以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。図1は、本実施形態に係る緩衝工1の概観を示す図である。図1に示すように、緩衝工1は、車両Cが通るトンネルTに接続されている。なお、本明細書において「トンネル構造物」には、一般にいうトンネルのみならず、トンネル状に形成された構造物(フード状の構造物)も含む意味で用いている。本実施形態では、トンネル構造物としてトンネルTを例として示している。
車両Cは、新幹線などの高速鉄道の車両である。車両Cの運行時の平均速度は任意であり、例えば時速100km以上である。ただし、車両Cは、新幹線などの高速鉄道の車両に限定はなく、他の車両であってもよい。また、車両Cの駆動は、電気モータの他、他の駆動源が使用されてもよい。
トンネルTは、その内部に車両Cが通る坑道Ta(内部空間)を有する。図1において、トンネルTは、複線の区間に設けられており、坑道Taには複数(図1では2系統)の軌道Lnが設けられている。トンネルTは、車両Cが出入りする坑口Tbを有する。坑口Tbは、坑道Taの端の開口に相当する。なお、図1では軌道Lnが複線(2系統)の例を示しているが、軌道Lnが単線(1系統)であってもよい。また、単線の場合、上りまたは下りのいずれかの専用として用いる場合の他に、上り及び下りの双方に使用する場合がある。
以下、図1などに示すXYZ直交座標系を適宜参照しつつ、要素の位置関係などを説明する。このXYZ直交座標系において、Y軸方向は、トンネルTの坑口Tbにおける軌道Lnに平行な方向である。また、Y軸方向に直交する水平方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向とする。ここでは、説明の便宜上、軌道Lnは水平方向に延びているものとするが、登り又は下りの傾斜面上に設けられていてもよい。また、XYZ直交座標系において矢印の方向を+方向とし、反対方向を−方向として説明する場合がある。
緩衝工1は、軌道Lnを覆う中空構造の覆体2を備える。図1において、覆体2は、軌道Lnとほぼ平行な方向(Y軸方向)に延びる半円筒状である。覆体2は、その内部に、車両Cが走行可能な通路2aを有する。通路2aは、覆体2の内部空間であり、通路2aの床面上には軌道Lnが敷設されている。
通路2aの一端(−Y側)は、覆体2の開口2bになっており、外部に開放されている。通路2aの他端(+Y側)は、覆体2の開口2cになっており、トンネルTの坑口Tbに接続されている。図1のように複線の区間に設けられる緩衝工1において、開口2bは、例えば往路では覆体2の進入口に相当し、復路では覆体2の退出口に相当する。すなわち、往路において、車両Cは、開口2bを通って覆体2の通路2aに進入し、通路2aを走行した後に、開口2cを通ってトンネルTの坑道Taに進入する。また、復路において、車両Cは、トンネルTの坑道Taから開口2cを通って覆体2の通路2aに進入し、通路2aを走行した後に、開口2bを通って覆体2から退出する。
開口2cは、例えば、寸法および形状がトンネルTの坑口Tbと同一に設定される。ここでいう同一とは、形成または製造の公差、伸縮や欠けなど経時的な変化量を誤差範囲として、誤差範囲内に収まることをいう。ここで、トンネルTの幅の半分を、トンネルTの断面の代表寸法とする。代表寸法は、トンネルTの半径あるいは高さに相当し、例えば7mから10m程度である。また、軌道Lnが単線の場合は、トンネルTの断面寸法は、例えばトンネルTの半径が3mから5m程度である。上記の誤差範囲は、例えば代表寸法の数%以下(例えば、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下など)に設定される。すなわち、トンネルTの幅の半分が10m程度である場合に、誤差範囲が1%とすれば、例えば±10cm以下に設定される。
開口2cの縁は、覆体2を軌道Lnが延びる方向(Y軸方向)から見通した場合にトンネルTの坑口Tbの縁とズレ(段差)がないように、形成されている。開口2cの縁は、軌道Lnと直交する2方向(X軸方向およびZ軸方向)のそれぞれにおいて、トンネルTの坑口Tbの縁と一致している。これにより、車両C突入側の坑口Tb周辺の環境に与える影響を小さくすることができる。本実施形態において、覆体2の端とトンネルTの端との継ぎ目は、覆体2の内周面2d(通路2aの周壁)とトンネルTの内周面Tc(坑道Taの周壁)とが平滑に連続するように、コンクリートなどの充填材で充填されてもよい。
本実施形態において、外部へ開放されている開口2bは、その形状が開口2cと相似であり、その寸法が開口2cと同一である。従って、開口2bは、その寸法および形状がトンネルTの坑口Tbと同一である。ただし、開口2bの寸法及び形状が開口2cと同一であることに限定されず、両者の形状や寸法が異なってもよい。
