JP2009085979A - 表面処理液、表面処理方法および微細加工体の製造方法 - Google Patents

表面処理液、表面処理方法および微細加工体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ごく簡単な処理により無機レジスト感度を向上することができる表面処理液、表面処理方法および微細加工体の製造方法を提供する。
【解決手段】表面処理液は、有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。有機アンモニウム塩、無機アンモニウム塩は、アニオン部分として珪酸イオン(SiO3 2-)、炭酸イオン(CO3 2-)、リン酸イオン(PO4 2-)から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。
【選択図】なし

Description

この発明は、無機レジストの粗面化に用いられる表面処理液、それを用いた表面処理方法および微細加工体の製造方法に関する。詳しくは、遷移金属酸化物の酸化・還元反応または相転移を利用する感熱型無機レジストの粗面化処理に用いる表面処理液に関する。
高解像度で、制御された角度の形状パターンを実現する手段として、無機レジストを利用する方法が提案されている。これらは形状パターンを描画する活性エネルギ源として電子線やイオンビームを使うもの(例えば特許文献1、特許文献2参照)、極紫外光を使うもの(例えば特許文献3参照)、レーザ光を使うもの(例えば非特許文献1参照)などが報告されている。
描画エネルギとしてレーザ光を使うもののうち、無機レジスト材料として金属酸化物を用いる方法が提案されている(例えば特許文献4、特許文献5参照)。この無機レジストは感熱反応によって潜像が形成されるため、405nm程度の可視レーザ光による露光によってもスポット径よりも小さいパターンの露光が可能である。このため、Blu-ray Disc(登録商標)あるいはそれ以上の高記録密度化に対応した光ディスクのマスタリング技術に有用な技術として注目されている。
通常、感熱反応を利用する無機レジストの感度は、無機レジスト材料である金属酸化物の酸素含有量によって規定される。ポジ型レジストの場合、含まれる酸素量が多い無機レジスト材料ほど高感度化し、弱い照射エネルギでも潜像を形成できるようになる。近年では、無機レジストを種々の技術分野に適用すべく、上記酸素含有量を規定する技術以外にも、ごく簡単な処理により無機レジストの感度を向上できる技術が望まれるようになっている。
特開平6−132188号公報 特開平8−69960号公報 特開2004−172272号公報 特開2003−315988号公報 特開2004−152465号公報 Japanese Journal of Applied Physics, 44, 3574-3577, 2005
したがって、この発明の目的は、ごく簡単な処理により無機レジスト感度を向上することができる表面処理液、表面処理方法および微細加工体の製造方法を提供することにある。
この発明は、従来技術が有する上述の問題を解決すべく、鋭意検討した結果として案出されたものである。以下にその概要を説明する。
本発明者らは、無機レジスト感度を向上すべく鋭意検討を行った結果、無機レジスト表面を粗面化して単位照射面積当たりの光吸収率を増大させることにより光の利用効率を高め、無機レジストの見かけ上の感度を向上させることを見出すに至った。
本発明者らの知見によれば、表面の粗面化方法としては、機械的処理、化学的処理、電気化学的処理などがある。機械的処理はボール、ブラシ、ブラスト、バフなどで表面処理を行う方法である。化学的処理は過マンガン酸カリウムや水酸化ナトリウムの混合水溶液、無水クロム酸と硫酸の混酸などで表面処理を行う方法である。電気化学的処理は塩酸、硝酸などを配合した直流または交流の電解液中で電解処理を行う方法である。これらの処理は密着性向上などの目的で用いられる粗面化方法であり、表面の凹凸は0.01μm〜数十μmの様々な高さが混在した形態になる。
また、次世代DVDなどの光ディスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、電子回路など、微細加工体の製造では多くの場合、1μm以下のパターン形成が行われる。したがって、無機レジストにレーザ光を照射してパターンの潜像を形成するにあたり、前処理として無機レジスト層表面を粗面化することでレーザ光吸収率を高める場合、表面の凹凸は数nm程度で均一化する必要がある。また、機械的処理や電気化学的処理では、表面処理に手間がかかるため、生産性の低下を招くという問題があり、より簡単な表面処理により無機レジスト表面を粗面化することが望まれる。
そこで、本発明者らは、ごく簡単な化学的処理のみで、無機レジスト層の表面を算術平均粗さRa≦1nmで均一に粗面化することができる表面処理方法について検討した。その結果、有機アンモニウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む表面処理液により、無機レジスト表面を粗面化することを見出すに至った。
本発明は以上の検討に基づいて案出されたものである。
この発明の第1の発明は、
有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む表面処理液である。
この発明の第2の発明は、
基材上に設けられた無機レジスト層を表面処理液により粗面化する工程と、
粗面化された無機レジスト層を露光する工程と、
露光された無機レジスト層を現像液により現像する工程と
を備え、
表面処理液は、有機アンモニウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする微細加工体の製造方法である。
この発明の第3の発明は、
有機アンモニウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む表面処理液により、無機レジスト層を表面処理する表面処理方法である。
