JP2016125713A - 蓄熱式空気調和機 - Google Patents

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Koichi Yasuo
晃一 安尾
修二 藤本
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修二 藤本
柯壁 陳
Kebi Chen
柯壁 陳
岡本 昌和
Masakazu Okamoto
昌和 岡本
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Abstract

【課題】冷房蓄冷運転時、蓄熱媒体が蓄熱回路内を問題なく循環する蓄熱式空気調和機を提供する。【解決手段】蓄熱式空気調和機は、バイパス流路を含む冷媒回路と、蓄熱回路とを備え、冷媒回路では冷房サイクルが行われながら蓄熱回路では蓄冷サイクルが行われる冷房蓄冷運転を実行可能である。コントローラは、冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度を変化させる制御を更に行い、蓄熱媒体の水和物生成温度より低い第1所定温度よりも蒸発温度が高い場合、冷房蓄冷運転を実行させ、蒸発温度が第1所定温度よりも低い場合、冷房蓄冷運転の実行を禁止する。【選択図】図7

Description

本発明は、室内の冷房を行いながらも蓄熱タンクに冷熱を蓄冷する蓄熱式空気調和機に関するものである。
特許文献1に示すように、蓄熱媒体を冷熱源として利用して室内の空調を行う蓄熱式空気調和機が知られている。特許文献1では、蓄熱媒体を貯留する蓄熱タンクの中に、冷媒が通過する流路を有する蓄熱用熱交換器が配置されており、蓄熱媒体は、冷媒によって冷却される。蓄熱媒体としては、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱材(例えば臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液)が利用されており、包接水和物が生成される温度は、約0℃で凍る水に比べて高い温度(例えば12℃)となっている。
特に、特許文献1の蓄熱式空気調和機は、冷熱を蓄熱しつつ冷房を行う冷房蓄冷運転が可能となっている。
特許第4407582号公報
特許文献1とは対照的に、蓄熱用熱交換器を蓄熱タンクの外部に設置するとともに、蓄熱用熱交換器と蓄熱タンクとの間を蓄熱媒体が循環する蓄熱回路が採用された場合を考える。この場合、蓄熱用熱交換器は、冷媒が流れる冷媒側通路と蓄熱媒体が流れる蓄熱側通路とを有する。このような構成にて冷房蓄冷運転が行われる場合、蓄熱用熱交換器では、冷媒は蓄熱媒体から吸熱し、蓄熱媒体は冷媒によって冷やされる。
しかしながら、蓄熱用熱交換器では、冷媒側通路と蓄熱側通路とが平行且つ近接して設置されている。それ故、冷媒側通路を流れる冷媒の温度の低さの程度によっては、蓄熱側通路を構成する配管の内壁温度も低下し、包接水和物となった蓄熱媒体によって蓄熱側通路が閉塞され、蓄熱媒体の循環が妨げられるおそれがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷房蓄冷運転時、蓄熱回路内を蓄熱媒体が問題なく循環することである。
第1の発明は、冷媒と空気とを熱交換させる室外熱交換器(22)及び室内熱交換器(27)を有する冷媒回路(11)と、上記冷媒回路(11)に含まれており、上記室内熱交換器(27)に並列に接続されており、冷媒と冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体とを熱交換させる蓄熱用熱交換器(37)を有するバイパス流路(31)と、上記蓄熱媒体を貯留する蓄熱タンク(62)と、上記蓄熱用熱交換器(37)と、該蓄熱タンク(62)及び該蓄熱用熱交換器(37)の間で上記蓄熱媒体を循環させるポンプ(63)とを有する蓄熱回路(61)と、上記冷媒回路(11)では上記室外熱交換器(22)で凝縮された冷媒が上記室内熱交換器(27)で蒸発するように冷媒が循環する冷房サイクルが行われながら、上記蓄熱回路(61)では上記蓄熱媒体が上記蓄熱用熱交換器(37)にて冷媒により冷却され上記蓄熱タンク(62)に貯留される蓄冷サイクルが行われる冷房蓄冷運転、を実行可能に制御する運転制御部(100)とを備え、上記運転制御部(100)は、冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度を変化させる制御を更に行い、上記蓄熱媒体の水和物生成温度より低い第1所定温度、よりも上記蒸発温度が高い場合、上記冷房蓄冷運転を実行させ、上記蒸発温度が上記第1所定温度よりも低い場合、上記冷房蓄冷運転の実行を禁止することを特徴とする蓄熱式空気調和機である。
