JP2016132928A - 緩衝工 - Google Patents

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高橋 和也
Kazuya Takahashi
和也 高橋
隆史 稲見
Takashi Inami
隆史 稲見
剛二郎 野澤
Gojiro Nozawa
剛二郎 野澤
谷川 将規
Masaki Tanigawa
将規 谷川
土肥 哲也
Tetsuya Doi
哲也 土肥
景一郎 岩永
Keiichiro Iwanaga
景一郎 岩永
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Abstract

【課題】トンネル構造物から放射される圧力波を低減してトンネル構造物周辺への悪影響を軽減する。
【解決手段】緩衝工1は、覆体2を備える。覆体2は、車両Cが走行可能な通路2aを内部に有し、通路2aの一端が外部に開放されるとともに通路2aの他端がトンネルTの坑口Tbに接続される。覆体2は、通路2aの他端の開口2cの寸法および形状が、トンネルTの坑口Tbと同一に形成されるとともに、通路2a内で生じた圧力波によって気体を外部に放出する圧損孔5が複数設けられる。圧損孔5による覆体2の開口率は、一端側(開口2b側)から離れた部分に対して一端側(開口2b側)が高くなるように設定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、トンネル構造物に併設される緩衝工に関する。
例えば、新幹線などの高速で移動する車両が高速でトンネル構造物に突入すると、トンネル構造物内壁と車両との間に圧縮波が形成される。この圧縮波は、その圧力勾配を大きくしながら音速でトンネル構造物内を伝播し、反対側の坑口に達した際にこの坑口からパルス状の圧力波となって放射される。この圧力波は微気圧波と呼ばれ、坑口から放射される際に「ドーン」という発波音を発生させる。その結果として、周辺の環境に悪影響を及ぼすことがある。そのため、トンネル構造物から放射される圧力波を低減する技術が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
特許文献1の緩衝工は、トンネル構造物に接続される覆体を備えている。この覆体の内部には、トンネル構造物と同様に車両の移動を確保するための通路が設けられている。特許文献1に示す通路の断面は、矩形状であり、トンネル構造物の坑道の断面よりも大面積に形成されている。このように、緩衝工の覆体内の通路をトンネル構造物の坑道よりも広くすると、覆体に車両が進入した際の圧力波を低減することが期待される。また、覆体には複数の圧損孔が設けられており、圧力波は圧損孔での圧力損失により弱められ、坑口から放射される微気圧波等を弱めるように作用している。
特開2003−278488号公報
上述のような従来の技術にあっては、微気圧波等を弱めるものの、圧力波を効果的に低減する上で改善の余地がある。すなわち、緩衝工の覆体内の通路がトンネル構造物の坑道より広いと、緩衝工の内壁とトンネル構造物の内壁との間に段差が存在することになり、この段差の部分を車両が通過する際に圧力波を生じさせることになる。この圧力波は、車両が坑口に突入する際と同様にトンネル構造物内を伝播して反対側の坑口から微気圧波となって外部へ放射される。その結果、発破音の発生や、周辺の建築物などに振動を与えてしまい、トンネル構造物周辺の環境に悪影響を及ぼすことがある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、トンネル構造物から放射される圧力波を低減してトンネル構造物周辺への悪影響を軽減することが可能な緩衝工を提供することを目的とする。
本発明の態様に係る緩衝工は、車両が走行可能な通路を内部に有し、通路の一端が外部に開放されるとともに通路の他端がトンネル構造物の坑口に接続される覆体を備え、覆体は、通路の他端の開口の寸法および形状がトンネル構造物の坑口と同一に形成されるとともに、通路内で生じた圧力波によって気体を外部に放出する圧損孔が複数設けられ、圧損孔による覆体の開口率は、一端側が一端側から離れた部分に対して高くなるように設定される。
また、上記した緩衝工において、覆体の通路の周壁とトンネル構造物の坑道の周壁とが平滑に連続してもよい。また、覆体は、一端側に第1圧力調整部が設定され、第1圧力調整部は、通路の周方向に圧損孔が複数設けられ、周方向に並ぶ圧損孔による覆体の開口率は、一端側から他端側に向かう方向において減少してもよい。また、第1圧力調整部の長さは、通路に沿った方向において1m以上100m以下に設定されてもよい。
また、覆体は、第1圧力調整部の他端側に第2圧力調整部が設定され、圧損孔による第2圧力調整部の開口率は、圧損孔による第1圧力調整部の開口率よりも低くてもよい。また、第2圧力調整部において、圧損孔による第2圧力調整部の開口率は、一端側から他端側に向かう方向において均一に分布してもよい。第2圧力調整部の長さは、通路に沿った方向において10m以上500m以下に設定されてもよい。また、圧損孔は、覆体の外周面において、水平方向よりも上方に向けて形成されてもよい。
本発明の態様によれば、トンネル構造物から放射される圧力波を低減して、車両突入側のトンネル坑口周辺および車両出口側のトンネル坑口周辺を含めてトンネル構造物周辺への悪影響を軽減することができる。