この発明では、有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を溶解した表面処理液は、塩のカチオン部分の種類やアルカリ性の強度に応じた、無機レジストの溶解作用を示す性質に着目した。この性質を利用し、無機レジストの膜減りを抑えながら、表面を粗面化する。すなわち、表面処理液に無機レジスト原盤を浸漬する、表面処理液を無機レジスト表面にかけ流すなど、ごく簡単な化学的処理のみで、無機レジスト層表面に数nm程度の均一な凹凸を形成することができる。
以上説明したように、無機レジストの膜減りを抑えながら、無機レジスト表面をナノ・メートルのレベルで粗面化することができので、無機レジストのレーザ吸収率を増大させ、無機レジストの見かけ上の露光感度を向上できる。したがって、低パワーでの無機レジストの露光が可能になるほか、高テーパ角のパターン形成も可能になる。
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
この発明の実施形態について以下の順序で説明する。
(1)無機レジスト
(2)表面処理液
(3)無機レジストと表面処理液の反応
(4)現像液とその調製方法
(5)無機レジストの反応機構
(6)無機レジストと現像液の反応
(7)レジスト原盤の製造方法
(1)無機レジスト
まず、この発明の実施形態において用いる無機レジストについて説明する。
フォトリソグラフィにおいて、無機レジストは有機レジストと較べて高い熱安定性を有し、また、著しく高いγ特性が容易に得られることが知られている。例えば、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリグリシジルメタクリレート・クロロスチレン共重合体(GMC)、ポリ(ブテン−1−スルホン)(PBS)、フェニルホルムアルデヒドノボラックなどの有機レジストは、紫外線を用いた場合では勿論のこと、細く収束させた電子線やイオンビームなどを用いた場合ですら現像後は、通常、3以下のγ特性しか得られない。なお、γ=1/(logδ1−logδ0)(δ0:レジストを感光させるのに必要な最小露光量、δ1:レジストを完全に感光させるのに必要な露光量)である。これは、有機レジストでは分子量が大きいため露光部と未露光部の境界が不明瞭になるためである。これに対し、カルコゲナイド・ガラスや金属酸化物などで作られる無機レジストでは、4を超えるγ特性、ときには8を超えるようなγ特性を得ることができる。このため、無機レジストでは有機レジストに較べて急峻なテーパ角が得られるようになる。
金属酸化物としては、基材の上に目的とする形状を製造するプロセスに応じて任意の素材を用いることができる。具体例を挙げると、一酸化チタン(TiO)、二酸化チタン(TiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化タングステン(WO2)、一酸化タングステン(WO)、二酸化モリブデン(MoO2)、三酸化モリブデン(MoO3)、一酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V25)、四酸化バナジウム(V24)、三酸化バナジウム(V23)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化セリウム(CeO2)、酸化銅(CuO)、五酸化ニオブ(Nb25)、酸化スチビウム(酸化アンチモン:Sb23)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、一酸化ケイ素(SiO)、酸化ガドリニウム(Gd23)、酸化タンタル(Ta25)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ニッケル(NiO)、酸化サマリウム(Sm23)、酸化鉄(Fe23)、酸化スズ(SnO2)、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化クロム(Cr23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)、硫酸バリウム(BaSO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、ケイ酸カルシウム(CaSi25)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸コバルト(CoCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸ニッケル(Ni2CO3)、炭酸ビスマス((BiO)2CO3)、リン酸アルミニウム(AlPO4)、リン酸水素バリウム(BaHPO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)、クエン酸亜鉛(Zn3(C6572)、ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B23)、ホウ酸バリウム(BaB47)、酸化ウラン(U38)などを例として挙げることができる。
これらの中で、レーザ、電子線、イオンビーム、水素プラズマ、紫外線、可視光線、赤外線などの活性エネルギ線によって、現像液に対する溶解度差(選択比)を生じる無機レジストとしては、金属酸化物のうち金属元素としてタングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、タリウム(Tl)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、ニオブ(Nb)、ケイ素(Si)、ウラン(U)、テルル(Te)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)を含むものなどが知られている。これらの内でも金属元素としてタングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タンタル(Tl)、鉄(Fe)を用いることができ、特に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)を含む金属酸化物が無機レジスト層として好適に用いられる。
