JP2016128563A - 感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、該組成物を用いた皮革様材料の製造方法及び該方法により製造された皮革様材料 - Google Patents

感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、該組成物を用いた皮革様材料の製造方法及び該方法により製造された皮革様材料 Download PDF

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【課題】加熱凝固法によって風合い及び抗菌性に優れた皮革様材料を製造することのできる、保存安定性に優れると共に、製造時のマイグレーション防止性に優れた感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、及び、製造適正及び環境適正に優れると共に、風合い及び抗菌性に優れた皮革様材料を提供する。
【解決手段】(A)分子内にカルボキシル基及びスルホン酸基から選択される少なくとも1種のアニオン性基を有するポリウレタン樹脂及び(B)感熱凝固剤を含有する、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記(B)成分が第4級アンモニウム塩化合物であると共に、前記(A)成分100質量部に対して前記(B)成分が0.1〜50質量部配合されてなることを特徴とする感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、該組成物を用いた皮革様材料の製造方法及び該方法により製造された皮革様材料に関し、特に、保存安定性、及び、マイグレーション防止性に優れた感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、該組成物を用いた、風合い及び抗菌性に優れた皮革様材料の製造方法、及び、該方法により製造された皮革様材料に関する。
天然皮革の代替品として使用される皮革様材料には、樹脂と不織布により構成されている人工皮革、及び、樹脂と織物又は編物により構成されている合成皮革があり、衣料、靴、鞄などのファッション素材や、家具、車両を含めたインテリア素材として使用されている。これらの皮革様材料には、ポリウレタン樹脂が使用されることが多い。
皮革様材料の製造方法としては、例えば、有機溶媒系ポリウレタン樹脂組成物を含浸又は塗布してなる繊維基材を、ポリウレタン樹脂の貧溶媒であり、且つ、前記有機溶媒と相溶性のある凝固液中に浸漬して前記ポリウレタン樹脂を凝固させ、次いで水洗、乾燥して、皮革様材料を製造する湿式凝固法がある。
湿式凝固法においては、一般的に、凝固液として水が用いられ、水と相溶性がある有機溶剤としてジメチルホルムアミド等が多く用いられるが、有機溶剤は引火性が高いために火災の原因となる上、毒性が高く、環境や人体に対する汚染等の、製造適正や環境適正上の問題があるために、溶剤系ポリウレタン樹脂から水系ポリウレタン樹脂に移行すべく検討がなされてきた。
水系ポリウレタン樹脂組成物を使用する皮革様材料の製造方法としては、樹脂が塗布又は含浸された繊維基材を、熱水、スチーム又は熱風を用いて乾燥し樹脂組成物を凝固させる加熱凝固法が、湿式凝固法に代わる方法として挙げられる。加熱凝固法は溶剤系のポリウレタン樹脂の替わりに水系ポリウレタン樹脂組成物を使用するので、環境や人体に優しい製造方法となる一方、加熱乾燥時に、繊維基材中に均一に分散していたウレタン樹脂組成物の粒子が基材表面に移動する、所謂マイグレーション現象が発生しやすいという問題を有している。この現象により、ウレタン樹脂を繊維内部に存在させて皮革に柔軟性や風合いを持たせるという効果が失われる場合がある。
皮革様材料のマイグレーションの問題を解決するため、強制乳化されたエマルジョンに無機塩類を溶解した水系樹脂組成物を不織シートに付与して加熱乾燥する方法(例えば、特許文献1)、感熱凝固温度が40〜90℃である水系ポリウレタン樹脂と会合型増粘剤からなる水系樹脂組成物を、スチームで加熱凝固させる方法(例えば、特許文献2)、HLB10〜18のノニオン性界面活性剤と無機塩を含むカルボン酸塩型ポリウレタン樹脂を繊維材料基体に付与し、加熱凝固させる方法(例えば、特許文献3)等の加熱凝固法が、既に開示されている。
しかしながら、前述した加熱凝固法はマイグレーション防止性においては改善が見られるものの、皮革様材料中に残存する界面活性剤、無機塩及び増粘剤等の影響により、得られた皮革様材料の風合い及び耐熱水性が十分に満足のいくものではないという欠点があった。
また、加熱凝固法に使用される水系ポリウレタン樹脂組成物は、一般に、保存安定性に劣るという欠点があった。
上記皮革の風合い、耐熱水性、及び保存安定性を全て改善することのできる感熱凝固剤として、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物を官能基としてもつ第4級アンモニウム塩を利用する方法が知られている(例えば、特許文献4)。しかしながら、清潔、衛生志向の高まりと共に、人工皮革や合成皮革用途においても、各種の抗菌剤や制菌剤を用いた繊維を使用して、抗菌性を持たせた皮革が求められる様になった近年において、上記の方法では、抗菌剤を添加した際、ウレタン樹脂が凝集・沈殿して、満足できる水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができないという欠点があった。
抗菌性を付与する方法としては、例えば銀、銅、又は亜鉛などの金属若しくはその化合物を併用した方法も挙げられる(例えば、特許文献5、6)が、これらの方法は、溶剤を使用した湿式凝固法において実施されているのみであり、環境や人体に優しい水系ポリウレタン樹脂を使用した加熱凝固法の場合には、上記の抗菌剤を使用しても、抗菌性については良好な結果が得られるだけであり、製造時のマイグレーションを防止することが困難であり、良好な風合いを有する皮革様材料を得ることはできなかった。
特開平06−316877号公報 特開2000−290879号公報 特開2003−138131号公報 特開2013−170176号公報 特開2001−98468号公報 特開2002−38380号公報
従って、本発明の第1の目的は、保存安定性に優れていると共に、マイグレーション防止性に優れた感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて、風合い及び抗菌性にも優れた皮革様材料を製造する方法を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、加熱凝固法によって製造されてなる、風合い及び抗菌性に優れた皮革様材料を提供することにある。
そこで本発明者等は、上記の諸目的を達成すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するポリウレタン樹脂、並びに、感熱凝固剤である特定の第4級アンモニウム塩化合物を含有する感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物が、保存安定性に優れると共に低い温度で感熱凝固するだけでなく、感熱凝固時におけるマイグレーション防止性に優れること、更に、このようにして得られた皮革様材料が、風合い及び抗菌性に優れることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、(A)分子内にカルボキシル基及びスルホン酸基から選択される少なくとも1種のアニオン性基を有するポリウレタン樹脂及び(B)感熱凝固剤を含有する、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記(B)成分が下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩化合物であると共に、前記(A)成分100質量部に対して前記(B)成分が0.1〜50質量部配合されてなることを特徴とする、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、該組成物を用いて風合い及び抗菌性にも優れた皮革様材料を製造する方法、及び、該方法によって製造されてなる、風合い及び抗菌性に優れた皮革様材料である;
