本発明の実施の形態について、以下、具体的に説明する。
本実施の形態に係るエッチング液は、キレート剤としてアミノ酸又はその塩と、アミノ酸以外のキレート剤又はその塩と、水と、を含有し、前記アミノ酸以外の前記キレート剤又はその塩の全エッチング液中の重量割合が、前記アミノ酸又はその塩の全エッチング液中の重量割合よりも大きいことを特徴とする。
なお、本明細書中においては、単に「アミノ酸」又は「他のキレート剤」と記した場合には、特段の説明がない限り、「アミノ酸又はその塩」、或いは、「他のキレート剤又はその塩」を意味するものとする。
本実施の形態に係るエッチング液は、比較的エッチング速度が遅く選択性の高いアミノ酸と、比較的エッチング速度が速く選択性の低い、他のキレート剤を混合して用いており、かつ、他のキレート剤の含有量が多いため、本実施の形態に係るエッチング液の、酸化銅(II)に対する酸化銅(I)の選択性は適度に抑えられている。
本実施の形態に係るエッチング液における、他のキレート剤に対するアミノ酸の重量比、すなわち、アミノ酸の重量/他のキレート重量は、元型の微細パターンが曲面形状を有し、優れた離形性を発現させるという観点から、0.01以上0.98以下が好ましく、0.10超0.80未満がより好ましく、0.20超0.80未満がさらに好ましく、0.30以上0.60以下が特に好ましい。重量割合の値が大きくなるほどアミノ酸の影響が大きくなるので選択性が高くなりパターンの曲面形状の割合が少なくなる。一方、重量割合の値が小さくなるほどアミノ酸以外のキレート剤の影響が大きくなるのでパターンの曲面形状ができやすくなる。上述の好ましい範囲においては、パターンの曲面形状と選択性のバランスが良好となるアミノ酸と他のキレート剤の組み合わせが多くなる。加えてパターンの曲面形状の割合を選択する指標として、パターンの微細程度を考慮することができる。すなわち微細パターンがピッチ400nmを下回ると、パターン自身の表面積が大きくなり元型と転写樹脂層との密着性が増すため、曲面形状の割合が大きくなるエッチング液を選択する方が好ましい。
なお、アミノ酸と他のキレート剤の組み合わせにも依存するが、キレート剤の割合が大きくなるにつれ、曲面形状の割合が増加し、得られるパターンの形状は、「頂部が曲面状になった矩形形状」から「放物線型形状」になる。より微細なパターンを転写する場合、転写性の観点では「頂部が曲面状になった矩形形状」より「放物線型形状」の方が好ましい。一方「放物線型形状」に比べ「頂部が曲面状になった矩形形状」の方が、転写により反転した形が元型に近い形状を有するため好ましく、目的に応じて、他のキレート剤に対するアミノ酸の重量割合を選択できる。ここで、酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解していることを表す指標として、元の膜厚に対するエッチング後の溝深さの割合をRdtと規定し、Rdtという観点で「放物線型形状」と「頂部が曲面状になった矩形形状」を比較した場合、「放物線型形状」に比べ「頂部が曲面状になった矩形形状」の方がRdtは大きい値をとる傾向がある。後述するように、本実施の形態に係るエッチング液を用いてエッチングされた微細パターンはドライエッチング用のマスクとして好適に利用できる。ドライエッチングは条件により、酸化銅を主成分とする熱反応型レジスト膜からなるマスクがわずかにドライエッチングされることがある。その際、Rdtが大きな値をとる、すなわちレジストの残膜が厚い方が、ドライエッチング中にマスクが多少ドライエッチングされても、元のパターン形状を維持することができる。従って、Rdtが大きな値をとる方が、様々なドライエッチング条件下においても、元のパターン形状を忠実に再現することができ好適である。以上のことから、ドライエッチング用のマスクとして用いる場合は、Rdtは0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.77以上がさらに好ましく、0.80以上がよりさらに好ましく、0.85以上が最も好ましい。
本発明のエッチング液において、使用する水が、抵抗値が1MΩ・cm以上であり、鉄イオンと銅イオンがそれぞれ1000ppm以下であることが好ましい。本発明のエッチング液において、前記水が、0.5μm超のパーティクルが100個/ml未満であることが好ましい。エッチング液に用いる水の純度が高い方が所望のエッチングが実施でき、得られたパターンを用いた時の転写性が高い。
まず水の抵抗値及び、鉄イオンと銅イオンについて説明する。エッチング液に用いる水の抵抗値は、1MΩ・cm以上が好ましい。1MΩ・cm未満の場合、水に溶解している溶存イオンの量がより多くなり、エッチング時に酸化銅の溶解を妨げ所望のパターンを得ることができない。本発明のエッチング液に用いる水の抵抗値は、5MΩ・cm以上が好ましく、10MΩ・cm以上がより好ましく、15MΩ・cm以上がさらに好ましく、18MΩ・cm以上が最も好ましい。水の抵抗値が高くなるに従い、水に溶解している溶存イオンの量が少なくなり、エッチング時に酸化銅が効果的に溶解でき、所望のパターンを得ることができる。なお、前記水の抵抗値は、水温25℃における値である。
加えて、本実施の形態に係るエッチング液に用いる水に溶存する鉄イオンは1000ppm以下、銅イオンは1000ppm以下であることが好ましい。鉄イオンと銅イオンの量が多い場合、エッチング時に酸化銅の溶解を妨げ所望のパターンを得ることができない。従って、水に溶存する鉄イオンは500ppm以下、銅イオンは500ppm以下であることが好ましく、鉄イオンは300ppm以下、銅イオンは300ppm以下であることがより好ましく、鉄イオンは50ppm以下、銅イオンは50ppm以下であることがさらに好ましく、鉄イオンは10ppm以下、銅イオンは10ppm以下であることが最も好ましい。鉄イオンが多く含まれると、エッチング液で溶解し、エッチング液中に溶存する銅イオンを再び析出させ残渣を発生させる原因になる。銅イオンが多く含まれると、酸化銅のエッチングが平衡の観点から妨げられ所望のパターンを得ることが困難になる。なお鉄イオンや銅イオンは、配管やエッチング槽に用いられる代表的な素材であるため、鉄イオンや銅イオンの溶存量を減らす観点でもこれらを使用しない方が好ましい。
本発明のエッチング液に用いる水は、本発明のエッチング液において、前記水が、0.5μm超のパーティクルが100個/ml未満であることが好ましい。エッチング液に用いる水にパーティクルが含まれていると、パターンに付着して、エッチングを妨げる原因や、エッチング終了後にパターンに付着して所望のパターンを得られない、又は転写時に転写性を悪くする等の原因になる。従って、本発明のエッチング液に用いる水に含まれるパーティクルは、0.5μm超のパーティクルが50個/ml未満であることがより好ましく、0.5μm超のパーティクルが10個/ml未満であることがさらに好ましく、0.5μm超のパーティクルが3個/ml未満であることが最も好ましい。なお、0.5μm以下のパーティクルに関しても少ない方が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが5個/ml以下であり、かつ0.5μm超のパーティクルが1個/ml以下であることがさらに最も好ましい。
なお、パーティクルの原因は、大気中に浮遊する浮遊物や人体からの発塵物、配管やエッチング槽に付着していた異物や錆等があげられる。なお上記パーティクルは少ない方が好ましいことから、研磨剤等の研磨粒子を加えることは好ましくない。なお、水中のパーティクルの測定は、特に指定はないが、JISJ 0554等を参考に測定することができる。
本実施の形態に係るエッチング液は、価数の異なる酸化銅を含有する酸化銅含有層から特定の価数の酸化銅を選択的に除去するための酸化銅のエッチング液であって、特に酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト層(以下、酸化銅含有層とも言う)のエッチングに好適に用いられる。すなわち、例えば、基材上に成膜した酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト層の一部を、レーザー光で露光し、酸化銅(II)を熱分解して酸化銅(I)を生成する。この酸化銅(I)を本実施の形態に係るエッチング液を用いて選択的に溶解することができる。