実施形態に係る緩衝工の一例を示す図である。 多孔部材の配置の一例を示す図である。 覆体の断面を示す図である。 多孔部材を示す図である。 覆体の他の例を示す断面図である。 緩衝工の適用例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。図1は、本実施形態に係る緩衝工1の概観を示す図である。図1に示すように、緩衝工1は、車両Cが通るトンネルTに接続されている。なお、本明細書において「トンネル構造物」には、一般にいうトンネルのみならず、トンネル状に形成された構造物(フード状の構造物)も含む意味で用いている。本実施形態では、トンネル構造物としてトンネルTを例として示している。
車両Cは、新幹線などの高速鉄道の車両である。車両Cの運行時の平均速度は任意であり、例えば時速100km以上である。ただし、車両Cは、新幹線などの高速鉄道の車両に限定はなく、他の車両であってもよい。また、車両Cの駆動は、電気モータの他、他の駆動源が使用されてもよい。
トンネルTは、その内部に車両Cが通る坑道Ta(内部空間)を有する。図1において、トンネルTは、複線の区間に設けられており、坑道Taには複数(図1では2系統)の軌道Lnが設けられている。トンネルTは、車両Cが出入りする坑口Tbを有する。坑口Tbは、坑道Taの端の開口に相当する。なお、図1では軌道Lnが複線(2系統)の例を示しているが、軌道Lnが単線(1系統)であってもよい。また、単線の場合、上りまたは下りのいずれかの専用として用いる場合の他に、上り及び下りの双方に使用する場合がある。
以下、図1などに示すXYZ直交座標系を適宜参照しつつ、要素の位置関係などを説明する。このXYZ直交座標系において、Y軸方向は、トンネルTの坑口Tbにおける軌道Lnに平行な方向である。また、Y軸方向に直交する水平方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向とする。ここでは、説明の便宜上、軌道Lnは水平方向に延びているものとするが、登り又は下りの傾斜面上に設けられていてもよい。また、XYZ直交座標系において矢印の方向を+方向とし、反対方向を−方向として説明する場合がある。
緩衝工1は、軌道Lnを覆う中空構造の覆体2を備える。図1において、覆体2は、軌道Lnとほぼ平行な方向(Y軸方向)に延びる半円筒状である。覆体2は、その内部に、車両Cが走行可能な通路2aを有する。通路2aは、覆体2の内部空間であり、通路2aの床面上には軌道Lnが敷設されている。
通路2aの一端(−Y側)は、覆体2の開口2bになっており、外部に開放されている。通路2aの他端(+Y側)は、覆体2の開口2cになっており、トンネルTの坑口Tbに接続されている。図1のように複線の区間に設けられる緩衝工1において、開口2bは、例えば往路では覆体2の進入口に相当し、復路では覆体2の退出口に相当する。すなわち、往路において、車両Cは、開口2bを通って覆体2の通路2aに進入し、通路2aを走行した後に、開口2cを通ってトンネルTの坑道Taに進入する。また、復路において、車両Cは、トンネルTの坑道Taから開口2cを通って覆体2の通路2aに進入し、通路2aを走行した後に、開口2bを通って覆体2から退出する。
開口2cは、寸法および形状がトンネルTの坑口Tbと同一である。この同一は、実質的に同一を含む意味で用いられる。寸法および形状が実質的に同一とは、形成または製造の公差、伸縮や欠けなど経時的な変化量を誤差範囲として、誤差範囲内に収まることをいう。ここで、トンネルTの幅の半分を、トンネルTの断面の代表寸法とする。代表寸法は、トンネルTの半径あるいは高さに相当し、例えば7mから10m程度である。また、軌道Lnが単線の場合は、トンネルTの断面寸法は、例えばトンネルTの半径が3mから5m程度である。上記の誤差範囲は、例えば代表寸法の数%以下(例えば、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下など)に設定される。すなわち、トンネルTの幅の半分が10m程度である場合に、誤差範囲が1%とすれば、例えば±10cm以下に設定される。
開口2cの縁は、覆体2を軌道Lnが延びる方向(Y軸方向)から見通した場合にトンネルTの坑口Tbの縁とズレ(段差)がないように、形成されている。開口2cの縁は、軌道Lnと直交する2方向(X軸方向およびZ軸方向)のそれぞれにおいて、トンネルTの坑口Tbの縁と実質的に一致している。本実施形態において、覆体2の端とトンネルTの端との継ぎ目は、覆体2の内周面2d(通路2aの周壁)とトンネルTの内周面Tc(坑道Taの周壁)とが平滑に連続するように、コンクリートなどの充填材で充填されてもよい。このように、緩衝工1は、覆体2の内部からトンネルTの内部へ流れる気体の乱れが抑制されるように、設けられている。これにより、車両C突入側の坑口Tb周辺の環境に与える影響を小さくすることができ、さらに車両C出口側の坑口周辺の環境に与える影響を軽減することができる。
本実施形態において、外部へ開放されている開口2bは、その形状が開口2cと相似であり、その寸法が開口2cと実質的に同一である。つまり、開口2bは、その寸法および形状がトンネルTの坑口Tbと実質的に同一である。ただし、開口2bの寸法及び形状が開口2cと同一であることに限定されず、開口2bは、その形状と寸法の一方または双方が開口2cと異なっていてもよい。