Figure 2016128563
上記式(1)中のR、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数が2〜8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、R、R、R及びRに含まれる芳香環の数は0又は1であり、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
本発明においては、前記(A)成分が、ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性基導入剤を反応させてなるウレタンプレポリマーを原料とする成分であって、前記ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性導入剤が、ポリオール及びアニオン性基導入剤の全水酸基当量に対するポリイソシアネートの全イソシアネート基当量の比であるNCO/OHが、1.1〜2.5となる如く配合されてなることが好ましく(請求項2)、前記ウレタンプレポリマーの酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい(請求項3)。
また、前記アニオン性基1当量に対し、0.2〜2.0当量のアニオン性基中和剤(C)を更に含有することが好ましく(請求項4)、前記(B)成分の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましい(請求項5)。
本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性及び加熱凝固時におけるマイグレーション防止性に優れていると共に、本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を繊維基材に塗布又は含浸させた後に加熱凝固させて得られた皮革様材料は、風合い及び抗菌性に優れるという効果が得られる。
本発明の(A)成分として使用されるポリウレタン樹脂は、カルボキシル基及びスルホン酸基から選択される少なくとも1種のアニオン性基を分子内に有する。このようなポリウレタン樹脂(A)の組成及び製造方法は特に限定されることはないが、例えば以下のような製造方法が挙げられる。
(1)ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性基導入剤を反応させてウレタンプレポリマーを製造し、必要に応じてアニオン性基中和剤を添加した後、必要に応じて乳化剤を含む水溶液中に、プレポリマーを加えて分散させる(プレポリマーミキシング法)。
又は、
(2)ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性基導入剤を反応させてウレタンプレポリマーを製造し、予め、必要に応じてアニオン性基中和剤及び/又は乳化剤を含有する水溶液を用意し、該水溶液をプレポリマーに加えて分散させる(転相法)。
上記、(1)又は(2)の方法により水分散させたウレタン樹脂を、水中で鎖伸長剤を用いて鎖伸長させる。
また、前記プレポリマーの製造においては、必要に応じて、反応に不活性であって、且つ、水との親和性が大きい溶媒を用いてもよい。
前記ポリオールは、特に制限されることはないが、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、及び結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類等が挙げられる。
これらのポリオールの数平均分子量は、特に制限されることはないが、好ましくは300〜5000であり、500〜3000であることがより好ましい。
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、及びペンタエリスリトール等の、分子量が200未満で低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ビスフェノールA等の芳香族ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;エチレンジアミン等のアミン化合物等のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
前記ポリエステルポリオール類としては、分子量200未満の低分子ポリオールと、その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸、又は該多価カルボン酸のエステル形成性誘導体との直接エステル化反応又はエステル交換反応によって得られるポリエステルポリオールや;前記低分子ポリオールと、ラクトン類又はその加水分解開環反応によって得られるヒドロキシカルボン酸との、直接エステル化反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記分子量200未満の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;及びトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のポリオールが挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリット酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;及びピロメリット酸等の4価以上のカルボン酸が挙げられる。
前記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、多価カルボン酸の無水物、カルボン酸クロライド、カルボン酸ブロマイド等のカルボン酸ハライド;多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、及びアミルエステル等の、低級脂肪族エステル等が挙げられる。
前記ラクトン類としては、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
前記ポリエステルポリカーボネートポリオール類としては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物;及び、エチレンカーボネートと多価アルコールとの反応生成物に有機ジカルボン酸を反応させて得られる反応生成物が挙げられる。
また、前記結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類としては、1,3−プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール等のジオールと、ホスゲン、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、又はプロピレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物が挙げられる。
本発明においては、上記したポリオールの中でも、耐熱性、耐摩耗性に優れたポリエステルポリオールが好ましく、特に、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールと、アジピン酸を反応させて得られるポリエステルポリオールが好ましい。
また本発明においては、水系ポリウレタン樹脂組成物の物性を変えるために、前記ポリオール類に加えて、分子量200未満の低分子ポリオール等を併用してもよい。
