[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態に係る通信モジュールは、レセプタクル側の通信装置と電気的に接続される通信部を収容し、通信装置のケージに挿入されるハウジングと、ケージにハウジングが挿入される際にケージと係合するラッチを有し、ハウジングに動作可能に取り付けられたアクチュエータと、アクチュエータを動作させることにより、ラッチとケージとが係合している係合状態からラッチとケージとの係合が解除されている非係合状態に切り替える解除機構と、係合状態においてアクチュエータの動作を規制する保持機構とを備える。
この通信モジュールでは、保持機構が係合状態におけるアクチュエータの動作を規制する。従って、係合状態において外力が解除機構等に加わった場合であっても、保持機構がこれに抗い、ラッチとケージとの係合が解除されることを防ぐ。故に、この通信モジュールによれば、係合状態において意図しない外力が加わった場合であっても、ラッチを外れにくくすることができる。
上記の通信モジュールにおいて、保持機構は解除機構と一体に構成されており、解除機構の係合状態から非係合状態への切り替えに連動して保持機構が動作の規制を解除してもよい。これにより、解除機構がラッチとケージとの係合を解除すると保持機構が自動的に規制を解除するので、保持機構による規制を容易に解除することができる。
上記の通信モジュールにおいて、解除機構は、アクチュエータに対してハウジングの挿抜方向にスライドするプルタブを含み、プルタブのスライド動作に連動してアクチュエータを動作させ、プルタブのスライド動作において、アクチュエータが動作しない第1区間と、その後にアクチュエータが動作する第2区間とが存在してもよい。この通信モジュールでは、コネクタをハウジングから抜出する際、プルタブをスライドさせてアクチュエータを動作させることによりラッチとケージとの係合を解除する。その際、はじめの第1区間ではアクチュエータが動作しないので、ある程度プルタブをスライドさせても、ラッチとケージとの係合は解除されない。従って、意図しない外力がプルタブに加わった場合であっても、直ちにラッチとケージとの係合が解除されることはない。故に、この通信モジュールによれば、プルタブへの意図しない外力に対してラッチを外れにくくすることができる。
上記の通信モジュールにおいて、保持機構は、解除機構から挿抜方向前方に突出するクサビを含み、クサビは、第1区間内ではアクチュエータの動作方向においてアクチュエータと当接し、第2区間内ではアクチュエータから離れてもよい。これにより、アクチュエータの動作を規制する機構を容易に実現できる。また、クサビを抜くだけで容易に規制を解除できるので、保持機構を解除機構の切り替え動作に容易に連動させることができる。
上記の通信モジュールにおいて、アクチュエータは、ハウジングに回動可能に支持される支持部と、プルタブのスライド動作に連動してアクチュエータの回動軸の方向及び挿抜方向の双方と交差する第1方向に移動する連結部とを有し、ラッチは、支持部および連結部に対して挿抜方向前方に位置し、連結部の移動により係合状態から非係合状態に切り替わってもよい。このような構造によれば、上述したアクチュエータ及び解除機構を容易に実現できる。更に、連結部は突起であり、解除機構は突起を収容するレールを有し、突起は、挿抜方向において支持部とラッチとの間に位置し、レールは、挿抜方向に延びており第1区間を定義する第1部分と、挿抜方向に対して第1方向に傾斜して延びており第2区間を定義する第2部分とを含んでもよい。これにより、プルタブがスライドしてもアクチュエータが動作しない第1区間と、その後のプルタブのスライドによりアクチュエータが動作する第2区間とを容易に実現できる。更に、係合状態において、動作方向から見てアクチュエータと重なるクサビの部分の挿抜方向における長さは、突起と第1部分との接点と、第2部分との距離に等しくてもよい。これにより、係合状態においてアクチュエータの動作を規制しているクサビの部分の長さが、第1部分から第2部分までの突起の移動距離に等しくなる。