無機レジスト層の成膜方法としては、乾式法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)を用いることができる。また、湿式法としては、バーコート、スピンコート、スクリーン印刷などの塗布法のほか、LB(Langmuir Blodgett)法、化学析出法、陽極酸化法、電解析出法などを用いることができる。
なお、金属元素に対する酸素(O)の組成比は化学量論的なものである必要はなく、その金属元素がとり得る最大酸化数までの範囲内で、任意の値をとることができる。例えば、酸化タングステンの場合、WOxは、0<x≦3の範囲内にある任意のxの値をとることができる。
無機レジストとして使用する金属酸化物を構成する酸素量を調整する方法は、各成膜方法に応じて適宜、選択することができる。例えば、成膜をスパッタリング法で行う場合、酸素を含まない金属のターゲットを、酸素を含んだガスにより反応性スパッタして成膜する方法や、酸素含有量を制御した金属酸化物からなるターゲットを不活性ガスでスパッタして成膜する方法などを採用することができる。
(2)表面処理液
表面処理液は、表面処理剤と溶媒とを含んでいる。溶媒としては、例えば、水、アルカリ性水溶液を用いることができる。
表面処理剤は、弱酸と強塩基からなる塩、具体的には、有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。これらの塩を含むことにより、無機レジスト表面の均一かつ微細な粗面化を実現できるようになる。
また、表面処理剤は、膜減りを抑えながら表面を荒らす観点からすると、有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩を用いることが好ましい。塩のカチオン部分の種類に応じて無機レジストの溶解作用が異なり、カチオン部分として有機アンモニウムまたは無機アンモニウムを含むアンモニウム塩は、カチオン部分としてアルカリ金属を含むアルカリ金属塩に比して無機レジストの溶解作用が弱いため、膜減りを抑えることができる。
有機アンモニウム水酸化物の例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリンなどを挙げることができる。無機アンモニウム水酸化物の例としては、アンモニア水を挙げることができる。これらは単独、または2つ以上を混合して用いることができる。
有機アンモニウム塩、無機アンモニウム塩は、アニオン部分として珪酸イオン(SiO3 2-)、炭酸イオン(CO3 2-)、リン酸イオン(PO4 3-)から選ばれる少なくとも1種を含んでいることが好ましい。これらのイオンを含むことにより、有機アンモニウム水酸化物や無機アンモニウム水酸化物の水溶液を、そのまま表面処理剤として使用した場合よりもマイルドな条件、すなわち低いpHで表面処理できるため、無機レジストの膜減りを抑えることができる。その一方、粗面化は充分な効果をあげることができる。
アニオン部分として珪酸イオン(SiO3 2-)を含む有機アンモニウム塩としては、例えば、メタ珪酸テトラメチルアンモニウム(((CH34N)2SiO3)、メタ珪酸テトラエチルアンモニウム(((C254N)2SiO3)、メタ珪酸テトラプロピルアンモニウム(((C374N)2SiO3)、メタ珪酸テトラブチルアンモニウム(((C494N)2SiO3)などが挙げられる。アニオン部分として珪酸イオン(SiO3 2-)を含む無機アンモニウム塩としては、例えば、珪酸アンモニウム((NH42SiO3)などが挙げられる。
アニオン部分として炭酸イオン(CO3 2-)を含む有機アンモニウム塩としては、例えば、炭酸テトラメチルアンモニウム(((CH34N)2CO3)、炭酸水素テトラメチルアンモニウム(((CH34N)HCO3)、炭酸テトラエチルアンモニウム(((C254N)2CO3)、炭酸水素テトラエチルアンモニウム(((C254N)HCO3)、炭酸テトラプロピルアンモニ(((C374N)2CO3)、炭酸水素テトラプロピルアンモニウム(((C374N)HCO3)などが挙げられる。アニオン部分として炭酸イオン(CO3 2-)を含む無機アンモニウム塩としては、例えば、炭酸アンモニウム((NH42CO3)、炭酸水素アンモニウム((NH4)HCO3)などが挙げられる。
アニオン部分としてリン酸イオン(PO4 3-)を含む有機アンモニウム塩としては、例えば、リン酸二水素テトラメチルアンモニウム((CH34N・H2PO4)、リン酸二水素テトラエチルアンモニウム((C254N・H2PO4)、リン酸二水素テトラプロピルアンモニウム((C374N・H2PO4)、リン酸二水素テトラブチルアンモニウム((C494N・H2PO4)などが挙げられる。アニオン部分としてリン酸イオン(PO4 3-)を含む無機アンモニウム塩としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH42HPO4)などが挙げられる。
表面処理液は、溶媒である水に表面処理剤を配合して調製する。表面処理液中の表面処理剤の濃度は特に制限されないが、おおむね10[mM]以上であることが好ましい。また、表面処理剤の中和による失活を防ぐ観点から、表面処理液に表面処理剤のほかに水酸化物イオン供給源を加えることもできる。表面処理液のpHを、表面処理剤が中和するpH以上に保つことで、表面処理液の失活を遅らせることができる。水酸化物イオンの供給源としては、例えば、有機アンモニウム水酸化物、水酸化アンモニウムから選ばれる少なくとも1種を用いることができ、膜減りを抑えながら表面を荒らす観点からすると、有機アンモニウム水酸化物、水酸化アンモニウムを用いることが好ましい。
(3)無機レジストと表面処理液との反応
次に、推察される無機レジスト材料と表面処理液の反応について説明する。表面処理液の主要成分である表面処理剤を炭酸テトラメチルアンモニウム((TMA)2CO3)とした場合を例に挙げる(TMA:(CH34+)。
無機レジストの主な溶解成分を三酸化タングステン(WO3)とすると、炭酸テトラメチルアンモニウムとは次のような反応で溶解を起こすと考えられる。
(反応式1)WO3+(TMA)2CO3→(TMA)2WO4+CO2
(反応式2)CO2+(TMA)2CO3+H2O→2(TMA)HCO3