前記ポリイソシアネートは、特に限定されず、ジイソシアネート及びイソシアネート基を1分子中に3個以上有するポリイソシアネート等を挙げることができる。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、シス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;及びこれらの混合物が挙げられる。
前記イソシアネート基を1分子中に3個以上有するポリイソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、及びこれらの混合物等の、3官能以上のイソシアネート;これらの3官能以上のイソシアネートのカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物;これらの変性物を各種のブロッキング剤によってブロックしたブロックイソシアネート;前述したジイソシアネートのイソシアヌレート三量体及びビウレット三量体等が挙げられる。
本発明においてはこれらの中でも、入手が容易であると共に、耐候性及び強度等に優れたポリウレタン樹脂の塗膜が得られるという観点から、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートが好ましく、中でも、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
前記アニオン性基導入剤としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、及び、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、入手容易性の観点から、カルボキシル基を含有するポリオール類を使用することが好ましく、特に、ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。
本発明におけるポリウレタン樹脂の製造においては、ポリオールの全水酸基当量に対するポリイソシアネートの全イソシアネート基当量の比(NCO/OH)が1.0未満である場合には、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーが生成する。しかしながら、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーより、末端イソシアネートプレポリマーの方が水分散性及び鎖伸長による高分子量化等が容易であるという観点から、本発明においては末端イソシアネートプレポリマーの方を使用することが好ましい。
従って本発明においては、NCO/OHを1.0以上にすることが好ましいが、ウレタンプレポリマーがあまり高分子量化しないように、NCO/OHを1.1以上とすることが好ましい。これによって、ウレタンプレポリマーの水への分散性を調整し、水系ポリウレタン樹脂の保存安定性等を調整することができる。一方、NCO/OHが2.5を超えると、製造時におけるプレポリマーの水分散時に、イソシアネート基と水との反応に伴う二酸化炭素の生成によって、ウレタン樹脂が急激に発泡したり、塗膜の基材に対する接着性が劣ったりするという問題を生じる場合がある。
従って、本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物における、前記ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性基導入剤の配合量は、ポリオール及びアニオン性基導入剤の全水酸基当量に対するポリイソシアネートの全イソシアネート基当量の比(NCO/OH)が1.1〜2.5となる量であることが好ましく、1.2〜2.0となる量であることがより好ましく、1.3〜1.8となる量であることが特に好ましい。
更に、前記アニオン性基導入剤の配合量は、前記ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性基導入剤からなるウレタンプレポリマーにおける、アニオン性基導入剤のアニオン性基に基づく酸価が5〜50mgKOH/gとなる量であることが好ましく、10〜30mgKOH/gであることがより好ましい。前記酸価が5mgKOH/g未満では、ウレタンプレポリマーの水分散性が劣る場合や、水系ポリウレタン樹脂の保存安定性が悪くなる場合があり、また、50mgKOH/gを超えると、前記ウレタンプレポリマーの粘度が高くなって水分散が困難になる場合や、ポリウレタン樹脂の塗膜の耐水性が劣る場合がある。
前記アニオン性基中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類;N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類;N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類の3級アミン化合物;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられる。
本発明においては、これらのアニオン性基中和剤の中でも、乾燥後の耐候性及び耐水性を向上させる観点から、熱によって容易に解離する揮発性の高いものであることが好ましく、特に、トリメチルアミン及びトリエチルアミンが好ましい。これらの中和剤は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
アニオン性基中和剤の使用量は、アニオン性基1当量に対して0.5〜2.0当量であることが好ましく、0.8〜1.5当量であることがより好ましい。このアニオン性基中和剤の使用量の過不足が大きいと、水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性のみならず、水系ポリウレタン樹脂膜の、強度等の機械物性や耐水性等の諸物性が、低下するおそれがある。
前記乳化剤としては、例えば、通常のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、前記(B)成分以外の第四級アミン塩及びピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤、更に、ベタイン型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等の両性界面活性剤、等の公知の界面活性剤を挙げることができる。
前記アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、及びアンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート及びアンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、及び、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のようなアルキルスルホネートのアンモニウム塩;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート及びアルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のようなアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩、ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸塩、及びN−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
前記ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等のような多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、及びステアリルアルコール等が挙げられる。