ところで、覆体2に車両Cが進入すると、覆体2の通路2aに圧力波が発生する。本実施形態において、覆体2は、通路2aを伝播する圧力波の圧力勾配を緩和させる第1圧力調整部3、および通路2aを伝播する圧力波の圧力を減少させる第2圧力調整部4を有している。第1圧力調整部3は、覆体2のうち外部に開放されている端側に設定されている。すなわち、第1圧力調整部3は、覆体2のうちトンネルTと反対側の開口2b側に配置される。第1圧力調整部3は、車両Cの先端部が覆体2に進入したときに発生する圧力波の圧力勾配が、圧力波の伝播に伴って急峻になることを抑制する。
第2圧力調整部4は、第1圧力調整部3とY軸方向に連続して形成されており、覆体2においてトンネルT側に設定されている。第2圧力調整部4は、第1圧力調整部3とトンネルTとの間に配置される。第2圧力調整部4は、覆体2の通路2aを車両Cが走行している間に車両Cの先端部で圧縮される圧力波を減衰させる。すなわち、第2圧力調整部4は、圧力波の圧力のピーク値を低減させる。なお、第1圧力調整部3及び第2圧力調整部4は双方とも覆体2内で生じた圧力波を減衰させるが、第1圧力調整部3は、第2圧力調整部4と比較して、通路2aに形成される圧力波の圧力勾配を緩和させる。
第1圧力調整部3の長さは、通路2aに沿う方向において、例えば1m以上100m以下に設定されてもよく、また100mよりも長くてもよい。第1圧力調整部3の長さとして1m確保することにより圧力波の圧力勾配を緩和させることが可能となる。なお、第1圧力調整部3を長くすることにより、圧力波の圧力勾配を緩和する効果が大きくなる。また、第2圧力調整部4の長さは、通路2aに沿う方向に、例えば10m以上500m以下に設定されてもよく、また500mよりも長くてもよい。第2圧力調整部4の長さとして10m確保することにより、圧力波を減衰させることが可能となる。なお、第2圧力調整部4を長くすることにより、圧力波を減衰させる効果が大きくなる。第1圧力調整部3の長さ、及び第2圧力調整部4の長さを合わせると、例えば数十mから数百mに設定される。この長さは、車両Cの速度に応じて変更してもよい。また、覆体2の長さは、車両Cの速度に応じて設定され、この覆体2の長さに応じて第1圧力調整部3の長さ、及び第2圧力調整部4の長さが設定されてもよい。
第1圧力調整部3および第2圧力調整部4には、それぞれ、通路2a内で生じた圧力波によって気体を外部に放出する圧損孔5が設けられている。圧損孔5には、通路2aを伝播する圧力波の圧力と覆体2の外部の圧力(大気圧)との圧力差によって、気体が流れる。圧損孔5については、後に図4などを参照しつつ説明するが、圧損孔5は多孔部材6に設けられており、この多孔部材6が覆体2の外周面2eに取り付けられている。
多孔部材6は、覆体2の外周面2eのうち鉛直方向(+Z軸方向)に最も突き出ている部分を含む天頂部において、覆体2の長手方向(Y軸方向)に並んで配置されている。第1圧力調整部3において、多孔部材6は、覆体2の周方向すなわちY軸方向を中心とした回りにも複数配置されている。
図2は、多孔部材6の配置例を示す平面図である。図2においてX軸方向に並ぶ多孔部材6は、図1において覆体2の周方向に並ぶ多孔部材6に対応する。本例の第1圧力調整部3において、開口2b側の端部にはX軸方向に9つの多孔部材6が並んでおり、このような9つの多孔部材6を含む列7aがY軸方向に5列並んでいる。列7aよりも開口2cに近づく側には、X軸方向に7つの多孔部材6が並ぶ列7bが配置されている。列7bは、Y軸方向に5列並んでいる。列7bよりも開口2cに近づく側には、X軸方向に5つの多孔部材6が並ぶ列7cが配置されている。列7cは、Y軸方向に6列並んでいる。列7cよりも開口2cに近づく側には、X軸方向に3つの多孔部材6が並ぶ列7dが配置されている。列7dは、Y軸方向に3列並んでいる。
このように、第1圧力調整部3には、X軸方向に複数の多孔部材6が並ぶ列7a〜列7dが配置されている。第1圧力調整部3において、列7a〜列7dの各列に含まれる多孔部材6の数は、開口2cに近づく側に配置されている列であるほど、少なくなる。X軸方向に並ぶ多孔部材6の数は、開口2bから開口2cに向かう方向において、段階的に減少している。第1圧力調整部3における多孔部材6の密集度は、開口2bに近づく側において開口2cに近づく側よりも高い。なお、多孔部材6の大きさは同一であることに限定されず、設置する場所に応じて異なってもよい。さらに、多孔部材6に形成される圧損孔5(図4参照)の数や大きさも設置する場所によって異なってもよい。
また、第2圧力調整部4において、多孔部材6は、覆体2の周方向に所定の数(図2では1つ)だけ配置されており、この所定の数は通路2aに沿う方向において一定である。すなわち、第2圧力調整部4における多孔部材6の密集度は、開口2bから開口2cに向かう方向において、ほぼ均一である。なお、上述したような、X軸方向(覆体2の周方向)に配置される多孔部材6の数は一例であり、適宜変更できる。また、本実施形態では、第2圧力調整部4として、覆体2の天頂部に多孔部材6を並べているが、天頂部以外の例えば側面に多孔部材6を並べたものでもよい。また、第2圧力調整部4として、多孔部材6をY軸方向に2列以上配置してもよい。この場合、いずれかの列は蓋をしておき、後に多孔部材6と取り換えることで第2圧力調整部4の開口率を調整してもよい。