この蓄熱式空気調和機(10)では、冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度Teが変化するが、この蒸発温度Teが第1所定温度よりも低い場合は冷房蓄冷運転が行われない。これにより、蓄熱用熱交換器(37)における蓄熱回路(61)側の通路(37b)の内壁温度が第1所定温度付近にまで冷却され、包接水和物に変化した蓄熱媒体によって蓄熱回路(61)側の通路(37b)が閉塞されることはない。従って、蓄熱回路(61)では、過冷却状態を安定的に保ったままの蓄熱媒体が循環することとなる。
第2の発明は、第1の発明において、上記運転制御部(100)は、更に、上記水和物生成温度と上記第1所定温度との間の温度である第2所定温度よりも上記蒸発温度が高い場合、上記冷房蓄冷運転の実行を禁止することを特徴とする蓄熱式空気調和機である。
即ち、蒸発温度Teが第1所定温度よりも高く第2所定温度よりも低い場合に、冷房蓄冷運転が行われる。これにより、蓄熱用熱交換器(37)における蓄熱媒体と冷媒との温度差は、蒸発温度Teが第2所定温度より高い場合に比して大きくなる。従って、蓄熱用熱交換器(37)は、蓄熱媒体を十分に冷却することができ、蓄熱回路(61)では、効率的な蓄冷サイクルが行われる。
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、上記蓄熱媒体は、臭化テトラnブチルアンモニウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液であることを特徴とする蓄熱式空気調和機である。
第4の発明は、第3の発明において、上記蓄熱媒体は、調和濃度の近傍の濃度、を有する媒体であることを特徴とする蓄熱式空気調和機である。
本発明によれば、蒸発温度Teが第1所定温度よりも低い場合は冷房蓄冷運転が行われないため、蓄熱回路(61)では、包接水和物に変化した蓄熱媒体によって蓄熱用熱交換器(37)の通路(37b)が閉塞されることがなく、過冷却状態を安定的に保ったままの蓄熱媒体が循環することとなる。
特に、第2の発明によれば、蓄熱用熱交換器(37)は、蓄熱媒体を十分に冷却することができ、蓄熱回路(61)では、効率的な蓄冷サイクルが行われる。
図1は、蓄熱式空気調和機の構成図である。 図2は、単純冷房運転時の冷媒の流れを表す図である。 図3は、単純暖房運転時の冷媒の流れを示す図である。 図4は、蓄冷運転時の冷媒及び蓄熱媒体の各流れを表す図である。 図5は、利用冷房運転時の冷媒及び蓄熱媒体の各流れを表す図である。 図6は、冷房蓄冷運転時の冷媒及び蓄熱媒体の各流れを表す図である。 図7は、冷房蓄冷運転の実行の有無を、変化する蒸発温度との関係にて表した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
≪実施形態≫
<概要>
本実施形態に係る蓄熱式空気調和機(10)は、後述する蓄熱タンク(62)に冷熱を蓄えたり、蓄えた冷熱を利用して室内を冷房したりすることができるシステムである。更に、蓄熱式空気調和機(10)は、蓄熱タンク(62)に冷熱を蓄えながらも室内の冷房を行うことができる。
図1に示すように、蓄熱式空気調和機(10)は、室外ユニット(20a)と、室内ユニット(20b)と、蓄熱ユニット(50)と、コントローラ(100)(運転制御部に相当)とで構成されており、冷媒回路(11)及び蓄熱回路(61)を有する。
コントローラ(100)は、蓄熱式空気調和機(10)の運転を制御するためのものである。コントローラ(100)は、冷媒回路(11)の圧縮機(21)や蓄熱回路(61)の循環ポンプ(63)の駆動制御、複数の開閉弁(25,39,40,41)の開閉制御等を行う。
<冷媒回路の構成>