ところで、覆体2に車両Cが進入すると、覆体2の通路2aに圧力波が発生する。本実施形態において、覆体2は、通路2aを伝播する圧力波の圧力勾配を緩和させる第1圧力調整部3、および通路2aを伝播する圧力波の圧力を減少させる第2圧力調整部4を有している。第1圧力調整部3は、覆体2のうちトンネルTと反対側の端部側に配置される。第2圧力調整部4は、第1圧力調整部3とトンネルTとを間に配置される。第1圧力調整部3の長さは、通路2aに沿う方向において、例えば1m以上100m以下に設定されてもよく、また100mよりも長くてもよい。また、第2圧力調整部4の長さは、通路2aに沿う方向に、例えば10m以上500m以下に設定されてもよく、また500mよりも長くてもよい。本実施形態において、覆体2の長さは、例えば数十mから数百mに設定される。この長さは、車両Cの速度に応じて変更してもよい。また、覆体2の長さは、車両Cの速度に応じて設定され、この覆体2の長さに応じて第1圧力調整部3の長さ、及び第2圧力調整部4の長さが設定されてもよい。
第1圧力調整部3は、車両Cの先端部が覆体2に進入したときに発生する圧力波の圧力勾配が、圧力波の伝播に伴って急峻になることを抑制する。第2圧力調整部4は、覆体2の通路2aを車両Cが走行している間に車両Cの先端部で圧縮される圧力波を減衰させる。すなわち、第2圧力調整部4は、圧力波の圧力のピーク値を低減させる。なお、第1圧力調整部3および第2圧力調整部4は、双方とも覆体2内で生じた圧力波を減衰させるが、第1圧力調整部3は、第2圧力調整部4と比較して、通路2aに形成される圧力波の圧力勾配を緩和させる。
第1圧力調整部3および第2圧力調整部4には、それぞれ、通路2aを伝播する圧力波により気体が通る開口部8が設けられている。開口部8は、覆体2の長手方向(Y軸方向)に並んでいる。第1圧力調整部3において、開口部8は、覆体2の周方向すなわちY軸方向の回りに複数配置されている。
図2は、図1のA−A’線における覆体2の断面を示す図である。覆体2は、軌道Lnの上方および側方を覆っており、外部と仕切られた空間(通路2a)を形成する。
図2において、覆体2は、セグメント9Aおよびセグメント9Bを備える。セグメント9Aおよびセグメント9Bは、覆体2をその長さ方向に直交する幅方向に分割したものである。セグメント9Aおよびセグメント9Bは、例えば、プレキャスト工法を利用してコンクリートで形成される。覆体2は、工場などで形成されたセグメント9Aおよびセグメント9Bを、覆体2の設置場所で連結したものである。
図2において、セグメント9Bは、覆体2の幅方向の中心線(中央)に関して、セグメント9Aと対称的な形状である。セグメント9Aとセグメント9Bとの連結部9Cは、覆体2において鉛直上方に最も突き出た天頂部になっている。ここでは、セグメント9Aの構造について代表的に説明し、セグメント9Bの構造の説明を簡略化あるいは省略する。
セグメント9Aは、隔壁11を有する。隔壁11の内周面は、覆体2の内周面2dに相当する。覆体の内周面2dは、XZ平面において円弧状に湾曲しており、Y軸方向に直線的に延びている。隔壁11の外周面は、覆体2の外周面2eに相当する。覆体2の外周面2eは、XZ平面において概ね円弧状に湾曲しており、Y軸方向に直線的に延びている。外周面2eには、外部に向かって凸の突起部11aが形成されている。この突起部11aは、覆体2の長さ方向に延びている。また、図2では図示しないが、このような突起部は、覆体2の外周面2eの周方向にも形成されている。この突起部は、外周面2eの周方向に延在しており、Y軸方向に所定間隔で形成される。これら突起部11a等は、覆体2の強度を確保するためのリブとして機能する。なお、突起部11aを設けるか否かは任意であり、突起部11aを設けなくてもよい。
隔壁11の内部には、ワイヤ10(図2ではワイヤ10を点線にて表記している。)を通すための空洞11cが形成されている。空洞11cは、隔壁11の周に沿うように形成されている。空洞11cは、Y軸方向に所定間隔で形成されている。空洞11cは、隔壁11の下端部にて外部に開放されている。ワイヤ10の一端は、隔壁11の下端部において空洞11cから引き出されている。このワイヤ10の一端は、例えばネジ溝が形成されており、覆体2の土台となる基礎12に形成された貫通孔12aに差し込まれてナット10aを締結させることにより基礎12に固定されている。
また、セグメント9Aの空洞11cは、セグメント9Bの空洞11cに通じており、連結部9Cの突起部11aの内部を介して外部に開放されている。ワイヤ10の他端は、連結部9Cにおいて空洞11cから引き出されている。このワイヤ10の他端は、例えば上記と同様にネジ溝が形成されており、このネジ溝にナット10aを締結させることでセグメント9Bの突起部11aに固定されている。
このように、ワイヤ10は、セグメント9Aの空洞11cを介して、その一端が基礎12に固定されるとともに他端がセグメント9Bと固定される。ワイヤ10は、2つのナット10aの一方または双方を締めることによりワイヤ10に対して所定のテンションが掛けられている。セグメント9Aは、ワイヤ10のテンションによって基礎12に押し付けられ、基礎12と固定される。また、セグメント9Aは、ワイヤ10のテンションによってセグメント9Bに押し付けられ、セグメント9Bと固定される。
