以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<1.第1の実施の形態>
<1−1.充放電システムの概要>
図1は、充放電システムST1の概要を示す図である。充放電システムST1は、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、及び、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両駆動用電源として用いられる。充放電システムST1は、組電池1と、電池監視システムWS1と、車両制御装置31と、モータ41と、電圧変換器51と、リレー61とを含むシステムである。また、電池監視システムWS1は、モニタIC12等を備えた複数のサテライト基板2と、監視装置21とを含むシステムである。
組電池1は、車体と絶縁された電池であり、複数のブロックにより構成されている。1つのブロックでは16のセルが互いに直列に接続され、これら16のセルが1つのサテライト基板2に設けられたモニタIC12と電気的に接続されている。そのため、1つのブロックの各セルの電圧は、1つのサテライト基板2に設けられたモニタIC12により計測される。なお、1つのサテライト基板2には第1モニタIC12aと、第2モニタIC12bとの2つのモニタICが設けられており、第1モニタIC12a及び第2モニタIC12bが、1つのブロックのセルを二分して、8セルずつを1つのグループとして受け持つようになっている。なお、以下においては、この8セルにより構成されるグループを「スタック」と称する。
監視装置21は、複数のセルのそれぞれの個別電圧を監視すると共に、各スタックの電圧を監視する。つまり、組電池1の充電状態を監視する。具体的には、モニタIC12は、監視装置21から通信ラインL1を介して受信する電圧計測要求に基づいて複数のセルのそれぞれの個別電圧を計測し、通信ラインL1を介して計測結果を監視装置21に送信する。監視装置21は、モニタIC12からセル電圧を受信すると共に、通信ラインL2を介して後述するキャパシタにスタックの電圧(以下「スタック電圧」と記載する。)を充電することによりスタック電圧を直接測定して充電状態を監視する。また、監視装置21は、電池監視システムWS1が有する絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する。この検知手法については後述する。
なお、監視装置21は、モニタIC12が正常に動作しているか否かを判定する機能も有している。例えば、監視装置21は、モニタIC12から受信した各セルの個別電圧を加算することで算出したスタック電圧と直接検出したスタック電圧とを比較し、両者の差が許容値より大きい場合にモニタ12が異常と判定する。監視装置21は、モニタIC12が異常と判断した場合には、フェールセーフ機能を実行する。例えば、監視装置21は、リレー61を切り離して、セルに対する充放電が行われないようにするフェールセーフ機能を実行する。
車両制御装置31は、組電池1の充電状態に応じて、組電池1に対する充放電を行う。具体的には、組電池1が過充電の場合、車両制御装置31は、電圧変換器51を用いて組電池1に充電された電圧を直流から交流の電圧に変換し、モータ41を駆動させる。その結果、組電池1の電圧は放電される。
また、組電池1が過放電の場合、車両制御装置31は、電圧変換器51を用いて回生制動によりモータ41が発電した電圧を交流から直流の電圧に変換する。その結果、組電池1には電圧が充電される。このように、車両制御装置31は、監視装置21から取得した組電池1の充電状態に基づいて組電池1の電圧を監視し、監視結果に応じた制御を実行する。次に、このような充放電システムST1において、絶縁抵抗の状態を監視する監視装置21の構成について説明する。
<1−2.監視装置の構成>
図2は、監視装置21の構成を説明するブロック図である。監視装置21は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)であり、スタック電圧を計測し、充電状態を監視する装置である。また、監視装置21は、上述のように、電池監視システムWS1が有する絶縁抵抗を監視し、抵抗値が低下しているか否かを監視する装置でもある。つまり、監視装置21は、組電池1の漏電を検知する機能も有している。
監視装置21は、図2に示すように、電圧計測部22と、A/D変換部23と、制御部24とを備えている。なお、図1に示すように、監視装置21はサテライト基板2を介して組電池1と接続されているが、図2ではサテライト基板2及び通信ラインL1を省略している。
電圧計測部22は、各スタック電圧を計測する。組電池1は、第1スタック1a及び第2スタック1bの2つのスタックを有しており、電圧計測部22は、制御部24からの制御に基づいて、電圧計測の対象となるスタックの電圧を計測する。また、電圧計測部22は、組電池1の正極側の絶縁抵抗や負極側の絶縁抵抗、スタック間の絶縁抵抗といった各絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知するための電圧を計測する。
すなわち、電圧計測部22は、充電状態を監視するためのスタック電圧(以下「監視用電圧」と記載する。)と、絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知するためのスタック電圧(以下「検知用電圧」と記載する。)とを計測する。これら各電圧の計測方法については後述する。なお、絶縁抵抗の抵抗値が低下することを、本明細書では単に「絶縁抵抗の低下」と記載する場合がある。
A/D変換部23は、電圧計測部22が計測した監視用電圧及び検知用電圧をアナログ値からデジタル値に変換する。変換されたデジタル値は、制御部24に出力される。
制御部24は、CPU、RAM及びROMなどを備えたマイクロコンピュータであり、電圧計測部22やA/D変換部23などを含む監視装置21全体を制御する。例えば、制御部24は、入力した監視用電圧に基づいて充電状態を監視する。また、制御部24は、入力した検知用電圧に基づいて絶縁抵抗が低下しているか否かを判定する。
また、制御部24は、監視用電圧や検知用電圧を計測する際に、対象としている電圧を計測することが可能な経路を選択する制御を行う。具体的には、電圧計測部22は後述する複数のリレーを有しており、制御部24は、対象とする電圧の計測が可能となる経路を導通させるように各リレーのオン/オフを制御する。
なお、制御部24の監視結果としての充電状態に関する情報は、車両制御装置31などに対して出力される。そして、車両制御装置31が充電状態に応じた車両制御を行う。また、制御部24の検知結果としての絶縁抵抗の低下に関する情報も、車両制御装置31に対して出力される。そして、車両制御装置31が異常報知などの車両制御を行う。
ここで、電圧計測部22のより詳細な構成について説明する。図3は、電圧計測部22の構成を示す図である。図3に示すように、電圧計測部22は、キャパシタFCと、第1リレーS1〜第6リレーS6と、第1抵抗R1〜第4抵抗R4とを備えている。これら第1リレーS1〜第6リレーS6は、監視用電圧や検知用電圧を計測する際に経路を切り替えるスイッチ等の役割を果たす切替手段である。また、第1抵抗R1〜第4抵抗R4は、監視用電圧や検知用電圧などを計測するための電圧計測用抵抗である。
また、電圧計測部22は、組電池1の正極側の絶縁抵抗Rpと、負極側の絶縁抵抗Rnと、第1スタック1a及び第2スタック1bの間の絶縁抵抗Rmとを有している。これら各絶縁抵抗は、実装した抵抗と、車体GNDとの絶縁を仮想的に表した抵抗との合成抵抗を示している。各絶縁抵抗は、正常時にはほとんど通電することが無い程度に十分に大きい抵抗値を有している。例えば、4MΩや8MΩなどの数MΩの抵抗値である。一方で、絶縁抵抗が劣化した異常時には、例えば組電池1が車体GNDなどと短絡して、あるいは短絡に近い状態となり通電してしまう程度の抵抗値に低下する。
電圧計測部22は、キャパシタFCを介して充電側と放電側とに分かれている。充電側は、組電池1とキャパシタFCとが接続され、組電池1の電圧をキャパシタFCに充電する経路を含む部分である。また、放電側は、キャパシタFCに充電された電圧を放電する経路を含む部分である。そして、各リレーのオン/オフを制御することで、キャパシタFCへの充電及び放電を制御する。
具体的に説明すると、電圧計測部22の充電側は、キャパシタFCと、第1スタック1a及び第2スタック1bとが並列に接続されている。つまり、キャパシタFCの両端は、第1スタック1aの正極及び負極に接続していると共に、第2スタック1bの正極及び負極とも接続している。