冷媒回路(11)には冷媒が充填されており、冷媒が循環することによって冷凍サイクルが行われる。図1に示すように、冷媒回路(11)は、主として、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、室外側過冷却熱交換器(24)、第1開閉弁(25)、蓄熱側過冷却熱交換器(29)、室内膨張弁(26)、室内熱交換器(27)及び四方切換弁(28)により構成されている。このうち、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、室外側過冷却熱交換器(24)及び四方切換弁(28)は、室外ユニット(20a)に設けられ、室内膨張弁(26)及び室内熱交換器(27)は、室内ユニット(20b)に設けられている。第1開閉弁(25)及び蓄熱側過冷却熱交換器(29)は、蓄熱ユニット(50)に設けられている。
圧縮機(21)は冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機(21)は、容量可変式であって、図示しないインバータ回路によって回転数(運転周波数)が変更される。
室外熱交換器(22)は、配管(12)を介して四方切換弁(28)と接続されている。室外熱交換器(22)は、例えばクロスフィンアンドチューブ式であって、室外ユニット(20a)に設けられた室外ファン(22a)によって室外空気が供給されると、当該室外空気と冷媒との熱交換を行う。
室外膨張弁(23)は、配管(13)を介して室外熱交換器(22)と接続され、配管(14a)を介して室外側過冷却熱交換器(24)と接続されている。室外膨張弁(23)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を変更することで冷媒の流量を調整する。
室外側過冷却熱交換器(24)は、配管(14a)を介して室外膨張弁(23)と接続された高圧側通路(24a)と、高圧側通路(24a)の入口側及び圧縮機(21)の吸入側に接続された低圧側通路(24b)とを有する。室外側過冷却熱交換器(24)は、高圧側通路(24a)及び低圧側通路(24b)それぞれを流れる冷媒同士が熱交換を行うことで高圧側通路(24a)を流れる冷媒が過冷却されるように構成されている。低圧側通路(24b)に流れる冷媒の流量は、膨張弁(24c)によって調節される。
第1開閉弁(25)は、配管(14b)を介して室外側過冷却熱交換器(24)の高圧側通路(24a)に接続され、配管(14c)を介して蓄熱側過冷却熱交換器(29)と接続されている。第1開閉弁(25)は、例えば電磁弁で構成されており、配管(14b,14c)の間の冷媒の流れを許容または停止させるものである。第1開閉弁(25)に並列に、逆止弁(25a)が接続されている。逆止弁(25a)は、後述する単純暖房運転時に、蓄熱側過冷却熱交換器(29)側から室外側過冷却熱交換器(24)側に向けて冷媒が流れるように設けられている。
蓄熱側過冷却熱交換器(29)は、高圧側通路(29a)と低圧側通路(29b)とを有する。高圧側通路(29a)の一端は配管(14c)に接続され、他端は配管(14d)を介して室内膨張弁(26)に接続されている。低圧側通路(29b)の一端は配管(17)を介して高圧側通路(29a)の入口側に接続され、他端は配管(16)(圧縮機(21)の吸入側)に接続されている。蓄熱側過冷却熱交換器(29)は、高圧側通路(29a)及び低圧側通路(29b)それぞれを流れる冷媒同士が熱交換を行うことで高圧側通路(29a)を流れる冷媒が過冷却されるように構成されている。低圧側通路(29b)に流れる冷媒の流量は、配管(17)上に設けられている膨張弁(29c)によって調節される。
室内膨張弁(26)は、配管(15)を介して室内熱交換器(27)と接続されている。室内膨張弁(26)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を変更することで冷媒の循環量を調整する。
室内熱交換器(27)は、配管(16)を介して四方切換弁(28)と接続されている。室内熱交換器(27)は、例えばクロスフィンアンドチューブ式であって、室内ユニット(20b)に設けられた室内ファン(27a)によって室内空気が供給されると、当該空気と冷媒との熱交換を行う。室内熱交換器(27)によって熱交換された後の空気は、再び室内に供給される。