なお、図2において、ワイヤ10は、隔壁11の内部の空洞11cを引き回されているが、隔壁11の外周面を引き回されていてもよい。例えば、隔壁11の外周面に溝が形成されており、ワイヤ10をこの溝の内側に這わせてもよい。ワイヤ10は、例えば鋼線であるが、磁界への影響などを考慮して非磁性体材料で形成されていてもよい。
隔壁11には、開口部8が設けられている。開口部8は、隔壁11に設けられた貫通孔11bを備え、この貫通孔11bに取り付けられた多孔部材6を有している。開口部8には、覆体2の外周面2e側に、多孔部材6を覆うようにカバー部材15が取り付けられている。本実施形態おいて、開口部8は、セグメント9Aとセグメント9Bとの連結部9C(天頂部)を避けて配置されている。
貫通孔11bは、隔壁11のうち空洞11cが通っていない位置に、形成されている。また、覆体2の天頂部においては、上記のように連結部9Cがあるため、貫通孔11bは形成されない。貫通孔11bは、隔壁11の突起部11aの間に配置されている。貫通孔11bは、隔壁11を貫通しており、覆体2の内部空間(通路2a)に通じている。
多孔部材6は、隔壁11の突起部11aの間に配置されており、覆体2に固定されている。そのため、仮に多孔部材6は、隔壁11との固定が外れた場合であっても、突起部11aに引っかかることで滑落が抑制される。多孔部材6は、例えば、鋼板を母材として所定形状の複数の開口が設けられたものであり、この開口が圧損孔5として用いられる。圧損孔5は、多孔部材6の表裏両面を連通しており、通路2a内で生じた圧力波によって気体を外部に放出する。すなわち、圧損孔5は、隔壁11の貫通孔11bを介して、通路2aに面した状態となっている。なお、圧損孔5は、覆体2の内周面2dから外周面2eにわたって一定の内径に形成されるが、これに代えて、例えば、外周面2e側の内径が内周面2d側の内径より広くなるように形成されてもよい。
ところで、覆体2に車両Cが進入すると、通路2aに圧力波が生じる。通路2aに圧力波が生じると、通路2aと隔壁11の外部(大気)との圧力差により圧損孔5に気体が流れ、この気体は、圧損孔5を介して覆体2の外部へ放出される。圧損孔5を流れた気体は、圧損孔5での圧力損失によって運動量が減少する。このようにして、圧力波はエネルギーが消費され、減衰する。結果として、トンネルTから放射される微気圧波に起因する発波音や振動が低減され、周辺の環境に悪影響を及ぼすことが軽減あるいは防止される。
このように、覆体2に圧損孔5が設けられていると、通路2aを伝播する圧力波を弱めることができるが、車両Cの走行により発生する音が圧損孔5を通って外部へ漏れることが考えられる。この音は、民家などの居住施設に到達すると、騒音として認識される可能性を有している。
本実施形態において、カバー部材15は、覆体2の通路2a内から圧損孔5を介して放出される気体を、その放出方向と異なる方向に向けて外部に放出する。従って、カバー部材15による気体の放出方向を民家等と異なる方向(例えば上方や山側など)に設定することにより、圧損孔5から外部に漏れた音が居住施設へ向かって伝播することを抑制することができ、この音が騒音として認識されることが低減される。図2に示すカバー部材15は、上方に向けて気体を放出するように設定した一例を示している。
カバー部材15は、覆体2の外周面2eとの間に、圧損孔5から放出された気体を、その放出方向から向きを変えて外部へ送るための流路24を有する。圧損孔5から放出された気体は、流路24を通って出口24aから覆体2の外部へ放出される。流路24の出口24aは水平方向より上方に向いており、カバー部材15は、気体を水平方向より上方に向けて放出する。
次に、図3から図6を参照しつつ、カバー部材15について、より詳しく説明する。図3は、カバー部材15の概観を示す斜視図である。図4は、カバー部材15を分解して示す斜視図である。図5は、図3のB−B’線におけるカバー部材15の断面図である。図6は、図3のC−C’線におけるカバー部材15の断面図である。
図3および図4に示すように、覆体2には、外部に対して凸の突起部11aが形成されている。突起部11aは、覆体2の周方向に延びている。多孔部材6は、覆体2の長さ方向に並ぶ突起部11aの間に配置されている。多孔部材6は、その外形寸法が貫通孔11bの開口面積よりも大きい板状である。多孔部材6は、貫通孔11bの外側に張り出した部分において、ボルトなどの固定部材25によって隔壁11に固定されている(図6参照)。多孔部材6は、交換可能に固定されていてもよいし、交換不能に固定されていてもよい。このように多孔部材6の外形寸法が貫通孔11bの内径よりも大きく設定されていると、多孔部材6の固定が外れた場合であっても、多孔部材6が貫通孔11bから通路2aに落下することが回避できる。
図4に示す多孔部材6は、2列3行の2次元的に配置された6つの圧損孔5を有する。この多孔部材6において、3つの圧損孔5が並ぶ方向は覆体2の周方向に対応し、2つの圧損孔5が並ぶ方向は覆体2の長さ方向(Y軸方向)に対応する。ただし、1つの多孔部材6に形成される圧損孔5の数や配置は任意である。例えば、図4の圧損孔5は、正方格子状に配列されているが、三角格子状(千鳥格子状)に配列されていてもよく、不規則に配列されていてもよい。また、複数の圧損孔5が同一であることに限定されず、互いに異なる圧損孔5が形成されてもよい。また、各開口部8において、同一の多孔部材6が用いられることに限定されず、配置する箇所によって異なる圧損孔5が形成された多孔部材6が使用されてもよい。また、多孔部材6の大きさは同一であることに限定されず、設置場所に応じて異なってもよい。さらに、多孔部材6に形成される圧損孔5の数や大きさも設置場所によって異なってもよい。