また、第1スタック1aの正極側とキャパシタFCとの間には、第1リレーS1及び第1抵抗R1がこの順で設けられており、第1スタック1aの負極側とキャパシタFCとの間には、第2リレーS2及び第2抵抗R2がこの順で設けられている。したがって、第1リレーS1及び第2リレーS2を共にオンにすると、第1スタック1aとキャパシタFCとを結ぶ経路が接続され、第1スタック1aの電圧がキャパシタFCに充電される。
また、第2スタック1bの正極側は、第3リレーS3を介して、第1リレーS1と第1抵抗R1との間に接続されており、第2スタック1bの負極側は、第4リレーS4を介して、第2リレーS2と第2抵抗R2との間に接続されている。つまり、第3リレーS3及び第4リレーS4を共にオンにすると、第2スタック1bとキャパシタFCとを結ぶ経路が接続され、第2スタック1bの電圧がキャパシタFCに充電される。
また、電圧計測部22の放電側には、第1スタック1a及び第2スタック1bの正極側の経路に第5リレーS5が設けられており、負極側の経路に第6リレーS6が設けられている。そして、第5リレーS5の出力側は、A/D変換部23に接続されており、また、第3抵抗R3を介して車体GNDに接続されている。また、第6リレーS6の出力側は第4抵抗R4を介して車体GNDに接続されている。
このように、電圧計測部22は、共通のキャパシタFCをスタック電圧で充電した後に、リレーを切り替えて車体GNDなどの基準電位に接続するフライングキャパシタ方式が適用されている。
<1−3.監視用電圧の計測>
次に、監視装置21が監視用電圧を計測する方法について説明する。監視装置21は、スタック毎に電圧を計測する。そこで、まず第1スタック1aの電圧(以下「第1スタック電圧」と記載する。)を計測する方法について説明する。
第1スタック電圧を計測するためには、第1スタック1aとキャパシタFCとを接続する。このため、監視装置21は、第1リレーS1及び第2リレーS2をオンにして、他のリレーをオフにする。すると、第1スタック1aの正極側が、第1リレーS1、第1抵抗R1、キャパシタFC、第2抵抗R2及び第2リレーS2を介して第1スタック1aの負極側と接続する。これにより、図4に示すように、充電側に第1スタック1aとキャパシタFCとを結ぶ第1経路C1が接続され、キャパシタFCには第1スタック電圧が充電される。
そして、所定時間経過後、監視装置21は、第1リレーS1及び第2リレーS2をオフにすると共に、第5リレーS5及び第6リレーS6をオンにする。すると、図5に示すように放電側に第2経路C2が接続され、キャパシタFCの電圧が放電される。第5リレーS5の出力側にはA/D変換部23が接続されているため、第2経路C2が接続されると、キャパシタFCの電圧(すなわち第1スタック電圧)がA/D変換部23に入力される。A/D変換部23は、第5リレーS5及び第6リレーS6がオンした瞬間に入力したアナログ値をデジタル値に変換して制御部に出力する。これにより監視用電圧としての第1スタック電圧が計測される。
次に、第2スタック1bの電圧(以下「第2スタック電圧」と記載する。)を計測する方法について説明する。第2スタック電圧を計測するためには、第2スタック1bとキャパシタFCとを接続する。このため、監視装置21は、第3リレーS3及び第4リレーS4をオンにして、他のリレーをオフにする。すると、第2スタック1bの正極側が、第3リレーS3、第1抵抗R1、キャパシタFC、第2抵抗R2及び第4リレーS4を介して第2スタック1bの負極側と接続する。これにより、図6に示すように、充電側に第2スタック1bとキャパシタFCとを結ぶ第3経路C3が接続され、キャパシタFCには第2スタック電圧が充電される。そして、上記と同様に、所定時間経過後、第2経路C2を導通させてキャパシタFCの電圧(すなわち監視用電圧としての第2スタック電圧)を計測する。
このように、放電側の経路と充電側の経路とを切り替えてキャパシタFCへの充電と放電とを切り替えることで監視用電圧(第1スタック電圧及び第2スタック電圧)を計測することができる。
そして、制御部24が、計測した監視用電圧を車両制御装置31等に対して出力することで、対応する車両制御や充放電制御が実行される。
<1−4.絶縁抵抗の低下の検知>
次に、監視装置21が絶縁抵抗の低下を検知する方法について説明する。監視装置21は、組電池1の正極側に存在する絶縁抵抗Rpの抵抗値と、負極側に存在する絶縁抵抗Rnの抵抗値と、第1スタック1a及び第2スタック1bの間に存在する絶縁抵抗Rmの抵抗値とが低下しているか否かを判定する。
監視装置21は、第1リレーS1〜第6リレーS6の各リレーのオン/オフを制御して、絶縁抵抗Rp又は絶縁抵抗Rmを経由して充電した正極側電圧を計測する第1計測処理と、絶縁抵抗Rn又は絶縁抵抗Rmを経由して充電した負極側電圧を計測する第2計測処理とを実行する。そして、監視装置21は、これら各計測結果に基づいて、いずれかの絶縁抵抗が低下しているか否かを判定する判定処理を実行する。
具体的には、監視装置21は、第1計測処理では、第4リレーS4及び第5リレーS5をオンするように制御し、第2計測処理では、第1リレーS1及び第6リレーS6をオンするように制御する。これら各計測処理でオンされるリレーの組み合わせは、各リレーをオンした際に対応する絶縁抵抗の抵抗値が正常であれば導通せず、低下していた場合には導通する経路となるように選択されている。
監視装置21は、各計測処理において、キャパシタFCの電圧(検知用電圧)を計測し、計測結果を用いることで絶縁抵抗が低下しているか否かを判定する。なお、第1計測処理で計測する検知用電圧(つまり正極側電圧)を電圧VRpとし、第2計測処理で計測する検知用電圧(つまり負極側電圧)を電圧VRnとする。
各計測処理についてより具体的に説明する。図7及び図8は、第1計測処理を説明する図である。図7及び図8に示すように、監視装置21は、第1計測処理を実行すると第4リレーS4及び第5リレーS5をオンにし、所定時間経過すると第4リレーS4をオフにすると共に、第6リレーS6をオンして図5で説明した場合と同様にキャパシタFCの充電電圧をAD変換して求める。
なお、図7及び図8に示す充電経路では絶縁抵抗Rpや絶縁抵抗Rmの存在により充電時定数が大きくなることから、満充電に要する時間は図4及び図6に示す監視用電圧の測定時よりも長くなる。絶縁抵抗の低下の検知処理や監視用電圧の測定処理は繰り返し行う必要があるため、絶縁抵抗の低下の検知処理においても満充電を待って充電電圧を測定するようにすると、計測のサイクル期間が長くなる。すると計測頻度が少なくなり、応答性にかけることとなる。そのため、絶縁抵抗の低下を検知する処理では、満充電に要するであろう時間よりも短い前記所定時間だけ充電を行い、その充電電圧に基づいて絶縁抵抗の低下を判定するようにしている。
第1計測処理において、絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rmの抵抗値が低下していない場合、キャパシタFCにはスタック電圧はほとんど充電されないか、あるいは充電されたとしても十分に小さい電圧が充電される。つまり、電圧VRpは略0である。
これに対して、絶縁抵抗Rpが低下している場合には、図7に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rpに導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧及び第2スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置21が計測する電圧VRpは、2つのスタック電圧に対応した値となる。なお、本実施の形態においては、各スタック電圧は略同じ値であり、1つのスタック電圧に対応した値をVstとする。つまり、2つのスタック電圧に対応した値は2Vstとなる。
また、絶縁抵抗Rmが低下している場合には、図8に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rmに導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第2スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置21が計測する電圧VRpは、1つのスタック電圧値に対応した値であるVstとなる。
なお、第1計測処理においては、絶縁抵抗Rnが低下している場合であっても、絶縁抵抗Rnを導通する充電経路はできないため、キャパシタFCへの充電は行われない。
