JP2016128773A - 化学除染方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】化学除染終了時に、原子力発電プラントの機器及び配管に付着した化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加することで、高線量の要因となっていると考えられるクロムの溶出を促進させると同時に、高線量の要因となっていると考えられるクロム化合物の再析出を抑制する化学除染方法を提供する。【解決手段】原子力発電プラントの機器及び配管の内部に酸化剤を添加して酸化環境下にする酸化工程S2と、前記機器及び配管の内部に還元剤を添加して還元環境下にする還元工程S5と、を行う化学除染サイクルを1回以上繰り返し、最後の前記還元工程の終了後、前記機器及び配管に付着した前記化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加して酸化環境下にする最終酸化工程S8を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、原子力発電プラントの機器及び配管に付着した化合物を化学的に除去する化学除染方法に関する。
沸騰水型原子炉の一次冷却水系において、原子炉圧力容器内の炉水が循環するため、一次冷却水系機器及び配管の表面等の酸化皮膜中には炉水中における放射性物質が取り込まれやすく、これが被爆線源になることがある。また、機器や配管等の母材の腐食挙動が起こることがある。そのため、ユニット起動前などにおいて、核種金属の酸化物及び2種以上の金属化合物を炉水中に注入し、酸化雰囲気でプレフィルミング運動を行い、酸化皮膜を良好に保つ技術が知られている。また、亜鉛などの金属イオンを炉水中に注入して、炉水と接触する再循環系配管表面に亜鉛を含む緻密な酸化皮膜を形成させることにより、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する方法が知られている。
例えば、特許文献1においては、原子力プラントを構成する金属部材の表面にフェライト被膜を構成させることによる放射性核種の付着を抑制することができる方法、並びにそのための原子力プラント構成部材及びフェライト成膜装置が提案されている。
また、特許文献2においては、原子力発電プラントの機器、配管に付着した放射物質を酸化と還元を交互の繰り返すことにより化学的に除去する除染方法に関し、酸化と還元による除染を交互の数回繰り返した後、最後に酸化性気体による酸化工程を行うことにより、化学除染後の機器、配管の金属表面に、安定した酸化皮膜が生成でき、その後のプラント運転中において放射能の取り込みが抑制でき、被爆低減を図ることができる化学除染方法が提案されている。
特開2008−180740号公報 特開2004−294393号公報
しかしながら、原子炉内配管の母材の亀裂進展速度の緩和及び抑制を目的として、機器及び配管の内部の炉水中に水素を注入することにより、還元雰囲気にすることで、腐食電位を下げる手法が用いられる。ただし、この場合、腐食電位低下により放射性物質を取り込みやすいといわれているクロム化合物(FeCr等)が生成しやすくなる。特許文献1においては、この問題の解決手段については明示されていない。
また、特許文献2においては、化学除染後に酸化雰囲気を維持することによる配管表面に安定皮膜形成を目的としたものであるが、高線量要因と考えられるクロム化合物の有効的な除去又は再析出抑制の手法については明示されていない。
本発明は、上記課題を鑑みた発明であり、化学除染終了時に、原子力発電プラントの機器及び配管に付着した化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加することで、高線量の要因となっていると考えられるクロムの溶出を促進させると同時に、高線量の要因となっていると考えられるクロム化合物の再析出を抑制する化学除染方法を提供することを目的とする。
(1)本発明は、原子力発電プラントの機器及び配管に付着した化合物を化学的に除去する化学除染方法であって、前記機器及び配管の内部に酸化剤を添加して酸化環境下にする酸化工程と前記機器及び配管の内部に還元剤を添加して還元環境下にする還元工程とを行う化学除染サイクルを1回以上繰り返し、最後の前記還元工程の終了後、前記機器及び配管に付着した前記化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加して酸化環境下にする最終酸化工程を含むことを特徴とする化学除染方法である。