図3は、図2のA−A’線における覆体2の断面を示す図である。図4は、多孔部材6を示す図である。覆体2は、軌道Lnの上方および側方を覆っており、外部と仕切られた空間(通路2a)を形成する。
図3において、覆体2は、セグメント9Aおよびセグメント9Bを備える。セグメント9Aおよびセグメント9Bは、覆体2をその長さ方向に直交する幅方向に分割したものである。セグメント9Aおよびセグメント9Bは、例えば、プレキャスト工法を利用してコンクリートで形成される。覆体2は、工場などで形成されたセグメント9Aおよびセグメント9Bを、覆体2の設置場所で連結したものである。
図3において、セグメント9Bは、覆体2の幅方向の中心線(中央)に関して、セグメント9Aと対称的な形状である。セグメント9Aとセグメント9Bとの連結部9Cは、覆体2において鉛直上方に最も突き出た天頂部になっている。ここでは、セグメント9Aの構造について代表的に説明し、セグメント9Bの構造の説明を簡略化あるいは省略する。
セグメント9Aは、隔壁11を有する。隔壁11の内周面は、覆体2の内周面2dに相当する。覆体の内周面2dは、XZ平面において円弧状に湾曲しており、Y軸方向に直線的に延びている。隔壁11の外周面は、覆体2の外周面2eに相当する。覆体2の外周面2eは、XZ平面において概ね円弧状に湾曲しており、Y軸方向に直線的に延びている。外周面2eには、外部に向かって凸の突起部11aが形成されている。この突起部11aは、覆体2の長さ方向に延びている。また、図2では図示しないが、このような突起部は、覆体2の外周面2eの周方向にも形成されている。この突起部は、外周面2eの周方向に延在しており、Y軸方向に所定間隔で形成される。これら突起部11a等は、覆体2の強度を確保するためのリブとして機能する。なお、突起部11aを設けるか否かは任意であり、突起部11aを設けなくてもよい。
隔壁11の内部には、ワイヤ10(図3ではワイヤ10を点線にて表記している。)を通すための空洞11cが形成されている。空洞11cは、隔壁11の周に沿うように形成されている。空洞11cは、Y軸方向に所定間隔で形成されている。空洞11cは、隔壁11の下端部にて外部に開放されている。ワイヤ10の一端は、隔壁11の下端部において空洞11cから引き出されている。このワイヤ10の一端は、例えばネジ溝が形成されており、覆体2の土台となる基礎12に形成された貫通孔12aに差し込まれてナット10aを締結させることにより基礎12に固定されている。
また、セグメント9Aの空洞11cは、セグメント9Bの空洞11cに通じており、連結部9Cの突起部11aの内部を介して外部に開放されている。ワイヤ10の他端は、連結部9Cにおいて空洞11cから引き出されている。このワイヤ10の他端は、例えば上記と同様にネジ溝が形成されており、このネジ溝にナット10aを締結させることでセグメント9Bの突起部11aに固定されている。
このように、ワイヤ10は、セグメント9Aの空洞11cを介して、その一端が基礎12に固定されるとともに他端がセグメント9Bと固定される。ワイヤ10は、2つのナット10aの一方または双方を締めることによりワイヤ10に対して所定のテンションが掛けられている。セグメント9Aは、ワイヤ10のテンションによって基礎12に押し付けられ、基礎12と固定される。また、セグメント9Aは、ワイヤ10のテンションによってセグメント9Bに押し付けられ、セグメント9Bと固定される。
なお、図3において、ワイヤ10は、隔壁11の内部の空洞11cを引き回されているが、隔壁11の外周面を引き回されていてもよい。例えば、隔壁11の外周面に溝が形成されており、ワイヤ10をこの溝の内側に這わせてもよい。ワイヤ10は、例えば鋼線であるが、磁界への影響などを考慮して非磁性体材料で形成されていてもよい。
隔壁11には、貫通孔11bが設けられている。貫通孔11bは、隔壁11のうち空洞11cが通っていない位置に、形成されている。貫通孔11bは、隔壁11の突起部11aの間に配置されている。貫通孔11bは、隔壁11を貫通しており、覆体2の内部空間(通路2a)に通じている。
多孔部材6は、貫通孔11bを覆うように配置されている。多孔部材6の外形寸法は、例えば、貫通孔11bの開口寸法よりも大きく設定される。これにより、多孔部材6が通路2aに落下することが抑制される。多孔部材6は、貫通孔11bの外側に張り出した部分を有し、この部分が隔壁11にボルトなどで固定されている。多孔部材6は、交換可能に固定されていてもよいし、交換不能に固定されていてもよい。覆体2の上部に配置される多孔部材6は、隔壁11の突起部11aの間に配置されている。そのため、多孔部材6は、隔壁11との固定が外れた場合に、突起部11aに引っかかることで滑落が抑制される。
多孔部材6は、例えば、鋼板を母材として所定形状の複数の開口が設けられたものであり、この開口が圧損孔5として用いられる。圧損孔5は、多孔部材6の表裏両面を連通する。すなわち、圧損孔5は、隔壁11の貫通孔11bを介して、通路2aに面した状態となっている。圧損孔5は、覆体2の内周面2dから外周面2eに向かうにつれて水平方向よりも上方を向くように形成される。
なお、圧損孔5は、図3の例において覆体2の内周面2dから外周面2eにわたって一定の内径に形成されるが、その形状は適宜変更できる。例えば、圧損孔5は、外周面2e側の内径が内周面2d側の内径より広くなるように形成されてもよい。また、圧損孔5は、外周面2e側の内径が内周面2d側の内径より狭くなるように形成されてもよい。また、圧損孔5の内周面2d側の縁部を曲面状に形成させ、水滴等が圧損孔5の内周面2d側に滞留させないようにしてもよい。
