JP2016134242A - 蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス電極用スラリー、蓄電デバイス電極および蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス電極用スラリー、蓄電デバイス電極および蓄電デバイス Download PDF

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達也 阿部
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Abstract

【課題】密着性などの特性を改善可能な蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス電極用スラリー、蓄電デバイス電極、および蓄電デバイスを提供すること。【解決手段】重合体(A)と、重合体(B)と、液状媒体(C)と、を含有し、前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)を含有し、前記重合体(B)が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする蓄電デバイス用バインダー組成物。(上記一般式(3)中、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス電極用スラリー、蓄電デバイス電極および蓄電デバイスに関する。
蓄電デバイスに使用される正極や負極(以下、「電極」ともいう)は、活物質とバインダーとの混合物を集電体表面へ塗布および乾燥させ、集電体表面に、活物質粒子およびバインダーを含む層(以下、「活物質層」ともいう)を形成することにより作製される(例えば、特許文献1参照)。
また、近年では、セパレーター表面にフィラーとバインダーとの混合物を塗布および乾燥させ、デンドライトに耐え得る保護層をセパレーターの表面に形成する技術も提案されている。保護層はフィラーおよびバインダーを含む多孔質膜である。
このように、蓄電デバイスの分野では、電極やセパレーターの表面に活物質層や保護層を形成することが一般的である(例えば、特許文献2参照)。
活物質層や保護層の形成に用いられるバインダーには、種々の特性が要求される。例えば、(1)活物質粒子やフィラー同士の結合能力、(2)活物質層と集電体との接着能力、(3)保護層とセパレーターや活物質層との接着能力、(4)電極やセパレーターを巻き取る工程における耐擦性、(5)その後の裁断などにおける粉落ち耐性(活物質層や保護層から微粉などが発生しにくい特性)などが要求される。
なお、上記(1)、(2)、(4)、(5)の特性については、性能の良否がほぼ比例関係にあることが経験上明らかになっている。したがって本明細書では、上記(1)、(2)、(4)、(5)の特性を包括して「密着性」という用語を用いて表す場合がある。
特開2013−30449号公報 特開2011−5867号公報
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているような電極用バインダーは、リチウム吸蔵量が大きい材料を利用した活物質を実用化するにあたり、密着性が十分でなかった。そのため、上記の電極用バインダーを用いた電極は、充放電を繰り返すと劣化してしまい、実用化に必要な耐久性が十分に得られなかった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、密着性などの特性を改善可能な蓄電デバイス用バインダー組成物、蓄電デバイス電極用スラリー、蓄電デバイス電極、および蓄電デバイスを提供するものである。
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物は、重合体(A)と、重合体(B)と、液状媒体(C)と、を含有し、前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)を含有し、前記重合体(B)が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする。
Figure 2016134242
(上記一般式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。)
本発明の蓄電デバイス用バインダー組成物によれば、密着性に優れる蓄電デバイスを製造することができる。
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」および「メタクリル酸〜」の双方を包括する概念である。
1.蓄電デバイス用バインダー組成物
本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物は、重合体(A)と、重合体(B)と、液状媒体(C)と、を含有し、前記重合体(B)が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする。
重合体(A)と重合体(B)との合計100質量部に対し重合体(A)の含有量は、10〜95質量部であることが好ましく、15〜93質量部であることがより好ましく、20〜90質量部であることがさらに好ましい。
以下、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物に含まれ得る各成分について詳細に説明する。
1.1.重合体(A)
重合体(A)は、前記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)を含有する。また、重合体(A)は、前記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)の他に、それと共重合可能な他の単量体に由来する繰り返し単位を含有してもよい。
他の単量体に由来する繰り返し単位としては、例えば、後述する繰り返し単位(A1)、繰り返し単位(A2)、重合性不飽和二重結合を有する酸、不飽和カルボン酸エステル、α,β−不飽和ニトリル化合物、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
以下、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物に含まれる重合体(A)を構成する繰り返し単位、重合体(A)の分子量、物性、製造方法の順に説明する。
1.1.1.繰り返し単位(A1)
重合体(A)は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位(A1)を含有することが好ましい。
Figure 2016134242
上記一般式(1)中、Rは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を表す。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、またはイソブチル基であることが好ましく、蓄電デバイス用スラリーのスラリー特性が良好となる観点から、メチル基であることがより好ましい。ここで、蓄電デバイス用スラリーとしては、蓄電デバイス用バインダー組成物と活物質とを含有する蓄電デバイス電極用スラリー、および、蓄電デバイス用バインダー組成物とフィラーとを含有する保護層用スラリーが挙げられる。
重合体(A)が含有する繰り返し単位(A1)において、Rが全て同じである必要はなく、異なっていてもよい。すなわち、重合体(A)は、同種の繰り返し単位(A1)を含有してもよく、異なる2種以上の繰り返し単位(A1)を含有してもよい。
重合体(A)の全繰り返し単位を100モル%としたときに、上記一般式(1)で示される繰り返し単位(A1)の含有割合は30モル%以上70モル%以下であることが好ましく、35モル%以上60モル%以下であることがより好ましく、40モル%以上50モル%以下であることが特に好ましい。
重合体(A)における繰り返し単位(A1)の含有割合が前記範囲内であることにより、密着性および柔軟性に優れた活物質層や保護層が得られやすく、電極やセパレーターを捲回する際のクラックの発生や、活物質やフィラーの剥離を効果的に抑制できる。
また、重合体(A)における繰り返し単位(A1)の含有割合が前記範囲内であることにより、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いて調製された蓄電デバイス用スラリーにおける活物質やフィラーの分散性が良好となる。そのことにより、均一な活物質層や保護層の作製が可能となる。その結果、活物質層や保護層の構造欠陥が抑制され、良好な充放電特性を示す蓄電デバイスが得られる。
1.1.2.繰り返し単位(A2)
重合体(A)は、下記一般式(2)で示される繰り返し単位(A2)を含有することが好ましい。
Figure 2016134242
上記一般式(2)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。R、R、RおよびRがアルキル基である場合、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、またはイソブチル基であることが好ましい。これらの中でも、R、R、RおよびRは、活物質やフィラーの分散性が良好となる観点から、水素原子であることがより好ましい。重合体(A)は、同種の繰り返し単位(A2)を含有してもよく、異なる2種以上の繰り返し単位(A2)を含有してもよい。
重合体(A)が上記一般式(2)で示される繰り返し単位(A2)を含有する場合、重合体(A)の全繰り返し単位を100モル%としたときに、上記一般式(2)で示される繰り返し単位(A2)の含有割合は30モル%以上70モル%以下であることが好ましく、35モル%以上65モル%以下であることがより好ましく、40モル%以上60モル%以下であることが特に好ましい。
重合体(A)における繰り返し単位(A2)の含有割合が前記範囲内であることにより、密着性および柔軟性に優れた活物質層や保護層が得られやすく、電極やセパレーターを捲回する際のクラックの発生や、活物質やフィラーの剥離を効果的に抑制できる。