ここに水酸化物イオンの供給源として水酸化テトラメチルアンモニウム((TMA)OH)を加えると、
(反応式3)(TMA)HCO3+(TMA)OH→(TMA)2CO3+H2
となり、実質的にCO2が触媒のように、WO3の溶解に繰り返し作用する機構が作られると考えられる。すなわち、水酸化物イオンの供給源を添加することにより、表面処理液の寿命を延ばすことができる。また同時に、このCO2の触媒作用のために(反応式1)は、WO3と(TMA)OHが直接反応する場合:
(反応式4)WO3+2(TMA)OH→(TMA)2WO4+H2
よりも反応速度が大きくなる。なお、反応式1〜反応式3において、Cを同族元素であるSiに置き換えても同様の効果が得られる。無機レジストの難溶性が高い場合、水酸化イオンの供給源となる水酸化テトラメチルアンモニウムなどの強塩基を加えることで溶解性を調整する方法を用いることができる。この処理によって、算術平均粗さ(Ra)≦1nmの均一性の高い粗面が得られる。潜像形成のために照射されたレーザ光はこの粗面のために単位照射面積あたりの光吸収面積が増大するため、実質的な無機レジスト感度が向上することになる。なお、算術平均粗さ(Ra)はJISが定義する粗さ形状パラメータ(JIS B0601、2001年規格)に従った。すなわち、Ra;粗さ曲線から、その平均線方向に基準長さを抜き取り、平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値、とした。
(4)現像液とその調製方法
次に、上述の無機レジストを現像するために用いる現像液について説明する。
現像液の主たる水酸化物イオン供給源としては、有機または無機のアンモニウム水酸化物を用いる。有機アンモニウム水酸化物の例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、コリンなどを挙げることができる。無機アンモニウム水酸化物の例としては、アンモニア水を挙げることができる。これらは単独、または2つ以上を混合して用いることができる。これらの水酸化物イオン供給源の濃度は特に制限されるものではないが、現像促進剤を添加した状態で、酸で滴定したとき、現像促進剤の中和点よりも高いpH値に設定する必要がある。一般的にはpH10以上、好ましくはpH11以上になるよう、水酸化物イオン供給源の濃度を調整することが望ましい。
一般に有機レジストではpHが高いとレジストへの浸透力が強くなりすぎ、剥離などの問題を引き起こすことが多いが、無機レジストでは皮膜を貫通するような浸透の懸念が小さい。このため、現像液としての寿命を延ばすために高pHで利用することができる。
ここで、現像によって溶解する無機レジストの金属酸化物の部分、例えばWO3は、アルカリ性水溶液中で溶媒和している。その形態としては、安定化合物として、リンタングステン酸ナトリウム(Na3PO4・12WO3・nH2O)、リンタングステン酸アンモニウムn水和物(2(NH4)3PO4・12WO3・nH2O)、タングステン酸アンモニウム五水和物(5(NH42O・12WO3・5H2O)、タングステン酸(VI)ナトリウム二水和物(Na2WO4・2H2O)などの構造が知られていることから、水酸化物イオン供給源やアルカリ金属イオンが無機レジスト中のWO3などの溶解成分(酸性分)に直接作用したのち、水和することで現像が進行すると考えられる。
現像液には無機レジストの濡れ性向上や泡消しなどの目的で、適宜、界面活性剤や有機溶剤、消泡剤などを混ぜて用いことができる。現像液の温度は特に制限されるものではないが、薄膜の溶解速度を調整するために適宜、温度を調整することができる。
(5)無機レジストの反応機構
次に、推測される無機レジストの反応機構を説明する。
感熱無機レジストとして金属酸化物を利用した場合、レジスト膜のレーザ光照射部位では局所的な熱膨張、無機レジストを構成する分子間での酸素の再分配(酸化・還元反応)および金属酸化物の分解による酸素ガス放出が同時に起こると考えられる。同時に、短時間かつ局所的な強熱によって引き起こされる急激な分子振動の増大により、レーザ光照射部位には瞬間的な体積膨張と化学反応が起こり、微細なクラックが発生する。
以下、図1を参照して無機レジストの反応機構について説明する。
レーザ光Lを無機レジスト1に照射すると(図1A参照)、レーザ光Lの照射により強熱された分子2(例えば、アモルファスWO1.5)のうち、あるものは酸素を放出して還元体3(例えば、アモルファスWO)となり、あるものはその酸素を受け取って酸化体4a(例えば、アモルファスWO3)や酸化体4b(例えば、結晶WO3)となる(図1B参照)。無機レジストとして用いられる酸化タングステン(WOx、0<x≦3)や酸化モリブデン(MoOx、0<x≦3)などの金属酸化物では、酸化レベルの高い(xが大きい)ものはアルカリ溶解性が高く、酸化レベルの低い(xが小さい)ものはアルカリ溶解性が低い。したがって、レーザ光照射部位において、酸化された部分はアルカリ溶解性が向上し、還元された部分はアルカリ溶解性が低下する。このように酸化生成物と還元生成物が混在している状態のものをアルカリ現像にて現像処理すると、酸化生成物が溶解し、その中に分散している還元生成物も一緒に脱離する(図1C参照)。その結果、酸化・還元反応を起こした部位全体が現像されて、形状パターンが形成されると考えられる。
また、酸化・還元反応の際、還元体3は元の分子に比べて体積が減少し、酸化体4a,4bは体積が増加する。ここで、金属酸化物の比重を一例として挙げると、結晶W3O:14.7g/cm3、アモルファスWO1.5:11g/cm3、結晶WO2:10.8g/cm3、結晶WO3:7.2g/cm3、アモルファスWO3:6.8g/cm3、結晶MoO2:6.5g/cm3、結晶MoO3:4.7g/cm3であり、酸化が進むにつれて比重が低下(体積は増大)する。また、成膜したアモルファスの金属酸化物層をレーザ光照射により加熱すると、レーザ光照射部を中心に多数の結晶粒子が発生する。ここで、アルカリ溶解性についてアモルファス粒子と結晶粒子とを比較したとき、同じ酸化レベルの化合物、例えばWO3同士ならば、格子状結合を形成していない分、アモルファス粒子の方が結晶よりもアルカリに対して短時間で溶解する。この性質は、ネガ型レジストのパターン形成で利用される。このような体積の増大と減少、および結晶粒子の発生が、短時間のうちに同時に起こることも、クラック発生の原因になっていると考えられる。