すなわち、本実施の形態に係るエッチング液は、銅の酸化物を含有する酸化銅含有層の所定の領域の銅の酸化物を熱反応させた部分を選択的に除去するために好適である。
酸化銅(I)は、酸化銅(II)と価数が異なり、かつ、酸化銅(II)が熱により酸素を放出して分解し、結晶量が増大する等の要因により、酸化銅(II)とは異なった構造及び組成になっている。
ここで、成膜後の酸化銅含有層における酸化銅(銅酸化物)の価数は、X線光電子分光(XPS)によって測定することができる。しかしながら、本明細書においては、酸化銅(II)のターゲットを用いてスパッタリング法等により成膜している限りにおいて、成膜後の酸化銅含有層における酸化銅の価数がIIより若干異なっていても、実質的に価数Iと判断する。
このように、本実施の形態では、露光前後の酸化銅の酸化数の変化を利用してアミノ酸及び他のキレート剤を含有したエッチング液を作用させて露光部分を選択的に溶解させることができる。これは、本実施の形態に係るエッチング液と、未露光部分の銅の酸化物(酸化銅(II))とのキレート化反応における活性化エネルギーが高い一方、露光部分の銅の酸化物(酸化銅(I))との活性化エネルギーは低いため、未露光部分と露光部分との活性化エネルギーの差が大きいことに起因する。なお、本実施の形態に係るエッチングにおいては、アミノ酸とキレート剤が複合的に酸化銅と錯形成してエッチングが進行する。
このため、酸化銅(I)と酸化銅(II)とは、エッチング液に対する溶解速度が互いに異なる。しかも、本実施の形態に係るエッチング液は、上述のように、適度な選択性を有しているので、レーザー光で露光した酸化銅(I)を主成分とする部分(以下、単に露光部分という)と、レーザー露光していない酸化銅(II)を主成分とする部分(以下、単に未露光部分という)と、を適度な選択性で溶解することにより、露光部分を溶解する一方で、未露光部分の一部、他の部分に比べて溶解しやすいパターンの頂部を溶解してパターンの形状を曲面形状とすることができる。
ここでパターンとは、酸化銅含有層に形成された凹凸構造である。凹凸構造は、例えば、凹部及び/又は凸部の繰り返しである。互いに離間した凸部の間を連続した凹部が繋いでいる、いわゆるドット型や、互いに離間した凹部の間を連続した凸部が繋いでいる、いわゆるホール型、連続した凹部と連続した凸部が交互に配置されているライン&スペース型等がある。
また、ここで、パターンの頂部とは、例えば、凹凸構造を、酸化銅含有層の垂直断面で観察したとき、凸部の角部(コーナー)をいう。
また、パターンの形状を曲線形状とするとは、上述のパターンの頂部が無くなった状態をいう。
また、ここで、熱反応型レジスト層、すなわち酸化物含有層が酸化銅(II)を主成分とするとは、酸化銅含有層の構成成分の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上が酸化銅(II)で構成されていることを意味する。酸化銅(II)の割合が50重量%未満の場合は、酸化銅(II)の分解反応が均一に進行しなくなるため選択的にエッチングすることが難しくなる。一方、酸化銅(II)の割合が90重量%以上の場合は、分解反応が特に均一に進行するため選択性高くエッチングすることができる。
熱反応型レジスト層の膜厚は、10nm以上80nm以下であることが好ましい。熱反応型レジスト材料の加熱は、露光等の光を熱反応型レジスト材料が吸収して熱に変化することで達成される。したがって、加熱を達成するためには、熱反応型レジスト材料が光を吸収する必要があり、この光の吸収量は膜厚に大きく依存する。熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚が10nm以上だと、光の吸収量が多くなるため、効率よく加熱しやすくなる。したがって、本発明の熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚は10nm以上が好ましい。なお、膜厚が薄い場合でも、熱反応型レジスト材料からなる薄膜の上方と下方の両方、又はいずれか一方に光吸収層等を配置することで、光の吸収量を補うことができる。
一方、熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚が80nmであると、露光による膜厚方向への均一性が確保しやすい。すなわち、深さ方向だけでなく、膜面方向の微細パターンの加工精度も好ましいものとなる。以上のことから、熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚は、10nm以上80nm以下であり、最も好ましくは15nm以上30nm以下である。熱反応型レジスト材料からなる薄膜の膜厚を、最も好ましい15nm以上30nm以下の範囲にすることで、露光等による光の吸収量が適度にあり、膜厚方向と膜深さ方向の熱の均一性が保てるという利点があり、かつ、膜厚変化に対する光吸収量の変化率が小さいため、膜厚斑が生じた場合でも加熱斑になりにくく、均一なパターン形成が可能であるという利点がある。
以下、本実施の形態に係るエッチング液の各構成について詳細に説明する。本実施の形態に係るエッチング液に用いるアミノ酸は、具体的には、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン又はバリンである。本実施の形態に係るエッチング液においては、アミノ酸は、これらのうち少なくとも一種類以上を含むことが好ましい。これらの中でも、水への溶解性が高く濃度調整が容易であるという点で、グリシン、アラニン、メチオニン又はリジンのうち少なくとも一種類以上を含むことが好ましく、グリシン、アラニンのうち少なくとも一種類以上を含むことがより好ましく、グリシンを少なくとも含むことが最も好ましい。アミノ酸としてグリシンを選択することで好適なエッチングができるだけでなく、コストの面で好ましい。
本実施の形態に係るエッチング液に用いる他のキレート剤は、具体的には、例えば、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、α,ω−ジアミン酢酸、α,ω−ジアミンコハク酸、α,ω−ジアミンプロピオン酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、クエン酸、イソクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びバソクプロインジスルホン酸、並びにそれらのアンモニウム塩、アンモニア、ビピリジル、フェナントロリンである。本実施の形態に係るエッチング液においては、他のキレート剤は、これらのうち少なくとも一種類以上を含むことが好ましい。これらの中でも、シュウ酸、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アンモニア、ビピリジル、又は、フェナントロリン及びこれらの誘導体のうち少なくとも一種類以上を含むことがより好ましい。他のキレート剤と酸化銅(I)との錯形成速度が高く、かつ、他のキレート剤と酸化銅(II)の錯形成速度が低いことを考慮すると、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム又はコハク酸ナトリウムのうち少なくとも一種類以上を含むことがさらに好ましく、中でもシュウ酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム又はコハク酸アンモニウムのうち少なくとも一種類以上を含むことがいっそう好ましく、シュウ酸アンモニウムを少なくとも含むことが特に好ましい。他のキレート剤としてシュウ酸アンモニウムを選択することで好適なエッチングできるだけでなく、コストの面やナトリウム等の残留イオンフリーの面で好ましい。なお、他のキレート剤の塩は、最初から塩になっているものを添加してもよく、別々に混合してエッチング液内で生成させてもよい。例えば、シュウ酸アンモニウムを用いる場合、シュウ酸アンモニウムそのものを用いてもよく、シュウ酸とアンモニアを別々に混合して、液内でシュウ酸アンモニウムを生成させてもよい。