次に、第2計測処理について説明する。図9及び図10は、第2計測処理を説明する図である。図9及び図10に示すように、監視装置21は、第2計測処理を実行すると、第1リレーS1及び第6リレーS6をオンにし、所定時間経過すると第1リレーS1をオフにすると共に、第5リレーS5をオンして図5で説明した場合と同様にキャパシタFCの充電電圧をAD変換して求める。
第2計測処理において、絶縁抵抗Rn及び絶縁抵抗Rmの抵抗値が低下していない場合、キャパシタFCにはスタック電圧はほとんど充電されないか、あるいは充電されたとしても十分に小さい電圧が充電される。つまり、電圧VRnは略0である。
これに対して、絶縁抵抗Rnが低下している場合には、図9に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rnに導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧及び第2スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置21が計測する電圧VRnは、2つのスタック電圧値に対応した値である2Vstとなる。
また、絶縁抵抗Rmが低下している場合には、図10に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rmに導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置21が計測する電圧VRnは、1つのスタック電圧値に対応した値であるVstとなる。
なお、第2計測処理においては、絶縁抵抗Rpが低下している場合であっても、絶縁抵抗Rpを導通する充電経路はできないため、キャパシタFCへの充電は行われない。
すなわち、第1計測処理では、絶縁抵抗Rp又は絶縁抵抗Rmの抵抗値が低下している場合には、2Vst又はVstの電圧VRpが計測されるのに対して、絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rmのいずれも低下していない場合には電圧VRpは略0となる。また、絶縁抵抗Rmが低下していた際の電圧VRp(Vst)は、絶縁抵抗Rpが低下していた際の電圧VRp(2Vst)の略2分の1となる。
同様に、第2計測処理では、絶縁抵抗Rn又は絶縁抵抗Rmの抵抗値が低下している場合には、2Vst又はVstの電圧VRnが計測されるのに対して、絶縁抵抗Rn及び絶縁抵抗Rmのいずれも低下していない場合には電圧VRnは略0となる。また、絶縁抵抗Rmが低下していた際の電圧VRn(Vst)は、絶縁抵抗Rnが低下していた際の電圧VRn(2Vst)の略2分の1となる。
このようにして、検知用電圧としての正極側電圧である電圧VRpと、負極側電圧である電圧VRnとが計測される。そして、監視装置21は、計測結果に基づいて絶縁抵抗が低下しているか否かを判定する判定処理を実行する。
具体的には、監視装置21は、第1計測処理及び第2計測処理で検知用電圧を計測すると、計測された電圧VRpと電圧VRnとを合計して、その合計値が第1閾値Vt1以上の場合に、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。つまり、監視装置21は、VRp+VRn≧Vt1であると、絶縁抵抗Rp、絶縁抵抗Rn及び絶縁抵抗Rmのいずれかが低下していると判定する。
スタック間の絶縁抵抗Rmが低下している場合には、1つのスタック電圧値であるVst分しかキャパシタFCに充電されない。このため、電圧VRp又は電圧VRnの一方のみを用いた場合には、電圧値が小さく絶縁抵抗の低下を正確に判定できない可能性がある。そこで、電圧VRpと電圧VRnとを合計した値を用いることで、絶縁抵抗の低下を確実に判定することとしている。なお、第1閾値Vt1は、1つのスタック電圧に対応する値より大きく2つのスタック電圧に対応する値より小さい値であることが好ましく、この範囲内であれば任意に設定可能である。つまり、Vst<Vt1<2Vstである。
この判定処理についてより具体的に説明する。スタックの正極側の絶縁抵抗Rpが低下している場合には、第1計測処理にて電圧VRp=2Vstが計測され、第2計測処理にてVRn=0が計測される。したがって、VRp+VRn=2Vst+0=2Vst≧Vt1となり、監視装置21は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。なお、本明細書においては、「=」の記載は、全く同一である場合のみならずほぼ同じである場合も含む一定の幅を有する意味として用いることとする。
また、スタックの負極側の絶縁抵抗Rnが低下している場合には、第1計測処理にてVRp=0が計測され、第2計測処理にて電圧VRn=2Vstが計測される。したがって、VRp+VRn=0+2Vst=2Vst≧Vt1となり、監視装置21は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。
また、スタック間の絶縁抵抗Rmが低下している場合には、第1計測処理にて電圧VRp=Vstが計測され、第2計測処理にて電圧VRn=Vstが計測される。したがって、VRp+VRn=Vst+Vst=2Vst≧Vt1となり、監視装置21は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。
なお、いずれの絶縁抵抗も低下していない場合には、第1計測処理及び第2計測処理の双方で、VRp=VRn=0となるため、VRp+VRn=0<Vt1となり、監視装置21は、いずれの絶縁抵抗も低下していないと判定する。
このように、いずれの絶縁抵抗が低下している場合においても、検知用電圧の合計(VRp+VRn)の値が2つのスタック電圧に対応した値(2Vst)となる。このため、スタック間の絶縁抵抗Rmが低下している場合も含めて、絶縁抵抗の低下を検知することが可能になる。
なお、上述した第1計測処理及び第2計測処理を用いると、いずれかの絶縁抵抗が低下していることを検知することはできるものの、どの絶縁抵抗が低下しているかを特定することまではできない。そこで、監視装置21は、絶縁抵抗の低下を検知すると、その低下している絶縁抵抗を特定する処理(第1特定処理)を実行する。以下、この第1特定処理について説明する。
第1特定処理では、監視装置21は、第1計測処理及び第2計測処理で計測した電圧VRp及び電圧VRnに基づいて、低下している絶縁抵抗を特定する。上述したように、絶縁抵抗Rpが低下している場合に計測される検知用電圧は、電圧VRpが2Vstであり、電圧VRnは略0である。また、絶縁抵抗Rnが低下している場合に計測される検知用電圧は、電圧VRpが略0であり、電圧VRnは2Vstである。また、絶縁抵抗Rmが低下している場合に計測される検知用電圧は、電圧VRpがVstであり、電圧VRnもVstである。
したがって、監視装置21は、電圧VRp及び電圧VRnの値を比較して、低下している絶縁抵抗を特定する。具体的には、監視装置21は、VRp>VRnの場合には、絶縁抵抗Rpが低下していると判定し、VRp<VRnの場合には、絶縁抵抗Rnが低下していると判定する。そして、監視装置21は、VRp=VRnの場合には、絶縁抵抗Rmが低下していると判定する。すなわち、監視装置21は、正極側電圧と負極側電圧とが略同じである場合には、絶縁抵抗Rmが低下していると判定する。
このように、本実施の形態では、いずれの絶縁抵抗が低下していている場合であってもVRp+VRnが2Vstとなるため、絶縁抵抗の低下を検知することが可能になる。さらに、電圧VRp及び電圧VRnを個別に比較することで、抵抗値が低下している絶縁抵抗を特定することが可能になる。
また、絶縁抵抗の低下を判定するための構成を別途設けることなく、既存の構成である充電状態を監視する構成を用いて判定することができるため、小型化や低コスト化も可能になる。
<1−5.監視装置の処理>
次に、監視装置21の処理について説明する。図11は、監視装置21の処理を示すフローチャートである。監視装置21は、電源がオンされて起動すると、絶縁抵抗の低下を検知する処理と充電状態を監視する処理とを実行する。
図11に示すように、監視装置21は、まず第1計測処理を実行する(ステップS11)。すなわち、監視装置21は、第4リレーS4及び第5リレーS5をオンにして、キャパシタFCを充電し、所定時間後の第4リレーS4をオフにすると共に、第6リレーS6をオンしてキャパシタFCの電圧(検知用電圧VRp)を計測する。
そして、監視装置21は、充電状態を監視する処理を実行する(ステップS12)。具体的には、監視装置21は、監視用電圧の計測処理を実行して充電状態を監視する。監視用電圧の計測処理は、上述の図4〜図6で説明した方法により第1スタック電圧及び第2スタック電圧を計測する方法で行うことができる。