ところで、覆体2に車両Cが進入すると、通路2aに圧力波が生じる。通路2aに圧力波が生じると、通路2aと隔壁11の外部(大気)との圧力差により、圧損孔5に気体が流れる。圧損孔5を流れた気体は、例えば圧損孔5での圧力損失によって運動量が減少する。このようにして、圧力波はエネルギーが消費され、減衰する。
図4に示すように、多孔部材6は、例えば矩形板状である。図4の圧損孔5は、多孔部材6に格子状に配置されている。多孔部材6において圧損孔5が並ぶ2方向のうち1つの方向は、軌道Lnの長さ方向(Y軸方向)に対応し、もう1つの方向は軌道Lnに垂直な方向(X軸方向およびZ軸方向)に対応する。なお、図4の圧損孔5は、正方格子状に配列されているが、三角格子状(千鳥格子状)に配列されていてもよく、不規則に配列されていてもよい。
圧損孔5の内径および数は、圧損孔5を通る流れに生じる圧力損失が圧力波を減衰させる上で有意な値となるように、設定される。圧損孔5の内径および数は、例えば、通路2aを伝播する圧力波の情報、覆体2の外部の圧力(大気圧)の情報などに基づいて設定される。上記の圧力波の情報は、例えば、模型試験や数値シミュレーションなどにより得られ、また実際の緩衝工での計測によっても得られる。また、圧損孔5の内径は、多孔部材6の厚さ、落石などの異物の通路2aへの進入防止、作業員の転落防止なども考慮して設定される。圧損孔5の内径は、例えば100mm以上300mm以下に設定される。圧損孔5の内径を300mm以下とすることにより、大きなゴミ等が覆体2内に入り込むことや、作業員の転落等を回避できる。また、複数の圧損孔5は、内径が同一であることに限定されず、異なる内径に形成されてもよい。
次に、圧損孔5による覆体2の開口率の分布について説明する。図2に示したように多孔部材6は離散的に設けられており、また、図4に示したように多孔部材6において圧損孔5は離散的に設けられている。そこで、本実施形態においては、圧損孔5が設けられているY軸方向の各位置における開口率を覆体2の局所的な開口率とする。このような局所的な開口率を、圧損孔5が設けられているY軸方向の位置に対してプロットすることにより、開口率分布が得られる。
ここでは、Y軸方向において、開口2bからn番目に配置されている圧損孔5の中心の位置をYn(図4参照)とする。位置Ynにおける覆体の外周面2eの周長L[m]、圧損孔5のY軸方向の幅(図4参照)をB[m]とすると、位置Ynにおける覆体の外周面2eの面積は、L×B[m]で代表的に表される。また、位置Ynを中心としてY軸方向の幅がBの範囲に存在する圧損孔5の開口面積をS[m]とすると、位置Ynにおける開口率α[%]は、α=S/(L×B)×100で表される。なお、圧損孔5の開口面積Sは、位置Ynに配置される圧損孔5の開口面積の総和である。例えば、位置Ynにm個の圧損孔が配置されており、圧損孔5の内径が同じである場合に、S=π/4×B×mである。
図2に示した第1圧力調整部3において、圧損孔5の内径は複数の圧損孔5で同じ値に設定されている。また、X軸方向に並ぶ圧損孔の数は、開口2bから開口2cに向かう方向において次第に減少する。そのため、第1圧力調整部3において、開口面積Sは開口2bから開口2cに向かって次第に減少する。また、第1圧力調整部3において、覆体2の外周面2eの周長Lは均一であり、局所的な開口率αは開口2bから開口2cに向かって次第に減少する。第1圧力調整部3において、開口率αは、最も開口2bの近くに配置されている圧損孔5の位置で最大値になる。第1圧力調整部3における開口率αは、開口2bから+Y方向に沿って例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%など、から3%、2%、1.5%、1%、0.5%など、まで徐々に減少するように設定される。これにより、第1圧力調整部3において圧力波を十分に減衰させることができる。なお、開口率αは、覆体2の強度を確保する数値に設定されてもよい。また、第1圧力調整部3における+Y側の開口率αは、後述する第2圧力調整部4の開口率αと一致させてもよい。
また、図2に示した第2圧力調整部4において、圧損孔5の内径は複数の圧損孔5で同じ値に設定されており、X軸方向に配置される圧損孔5の数は均一である。すなわち、第2圧力調整部4において、開口面積SはY軸方向において均一である。また、第2圧力調整部4において、覆体2の外周面2eの周長は均一であり、局所的な開口率αは均一である。第2圧力調整部4における開口率αは、例えば3%、2%、1.5%、1%、0.5%など、に設定される。これにより、圧力波を効果的に減衰させ、かつ覆体2の天頂部分の強度を確保できる。ただし、これに限定されず、第2圧力調整部4における開口率αを0.5%以上5%以下の任意の数値に設定してもよい。第2圧力調整部4の開口率αがこの範囲に設定されている場合においても、第2圧力調整部4において圧力波が効果的に減衰する。なお、第2圧力調整部4における平均的な開口率は、例えば、第1圧力調整部3における平均的な開口率よりも低く設定される。