また、重合体(A)における繰り返し単位(A2)の含有割合が前記範囲内であることにより、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いて調製された蓄電デバイス用スラリーにおける活物質やフィラーの分散性が良好となる。そのことにより、均一な活物質層や保護層の作製が可能となる。その結果、活物質層や保護層の構造欠陥が抑制され、良好な充放電特性を示す蓄電デバイスが得られる。
1.1.3.繰り返し単位(A3)
重合体(A)は、下記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)を含有する。
Figure 2016134242
上記一般式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。R、RおよびRがアルキル基である場合、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、またはイソブチル基であることが好ましい。これらの中でも、R、RおよびRは、活物質やフィラーの分散性が良好となる観点から、水素原子であることがより好ましい。重合体(A)は、同種の繰り返し単位(A3)を含有してもよく、異なる2種以上の繰り返し単位(A3)を含有してもよい。
重合体(A)の全繰り返し単位を100モル%としたときに、繰り返し単位(A3)の含有割合は20モル%以下であることが好ましく、3モル%以上17モル%以下であることがより好ましく、5モル%以上15モル%以下であることが特に好ましい。
重合体(A)における繰り返し単位(A3)の含有割合が前記範囲内であることにより、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いて調製された蓄電デバイス用スラリーにおける活物質やフィラーの分散性が良好となる。そのことにより、均一な活物質層や保護層の作製が可能となる。その結果、活物質層や保護層の構造欠陥が抑制され、良好な充放電特性を示す蓄電デバイスが得られる。
ここで、重合体(A)100モル%中に含有される繰り返し単位(A1)の割合をA1(モル%)、繰り返し単位(A2)の割合をA2(モル%)、繰り返し単位(A3)の割合をA3(モル%)とすると、A3/(A1+A3)の値は0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましい。A3/(A1+A3)の値が前記範囲内であると、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いて形成された活物質層や保護層の柔軟性が向上し、活物質層や保護層におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
また、A2/(A1+A2+A3)の値は0.35〜0.6が好ましく、0.4〜0.55であることがより好ましい。A2/(A1+A2+A3)の値が前記範囲内であると、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いて形成された活物質層から、重合体(A)が電解液へ溶解して活物質層の機械強度が低下することを効果的に抑制することができる。
また、A2/(A1+A2+A3)の値が前記範囲内であると、カーボンブラックの分散性が良好な蓄電デバイス用スラリーが得られ、均一な活物質層や保護層の作製が可能となる。さらに、後述する液状媒体(C)が有機溶媒の場合、A2/(A1+A2+A3)の値が前記範囲内であると、重合体(A)と液状媒体(C)との親和性が向上して、重合体(A)が均質に溶解しやすくなる。その結果、蓄電デバイス用スラリーにおけるスラリー特性の均質性や安定性を向上させることができる。
1.1.4.重合性不飽和二重結合を有する酸に由来する繰り返し単位
重合体(A)は、さらに重合性不飽和二重結合を有する酸に由来する繰り返し単位を有してもよい。重合体(A)が重合性不飽和二重結合を有する酸に由来する繰り返し単位を有する場合、重合体(A)の全繰り返し単位を100モル%としたときに、重合性不飽和二重結合を有する酸に由来する繰り返し単位の含有割合は、20モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%であることがより好ましい。
重合体(A)における、重合性不飽和二重結合を有する酸に由来する繰り返し単位の含有割合が前記範囲内であることにより、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いて調製された蓄電デバイス用スラリーの安定性が向上する。
重合性不飽和二重結合を有する酸としては、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を好適に使用することができる。重合性不飽和二重結合を有する酸の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸などの不飽和スルホン酸を挙げることができ、これらの中から選択される1種以上を使用することができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸およびメタリルスルホン酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
1.1.5.不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位
重合体(A)は、さらに不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有してもよい。重合体(A)が不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位を有する場合、重合体(A)の全繰り返し単位を100モル%としたときに、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位の割合は、20モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%であることがより好ましい。
重合体(A)における、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合が前記範囲内であることにより、重合体(A)と電解液との親和性がより好適になり、蓄電デバイス中でバインダーが電気抵抗成分となることによる内部抵抗の上昇を抑制することができる。
また、重合体(A)における、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合が前記範囲内であることにより、重合体(A)が電解液を過大に吸収することを抑制できる。その結果、密着性が向上する。
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどの単官能(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリルなどの多官能(メタ)アクリル酸エステル;下記一般式(4)で表される化合物、(メタ)アクリル酸3[4〔1−トリフルオロメチル−2,2−ビス〔ビス(トリフルオロメチル)フルオロメチル〕エチニルオキシ〕ベンゾオキシ]2−ヒドロキシプロピルなどの含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
Figure 2016134242
(一般式(4)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはフッ素原子を含有する炭素数1〜18の炭化水素基である。)
なお、本発明における「多官能(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸エステルが有する1つの重合性の二重結合以外に、さらに他の重合性の二重結合、エポキシ基、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することをいう。
上記例示した単官能(メタ)アクリル酸エステルの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルであることが特に好ましい。
上記例示した多官能(メタ)アクリル酸エステルの中でも、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルであることが特に好ましい。
1.1.6.α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位
重合体(A)は、さらにα,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位を有してもよい。重合体(A)がα,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位を有する場合、重合体(A)の全繰り返し単位を100モル%としたときに、α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位の割合は、30モル%以下であることが好ましく、5〜25モル%であることがより好ましい。
重合体(A)における、α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位の含有割合が前記範囲内であることにより、電解液に対する重合体(A)の親和性が良好となって電解液吸収能が向上し、さらには、充放電特性が向上する。
すなわち、α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位が有するニトリル基の存在により、電極中に形成された重合体鎖の網目構造に溶媒が均一に拡散し易くなるため、溶媒和したリチウムイオンがこの網目構造をすり抜けて移動し易くなる。これにより、リチウムイオンの拡散性が向上し、その結果、電極抵抗が低下してより良好な充放電特性を実現できると考えられる。
α,β−不飽和ニトリル化合物の具体例としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどを挙げることができ、これらから選択される1種以上を使用することができる。これらのうち、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルから選択される1種以上であることが好ましく、特にアクリロニトリルであることが好ましい。
1.1.7.その他の単量体に由来する繰り返し単位