四方切換弁(28)は、4つのポートを有する。具体的に、四方切換弁(28)の第1ポートは、圧縮機(21)の吐出側に接続され、四方切換弁(28)の第2ポートは、図示しないアキュムレータを介して圧縮機(21)の吸入側に接続されている。四方切換弁(28)の第3ポートは、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に接続され、四方切換弁(28)の第4ポートは、配管(16)を介して室内熱交換器(27)に接続されている。四方切換弁(28)は、蓄熱式空気調和機(10)の運転種類に応じて、各ポートの接続状態を第1状態(図1の実線で示す状態)または第2状態(図1の破線で示す状態)に切り換える。
<バイパス流路の構成>
図1に示すように、冷媒回路(11)は、バイパス流路(31)を含む。バイパス流路(31)は、室内熱交換器(27)に並列に接続されており、内部を冷媒が通過する。具体的に、バイパス流路(31)の一端は、室外側過冷却熱交換器(24)と第1開閉弁(25)との間の配管(14b)に接続されている。バイパス流路(31)の他端は、室内熱交換器(27)と四方切換弁(28)の第4ポートとの間の配管(16)に接続されている。バイパス流路(31)は、主として、予熱用熱交換器(36)及び蓄熱用熱交換器(37)、蓄熱用膨張弁(38)、及び第2〜第3開閉弁(39,40)を有する。
予熱用熱交換器(36)は、冷媒側通路(36a)と蓄熱側通路(36b)とを有する。冷媒側通路(36a)は、配管(32)上、つまりはバイパス流路(31)の一端と蓄熱用膨張弁(38)との間に位置し、内部には冷媒が流れる。蓄熱側通路(36b)は、蓄熱回路(61)に直列に接続され、内部には蓄熱媒体(後述)が流れる。予熱用熱交換器(36)は、冷媒と蓄熱媒体との熱交換を行う。つまり、予熱用熱交換器(36)は、蓄熱用熱交換器(37)にて熱交換する前の冷媒を、蓄熱媒体と熱交換させる。
蓄熱用熱交換器(37)は、冷媒側通路(37a)と蓄熱側通路(37b)とを有する。冷媒側通路(37a)は、配管(33)上において蓄熱用膨張弁(38)と第3開閉弁(40)との間に位置し、内部には冷媒が流れる。蓄熱側通路(37b)は、蓄熱回路(61)に直列に接続され、内部には蓄熱媒体が流れる。蓄熱用熱交換器(37)は、冷媒と蓄熱媒体との熱交換を行うことで、蓄熱媒体を冷却等することができる。つまり、蓄熱用熱交換器(37)は、予熱用熱交換器(36)にて熱交換した後の冷媒を、蓄熱媒体と熱交換させる。
蓄熱用膨張弁(38)は、予熱用熱交換器(36)の冷媒側通路(36a)と蓄熱用熱交換器(37)の冷媒側通路(37a)との間に接続されている。蓄熱用膨張弁(38)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を変更することで冷媒の圧力及び循環量を調整する。
第2開閉弁(39)は、逆止弁(39a)と直列に接続されている。互いに直列接続された第2開閉弁(39)及び逆止弁(39a)は、蓄熱用膨張弁(38)に対し並列に接続されている。逆止弁(39a)は、予熱用熱交換器(36)側から蓄熱用熱交換器(37)側への冷媒の流れのみを許容する。第3開閉弁(40)は、配管(34)上に設けられている。なお、配管(34)の一端は、配管(33)に接続され、配管(34)の他端は、配管(16)に接続されている。
なお、蓄熱用膨張弁(38)に並列に、圧力逃がし弁(44)が設けられている。圧力逃がし弁(44)は、例えば蓄熱式空気調和機(10)の運転停止時、蓄熱用熱交換器(37)側の圧力が許容値を超えた場合に、当該圧力を放出させるための弁である。
<第1分岐流路>
図1に示すように、冷媒回路(11)は、第1分岐流路(35)を更に含む。第1分岐流路(35)の一端は、バイパス流路(31)における配管(33,34)の接続ポイントに接続され、第1分岐流路(35)の他端は、配管(14c)に接続されている。第1分岐流路(35)は、主として、第4開閉弁(41)及び逆止弁(41a)を有する。第4開閉弁(41)及び逆止弁(41a)は、互いに直列に接続されている。逆止弁(41a)は、配管(33)側から配管(14c)側への冷媒の流れのみを許容する。
<第2分岐流路>
図1に示すように、冷媒回路(11)は、第2分岐流路(42)を更に含む。第2分岐流路(42)の一端は、バイパス流路(31)における配管(33,34)の接続ポイント、つまりはバイパス流路(31)と第1分岐流路(35)との接続ポイントに接続されている。第2分岐流路(42)の他端は、配管(16)に接続されている。第2分岐流路(42)は、主として、蒸発圧力調整弁(43)を有する。蒸発圧力調整弁(43)は、蓄熱用熱交換器(37)における冷媒の蒸発圧力を調整するための弁であって、例えば膨張弁で構成されている。