従って、プルタブのスライドによってアクチュエータが動作し始める第2区間に入ると同時にクサビが外れるので、第1区間内ではクサビがアクチュエータと当接し、第2区間内ではクサビがアクチュエータから離れる構成を容易に実現できる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照しながら、本発明の通信モジュールの一態様について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信モジュールを斜め下方から見た斜視図である。本実施形態の通信モジュール1Aは、複数の同軸ケーブルがシース内に収容されてなるケーブル束10の端部に取り付けられている。通信モジュール1Aは、金属製のハウジング20と、ハウジング20の下面に取り付けられたアクチュエータ30と、ハウジング20の下面から後方に延びる解除機構40と、ハウジング20に収容された通信部50と、ストレインリリーフ60とを備えている。
ハウジング20は、通信モジュール1Aの挿抜方向A1に沿って延びる直方体状を呈している。ハウジング20は、ボトムハウジング21及びカバー22を有する。ボトムハウジング21は、挿抜方向A1の前方に位置する前端21aと、挿抜方向A1の後方に位置する後端21bとを有する。更に、ボトムハウジング21は、後端21bから前端21aにわたって延びており挿抜方向A1と交差する或る方向A2に並んで互いに対向する側面21c及び21dを有する。また、ボトムハウジング21は、側面21cと側面21dとを繋ぐ底面21eを有する。カバー22は、ボトムハウジング21を上方から覆い、挿抜方向A1及び方向A2の双方と交差する方向A3(第1方向)において、ボトムハウジング21の底面21eと対向している。
アクチュエータ30は、通信装置のケージにハウジング20が挿入される際にケージと係合するラッチ31を有する。アクチュエータ30は、ラッチ31とケージとの係合の解除を可能とするため、ハウジング20に対する動作(本実施形態では回動動作)が可能なように、ハウジング20に取り付けられている。ラッチ31は、ボトムハウジング21から下方へ突出することによりケージと係合し、ボトムハウジング21内に引っ込むことにより係合を解除する。また、解除機構40は、アクチュエータ30を動作させることにより、ラッチ31とケージとが係合している状態(以下、係合状態という)から、ラッチ31とケージとの係合が解除されている状態(以下、非係合状態という)に切り替える。本実施形態の解除機構40は、アクチュエータ30に対して挿抜方向A1にスライドするプルタブ41を含んでおり、プルタブ41のスライド動作に連動して、アクチュエータ30を動作させる。なお、アクチュエータ30及び解除機構40の詳細な構成については後述する。
通信部50は、図示しないレセプタクル側の通信装置と電気的に接続される。通信部50は回路基板51を有しており、回路基板51の先端部は、ボトムハウジング21の前端21aに設けられた開口から露出している。通信部50は、この露出した部分において、レセプタクル側の通信装置が有する電気コネクタと電気的に接続される。また、ボトムハウジング21の後端21bも開口しており、該開口にはケーブル束10が挿入される。ケーブル束10に含まれる複数の同軸ケーブルの伝送路(中心導体)は、回路基板51に半田付けされることにより固定される。
ストレインリリーフ60は、ケーブル束10に含まれる各同軸ケーブルとハウジング20との接続部を覆うとともに、ケーブル束10の端末部をハウジング20に固定する。これにより、ストレインリリーフ60がケーブル束10の過度な曲げを抑制し、ケーブル束10が安定してハウジング20に固定される。なお、ケーブル束10のハウジング20への取り付け構造は本実施形態のものに限られず、例えばケーブル束10がハウジング20に対して着脱可能であっても良い。
図2は、通信モジュール1Aのハウジング20が挿入されるレセプタクル側の通信装置90を示す切り欠き斜視図である。図2に示されるように、この通信装置90は、レセプタクルコネクタ91と、レセプタクルコネクタ91及び通信モジュール1Aのハウジング20(図1参照)を収容する金属製のケージ92とを備える。ケージ92は、挿抜方向A1に沿って延びる中空の略直方体状を呈しており、方向A2において互いに対向する一対の側板92a,92bと、方向A3において互いに対向する天板92c及び底板92dとを有する。また、挿抜方向A1におけるケージ92の一端は開口しており、該開口からハウジング20が挿入される。更に、ケージ92は、底板92dから下方へ突出する複数の端子93を有しており、該複数の端子93がレセプタクル側の図示しない回路基板上に固定されることにより、通信装置90が該回路基板上に実装される。