前記アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第3ブチルフェノール、2,5−ジ第3ブチルフェノール、3,5−ジ第3ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第3オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、及びビスフェノールF等が挙げられる。
前記アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。また、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたもの等が挙げられる。更に、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物であってもブロック付加物であってもよい。
前記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイド及びイミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型;β−ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等の、アミノ酸型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等が挙げられる。
上記した乳化剤の中では、ノニオン性界面活性剤が、感熱凝固剤やアニオン性基中和剤と混合した時に、凝集物等が発生しづらいので好ましい。本発明においては、入手が容易で安価な使用が可能である、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;及び炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物を使用することがより好ましい。
前記乳化剤の使用量は特に制限されるものではないが、水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布して得られる塗膜の耐水性等の観点から、ポリウレタン樹脂固形分の総量100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、0〜20質量部であることがより好ましく、乳化剤成分を使用しないことが最も好ましい。
前記水分散させたウレタン樹脂を、水中で鎖伸長させる鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン等の低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/p−アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類等のポリアミン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、水加ヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等のヒドラジン類;及び水等が挙げられる。
本発明においては、これらの中でも、入手容易性及び反応容易性の観点から、ジアミン類、ヒドラジン類又は水を使用することが好ましく、特にエチレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、水加ヒドラジン又は水を使用することが特に好ましい。
上記鎖伸長剤の使用量は、水系ポリウレタン樹脂の塗膜物性等の観点から、鎖伸長反応前のウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基1当量に対する、鎖伸長剤のイソシアネート反応基の当量比が、0.1〜1.0の範囲となる量であることが好ましい。
前記反応に不活性であって、且つ、水との親和性が大きい溶媒として好適なものとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒の使用量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3〜200質量部であることが好ましい。これらの溶媒として、沸点100℃以下の溶媒を使用する場合には、水系ポリウレタン樹脂を合成した後、その溶媒を減圧留去等によって除去することが好ましい。
本発明においては、(B)成分の感熱凝固剤として、下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩化合物を使用する。
Figure 2016128563
上記式(1)中のR、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数が2〜8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、R、R、R及びRに含まれる芳香環の数は0又は1である。また、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。
本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物の水溶性を良好にし、かつ該水系ポリウレタン樹脂を使用した皮革材料の抗菌性を高めるために、本発明においては、上記式(1)中のR、R、R及びRが、炭素数2〜7のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であることが好ましく、特に、R、R、R及びRの中の0個又は1個がフェニル基又はベンジル基であり、残り3個又はR〜R全ての置換基が炭素数3〜5のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数が1である場合や、フェニル基、ベンジル基の数が2より多い場合には、水系ポリウレタン樹脂との相溶性が悪くなり、良質な水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができない。
また、前記一般式(1)中のXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であるが、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物の感熱凝固性の観点から、Xは塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
上記感熱凝固剤の配合量は、乾燥後に得られる皮革様材料の耐水性の観点から、水系ポリウレタン樹脂100質量部に対し5〜20質量部であることが好ましく、10〜15質量部配合することがより好ましい。5質量部より配合量が少ないと、水系ポリウレタン樹脂が低温で凝固せず、20質量部を超えると、乾燥後に得られる皮革様材料の耐水性が著しく低下する。
本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、通常用いられる各種添加剤を添加することができる。
これらの添加剤の具体例としては、例えば、架橋剤、各種耐候剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤)、基材に対する密着性を特に強固にするシランカップリング剤、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ等の無機質コロイドゾル、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物、キレート剤、エポキシ化合物、顔料、染料、造膜助剤、硬化剤、外部架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、凝固防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機又は有機の充填剤、可塑剤、滑剤、フッ素系又はシロキサン系等の帯電防止剤、補強剤、触媒、揺変剤、ワックス類、防曇剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐触剤、及び防錆剤等を挙げることができる。