なお、蒸発圧力調整弁(43)は、基本的には全閉状態を保っている。
<蓄熱回路の構成>
蓄熱回路(61)には蓄熱媒体が充填されており、蓄熱媒体を循環させて冷熱を蓄熱する蓄冷サイクル等が行われる。蓄熱回路(61)は、主として、蓄熱タンク(62)及び循環ポンプ(63)の他に、上述した予熱用熱交換器(36)及び蓄熱用熱交換器(37)の各蓄熱側通路(36b,37b)によって構成されている。
ここで、蓄熱媒体について説明する。蓄熱媒体には、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱材、即ち流動性を有する蓄熱材が採用される。蓄熱媒体の具体例としては、臭化テトラnブチルアンモニウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB:Tetra Butyl Ammonium Bromide)水溶液、トリメチロールエタン(TME:Trimethylolethane)水溶液、パラフィン系スラリーなどが挙げられる。例えば、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、安定的に冷却されて当該水溶液の温度が水和物生成温度よりも低くなった過冷却状態でもその水溶液の状態を維持するが、この過冷却状態にて何らかのきっかけが与えられると、過冷却の溶液が包接水和物を含んだ溶液(即ちスラリー)へと遷移する。即ち、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、過冷却状態を解消して、臭化テトラnブチルアンモニウムと水分子とからなる包接水和物(水和物結晶)が生成されて粘性の比較的高いスラリー状となる。ここで、過冷却状態とは、蓄熱媒体が水和物生成温度以下の温度となっても包接水和物が生成されずに溶液の状態を保っている状態を言う。逆に、スラリー状となっている臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、加熱により当該水溶液の温度が水和物生成温度よりも高くなると、包接水和物が融解して流動性の比較的高い液状態(溶液)となる。
本実施形態では、上記蓄熱媒体として、臭化テトラnブチルアンモニウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液を採用している。特に、上記蓄熱媒体は、調和濃度の近傍の濃度を有する媒体であることが好ましい。本実施形態では、調和濃度を約40%とする。この場合の臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液の水和物生成温度は、約12℃である。
なお、蓄熱媒体の濃度に応じて、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液の水和物生成温度は変化する。例えば、蓄熱媒体の濃度が約20%である場合、水和物生成温度は約8.5℃となる。調和濃度とは、包接水和物が生成される前後において、水溶液の濃度が変化しない濃度を意味する。
蓄熱タンク(62)は、中空の容器であって、蓄熱媒体を貯留する。例えば、蓄熱タンク(62)は、両端が閉塞された円筒状に形成され、その軸方向が上下方向となるように配置されている。蓄熱タンク(62)には、流出口と流入口とが形成されており、流出口は、例えば流入口よりも上方に位置している。
循環ポンプ(63)は、蓄熱回路(61)において、蓄熱タンク(62)、予熱用熱交換器(36)及び蓄熱用熱交換器(37)の間で蓄熱媒体を循環させる。蓄熱媒体の循環方向は、蓄熱タンク(62)から流出した蓄熱媒体が予熱用熱交換器(36)の蓄熱側通路(36b)を通過し、更にその後に循環ポンプ(63)を介して蓄熱用熱交換器(37)の蓄熱側通路(37b)を通過して、蓄熱タンク(62)に流入する方向となっている。循環ポンプ(63)の運転のオン及びオフや蓄熱媒体の流量は、コントローラ(100)によって制御される。
以上の構成により、蓄熱回路(61)は、閉回路となっている。
<蓄熱式空気調和機の運転動作>