レセプタクルコネクタ91は、挿抜方向A1におけるケージ92内部の他端に配置されている。レセプタクルコネクタ91は、方向A2に沿って並ぶ複数の端子91aを有しており、該複数の端子91aと回路基板51(図1参照)の金属パッドとが互いに接触することにより、通信部50と電気的に接続される。また、レセプタクルコネクタ91は、レセプタクル側の図示しない回路基板に実装されており、該回路基板上の各種電子部品と電気的に接続されている。
ケージ92の開口付近の底板92dには、係合部94が形成されている。本実施形態の係合部94は、ケージ92と一体として形成され、例えば底板92dの一端が切り欠かれることにより構成されている。一例では、挿抜方向A1における係合部94の基端のみが底板92dに連結され、係合部94は方向A3に弾性変形することが可能である。係合部94には、通信モジュール1Aのラッチ31(図1参照)を受ける係合穴94aが形成されており、ラッチ31が係合穴94aと係合することにより、通信部50とレセプタクルコネクタ91との電気的な接続状態が保持される。
図3は、図1に示されたケーブル束10に含まれる複数の同軸ケーブル11のうち一つを拡大して示す斜視図である。図3に示されるように、同軸ケーブル11は、電気的な高周波信号を伝送する伝送路(中心導体)13と、伝送路13を覆う内部絶縁層14と、内部絶縁層14を覆うシールド15と、シールド15を覆う外被16とを含んで構成されている。伝送路13は、例えば銅合金製である。内部絶縁層14は、絶縁樹脂等により構成されている。シールド15は、外被16と伝送路13との間(本実施形態では内部絶縁層14と外被16との間)に介在して伝送路13を覆っており、銅合金等によって構成される導体が横巻きされて成る横巻きシールドである。外被16は、内部絶縁層14同様、絶縁樹脂等により構成されている。このような同軸ケーブル11が回路基板51に実装される際には、図3に示されるように、先端から順に、伝送路13、内部絶縁層14、シールド15がそれぞれ所定長さだけ露出するように、各層の除去が行われる。
図4は、通信部50を示す平面図である。前述したように、通信部50は、回路基板51を有する。回路基板51の表面上には、複数の同軸ケーブル11が実装されている。具体的には、回路基板51の表面上に同軸ケーブル11と同数の金属パッド52が設けられており、各金属パッド52に、対応する同軸ケーブル11の伝送路13がはんだ付けされている。回路基板51上において、複数の同軸ケーブル11は方向A2に沿って並んでおり、複数の金属パッド52も同様に方向A2に沿って並んでいる。なお、図4に示される例では、4本の同軸ケーブル11が4つの金属パッド52にそれぞれ実装されている。これらの同軸ケーブル11および金属パッド52は2本ずつ2組に分かれており、一方の組は送信信号としての差動信号(正相信号および逆相信号)を伝送し、他方の組は受信信号としての差動信号を伝送する。
回路基板51の表面上には、方向A2に沿って延びる金属製の一つの共通グランドパッド53が設けられている。各同軸ケーブル11は共通グランドパッド53と重なるように配置されており、この各同軸ケーブル11のシールド15は、この共通グランドパッド53にはんだ付けされている。
また、回路基板51は、ハウジング20(図1参照)から露出してレセプタクルコネクタ91(図2参照)と接続される接続部54を先端に有する。接続部54には、複数の金属パッド55が形成されている。各金属パッド55は、レセプタクルコネクタ91の対応する端子91aと電気的に接続される。複数の金属パッド55は、信号を伝送するシグナルパッド55a、グランド(接地電位)に接続されるグランドパッド55b、および電源供給等を行うパワーライン55cを含む。シグナルパッド55aは、回路基板51上の配線を介して、対応する金属パッド52と電気的に接続されている。或いは、シグナルパッド55aは、回路基板51上の電子部品(波形成形回路等)を介して、対応する金属パッド52に接続されてもよい。また、グランドパッド55bは、回路基板51上の配線を介して、共通グランドパッド53及び回路基板51上の電子部品と電気的に接続されている。パワーライン55cは、回路基板51上の配線を介して、回路基板51上の電子部品と電気的に接続されている。