更に、強熱によって金属酸化物が分解して放出された酸素が、クラック5を押し広げたり、結晶間に空隙を作ったりすることが考えられる。ここで、酸化タングステン(WOx、0<x≦3)や酸化モリブデン(MoOx、0<x≦3)などの金属酸化物において、例えばxが2以上など比較的酸化レベルが高いものは、レーザ光照射による加熱によって酸素ガスが発生する割合も高くなると考えられ、これがクラック5を押し広げたり、結晶間に空隙を作ったりして体積を大きく膨張させると考えられる(図1B、盛り上がり6)。このため、現像後に得られる形状パターンのエッジ部分の盛り上がり(図1C、盛り上がり6)も大きくなる。逆に、例えばxが2未満などの比較的酸化レベルが低いものは、酸素ガスの発生量も少なくなると考えられる。このため、レーザ光照射部位の体積膨張も小さくなり、現像して得られる形状パターンのエッジ部分の盛り上がり(図1C、盛り上がり6)は小さくなる。
なお、発生したクラック5や結晶間の空隙は、現像液を内部に浸透させる効果を高めるのに寄与すると考えられる。このため、酸化レベルが高い金属酸化物を使うほど、アルカリ溶解性も一層増大されることになる。
また、金属酸化物からなる無機レジスト層を基材上に形成する場合、基材上に必要に応じて蓄熱を目的とする下地層(蓄熱層)を形成し、その上に無機レジスト層を形成することが好ましい。露光感度を高めることができるからである。
(6)無機レジストと現像液との反応
次に、推察される無機レスト材料と現像液の反応について説明する。
無機レジストは低分子量の無機化合物が、アモルファスまたは結晶の形態を取るものである。したがって、無機レジストの現像は、これらの無機レジスト分子と現像液のアルカリ成分が反応する、比較的単純な中和反応が主体となる。このため、反応促進作用や触媒作用を有する化合物などを現像液に添加することで、現像時間を短縮することが可能になる。
アルカリ性水溶液に添加した現像促進剤が反応を促進させる機構は不明であるが、およそ次のようなものであると推測している。
例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム((CH34N・OH)水溶液に塩化テトラメチルアンモニウム((CH34N・Cl)を溶解しても現像時間が短縮されないのに対し、塩化ナトリウム(NaCl)を添加すると、現像時間は大幅に短縮される。このことから、現像促進作用はカチオン部分の性質に大きく依存し、無機レジストの溶解成分であるWO3やMoO3は、これらのカチオンおよびアルカリ成分の複合体として溶媒和していることが推測される。なお、カチオン部分として、金属イオンとアンモニウム・イオンについて、高い現像促進効果が確認されている。また、触媒作用については「(3)無機レジストと表面処理液との反応」の中に示した反応式と同じで、CO2、SiO2などのアルカリ塩が触媒として作用することで、反応時間が短縮されていると考えられる。
(7)レジスト原盤の製造方法
次に、図2および図3を参照して、上述した無機レジストおよび現像液を用いたレジスト原盤の製造方法の一例について説明する。この原盤の製造方法は、Blu-ray Disc(登録商標)などの高密度光ディスク用原盤の製造方法などに好適なものである。また、この原盤の製造方法は、光ディスクの種類に限定されるものではなく、再生専用型、追記型および書き換え可能型のいずれの原盤の製造にも用いることができる。
図2Aに示すように、例えばシリコンなどからなる平滑な基板11を作製する。そして、図2Bに示すように、例えばスパッタリング法により下地層12を基板11上に製膜する。下地層12を構成する材料としては、例えば、硫化亜鉛と二酸化シリコンとの混合体(ZnS−SiO2混合体)、五酸化タンタル(Ta25)、酸化チタン(TiO2)、アモルファス・シリコン(a−Si)、酸化ケイ素(SiO2)、窒化シリコン(SiN)を挙げることができ、良好な露光感度の点からすると、ZnS−SiO2混合体、五酸化タンタル(Ta25)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)などが好ましい。下地層12をZnS−SiO2混合体により構成する場合には、硫化亜鉛(ZnS)の含有量は例えば70mol%以上100mol%未満の範囲から選ばれ、二酸化ケイ素(SiO2)の含有量は例えば0mol%以上30mol%以下の範囲から選ばれるものが好ましい。
次に、図2Cに示すように、例えばスパッタリング法により無機レジスト層13を下地層12上に製膜する。基板11上に形成される無機レジスト層13の厚さは任意に設定可能であるが、所望のピットまたはグルーブの深さが得られるよう設定する必要がある。例えば、Blu-ray Disc(登録商標)の場合には無機レジスト層13の厚さが15nm以上80nm以下の範囲であることが好ましく、DVD−RW(Digital Versatile Disc-ReWritable)の場合には20nm以上90nm以下の範囲であることが好ましい。
以上のようにして作製されたレジスト原盤は、ポジ型またはネガ型の無機レジスト原盤用である。より具体的には、遷移金属酸化物の酸化・還元反応、または相転移を利用して潜像が形成されるポジ型またはネガ型の無機レジスト原盤用である。
次に、得られたレジスト原盤を表面処理液に浸漬して粗面化処理を行ったのち、純水で洗浄し、乾燥する。表面処理液は、上述したように、有機アンモニウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。
次に、図3Aに示すように、基板11を回転させると共に、露光ビーム14を無機レジスト層13に照射して、無機レジスト層13を全面に渡って露光する。これにより、所望とする光ディスクのランドおよびグルーブなどに応じた潜像13aが、無機レジスト層13の全面に渡って形成される。