カバー部材15は、矩形板状の天板部(遮蔽部)20と、天板部20の外周に沿って設けられた周壁部21と、周壁部21の下端から側方に延びる縁部22と含む。カバー部材15は、覆体2の長さ方向に並ぶ突起部11aにまたがるように、配置されている。カバー部材15の縁部22は、突起部11a上に配置されている。カバー部材15は、縁部22において、ボルトなどの固定部材23により突起部11aに固定されている。
カバー部材15は、例えば多孔部材6ごとに設けられるが、1つのカバー部材15が複数の多孔部材6をまとめて覆うように設けられていてもよいし、複数のカバー部材15が1または2以上の多孔部材6を覆うように設けられていてもよい。カバー部材15は、多孔部材6に設けられた複数の圧損孔5を覆うように配置されている。天板部20は、圧損孔5(多孔部材6)と間隔をあけて圧損孔5に対向している(図5および図6参照)。天板部20は、圧損孔5の中心軸と交差するように配置されている。すなわち、天板部20は、圧損孔5から放出された気体の流れを遮る位置に配置された遮蔽部として機能する。天板部20は、カバー部材15が覆体2に取り付けられた状態で、圧損孔5の全部または一部の鉛直上方に配置される。
図4に示すカバー部材15において、天板部20は矩形板状である。平面視した天板部20の辺20aおよび辺20bは、突起部11aとほぼ平行である。周壁部21は、周壁部21a、周壁部21b、及び周壁部21cを含む。周壁部21aは、平面視した天板部20の辺20aに設けられている。周壁部21bは、辺20aと平行な辺20bに設けられており、周壁部21aに対向している。周壁部21cは、辺20aと垂直な辺20cに設けられている。このように、周壁部21は、平面視した天板部20の3辺に連続して設けられている。
図5および図6に示すように、覆体2の隔壁11と天板部20との間において、隔壁11に囲まれた空間は、圧損孔5から放出された気体が流通可能な流路24になっている。平面視した天板部20の4辺のうち辺20dにおける天板部20と隔壁11の間は、大気開放されており、流路24の出口24aになっている。流路24の出口24aは、鉛直上方または鉛直上方よりも覆体2の中央側(図2参照)に向けられる。出口24aの開口面積は、例えば、1つのカバー部材15に覆われている複数の圧損孔5(図4では6つ)の開口面積の総和よりも大きく設定される。
天板部20は、圧損孔5に面する内面20eを有する。内面20eは、流路24の出口24aに向かうにつれて覆体2の外周面2eから離れる方向に傾斜して配置される。出口24aに近い圧損孔5の位置における流路24の断面積S1は、出口から遠い圧損孔5の位置における流路24の断面積S2よりも大きい。
本実施形態において、カバー部材15には2枚の吸音材26が設けられている。吸音材26は、例えば、金属板に複数のパンチ穴26aが形成されたパンチングメタルが用いられる。パンチ穴26aの個数や配置、内径は任意であり、例えば、互いに異なる内径のパンチ穴26aが形成されてもよい。吸音材26は、カバー部材15の内側において、圧損孔5よりも外側に周壁部21a及び周壁部21bとそれぞれ平行に配置される。また、吸音材26は、流路24の出口24a側においてそれぞれ外側に折り曲げられた屈曲部26bを備えている。なお、吸音材26は、周壁部21cの内側や、天板部20の内側に配置されてもよい。
吸音材26は、圧損孔5からの音により振動し、音のエネルギーを消費することによって音を弱める。吸音材26としてパンチングメタルを利用すると、吸音材26の耐久性を向上させることができる。吸音材26としては、パンチングメタルに代えて、ガラスウールなどを利用したものであってもよいし、パンチングメタルとガラスウールとを組み合わせたものでもよい。
吸音材26は、例えばL字型の取付け部材27によって多孔部材6の上面に固定されるが、後に説明するようにカバー部材15に固定されていてもよい。この取付け部材27は、固定部材25によって、多孔部材6とともに覆体2の隔壁11に固定されている。このように、吸音材26は、流路24の中心に対して圧損孔5よりも外側に配置されていると、流路24における気体の流れを妨害しにくい。なお、吸音材26は、多孔部材6上に固定されることに代えて、覆体2に直接固定されてもよいし、天板部20に固定されてもよい。