ここで、本実施形態のアクチュエータ30及び解除機構40の構成について、詳細に説明する。図5は、通信モジュール1Aのアクチュエータ30及び解除機構40付近の構成を拡大して示す斜視図である。図6は、解除機構40を構成するプルタブ41を示す斜視図である。図7は、アクチュエータ30を拡大して示す斜視図である。図8は、アクチュエータ30を支持するボトムハウジング21を示す斜視図である。
まず、解除機構40について説明する。前述したように、解除機構40はプルタブ41を含んで構成される。プルタブ41は、挿抜方向A1に沿って延びる樹脂製の部材である。図5及び図6に示されるように、プルタブ41は、挿抜方向A1における後端側に設けられた略円環状のハンドル42と、前端側に設けられた解除動作部43とが一体に構成されて成る。解除動作部43は、挿抜方向A1及び方向A2に沿って延びる板状の部材であり、方向A2における中央付近に、圧縮コイルばね44(図5参照)を収容するばね収容部43aを有する。
また、図6に示されるように、解除動作部43は、スライド可能なようにアクチュエータ30に支持されるためのスライドガイド43bを有する。スライドガイド43bは、方向A2における解除動作部43の両側面に形成されている。スライドガイド43bでは、方向A3においてアクチュエータ30の突起(後述)と当接する平坦面が挿抜方向A1に沿って延びている。また、解除動作部43は、スライド時にアクチュエータ30を回動動作させるためのレール43cを更に有する。レール43cは、方向A2における解除動作部43の両側面において、スライドガイド43bよりも前方(ラッチ31寄り)に形成されている。レール43cは、挿抜方向A1に対して方向A3に傾斜する溝であり、このレール43cにはアクチュエータ30の別の突起(後述)が収容される。なお、レール43cは、方向A3においてスライドガイド43bよりも下方に形成されている。
また、解除動作部43は、ラッチ31とケージ92の係合部94(図2参照)との係合状態においてアクチュエータ30の動作を規制する、保持機構としての一対のクサビ46を更に有する。一対のクサビ46は、レール43cの先端において解除動作部43と一体に構成されており、挿抜方向A1の前方へ突出している。なお、クサビ46の作用については後述する。
プルタブ41は、上記のように解除動作部43が挿抜方向A1に沿ってスライド可能なようにアクチュエータ30に支持されることにより、アクチュエータ30を介してボトムハウジング21に取り付けられている。また、解除動作部43は、圧縮コイルばね44によって前方に付勢されている。プルタブ41に操作者の指が掛けられ、挿抜方向A1の後方に引っ張られると、圧縮コイルばね44の付勢力に逆らって解除動作部43がアクチュエータ30に対し後方にスライドする。
また、プルタブ41のハンドル42と解除動作部43との間には、ケーブル挿通孔45が設けられている。ケーブル挿通孔45には、ハウジング20の後端から延出するケーブル束10が挿通されている。これにより、解除動作部43及びハンドル42の位置がケーブル束10に対して互いに逆側になるので、ハンドル42を引っ張る力をバランス良く通信モジュール1Aに及ぼすことができ、通信モジュール1Aの抜去作業が容易となる。
次に、アクチュエータ30について説明する。図7に示されるように、アクチュエータ30は、図2に示されたケージ92の係合部94と係合するラッチ31と、挿抜方向A1の後方に開口するU字状といった平面形状の枠部33とを有する。枠部33は、プルタブ41の解除動作部43を内側に受け入れる。