重合体(A)は、さらに共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を含有してもよい。
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
なお、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位および芳香族ビニル化合物は酸化電位が低いため、高電圧に晒される環境中で使用する部材の形成に蓄電デバイス用バインダー組成物を用いる場合は、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位および芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を重合体(A)が実質的に含まないことが好ましい。高電圧に晒される環境中で使用する部材としては、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどの正極や正極電極表面とセパレーター間に形成される保護層などが挙げられる。
1.1.8.重合体(A)の特性
<重合体(A)の分子量>
重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万〜100万の範囲内にあることが好ましく、10万〜80万の範囲内にあることがより好ましく、15万〜60万の範囲内にあることが特に好ましい。
重合体(A)の重量平均分子量が上記の範囲内である場合、本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物を用いれば、クラックが発生しにくく、より均質な活物質層や保護層を作製することができ、良好な充放電特性を発現することができる。
なお、重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法による測定値を単分散ポリスチレン換算することにより求めることができる。
1.1.9.重合体(A)の製造(合成)方法
重合体(A)の合成方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2000−143736号公報、国際公開第2013/005807号、特開2004−359965号公報に記載の方法により、重合体(A)を合成することができる。なお、重合体(A)のケン化反応は、常法に従って少量のアルカリを触媒とするアルコール分解により行なうことができる。
また、重合体(A)は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を再酢化することによっても得ることができる。再酢化の方法は特に限定されず、例えば特開平5−106112号公報、特開平5−202240号公報、特開平6−41369号公報、特開平6−234899号公報、特開平7−3525号公報に記載されているように、エチレン−ビニルアルコール共重合体に水および氷酢酸、塩酸を加えて溶液状態で再酢化する方法や、酸の存在下溶融状態で再酢化する方法を用いることができる。
1.2.重合体(B)
本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物に含まれる重合体(B)は、液状媒体(C)中に粒子として分散されたラテックス状であってもよいし、それ以外の形態であってもよい。液状媒体(C)中に粒子として分散された重合体(B)のことを「重合体粒子(B)」ともいう。
1.2.1.重合体(B)の繰り返し単位
重合体(B)は、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位を含有する。
なお、上述したフッ素化された繰り返し単位を有する重合体は、一般的に、それのみでは密着性が不良である。本発明のように重合体(A)と重合体(B)を併用することにより、密着性を改善することができる。
重合体(B)は、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレン以外の、共重合可能な他の不飽和単量体に由来する繰り返し単位を有していてもよい。
このような他の不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンなどの(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸のビニルエステル;
フッ化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン;
エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンなどを挙げることができ、これらから選択される1種以上を使用することができる。
重合体(B)におけるフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位の含有割合は、重合体(B)の全繰り返し単位を100質量部とした場合に、10〜50質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。
1.2.2.重合体(B)の製造(合成)方法
重合体(B)は、上記のフッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位、および任意的に他の繰り返し単位を、公知の方法に従って乳化重合することにより容易に製造することができる。
1.2.3.重合体(B)の物性
1.2.3.1.テトラヒドロフラン(THF)不溶分
重合体(B)のTHF不溶分は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。THF不溶分は、蓄電デバイスで使用する電解液に対する不溶分とほぼ比例すると推測される。このため、THF不溶分が前記範囲内であれば、蓄電デバイスを作製して、長期間にわたり充放電を繰り返した場合でも、電解液への重合体(B)の溶出を抑制できる。
1.2.3.2.転移温度
重合体(B)は、JIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)によって測定したときに、−40〜+20℃の範囲において吸熱ピークを1つしか有さないものであることが好ましい。この吸熱ピークの温度は、−30〜+20℃の範囲にあることがより好ましく、−25〜+10℃の範囲にあることがより好ましい。重合体(B)が有する1つのみの吸熱ピークの温度が上記範囲にある場合、活物質層や保護層に対してより良好な柔軟性と粘着性とを付与することができ、活物質層や保護層の密着性をより向上させることができる。
1.2.3.3.平均粒子径
重合体(B)としては、一般に市販されているラテックス(重合体粒子(B))を使用してもよい。重合体粒子(B)の数平均粒子径は、50〜400nmの範囲にあることが好ましく、100〜250nmの範囲にあることがより好ましい。重合体粒子(B)の数平均粒子径が前記範囲内にあると、電極活物質やフィラーの表面に重合体粒子(B)が十分に吸着することができる。そのことにより、活物質層や保護層において重合体(B)だけがマイグレーションし、活物質層や保護層の厚み方向で重合体(B)が偏在することを抑制することができ、その結果、蓄電デバイスにおける電気的特性の劣化を抑制することができる。
なお、重合体粒子(B)の数平均粒子径とは、光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、小さい粒子から粒子を累積したときの粒子数の累積度数が50%となる粒子径(D50)の値である。数平均粒子径の測定に使用できる粒度分布測定装置としては、例えば、コールターLS230、LS100、LS13 320(以上、Beckman Coulter.Inc製)や、FPAR−1000(大塚電子株式会社製)などを挙げることができる。
これらの粒度分布測定装置は、重合体粒子の一次粒子だけを評価対象とするものではなく、一次粒子が凝集して形成された二次粒子をも評価対象とすることができる。従って、これらの粒度分布測定装置によって測定された粒度分布は、蓄電デバイス用スラリー中に含まれる重合体粒子の分散状態の指標とすることができる。なお、重合体粒子(B)の数平均粒子径は、蓄電デバイス用スラリーを遠心分離して電極活物質やフィラーを沈降させた後、その上澄み液を上記の粒度分布測定装置を用いて測定する方法によっても測定することができる。
1.2.3.4.分子量
重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上1,000,000以下が好ましく、20,000以上500,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲内であると、形成される活物質層や保護層の強度を高くすることができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)を用いて測定した値を、標準ポリスチレン換算することにより求めることができる。
1.3.液状媒体(C)
本実施の形態に係る蓄電デバイス用バインダー組成物は、液状媒体(C)を含有する。液状媒体(C)としては、水あるいは非水系媒体であることが好ましい。非水系媒体は、80〜350℃の標準沸点を有することが好ましい。このような非水媒体の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリンなどの炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン;酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル;o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどのアミン化合物;γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド・スルホン化合物を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
2.蓄電デバイス用スラリー
上述したように、蓄電デバイス用スラリーとしては、蓄電デバイス電極の活物資層を作製することを用途とする蓄電デバイス電極用スラリーと、保護層を作成することを用途とする保護層用スラリーとがある。