蓄熱式空気調和機(10)の運転種類としては、単純冷房運転、単純暖房運転、蓄冷運転、利用冷房運転、及び冷房蓄冷運転が挙げられる。コントローラ(100)は、これらの各運転が行われるように、冷媒回路(11)及び蓄熱回路(61)における各種機器を制御する。
単純冷房運転とは、冷媒回路(11)の冷房サイクルによって得られる冷熱のみを用いて室内の冷房を行う運転である。単純暖房運転とは、冷媒回路(11)の暖房サイクルによって得られる温熱のみを用いて室内の暖房を行う運転である。蓄冷運転とは、蓄熱回路(61)の蓄冷サイクルによって得られる冷熱を蓄熱タンク(62)に蓄える運転である。利用冷房運転とは、蓄熱タンク(62)内の蓄熱媒体を冷熱源として用いて室内の冷房を行う運転である。冷房蓄冷運転は、蓄熱回路(61)においては蓄冷サイクルで得られる冷熱を蓄熱タンク(62)に貯留しながら、冷媒回路(11)においては冷房サイクルで得られる冷熱のみを用いて室内の冷房を行う運転である。即ち、冷房蓄冷運転では、蓄冷と冷房とが同時に行われる。
−単純冷房運転−
図2に示されるように、単純冷房運転では、冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が凝縮器となり室内熱交換器(27)が蒸発器となる冷房サイクルを行う。バイパス流路(31)及び第1分岐流路(35)には冷媒は流入せず、蓄熱回路(61)は蓄熱媒体を循環させない。具体的に、バイパス流路(31)では、蓄熱用膨張弁(38)の開度は全閉状態に設定され、バイパス流路(31)及び第1分岐流路(35)の開閉弁(39,41)は閉状態に設定される。但し、バイパス流路(31)の開閉弁(40)は、蓄熱用熱交換器(37)の冷媒側通路(37a)に冷媒が溜まることを防ぐため、開状態に設定される。蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(63)は停止する。
冷媒回路(11)では、四方切換弁(28)が第1状態に設定され、第1開閉弁(25)は開状態に設定される。室外膨張弁(23)の開度は全開状態に設定され、蓄熱側過冷却熱交換器(29)の膨張弁(29c)は全閉状態、室内膨張弁(26)の開度は所定の開度(室内熱交換器(27)の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となる開度)に設定される。圧縮機(21)、室外ファン(22a)及び室内ファン(27a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)を通過する間に室外空気に放熱して凝縮する。室外熱交換器(22)にて凝縮された冷媒は、配管(13)及び室外膨張弁(23)を介して室外側過冷却熱交換器(24)に流入し、更に冷却される。更に冷却された冷媒は、配管(14b,14c,14d)、第1開閉弁(25)及び蓄熱側過冷却熱交換器(29)の高圧側通路(29a)を介して室内膨張弁(26)に流入し、室内膨張弁(26)にて減圧される。室内膨張弁(26)にて減圧された冷媒は、配管(15)を介して室内熱交換器(27)に流入し、室内熱交換器(27)を通過する間に室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。室内熱交換器(27)にて蒸発した冷媒は、配管(16)を介して圧縮機(21)に吸入されて再び圧縮される。
−単純暖房運転−
図3に示されるように、単純暖房運転では、冷媒回路(11)は、室内熱交換器(27)が凝縮器となり室外熱交換器(22)が蒸発器となる暖房サイクルを行う。単純冷房運転と同様、バイパス流路(31)及び第1分岐流路(35)には冷媒は流入せず、蓄熱回路(61)は蓄熱媒体を循環させない。
冷媒回路(11)では、四方切換弁(28)が第2状態に設定される。室内膨張弁(26)の開度は、所定の開度(室内熱交換器(27)の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度となる開度)に設定される。各過冷却熱交換器(29,24)の膨張弁(29c,24c)は全閉状態、第1開閉弁(25)は閉状態、室外膨張弁(23)の開度は所定の開度(室外熱交換器(22)の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となる開度)に設定される。圧縮機(21)、室外ファン(22a)及び室内ファン(27a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(16)を介して室内熱交換器(27)に流入し、室内熱交換器(27)を通過する間に室内空気に放熱して凝縮する。