なお、カバー部材15の取り付け構造については、適宜変更できる。図7は、カバー部材15の他の例を示す図である。図6のカバー部材15は多孔部材6とは別に覆体2に固定されていたが、図7のカバー部材15は、多孔部材6とともに覆体2に固定されている。図7において、固定部材25の縁部22は、多孔部材6の縁部と重ねられ、多孔部材6との間に取付け部材27を挟み込んで、配置されている。固定部材25は、カバー部材6の縁部22と、取付け部材27と、多孔部材6とを貫通して、覆体2に固定されている。ここでは、カバー部材15は、吸音材26を保持した取付け部材27と溶接などで一体化(ユニット化)されており、ユニット化された状態で多孔部材6とともに覆体2に取り付けられている。なお、カバー部材15は、多孔部材6とも一体化されていてもよいし、多孔部材6とは別体であってもよい。
以上のような構成の緩衝工1において、圧損孔5からカバー部材15の流路24へ漏れた音は、流路24に沿って伝播し、流路24の出口24aから外部へ放射される。出口24aから放射される音には、出口24aが向く方向への指向性が付与されており、流路24の出口24aは鉛直方向または鉛直方向よりも覆体2の中央側を向いている。そのため、出口24aから放射された音は、上方へ抜けるので水平方向に伝わりにくく、居住施設へ到達しにくいので騒音として認識されにくい。また、出口24aを居住施設のない方向(例えば山側や海側、トンネルT側など)へ向けることにより、騒音の認識を軽減させることができる。
また、天板部20は、圧損孔5の少なくとも一部の鉛直上方に、配置されている。そのため、圧損孔5に対して天板部20がひさしとなり、圧損孔5に雨水や雪、枯葉、落石などの異物が直接的に(容易に)入り込むことが抑制される。特に、覆体2の天頂部に近い圧損孔5については、音は上方に向けて抜けるため水平方向への音の伝播は少ないものの、雨や雪が直接覆体2内に進入する可能性があるため、カバー部材15によって異物等の浸入を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態において、出口24aの開口面積は、1つのカバー部材15に覆われている複数の圧損孔5の開口面積の総和よりも大きく設定されている。カバー部材15の流路24における気体の流れが阻害されにくくなり、圧損孔5により圧力波のエネルギーを効果的に損失させることができる。
ところで、1つのカバー部材15に覆われている圧損孔5の数が複数である場合に、出口24aの近い圧損孔5の位置における流路24には、この圧損孔5を通った気体と、出口24aから遠い圧損孔5を通った気体とが合流して流れることになる。すなわち、流路24において出口24aに近づくほど、気体の流量が増すことになる。本実施形態において、出口24aに近い圧損孔5の位置における流路24の断面積S1は、出口から遠い圧損孔5の位置における流路24の断面積S2よりも大きい。そのため、カバー部材15の流路24における気体の流れが阻害されにくくなり、圧損孔5により圧力波のエネルギーを効果的に損失させることができる。
本実施形態において、図6に示した天板部20の内面20eは、流路24の出口24aに向かうにつれて覆体2の外周面2eから離れる方向に傾斜している。そのため、圧損孔5を通った気体は、内面20eにガイドされながら出口へと流れ、天板部20の内面20eが傾斜していない場合と比較して空気抵抗が低減される。結果として、カバー部材15の流路24における気体の流れが阻害されにくくなり、圧損孔5により圧力波のエネルギーを効果的に損失させることができる。このように、本実施形態に係る緩衝工1は、トンネルTから外部へ放射される微気圧波を低減しつつ、圧損孔5から漏れた音が騒音となることを抑制できる。
また、図6に示したようにカバー部材15の流路24に面する位置に、吸音材26が配置されていると、流路24を伝わる音を吸音材26で弱めることができる。また、吸音材26は、圧損孔5の外側であって周壁部21の内側に気体の流れ方向と平行に配置されている。そのため、圧損孔5から流路24の出口24aへ向かう気体の流れが吸音材26により阻害される(気体の流れの抵抗となる)ことが抑制され、圧損孔5により圧力波のエネルギーを効果的に損失させることができる。
また、図1等に示したように、覆体2の開口2cは、寸法および形状がトンネルTの坑口Tbと実質的に同一である。従って、トンネルTの内周面Tcに合わせて、覆体2も円形状に湾曲した形状となる。この場合、覆体2の側面に配置されている圧損孔5は水平方向に近い方向を向くことになり、圧損孔5から水平方向に音が放射されやすい。このような圧損孔5をカバー部材15で覆うことにより、覆体2内の圧力波の低減とともに、騒音の発生を抑制することもできる。
また、覆体2においてセグメント9Aとセグメント9Bとの連結部9Cが天頂部に配置されている場合に、天頂部に圧損孔5を配置しにくい場合がある。この場合には、天頂部を避けて圧損孔5を配置することになり、覆体2の側壁に配置される圧損孔5の数が増えることになる。このような場合にも圧損孔5をカバー部材15で覆うことにより、緩衝工1の設置しやすさを維持しつつ、騒音の発生を抑制することもできる。
次に、開口部8の配置例について説明する。図8は、開口部8の配置例を示す平面図である。図8において、カバー部材15は省略しているが、開口部8の一部または全部にはカバー部材15が取り付けられる。図8においてX軸方向に並ぶ開口部8は、図1においてY軸方向の回りに並ぶ開口部8に対応する。例えば、図8に示す覆体2において、全ての開口部8にカバー部材15を取り付けてもよく、また、天頂部に近い2つのY軸方向に並んだ開口部8にはカバー部材15を取り付けなくてもよい。また、第1圧力調整部3の開口部8にはカバー部材15を取り付けるとともに、第2圧力調整部4の開口部8にはカバー部材15を取り付けなくてもよい。