2.1.蓄電デバイス電極用スラリー
「蓄電デバイス電極用スラリー」を集電体の表面に塗布した後、乾燥して、集電体表面上に活物質層を形成することができる。蓄電デバイス電極用スラリーは、上述の蓄電デバイス用バインダー組成物と、活物質と、を含有する。蓄電デバイス電極用スラリーは、正極および負極のいずれの電極を作製する用途にも用いることができる。以下、蓄電デバイス電極用スラリーに含まれる成分について詳細に説明する。但し、蓄電デバイス用バインダー組成物については、上述した通りであるから説明を省略する。
2.1.1.活物質
活物質を構成する材料としては特に制限はなく、目的とする蓄電デバイスの種類により適宜適当な材料を選択することができる。活物質としては、例えば、炭素材料、ケイ素材料、リチウム原子を含む酸化物、鉛化合物、錫化合物、砒素化合物、アンチモン化合物、アルミニウム化合物などを挙げることができる。
上記炭素材料としては、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
上記ケイ素材料としては、例えば、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素合金などを挙げることができるほか、例えばSiC、SiO(0<x≦3、0<y≦5)、Si、SiO、SiO(0<x≦2)で表記されるSi酸化物複合体(例えば特開2004−185810号公報や特開2005−259697号公報に記載されている材料など)、特開2004−185810号公報に記載されたケイ素材料を使用することができる。
上記ケイ素酸化物としては、組成式SiO(0<x<2、好ましくは0.1≦x≦1)で表されるケイ素酸化物が好ましい。上記ケイ素合金としては、ケイ素と、チタン、ジルコニウム、ニッケル、銅、鉄およびモリブデンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属との合金が好ましい。これらの遷移金属のケイ素合金は、高い電子伝導度を有し、かつ高い強度を有することから好ましく用いられる。また、活物質がこれらの遷移金属を含むと、活物質の表面に存在する遷移金属が酸化されて表面に水酸基を有する酸化物となる。その結果、活物質とバインダーとの結着力がより良好になる。
ケイ素合金としては、ケイ素−ニッケル合金またはケイ素−チタン合金を使用することがより好ましく、ケイ素−チタン合金を使用することが特に好ましい。ケイ素合金におけるケイ素の含有割合は、該合金中の金属元素の全部に対して10モル%以上とすることが好ましく、20〜70モル%とすることがより好ましい。なお、ケイ素材料は、単結晶、多結晶および非晶質のいずれであってもよい。
また、活物質としてケイ素材料を用いる場合には、ケイ素材料以外の活物質を併用してもよい。このような活物質としては、例えば上記の炭素材料;ポリアセンなどの導電性高分子;A(但し、Aはアルカリ金属または遷移金属、Bはコバルト、ニッケル、アルミニウム、スズ、マンガンなどの遷移金属から選択される少なくとも1種、Oは酸素原子を表し、X、YおよびZはそれぞれ1.10>X>0.05、4.00>Y>0.85、5.00>Z>1.5の範囲の数である)で表される複合金属酸化物や、その他の金属酸化物などが例示される。これらの中でも、リチウムの吸蔵および放出に伴う体積変化が小さいことから、炭素材料を併用することが好ましい。
上記リチウム原子を含む酸化物としては、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO、Li0.90Ti0.05Nb0.05Fe0.30Co0.30Mn0.30POなどが挙げられる。
活物質の形状は、粒状であることが好ましい。活物質の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.3〜20μmであることがより好ましい。
活物質の使用割合は、活物質100質量部に対する重合体(A)と重合体(B)との合計量が、0.1〜25質量部となるような使用割合が好ましく、0.5〜15質量部となるような使用割合がより好ましい。このような使用割合とすることにより、密着性により優れ、しかも電極抵抗が小さく充放電特性により優れた活物質層を製造することができる。
2.1.2.その他の添加剤
蓄電デバイス電極用スラリーには、必要に応じて導電助剤、非水系媒体、増粘剤、pH調整剤、腐食防止剤などを添加することができる。
2.1.2.1.導電助剤
導電助剤の具体例としては、リチウムイオン二次電池の場合はカーボンなどが挙げられ、ニッケル水素二次電池の正極の場合は酸化コバルトが挙げられ、ニッケル水素二次電池の負極の場合はニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどが挙げられる。
リチウムイオン二次電池およびニッケル水素二次電池において、カーボンとしては、グラファイト、活性炭、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレンなどを挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラックまたはファーネスブラックを好ましく使用することができる。導電助剤の使用割合は、活物質100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1〜15質量部である。
2.1.2.2.非水系媒体
蓄電デバイス電極用スラリーは、その塗布性を改善する観点から、80〜350℃の標準沸点を有する非水系媒体を含有することができる。このような非水系媒体の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;トルエン、キシレン、n−ドデカン、テトラリンなどの炭化水素;2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、ラウリルアルコールなどのアルコール;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン;酢酸ベンジル、酪酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル;o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどのアミン化合物;γ−ブチロラクトン、δ−ブチロラクトンなどのラクトン;ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド・スルホン化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
2.1.2.3.増粘剤
蓄電デバイス電極用スラリーは、その流動性や安定性を調整する観点から、増粘剤を含有することができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース化合物;上記セルロース化合物のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸、変性ポリ(メタ)アクリル酸などのポリカルボン酸;上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系(共)重合体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸とビニルエステルとの共重合体の鹸化物などの水溶性ポリマーなどを挙げることができる。
2.1.2.4.pH調整剤、腐食防止剤
蓄電デバイス電極用スラリーは、塗布する集電体の腐食を抑制することを目的として、活物質の種類に応じ、pH調整剤や腐食防止剤を含有することができる。
pH調整剤としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、ギ酸、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどを挙げることでき、硫酸および硫酸アンモニウムが好ましい。
腐食防止剤としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸ナトリウム、メタタングステン酸カリウム、パラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムなどが挙げられ、パラタングステン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウムが好ましい。
2.1.3.蓄電デバイス電極用スラリーの製造方法
蓄電デバイス電極用スラリーは、上述の蓄電デバイス用バインダー組成物と、活物質と、必要に応じて用いられる水や添加剤と、を混合することにより製造することができる。これらの混合は公知の攪拌方法によって行うことができ、例えば攪拌機、脱泡機、ビーズミル、高圧ホモジナイザーなどを利用して混合することができる。
上記の混合は、蓄電デバイス電極用スラリー中に活物質の凝集体が残らない程度に撹拌し得る混合機と、必要にして十分な分散条件とを選択して行うことが好ましい。蓄電デバイス電極用スラリーにおける分散の程度は粒ゲージにより測定可能である。少なくとも、100μmより大きい凝集物が蓄電デバイス電極用スラリー中になくなるように混合分散することが好ましい。このような条件に適合する混合機としては、例えばボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを例示することができる。
2.2.保護層用スラリー
「保護層用スラリー」を電極またはセパレーターの表面もしくはその両方に塗布した後、乾燥させて、電極またはセパレーターの表面もしくはその両方に保護層を形成することができる。護層用スラリーは、上述した蓄電デバイス用バインダー組成物と、フィラーと、を含有する。以下、保護層用スラリーに含まれる各成分について詳細に説明する。
2.2.1.フィラー
保護層用スラリーはフィラーを含有するので、形成される保護層にフィラーが含まれ、保護層のタフネスが向上する。フィラーとしては、シリカ、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)などを用いることができる。これらの中でも、保護層のタフネスをより向上させる観点から、酸化チタン、酸化アルミニウムが好ましい。また、酸化チタンとしてはルチル型の酸化チタンがより好ましい。