また、本実施の形態に係るエッチング液において、他のキレート剤には、カルボン酸とカルボン酸塩とが共存している状態も含まれる。アンモニウム塩を例にとると、アンモニウムが微量添加されている状態、例えばシュウ酸とシュウ酸アンモニウムとが共存している組成も他のキレート剤に含まれる。また、逆にカルボン酸アンモニウムと過剰のアンモニウム又はアンモニアとが共存している状態、例えばシュウ酸アンモニウムと他のアンモニウム塩とが共存している組成も他のキレート剤に含まれる。すなわち、キレート剤とその塩の当量関係は、本発明で開示されるキレート化反応を大きく阻害しない範囲で任意に決定することができる。例えば、シュウ酸1当量に対して、アンモニアを2当量添加してシュウ酸アンモニウムの生成に必要な量論量としてもよく、アンモニアを2当量未満添加してシュウ酸を過剰にしてもよく、逆にアンモニアを2当量より多く添加してアンモニアを過剰にしてもよい。
本実施の形態に係るエッチング液は水溶液であるが、水以外に水と相溶性のある溶媒、例えばアルコール、アセトニトリル、グリコール系といった有機溶媒を含んでいてもよい。水と、水と相溶性のある溶媒の比率は、上記アミノ酸及び他のキレート剤が溶解する範囲において任意に設定が可能である。
本実施の形態に係るエッチング液は、ペルオキソ基、ペルオキソ2硫酸基、チオール基を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。硫黄元素と銅元素は強く結合するため、エッチング後のレジストにも硫黄が残留し、その後の工程に悪影響を及ぼす可能性がある。以上のことから、所望のパターンが得られ難くなるため、本実施の形態に係るエッチング液には、ペルオキソ基、ペルオキソ2硫酸基、チオール基を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。
本実施の形態に係るエッチング液は、アゾール化合物、チアゾール化合物、グリコール類を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。エッチング液にこれらの化合物が含まれることで、エッチングの選択性の制御が低下する。以上のことから、所望のパターンが得られ難くなるため、本実施の形態に係るエッチング液には、アゾール化合物、チアゾール化合物、グリコール類を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。
本実施の形態に係るエッチング液においては、酸化銅とアミノ酸や他のキレート剤とのキレート化反応を大きく阻害しない範囲において、酸、アルカリ、酸化剤、還元剤、界面活性剤等の他の成分を適宜添加しても構わない。
本実施の形態に係るエッチング液は、還元剤として過酸化水素を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。エッチング液に過酸化水素が含まれることで、エッチングの選択性の制御が低下する。以上のことから、所望のパターンが得られ難くなるため、本実施の形態に係るエッチング液には、過酸化水素を含まない又は1wt%以下にすることが好ましい。
また、アミノ酸及び他のキレート剤の各々において、微細な部分を溶解させるために比較的分子サイズの小さいものを用いる一方で全体では溶解速度を高くするために比較的分子サイズの大きいものを用いる等、役割に応じて複数種類のアミノ酸及び/又は他のキレート剤を適宜選択して用いることも好ましい。
また、本実施の形態に係るエッチング液のpHは、用いるアミノ酸と他のキレート剤の種類によって概ね1以上11以下の値を取る。しかし、pHは3.50以上であることが望ましく、4.00以上であることが好ましく、4.50以上であることがより好ましく、6.00以上であることが特に好ましい。pHが高い方が、酸化銅の露光された部分のみをより選択的に溶解可能である。pHが3.5未満になるとアミノ酸や他のキレート剤との錯形成反応以外でのエッチングの進行が顕著になり、所望の選択性が得られない場合がある。一般的な酸やアルカリの添加でpHの調整を行うことが可能であるが、このような酸、アルカリとしては具体的に塩酸、硫酸、硝酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムを挙げることができ、この中でも塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化テトラメチルアンモニウムが特に好ましい。
次に、本実施の形態に係るエッチング方法について説明する。本実施の形態に係るエッチング方法は、まず、酸化銅(II)を主成分とする酸化銅含有層(熱反応型レジスト層)であって、熱によって酸化銅(II)を酸化銅(I)に熱分解を生ぜしめた酸化銅(I)含有部分を有するものを用意する。
例えば、このような酸化銅含有層は、次のようにして形成することができる。例えば、基材の表面に酸化銅(II)をターゲットとして用いたスパッタリング法で酸化銅(II)を主成分とする酸化銅含有層を成膜する。以下、酸化銅(II)を主成分とする酸化銅含有層を「エッチング層」という。
次に、エッチング層の表面の一部に例えばレーザー光を照射し、露光する。露光部分においてはレーザー光の熱により酸化銅(II)が熱分解して酸化銅(I)が生成する。この結果、エッチング層においては、酸化銅(II)を主成分とする未露光部分と、酸化銅(I)を主成分とする露光部分とが混在した状態となる。ここで、露光部分と未露光部分とが混在した酸化銅含有層を「露光後のエッチング層」という。
上述のような露光後のエッチング層に対して、本実施の形態に係るエッチング液を作用させる。本実施の形態に係るエッチング液は、比較的エッチング速度が遅く選択性の高いアミノ酸と、比較的エッチング速度が速く選択性の低い他のキレート剤を混合しているので、酸化銅(II)に対する酸化銅(I)の選択性を維持しつつ適度に下げることができる。したがって、エッチング液を用いて露光後のエッチング層を処理することで、露光部分を除去し、かつ、未露光部分のパターンの頂部を実質的に無くしたパターンを得ることができる。
アミノ酸のみを含有する、又は、アミノ酸と他のキレート剤を混合した状態でアミノ酸を他のキレート剤と同じか、もしくはより多く含有している、アミノ酸を主成分としたエッチング液を用いた場合、非常に高い選択性を得られる一方で、露光で変質した露光部分を忠実に溶解させるために、エッチング後の酸化銅含有層は、パターンの頂部が存在した形状になる。
一方、他のキレート剤とアミノ酸とを混合させて、他のキレート剤を主成分とした本実施の形態に係るエッチング液を用いた場合は、上述のアミノ酸を主成分とするエッチング液を用いた場合ほどではないが十分な選択性を維持しつつ適度に下げているので、露光部分を溶解させると共に、構造上他の部分に比べてオーバーエッチされやすい未露光部分のパターンの頂部も溶解させることができる。
このように未露光部分にパターンの頂部が実質的に無くなった形状を有するエッチング層を元型(モールド)とし、ナノインプリント法による硬化性樹脂組成物への転写を行った場合、元型と樹脂硬化層との密着性が過度に高くなるのを効果的に防ぐことができる。パターンの頂部が実質的にないことで密着性を低下させることができるからである。
図3は、本実施の形態に係るエッチング方法の各工程を示す断面模式図である。図3Aに示すように、基材11の表面にエッチング層12を形成する。次に、エッチング層12の一部にレーザー光を露光して、図3Bに示すように、露光部分12aと未露光部分12bとを形成し、露光後のエッチング層12を得る。露光部分12aは、上述のように、熱分解によって酸化銅(II)が酸化銅(I)に変化している。次に、本実施の形態に係るエッチング液を露光後のエッチング層12に作用させると、図3Cに示すように、露光部分12aの酸化銅(I)が選択的に溶解し、さらに未露光部分の酸化銅(II)がオーバーエッチングされ、未露光部分12bの角部が除去され、未露光部分12bが、パターンの頂部が実質的にないパターンの形状となる。