(1)の化学除染方法によれば、化学除染サイクルにおける最後の還元工程の終了後に、機器及び配管に化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加して酸化環境下にする最終酸化工程を含むために、高線量の要因となっていると考えられるクロムの溶出を促進させると同時に、母材表面に緻密な酸化鉄皮膜を形成させることが可能であり、また、高線量の要因となっていると考えられるクロム化合物が機器及び配管に再析出するのを効率良く抑制することができる。
(2)本発明は、(1)に記載の化学除染方法において、前記最終酸化工程において添加する前記酸化剤は過酸化水素であることを特徴とするものである。
(2)の化学除染方法によれば、最終酸化工程において添加する酸化剤として過酸化水素を使用するため、過酸化水素は一定時間経過後に酸素と水に分解するため、特別な酸化剤を除去するための還元処理を実施する必要がない。
(3)本発明は、(2)に記載の化学除染方法において、前記過酸化水素とともに酸素を加えることを特徴とするものである。
(3)の化学除染方法によれば、最終酸化工程において酸化剤として添加する過酸化水素とともに酸素を加えることで、過酸化水素の酸化補助剤として、酸化作用を活発にすることができる。そのため、さらにクロムを可溶性イオンに変換することができる。
(4)本発明は、(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の化学除染方法において、最後の前記還元工程と前記最終酸化工程との間に、前記化学除染サイクルにおける前記酸化工程を有することを特徴とするものである。
(4)の化学除染方法によれば、化学除染サイクルにおける最後の酸化工程の終了後に、機器及び配管に化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加して酸化環境下にする最終酸化工程を含むために、高線量の要因となっていると考えられるクロムの溶出を促進させると同時に、母材表面に緻密な酸化鉄皮膜を形成させることが可能であり、また、高線量の要因となっていると考えられるクロム化合物が機器及び配管に再析出するのを効率良く抑制することができる。
本発明の化学除染方法によれば、化学除染サイクルの酸化工程及び還元工程の終了後に、機器及び配管に化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加して酸化環境下にする最終酸化工程により、高線量の要因となっていると考えられるクロムの溶出を促進させると同時に、母材表面に緻密な酸化鉄皮膜を形成させることが可能であり、また、高線量の要因となっていると考えられるクロム化合物が機器及び配管に再析出するのを効率良く抑制することができる。
本発明の実施形態に係る化学除染方法における全体の処理工程を示すフロー図である。 図1に示す最終酸化工程を説明するためのフロー図である。 図1に示す最終浄化処理工程を説明するためのフロー図である。 本発明の実施形態に係る化学除染方法における最後の還元工程と最終酸化工程との間に、化学除染サイクルにおける酸化工程を有することを示したフロー図である。 本発明の実施形態に係る沸騰水型原子炉の一次冷却水系の概略図である。
初めに、本発明における沸騰水型原子炉について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る沸騰水型原子炉の一次冷却水系の概略図である。原子炉圧力容器1は、内部に炉心2を配置している。原子炉圧力容器1内で発生した蒸気3は、主蒸気管4を経て蒸気タービン5に送られる。蒸気タービン5は、発電機7と連結されており、蒸気により、蒸気タービン5が動くことで発電される。蒸気タービン5に送給され仕事を行った蒸気は、復水器6に送られる。復水器6は、内部に復水器冷却水管22を備える。復水器冷却水管22は、ポンプ21により昇圧された海水が、取水口23から蒸気が存在する復水器6内部を経て、放水口24まで環流される。これらの構成により、蒸気タービン5に送給され仕事を行った蒸気は、復水器6において復水される。蒸気から復水した水は、給水ポンプ8により昇圧され、給水管9を経て原子炉圧力容器1内に環流される。