この時、室内空気は温められる。室内熱交換器(27)にて凝縮された冷媒は、各種配管(15,14d~14a)、室内膨張弁(26)、各過冷却熱交換器(29,24)の高圧側通路(29a,24a)、及び逆止弁(25a)を介して室外膨張弁(23)に流入し、室外膨張弁(23)にて減圧される。減圧後の冷媒は、配管(13)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)を通過する間に室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発後の冷媒は、配管(12)を介して圧縮機(21)に吸入されて再び圧縮される。
−蓄冷運転−
図4に示すように、蓄冷運転では、室外熱交換器(22)及び予熱用熱交換器(36)の冷媒側通路(36a)にて凝縮及び冷却された冷媒が、蓄熱用熱交換器(37)の冷媒側通路(37a)にて蒸発することで、蓄熱側通路(37b)内の蓄熱媒体が冷却されて蓄熱タンク(62)に貯留される。冷媒回路(11)では、冷媒がバイパス流路(31)に流れるが、第1分岐流路(35)には流れない。蓄熱回路(61)は、蓄熱用熱交換器(37)にて冷却された蓄熱媒体が蓄熱タンク(62)に貯留するように蓄熱媒体を循環する蓄冷サイクルを行う。
具体的に、四方切換弁(28)は第1状態、第3開閉弁(40)は開状態に設定され、第2開閉弁(39)及び第4開閉弁(41))は閉状態に設定される。なお、第1開閉弁(25)は、開状態に設定される。第1開閉弁(25)が開状態となることにより、バイパス流路(31)への分岐点から室内膨張弁(26)までの配管(液管)に液冷媒が溜まり込み、この配管内の冷媒が単純冷房運転時と同じ状態になり、余剰冷媒の発生が防止されるためである。また、室外膨張弁(23)の開度は全開状態、各過冷却熱交換器(24,29)の膨張弁(24c,29c)は全閉状態、室内膨張弁(26)の開度は全閉状態、蓄熱用膨張弁(38)の開度は所定の開度(蓄熱用熱交換器(37)の冷媒側通路(37a)の出口における冷媒の蒸発温度が目標蒸発温度となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)は概ね一定の回転数で作動する。室外ファン(22a)は作動し、室内ファン(27a)は停止する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、配管(13,14a)、室外膨張弁(23)及び室外側過冷却熱交換器(24)の高圧側通路(24a)を介して配管(14b)に流れる。第1開閉弁(25)が開状態であるため、当該冷媒は、配管(14b)におけるバイパス流路(31)への分岐点から室内膨張弁(26)に至るまでの配管に溜まり込むとともに、バイパス流路(31)側へも流入し、予熱用熱交換器(36)の冷媒側通路(36a)にて更に冷却される。予熱用熱交換器(36)から流出された冷媒は、蓄熱用膨張弁(38)にて減圧され、その後蓄熱用熱交換器(37)の冷媒側通路(37a)にて蓄熱媒体から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第3開閉弁(40)及び配管(34)を介してバイパス流路(31)から流出し、配管(16)に流入する。その後、冷媒は、四方切換弁(28)を介して圧縮機(21)に吸入され、再び圧縮される。
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(63)が作動する。蓄熱タンク(62)内の蓄熱媒体は、該タンク(62)から流出して予熱用熱交換器(36)の蓄熱側通路(36b)に流入する。蓄熱側通路(36b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(36a)を流れる冷媒によって加熱される。加熱された蓄熱媒体は、循環ポンプ(63)を介して蓄熱用熱交換器(37)の蓄熱側通路(37b)に流入する。蓄熱側通路(37b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(37a)を流れる冷媒によって冷却される。冷却された蓄熱媒体は、蓄熱タンク(62)内に流入する。このようにして、蓄熱タンク(62)には冷熱が蓄えられる。