次に、基板11を回転させながら、無機レジスト層13上に現像液15を滴下して、図3Bに示すように、無機レジスト層13を現像処理する。これにより、図3に示すように、無機レジスト層13に螺旋状または同心円状に微細な凹凸パターンが形成される。
以上により、目的とするレジスト原盤が得られる。
上述したように、この発明の実施形態によれば、有機アンモニウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む表面処理液により、無機レジスト層を表面処理するので、無機レジスト層の表面をナノ・レベルで均一に粗面化することができる。したがって、単位露光面積当たりの光吸収量を増大させることができるので、無機レジストを実質的に高感度化させることができる。また、電気化学的方法など手間を要する手段を用いず、毒物・劇物を使用することもない、ごく簡単な化学的処理で無機レジスト表面を粗面化することができる。
また、ナノ・メートルのレベルで無機レジスト表面を粗面化処理する場合、機械的方法はもちろんのこと化学的方法でも、粗面化よりも膜厚減少が優先するなどの問題のため、使うことが困難なことが多い。この発明の実施形態では、ある種の塩類を溶解したアルカリ性の水溶液を使うことで、無機レジストの溶解より粗面化が優先して進むような表面処理を行うこともできる。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例1〜3、比較例1〜3では、レジスト原盤を作製し、各種の表面処理液でレジスト原盤の粗面化処理を行い、その表面状態を評価した。
<比較例1>
(レジスト原盤の作成工程)
レジスト原盤を以下のようにして作製した。まず、スパッタリング法により、基材上にアモルファス・シリコンからなる100nmの下地層を形成した。なお、この下地層は、無機レジスト層に照射するレーザ光の熱が効率的に蓄積されるようにするためのものである。
以下に、下地層の製膜条件を示す。
基材:8インチ・シリコンウエハ
ターゲット材料:シリコン
製膜ガス:アルゴン(Ar)・26[SCCM]
製膜開始ガス圧力:5.0×10-4[Pa]
製膜電力:DC135[W]
次に、スパッタリング法により、下地層の上に膜厚25nmの無機レジスト層を形成した。
以下に、無機レジスト層の成膜条件を示す。
ターゲット材料:タングステン(W)/モリブデン(Mo)/酸素(O)
=32/8/60(原子数比)
製膜ガス:アルゴン(Ar)・26[SCCM]
製膜開始ガス圧力:5.0×10-4[Pa]
製膜電力:DC135[W]
以上により、目的とするレジスト原盤が得られた。
(表面状態の評価)
得られたレジスト原盤の表面状態をAFM(Atomic Force Microscope)で測定した。その測定結果を図4に示す。また、その算術平均粗さRa=0.41nmであった。
<比較例2>
(レジスト原盤の作製工程)
上述の比較例1と同様にしてレジスト原盤を作製した。
(表面処理の工程)
次に、以下の表1に示すように、純水にメタ珪酸ナトリウムを加えて、濃度26mMの表面処理液を調製した。次に、レジスト原盤を表面処理液に浸け、270秒間または540秒間、室温で軽く振とうした。上記所定の時間振とうした後、レジスト原盤を取り出して純水洗浄し、窒素ブローで水滴をとばした。以上により、目的とするレジスト原盤が得られた。
(表面状態の評価)
得られたレジスト原盤の表面状態をAFM(Atomic Force Microscope)で測定した。その測定結果を表2および図5に示す。
<実施例1>
以下の表1に示すように、純水に珪酸テトラメチルアンモニウムを加えて、濃度26mMの表面処理液を調製したこと以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表2および図6に示す。
<実施例2>
以下の表1に示すように、表面処理液として2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(東京応化工業(株)、NMD−3)を用いた以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表2および図7に示す。
<比較例3>
以下の表1に示すように、NMD−3にメタ珪酸ナトリウムを加えて、濃度26mMの表面処理液を調製したこと以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表2および図8に示す。
<実施例3>
以下の表1に示すように、NMD−3に珪酸テトラメチルアンモニウムを加えて、濃度26mMの表面処理液を調製したこと以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表2および図9に示す。
Figure 2009085979
NMD−3:東京応化工業(株)2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液
Figure 2009085979
表2、図4〜図9に示す結果から以下のことが分かる。
270秒間と540秒間の処理時間の違いは、表面粗度自体には、ほとんど差を与えないことが分かる。しかし、540秒間の処理時間では、表面の浸食が進み、表面の歪み・うねりが発生しやすくなる。
比較例3および実施例3のように、表面処理液に水酸化物イオンの供給源として水酸化テトラメチルアンモニウムを添加した場合にも、長時間処理した場合と同様に、表面の歪み・うねりが発生しやすくなる。これは、水酸化テトラメチルアンモニウムの添加により、レジストの溶解力が強くなったためであると考えられる。
水酸化テトラメチルアンモニウムを表面処理液として用いた実施例2では、処理時間が270秒間の場合には、表面処理を行っていない比較例1よりも算術平均粗さRaが小さくなる。また、処理時間が540秒間の場合には、比較例1よりわずかに大きい算術平均粗さRaが得られる。すなわち、比較例2,3、実施例1,3の表面処理液は、実施例2の表面処理液よりも、粗面化に要する時間が短い。
これは「無機レジストと表面処理液との反応」で説明したように、本発明で用いるアンモニウム塩(表面処理剤)は、成分が無機レジストの溶解を促進する触媒として作用するため、水酸化テトラメチルアンモニウムだけで処理する場合よりも、粗面化の時間が短縮されるためと考えられる。