また、原子炉圧力容器1には、炉心2に冷却材を強制的に送り込むために原子炉冷却材再循環系10が設けられている。原子炉冷却材再循環系10は、炉心2を取り囲むように配設された炉心シュラウド11a、11bと原子炉圧力容器1との間の環状部内に、ジェットポンプ12a、12bが設けられている。原子炉圧力容器1内から取り出された冷却材は、再循環ポンプ13a、13bにより昇圧され、ジェットポンプのノズルから高速で噴出され、炉心2の下部に強制的に送り込まれる。
上記原子炉冷却材再循環系10等を含む一次冷却水系機器及び配管表面等には、主にクロムを含むクロム化合物と、鉄を含む酸化鉄とが存在する。特にFeCr等のクロム化合物は、炉水中における放射性物質を取り込みやすい。一方、酸化鉄についてはクロム化合物に比べ、放射性物質を取り込みにくく、線量当量率の低減が可能である。そのため、一次冷却水系機器及び配管表面等には、クロム化合物を取り除く必要がある。
本発明における化学除染方法は、一次冷却水系機器及び配管表面等には、クロムを可溶性イオンに変換させ、クロム化合物が機器及び配管に再析出するのを効率良く抑制することができる化学除染方法である。以下、本発明の実施形態についてフローチャートを使用して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る化学除染方法における全体の処理工程を示すフロー図である。ステップS1において、系統水温度を昇温させる。系統水温度は、85℃以上95℃以下を目標とする。系統水温度が85℃に達した段階でステップS2に移行する。
ステップS2及びステップS3において、酸化除染を行うために酸化剤を炉中に注入し、一次冷却水系機器及び配管等に付着しているクロム化合物の酸化除染を行う。使用する酸化剤の種類及び濃度を例示すると、過マンガン酸カリウムを濃度300ppmで添加することを挙げることができる。酸化剤の働きにより、腐食電位の低いクロムがクロムイオンとなり、炉水中に溶け出す。一方、鉄は、一次冷却水系機器及び配管表面等へ析出の方向に反応する。なお、酸化剤注入後の酸化除染時間は、原則として1サイクルあたり6時間行うが、当該時間は、線量率及び水質状況により延長、短縮をしても構わない。
ステップS4において、酸化剤分解を行う。例えば酸化剤として過マンガン酸カリウムを使用する場合は、シュウ酸を系統に注入することにより、炉水中に存在する過マンガン酸カリウムを除去することができる。シュウ酸の系統内の注入は、系統内の除染液の色が赤紫色から無色透明に変化した段階で終了する。
ステップS5及びステップS6において、還元除染を行うために還元剤を炉中に注入し、一次冷却水系機器及び配管等に付着している酸化鉄の還元除染を行う。使用する酸化剤の種類及び濃度を例示すると、シュウ酸を濃度2000ppmで添加することを挙げることができる。還元剤の働きにより、腐食電位の高い鉄が鉄(II)イオンとなり、炉水中に溶け出す。一方、クロムは、一次冷却水系機器及び配管表面等へ析出の方向に反応する。還元除染の時間は、原則として1サイクルあたり24時間行うが、線量率及び水質状況により参加時間の延長、短縮を考慮する。
ステップS7において、還元剤分解を行う。例えば還元剤としてシュウ酸を使用する場合は、過酸化水素を系統に注入することにより、炉水中に存在するシュウ酸を除去することができる。還元剤分解は、還元剤がシュウ酸の場合、濃度が10ppm以下になった段階で終了する。
ステップS2からステップS7の化学除染サイクルを1回以上繰り返した後、ステップS8の最終酸化工程、ステップS9の最終浄化処理工程を経て終了する。
次に、ステップS8の最終酸化工程について説明する。図2は、図1に示す最終酸化工程を説明するためのフロー図である。ステップS11において、過酸化水素を炉水中に注入する。そして、ステップ12において、機器及び配管に付着した化合物中のクロムを可溶性イオンに変換可能な酸化環境下における運転を行う。当該酸化環境下の条件としては、例えば、過酸化水素の濃度が0.9〜1.0ppmとして腐食電位を0.2V vs SHE以下であることが好ましい。過酸化水素の濃度が当該範囲であることにより、腐食電位が化合物中のクロムが溶質しやすい環境であり、ステンレス母材の過不動態化による孔食やすきま腐食の発生を抑制するとともに、樹脂通水時の樹脂劣化を抑制することができる。また、過酸化水素の注入により、クロム化合物を可能な限り除去できるとともに、系内鉄濃度によっては、酸化鉄皮膜も形成することができるため、プレコートフィルミングと同様な効果を得ることができる。そのため、線量当量率低減に対する対策のコスト低減の効果も図れる。