ラッチ31は、挿抜方向A1における枠部33の前端から前方に突出して設けられており、鈎状の先端部を有する。具体的には、ラッチ31の鈎状部分の前端面31aは挿抜方向A1に対して傾斜しており、通信モジュール1Aがケージ92に挿入される際には、ケージ92の係合部94が、前端面31aに沿って弾性変形することによりラッチ31に乗り上げる。また、ラッチ31の鈎状部分の後端面31bは挿抜方向A1に対して略垂直となっており、ラッチ31が係合穴94aに収まったのち、この後端面31bと係合穴94aの縁とが当接することにより係合状態が維持される。
また、アクチュエータ30は、ハウジング20に回動可能に支持されるための支持部32を有する。支持部32は、枠部33の一対の外側面33aにおける後端寄りに形成された、後述するボトムハウジング21の回動軸23を受け入れるための凹状の軸受け部である。この軸受け部は、方向A2に沿って延びる回動軸を実現し、外側面33aから内側に凹んだ底面32aと、底面32aを囲む半円筒状の内側面32bとによって構成される。
また、アクチュエータ30は、一対の第1突起34aと、一対の第2突起34bとを更に有する。一対の突起34aは、枠部33の一対の内側面33bの互いに対向する位置にそれぞれ形成されている。一対の突起34bは、枠部33の一対の内側面33bの互いに対向する位置であって、挿抜方向A1において支持部32とラッチ31との間の位置に形成されている。従って、ラッチ31は、支持部32および一対の突起34bに対して挿抜方向A1の前方に位置する。
これらの突起34a,34bは、枠部33の内側に向けて突出しており、第1突起34aが半円柱状を成し、第2突起34bが略円柱状を成す。突起34aは、図6に示された解除動作部43のスライドガイド43bと当接し、解除動作部43を支持する。スライドガイド43bは、突起34aに対し挿抜方向A1に沿って摺動する。また、突起34bは、本実施形態における連結部の例であって、図6に示された解除動作部43のレール43cに収容される。プルタブ41が後方にスライドすると、突起34bはこれに連動して、挿抜方向A1に対して傾斜しているレール43cに従い方向A3に沿って上方に移動する。これにより、ラッチ31がケージ92の係合部94から外れ、係合状態から非係合状態に切り替わる。なお、前述した解除動作部43のスライドガイド43bとレール43cとの位置関係に対応して、一対の突起34bは、方向A3において一対の突起34aよりも下方に形成されている。
図5に示されるように、ボトムハウジング21は、通信モジュール1Aのケーブル束10側の部分に解除機構40を取り付け、解除機構40を機能させるための機構を有する。具体的には、図8に示されるように、ボトムハウジング21は、回動軸23と、ラッチ収容部(ラッチキャビティ)24と、枠部収容部25と、スプリングキャビティ26と、凸部27とを有する。
回動軸23は、ボトムハウジング21の後端21b寄りの一対の側壁に設けられた突起であって、ボトムハウジング21の内側に向けて突出している。前述したように、回動軸23は、アクチュエータ30の支持部32(図7参照)に受け入れられることにより、アクチュエータ30を回動可能に支持する。
ラッチ収容部24は、アクチュエータ30のラッチ31の平面形状に合わせて掘り込まれた凹部であって、ラッチ31を収容する。ラッチ収容部24は、回動軸23よりも前方に設けられている。枠部収容部25は、アクチュエータ30の枠部33の平面形状に合わせて掘り込まれた凹部であって、枠部33を収容する。枠部収容部25は、回動軸23とラッチ収容部24との間に設けられている。
スプリングキャビティ26は、圧縮コイルばね44の平面形状に合わせて開口しており、図5に示された圧縮コイルばね44を収容する。このため、スプリングキャビティ26は、挿抜方向A1に沿って延びている。凸部27は、スプリングキャビティ26の後端において下方に突出しており、ばね収容部43a(図6参照)に収まる。凸部27は、スプリングキャビティ26に収容された圧縮コイルばね44の後端に当接することにより、圧縮コイルばね44の後端を支える。
以上の構成を備える通信モジュール1Aの動作について、図9〜図12を参照しながら説明する。図9は係合状態における通信モジュール1Aの要部拡大斜視図であり、図10は図9のX−X線に沿った断面図である。図11は非係合状態における通信モジュール1Aの要部拡大斜視図であり、図12は図11のXII−XII線に沿った断面図である。なお、理解の容易の為、図9及び図11ではプルタブ41が仮想線にて示されている。