なお、当然のことであるが、例えば同じアミノ酸でもグリシンとアラニンではエッチング速度や選択性は異なる。また、二種以上のアミノ酸を混合した場合も単独で用いた場合とはエッチング速度は異なり、濃度によってもエッチング速度は異なる。エッチング液の設計のためにエッチング速度を定量的に求めるには例えば次の方法を用いることができる。ガラス上に膜厚20nmの酸化銅膜を成膜したものを複数用意する。次に、一定時間エッチング液を作用させる前後のそれぞれの膜内の銅含有量をX線光電子分光により求め、一定時間エッチング液を作用させたことによる溶解量を求める。エッチング時間と溶解量の関係をプロットし、その一次近似直線の傾きよりエッチング速度が求められる。一例として、図4に膜厚20nmの酸化銅(II)膜を8重量%グリシン水溶液及び8重量%シュウ酸アンモニウム水溶液でそれぞれ溶解させた場合のエッチング時間と溶解速度の関係を示す。図4より、8重量%シュウ酸アンモニウム水溶液のエッチング速度は0.025nm/secで、8重量%グリシン水溶液のエッチング速度の約4倍速いことがわかる。
上記のような観点から、アミノ酸の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上10重量%以下が好ましく、他のキレート剤の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上10重量%以下の範囲であり、かつ、アミノ酸の濃度よりも大きいことが好ましい。アミノ酸の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上5重量%以下が好ましく、他のキレート剤の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上5重量%以下の範囲であり、かつ、アミノ酸の濃度よりも大きいことがより好ましい。アミノ酸の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上1重量%以下が好ましく、他のキレート剤の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上1重量%以下の範囲であり、かつ、アミノ酸の濃度よりも大きいことがより好ましい。濃度が薄い範囲でも本実施の形態に係るエッチング液は、所望のパターンが得られるため経済的に好適である。なお、エッチング時間を短縮し経済性の観点から、アミノ酸の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上が好ましく、他のキレート剤の濃度は、全エッチング液に対して0.01重量%以上が好ましい。一方、アミノ酸や他のキレート剤が析出し、析出物が汚染源となり均一なパターンを得難くなることを防止するため、アミノ酸の濃度は、全エッチング液に対して10重量%以下が好ましく、他のキレート剤の濃度は、全エッチング液に対して10重量%以下の範囲であることが好ましい。
エッチング液を露光後のエッチング層に作用させる方法は特に限定されず、エッチング液に露光後のエッチング層を浸漬させてもよく、エッチング液を露光後のエッチング層に噴射してもよい。エッチング液に露光後のエッチング層を浸漬させる際に液を循環させるか、あるいは露光後のエッチング層を動かすことにより、単位時間当たりに露光後のエッチング層に当たる液の量を増加させると、エッチング速度を上げることができる。また、エッチング液を露光後のエッチング層に噴射する際に噴射圧を上げることで、エッチング速度を上げることができる。エッチング液をレジストに噴射させる場合は、ノズルを移動させる方法、露光後のエッチング層を回転させる方法等を単独で用いることもできるが、併用するとエッチングが均一に進行するため好ましい。噴射に用いるノズルの種類は任意のものが使用可能で、例えば、ラインスリット、フルコーンノズル、ホローコーンノズル、フラットノズル、均一フラットノズル、及び、ソリッドノズルを挙げることができ、露光後のエッチング層や基材の形状に合わせて選択できる。また、一流体ノズルでも二流体ノズルでも構わない。
エッチング液を露光後のエッチング層に作用させる際の温度を制御することでエッチング速度を変化させることが可能である。温度はエッチング液が凍結、沸騰、極端に濃度が変化する速度での揮発、あるいはエッチング液中の成分や露光後のエッチング層の分解を引き起こす範囲を避ければ任意に設定することが可能である。上記の理由から、温度範囲は0℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がさらに好ましく、20℃以上40℃以下が最も好ましい。
エッチング液を露光後のエッチング層に作用させる際に、不溶性の微粉末等の不純物がエッチング液中に存在すると、特に微細なパターンをエッチングする際にムラの原因となる恐れがあるので、エッチング液を事前にろ過しておくことが好ましい。ろ過に用いるフィルターの材質はエッチング液と反応しないものなら任意に選択でき、例えば、PFAやPTFEを挙げることができる。フィルターの目の粗さはパターンの微細度合いに応じて選択すればよいが、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。また、溶出した成分の析出、再付着を防ぐためには、浸漬より噴射が好ましく、さらに、エッチング液を露光後のエッチング層に噴射する場合はエッチング液を使い捨てにすることが望ましい。エッチング液を再利用する場合は、溶出成分を除去することが好ましい。
本実施の形態に係るエッチング液を作用させる露光後のエッチング層を成膜する基材は、材質及び形状について特に制限を受けない。しかし、表面平滑性及び加工性に優れる材質であった方が好ましく、そのような材質としては、ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、チタニウム、銅、銀、金等を挙げることができ、この中でもガラス、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、チタニウム又は銅が特に好ましく、ガラス、シリコン又は二酸化ケイ素が特に好ましい。また、形状としては平板のような二次元状であっても構わないし、ロールのような三次元状であっても構わない。ガラス、シリコン、二酸化ケイ素等を基材に用いる場合は、エッチング液にフッ化物発生源が含有されると基材が侵食される。したがって、基材の選択幅を広く保つためにエッチング液に実質的にフッ化物発生源を含まないことが好ましい。
次に、本実施の形態に係るエッチング方法についてさらに詳細に説明する。本実施の形態に係るエッチング方法は、銅の酸化物を含有する酸化銅含有層の所定の領域の銅の酸化物を熱反応させる熱反応工程と、酸化銅含有層に上記エッチング液を供給し、熱反応させた銅の酸化物を除去するエッチング工程とを含む。
熱反応工程では、酸化銅含有層の所定の領域に対して所定の温度以上に熱を加えることにより、酸化銅含有層の所定の領域の銅の酸化物を熱反応させる。また、熱反応工程では、酸化銅含有層にレーザー光を照射して酸化銅含有層の熱反応を行うことが好ましい。レーザー光を酸化銅含有層の所定の領域に照射することにより、酸化銅含有層の所定の領域内の温度がガウス分布(図2参照)となるため、所定の温度以上になった部分のみ反応が進行してレーザー光のスポット径より小さな範囲を熱反応させることが可能となる。
エッチング工程では、酸化銅含有層に上記エッチング液を供給し、酸化銅含有層の所定の領域の、熱反応させた銅の酸化物を溶解除去する。熱反応工程後の酸化銅含有層には、熱反応していない銅の酸化物と、熱反応により変化した銅の酸化物とが存在する。エッチング液中のアミノ酸や他のキレート剤が熱反応により酸化数が減少した銅の酸化物と選択的にキレート化反応するので、酸化銅含有層から熱反応された酸化銅領域の銅の酸化物を選択的に溶解除去することができる。
本実施の形態に係るエッチング方法においては、エッチング層を洗浄する工程と、エッチング後の基材及びエッチング層を洗浄する工程と、をさらに含むことが好ましい。
(酸化銅の酸化数)