このように、圧損孔5による覆体2の開口率αは、外部に開放されている一端側(開口2b側)が、一端側から離れた部分に対して高くなるように設定されている。第1圧力調整部3および第2圧力調整部4を含む部分に着目すると、本実施形態における圧損孔5による覆体2の開口率は、一端側が、一端側から離れた部分に対して高くなるように設定されている。また、第1圧力調整部3のみに着目しても、本実施形態における圧損孔5による覆体2の開口率は、一端側が一端側から離れた部分に対して高くなるように設定されている。
上述のような本実施形態に係る緩衝工1は、覆体2の開口2cの形状および寸法がトンネルTの坑口Tbと実質的に同一であるので、覆体2とトンネルTとの継ぎ目を車両Cが通過する際に圧力波が生じにくい。結果として、トンネルに発生する圧力波が低減され、トンネルTから放射される微気圧波が弱くなる。そのため、トンネルから放射される微気圧波に起因する発波音や振動が低減され、周辺の環境に悪影響を及ぼすことが軽減あるいは防止される。
また、本実施形態においては、第1圧力調整部3において、通路2aの周方向に並ぶ圧損孔5による覆体2の開口率は、開口2bから開口2cに向かう方向において減少している。そのため、第1圧力調整部3を走行する車両Cの周囲の流れの状態は、覆体2に進入前の車両Cの周囲の流れの状態と、トンネルTを走行する車両の周囲の流れの状態との中間的な状態になる。結果として、車両Cの周囲の流れの状態が急激に変化することが抑制され、第1圧力調整部3における圧力波の発生が抑制される。
また、通路2aに発生した圧力波は、第1圧力調整部3に設けられた圧損孔5での圧力損失により圧力の勾配が緩和される。そのため、トンネルTから外部へ放射される微気圧波が低減される。なお、第1圧力調整部3からトンネルTへ向かう圧力波は、車両Cの走行に伴って圧縮される。本実施形態においては、第1圧力調整部3よりも車両Cの進行方向の前方に第2圧力調整部4が設けられているので、圧力波の圧縮を緩和できる。結果として、トンネルTの坑道を伝播する圧力波の圧力のピーク値が低減され、トンネルTから外部へ放射される微気圧波が低減される。
ところで、車両Cの走行により発生する音は、圧損孔5を介して覆体2の外部に漏れることがある。この音は、例えばトンネルTの周辺に居住区域がある場合などには、騒音になりえる。本実施形態において、圧損孔5は、水平方向よりも上方を向いているので、圧損孔5から漏れた音が水平方向に伝わりにくい。このように、圧損孔5から外部へ伝わる音に指向性をもたせ、居住区域と異なる方向へ伝播させることにより、この音が騒音として知覚されることを回避できる。
なお、図3において、覆体2は、周方向に2つのセグメント(セグメント9Aおよびセグメント9B)を連結した構造であるが、周方向のセグメントの数が3以上であってもよいし、分割されていなくてもよい。また、図3に示すものではワイヤ10を用いてセグメント9Aおよびセグメント9Bの連結や、基礎12への固定を行っているが、これに限定されず、例えばボルト及びナットを用いて両者間を連結させてもよい。また、Y軸方向にセグメントが分割される場合、Y軸方向の連結についてもワイヤ10を用いる手法やボルト及びナットを用いる手法が適用されてもよい。また、覆体2は、プレキャスト工法以外の方法により形成されたものであってもよい。このように、覆体2の構造は、図3の例に限定されず、適宜変更できる。以下、覆体2の他の例について説明する。
図5は、覆体2の他の例を示す断面図である。図5の覆体2は、鋼材を連結した骨格20に隔壁11を設けたものである。骨格20は、基礎12に一端を固定されるアーチ状の構造部材21、及び構造部材21と連結された構造部材22を含む。このアーチ状の構造部材21は、軌道Lnの長さ方向に周期的に設けられる。構造部材22は、軌道Lnの長さ方向に延びる梁状である。軌道Lnの長さ方向に並ぶアーチ状の構造部材21は、構造部材22により互いに連結されている。骨格20は、構造部材21および構造部材22により格子状(網目状)に形成されている。隔壁11は、例えば骨格20の周りに設けられる型枠にコンクリートを打設することで、形成される。なお、覆体2は、フレーム状の骨格20に、隔壁11としてプレキャストコンクリート板あるいはプレストレストコンクリート板をボルト等で取り付けた構造であってもよい。
次に、緩衝工1の適用例について説明する。図6(A)〜図6(D)は、それぞれ、緩衝工1の適用例を示す図である。
図6(A)に示すトンネルTは、図1に示したように複線の区間に設けられている。トンネルTは、一方の坑口Tbおよび他方の坑口Tdを有する。緩衝工1Aは、第1の覆体2Aおよび第2の覆体2Bを備える。第1の覆体2Aは、トンネルTの一方の坑口Tbに接続されている。第2の覆体2Bは、トンネルTの他方の坑口Tdに接続されている。第1の覆体2Aおよび第2の覆体2Bは、それぞれ、第1圧力調整部3と第2圧力調整部4とを含んでいる。
車両C(図1参照)は、往路において、第1の覆体2Aを通ってトンネルTに進入し、トンネルTを走行した後に第2の覆体2Bを通る。車両Cが第1の覆体2Aを走行する際に発生する圧力波は、第1の覆体2Aの第1圧力調整部3によって圧力勾配が緩和され、また第2圧力調整部4により圧力のピーク値が低減される。また、車両CがトンネルTを走行時に発生する圧力波(圧縮波)は、第2の覆体2Bにより低減される。なお、復路においても同様に、トンネルTの走行時に発生する圧力波は、第1の覆体2Aにより低減される。そのため、本適用例においては、トンネルTが長い場合であっても、トンネルTから放射される微気圧波を効果的に低減できる。