次に、監視装置21は、第2計測処理を実行する(ステップS13)。すなわち、監視装置21は、第1リレーS1及び第6リレーS6をオンして、キャパシタFCを充電し、所定時間後に第1リレーS1をオフにすると共に、第5リレーS5をオンしてキャパシタFCの電圧(検知用電圧VRn)を計測する。
そして、監視装置21は、再度充電状態を監視する処理を実行する(ステップS14)。これは、ステップS12の処理と同様の処理である。
次いで、監視装置21は、判定処理を実行する(ステップS15)。具体的には、監視装置21は、第1計測処理で計測した電圧VRpと第2計測処理で計測したVRnとを合計した値(VRp+VRn)と、第1閾値Vt1とを比較する。そして、監視装置21は、比較した結果、VRp+VRn≧Vt1である場合には、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。すなわち、絶縁抵抗の低下を検知する。一方、監視装置21は、比較した結果、VRp+VRn<Vt1である場合には、いずれの絶縁抵抗も低下していないと判定する。
絶縁抵抗が低下していると判定された場合には(ステップS16でYes)、監視装置21は、抵抗値が低下している絶縁抵抗を特定する第1特定処理を実行する(ステップS17)。具体的には、上述したように、監視装置21は、電圧VRpと電圧VRnとを比較して、VRp>VRnの場合には、絶縁抵抗Rpが低下していると判定し、VRp<VRnの場合には、絶縁抵抗Rnが低下していると判定し、VRp=VRnの場合には、絶縁抵抗Rmが低下していると判定する。
そして、監視装置21は、この判定結果を充電状態の監視結果と共に車両制御装置31などに出力する(ステップS18)。また、絶縁抵抗が低下していない場合(ステップS16でNo)も、その判定結果を充電状態の監視結果と共に車両制御装置31などに出力する(ステップS18)。これにより、絶縁抵抗の低下の検知処理と充電状態の監視処理とが実行される。
なお、これらステップS11〜ステップS18の各処理は、監視装置21が起動している間は繰り返して実行される。また、処理の順番はこれに限定されるものではない。例えば、充電状態監視処理の後に第1計測処理と第2計測処理とを順に実行してもよいし、第1計測処理と第2計測処理とを順に実行した後に充電状態監視処理を実行してもよい。また、充電状態監視処理を複数回実行してから第1計測処理及び第2計測処理を実行してもよい。さらに、充電状態の監視結果は、絶縁抵抗の検知結果と共に出力する構成に限定されるものではなく、充電状態の監視処理毎に出力する構成としてもよい。
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、組電池1が2つのスタックを有する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば組電池1が3つのスタックを有する構成にも適用することができる。そこで、以下では、第1の実施の形態とは異なる点を中心に、組電池1が3つのスタックを有する充放電システムについて説明する。
<2−1.充放電システムの構成>
図12は、本実施の形態の充放電システムST2の概要を示す図である。充放電システムST2は、組電池1と、電池監視システムWS2と、車両制御装置31と、モータ41と、電圧変換器51と、リレー61とを含むシステムである。また、電池監視システムWS2は、モニタIC12等を備えた複数のサテライト基板20と、監視装置25とを含むシステムである。このうち、車両制御装置31と、モータ41と、電圧変換器51と、リレー61とは、第1の実施の形態で説明した各構成と同じであるため説明を省略する。このため、以下では、組電池1及び電池監視システムWS2の構成を中心に説明する。
組電池1は、車体と絶縁された電池であり、複数のブロックにより構成されている。1つのブロックでは24のセルが互いに直列に接続され、これら24のセルが1つのサテライト基板20に設けられたモニタIC12と電気的に接続されている。そのため、1つのブロックの各セルの電圧は、1つのサテライト基板20に設けられたモニタIC12により計測される。なお、1つのサテライト基板20には第1モニタIC12aと、第2モニタIC12bと、第3モニタIC12cとの3つのモニタICが設けられており、第1モニタIC12a〜第3モニタIC12cが、1つのブロックのセルを三分割して、8セルずつを1つのグループとして受け持つようになっている。第1の実施の形態と同様に、この8セルによる構成されるグループを「スタック」と称する。
監視装置25は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)であり、複数のセルのそれぞれの個別電圧を監視すると共に、スタックの電圧(スタック電圧)を監視する。つまり、組電池1の充電状態を監視する。この組電池1の充電状態の監視方法は、第1の実施の形態と同様である。また、監視装置25は、モニタIC12が正常に動作しているか否かを判定する機能も有している。さらに、監視装置25は、第1の実施の形態と同様に、電池監視システムWS2が有する絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する機能を有している。つまり、監視装置25は、組電池1の漏電を検知する機能を有している。この絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知する手法については後述する。なお、図12に示す電池監視システムWS2の下側のサテライト基板20も上側のサテライト基板20と同様に通信 図13は、本実施の形態の監視装置25の構成を説明するブロック図である。図13に示すように、監視装置25は、電圧計測部26と、A/D変換部23と、制御部24とを備えている。このうち、A/D変換部23と制御部24とは、第1の実施の形態と同様の構成である。このため、以下では電圧計測部26を中心に説明する。なお、図13においても、サテライト基板20及び通信ラインL1を省略している。
電圧計測部26は、各スタック電圧を計測する。組電池1は、第1スタック1a、第2スタック1b及び第3スタック1cの3つのスタックを有しており、電圧計測部26は、制御部24からの制御に基づいて、電圧計測の対象となるスタックの電圧を計測する。また、電圧計測部26は、組電池1の正極側の絶縁抵抗や負極側の絶縁抵抗、スタック間の絶縁抵抗といった各絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知するための電圧を計測する。
すなわち、電圧計測部26は、充電状態を監視するためのスタック電圧(監視用電圧)と、絶縁抵抗の抵抗値の低下を検知するためのスタック電圧(検知用電圧)とを計測する。これら各計測方法については後述する。なお、本実施の形態においても、絶縁抵抗の抵抗値が低下することを単に「絶縁抵抗の低下」と記載する場合がある。
ここで、本実施の形態の電圧計測部26のより詳細な構成について説明する。図14は、電圧計測部26の構成を示す図である。図14に示すように、電圧計測部26は、キャパシタFCと、第1リレーS1〜第8リレーS8と、第1抵抗S1〜第4抵抗S4とを備えている。本実施の形態の電圧計測部26は、第1の実施の形態の電圧計測部22と比較して、第7リレーS7及び第8リレーS8が新たに設けられている点が異なるが、キャパシタFCや、第1リレーS1〜第6リレーS6、及び、第1抵抗S1〜第4抵抗S4等の構成は同じである。なお、第7リレーS7及び第8リレーS8は、第3スタック1cの電圧を計測する際の導通経路を切り替えるスイッチ等の役割を果たす切替手段である。
また、電圧計測部26は、組電池1の正極側の絶縁抵抗Rpと、負極側の絶縁抵抗Rnと、第1スタック1aと第2スタック1bとの間の絶縁抵抗Rm1と、第2スタック1bと第3スタック1cとの間の絶縁抵抗Rm2とを有している。これら各絶縁抵抗は、上記と同様に、実装した抵抗と、車体GNDとの絶縁を仮想的に表した抵抗との合成抵抗を示している。各絶縁抵抗は、正常時にはほとんど通電することが無い程度に十分に大きい抵抗値を有している。例えば、4MΩや8MΩなどの数MΩの抵抗値である。一方で、絶縁抵抗が劣化した異常時には、例えば組電池1が車体GNDなどと短絡して、あるいは短絡に近い状態となり通電して通電しまう程度の抵抗値に低下する。
電圧計測部26は、キャパシタFCを介して充電側と放電側とに分かれている。充電側は、組電池1とキャパシタFCとが接続され、組電池1の電圧をキャパシタFCに充電する経路を含む部分である。また、放電側は、キャパシタFCに充電された電圧を放電する経路を含む部分である。そして、各リレーのオン/オフを制御することで、キャパシタFCへの充電及び放電を制御する。