前記架橋剤としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物;これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、メラミン系化合物及び亜鉛錯体等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−[2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−第3アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜C13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)‐4,6‐ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5‐トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第3ブチルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;及び各種の金属塩又は金属キレート、特に、ニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
前記酸化防止剤としては、リン系、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤が挙げられる。リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ-、ジ-混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12アルキル〜C15アルキルの混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−[(2,4,7,9−テトラキス第3ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(2−[(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチル アミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4− [3−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール、及び2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−2,4,6−トリ第3ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
前記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第3ブチルフェノール) 、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第3ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル) フェノール、3,9−ビス[2−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及びトコフェロール等が挙げられる。
前記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及び、ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等の、ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
前記耐候剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤)の使用量は、水系ポリウレタン樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることがより好ましい。0.001質量部より少ないと充分な添加効果を得られない場合があり、10質量部より多いと、水分散安定性や塗膜物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
これらの耐候剤を添加する方法としては、ウレタン原料のポリオールに添加する方法、ウレタンプレポリマーに添加する方法、ウレタン樹脂の水分散時における水相に添加する方法、水分散後に添加する方法の何れでも良いが、操作が容易であるという観点から、原料ポリオールに添加する方法及びウレタンプレポリマーに添加する方法を使用することが好ましい。
本発明の皮革様材料は、繊維基材に本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布した後、又は含浸させた後、加熱凝固させることにより得られる。本発明の皮革様材料に使用する繊維基材は特に限定されるものではなく、例えば、不織布や編織布を使用することができる。不織布は、補強等の目的で、編織布等が内部又は表面に積層されたものでもよく、繊維材料としては、天然繊維、化学繊維のいずれでもよい。
天然繊維としては綿、羊毛、絹及び石綿等が挙げられる。また、化学繊維としては、レーヨン及びテンセル等の再生繊維、アセテート及びトリアセテート等の半合成繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維及びアクリル系繊維等の合成繊維が挙げられる。またこれらを混合使用した繊維を適宜用いてもよい。本発明においては、特に、天然の皮革に近い風合い及び品位が得られるという観点から、ポリアミド繊維又はポリエステル繊維を使用することが好ましい。
本発明の皮革様材料の製造方法は特に制限されず、本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を、通常行われる方法により前記繊維基材に塗布又は含浸させた後、該ポリウレタン樹脂組成物を加熱して凝固させ、乾燥機中で乾燥することにより製造することができる。
前記塗布方法としては、ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング及びスプレーコーティング等を用いる方法が挙げられる。
また、前記含浸方法としては、例えば、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を不織布に含浸させ、プレスロール等で絞ることにより、又は、ドクターナイフ等を使用することによって、適量の含浸量とする方法が挙げられる。
このように、本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を繊維基材に塗布し、又は含浸させた後、ポリウレタン樹脂組成物を感熱凝固させ、乾燥機中で乾燥することにより皮革様シートを得ることができる。
樹脂の感熱凝固温度は、40〜90℃であることが必要であり、50〜80℃であることが好ましく、55〜75℃であることが特に好ましい。40℃未満で感熱凝固する組成物の場合には感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性が悪くなり、90℃を超える温度でないと感熱凝固しない組成物の場合には、感熱凝固時にポリウレタン樹脂組成物のマイグレーションが生じやすく、皮革様材料の風合いが低下する。