なお、第1の覆体2Aの第2圧力調整部4と第2の覆体2Bの第2圧力調整部4の一方または双方は、例えばトンネルTの長さに応じて、省略可能である。例えば、トンネルTの長さが比較的短い場合には、トンネルTで発生する圧縮波のレベルは、周辺の環境に悪影響を及ぼさない程度に小さいことがある。このような場合には、坑口Tb側と坑口Td側の片方のみに第2圧力調整部4を設けてもよいし、坑口Tb側と坑口Td側の双方に第2圧力調整部4を設けなくてもよい。
また、坑口Tb側と坑口Td側の一方において、第2圧力調整部4の設置スペースを確保しにくい場合もある。このような場合には、坑口Tb側と坑口Td側のうち設置スペースを確保しにくい方の第2圧力調整部4の長さを、もう一方の第2圧力調整部4の長さよりも短くしてもよい。また、坑口Tb側と坑口Td側のうち設置スペースを確保しにくい方の坑口に第2圧力調整部4を設けなくてもよい。この場合に、もう一方の坑口に設けられる第2圧力調整部4の長さをトンネルTの長さに応じて調整することで、トンネルTから放射される微気圧波を効果的に低減できる。
図6(B)に示す適用例の区間は、第1のトンネルT1および第2のトンネルT2を経由している。第1のトンネルT1と第2のトンネルT2との間の区間は、明かりフードと呼ばれることがある。本適用例の緩衝工1Bは、明かりフードの少なくとも一部に、覆体を設けたものである。
緩衝工1Bは、第1の覆体2C、第2の覆体2D、及び第3の覆体2Eを備える。第1の覆体2Cは、第1のトンネルT1の坑口Tbに接続されている。第2の覆体2Dは、中間緩衝工等と称され、第1のトンネルT1の坑口Tdと第2のトンネルT2の坑口Teとを接続している。なお、第2の覆体2Dは、明かりフードの一部のみに設けられていてもよい。第2の覆体2Dには、内部への採光のために、例えば透明または半透明の板材が所定間隔で配置されてもよい。第3の覆体2Eは、第2のトンネルT2の坑口Tfに接続されている。
本適用例において、第1の覆体2Cおよび第3の覆体2Eは、それぞれ、第1圧力調整部3および第2圧力調整部4を含んでいる。また、第2の覆体2Dは、第2圧力調整部4を含んでいるが第1圧力調整部3を含んでいない。
車両C(図1参照)は、往路において、第1の覆体2Cを通って第1のトンネルT1に進入し、第1のトンネルT1を走行した後に第2の覆体2Dを通る。そして、車両Cは、第2の覆体2Dを走行した後に第2のトンネルT2に進入し、第2のトンネルT2を走行した後に第3の覆体2Eを通る。
車両Cが第1の覆体2Cを走行する際に発生する圧力波は、第1の覆体2Cの第1圧力調整部3によって圧力勾配が緩和され、また第2圧力調整部4により圧力のピーク値が低減される。また、車両Cが第1のトンネルT1を走行時に発生する圧力波(圧縮波)は、第2の覆体2Dにより低減される。また、車両Cが第2のトンネルT2を走行時に発生する圧力波(圧縮波)は、第3の覆体2Eにより低減される。このように、本適用例においては、第2のトンネルT2から放射される圧力波を効果的に低減できる。なお、復路においても同様に、第1のトンネルT1から放射される微気圧波を効果的に低減できる。
ところで、車両Cが第2の覆体2Dから第2のトンネルT2に進入する際には、オープンスペースからトンネルに進入する場合と比べて、圧力波が発生しにくい。そのため、本適用例のように、第1のトンネルT1と第2のトンネルT2とを接続する第2の覆体2Dを設けると、車両Cのトンネルへの再進入時に圧力波の発生を抑制できる。
図6(C)に示す緩衝工1Cは、図6(B)に示した第1の覆体2Cと第3の覆体2Eのそれぞれ第2圧力調整部4を省略したものである。本適用例において、緩衝工1Cは、第1の覆体2F、第2の覆体2G、及び第3の覆体2Hを備える。第1の覆体2Fおよび第3の覆体2Hは、それぞれ、第1圧力調整部3を含んでいるが第2圧力調整部4を含んでいない。また、第2の覆体2Gは、第2圧力調整部4を含んでいるが第1圧力調整部3を含んでいない。なお、図6(C)の適用例において、第1の覆体2Fと第3の覆体2Hの一方は、第2圧力調整部4を備えてもよい。
図6(D)に示す適用例の区間は、例えば単線の区間である。緩衝工1Dは、第1の覆体2Iおよび第2の覆体2Jを備える。第1の覆体2Iは、トンネルTの坑口Tbに接続されている。第2の覆体2Jは、トンネルTの坑口Tdに接続されている。第1の覆体2Iは、第1圧力調整部3を含み、第2圧力調整部4を含んでいない。また、第2の覆体2Jは、第2圧力調整部4を含み、第1圧力調整部3を含んでいない。
図1に示した車両Cは、第1の覆体2Iを通ってトンネルTに進入し、トンネルTを走行した後に第2の覆体2Jに進入する。車両Cが第1の覆体2Iに進入する際に発生する圧力波は、第1の覆体2Iの第1圧力調整部3により圧力勾配が緩和される。車両CがトンネルTを走行する際に発生する圧力波(圧縮波)は、第2の覆体2Jの第2圧力調整部4により低減される。このように、本適用例においては、トンネルTから放射される微気圧波を効果的に低減できる。なお、本適用例において、第1の覆体2Iは、第2圧力調整部4を含んでいてもよい。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態あるいは適用例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記の実施形態あるいは適用例で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記の実施形態あるいは適用例で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。