具体的に説明すると、電圧計測部26の充電側は、キャパシタFCと、第1スタック1a、第2スタック1b及び第3スタック1cとが並列に接続されている。つまり、キャパシタFCの両端は、第1スタック1aの正極及び負極と接続し、第2スタック1bの正極及び負極とも接続し、第3スタック1cの正極及び負極とも接続している。
また、第1の実施の形態と同様に、第1リレーS1及び第2リレーS2を共にオンにすると、第1スタック1aとキャパシタFCとを結ぶ経路が接続され、第1スタック1aの電圧がキャパシタFCに充電される。また、第3リレーS3及び第4リレーS4を共にオンにすると、第2スタック1bとキャパシタFCとを結ぶ経路が接続され、第2スタック1bの電圧がキャパシタFCに充電される。また、電圧計測部26の放電側には、第5リレーS5及び第6リレーS6が設けられている。そして、第5リレーS5の出力側は、A/D変換部23及び第3抵抗R3を介して車体GNDに接続されており、第6リレーS6の出力側は第4抵抗R4を介して車体GNDに接続されている。
本実施の形態の電圧計測部26は、さらに、第3スタック1cの正極側が、第7リレーS7を介して、第1リレーS1と第1抵抗R1との間に接続されており、第3スタック1cの負極側は、第8リレーS8を介して、第2リレーS2と第2抵抗R2との間に接続されている。つまり、第7リレーS7及び第8リレーS8を共にオンにすると、第3スタック1cとキャパシタFCとを結ぶ経路が接続され、第3スタック1cの電圧がキャパシタFCに充電される。
このように、電圧計測部26は、共通のキャパシタFCをスタック電圧で充電した後に、リレーを切り替えて車体GNDなどの基準電位に接続するフライングキャパシタ方式が適用されている。
<2−2.監視用電圧の計測>
次に、監視装置25が監視用電圧を計測する方法について説明する。監視装置25は、スタック毎に電圧を計測する。第1スタック1aの電圧(第1スタック電圧)と第2スタック1bの電圧(第2スタック電圧)の計測方法は、第1の実施の形態と同様である。そこで、第3スタック1cの電圧(以下「第3スタック電圧」と記載する。)を計測する方法について説明する。
第3スタック電圧を計測するためには、第3スタック1cとキャパシタFCとを接続する。このため、監視装置25は、第7リレーS7及び第8リレーS8をオンにして、他のリレーをオフにする。すると、第3スタック1cの正極側が、第7リレーS7、第1抵抗R1、キャパシタFC、第2抵抗R2及び第8リレーS8を介して第3スタック1cの負極側と接続する。これにより、図15に示すように、充電側に第3スタック1cとキャパシタFCとを結ぶ第4経路C4が接続され、キャパシタFCには第3スタック電圧が充電される。
なお、所定時間経過後に放電側に第2経路C2を導通させてスタック電圧を計測し、キャパシタFCの電荷を放電させる方法は、第1の実施の形態と同様である。このように、充電側の経路と放電側の経路とを切り替えてキャパシタFCへの充電と放電とを切り替えることで監視用電圧(第1スタック電圧、第2スタック電圧及び第3スタック電圧)を計測することができる。
そして、制御部24が、計測した監視用電圧を車両制御装置31等に対して出力することで、対応する車両制御や充放電制御が実行される。
<2−3.絶縁抵抗の低下の検知>
次に、監視装置25が絶縁抵抗の低下を検知する方法について説明する。監視装置25は、組電池1の正極側に存在する絶縁抵抗Rpの抵抗値と、負極側に存在する絶縁抵抗Rnの抵抗値と、第1スタック1a及び第2スタック1bの間に存在する絶縁抵抗Rm1の抵抗値と、第2スタック1b及び第3スタック1cの間に存在する絶縁抵抗Rm2の抵抗値とが低下しているか否かを判定する。
監視装置25は、第1リレーS1〜第8リレーS8の各リレーのオン/オフを制御して、絶縁抵抗Rp、絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2を経由して充電した正極側電圧を計測する第3計測処理と、絶縁抵抗Rn、絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2を経由して充電した負極側電圧を計測する第4計測処理とを実行する。そして、監視装置25は、これら各計測結果に基づいて、いずれかの絶縁抵抗が低下しているか否かを判定する判定処理を実行する。
具体的には、監視装置25は、第3計測処理では、第5リレーS5及び第8リレーS8をオンするように制御し、第4計測処理では、第1リレーS1及び第6リレーS6をオンするように制御する。これら各計測処理でオンされるリレーの組み合わせは、各リレーをオンした際に対応する絶縁抵抗の抵抗値が正常であれば導通せず、低下していた場合には導通する経路となるように選択されている。
監視装置25は、各計測処理において、キャパシタFCの電圧(検知用電圧)を計測し、計測結果を用いることで絶縁抵抗が低下しているか否かを判定する。なお、第3計測処理で計測する検知用電圧(つまり正極側電圧)を電圧VRpとし、第4計測処理で計測する検知用電圧(つまり負極側電圧)を電圧VRnとする。
各計測処理についてより具体的に説明する。図16ないし図18は、第3計測処理を説明する図である。図16ないし図18に示すように、監視装置25は、第3計測処理を実行すると第5リレーS5及び第8リレーS8をオンにし、所定時間経過すると第8リレーS8をオフにすると共に、第6リレーS6をオンにして図5で説明した場合と同様にキャパシタFCの充電電圧をAD変換して求める。
なお、図16ないし図18に示す充電経路では絶縁抵抗Rpや絶縁抵抗Rm1、絶縁抵抗Rm2の存在により充電時定数が大きくなることから、満充電に要する時間は図4及び図6に示す監視用電圧の測定時よりも長くなる。このため、第1の実施の形態と同様に、絶縁抵抗の低下を検知する処理では、満充電に要するであろう時間よりも短い前記所定時間だけ充電を行い、その充電電圧に基づいて絶縁抵抗の低下を判定するようにしている。
第3計測処理において、絶縁抵抗Rp、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2の抵抗値が低下していない場合、キャパシタFCにはスタック電圧はほとんど充電されないか、あるいは充電されたとしても十分に小さい電圧が充電される。つまり、電圧VRpは略0である。
これに対して、絶縁抵抗Rpが低下している場合には、図16に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rpに導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧、第2スタック電圧及び第3スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置25が計測する電圧VRpは、3つのスタック電圧に対応した値となる。なお、本実施の形態においても各スタック電圧は略同じであり、1つのスタック電圧に対応した値をVstとする。したがって、3つのスタック電圧に対応した値は3Vstとなる。
また、絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、図17に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rm1に導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第2スタック電圧及び第3スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置25が計測する電圧VRpは、2つのスタック電圧値に対応した値である2Vstとなる。
また、絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、図18に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rm2に導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第3スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置25が計測する電圧VRpは、1つのスタック電圧値に対応した値であるVstとなる。
なお、第3計測処理においては、絶縁抵抗Rnが低下している場合であっても、絶縁抵抗Rnを導通する充電経路はできないため、キャパシタFCへの充電も行われない。