ここで、本例の第1圧力調整部3及び第2圧力調整部4について説明する。図8に示すように、第1圧力調整部3には、X軸方向に複数の開口部8が並ぶ列7a〜列7dが配置されている。第1圧力調整部3において、列7a〜列7dの各列に含まれる開口部8の数は、開口2cに近づく側に配置されている列であるほど、少なくなる。X軸方向に並ぶ開口部8の数は、開口2bから開口2cに向かう方向において、段階的に減少している。第1圧力調整部3における開口部8の密集度は、開口2bに近づく側において開口2cに近づく側よりも高い。
また、第2圧力調整部4において、開口部8は、覆体2の周方向に所定の数(図8では2つ)だけ配置されており、この所定の数は通路2aに沿う方向において一定である。すなわち、第2圧力調整部4における開口部8の密集度は、開口2bから開口2cに向かう方向において、ほぼ均一である。なお、上述したような、X軸方向(覆体2の周方向)に配置される開口部8の数は一例であり、適宜変更できる。また、第2圧力調整部4における開口部8は、Y軸方向に1列であってもよい。また、第2圧力調整部4において開口部8をY軸方向に複数列配置し、いずれかの列に対して蓋をしておき、後にカバー部材15と取り換えることで第2圧力調整部4の開口率を調整してもよい。
圧損孔5の内径および数は、圧損孔5を通る流れに生じる圧力損失が圧力波を減衰させる上で有意な値となるように、設定される。圧損孔5の内径および数は、例えば、通路2aを伝播する圧力波の情報、覆体2の外部の圧力(大気圧)の情報などに基づいて設定される。上記の圧力波の情報は、例えば、模型試験や数値シミュレーションなどにより得られ、また実際の緩衝工での計測によっても得られる。また、圧損孔5の内径は、多孔部材6の厚さ、落石などの異物の通路2aへの進入防止、作業員の転落防止なども考慮して設定される。圧損孔5の内径は、例えば100mm以上300mm以下に設定される。
次に、圧損孔5による覆体2の開口率の分布について説明する。図8に示したように多孔部材6は離散的に設けられており、また、図4に示したように多孔部材6において圧損孔5は離散的に設けられている。そこで、本実施形態においては、圧損孔5が設けられているY軸方向の各位置における開口率を覆体2の局所的な開口率とする。このような局所的な開口率を、圧損孔5が設けられているY軸方向の位置に対してプロットすることにより、開口率分布が得られる。
ここでは、Y軸方向において、開口2bからn番目に配置されている圧損孔5の中心の位置をYnとする。位置Ynにおける覆体の外周面2eの周長L[m]、圧損孔5のY軸方向の幅をB[m]とすると、位置Ynにおける覆体の外周面2eの面積は、L×B[m2]で代表的に表される。また、位置Ynを中心としてY軸方向の幅がBの範囲に存在する圧損孔5の開口面積をS[m2]とすると、位置Ynにおける開口率α[%]は、α=S/(L×B)×100で表される。なお、圧損孔5の開口面積Sは、位置Ynに配置される圧損孔5の開口面積の総和である。例えば、位置Ynにm個の圧損孔5が配置されており、圧損孔5の内径が同じである場合に、S=π/4×B2×mである。
図8に示した第1圧力調整部3において、圧損孔5の内径は複数の圧損孔5で同じ値に設定されている。また、X軸方向に並ぶ圧損孔5の数は、開口2bから開口2cに向かう方向において次第に減少する。そのため、第1圧力調整部3において、開口面積Sは開口2bから開口2cに向かって次第に減少する。また、第1圧力調整部3において、覆体2の外周面2eの周長Lは均一であり、局所的な開口率αは開口2bから開口2cに向かって次第に減少する。第1圧力調整部3において、開口率αは、最も開口2bの近くに配置されている圧損孔5の位置で最大値になる。第1圧力調整部3における開口率αは、開口2bから+Y方向に沿って例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%など、から3%、2%、1.5%、1%、0.5%など、まで徐々に減少するように設定される。これにより、第1圧力調整部3において圧力波を十分に減衰させることができる。なお、開口率αは、覆体2の強度を確保する数値に設定されてもよい。また、第1圧力調整部3における+Y側の開口率αは、後述する第2圧力調整部4の開口率αと一致させてもよい。
また、本実施形態においては、第1圧力調整部3において、通路2aの周方向に並ぶ圧損孔5による覆体2の開口率は、開口2bから開口2cに向かう方向において減少している。そのため、第1圧力調整部3を走行する車両Cの周囲の流れの状態は、覆体2に進入前の車両Cの周囲の流れの状態と、トンネルTを走行する車両の周囲の流れの状態との中間的な状態になる。結果として、車両Cの周囲の流れの状態が急激に変化することが抑制され、第1圧力調整部3における圧力波の発生が抑制される。