なお、緩衝工1は、トンネル内の空調(例えば衛生換気)などに利用される換気ルーバーフードの前後緩衝工に適用することもできる。なお、換気ルーバーフードは、図6に示す明かりフードに相当する。また、図6に示したように、緩衝工1は、車両Cが進入する側のトンネルTの坑口に少なくとも第1圧力調整部3が設けられていればよく、第2圧力調整部4については適宜追加してもよいし、適宜省略してもよい。
なお、図1に示した緩衝工1は、圧損孔5が形成された多孔部材6を覆体2の外周面2eに取り付けた構造であるが、覆体2の構造および各部の材質は、適宜変更できる。例えば、圧損孔5は、隔壁11に作り込まれたものでもよく、プレキャスト工法などで骨格20に隔壁11を形成しておき、この隔壁11に貫通孔(圧損孔5)を形成したものであってもよい。
なお、図2に示した第2圧力調整部4において、圧損孔5による開口率は、開口2bから開口2cに向かう方向において段階的に減少しているが、連続的に減少していてもよい。例えば、局所的な開口率の分布を最小二乗法などで補間し、連続した線で表した場合に、この近似線は、直線部(線形部)を含んでいてもよいし、上に凸または凹の曲線部(非線形部)を含んでいてもよく、直線部および曲線部を含んでいてもよい。また、図2に示した第2圧力調整部4において、圧損孔5による開口率は、Y軸方向でほぼ一定であるが、Y軸方向で変化していてもよい。
なお、圧損孔5の形状は、円形でなくてもよく、楕円形であってもよいし、三角形や四角形などの多角形であってもよい。また、圧損孔5の形状は、例えば長円のように、直線と曲線とを含む形状であってもよい。
また、図2等において、Y軸方向に並ぶ多孔部材6(圧損孔5)は、X軸方向の位置がほぼ同じであるが、X軸方向の位置が異なっていてもよい。例えば、多孔部材6(圧損孔5)は、X軸方向の位置が変化しつつY軸方向に並んでいてもよく、ジグザグ状あるいは三角格子状、散点状に配置されていてもよい。
また、覆体2の−Y側(開口2b側)に、軌道Lnの両側に沿って、三角状の側壁(または側板)が形成されてもよい。側壁は、例えば、軌道Lnに沿って高さが徐々に高くなり、覆体2の開口2b側に接続される。この場合、車両Cが覆体2に進入する前に側壁が存在するため、覆体2への進入時に生じる圧力波を抑制できる。
なお、上記の実施形態、変形例、適用例で説明した覆体の少なくとも一つは、地面上に設けられてもよいし、トンネルとトンネルとの間に架け渡された橋上などに設けられてもよい。
1、1A、1B、1C、1D・・・緩衝工
2、2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、2I、2J・・・覆体
2a・・・通路
2b、2c・・・開口
3・・・第1圧力調整部
4・・・第2圧力調整部
5・・・圧損孔
C・・・車両
T、T1、T2・・・トンネル(トンネル構造物)
Ln・・・軌道
Ta・・・坑道、
Tb、Td、Te、Tf・・・坑口

Claims (8)

  1. 車両が走行可能な通路を内部に有し、前記通路の一端が外部に開放されるとともに前記通路の他端がトンネル構造物の坑口に接続される覆体を備え、
    前記覆体は、前記通路の前記他端の開口の寸法および形状が前記トンネル構造物の坑口と同一に形成されるとともに、前記通路内で生じた圧力波によって気体を外部に放出する圧損孔が複数設けられ、
    前記圧損孔による前記覆体の開口率は、前記一端側から離れた部分に対して前記一端側が高くなるように設定される緩衝工。
  2. 前記覆体の前記通路の周壁と前記トンネル構造物の坑道の周壁とが平滑に連続する請求項1記載の緩衝工。
  3. 前記覆体は、前記一端側に第1圧力調整部が設定され、
    前記第1圧力調整部は、前記通路の周方向に前記圧損孔が複数設けられ、
    前記周方向に並ぶ前記圧損孔による前記覆体の開口率は、前記一端側から前記他端側に向かう方向において減少する請求項1または請求項2記載の緩衝工。
  4. 前記第1圧力調整部の長さは、前記通路に沿った方向において1m以上100m以下に設定される請求項3記載の緩衝工。
  5. 前記覆体は、前記第1圧力調整部の前記他端側に第2圧力調整部が設定され、
    前記圧損孔による前記第2圧力調整部の開口率は、前記圧損孔による前記第1圧力調整部の開口率よりも低い請求項3または請求項4記載の緩衝工。
  6. 前記第2圧力調整部において、前記圧損孔による前記第2圧力調整部の開口率は、前記一端側から前記他端側に向かう方向において均一に分布する請求項5記載の緩衝工。
  7. 前記第2圧力調整部の長さは、前記通路に沿った方向において10m以上500m以下に設定される請求項5または請求項6記載の緩衝工。
  8. 前記圧損孔は、前記覆体の外周面において、水平方向よりも上方に向けて形成される請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の緩衝工。
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