凝固方法としては、70℃以上の熱水浴中で凝固させる方法、スチーム雰囲気下で凝固させる方法、乾燥機中で50〜150℃の熱風を直接吹き付けて凝固させる方法等が挙げられる。上記凝固方法としては、伝熱速度が高く、水系ポリウレタン樹脂組成物を均一且つ瞬間的に凝固させることができ、樹脂組成物のマイグレーションをより良好に防止することができるという観点から、70℃以上の熱水浴中で凝固させる方法、又は、スチーム雰囲気下で凝固させる方法を使用することが好ましい。
本発明の皮革様材料における、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物の基材への付着量は、ポリウレタン樹脂組成物の凝固性の観点から、乾燥後における繊維基材100質量部に対して3〜100質量部であることが好ましく、5〜70質量部であることが更に好ましく、10〜30質量部であることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂組成物の付着量が3質量部未満では、得られるシートの充実感が不足し、皮革様シートの風合いが不十分となる傾向があり、100質量部を超えると、得られたシートが硬くなって、皮革の風合いが悪くなる傾向がある。
本発明の皮革様材料は、車両、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等の分野に使用することができ、例えば、カーシート等の自動車用内装材、壁材、マットレス、クッション地、鞄内張り材料、スポーツシューズ、紳士靴等の用途に使用することができる。
また、本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物には、皮革様材料以外にも、塗料、接着剤、表面改質剤、有機粉体及び/又は無機粉体のバインダー、成型体、建材、シーリング剤、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤等の種々の用途がある。
より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリカーボネート等のプラスチック用コーティング剤、ガラス繊維集束剤、ラミネート用接着剤、農業用フィルムコーティング剤、感熱紙コーティング剤、インクジェット記録紙用バインダー、グラビア用印刷インキのバインダー剤、鋼板用塗料、ガラス、スレート、コンクリート等の無機系構造材用の塗料、木材用塗料、繊維処理剤、繊維コーティング剤、電子材料部品コーティング剤、スポンジ、パフ、手袋、及びコンドーム等が挙げられる。
以下、本発明を、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、以下の実施例等における%は、特に記載が無い限り質量%である。
[製造例1:水系ポリウレタン樹脂PUD−1の製造]
<ウレタンプレポリマーの製造工程>
ポリオールとして、ネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させてなる、数平均分子量1000のポリエステルポリオール350g(0.350モル)、ポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)221g(0.844モル)、アニオン性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸28.7g(0.214モル)、溶媒としてメチルエチルケトン150g、及び、触媒としてオクチル錫ジラウレート0.018gを配合した。次いで窒素雰囲気下の85〜95℃で2時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が3.1%となったことを確認してウレタンプレポリマーUP−1を得た。
<水分散/高分子量化工程>
水560g中に消泡剤((株)ADEKA製、製品名アデカノールB−1016)0.1g及びトリエチルアミン14.4g(0.142モル)を添加し、更に前記UP−1を500g加えて20〜40℃で15分間撹拌した後、鎖伸長剤として、質量比(エチレンジアミン/水)が1/3の混合液18.0g(エチレンジアミン0.075モル)を滴下し、20〜40℃で10分間攪拌した。更に、鎖伸長剤として質量比(アジピン酸ジヒドラジド/水)が1/3の混合液52.4g(アジピン酸ジヒドラジド0.075モル)を添加し、20〜40℃で1〜2時間、NCO基が消失するまで撹拌を継続した。次いでメチルエチルケトン溶媒を留去して、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂PUD−1を得た。
[製造例2:水系ポリウレタン樹脂PUD−2の製造]
<ウレタンプレポリマーの製造工程>
ポリオールとして、ネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させてなる、数平均分子量1000のポリエステルポリオール246g(0.246モル)、ポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)294g(1.12モル)、N−メチルジエタノールアミン60g(0.50モル)、及び溶媒としてメチルエチルケトン150gを配合した。次いで窒素雰囲気下85〜95℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が4.2%となったことを確認して、ウレタンプレポリマーUP−2を得た。
<水分散/高分子量化工程>
水500g中に消泡剤((株)ADEKA製、製品名アデカノールB−1016)0.1g及びジメチル硫酸63.1g(0.50モル)を添加し、次いで前記UP−2を500g加えた。20〜40℃で1〜2時間、NCO基が消失するまで撹拌を継続した後、メチルエチルケトン溶媒を留去して、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂PUD−2を得た。
[製造例3:水系ポリウレタン樹脂PUD−3の製造]
<ウレタンプレポリマーの製造工程>
ポリオールとして、ネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させてなる、数平均分子量1000のポリエステルポリオール268g(0.268モル)、ポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)169g(0.645モル)、アニオン性基導入剤として1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸27.8g(0.163モル)、溶媒としてメチルエチルケトン150g、及び、触媒としてオクチル錫ジラウレート0.018gを配合した。次いで窒素雰囲気下85〜95℃で2時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が2.4%となったことを確認して、ウレタンプレポリマーUP−3を得た。
<水分散/高分子量化工程>
水538g中に乳化剤((株)ADEKA製、製品名アデカプルロニックL−64)41.5gを添加し、次いで前記UP−3を500g加え、20〜40℃で15分間撹拌した後、鎖伸長剤として、質量比(エチレンジアミン/水)が1/3の水溶液14.0g(エチレンジアミン0.058モル)を滴下し、20〜40℃で10分間攪拌した。
更に、鎖伸長剤として質量比(アジピン酸ジヒドラジド/水)が1/3の混合液40.0g(アジピン酸ジヒドラジド0.057モル)を添加し、20〜40℃でNCO基が消失するまで1〜2時間撹拌を継続した後、メチルエチルケトン溶媒を留去して固形分40%の水系ポリウレタン樹脂PUD−3を得た。
[製造例4:水系ポリウレタン樹脂PUD−4の製造]
<ウレタンプレポリマーの製造工程>
