銅イオン量を規定することにより、平衡の観点からエッチング反応を阻害せず、より均一な微細パターンの形成が可能である。
エッチング液を露光後のエッチング層に作用させる方法は特に限定されず、エッチング液に露光後のエッチング層を浸漬させてもよく、エッチング液を露光後のエッチング層に噴射してもよい。エッチング液に露光後のエッチング層を浸漬させる際に液を循環させるか、あるいは露光後のエッチング層を動かすことにより、単位時間当たりに露光後のエッチング層に当たる液の量を増加させると、エッチング速度を上げることができる。また、エッチング液を露光後のエッチング層に噴射する際に噴射圧を上げることで、エッチング速度を上げることができる。エッチング液をレジストに噴射させる場合は、ノズルを移動させる方法、露光後のエッチング層を回転させる方法等を単独で用いることもできるが、併用するとエッチングが均一に進行するため好ましい。噴射に用いるノズルの種類は任意のものが使用可能で、例えば、ラインスリット、フルコーンノズル、ホローコーンノズル、フラットノズル、均一フラットノズル、及び、ソリッドノズルを挙げることができ、露光後のエッチング層や基材の形状に合わせて選択できる。また、一流体ノズルでも二流体ノズルでも構わない。
エッチング液を露光後のエッチング層に作用させる際の温度を制御することでエッチング速度を変化させることが可能である。温度はエッチング液が凍結、沸騰、極端に濃度が変化する速度での揮発、あるいはエッチング液中の成分や露光後のエッチング層の分解を引き起こす範囲を避ければ任意に設定することが可能である。上記の理由から、温度範囲は0℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がさらに好ましく、20℃以上40℃以下が最も好ましい。
エッチング液を露光後のエッチング層に作用させる際に、不溶性の微粉末等の不純物がエッチング液中に存在すると、特に微細なパターンをエッチングする際にムラの原因となる恐れがあるので、エッチング液を事前にろ過しておくことが好ましい。ろ過に用いるフィルターの材質はエッチング液と反応しないものなら任意に選択でき、例えば、PFAやPTFEを挙げることができる。フィルターの目の粗さはパターンの微細度合いに応じて選択すればよいが、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。また、溶出した成分の析出、再付着を防ぐためには、浸漬より噴射が好ましく、さらに、エッチング液を露光後のエッチング層に噴射する場合はエッチング液を使い捨てにすることが望ましい。エッチング液を再利用する場合は、溶出成分を除去することが好ましい。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液を作用させる露光後のエッチング層を成膜する基材は、材質及び形状について特に制限を受けない。しかし、表面平滑性及び加工性に優れる材質であった方が好ましく、そのような材質としては、ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、チタニウム、銅、銀、金等を挙げることができ、この中でもガラス、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、チタニウム又は銅が特に好ましく、ガラス、シリコン又は二酸化ケイ素が特に好ましい。また、形状としては平板のような二次元状であっても構わないし、ロールのような三次元状であっても構わない。ガラス、シリコン、二酸化ケイ素等を基材に用いる場合は、エッチング液にフッ化物発生源が含有されると基材が侵食される。したがって、基材の選択幅を広く保つためにエッチング液に実質的にフッ化物発生源を含まないことが好ましい。
次に、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング方法についてさらに詳細に説明する。本実施の形態に係る酸化銅用エッチング方法は、銅の酸化物を含有する酸化銅含有層の所定の領域の銅の酸化物を熱反応させる熱反応工程と、酸化銅含有層に上記エッチング液を供給し、熱反応させた銅の酸化物を除去するエッチング工程とを含む。
熱反応工程では、酸化銅含有層の所定の領域に対して所定の温度以上に熱を加えることにより、酸化銅含有層の所定の領域の銅の酸化物を熱反応させる。また、熱反応工程では、酸化銅含有層にレーザー光を照射して酸化銅含有層の熱反応を行うことが好ましい。レーザー光を酸化銅含有層の所定の領域に照射することにより、酸化銅含有層の所定の領域内の温度がガウス分布(図2参照)となるため、所定の温度以上になった部分のみ反応が進行してレーザー光のスポット径より小さな範囲を熱反応させることが可能となる。
エッチング工程では、酸化銅含有層に上記エッチング液を供給し、酸化銅含有層の所定の領域の、熱反応させた銅の酸化物を溶解除去する。すなわち、水と、酸化銅を溶解させる成分とを含み、鉄イオン濃度が1000ppm以下である酸化銅用エッチング液を用いる。さらに酸化銅用エッチング液の銅イオン濃度は1000ppm以下であることが好ましい。これにより均一な微細パターンを形成することが可能になる。
本実施の形態に係る酸化銅用エッチング方法においては、エッチング層を洗浄する工程と、エッチング後の基材及びエッチング層を洗浄する工程と、をさらに含むことが好ましい。
(酸化銅の酸化数)
図4は、酸化銅(II)の熱重量測定結果を示すグラフである。酸化銅(II)の粉末に対して熱重量測定を行うと、1050℃において、酸化銅(II)の還元による吸熱が確認され(図4のDTA参照)、それに伴う酸素の放出に由来する重量の減少が観測される(図4のTG参照)。重量の減少割合から見積って、酸化銅の価数は、2(加熱前)から、ほぼ1(加熱後)まで減少していることが分かる。この結果より、加熱によって酸化銅(II)が還元されて酸化数が減少し、酸化銅(I)を主成分とする含む銅の酸化物が生成することが分かる。なお、図4では価数1(酸化銅(I),CuO0.5)に減少後、再酸化が生じて価数1.5(CuO0.65)となっているように見えるが、後述するX線回折の結果では酸化銅(II)はほとんど観測されておらず、実質的には価数1の状態になっていると推定できる。
図5は、酸化銅(I)及び酸化銅(II)のX線回折の測定結果を示すグラフである。図5に示すように、酸化銅(II)の粉末の加熱前後のX線回折を測定すると、室温では酸化銅(II)に帰属されるピークが観測されるのに対し、1000℃に加熱すると酸化銅(II)に帰属されるピークは消失し、酸化銅(I)に帰属されるピークのみが観測される。この結果より、加熱によって酸化銅(II)の価数が減少して酸化銅(I)に変化することが分かる。
(酸化銅の価数の差による溶解速度の差)