図5は、酸化銅(II)の熱重量測定結果を示すグラフである。酸化銅(II)の粉末に対して熱重量測定を行うと、1050℃において、酸化銅(II)の還元による吸熱が確認され(図5のDTA参照)、それに伴う酸素の放出に由来する重量の減少が観測される(図5のTG参照)。重量の減少割合から見積って、酸化銅の価数は、2(加熱前)から、ほぼ1(加熱後)まで減少していることが分かる。この結果より、加熱によって酸化銅(II)が還元されて酸化数が減少し、酸化銅(I)を主成分とする含む銅の酸化物が生成することが分かる。なお、図5では価数1(酸化銅(I),CuO0.5)に減少後、再酸化が生じて価数1.5(CuO0.65)となっているように見えるが、後述するX線回折の結果では酸化銅(II)はほとんど観測されておらず、実質的には価数1の状態になっていると推定できる。
図6は、酸化銅(I)及び酸化銅(II)のX線回折の測定結果を示すグラフである。図6に示すように、酸化銅(II)の粉末の加熱前後のX線回折を測定すると、室温では酸化銅(II)に帰属されるピークが観測されるのに対し、1000℃に加熱すると酸化銅(II)に帰属されるピークは消失し、酸化銅(I)に帰属されるピークのみが観測される。この結果より、加熱によって酸化銅(II)の価数が減少して酸化銅(I)に変化することが分かる。
(酸化銅の価数の差による溶解速度の差)
図7及び図8は、酸化銅(II)の膜と、当該膜を露光により加熱して酸化銅(I)に変化させた後の膜とを、それぞれエッチング液を用いてエッチングした場合の、エッチング時間と溶解速度の関係を示すグラフである。図7は、エッチング液として3重量%のコハク酸アンモニウムを、図8は3重量%のアラニン水溶液をそれぞれ作用させた場合の溶解速度を示している。また、いずれにおいても酸化銅(II)の膜の膜厚は10nmである。図7及び図8のいずれの場合も、加熱変化後の酸化銅(I)は、変化前の酸化銅(II)に比べて約10倍の速度で溶解することがわかる。すなわち、このデータにより、他のキレート剤又はアミノ酸の水溶液を用いることで、酸化銅(II)及び酸化銅(I)が混在した膜において、酸化銅(I)が選択的に溶解することがわかる。
(ドライエッチング処理)
本発明のエッチング液を用いてエッチングされた微細パターンをマスクとして、ドライエッチング処理により、パターンのアスペクト比(溝の深さをパターン幅で除した値)を制御することができる。
すなわち、酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト膜の下に形成したい溝深さ分の厚みの膜(以下、ドライエッチング層ともいう。)を予め成膜しておき、露光及びエッチングしパターン形状を付与された熱反応型レジストをマスクとして、下層の膜に深い溝を形成する手法である。例えば、ドライエッチング層にSiO2を使用するとフロン系ガスでドライエッチングすることが可能である。ドライエッチングにより加工する場合、マスクとなるレジスト材料には微細パターン加工ができること以外にフロン系ガスのドライエッチングに耐性があることが求められるが、酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト材料から形成されたマスクは、フロン系ガスのドライエッチング耐性が高いことが本願発明者らによって開示されている。加えて、本実施の形態に係るエッチング液を用いてエッチングされる酸化銅(II)を主成分とする熱反応型レジスト膜は、酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解可能であるため、熱反応型レジストはパターン形状を付与され、ドライエッチングのマスクとして機能する部分が十分に残存し好適である。ここで、酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解していることを表す指標として、元の膜厚に対するエッチング後の溝深さの割合をRdtと規定すると、Rdtは0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.77以上がさらに好ましく、0.80以上がさらにより好ましく、0.85以上が最も好ましい。Rdtが大きい値である、すなわちレジスト残膜が厚いほど、ドライエッチング中にマスクが多少ドライエッチングされても、元のパターン形状を維持することができ、様々なドライエッチング条件下においても、元のパターン形状を忠実に再現することができ好適である。
ドライエッチング処理に用いるフロン系ガスは、特に制限はないが、例えば、CF4、CHF3、CH2F2、C2F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、CCl2F2、CIF3等のフルオロカーボンが挙げられ、単独で用いても、複数のガスを混合して用いても構わない。さらにこれらのガスにO2、H2、Ar、N2、CO等を混合したガスであっても良い。さらにHBr、NF3、SF6、CF3Br、HCl、HI、BBr3、BCl3、Cl2、SiCl4のガスや、これらにAr、O2、H2、N2、CO等のガスを混合したガスもフロン系ガスの範囲内とする。
ドライエッチング処理する工程に用いられる装置は、真空中でフロン系ガスが導入でき、プラズマが形成でき、かつ、ドライエッチング処理ができるものであれば特に制限はないが、市販のドライエッチング装置、RIE装置、ICP装置等を用いることができる。ドライエッチング処理を行うガス種、時間、電力等は、レジスト材料の種類、ドライエッチング層の種類、ドライエッチング層の厚み、ドライエッチング層のドライエッチングレート等によって適宜決定しうる。なお、基材にシリコン、二酸化ケイ素、ガラス、石英等を用いた場合は、基材が、ドライエッチング層を兼ねることができるために、ドライエッチング層を必ずしも必要としない。
本実施の形態に係るエッチング液は、前述の通り前記エッチング液に用いる水の抵抗値が1MΩ・cm以上であり、鉄イオンと銅イオンがそれぞれ1000ppm以下であることが好ましく、0.5μm超のパーティクルが100個/ml未満であることが好ましい。該エッチング液で処理することで、微細パターンはパターン欠損がなく均一なパターンを得ることができるため、ドライエッチングにより均一なパターンを得ることができる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明するが、本発明はこの実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
50mmφのガラス平板基板上に、スパッタリング法を用いて、下記の条件にて酸化銅膜を成膜した。なお、成膜後の酸化銅膜の価数を、XPS測定から計算したところ、1.90を超えており、実質的に酸化銅の価数はIIと言える。
ターゲット:酸化銅(II)
電力(W):RF100
ガス種類:アルゴンと酸素の混合ガス(比率95:5)
圧力(Pa):0.1
膜厚(nm):20
この酸化銅膜を以下の条件にて露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1〜10mW
送りピッチ:200〜800nm
露光中にレーザーの強度を変調させることで、さまざまな形状やパターンを作製できるが、実験ではエッチング後の界面を評価しやすくするために、パターンとして連続の溝形状を使用した。形成する形状は目的とする用途によっては孤立した円形、楕円形状等でも構わず、本発明は露光形状によって何ら制限を受けるものではない。
次に、上記条件で露光した酸化銅サンプルを、下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.6g
アラニン 1.2g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.2