ポリオールとして、数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(旭化成ケミカルズ(株)製、製品名デュラノールS6002)620.8g(0.310モル)、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)120.5g(0.543モル)、及び、アニオン性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸5.4g(0.040モル)を配合し、窒素雰囲気下の90〜100℃で2時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が2.2%となったことを確認して、ウレタンプレポリマーUP−4を得た。
<水分散/高分子量化工程>
水337g中に乳化剤((株)ADEKA製、製品名アデカプルロニックF−108)24.3g及びトリエチルアミン2.9g(0.029モル)を添加し、次いで前記UP−4を485g加え、15〜50℃で60分間撹拌した。次いで水65gを添加した後、鎖伸長剤として、質量比(エチレンジアミン/水)が1/3の混合液22.8g(エチレンジアミン0.095モル)を滴下し、20〜40℃でNCO基が消失するまで1〜2時間撹拌を継続して、固形分55.0%の水系ポリウレタン樹脂PUD−4を得た。
[製造例5:水系ポリウレタン樹脂PUD−5]
<ウレタンプレポリマーの製造工程>
ポリオールとして、数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール(旭化成ケミカルズ(株)製、製品名デュラノールS6002)310.4g(0.155モル)並びに数平均分子量1000のポリプロピレングリコール((株)ADEKA製、製品名アデカポリエーテルP−1000)310.4g(0.310モル)、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(IPDI)175.7g(0.791モル)、及び、アニオン性基導入剤としてジメチロールプロピオン酸5.8g(0.043モル)を配合した。次いで窒素雰囲気下90〜100℃で2時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が3.0%となったことを確認して、ウレタンプレポリマーUP−5を得た。
<水分散/高分子量化工程>
水337g中に乳化剤((株)ADEKA製、製品名アデカプルロニックF−108)24.3g及びトリエチルアミン2.9g(0.029モル)を添加し、次いで前記UP−5を485g加え、15〜50℃で60分間撹拌した。次いで水60gを添加し、鎖伸長剤として、質量比(エチレンジアミン/水)が1/3の混合液31.0g(エチレンジアミン0.129モル)を滴下し、20〜40℃でNCO基が消失するまで1〜2時間撹拌を継続して、固形分55.0%の水系ポリウレタン樹脂PUD−5を得た。
[実施例1−1:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−1の製造]
表1に示す通り、製造例1で得られたPUD−1を100質量部及び第4級アンモニウム塩−1を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−1を得た。第4級アンモニウム塩−1は、式(1)に示す構造式におけるRがベンジル基、R〜Rがブチル基であり、Xが塩素原子の第4級アンモニウム塩である。
[実施例1−2:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−2の製造]
表1に示す通り、製造例1で得られたPUD−1を100質量部及び第4級アンモニウム塩−2を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−2を得た。第4級アンモニウム塩−2は、式(1)に示す構造式におけるR〜Rが全てエチル基であり、Xが塩素原子の第4級アンモニウム塩である。
[実施例1−3:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−3−1の製造]
表1に示す通り、製造例3で得られたPUD−3を100質量部及び第4級アンモニウム塩−1を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−3−1を得た。
[実施例1−4:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−4−1の製造]
表1に示す通り、製造例4で得られたPUD−4を100質量部及び第4級アンモニウム塩−1を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−4−1を得た。
[実施例1−5:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−5−2の製造]
表1に示す通り、製造例5で得られたPUD−5を100質量部及び第4級アンモニウム塩−2を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−5−2を得た。
[比較例1−1:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−3の製造]
表1に示す通り、製造例1で得られたPUD−1を100質量部及び第4級アンモニウム塩−3を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−3を得た。第4級アンモニウム塩−3は、式(1)に示す構造式におけるR〜Rが全てメチル基であり、Xが塩素原子の第4級アンモニウム塩である。
[比較例1−2:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−4(1)の製造]
表1に示す通り、製造例1で得られたPUD−1を100質量部及び第4級アンモニウム塩−4を12.5部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−4(1)を得た。第4級アンモニウム塩−4は、式(1)に示す構造式におけるR及びRがエチル基、Rがメチル基、Rが下記式(2)で表される基であり、Xが塩素原子の第4級アンモニウム塩である。
Figure 2016128563
[比較例1−3:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−4(2)の製造]
表1に示す通り、製造例1で得られたPUD−1を100質量部及び第4級アンモニウム塩−4を25質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−4(2)を得た。
[比較例1−4:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−2−1の製造]
表1に示す通り、製造例2で得られたPUD−2を100質量部及び第4級アンモニウム塩−1を12.5質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−2−1を得た。
[比較例1−5:水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−6の製造]
表1に示す通り、製造例1で得られたPUD−1を100質量部及び銀系抗菌剤を1.3質量部加え、水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−6を得た。
実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−5の保存安定性並びに感熱凝固温度を評価した。結果は表1の通りである。
なお、保存安定性の評価方法は、実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−5で得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を30℃の雰囲気化に3か月間放置し、分離状態を目視で評価した。
○ : 全く分離なし
△ : 分離又は樹脂の沈降が僅かに認められた
