JP2016131504A - 緑豆蛋白質配合ベーカリー製品の製造方法 - Google Patents
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Description
緑豆は、マメ科ササゲ属の豆類であり、中国や東南アジア等で広く用いられている。そして緑豆の蛋白質の主たる構成蛋白質は、β-コングリシニン様の血中中性脂肪を低減する機能を持つことが知られており(非特許文献2)、これを容易に摂る手段が切望されている。
豆類を摂取する手段として、パン等のベーカリー製品に添加する方法は広く行われている。特に大豆は、分離大豆蛋白質を添加し焼成する試みが行われているが、添加量が多いとベーカリー製品の膨化が悪く、生地の目が詰まり食感が悪化する問題がある。例えば特許文献3は、その対策としてキシラナーゼを用いた方法を提案している。
(1)乾式粉砕された、蛋白質含量が35重量%以上の緑豆蛋白質濃縮物を添加するベーカリー製品の製造方法、
(2)緑豆蛋白質濃縮物の添加量が緑豆蛋白質として対原料穀粉5重量%以上25重量%以下である、(1)に記載のベーカリー製品の製造方法、
(3)緑豆蛋白質濃縮物が空気分級によって調製されたものである、(1)に記載のベーカリー製品の製造方法、である。
緑豆とは、マメ科ササゲ属である、ヤエナリ(八重生)(Vigna radiata)の種子である。青小豆(あおあずき)、文豆(ぶんどう)と呼称されることもある。これら緑豆について、後述する乾式粉砕を行った後に、蛋白質画分を濃縮する。蛋白質の濃縮率を高めるためには、粉砕前に、緑豆の外皮は予め除いた方が好ましい。
本発明は緑豆の乾式粉砕物を使用することを特徴とする。乾式粉砕とは、蛋白質含量が30重量%程度の緑豆、好ましくは脱皮緑豆について、例えばフレーククラッシャー、ハンマーミル、ピンミル、ブレードミル、ボールミル、スタンプミル、バンタムミル、ジェットミル、サイクロンミル、フレットミル、パンミル、エッジランナー、ローラーミル、ミックスマーラー、振動ミルなどの乾式粉砕機を用いて、緑豆を粉砕することである。そして、破砕およびその前後の工程に於いて、積極的な水の介在なく処理を行うことが特徴である。水を用いると豆細胞組織中のプロテインボディが吸水し、この後の分画作業が困難になる場合がある。好ましい乾式粉砕機として、株式会社セイシン企業のジェットミルやインペラミル、アルピネ社のピンミル等を用いることができる。
続いて微粉側の画分を分離、分取することで、蛋白質含量の高い濃縮物を得る。分離手段としてはプロテインボディからの蛋白質の溶出を避けるため、乾式分級を用いることが好ましい。乾式分級を行う好ましい装置としては、振動篩等の篩、並びに、重力式分級機、遠心分級機、および慣性分級機等の流体分級機が挙げられ、これらは分級する粒度、処理速度等を考慮し、適宜選択することができる。
特に乾式の流体分級すなわち、空気分級が好ましい。空気分級は、気流分級や風力分級とも呼ばれ、高い分画精度で大量の製品を処理できる特徴を有する。中でも自由渦型,半自由渦型または回転羽型等の遠心分級機が好ましく、装置として、株式会社セイシン企業のクラッシールやアルピネ社のミクロプレックス等が挙げられる。
緑豆蛋白質濃縮物は、乾式粉砕後に特定画分を分離することで、蛋白質含量を35重量%以上に濃縮したものである。また45重量%以上が好ましく、50重量%以上が更に好ましい。蛋白質含量が高いと風味が向上する上に、生理機能の発現が期待される量を効率的に摂取し易くなり、更に、本発明の特徴であるベーカリー製品の膨化を維持する効果が高い。
緑豆蛋白質の濃度測定方法としては、ウエスタンブロッティング法を用いることができる。すなわち、摩砕したサンプルにSDS及び2-メルカプトエタノール等の還元剤を含むサンプルバッファーを加え、10分間沸騰水中で抽出する。その後、何点かの濃度に調整した緑豆蛋白質(コントロール)を用いて、サンプルと同時にSDS-PAGEを行い、セミドライ法によりPVDF(Polyvinylidene difluoride)膜に転写する。転写した膜に、一次抗体として抗緑豆蛋白質抗体を反応させ、AP (Alkaline phosphatase)又はHRP(Horse radish peroxidase)等で標識された抗体を二次抗体として一次抗体と反応させ、酵素活性による発色等により、緑豆蛋白質を定量することができる。