次に、第4計測処理について説明する。図19ないし図21は、第4計測処理を説明する図である。図19ないし図21に示すように、監視装置25は、第4計測処理を実行すると、第1リレーS1及び第6リレーS6をオンにし、所定時間経過すると第1リレーS1をオフにすると共に、第5リレーS5をオンして図5で説明した場合と同様にキャパシタFCの充電電圧をAD変換して求める。
第4計測処理において、絶縁抵抗Rn、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2の抵抗値が低下していない場合、キャパシタFCにはスタック電圧はほとんど充電されないか、あるいは充電されたとしても十分に小さい電圧が充電される。つまり、電圧VRnは略0である。
これに対して、絶縁抵抗Rnが低下している場合には、図19に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rnに導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧、第2スタック電圧及び第3スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置25が計測する電圧VRnは、3つのスタック電圧値に対応した値である3Vstとなる。
また、絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、図20に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rm1に導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置25が計測する電圧VRnは、1つのスタック電圧値に対応した値であるVstとなる。
また、絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、図21に示すように、車体GNDを介して絶縁抵抗Rm2に導通する充電経路ができるため、キャパシタFCには第1スタック電圧及び第2スタック電圧が充電される。したがって、この場合に監視装置25が計測する電圧VRnは、2つのスタック電圧値に対応した値である2Vstとなる。
なお、第4計測処理においては、絶縁抵抗Rpが低下している場合であっても、絶縁抵抗Rpを導通する充電経路はできないため、キャパシタFCへの充電は行われない。
すなわち、第3計測処理では、絶縁抵抗Rp、絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2の抵抗値が低下している場合には、それぞれ3Vst、2Vst又はVstの電圧VRpが計測されるのに対して、絶縁抵抗Rp、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2のいずれも低下していない場合には電圧VRpは略0となる。また、絶縁抵抗Rm1が低下していた際の電圧VRp(2Vst)は、絶縁抵抗Rpが低下していた際の電圧VRp(3Vst)の略3分の2となる。また、絶縁抵抗Rm2が低下していた際の電圧VRp(Vst)は、絶縁抵抗Rpが低下していた際の電圧VRp(3Vst)の略3分の1となる。
同様に、第4計測処理では、絶縁抵抗Rn、絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2の抵抗値が低下している場合には、それぞれ3Vst、Vst又は2Vstの電圧VRnが計測されるのに対して、絶縁抵抗Rn、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2のいずれも低下していない場合には電圧VRnは略0となる。また、絶縁抵抗Rm1が低下していた際の電圧VRn(Vst)は、絶縁抵抗Rnが低下していた際の電圧VRn(3Vst)の略3分の1となり。また、絶縁抵抗Rm2が低下していた際の電圧VRn(2Vst)は、絶縁抵抗Rnが低下していた際の電圧VRn(3Vst)の略3分の2となる。
このようにして、検知用電圧としての正極側電圧である電圧VRpと、負極側電圧である電圧VRnとが計測される。そして、監視装置25は、計測結果に基づいて絶縁抵抗が低下している否かを判定する判定処理を実行する。
具体的には、監視装置25は、第3計測処理及び第4計測処理で検知用電圧を計測すると、計測された電圧VRpと電圧VRnとを合計して、その合計値が第2閾値Vt2以上の場合に、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。つまり、監視装置25は、VRp+VRn≧Vt2であると、絶縁抵抗Rp、絶縁抵抗Rn、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2のいずれかが低下していると判定する。
スタック間の絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、1つのスタック電圧値であるVst分しかキャパシタFCに充電されない場合がある。このため、電圧VRp又は電圧VRnの一方のみを用いた場合には、電圧値が小さく絶縁抵抗の低下を正確に判定することができない可能性がある。そこで、電圧VRpと電圧VRnとを合計した値を用いることで、絶縁抵抗の低下を確実に判定することとしている。なお、第2閾値Vt2は、1つのスタック電圧に対応する値より大きく3つのスタック電圧に対応する値より小さい値であることが好ましく、この範囲内であれば任意に設定可能である。つまり、Vst<Vt2<3Vstである。
この判定処理についてより具体的に説明する。スタックの正極側の絶縁抵抗Rpが低下している場合には、第3計測処理にて電圧VRp=3Vstが計測され、第4計測処理にてVRn=0が計測される。したがって、VRp+VRn=3Vst+0=3Vst≧Vt2となり、監視装置25は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。
また、スタックの負極側の絶縁抵抗Rnが低下している場合には、第3計測処理にてVRp=0が計測され、第4計測処理にて電圧VRn=3Vstが計測される。したがって、VRp+VRn=0+3Vst=3Vst≧Vt2となり、監視装置25は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。
また、スタック間の絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、第3計測処理にて電圧VRp=2Vstが計測され、第4計測処理にて電圧VRn=Vstが計測される。したがって、VRp+VRn=2Vst+Vst=3Vst≧Vt2となり、監視装置25は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。
また、スタック間の絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、第3計測処理にて電圧VRp=Vstが計測され、第4計測処理にて電圧VRn=2Vstが計測される。したがって、VRp+VRn=Vst+2Vst=3Vst≧Vt2となり、監視装置25は、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。
なお、いずれの絶縁抵抗も低下していない場合には、第3計測処理及び第4計測処理の双方で、VRp=VRn=0となるため、VRp+VRn=0<Vt2となり、監視装置25は、いずれかの絶縁抵抗も低下していないと判定する。
このように、いずれの絶縁抵抗が低下している場合においても、検知用電圧の合計(VRp+VRn)の値が3つのスタック電圧に対応した値(3Vst)となる。このため、スタック間の絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2が低下している場合も含めて、絶縁抵抗の低下を検知することが可能になる。
なお、上述した第3計測処理及び第4計測処理を用いると、いずれかの絶縁抵抗が低下していることを検知することはできるものの、どの絶縁抵抗が低下しているかを特定することまではできない。そこで、監視装置25は、絶縁抵抗の低下を検知すると、その低下している絶縁抵抗を特定する処理(第2特定処理)を実行する。以下、この第2特定処理について説明する。
第2特定処理では、監視装置25は、第3計測処理及び第4計測処理で計測した電圧VRp及び電圧VRnに基づいて、低下している絶縁抵抗を特定する。具体的には、監視装置25は、いずれかの絶縁抵抗が低下していることを検知すると、まず電圧VRp及び電圧VRnの各値を第3閾値Vt3と比較する。第3閾値Vt3は、電圧VRp又は電圧VRnの値が、それぞれ単独で3Vst程度あるかが判定可能な値である。例えば、第3閾値Vt3としては、2つのスタック電圧に対応する値より大きく、3つのスタック電圧に対応する値より小さい値であることが好ましく、この範囲内であれば任意に設定可能である。つまり、2Vst<Vt3<3Vstである。