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において2分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を測定した。その結果、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測された。酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解していることを表す指標として、元の膜厚に対するエッチング後の溝深さの割合をRdtと規定すると、本実施例のRdtは0.85であった。以上より、実施例1におけるエッチング液の、エッチング選択性が示された。また、断面形状は頂部が曲面状になった矩形型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面SEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例2)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 4.0g
グリシン 1.2g
純水 400g(18MΩ・cm)
pH 6.1
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、0ppm(検出限界以下)、鉄イオン濃度は0ppm(検出限界以下)、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において2分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を測定した。その結果、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測された。酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解していることを表す指標として、元の膜厚に対するエッチング後の溝深さの割合をRdtと規定すると、本実施例のRdtは0.80であった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面SEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例3)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.6g
アラニン 1.2g
純水 400g(12MΩ・cm)
pH 6.2
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は800ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において2分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を測定した。その結果、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測された。酸化銅の露光された部分のみが選択的に溶解していることを表す指標として、元の膜厚に対するエッチング後の溝深さの割合をRdtと規定すると、本実施例のRdtは0.84であった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面SEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例4)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
マロン酸ナトリウム 0.1g
メチオニン 0.05g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.4
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において8分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を測定した。その結果、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.85だった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例5)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
クエン酸ナトリウム 3.0g
アスパラギン酸 0.03g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 5.9
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において3分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ14.5nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.73だった。断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面SEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例6)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 4.0g
グリシン 1.2g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.1
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において4分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ16nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.80だった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形形状になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
次に得られた熱反応型レジスト層をマスクとしてドライエッチング処理による石英ガラス平板基板のドライエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間5分の条件で行った。
これらパターンが付与された基板から熱反応型レジスト層のみを剥離したものをドライエッチング後のモールドとして用いて、ナノインプリント法を用いて、表面形状をフィルムに転写させ、SEMにて形状を観察した。その結果、溝深さ300nmの周期的溝形状が観測された。これはRdtが0.80と高いため熱反応型レジスト層がマスクとして好適に使用できたためである。続いて得られたSEM像から、無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例7)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.0g
シュウ酸アンモニウム 1.0g
アラニン 1.2g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において3分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.85だった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形形状になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例8)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.0g
シュウ酸アンモニウム 1.0g
アラニン 1.2g
純水 400g(12MΩ・cm)
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、800ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において3分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ17nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.84だった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形形状になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例9)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