図6及び図7は、酸化銅(II)の膜と、当該膜を露光により加熱して酸化銅(I)に変化させた後の膜とを、それぞれ本実施の形態の酸化銅用エッチング液を用いてエッチングした場合の、エッチング時間と溶解速度の関係を示すグラフである。図6は、エッチング液として3重量%のコハク酸アンモニウムを、図7は、3重量%のアラニン水溶液をそれぞれ作用させた場合の溶解速度を示している。また、いずれにおいても酸化銅(II)の膜の膜厚は10nmである。図6及び図7のいずれの場合も、加熱変化後の酸化銅(I)は、変化前の酸化銅(II)に比べて約10倍の速度で溶解することがわかる。すなわち、このデータにより、酸化銅(II)及び酸化銅(I)が混在した膜において、酸化銅(I)が選択的に溶解することがわかる。
(ドライエッチング処理)
本発明のエッチング液を用いてエッチングされた微細パターンをマスクとして、ドライエッチング処理により、パターンのアスペクト比(溝の深さをパターン幅で除した値)を制御することができる。
すなわち、酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト膜の下に形成したい溝深さ分の厚みの膜(以下、ドライエッチング層ともいう。)を予め成膜しておき、露光及びエッチングしパターン形状を付与された熱反応型レジストをマスクとして、下層の膜に深い溝を形成する手法である。例えば、ドライエッチング層にSiO2を使用するとフロン系ガスでドライエッチングすることが可能である。ドライエッチングにより加工する場合、マスクとなるレジスト材料には微細パターン加工ができること以外にフロン系ガスのドライエッチングに耐性があることが求められるが、酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト材料から形成されたマスクは、フロン系ガスのドライエッチング耐性が高いことが本願発明者らによって開示されている。加えて、本実施の形態に係る酸化銅用エッチング液を用いてエッチングされる酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト膜は、酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解可能であるため、熱反応型レジストはパターン形状を付与され、ドライエッチングのマスクとして機能する部分が十分に残存し好適である。ここで、酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解していることを表す指標として、元の膜厚に対するエッチング後の溝深さの割合をRdtと規定すると、Rdtは0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.77以上がさらに好ましく、0.80以上がさらにより好ましく、0.85以上が最も好ましい。Rdtが大きい値である、すなわちレジスト残膜が厚いほど、ドライエッチング中にマスクが多少ドライエッチングされても、元のパターン形状を維持することができ、様々なドライエッチング条件下においても、元のパターン形状を忠実に再現することができ好適である。
ドライエッチング処理に用いるフロン系ガスは、特に制限はないが、例えば、CF4、CHF3、CH2F2、C2F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、CCl2F2、CIF3等のフルオロカーボンが挙げられ、単独で用いても、複数のガスを混合して用いても構わない。さらにこれらのガスにO2、H2、Ar、N2、CO等を混合したガスであっても良い。さらにHBr、NF3、SF6、CF3Br、HCl、HI、BBr3、BCl3、Cl2、SiCl4のガスや、これらにAr、O2、H2、N2、CO等のガスを混合したガスもフロン系ガスの範囲内とする。
ドライエッチング処理する工程に用いられる装置は、真空中でフロン系ガスが導入でき、プラズマが形成でき、かつ、ドライエッチング処理ができるものであれば特に制限はないが、市販のドライエッチング装置、RIE装置、ICP装置等を用いることができる。ドライエッチング処理を行うガス種、時間、電力等は、レジスト材料の種類、ドライエッチング層の種類、ドライエッチング層の厚み、ドライエッチング層のドライエッチングレート等によって適宜決定しうる。なお、基材にシリコン、二酸化ケイ素、ガラス、石英等を用いた場合は、基材が、ドライエッチング層を兼ねることができるために、ドライエッチング層を必ずしも必要としない。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明するが、本発明はこの実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
50mmφのガラス平板基板上に、スパッタリング法を用いて、下記の条件にて酸化銅膜を成膜した。なお、成膜後の酸化銅膜の価数を、XPS測定から計算したところ、1.90を超えており、実質的に酸化銅の価数はIIと言える。
ターゲット:酸化銅(II)
電力(W):RF100
ガス種類:アルゴンと酸素の混合ガス(比率95:5)
圧力(Pa):0.1
膜厚(nm):20
この酸化銅膜を以下の条件にて露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1〜10mW
送りピッチ:200〜800nm
露光中にレーザーの強度を変調させることで、さまざまな形状やパターンを作製できるが、実験ではエッチング後の界面を評価しやすくするために、パターンとして連続の溝形状を使用した。形成する形状は目的とする用途によっては孤立した円形、楕円形状等でも構わず、本発明は露光形状によって何ら制限を受けるものではない。
次に、上記条件で露光した酸化銅サンプルを、下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.6g
アラニン 1.2g
純水 400g
pH 6.2
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは、23℃において2分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例2)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.6g
アラニン 1.2g
純水 400g
pH 6.2
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2ppm、鉄イオン濃度は800ppmであった。
エッチングは23℃において3分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例3)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.0g