フィラーの平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.1〜0.8μmの範囲内であることがより好ましい。フィラーの平均粒子径は、多孔質膜であるセパレーターの平均孔径よりも大きいことが好ましい。フィラーの平均粒子径がセパレーターの平均孔径よりも大きい場合、フィラーによるセパレーターへのダメージを軽減し、フィラーがセパレーターの微多孔に詰まることを抑制できる。
保護層用スラリーは、フィラー100質量部に対して、上述の重合体(A)と重合体(B)とを合計で0.1〜20質量部含有することが好ましく、1〜10質量部含有することがより好ましい。重合体(A)と重合体(B)との合計含有量が0.1〜20質量部であることにより、形成される保護層のタフネスとリチウムイオンの透過性とのバランスが良好となり、その結果、得られる蓄電デバイスの抵抗上昇率をより低くすることができる。
2.2.2.その他の添加剤
保護層用スラリーは、必要に応じて、前述の蓄電デバイス電極用スラリー「2.1.2.その他の添加剤」の項に記載されている材料を、同項に記載されている添加量で含有することができる。
2.2.3.保護層用スラリーの製造方法
保護層用スラリーは、前述の蓄電デバイス用バインダー組成物と、フィラーと、必要に応じて用いられる添加剤と、を混合することにより調製される。これらを混合するための手段としては、例えばボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどの公知の混合装置を利用することができる。
上記の混合は、保護層用スラリー中にフィラーの凝集体が残らない程度に撹拌し得る混合機と、必要にして十分な分散条件とを選択して行うことが好ましい。保護層用スラリーにおける分散の程度は粒ゲージにより測定可能である。少なくとも、100μmより大きい凝集物が保護層用スラリー中になくなるように混合分散することが好ましい。このような条件に適合する混合機としては、例えばボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを例示することができる。
3.蓄電デバイス電極
本実施の形態に係る蓄電デバイス電極は、集電体と、前記集電体の表面上に上述の蓄電デバイス電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された活物質層と、を備えるものである。かかる蓄電デバイス電極は、金属箔などの適宜の集電体の表面に、前述の蓄電デバイス電極用スラリーを塗布して塗膜を形成し、次いで該塗膜を乾燥して活物質層を形成することにより製造することができる。
このようにして製造された蓄電デバイス電極は、集電体上に、重合体(A)および重合体(B)を含むバインダー、活物質、さらに必要に応じて添加した任意成分を含有する活物質層が結着されてなるものである。かかる蓄電デバイス電極は、集電体と活物質層との密着性に優れるため、電気的特性の一つである充放電レート特性が良好である。
集電体は、導電性材料からなるものであれば特に制限されない。リチウムイオン二次電池においては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属製の集電体を使用できるが、特に正極にアルミニウムを使用し、負極に銅を使用することが好ましい。この場合、集電体と活物質層との密着性、および充放電レート特性が一層良好である。
ニッケル水素二次電池における集電体としては、パンチングメタル、エキスパンドメタル、金網、発泡金属、網状金属繊維焼結体、金属メッキ樹脂板などを使用できる。集電体の形状および厚さは特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものとすることが好ましい。
蓄電デバイス電極用スラリーの集電体への塗布方法についても特に制限はない。塗布方法として、例えばドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、浸漬法、ハケ塗り法などの方法を適宜用いることができる。
蓄電デバイス電極用スラリーの塗布量も特に制限されないが、液状媒体(液状媒体(C)およびその他の添加剤として添加される非水系媒体の双方を包含する概念である)を除去した後に形成される活物質層の厚さが、0.005〜5mmとなる塗布量とすることが好ましく、0.01〜2mmとなる塗布量とすることがより好ましい。
活物質層の厚さが上記範囲内にあることによって、活物質層に効果的に電解液を染み込ませることができる。その結果、活物質層中の活物質と電解液との充放電に伴う金属イオンの授受が容易に行われるため、電極抵抗をより低下させることができる。
また、蓄電デバイス電極を折り畳んだり、捲き回すなどして成形加工する場合においても、活物質層の厚さが上記範囲内にあれば、活物質層が集電体から剥離しにくい。すなわち、活物質層の厚さが上記範囲内にあれば、密着性が良好で、柔軟性に富む蓄電デバイス電極を得ることができる。
蓄電デバイス電極用スラリーを塗布して成る塗膜の乾燥方法(液状媒体の除去方法)についても特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥;真空乾燥;(遠)赤外線、電子線などの照射などの乾燥方法を用いることができる。乾燥速度は、応力集中によって活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥離したりしない程度の速度範囲の中で、できるだけ速く液状媒体が除去できるように適宜に設定することができる。
さらに、蓄電デバイス電極用スラリーを塗布して成る塗膜の乾燥後、集電体をプレスすることにより、活物質層と集電体との密度を高めることが好ましい。プレス方法としては、金型プレスやロールプレスなどの方法が挙げられる。プレスの条件は、使用するプレス機器の種類および活物質層の空孔率および密度の所望値によって適宜に設定されるべきである。
4.保護層
正極、負極またはセパレーターの表面に、前述した保護層用スラリーを塗布して乾燥させることにより保護層を形成することができる。保護層の具体的態様としては、以下に示す3態様が挙げられる。
(1)第1の態様としては、正極および/または負極の活物質層表面に前述の保護層用スラリーを塗布して乾燥させることにより、活物質層表面に保護層を形成することができる。
(2)第2の態様としては、セパレーター表面に、前述の保護層用スラリーを直接塗布して乾燥させることにより、セパレーターの表面に保護層を形成することができる。
(3)第3の態様としては、セパレーター表面に機能層が形成されており、該機能層表面に前述の保護層用スラリーを塗布して乾燥させることにより、機能層表面に保護層を形成することができる。
保護層用スラリーの正極、負極またはセパレーターへの塗布方法については特に制限はない。塗布としては、例えばドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、浸漬法、ハケ塗り法などの方法を適宜用いることができる。
保護層用スラリーの塗布量も特に制限されないが、液状媒体を除去した後に形成される保護層の厚さが、0.5〜4μmとなる塗布量とすることが好ましく、0.5〜3μmとなる塗布量とすることがより好ましい。保護層の膜厚が前記範囲内にあると、電極内部への電解液の浸透性および保液性が良好となると共に、電極の内部抵抗の上昇を抑制することもできる。
保護層用スラリーを塗布して成る塗膜の乾燥方法(液状媒体の除去方法)についても特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥;真空乾燥;(遠)赤外線、電子線などの照射などの乾燥方法を用いることができる。乾燥速度は、応力集中によって保護層に亀裂が入ったり、保護層が集電体から剥離したりしない程度の速度範囲の中で、できるだけ速く液状媒体が除去できるように適宜に設定することができる。具体的には、塗膜の乾燥を、20〜250℃の温度範囲で行うことが好ましく、50〜150℃の温度範囲で行うことがより好ましい。また、塗膜の乾燥を、1〜120分間行うことが好ましく、5〜60分間行うことがより好ましい。
5.蓄電デバイス
本実施の形態に係る蓄電デバイスは、上述の蓄電デバイス電極および上述の保護層を備えるセパレーターの少なくとも一方を備えていればよい。蓄電デバイスの一例である電池は、例えば、以下のように製造できる。まず、正極と負極との間にこれら電極間の短絡を防止するためのセパレーターを挟んで積層し、電極/セパレーター積層体を形成する。あるいは、正極、セパレーター、負極およびセパレーターをこの順序に積層して電極/セパレーター積層体を形成してもよい。
次に、電極/セパレーター積層体を電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、この電池容器に電解液を注入して封口する。なお、電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型など、適宜設定することができる。電池以外の蓄電デバイスも、上記と同様の方法で製造できる。
電解液は、液状でもゲル状でもよく、活物質の種類に応じて、蓄電デバイスに用いられる公知の電解液の中から蓄電デバイスとしての機能を効果的に発現するものを選択すればよい。電解液は、例えば、電解質を適当な溶媒に溶解した溶液である。
上記電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合は、従来から公知のリチウム塩のいずれかを適宜選択して使用することができ、その具体例としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどを例示することができる。ニッケル水素二次電池の場合は、例えば、従来公知の濃度が5モル/リットル以上の水酸化カリウム水溶液を電解液として使用することができる。
上記電解質を溶解するための溶媒は、特に制限されるものではないが、その具体例として、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート化合物;γ−ブチロラクトンなどのラクトン化合物;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル化合物;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。電解液中の電解質の濃度としては、好ましくは0.5〜3.0モル/Lであり、より好ましくは0.7〜2.0モル/Lである。