珪酸イオン(SiO3 2-)を含むアンモニウム塩を塩類(表面処理剤)として用いると、無機レジスト層の表面を算術平均粗さRa≦1nmで均一に粗面化することができる。
以下の実施例4〜6、比較例4〜5では、レジスト原盤を作製し、各種の表面処理液でレジスト原盤の粗面化処理を行い、分光分析により膜減りの度合いを検証した。
<実施例4〜6、比較例4〜5>
(レジスト原盤の作製工程)
まず、基材として石英ガラス(厚さ0.7mm)を用い、この石英ガラス上に無機レジスト層を直接形成する以外のことは、上述の実施例1〜3、比較例2〜3と同様にしてレジスト原盤を得た。
(表面処理の工程)
次に、上述の実施例1〜3、比較例2〜3と同様にして、これらのレジスト原盤を上記表1の組成の各表面処理液に浸け、270秒間および540秒間、室温で軽く振とうした。上記所定の時間振とうした後、レジスト原盤を取り出して純水洗浄し、窒素ブローで水滴をとばした。以上により、目的とするレジスト原盤が得られた。
(透過率の評価)
次に、得られたレジスト原盤の波長300〜800nmの透過率を分光光度計により測定した。その結果を図10、図11に示す。なお、図10A、図11Aが270秒間振とうしたレジスト原盤の測定結果であり、図10B、図11Bが540秒間振とうしたレジスト原盤の測定結果である。また、透過率は石英ガラスに無機レジスト層を成膜した状態を100%として、相対値で示した。
図5〜図9(表面状態の評価結果)、図10〜図11(透過率の評価結果)から以下のことが分かる。
現像時間を伸ばしたとき、ほぼ同じ面粗度を維持しながら膜厚が減少することが分かる。したがって、面粗れを起こす最少時間に処理時間を留めることで、膜厚変化を最小限に抑えて粗面化を行うことができる。
水酸化物イオンの供給源を配合した比較例5、実施例6では、ほぼ同じ面粗度を維持しながら膜厚が減少するが、膜厚の減少が比較例4、実施例4に比べて大きいことが分かる。すなわち、比較例5、実施例6では、比較例4、実施例4で処理時間を伸ばした場合と同様の効果が得られる。したがって、溶解に時間を要する無機レジスト材料の粗面化処理を行うときには、水酸化物イオンの供給源を配合することで効率的に処理することができる。
表面処理剤として配合した塩類がナトリウム塩などのアルカリ金属塩の場合、テトラメチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩よりも著しく速い膜厚減少を起こすことが分かる。しかし、面粗度については両者の間に、特に顕著な差はないことから、膜厚変化を抑えた表面処理を行うためには、アルカリ金属塩よりもアンモニウム塩を用いることが有効なことが分かる。
以下の比較例6、実施例7では、比較例1のレジスト原盤(表面処理なし)および実施例1のレジスト原盤(表面処理あり)をレーザ露光、および現像してパターン形成を行い、形状を測定した。なお、実施例1のレジスト原盤は、実施例1〜3、比較例2〜3の中で、最も少ない膜減りで粗面化が行われたレジスト原盤である。
<比較例6>
(レジスト原盤の作成工程)
上述の比較例1と同様にしてレジスト原盤を作製した。
(露光工程)
得られたレジスト原盤を回転させながら、無機レジスト層に対してレーザ光を照射して露光を行った。
以下に、無機レジスト層の露光条件を示す。
光源:半導体レーザ(波長405[nm])
対物レンズ:NA=0.9
レジスト原盤送り速度:0.32[μm/revolution]
スピンドル:CLV(Constant Liner Velocity)方式4.9[m/秒]
(現像工程)
2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(東京応化工業(株)、NMD−3)を現像液とし、露光を行った無機レジスト層を現像して、DCグルーブ・パターンを作製した。
以下に、無機レジスト層の現像条件を示す。
現像液温度:26℃
現像方法:レジスト原盤上への現像液の連続かけ流し
ここで、現像工程について、より詳しく説明する。まず、2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を、現像タンク(ソニー・ディスク・アンド・デジタル・ソリューションズ(株)製、PTR3000)に入れ、温度26℃に保った。次に、無機レジスト原盤を回転ステージに載置し、400rpmに回転を保ちながら、プレ・リンス、現像、およびポスト・リンスのプロセス処理を行った後、最後に1800rpmで振り切り乾燥した。
以下に、プレ・リンス、現像、およびポスト・リンスのプロセス処理の条件を示す。
プレ・リンス:純水を60秒間、かけ流し。
現像:450秒間、現像液をかけ流し。
ポスト・リンス:純水を180秒間、かけ流し。
(表面状態の評価)
得られた無機レジスト原盤に形成された溝形状をAFMで測定した。その結果を表3および図12に示す。
<実施例7>
まず、上述の実施例1と同様にして、表面処理を行ったレジスト原盤を作製した。なお、表面処理液による表面処理時間は、270秒とした。次に、このレジスト原盤を用いる以外は、上述の比較例6と同様にして露光・現像を行ってレジスト原盤を得た。次に、上述の比較例6と同様にして溝形状を測定した。その結果を表3および図13に示す。
Figure 2009085979
表3および図12〜図13から以下のことが分かる。
粗面化処理によって見かけ上の無機レジストの感度が向上すると同時に、急峻なテーパ角が得られる。
酸化タングステン系の無機レジストについては、水酸化物イオンの供給源を配合せず、塩の水溶液のみで充分であると考えられる。
以下の比較例7〜8、実施例8では、上記実施例の塩以外を用いた表面処理液について検討を行った。
<比較例7>
以下の表4に示すように、純水に炭酸ナトリウムを加えて、濃度26mMの表面処理液を調製し、この表面処理液を用いたこと以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。但し、表面処理の時間は270秒間とした。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表5および図14に示す。
<比較例8>