シュウ酸アンモニウム 1.0g
アラニン 1.2g
純水 400g pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは23℃において3分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例4)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.0g
シュウ酸アンモニウム 1.0g
アラニン 1.2g
純水 400g
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は800ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは23℃において3分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例5)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g 塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例6)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g 塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は5ppm、鉄イオン濃度は800ppmであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例7)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g 塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は800ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(実施例8)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g 塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は800ppm、鉄イオン濃度は800ppmであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣は観察されず、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測され、均一な微細パターンが形成されていた。
(比較例1)
実施例5と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.6g
アラニン 1.2g
純水 400g
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2ppm、鉄イオン濃度は1850ppmであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣が観察され、溝深さ10nmの溝形状が観測された。溝深さが浅い原因として、エッチング液中に鉄イオンが多量に存在したためエッチングが効率的に進行せず、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したためだと考えられる。
(比較例2)
実施例5と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.0g
シュウ酸アンモニウム 1.0g
アラニン 1.2g
純水 400g
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2300ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣が観察され、溝深さ10nmの溝形状が観測された。溝深さが浅い原因として、エッチング液中に銅イオンが多量に存在したためエッチングが効率的に進行せず、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したためだと考えられる。
(比較例3)
実施例5と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は5ppm、鉄イオン濃度は1850ppmであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣が観察され、溝深さ10nmの溝形状が観測された。溝深さが浅い原因として、エッチング液中に鉄イオンが多量に存在したためエッチングが効率的に進行せず、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したためだと考えられる。
(比較例4)
実施例5と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は2300ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、レジスト残渣が観察され、溝深さ11nmの溝形状が観測された。溝深さが浅い原因として、エッチング液中に銅イオンが多量に存在したためエッチングが効率的に進行せず、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したためだと考えられる。
実施例1〜実施例8及び比較例1〜比較例4の結果を表1に示す。
以上から、比較例1及び比較例3では、エッチング液中の鉄イオン濃度が1000ppmを越えており、鉄イオンとエッチング液の反応、又は鉄イオンとレジスト材との反応の副生成物が、パターンに付着してエッチングを阻害し、レジスト残渣が発生するため、均一な微細パターンを形成できないことがわかった。また、比較例2及び比較例4では、エッチング液中の銅イオン濃度が1000ppmを越えており、酸化銅膜をエッチングが平衡の観点から妨げられ、レジスト残渣が発生することがわかった。実施例1〜実施例8では、エッチング液中の鉄イオン濃度が1000ppm以下であり、さらに銅イオン濃度が1000ppm以下であり、均一な微細パターンが形成できていることがわかった。実施例8は、鉄イオンと銅イオンを合計すると1000ppmを越えるが、鉄イオン濃度と銅イオン濃度をそれぞれ1000ppm以下とすることで、両者で異なる効果を発揮し、レジスト残渣は見られなかったと推察される。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。