本実施の形態に係る蓄電デバイスは、電気自動車、バイブリッドカー、トラックなどの自動車に搭載される二次電池またはキャパシタとして好適であるほか、AV機器、OA機器、通信機器などに用いられる二次電池、キャパシタとしても好適である。
6.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
6.1.重合体(A)の合成および評価
6.1.1.重合体P1の合成
容量10Lの撹拌機付き重合缶に、メタノールを60g/hr、酢酸ビニルを800g/hr、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルを300mg/hrの割合で供給して、温度60℃、エチレン圧4.7MPa、平均滞留時間5.0hrの条件で連続重合を行った。
反応液は連続して重合缶から抜き出し、反応液100質量部あたり0.2質量部の重合禁止剤を加えた。その後、酢酸ビニルとメタノールを留去し、エチレン含量55モル%の重合体P1を得た。重合体P1及び後述する重合体P2〜P6は、重合体(A)の一例である。
重合体P1は、繰り返し単位(A1)の一例である酢酸ビニル単位と、繰り返し単位(A2)の一例であるエチレン単位と、繰り返し単位(A3)の一例であるビニルアルコール単位とを、表1に示す含有割合で含む。表1における繰り返し単位の含有割合の単位はモル%である。
Figure 2016134242
また、上記表1に、A3/(A1+A3)の値と、A2/(A1+A2+A3)の値と、重量平均分子量(Mw)とを示す。ここで、A3/(A1+A3)は、繰り返し単位(A1)と繰り返し単位(A3)との合計含有割合を分母とし、繰り返し単位(A3)の含有割合を分子とする値である。また、A2/(A1+A2+A3)は、繰り返し単位(A1)、繰り返し単位(A2)、および繰り返し単位(A3)の合計含有割合を分母とし、繰り返し単位(A2)の含有割合を分子とする値である。
重量平均分子量(Mw)は、以下の条件で測定し、その値は35×10であった。
・測定機器:東ソー株式会社製、GPC(型番:HLC−8020)
・カラム:TSKgel GMH−HR−H×2(東ソー株式会社製)
・溶離液:クロロホルム
・流速:1mL/分
・温度:40℃
・分子量−標準サンプル:単分散ポリスチレン
・検出器:示差屈折率計
・試料濃度:0.3重量%、フィルターろ過後に測定
・注入量:100μL
なお、重合体P1におけるエチレン単位の含有割合は、以下の方法により算出した。まず、重合体P1をジメチルスルホキシド(DMSO−d)に溶解し、濃度約3%のジメチルスルホキシド溶液を調製した。次に、この溶液を、核磁気共鳴法(JEOL製、400MHz NMR測定装置、基準物質:TMS)によって温度50℃で測定して、NMRチャートを得た。
得られたNMRチャートにおいて、δ3.3〜4.0ppm(CH)およびδ1.0〜1.8ppm(CH)のピークに基づく積分値を求め、その積分値からエチレン単位の含有割合を算出した。
6.1.2.重合体P2の合成
基本的には重合体P1の場合と同様にして、重合体P2を合成した。ただし、連続重合時に使用するモノマー比率、重合条件を調整し、重合体P2における繰り返し単位の含有割合が上記表1に示すものとなるようにした。また、重合体P1の場合と同様に、A3/(A1+A3)の値と、A2/(A1+A2+A3)の値と、重量平均分子量(Mw)とを求めた。その結果を上記表1に示す。
6.1.3.重合体P3の合成
容量10Lの撹拌機付き重合缶に、メタノールを60g/hr、酢酸ビニルを900g/hr、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルを300mg/hrの割合で供給して、温度60℃、エチレン圧4.7MPa、平均滞留時間5.0hrの条件で連続重合を行った。反応液は連続して重合缶から抜き出し、反応液100質量部あたり0.2質量部の重合禁止剤を加えた。その後、酢酸ビニルとメタノールを留去し、エチレン含量40モル%の重合体を得た。
この重合体を50%含むメタノール溶液100質量部に、重合体中の酢酸ビニル基に対して0.02当量の水酸化ナトリウムを含有するメタノール溶液150質量部を供給し、ケン化反応を行ない、重合体P3を得た。
次に、含水率62%のメタノール水溶液60質量部を、重合体P3のメタノール溶液に共沸下で供給し、100〜110℃、圧力0.3MPaで、メタノール/水溶液中での重合体P3濃度が40%になるまでメタノールを留出させ、重合体P3のメタノール/水均一溶液を得た。
続いて、得られた重合体P3のメタノール/水均一溶液を、水/メタノール溶液(重量比95/5)よりなる凝固液槽にストランド状に押し出してカッターで切断し、ペレットを得た。次に、そのペレットを30℃の酢酸水溶液中で洗浄後、30℃の酢酸−酢酸ナトリウム水溶液中で5時間撹拌してから、110℃で9時間乾燥して重合体P3のペレットを得た。
重合体P3において、酢酸ビニル単位の含有割合、エチレン単位の含有割合、およびビニルアルコール単位の含有割合は、それぞれ、上記表1に示すとおりであった。また、重合体P1の場合と同様に、A3/(A1+A3)の値と、A2/(A1+A2+A3)の値と、重量平均分子量(Mw)とを求めた。その結果を上記表1に示す。
6.1.4.重合体P4〜P6
基本的には重合体P3の場合と同様にして、重合体P4〜P6を合成した。ただし、連続重合時に使用するモノマー比率、重合条件、ケン化条件を調整し、重合体P4〜P6における繰り返し単位の含有割合が上記表1に示すものとなるようにした。また、重合体P1の場合と同様に、A3/(A1+A3)の値と、A2/(A1+A2+A3)の値と、重量平均分子量(Mw)とを求めた。その結果を上記表1に示す。
6.2.重合体(B)の作製
6.2.1.重合体S1の合成
電磁式撹拌機を備えた内容積約6Lのオートクレーブの内部を十分に窒素置換した後、脱酸素した純水2.5Lおよび乳化剤(パーフルオロデカン酸アンモニウム)25gをオートクレーブ内に導入し、350rpmで撹拌しながら60℃まで昇温した。
次いで、単量体であるフッ化ビニリデン(VDF)70%および六フッ化プロピレン(HFP)30%からなる混合ガスを、内圧が20kg/cmに達するまでオートクレーブ内に導入した。
次に、重合開始剤(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート)を20%含有するフロン113溶液25gを、窒素ガスを使用してオートクレーブ内に圧入し、重合を開始した。重合中は、VDF60.2%およびHFP39.8%からなる混合ガスを逐次圧入して、オートクレーブ内の圧力を20kg/cmに維持した。
また、重合が進行するに従って重合速度が低下するため、3時間経過後に、先と同じ組成および量の重合開始剤の溶液を、窒素ガスを使用して圧入し、さらに3時間反応を継続した。その後、反応液を冷却すると同時に撹拌を停止し、未反応の単量体を放出した後に反応を停止した。その結果、重合体の微粒子を40%含有する水系分散体を得た。得られた重合体を、19F−NMRにより分析したところ、各単量体の質量組成比はVDF/HFP=21/4であった。
容量7Lのセパラブルフラスコの内部を十分に窒素置換した後、上記の工程で得られた重合体の微粒子を含有する水系分散体1,600g(重合体換算で25質量部に相当)、乳化剤「アデカリアソープSR1025」(商品名、株式会社ADEKA製)0.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)30質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)40質量部、およびメタクリル酸(MAA)5質量部ならびに水130質量部を順次セパラブルフラスコ内に導入し、70℃で3時間攪拌し、重合体に単量体を吸収させた。
次いで、油溶性重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.5質量部を含有するテトラヒドロフラン溶液20mLを添加し、75℃に昇温して3時間反応を行い、さらに85℃で2時間反応を行った。その後、冷却した後に反応を停止し、2.5N水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調節した。その結果、重合体S1を40%含有する水系分散体を得た。
重合体S1における各繰り返し単位の含有割合を表2に示す。また、重合体S1から成る粒子の平均粒子径とガラス転移点も併せて示す。
Figure 2016134242
なお、表2および後述する表3における各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
・VDF:フッ化ビニリデン
・HFP:六フッ化プロピレン
・TFEMA:メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル
・TFEA:アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル
・HFIPA:アクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル
・MMA:メタクリル酸メチル
・EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
・HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
・MAA:メタクリル酸
・AA :アクリル酸
・TA :イタコン酸
・AN :アクリロニトリル
・BD :1,3−ブタジエン
・ST :スチレン
6.2.2.重合体S2〜S10の合成
基本的には重合体S1の場合と同様にして、重合体S2〜S10を含有する水系分散体を得た。ただし、単量体の組成と乳化剤量を適宜に変更し、重合体S2〜S10における繰り返し単位の含有割合が上記表2に示すものとなるようにした。次に、水系分散体の固形分濃度に応じて水を減圧除去または追加することにより、水系分散体における重合体S2〜S10の濃度を40%とした。
重合体S2〜S10における各繰り返し単位の含有割合を上記表2に示す。また、重合体S2〜S10から成る粒子の平均粒子径とガラス転移点も併せて示す。