以下の表4に示すように、純水にリン酸三ナトリウム・12水を加えて、濃度26mMの表面処理液を調製し、この表面処理液を用いたこと以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。但し、表面処理の時間は270秒間とした。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表5および図15に示す。
<実施例8>
以下の表4に示すように、純水に炭酸水素テトラメチルアンモニウムを加えて、濃度26mMの表面処理液を調製し、この表面処理液を用いたこと以外のことは、上述の比較例2と同様にしてレジスト原盤を得た。但し、表面処理の時間は270秒間とした。次に、比較例2と同様にして表面状態を測定した。その結果を表5および図16に示す。
Figure 2009085979
Figure 2009085979
表5および図14〜図16から以下のことが分かる。
炭酸イオン(CO3 2-)を含むアルカリ金属塩、リン酸イオン(PO4 3-)を含むアルカリ金属塩、炭酸イオン(CO3 2-)を含むアンモニウム塩を塩類として用いた場合にも、上述の実施例1と同様に、無機レジスト層の表面を算術平均粗さRa≦1nmで均一に粗面化することができる。したがって、見かけ上の無機レジストの感度を向上することができる。
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、この発明はBlu-ray Disc(登録商標)やHD−DVD(Heigh Definition Digital Versatile Disc)など以外の種々の光ディスクに対しても適用可能であり、従来の光ディスクのみならず、Blu-ray Disc(登録商標)やHD−DVDなどの光ディスクよりも更に高密度の次世代の光ディスクに対しても適用可能である。
上述の実施形態および実施例では、この発明を光ディスク用のレジスト原盤の製造方法に対して適用した場合について説明したが、この発明は光ディスク用のレジスト原盤の製造方法に限定さるものではなく、微細な凹凸パターンを有する種々のデバイス、例えば太陽電池における光反射防止構造、燃料電池における燃料流路などや、それらの製造方法に対して適用可能である。
また、上述の実施形態および実施例では、光ディスクの基板作製に用いるレジスト原盤の製造方法に対してこの発明を適用した場合について説明したが、光ディスクの中間層形成に用いるレジスト原盤の製造方法に対してこの発明を適用するようにしてもよい。
無機レジストの反応機構を説明するための模式図である。 この発明の実施形態によるレジスト原盤の製造方法について説明するための模式的断面図である。 この発明の実施形態によるレジスト原盤の製造方法について説明するための模式的断面図である。 比較例1による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 比較例2による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 実施例1による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 実施例2による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 比較例3による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 実施例3による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 比較例1、比較例4、実施例4による無機レジスト原盤の分光分析の結果を示す測定図である。 実施例5〜6、比較例5による無機レジスト原盤の分光分析の結果を示す測定図である。 比較例6による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 実施例7による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 比較例7による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 比較例8による無機レジスト原盤のAFM測定図である。 実施例8による無機レジスト原盤のAFM測定図である。
符号の説明
1 無機レジスト
2 分子
3 還元体
4a,4b 酸化体
5 クラック
6 盛り上がり
11 基板
12 下地層
13 無機レジスト層
13a 潜像
14 露光ビーム
15 現像液
L レーザ
S 表面

Claims (6)

  1. 有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む表面処理液。
  2. 上記有機アンモニウム塩、上記無機アンモニウム塩は、アニオン部分として珪酸イオン(SiO3 2-)、炭酸イオン(CO3 2-)、リン酸イオン(PO4 2-)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の表面処理液。
  3. ポジ型またはネガ型の無機レジスト原盤用であることを特徴とする請求項1または2記載の表面処理液。
  4. 基材上に設けられた無機レジスト層を表面処理液により粗面化する工程と、
    上記粗面化された無機レジスト層を露光する工程と、
    上記露光された無機レジスト層を現像液により現像する工程と
    を備え、
    上記表面処理液は、有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする微細加工体の製造方法。
  5. 上記粗面化された無機レジスト原盤は、算術平均粗さRa≦1nmを有することを特徴とする請求項4記載の微細加工体の製造方法。
  6. 有機アンモニウム塩および無機アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を含む表面処理液により、無機レジスト層を粗面化する表面処理方法。
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