図9及び図10に示されるように、係合状態では、ラッチ31がボトムハウジング21から下方に突出する。このとき、解除動作部43のばね収容部43aの前端が圧縮コイルばね44の前端に当接することにより、解除動作部43が前方へ付勢される。これにより、図10に示されるように突起34aはスライドガイド43bの後端に位置し、突起34bはレール43cの後端に位置する。突起34bがレール43cの後端に位置するので、アクチュエータ30が回動することなく挿抜方向A1に沿って配置され、ラッチ31がボトムハウジング21から突出した状態に保持されて、ラッチ31と係合部94(図2参照)との係合状態が維持される。
ここで、図10に示されるように、レール43cは、第1部分43c1と、第1部分43c1から前方に延びる第2部分43c2とを含んでいる。第1部分43c1は、挿抜方向A1に沿って(すなわち、挿抜方向A1と平行に)延びており、プルタブ41のスライド動作において、アクチュエータ30が動作しない第1区間を定義する。係合状態においては、突起34bはこの第1部分43c1に収容される。従って、プルタブ41が僅かにスライドしても、突起34bの方向A3における位置は不変であり、アクチュエータ30は動作しない。
更に、この係合状態では、解除動作部43のクサビ46が、枠部33とボトムハウジング21との間に位置しており、方向A3において枠部33に当接している。これにより、アクチュエータ30の回動動作が規制される。この係合状態では、枠部33の動作方向(すなわち方向A3)から見て、アクチュエータ30と重なるクサビ46の部分の挿抜方向A1における長さL1は、突起34bと第1部分43c1との接点と、第2部分43c2との距離L2に等しい。従って、突起34bが第1部分43c1に在る間は、方向A3においてクサビ46が枠部33に当接する。
非係合状態では、図11に示されるように、圧縮コイルばね44の付勢力に抗してプルタブ41が後方に引っ張られる。これにより、図12に示されるようにスライドガイド43b及びレール43cが後方に移動して、突起34aはスライドガイド43bの前端に位置し、突起34bはレール43cの前端、すなわち第2部分43c2に位置することとなる。第2部分43c2は、挿抜方向A1に対して方向A3に傾斜して延びており、プルタブ41のスライド動作において、アクチュエータ30が動作する第2区間を定義する。従って、プルタブ41が後方にスライドするに従い、第2部分43c2の傾斜に沿って突起34bの方向A3における位置が移動し、アクチュエータ30が支持部32を中心とする回動動作を行う。図8に示されたように、ボトムハウジング21にはラッチ収容部24及び枠部収容部25が設けられているので、アクチュエータ30のこのような動作を受けることができる。これにより、ラッチ31がボトムハウジング21のラッチ収容部24に収容され、ラッチ31と係合部94(図2参照)との係合状態が解除される。なお、プルタブ41から指が離れると、圧縮コイルばね44の復元力によって解除動作部43が前方に再び付勢され、係合状態に自動的に復帰する。
ここで、係合状態から非係合状態に移行する際のクサビ46の動作について説明する。係合状態では、図10に示されたように、クサビ46が枠部33とボトムハウジング21との間に介在しており、アクチュエータ30の動作が規制されている。この状態からプルタブ41が後方にスライドして係合状態から非係合状態への切り替えが行われると、プルタブ41と一体に形成されているクサビ46はこれに連動して移動し、クサビ46と枠部33との方向A3における当接状態が解除される。本実施形態では、図10に示された長さL1と距離L2とが互いに等しいことにより、突起34bが第2部分43c2に差し掛かると同時に、クサビ46と枠部33との方向A3における当接状態が解除される。従って、クサビ46に妨げられることなく、アクチュエータ30が回動動作を行うことができる。