また、通路2aに発生した圧力波は、第1圧力調整部3に設けられた圧損孔5での圧力損失により圧力勾配が緩和される。そのため、トンネルTから外部へ放射される微気圧波が低減される。第1圧力調整部3の長さは、圧力波の圧力勾配を緩和する程度や設置コストを考慮して任意に設定することができる。
また、図8に示した第2圧力調整部4において、圧損孔5の内径は複数の圧損孔5で同じ値に設定されており、X軸方向に配置される圧損孔5の数は均一である。すなわち、第2圧力調整部4において、開口面積SはY軸方向において均一である。また、第2圧力調整部4において、覆体2の外周面2eの周長は均一であり、局所的な開口率αは均一である。第2圧力調整部4における開口率αは、例えば3%、2%、1.5%、1%、0.5%など、に設定される。これにより、圧力波を効果的に減衰させ、かつ覆体2の天頂部分の強度を確保できる。ただし、これに限定されず、第2圧力調整部4における開口率αを0.5%以上5%以下の任意の数値に設定してもよい。第2圧力調整部4の開口率αがこの範囲に設定されている場合においても、第2圧力調整部4において圧力波が効果的に減衰する。なお、第2圧力調整部4における平均的な開口率は、例えば、第1圧力調整部3における平均的な開口率よりも低く設定される。
なお、第1圧力調整部3からトンネルTへ向かう圧力波は、車両Cの走行に伴って圧縮される。本実施形態においては、第1圧力調整部3よりも車両Cの進行方向の前方に第2圧力調整部4が設けられているので、圧力波の圧縮を緩和できる。結果として、トンネルTの坑道を伝播する圧力波が低減され、トンネルTから外部へ放射される微気圧波が低減される。また、第2圧力調整部4の長さは、圧力波の低減や設置コストを考慮して任意に設定することができる。
次に、緩衝工1の適用例について説明する。図9(A)〜図9(D)は、それぞれ、緩衝工1の適用例を示す図である。図8において、カバー部材15は省略しているが、第1圧力調整部3と第2圧力調整部4に形成される開口部8の一部または全部にはカバー部材15が取り付けられる。
図8(A)に示すトンネルTは、図1に示したように複線の区間に設けられている。トンネルTは、一方の坑口Tbおよび他方の坑口Tdを有する。緩衝工1Aは、第1の覆体2Aおよび第2の覆体2Bを備える。第1の覆体2Aは、トンネルTの一方の坑口Tbに接続されている。第2の覆体2Bは、トンネルTの他方の坑口Tdに接続されている。第1の覆体2Aおよび第2の覆体2Bは、それぞれ、第1圧力調整部3と第2圧力調整部4とを含んでいる。
車両C(図1参照)は、往路(復路)において、第1の覆体2A(第2の覆体2B)を通ってトンネルTに進入し、トンネルTを走行した後に第2の覆体2B(第1の覆体2A)を通る。車両Cが走行する際に発生する圧力波は、第1圧力調整部3によって圧力勾配が緩和され、また第2圧力調整部4により圧力のピーク値が低減される。本適用例においては、トンネルTが長い場合であっても、トンネルTから放射される微気圧波を効果的に低減できる。なお、第2圧力調整部4は、例えばトンネルTの長さに応じて一部または全部を省略可能である。
図8(B)に示す適用例の区間は、第1のトンネルT1および第2のトンネルT2を経由している。第1のトンネルT1と第2のトンネルT2との間の区間は、明かりフードと呼ばれることがある。本適用例の緩衝工1Bは、明かりフードの少なくとも一部に、覆体を設けたものである。
緩衝工1Bは、第1の覆体2C、第2の覆体2D、及び第3の覆体2Eを備える。第1の覆体2Cは、第1のトンネルT1の坑口Tbに接続されている。第2の覆体2Dは、中間緩衝工等と称され、第1のトンネルT1の坑口Tdと第2のトンネルT2の坑口Teとを接続している。なお、第2の覆体2Dは、明かりフードの一部のみに設けられていてもよい。第2の覆体2Dには、内部への採光のために、例えば透明または半透明の板材が所定間隔で配置されてもよい。第3の覆体2Eは、第2のトンネルT2の坑口Tfに接続されている。
本適用例において、第1の覆体2Cおよび第3の覆体2Eは、それぞれ、第1圧力調整部3および第2圧力調整部4を含んでいる。また、第2の覆体2Dは、第2圧力調整部4を含んでいる。車両Cは、往路(復路)において、第1の覆体2Cから、第1のトンネルT1、第2の覆体2D、第2のトンネルT2、第3の覆体2Eの順に走行する。また、復路では、車両Cは、第3の覆体2Eから、第2のトンネルT2、第2の覆体2D、第1のトンネルT1、第1の覆体2Cの順に走行する。
車両Cが第1の覆体2Cを走行する際に発生する圧力波は、第1の覆体2Cの第1圧力調整部3により圧力勾配が緩和され、また第2圧力調整部4により圧力のピーク値が低減される。また、車両Cが第1のトンネルT1を走行時に発生する圧力波(圧縮波)は、第2の覆体2Dの第2圧力調整部4により低減される。また、車両Cが第2のトンネルT2を走行時に発生する圧力波(圧縮波)は、第3の覆体2Eにより低減される。このように、本適用例においては、第2のトンネルT2から放射される圧力波を効果的に低減できる。なお、復路においても同様に、第1のトンネルT1から放射される微気圧波を効果的に低減できる。