本発明においてベーカリー製品とは、小麦粉を主原料とし、これに水、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油、粉末油等)、糖類(単糖類、少糖類、多糖類)、乳製品(乳類,粉乳類、クリーム類、チーズ類等)、卵類、塩類(食塩等)、調味料(アミノ酸、核酸等)、膨張剤(重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等)、乳化剤(レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、イースト、酵素類、等の原料を所望の方法で添加し、次に混捏工程により生地を得る。これを必要があれば発酵・熟成させ、最終的に焼成、蒸し、フライ等の加熱処理を施した製品を言う。また必要に応じて小麦粉の一部を他の粉類(穀類粉、根菜類粉等)に置換することもできる。かかるベーカリー製品の例としては、パン類、パン類乾燥品、ドーナッツ、パイ、ピザ、ナン、ホットケーキ、スポンジケーキ、クレープ、餃子、春巻等が挙げられる。
本発明の緑豆蛋白質濃縮物の添加量としては、ベーカリー製品の原料穀粉に対して、緑豆蛋白質として、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは8〜16重量%、最も好ましくは10〜12重量%である。高蛋白質配合ベーカリーとして、添加量が少ないと、降コレステロール等の種々の生理機能が期待される量を摂取することが難しく、一方、多すぎるとパンの膨化を阻害し、食感が悪化してしまう場合がある。
本発明のベーカリー製品の製造に使用される穀粉は、一般的に小麦粉を使用することが多いが、大麦,ライ麦、麦芽、トウモロコシ、エンバク、米、その他豆類等の穀粉を含んでも良い。また澱粉、化工澱粉、デキストリン等を含んでも良い。本発明ではこれらを原料穀粉とする。これらの原料は本発明の効果に影響を与えない範囲で使用することが出来る。
脱皮緑豆を立型グラインダ(サワーボーイNSG-15F、株式会社長沢機械製作所)で粉砕し、JIS試験篩い16メッシュを通して、20μm以上の画分が体積基準で82%の予備粉砕物を得た。予備粉砕物はさらにジェットミル(シングルトラック・ジェットミルFS-4、株式会社セイシン企業)で粉砕し、緑豆粉1とした(圧力0.5MPa)。緑豆粉1の蛋白質含量は29.5%、20μm以上の画分が体積基準で13%であった。
製造例1と同様に、緑豆蛋白質濃縮物を調製した。但し、気流分級機の条件をローター回転数1,500rpmとして分級を行った。分級により得られた微粉側の蛋白質含量は38.5%であった。これを緑豆蛋白質濃縮物B(乾式)とした。
製造例1で作製した緑豆粉1を4倍加水後に、常温で1時間撹拌抽出し、デカンターを用いて水溶液と繊維画分を分離した。続いて、水溶液のpHを4.5とし、得られた等電点沈殿蛋白質を回収し、中和後に高温高圧加熱を行って殺菌した。更に噴霧乾燥機にて乾燥し、緑豆蛋白質分離物(湿式抽出)を得た。この蛋白質含量は86%であった。
表1の配合に従い(単位:g)、強力粉(イーグル、日本製粉株式会社)、緑豆粉1、緑豆蛋白質濃縮物A・B、緑豆蛋白質分離物、マーガリン(デリソフト、不二製油株式会社)、砂糖(日新製糖株式会社)、脱脂粉乳(よつ葉乳業)、塩(ジャパンソルト株式会社)、ドライイースト(インスタントドライイースト赤、日仏商事株式会社)、水を用いて、家庭用ホームベーカリー(SD-BT101、パナソニック株式会社)食パンコースでパンを焼成した。なお、この食パンコースの標準的な工程は、練り(途中でイースト投入)→ねかし→練り→発酵→焼成で、所要時間約4時間、パンケース(練りから焼成まで一貫してこの中で行う)のサイズは幅138mm、奥行117mm、高さ130mmであった。
○風味
3点:コントロールとほぼ同等であり、豆に由来する風味は感じない。
2点:コントロールと比較して、豆に由来する風味をやや感じる。
1点:コントロールと比較して、豆に由来する風味を感じる。
○やわらかさ
3点:コントロールと同等の食感である。
2点:コントロールより硬い食感である。
1点:コントロールより非常に硬い食感である。
○総合評価
3点:コントロールと同程度の品質である。
2点:コントロールを下回る品質である。
1点:コントロールを大きく下回る品質である。
緑豆蛋白質濃縮物Aを用いて表2の配合に従い(単位:g)、前述の手順でパンを焼成した。
Claims (3)
- 乾式粉砕された、蛋白質含量が35重量%以上の緑豆蛋白質濃縮物を添加する、ベーカリー製品の製造方法。
- 緑豆蛋白質濃縮物の添加量が、緑豆蛋白質として対原料穀粉5重量%以上25重量%以下である、請求項1に記載のベーカリー製品の製造方法。
- 緑豆蛋白質濃縮物が、空気分級によって調製されたものである、請求項1に記載のベーカリー製品の製造方法。
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