監視装置25は、電圧VRp及び電圧VRnの値を第3閾値Vt3と比較した結果、VRp≧Vt3である場合には、絶縁抵抗Rpが低下していると判定し、VRn≧Vt3である場合には、絶縁抵抗Rnが低下していると判定する。これは、絶縁抵抗Rpが低下している場合には、電圧VRpは3つのスタック電圧に対応した値になり、それ以外の場合にはならないからである。同様に、絶縁抵抗Rnが低下している場合には、電圧VRnは3つのスタック電圧に対応する値になり、それ以外の場合にはならないからである。これにより、絶縁抵抗Rp又は絶縁抵抗Rnが低下している場合には、いずれの絶縁抵抗が低下しているかを特定することが可能になる。
一方、VRp<Vt3かつVRn<Vt3である場合には、監視装置25は、絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rnのいずれも低下していないと判定する。つまりこの場合には、監視装置25は、絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2が低下していると判定する。そして、監視装置25は、VRp<Vt3かつVRn<Vt3である場合には、絶縁抵抗Rm1又は絶縁抵抗Rm2が低下していると判定した後に、いずれの抵抗値が低下しているかをさらに特定する処理を実行する。
例えば、絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、上述のようにVRp=2Vstであり、VRn=Vstとなる。また、絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、VRp=Vstであり、VRn=2Vstとなる。したがって、監視装置25は、VRp<Vt3かつVRn<Vt3の場合は、VRpとVRnとを比較し、VRp>VRnであれば絶縁抵抗Rm1が低下していると判定し、VRp<VRnであれば絶縁抵抗Rm2が低下していると判定する。
このようにして、絶縁抵抗Rm1と絶縁抵抗Rm2のどちらが低下しているかを特定することができる。ただし、特定処理はこれに限定されるものではなく、他の処理によって特定すること可能である。以下では、他の処理として、監視装置25が第1リレーS1〜第8リレーS8の各リレーのオン/オフを制御することで実行する、絶縁抵抗Rm1が低下していることを特定する第3特定処理と、絶縁抵抗Rm2が低下していることを特定する第4特定処理について説明する。
図22及び図23は、第3特定処理を説明する図である。図22及び図23に示すように、監視装置25は、第3特定処理では、第2リレーS2及び第5リレーS5をオンにする。これら各リレーをオンすると、絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、図22に示すように、絶縁抵抗Rm1のみを経由する(いずれのスタックも経由しない)経路が接続される。このため、キャパシタFCにはスタック電圧は充電されない。
一方、絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、図23に示すように、絶縁抵抗Rm2と第2スタック1bとを経由する充電経路が接続され、キャパシタFCには1つのスタック電圧値に対応した電圧が充電される。
そして、監視装置25は、所定時間経過後に、第2リレーS2をオフにすると共に、第6リレーS6をオンにしてキャパシタFCの電圧を計測する。なお、この際に計測されたキャパシタFCの電圧(グループ間電圧)をVRm1とする。
その後、監視装置25は、計測したVRm1が略0であるか否かを判定する。絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、第3特定処理では、キャパシタFCにはスタック電圧が充電されないため、監視装置25は、VRm1が略0の場合には、絶縁抵抗Rm1が低下していると判定する。
図24及び図25は、第4特定処理を説明する図である。図24及び図25に示すように、監視装置25は、第4特定処理では、第4リレーS4及び第5リレーS5をオンにする。これら各リレーをオンすると、絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、図24に示すように、絶縁抵抗Rm2のみを経由する(いずれのスタックも経由しない)経路が接続される。このため、キャパシタFCにはスタック電圧は充電されない。
一方、絶縁抵抗Rm1が低下している場合には、図25に示すように、絶縁抵抗Rm2と第2スタック1bとを経由する充電経路が接続され、キャパシタFCには1つのスタック電圧値に対応した電圧が充電される。
そして、監視装置25は、所定時間経過後に、第4リレーS4及びをオフにすると共に、第6リレーS6をオンにしてキャパシタFCの電圧を計測する。なお、この際に計測されたキャパシタFCの電圧(グループ間電圧)をVRm2とする。
その後、監視装置25は、計測したVRm2が略0であるか否かを判定する。絶縁抵抗Rm2が低下している場合には、第4特定処理では、キャパシタFCにはスタック電圧が充電されないため、監視装置25は、VRm2が略0の場合には、絶縁抵抗Rm2が低下していると判定する。
すなわち、監視装置25は、第2リレーS2及び第5リレーS5をオンした際のキャパシタFCの電圧VRm1が略0である場合に絶縁抵抗Rm1が低下していると判定し、第4リレーS4及び第5リレーS5をオンした際のキャパシタFCの電圧VRm2が略0である場合に絶縁抵抗Rm2が低下していると判定する。
このように、スタック間の絶縁抵抗が低下している場合においても、キャパシタFCに充電されない経路を選択することで、抵抗値が低下しているスタック間の絶縁抵抗を特定することが可能になる。
以上のようにして、3つのスタックが存在する場合(つまり、スタック間の絶縁抵抗が2つ存在する場合)であっても、絶縁抵抗の抵抗値が低下していることを検知することができると共に、低下している絶縁抵抗を特定することも可能になる。
すなわち、本実施の形態では、いずれの絶縁抵抗が低下している場合であってもVRp+VRn=3Vstとなるため、いずれかの絶縁抵抗が低下していることを検知可能である。さらに、電圧VRp及び電圧VRnを3Vstと比較することで、絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rnの低下を特定することが可能になる。さらに、電圧VRp及び電圧VRnを個別に比較したり、いずれのスタックも経由しない経路を選択したりすることで、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2の低下も特定することが可能になる。
<2−4.監視装置の処理>
次に、監視装置25の処理について説明する。図26は、監視装置25の処理を示すフローチャートである。監視装置25は、電源がオンされて起動すると、絶縁抵抗の低下を検知する処理と充電状態を監視する処理とを実行する。
図26に示すように、監視装置25は、まず第3計測処理を実行する(ステップS21)。すなわち、監視装置25は、第5リレーS5及び第8リレーS8をオンにして、キャパシタFCを充電し、所定時間後の第8リレーS8をオフにすると共に、第6リレーS6をオンしてキャパシタFCの電圧(検知用電圧VRp)を計測する。
そして、監視装置25は、充電状態を監視する処理を実行する(ステップS22)。具体的には、監視装置25は、監視用電圧の計測処理を実行して充電状態を監視する。監視用電圧の計測処理は、上述した方法により第1スタック電圧、第2スタック電圧及び第3スタック電圧を計測する方法で行うことができる。
次に、監視装置25は、第4計測処理を実行する(ステップS23)。すなわち、監視装置25は、第1リレーS1及び第6リレーS6をオンにして、キャパシタFCを充電し、所定時間後に第1リレーS1をオフにすると共に、第5リレーS5をオンしてキャパシタFCの電圧(検知用電圧VRn)を計測する。
そして、監視装置25は、再度充電状態を監視する処理を実行する(ステップS24)。これは、ステップS22の処理と同様の処理である。