6.2.3.重合体S11の合成
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水200質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6質量部、過硫酸カリウム1.0質量部、重亜硫酸ナトリウム0.5質量部、α−メチルスチレンダイマー0.2質量部、ドデシルメルカプタン0.2質量部、および表3に示す一段目重合成分を一括して導入し、70℃に昇温し2時間重合反応させた。
Figure 2016134242
重合添加率が80%以上であることを確認した後、反応温度を70℃に維持したまま、上記表3に示す二段目重合成分を6時間かけて添加した。二段目重合成分添加開始から3時間経過した時点で、α−メチルスチレンダイマー1.0質量部およびドデシルメルカプタン0.3質量部を添加した。
二段目重合成分添加終了後、温度を80℃に昇温し、さらに2時間反応させ、重合反応を終了した。重合反応終了後、ラテックスのpHを7.5に調節し、トリポリリン酸ナトリウム5質量部(固形分換算)を添加した。その後、残留モノマーを水蒸気蒸留で処理し、減圧下で固形分30%まで濃縮した。その結果、重合体S11を30%含有する水系分散体を得た。
重合体S11における各繰り返し単位の含有割合を上記表2に示す。また、重合体S11から成る粒子の平均粒子径とガラス転移点も併せて示す。
6.2.4.重合体S12〜S16の合成
基本的には重合体S11の場合と同様にして、重合体S12〜S16を含有する水系分散体を得た。ただし、単量体の組成と乳化剤量を適宜に変更し、重合体S12〜S16における繰り返し単位の含有割合が上記表2に示すものとなるようにした。また、一段目重合成分と二段目重合成分は、上記表3に示すものとした。
次に、水系分散体の固形分濃度に応じて水を減圧除去または追加することにより、水系分散体における重合体S12〜S16の濃度を30%とした。
重合体S12〜S16における各繰り返し単位の含有割合を上記表2に示す。また、重合体S12〜S16から成る粒子の平均粒子径とガラス転移点も併せて示す。
6.3.実施例1
6.3.1.蓄電デバイス用バインダー組成物(正極用)の調製
重合体S1を40%含有する水系分散体に対し、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を使用して溶媒置換を行うことにより、重合体S1を40%含有するNMP組成物を得た。この組成物へ重合体P1を添加して、重合体P1を30質量部含有し、重合体S1を70質量部含有する蓄電デバイス用バインダー組成物(正極用)を調製した。
6.3.2.蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)の調製
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に、上記で作成した蓄電デバイス用バインダー組成物(正極用)を、重合体(A)(重合体P1)と重合体(B)(重合体S1)との合計量が1.5質量部になる量投入した。
さらに、粒子径(D50値)が10μmの市販のニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム(ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)の比率1:1:1)活物質粒子100質量部、および導電助剤(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブラック50%プレス品」)3質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行い、ペーストを得た。
得られたペーストにN−メチルピロリドン(NMP)を加えて固形分濃度を70%に調整した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1,800rpmで5分間、さらに真空下(約5.0×10Pa)において1,800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)を調製した。
表4に、蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)(表4では「正極用スラリー」と表記)が含有する重合体(A)の種類と、重合体(B)の種類と、重合体(B)に対する重合体(A)の配合比(「重合体(A)/重合体(B)」)と、バインダー(重合体(A)および重合体(B))の配合量と、活物質の種類と、活物質の配合量と、導電助剤の種類と、導電助剤の配合量とを示す。
Figure 2016134242
なお、表4および後述する表5における各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
・NMC(111):ユミコア社製、ニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム(ニッケル(Ni):マンガン(Mn):コバルト(Co))が1:1:1)、グレード名「MX−10」
・NMC(532):ユミコア社製、ニッケル・マンガン・コバルト酸リチウム(ニッケル(Ni):マンガン(Mn):コバルト(Co)が5:3:2)、グレード名「TX−10」
・AB:アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック50%プレス)
・黒鉛:日立化成工業株式会社製、商品名「MAG」
6.3.3.蓄電デバイス用バインダー組成物(負極用)の調製
重合体S1を40%含有する水系分散体へ、重合体P1を添加して、重合体P1を30質量部含有し、重合体S1を70質量部含有する蓄電デバイス用バインダー組成物(負極用)を調製した。
6.3.4.蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)の調製
二軸型プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製、商品名「TKハイビスミックス 2P−03」)に、上記で作成した蓄電デバイス用バインダー組成物(負極用)を、重合体(A)(重合体P1)と重合体(B)(重合体S1)との合計量が3質量部となる量投入した。
さらに、負極活物質であるグラファイト100質量部(固形分換算)、および水68質量部を投入し、60rpmで1時間攪拌を行い、ペーストを得た。
得られたペーストに水を投入し、固形分を50%に調整した後、攪拌脱泡機(株式会社シンキー製、商品名「泡とり練太郎」)を使用して、200rpmで2分間、1800rpmで5分間、さらに真空下において1800rpmで1.5分間攪拌混合することにより、蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)を調製した。
上記表4に、蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)(表4では「負極用スラリー」と表記)が含有する重合体(A)の種類と、重合体(B)の種類と、重合体(B)に対する重合体(A)の配合比(「重合体(A)/重合体(B)」)と、バインダー(重合体(A)および重合体(B))の配合量と、活物質の種類と、活物質の配合量と、導電助剤の種類と、導電助剤の配合量とを示す。
6.3.5.蓄電デバイス電極用スラリーの分散安定性の評価
上記で調製した蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)、および蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)の分散安定性を以下のように評価した。
まず、蓄電デバイス電極用スラリーをスクリュー管(110ml)に100g充填し、25℃で24時間貯蔵した。その後、活物質の分散状態を目視にて評価した。凝集が生じていない場合は分散安定性が良好(○)と評価し、凝集が生じている場合は分散安定性が不良(×)と評価した。評価結果を上記表4における「活物質の凝集状態」の行に示す。なお、活物質層を均質に作成するためには貯蔵後の蓄電デバイス電極用スラリーにおいて活物質の凝集が観察されないことが必要である。
6.3.6.蓄電デバイス電極用スラリーのせん断粘度の評価
上記で調製した蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)、および蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)のせん断粘度を以下のように測定した。
まず、蓄電デバイス電極用スラリーをスクリュー管(110ml)に100g充填し、25℃で24時間貯蔵した。その後、蓄電デバイス電極用スラリーのせん断粘度を、MCRレオメーター(Anton Paar Physica MCR301)を用い、25℃、せん断速度10(1/s)の速度で測定した。
せん断粘度の測定値に基づき、以下の評価基準により、評価を行った。
非常に良好(◎):せん断粘度=1〜10Pa・s
良好(○):せん断粘度=10〜50Pa・s
やや不良(△):せん断粘度=50〜100Pa・s
不良(×):せん断粘度は100Pa・sより大きい
なお、活物質層を均質に作成するためには貯蔵後の蓄電デバイス電極用スラリーの粘度が1〜10Pa・s程度であることが望ましく、粘度が10〜50Pa・sまでならば許容でき、粘度が50〜100Pa・sであれば工程を工夫することにより使用することができる。しかしながら、粘度が100Pa・sより大きくなると、均質な電極の製造が困難となり、電極の生産性が低下する。
6.3.7.正極、負極の製造
アルミニウム箔からなる集電体の表面に、上記「6.3.2.蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)の調製」で調製した蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)を、乾燥後の膜厚が250μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で10分間乾燥して膜を形成した。その後、膜(活物質層)の密度が3.0g/cmになるようにロールプレス機によりプレス加工することにより、正極を得た。