× : 分離又は樹脂の沈降が多く認められた
感熱凝固温度の測定は、100mlのビーカー中に、それぞれの水系ポリウレタン樹脂組成物を50g入れ、これを95℃の熱水浴中で撹拌しながら徐々に加熱し、水系樹脂が凝固するときの温度を測定した。
Figure 2016128563
表1における実施例1−2、1−3、及び1−4では、保存安定性試験において僅かに水系ポリウレタン樹脂組成物の分離が見られた。比較例1−2及び1−3は、保存安定性及び感熱凝固温度の評価は良好であった。比較例1−1並びに1−4は第4級アンモニウム塩を入れた段階で凝集物が認められたため、良好な水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができなかった。このため、感熱凝固温度の評価及び次に記載する皮革様材料の作製は行わなかった。
[実施例2−1〜2−5:皮革様材料の作製]
表2に示す通り、不織布100質量部に対して、得られた水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−1、PUD−1−2、PUD−3−1、PUD−4−1、及びPUD−5−2をそれぞれ200質量部含浸させた後、熱風乾燥機を用いて、100℃で5分間及び150℃で3分間乾燥し、皮革様材料を得た。得られた各材料について、マイグレーション防止性、皮革の風合い、及び抗菌性の評価を行った。
[比較例2−1〜2−6:皮革様材料の作製]
表2に示す通り、不織布100質量部に対して、得られた水系ポリウレタン樹脂組成物PUD−1−4(1)、PUD−1−4(2)、PUD−1−6、PUD−1、PUD−2、及びPUD−3をそれぞれ200質量部含浸させた後、熱風乾燥機を用いて、100℃で5分間、150℃で3分間乾燥し、皮革様材料を得た。
各実施例及び比較例で得られた皮革様材料につき、マイグレーション防止性、風合い、及び抗菌性を評価した。結果を表2に示す。マイグレーション防止性、風合い、及び抗菌性の評価方法は以下の通りである。
[マイグレーション防止性評価]
各皮革様シートの断面について、電子顕微鏡(日本電子(株)製:JSM−6390LA)を用いてマイグレーションの有無を観察し、下記基準に基づき評価した。
○ : マイグレーションなし
△ : マイグレーションが若干発生
× : マイグレーションが多く発生
[風合い評価]
触感によって皮革様シートの柔軟性を観察し、下記基準に基づいて風合いを評価した。
○ : 天然皮革と同様の柔軟性
△ : 天然皮革よりやや劣る柔軟性
× : 天然皮革よりかなり劣る柔軟性
[抗菌性評価]
抗菌性の評価はJIS Z2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠して試験を行った。試験菌としては黄色ブドウ球菌及び大腸菌を用いた。
実施例及び比較例で得られた皮革様材料上に、上記2種の菌を所定数接種し、35℃、90%RHの条件で24時間培養した後の菌数(Y)を測定した。ブランクとしては、水系ポリウレタン樹脂組成物を含浸させない不織布を用い、同様にして、24時間培養後の菌数(Y)を測定した。これらの値から、下記式(3)を使用して抗菌活性値(n=3の平均値)を求め、抗菌活性値が2.0を超えるものは抗菌性が認められるものと評価した。
抗菌活性値=logY−logY (3)
Figure 2016128563
実施例2及び比較例2の結果から、前記一般式(1)の要件を満たさない第4級アンモニウム塩を使用している比較例2−1及び2−2(前記比較例1−2及び1−3の評価が良好であった水系ポリウレタン組成物をそれぞれ使用した事例)は、感熱マイグレーション防止性と皮革の風合いの評価は良好なものの、抗菌性を発現しないことが確認された。また、銀系抗菌剤が含まれている比較例2−3は抗菌性の評価は良好であったものの、マイグレーション防止性と皮革の風合いの評価は著しく劣っていた。また、比較例2−4〜2−6では、マイグレーション防止性、皮革の風合い及び抗菌性のいずれの評価も著しく劣っていた。これに対し、本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物については、感熱凝固性に優れ、皮革様材料としての諸性能の全てにおいて良好な結果を奏することが確認された。
本発明の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性に優れており、種々の樹脂製品や塗料等に使用することができるのみならず、この樹脂組成物を加熱凝固させたシート材料は物性に優れた皮革様材料となるため、車両の内装、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等に好適であり、産業上極めて有用である。

Claims (7)

  1. (A)分子内にカルボキシル基及びスルホン酸基から選択される少なくとも1種のアニオン性基を有するポリウレタン樹脂及び(B)感熱凝固剤を含有する、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記(B)成分が下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩化合物であると共に、前記(A)成分100質量部に対して前記(B)成分が0.1〜50質量部配合されてなることを特徴とする、感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物;
    Figure 2016128563
    上記式(1)中のR、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数が2〜8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、R、R、R及びRに含まれる芳香環の数は0又は1であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子の何れかを表す。
  2. 前記(A)成分が、ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性基導入剤を反応させてなるウレタンプレポリマーを原料とする成分であって、前記ポリオール、ポリイソシアネート及びアニオン性導入剤が、ポリオール及びアニオン性基導入剤の全水酸基当量に対するポリイソシアネートの全イソシアネート基当量の比であるNCO/OHが、1.1〜2.5となる如く配合されてなる、請求項1に記載された感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物。
  3. 前記ウレタンプレポリマーの酸価が5〜50mgKOH/gである、請求項1又は請求項2に記載された感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物。
  4. 前記アニオン性基1当量に対し、0.2〜2.0当量のアニオン性基中和剤(C)を更に含有する、請求項1〜3の何れかに記載された感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物。
  5. 前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して5〜20質量部である、請求項1〜4の何れかに記載された感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物。
  6. 繊維基材に、請求項1〜5の何れかに記載された感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布した後、又は含浸させた後、加熱凝固させることを特徴とする皮革様材料の製造方法。
  7. 請求項6に記載された方法により製造されてなる皮革様材料。
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