次いで、監視装置25は、判定処理を実行する(ステップS25)。具体的には、監視装置25は、第3計測処理で計測した電圧VRpと第4計測処理で計測したVRnとを合計した値(VRp+VRn)と、第2閾値Vt2とを比較する。そして、監視装置25は、比較した結果、VRp+VRn≧Vt2である場合には、いずれかの絶縁抵抗が低下していると判定する。すなわち、絶縁抵抗の低下を検知する。一方、監視装置25は、比較した結果、VRp+VRn<Vt2である場合には、いずれの絶縁抵抗も低下していないと判定する。
絶縁抵抗が低下していると判定された場合には(ステップS26でYes)、監視装置25は、抵抗値が低下している絶縁抵抗を特定する第2特定処理を実行する(ステップS27)。具体的には、上述したように、監視装置25は、電圧VRp及び電圧VRnの値を第3閾値Vt3と比較して、VRp≧Vt3である場合には、絶縁抵抗Rpが低下していると判定し、VRn≧Vt3である場合には、絶縁抵抗Rnが低下していると判定する。
これに対して、監視装置25は、VRp<Vt3かつVRn<Vt3である場合には、絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rnは低下していないと判定する。すなわち、監視装置25は、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2のいずれかが低下していると判定する。
絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rnが低下していない場合には(ステップS28でNo)、監視装置25は、第3特定処理及び第4特定処理を実行する(ステップS29)。具体的には、上述したように、第3特定処理では、監視装置25は、第2リレーS2及び第5リレーS5をオンにして、キャパシタFCを充電し、所定時間後に第2リレーS2をオフにすると共に、第6リレーS6をオンしてキャパシタFCの電圧(VRm1)を計測する。そして、監視装置25は、VRm1=0である場合には、絶縁抵抗Rm1が低下していると判定する。
また、第4特定処理では、監視装置25は、第4リレーS4及び第5リレーS5をオンにして、キャパシタFCを充電し、所定時間後に第4リレーS4をオフにすると共に、第6リレーS6をオンしてキャパシタFCの電圧(VRm2)を計測する。そして、監視装置25は、VRm2=0である場合には、絶縁抵抗Rm2が低下していると判定する。
そして、監視装置25は、この判定結果を充電状態の監視結果と共に車両制御装置31などに出力する(ステップS30)。また、絶縁抵抗が低下していない場合(ステップS26でNo)や、絶縁抵抗Rp又は絶縁抵抗Rnが低下している場合(ステップS28でYes)も、その判定結果を充電状態の監視結果と共に車両制御装置などに出力する(ステップS30)。これにより、絶縁抵抗の低下の検知処理と充電状態の監視処理とが実行される。
なお、これらステップS21〜ステップS30の各処理は、監視装置25が起動している間は繰り返して実行される。また、処理の順番はこれに限定されるものではない。例えば、充電状態監視処理の後に第3計測処理と第4計測処理とを順に実行してもよいし、第3計測処理と第4計測処理とを順に実行した後に充電状態監視処理を実行してもよい。また、充電状態監視処理を複数回実行してから第3計測処理及び第4計測処理を実行してもよい。さらに、充電状態の監視結果は、絶縁抵抗の検知結果と共に出力する構成に限定されるものではなく、充電状態の監視処理毎に出力する構成としてもよい。
また、絶縁抵抗Rm1及び絶縁抵抗Rm2のいずれが低下していかを判定する処理(ステップS29)では、第3特定処理及び第4特定処理ではなく、電圧VRp及び電圧VRnを比較する処理を実行してもよい。この場合、監視装置25は、VRp>VRnであれば絶縁抵抗Rm1が低下していると判定し、VRp<VRnであれば絶縁抵抗Rm2が低下していると判定する。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記各実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
上記各実施の形態では、2つのスタックを有する組電池や、3つのスタックを有する組電池を備えたシステムを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、4以上の複数のスタックを有する組電池を備えたシステムにも適用可能である。
この場合、上記各実施の形態と同様の処理を実行することで、組電池1の正極側の絶縁抵抗Rpの抵抗値の低下と、負極側の絶縁抵抗Rnの抵抗値の低下を検知することができる。また、スタック間の絶縁抵抗Rm1、Rm2・・・Rmnの抵抗値が低下している場合には、スタック電圧が充電されない経路を導通させる特定処理を実行することで、低下しているスタック間の絶縁抵抗を特定することができる。
また、上記第1の実施の形態では、電圧VRpと電圧VRnとの合計値が第1閾値Vt1以上である場合に絶縁抵抗が低下していると判定し、VRp=VRnである場合に絶縁抵抗Rmが低下していると判定する構成について説明したがこれに限定されるものではない。
例えば、まず、電圧VRp及び電圧VRnの各々を第1閾値Vt1と比較して、第1閾値Vt1以上の場合に、対応する絶縁抵抗(Rp又はRn)が低下していると判定する。そして、第1閾値Vt1よりも小さい場合に、VRpとVRnとの合計値を第1閾値Vt1と比較する構成としてもよい。そして、この場合、合計値が第1閾値Vt1以上であるとスタック間の絶縁抵抗が低下していると判定される。
絶縁抵抗Rp及び絶縁抵抗Rnが低下している場合には、VRp及びVRnが単独で第1閾値Vt1を超えるため判定可能である。このため、まず絶縁抵抗Rp又は絶縁抵抗Rnが低下しているかを確認した後に、スタック間の絶縁抵抗の低下を判定することで処理の迅速化及び効率化を図ることが可能になる。
また、上記第1の実施の形態では、さらに、第2の実施の形態で説明した第3特定処理及び第4特定処理と同様の特定処理を追加で実行してもよい。すなわち、絶縁抵抗Rmが低下していると判定された際に、例えば、第2リレーS2及び第5リレーS5をオンする制御を実行する。これにより、絶縁抵抗Rmが低下している場合にはスタック電圧が充電されない経路が接続されるため、充電電圧が略0である場合に絶縁抵抗Rmが低下していると判定することができる。第1特定処理に加えて、この処理を追加することで絶縁抵抗Rmが低下していることをより精度よく検知することが可能になる。
また、上記第2の実施の形態では、第3特定処理にて第2リレーS2及び第5リレーS5をオンする方法について説明したがこれに限定されるものではない。絶縁抵抗Rm1が低下している際に、いずれのスタックも経由しない経路を接続可能な組み合わせであればよく、例えば、第3リレーS3及び第6リレーS6をオンする方法が挙げられる。この場合においても、絶縁抵抗Rm1が低下している際には、図27に示すように、いずれのスタックも経由しない経路が接続され、キャパシタFCにはスタック電圧が充電されないため、監視装置25は、電圧VRm1=0である場合に絶縁抵抗Rm1が低下していると特定可能である。
また、上記第2の実施の形態では、第4特定処理にて第4リレーS4及び第5リレーS5をオンする方法について説明したがこれに限定されるものではない。絶縁抵抗Rm2が低下している際に、いずれのスタックも経由しない経路を接続可能な組み合わせであればよく、例えば、第6リレーS6及び第7リレーS7をオンする方法が挙げられる。この場合においても、絶縁抵抗Rm2が低下している際には、図28に示すように、いずれのスタックも経由しない経路が接続され、キャパシタFCにはスタック電圧が充電されないため、監視装置25は、電圧VRm2=0である場合に絶縁抵抗Rm2が低下していると特定可能である。
また、第3特定処理では、第2リレーS2及び第5リレーS5をオンする処理と第3リレーS3及び第6リレーS6をオンする処理とのいずれかを実行してもよいし、両方を実行してもよい。同様に、第4特定処理では、第4リレーS4及び第5リレーS5をオンする処理と第6リレーS6及び第7リレーS7をオンする処理とのいずれかを実行してもよいし、両方を実行してもよい。両方を実行すればより高精度に特定することが可能になる。
さらに、第2の実施の形態では、第3特定処理と第4特定処理とのいずれかを実行する構成としてもよい。この場合、例えば、第3特定処理のみを実行する場合には、低下している絶縁抵抗がRm1でないと判定したときに、低下している絶縁抵抗はRm2であると判定する。同様に、第4特定処理のみを実行する場合には、低下している絶縁抵抗がRm2でないと判定したときに、低下している絶縁抵抗はRm1であると判定する。
また、上記各実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。