また、ステップS12において、過酸化水素とともに酸素を加えても良い。当該酸素の濃度は、飽和濃度であることが好ましい。酸化剤として添加する過酸化水素とともに酸素を加えることで、過酸化水素の酸化剤としての働きを活発にすることができる。そのため、さらにクロムを可溶性イオンに変換することができる。また、母材不動態化を促進維持することが可能であり、系内鉄成分による機器及び配管表面の鉄皮膜コーティングが可能となる。
さらに、過酸化水素の酸化剤としての酸化効率を向上させるために、管内流速を所定の速さにすることで、酸化作用を高めることもできる。
次に、最終浄化処理工程について説明する。図3は、図1に示す最終浄化処理工程を説明するためのフロー図である。ステップS21において、過酸化水素の濃度が1ppm以下に維持されていることを確認する。当該濃度においては、次のステップにおける樹脂通水時の樹脂劣化を抑制することができる。その後、ステップS22へ移行する。
ステップS22〜ステップS24において、イオン交換樹脂通水を開始し(ステップS22)、過酸化水素の注入を停止し(ステップS23)、その後、酸素注入に切り替え、酸化環境下を維持する(ステップS24)。イオン交換樹脂通水により、炉水中のカチオン及びアニオンを除去する。また、過酸化水素の注入停止後において、炉水中に存在する過酸化水素は、容易に水と酸素に分解し時間経過とともに消滅していくため、特別な処理は不要である。なお、酸素の濃度は、飽和濃度であることが好ましい。酸素を注入して酸化環境下を維持することで、母材不動態化の促進を維持することが可能である。また、最終浄化処理工程終了後に、プレコートフィルミング処理を実施しても構わない。
なお、図1に示すフロー図においては、最後の還元工程後に最終酸化工程に移行しているが、最後の還元工程の後、化学除染サイクルにおける酸化工程を経て、最終酸化工程に移行することもできる。図4は、本発明の実施形態に係る化学除染方法における最後の還元工程と最終酸化工程との間に、化学除染サイクルにおける酸化工程を有することを示したフロー図である。
ステップS32及びステップS33においては、化学除染サイクルのステップS2と同じ酸化剤を注入し、酸化処理を行う。その後、ステップS34で酸化剤分解の処理を行う。ステップS4の酸化剤分解では、例えば、酸化剤として過マンガン酸カリウムを使用した場合に、シュウ酸により酸化剤として用い、過マンガン酸カリウムが分解した時点で、シュウ酸の注入を停止し分解処理を完了しているが、ステップS34においては、酸化環境下の維持のため、シュウ酸の注入停止後に、直ちに、過酸化水素を注入する。なお、必要に応じて、過酸化水素とともに酸素を加えることも好ましい。そのため、本発明の最終酸化工程は、還元処理後のみならず、酸化処理後においても移行することが可能である。
1 原子炉圧力容器
2 炉心
3 蒸気
4 主蒸気管
5 蒸気タービン
6 復水器
7 発電機
8 給水ポンプ
9 給水管
10 原子炉冷却材再循環系
11a、11b 炉心シュラウド
12a、12b ジェットポンプ
13a、13b 再循環ポンプ
21 ポンプ
22 復水器冷却水管
23 取水口
24 放水口

Claims (4)

  1. 原子力発電プラントの機器及び配管に付着した化合物を化学的に除去する化学除染方法であって、前記機器及び配管の内部に酸化剤を添加して酸化環境下にする酸化工程と前記機器及び配管の内部に還元剤を添加して還元環境下にする還元工程とを行う化学除染サイクルを1回以上繰り返し、最後の前記還元工程の終了後、前記機器及び配管に付着した前記化合物中のクロムを可溶性イオンに変換させるために必要な量の酸化剤を添加して酸化環境下にする最終酸化工程を含むことを特徴とする化学除染方法。
  2. 前記最終酸化工程において添加する前記酸化剤は過酸化水素であることを特徴とする請求項1に記載の化学除染方法。
  3. 前記過酸化水素とともに酸素を加えることを特徴とする請求項2に記載の化学除染方法。
  4. 最後の前記還元工程と前記最終酸化工程との間に、前記化学除染サイクルにおける前記酸化工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化学除染方法。
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