銅箔からなる集電体の表面に、上記「6.3.4.蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)の調製」で調製した蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)を、乾燥後の膜厚が250μmとなるようにドクターブレード法によって均一に塗布し、120℃で20分間乾燥して膜を形成した。その後、膜(活物質層)の密度が1.5g/cmとなるようにロールプレス機を使用してプレス加工することにより、負極を得た。
6.3.8.リチウムイオン電池セルの組立ておよび評価
(1)リチウムイオン電池セルの組立て
露点が−80℃以下となるようAr置換されたグローブボックス内で、上記で製造した負極を直径15.95mmに打ち抜き成型したものを、2極式コインセル(宝泉株式会社製、商品名「HSフラットセル」)上に載置した。次いで、直径24mmに打ち抜いたポリプロピレン製多孔膜からなるセパレーター(セルガード株式会社製、商品名「セルガード#2400」)を載置し、さらに、空気が入らないように電解液を500μL注入した後、上記で製造した正極を直径16.16mmに打ち抜き成型したものを載置し、前記2極式コインセルの外装ボディーをネジで閉めて封止することにより、リチウムイオン電池セル(蓄電デバイス)を組み立てた。ここで使用した電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1(質量比)の溶媒に、LiPFを1モル/Lの濃度で溶解した溶液である。
(2)充放電レート特性の評価
上記で製造したリチウムイオン電池セル(以下では、単に「セル」と呼ぶこともある)につき、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになるまで充電を行った。さらに、定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として、0.2Cでの充電容量を測定した。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、0.2Cでの放電容量を測定した。
次に、同じセルにつき、定電流(3C)にて充電を開始し、電圧が4.2Vになるまで充電を行った。さらに、定電圧(4.2V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)として3Cでの充電容量を測定した。次いで、定電流(3C)にて放電を開始し、電圧が2.7Vになった時点を放電完了(カットオフ)とし、3Cでの放電容量を測定した。
上記の測定値を用いて、0.2Cでの充電容量に対する3Cでの充電容量の割合(百分率%)を計算することにより充電レート(%)を算出した。また、0.2Cでの放電容量に対する3Cでの放電容量の割合(百分率%)を計算することにより放電レート(%)を算出した。充電レートおよび放電レートの双方が80%以上のとき、充放電レート特性は良好であると評価することができる。測定された充電レートおよび放電レートの値を、上記表4にそれぞれ示した。
(3)抵抗上昇率の測定
上記で製造したリチウムイオン電池セルを25℃の恒温槽に入れ、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.1Vになるまで充電を行った。さらに、定電圧(4.1V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。
この充電状態のセルについてEIS測定(“Electrochemical Inpedance Spectroscopy”、「電気化学インピーダンス測定」)を行い、初期の抵抗値EISaを測定した。
次に、初期の抵抗値EISaを測定したセルを60℃の恒温槽に入れ、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.4Vになるまで充電を行った。さらに、定電圧(4.4V)にて充電を168時間続行した(過充電の加速試験)。
その後、この充電状態のセルを25℃の恒温槽に入れてセル温度を25℃に低下させてから、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.5Vになった時点を放電完了(カットオフ)として、0.2Cにおける放電容量(試験後)の値であるC2を測定した。
上記のように放電容量を測定した後のセルを25℃の恒温槽に入れ、定電流(0.2C)にて充電を開始し、電圧が4.1Vになるまで充電を行った。さらに、定電圧(4.1V)にて充電を続行し、電流値が0.01Cとなった時点を充電完了(カットオフ)とした。次いで、定電流(0.2C)にて放電を開始し、電圧が2.5Vになった時点を放電完了(カットオフ)とした。このセルのEIS測定を行い、熱ストレスおよび過充電ストレス印加後の抵抗値であるEISbを測定した。
上記の各測定値を下記式(8)および下記式(9)に代入して残存容量率および抵抗上昇率をそれぞれ求めた。求めた抵抗上昇率を上記表4に示す。
式(8):残存容量率(%)=(C2/C1)×100
式(9):抵抗上昇率(%)=((EISb−EISa)/EISa)×100
この残存容量率が75%以上であり、かつ、抵抗上昇率300%以下であるとき、耐久性は良好であると評価することができる。
なお、上記測定条件において「1C」とは、ある一定の電気容量を有するセルを定電流放電して1時間で放電終了となる電流値を示す。例えば「0.1C」とは、10時間かけて放電終了となる電流値のことであり、「10C」とは0.1時間かけて放電完了となる電流値のことをいう。
6.4.実施例2〜6、比較例1〜7
基本的には前記実施例1と同様に、実施例2〜6、比較例1〜7の蓄電デバイス電極用スラリー(正極用)を調製した。
ただし、重合体(A)の種類と、重合体(B)の種類と、重合体(B)に対する重合体(A)の配合比(「重合体(A)/重合体(B)」)と、バインダー(重合体(A)および重合体(B))の配合量と、活物質の種類と、活物質の配合量と、導電助剤の種類と、導電助剤の配合量とを、上記表4および表5に示すとおりとした。
Figure 2016134242
また、基本的には前記実施例1と同様に、実施例2〜6、比較例1〜7の蓄電デバイス電極用スラリー(負極用)を調製した。
ただし、重合体(A)の種類と、重合体(B)の種類と、重合体(B)に対する重合体(A)の配合比(「重合体(A)/重合体(B)」)と、バインダー(重合体(A)および重合体(B))の配合量と、活物質の種類と、活物質の配合量と、導電助剤の種類と、導電助剤の配合量とを、上記表4および表5に示すとおりとした。
実施例2〜6、比較例1〜7についても、前記実施例1と同様に、評価を行った。その結果を上記表4および表5に示す。
上記表4および表5から明らかなように、実施例1〜6における蓄電デバイス用バインダー組成物を用いることにより、良好なスラリー特性を得ることができる。また、実施例1〜6における蓄電デバイス用バインダー組成物により作成された電極を備える蓄電デバイス(リチウムイオン電池)は、蓄電デバイス特性が良好であった。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。

Claims (7)

  1. 重合体(A)と、
    重合体(B)と、
    液状媒体(C)と、
    を含有し、
    前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)を含有し、
    前記重合体(B)が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする蓄電デバイス用バインダー組成物。
    Figure 2016134242
    (上記一般式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。)
  2. 重合体(A)と重合体(B)との合計100質量部に対し、重合体(A)の含有量は10〜95質量部であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
  3. 前記重合体(A)が、さらに、下記一般式(2)で示される繰り返し単位(A2)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
    Figure 2016134242
    (上記一般式(2)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはハロゲン原子を表す。)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物と、活物質と、を含有することを特徴とする蓄電デバイス電極用スラリー。
  5. 集電体と、前記集電体の表面上に請求項4に記載の蓄電デバイス電極用スラリーが塗布および乾燥されて形成された層と、を備えることを特徴とする蓄電デバイス電極。
  6. 集電体と、
    前記集電体の表面上に形成された、重合体(A)、重合体(B)、および活物質を含む層と、
    を備え、
    前記重合体(A)が、下記一般式(3)で示される繰り返し単位(A3)を含有し、
    前記重合体(B)が、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンおよび六フッ化プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも2種に由来する繰り返し単位を含有することを特徴とする蓄電デバイス電極。
    Figure 2016134242
    (上記一般式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、またはハロゲン原子を表す。)
  7. 請求項5または6に記載の蓄電デバイス電極を備える蓄電デバイス。
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JP7466979B2 (ja) 2020-11-27 2024-04-15 エルジー・ケム・リミテッド 二次電池の負極用バインダー、二次電池の負極および二次電池

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