マロン酸ナトリウム 0.1g
メチオニン 0.05g
純水 400g(16MΩ・cm)
塩酸 pHが4.5になるまで加える
pH 4.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において2分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ15.5nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.77だった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形形状になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例10)
80mmφ、長さ600mmの石英ガラスロール基材上に、酸化銅を主成分と熱反応型レジスト材料を成膜した。なお、成膜後の酸化銅膜の価数を、XPS測定から計算したところ、1.90を超えており、実質的に酸化銅の価数はIIと言える。
ターゲット:酸化銅(II)
電力(W):RF1000
ガス種類:アルゴンと酸素の混合ガス(比率95:5)
圧力(Pa):0.1
膜厚(nm):25
以上のように成膜した熱反応型レジスト材料を以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1〜25mW
送りピッチ:200〜800nm
回転速度:210〜1670rpm
次に、上記条件で露光した酸化銅サンプルを、下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 10.5g
グリシン 10.3g
純水 4000g(16MΩ・cm)
pH 6.4
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において3分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。これら得られたサンプルをUV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写させ、SEMにて形状を観察した。その結果、溝深さ21nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.86であった。以上より、実施例7におけるエッチング液の、エッチング選択性が示された。また、断面形状は頂部が曲面状の矩形形状になっており、頂部を有しない構造であった。
次に得られた熱反応型レジスト層をマスクとしてドライエッチング処理による石英ガラスロールのドライエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧を3Pa、処理電力を1000W、処理時間5分の条件で行った。
これらパターンが付与された基材から熱反応型レジスト層のみを剥離したものをモールドとして用いて、ナノインプリント法を用いて、表面形状をフィルムに転写させ、SEMにて形状を観察した。その結果、溝深さ300nmの周期的溝形状が観測された。これはRdtが0.86と高いため熱反応型レジスト層がマスクとして好適に使用できたためである。続いて得られたSEM像から、無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例11)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g(16MΩ・cm)
塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.75だった。断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例12)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g(12MΩ・cm)
塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、5ppm、鉄イオン濃度は800ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.74だった。断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例13)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g(12MΩ・cm)
塩酸 pHが3.5になるまで加える
pH 3.5
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、800ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ15nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.74だった。断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(実施例14)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 20.0g
グリシン 18.0g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.3
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは、23℃において5分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ16nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.85だった。断面形状は頂部が曲面状になった矩形形状になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損は観測されなかった。
(比較例1)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 0.6g
アラニン 1.2g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.4
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ19nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.95だった。断面形状は矩形形状になっており、頂部を有した構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損が2か所観測された。
(比較例2)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を、特許文献8に開示された、下記組成のエッチング液にてエッチングした。
グリシン4.5g
フッ化アンモニウム0.2g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸0.3g
ホスホン酸0.02g
プロピレングリコールモノメチルエーテル50g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 2.6
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において2分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。その結果、酸化銅膜は全て消失し、周期的溝形状は得られなかった。比較例2で用いたエッチング液の組成は、銅と酸化銅の混合物より酸化銅を選択的に溶解させる場合に有効な組成であることが特許文献8に開示されている。以上より、本実施の形態に係る価数の異なる酸化銅を含有する酸化銅含有レジスト層から特定の価数の酸化銅を選択的に除去する目的においては、銅と酸化銅の混合物より酸化銅を選択的に溶解させるエッチング液(比較例2のエッチング液)は適さないと考えられる。