以上に説明した本実施形態の通信モジュール1Aによって得られる効果について説明する。この通信モジュール1Aでは、保持機構(クサビ46)が、係合状態におけるアクチュエータ30の動作を規制する。従って、係合状態において外力が解除機構40等に加わった場合であっても、保持機構がこれに抗い、ラッチ31と係合部94との係合が解除されることを防ぐ。故に、この通信モジュール1Aによれば、係合状態において意図しない外力が加わった場合であっても、ラッチ31を外れにくくすることができる。
なお、本実施形態では、通信モジュール1Aをケージ92に挿入する際にも、保持機構(クサビ46)はアクチュエータ30の動作を規制するので、係合部94が弾性変形しつつラッチ31の前端面31a(図7参照)に乗り上げることができる。従って、ラッチ31と係合部94との係合が完了したときに係合部94が弾性力によって勢いよく戻り、係合部94とラッチ31とが衝突して「パチン」という音を鳴らすことができる。これにより、ケージ92への通信モジュール1Aの挿入が完了したことを作業者が容易に感知できる。
また、本実施形態のように、保持機構(クサビ46)は解除機構40と一体に構成されており、解除機構40の係合状態から非係合状態への切り替えに連動して、保持機構がアクチュエータ30の動作の規制を解除してもよい。これにより、解除機構40がラッチ31と係合部94との係合を解除すると保持機構が自動的に規制を解除するので、保持機構による規制を容易に解除することができる。
また、本実施形態のように、解除機構40は、アクチュエータ30に対してハウジング20の挿抜方向A1にスライドするプルタブ41を含み、プルタブ41のスライド動作に連動してアクチュエータ30を動作させ、プルタブ41のスライド動作において、アクチュエータ30が動作しない第1区間と、その後にアクチュエータ30が動作する第2区間とが存在してもよい。この場合、はじめの第1区間ではアクチュエータ30が動作しないので、ある程度プルタブ41をスライドさせても、ラッチ31と係合部94との係合は解除されない。従って、意図しない外力がプルタブ41に加わった場合であっても、直ちにラッチ31と係合部94との係合が解除されることはない。故に、この通信モジュール1Aによれば、プルタブ41への意図しない外力に対してラッチ31を外れにくくすることができる。
また、本実施形態のように、保持機構は、解除機構40から挿抜方向A1の前方に突出するクサビ46を含み、クサビ46は、第1区間内ではアクチュエータ30の動作方向においてアクチュエータ30と当接し、第2区間内ではアクチュエータ30から離れてもよい。これにより、アクチュエータ30の動作を規制する機構を容易に実現できる。また、クサビ46を抜くだけで容易に規制を解除できるので、保持機構を解除機構40の切り替え動作に容易に連動させることができる。
また、本実施形態のように、図10に示された長さL1は、距離L2に等しくてもよい。これにより、係合状態においてアクチュエータ30の動作を規制しているクサビ46の部分の長さが、第1部分43c1から第2部分43c2までの突起34bの移動距離に等しくなる。従って、プルタブ41のスライドによってアクチュエータ30が動作し始める第2区間に入ると同時にクサビ46が外れるので、第1区間内ではクサビ46がアクチュエータ30と当接し、第2区間内ではクサビ46がアクチュエータ30から離れる構成を容易に実現できる。
また、本実施形態では、プルタブ41とアクチュエータ30とが互いに連結され、アクチュエータ30とボトムハウジング21とが互いに連結されている。このように、プルタブ41とボトムハウジング21とが直接連結されないことにより、プルタブ41の引っ張り動作を確実にアクチュエータ30に伝えることができ、係合状態を解除する際の作業性を向上することができる。
また、本実施形態では、プルタブ41の解除動作部43とアクチュエータ30とが、ハウジング20の同じ側の面(本実施形態では底面21e)に設けられている。これにより、係合状態及び非係合状態を実現するための機構の小型化が可能になる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、通信モジュール1Aに接続されるケーブルとして複数本の同軸ケーブル11を含むケーブル束10が例示されたが、ケーブルは単一の同軸ケーブルから成ってもよい。或いは、通信モジュール1Aに接続されるケーブルは、信号を伝送するものであれば特に制限されず、例えば光ファイバであってもよい。