図9(C)に示す緩衝工1Cは、図9(B)に示した第1の覆体2Cと第3の覆体2Eのそれぞれ第2圧力調整部4を省略したものである。本適用例において、緩衝工1Cは、第1の覆体2F、第2の覆体2G、及び第3の覆体2Hを備える。第1の覆体2Fおよび第3の覆体2Hは、それぞれ、第1圧力調整部3を含んでいるが第2圧力調整部4を含んでいない。また、第2の覆体2Gは、第2圧力調整部4を含んでいるが第1圧力調整部3を含んでいない。なお、図9(C)の適用例において、第1の覆体2Fと第3の覆体2Hの一方は、第2圧力調整部4を備えてもよい。
図9(D)に示す適用例の区間は、単線の区間である。緩衝工1Dは、第1の覆体2Iおよび第2の覆体2Jを備える。第1の覆体2Iは、トンネルTの坑口Tbに接続されている。第2の覆体2Jは、トンネルTの坑口Tdに接続されている。第1の覆体2Iは、第1圧力調整部3を含み、第2圧力調整部4を含んでいない。また、第2の覆体2Jは、第2圧力調整部4を含み、第1圧力調整部3を含んでいない。
車両Cは、第1の覆体2Iを通ってトンネルTに進入し、トンネルTを走行した後に第2の覆体2Jに進入する。車両Cが第1の覆体2Iに進入する際に発生する圧力波は、第1の覆体2Iの第1圧力調整部3により圧力勾配が緩和される。車両CがトンネルTを走行する際に発生する圧力波(圧縮波)は、第2の覆体2Jの第2圧力調整部4により低減される。このように、本適用例においては、トンネルTから放射される微気圧波を効果的に低減できる。なお、本適用例において、第1の覆体2Iは、第2圧力調整部4を含んでいてもよい。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態あるいは適用例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記の実施形態あるいは適用例で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記の実施形態あるいは適用例で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。
なお、緩衝工1は、トンネル構造物内の空調(例えば衛生換気)などに利用される換気ルーバーフードの前後緩衝工に適用することもできる。なお、換気ルーバーフードは、図9に示す明かりフードに相当する。また、覆体2は、図1に示したような半円筒状でなくてもよく、例えば矩形箱状であってもよい。この場合に、例えば、矩形箱状の覆体2の側面に配置される圧損孔5をカバー部材15で覆うことにより、騒音の発生を抑制できる。
なお、図2に示した緩衝工1は、圧損孔5が形成された多孔部材6を覆体2の外周面2eに取り付けた構造であるが、覆体2の構造および各部の材質は、適宜変更できる。例えば、圧損孔5は、隔壁11に作り込まれたものでもよく、隔壁11の形成時に貫通孔(圧損孔5)が形成されてもよい。また、上記した実施形態では覆体2の天頂部においてセグメントを結合しているが、天頂部を外してセグメントを結合してもよい。また、図2において、覆体2は、周方向に2つのセグメント(セグメント9Aおよびセグメント9B)を連結した構造であるが、周方向のセグメントの数が3以上であってもよいし、分割されていなくてもよい。また、図2に示すものではワイヤ10を用いてセグメント9Aおよびセグメント9Bの連結や、基礎12への固定を行っているが、これに限定されず、例えばボルト及びナットを用いて両者間を連結させてもよい。また、Y軸方向にセグメントが分割される場合、Y軸方向の連結についてもワイヤ10を用いる手法やボルト及びナットを用いる手法が適用されてもよい。また、覆体2は、プレキャスト工法以外の方法により形成されたものであってもよい。例えば、覆体2は、プレストレスト板(PC板)等の板状部材を、格子状の骨格(フレーム)にボルト等で取り付けた構造であってもよい。また、覆体2は、フレームの周囲に型枠を配置し、型枠にコンクリートを打設することによって隔壁11を形成したものであってもよい。
なお、図8に示した第2圧力調整部4において、圧損孔5による開口率は、開口2bから開口2cに向かう方向において段階的に減少しているが、連続的に減少していてもよい。なお、圧損孔5の形状は、円形でなくてもよく、楕円形であってもよいし、三角形や四角形などの多角形であってもよい。また、圧損孔5の形状は、例えば長円のように、直線と曲線とを含む形状であってもよい。
また、図8等において、Y軸方向に並ぶ多孔部材6(圧損孔5)は、X軸方向の位置がほぼ同じであるが、X軸方向の位置が異なっていてもよい。例えば、多孔部材6は、X軸方向の位置が変化しつつY軸方向に並んでいてもよく、ジグザグ状あるいは三角格子状に配置されていてもよい。
また、上記した実施形態において、カバー部材15は、天板部20と周壁部21とで矩形箱状に形成されているが、これに限定されない。例えば、天板部20及び周壁部21の一方または双方が曲面で構成されてもよい。
なお、上記の実施形態、変形例、適用例で説明した覆体の少なくとも一つは、地面上に設けられてもよいし、トンネルとトンネルとの間に架け渡された橋上などに設けられてもよい。