(比較例3)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を、特許文献8に開示された、下記組成のエッチング液にてエッチングした。
シュウ酸4.5g
フッ化アンモニウム0.2g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸0.3g
ホスホン酸0.02g
プロピレングリコールモノメチルエーテル87.5g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 2.7
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において2分間、エッチング液に上記酸化銅を浸漬させることで行った。その結果、酸化銅膜は全て消失し、周期的溝形状は得られなかった。比較例3で用いたエッチング液の組成は、銅と酸化銅の混合物より酸化銅を選択的に溶解させる場合に有効な組成であることが特許文献8に開示されている。以上より、本実施の形態に係る価数の異なる酸化銅を含有する酸化銅含有レジスト層から特定の価数の酸化銅を選択的に除去する目的においては、銅と酸化銅の混合物より酸化銅を選択的に溶解させるエッチング液(比較例3のエッチング液)は適さないと考えられる。
(比較例4)
実施例11と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g(0.5MΩ・cm)
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、5ppm、鉄イオン濃度は1850ppmであった。パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ10nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.50だった。溝深さが浅い原因として、エッチング液中に鉄イオンが多量に存在したためエッチングが効率的に進行せず、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したためだと考えられる。また、断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損が10か所観測された。これは、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したため、元型と転写樹脂との密着性が高くなったためだと考えられる。
(比較例5)
実施例11と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g(0.4MΩ・cm)
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2300ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ11nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.55だった。溝深さが浅い原因として、エッチング液中に銅イオンが多量に存在したためエッチングが効率的に進行せず、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したためだと考えられる。また、断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損が7か所観測された。これは、凹部底部にレジストの溶け残り(残渣)が存在したため、元型と転写樹脂との密着性が高くなったためだと考えられる。
(比較例6)
実施例11と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
シュウ酸アンモニウム 0.1g
グリシン 0.02g
純水 400g(0.5MΩ・cm)
pH 6.0
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppmであった。パーティクル数は0.5μm超が170個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが780個/mlであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ11〜15nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.55〜0.75だった。溝深さが均一でない原因として、エッチング液中に含まれるパーティクルがエッチングの進行を妨げる働きをしたり、エッチング後にパターン上に密着して所望のパターン形状が得られなかったことによると考えられる。加えてパターン表面にパーティクルが複数付着していて均一なパターンを得ることができなかった。また、断面形状は放物線型になっており、頂部を有しない構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損が12か所観測された。これは、Rdtが均一でないため、元型と転写樹脂との密着性の強い所と弱い所が発生したためだと考えられる。加えて、パターン欠損が2か所観測された。これはパーティクルの付着が原因と考えられる。
(比較例7)
実施例1と同様の条件で成膜、露光した酸化銅膜を下記条件にて調製したエッチング液によってエッチングした。
コハク酸アンモニウム 1.2g
アラニン 1.2g
純水 400g(16MΩ・cm)
pH 6.3
なお、エッチング液の銅イオン濃度は、2ppm、鉄イオン濃度は3ppm、パーティクル数は0.5μm超が0個/ml、0.1μm以上0.5μm以下のパーティクルが4個/mlであった。
エッチングは23℃において4分間、このエッチング液に上記酸化銅膜を浸漬させることで行った。次に、エッチングした酸化銅膜の断面のSEM像を測定した。その結果、溝深さ18nmの周期的溝形状が観測された。Rdtを算出すると、0.90だった。断面形状は矩形形状になっており、頂部を有した構造であった。
次に、エッチングした酸化銅膜を元型(モールド)としたナノインプリント法を用いて酸化銅膜のパターンを転写樹脂に転写し、転写されたパターンの表面のSEM像を観測した。無作為に抽出した100本の溝形状を観測した結果、転写不良によるパターン欠損が1か所観測された。
実施例1〜実施例14及び比較例1〜比較例7の結果を表1に示す。
以上から、実施例1〜実施例14では、酸化銅膜の露光部分において選択的にエッチングが進行し、かつ、パターンが頂部を有しない構造となるため、ナノインプリント時にパターン欠損の生じない状態であることがわかる。また、実施例2、実施例6、及び実施例10から、Rdtが高いと、熱反応型レジスト層がドライエッチングの際のマスクとして好適に使用できることがわかった。実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例6、実施例7、実施例8、及び、実施例14においても、同様の結果が得られる。一方、比較例1及び比較例7では、特に高いエッチング選択性を示したものの、パターンが頂部を有する構造となるため、ナノインプリントの際に密着性が高くなり一部に欠損が生じうる状態であることがわかる。さらに、比較例2及び比較例3では、そもそも周期的溝形状が得られなかったことから、銅のエッチング液で酸化銅膜の露光部分を選択的に溶解させるのは極めて困難であることがわかる。また、比較例4から比較例6では、水の純度が悪いため、所望のエッチングができない上に、残渣による凹凸形状からナノインプリントの際に密着性が高くなったため一部に欠損が生じうる状態であることがわかる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。