−利用冷房運転−
図5に示すように、利用冷房運転では、蓄熱タンク(62)に蓄えられた冷熱と冷媒回路(11)の冷凍サイクルによって得られる冷熱とを用いて室内の冷房が行われる。つまり、室外熱交換器(22)にて凝縮及び冷却された冷媒が、更に予熱用熱交換器(36)及び蓄熱用熱交換器(37)にて蓄熱媒体から冷熱を得た後に室内熱交換器(27)にて蒸発することで、室内空気が冷却される。蓄熱回路(61)は、蓄熱タンク(62)から流出した蓄熱媒体が予熱用熱交換器(36)及び蓄熱用熱交換器(37)を順に通過して蓄熱タンク(62)に再度流入するように蓄熱媒体を循環させる。
この場合、冷媒回路(11)側においては、室外熱交換器(22)が凝縮器、室内熱交換器(27)が蒸発器となる。特に、バイパス流路(31)においては、予熱用熱交換器(36)及び蓄熱用熱交換器(37)が共に過冷却器(即ち放熱器)となり、冷媒は、バイパス流路(31)の途中で第1分岐流路(35)へと流れる。
具体的には、四方切換弁(28)は第1状態、第1開閉弁(25)及び第3開閉弁(40)は閉状態、第2開閉弁(39)及び第4開閉弁(41)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)及び蓄熱用膨張弁(38)の開度は全開状態、室外側過冷却熱交換器(24)の膨張弁(24c)は全閉状態、室内膨張弁(26)の開度は所定の開度(室内熱交換器(27)の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)、室外ファン(22a)及び室内ファン(27a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、全開である室外膨張弁(23)及び室外側過冷却熱交換器(24)の高圧側通路(24a)を介して配管(14b)に流れる。第1開閉弁(25)が閉状態であるため、当該冷媒は、配管(14b)の途中でバイパス流路(31)内へと流入する。バイパス流路(31)に流入した冷媒は、予熱用熱交換器(36)の冷媒側通路(36a)を通過する間に蓄熱側通路(36b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却され、その後は全開である蓄熱用膨張弁(38)または第2開閉弁(39)を介して蓄熱用熱交換器(37)に流入する。蓄熱用熱交換器(37)に流入した冷媒は、冷媒側通路(37a)を通過する間に、蓄熱側通路(37b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。この冷媒は、第1分岐流路(35)を介して配管(14c)に流入する。その後、冷媒は、蓄熱側過冷却熱交換器(29)に流入し、更に冷却される。更に冷却された冷媒は、配管(14d)を介して室内膨張弁(26)に流入する。室内膨張弁(26)にて減圧された後、室内熱交換器(27)にて室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、配管(16)及び四方切換弁(28)を介して圧縮機(21)に吸入されて再び圧縮される。
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(63)が作動する。蓄熱タンク(62)内の蓄熱媒体は、該タンク(62)から流出して予熱用熱交換器(36)の蓄熱側通路(36b)に流入する。蓄熱側通路(36b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(36a)を流れる冷媒から吸熱する。吸熱した蓄熱媒体は、循環ポンプ(63)を介して蓄熱用熱交換器(37)の蓄熱側通路(37b)に流入する。蓄熱側通路(37b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(37a)を流れる冷媒から更に吸熱する。更に吸熱した蓄熱媒体は、蓄熱タンク(62)内に流入される。このようにして、蓄熱媒体から冷媒へ冷熱が付与される。
−冷房蓄冷運転−
図6に示すように、冷房蓄冷運転では、冷媒回路(11)においては室外熱交換器(22)で凝縮された冷媒が室内熱交換器(27)で蒸発するように冷媒が循環する冷房サイクルが行われる。特に、冷媒回路(11)では、冷媒の一部がバイパス流路(31)へも流れる。そして、冷房蓄冷運転では、蓄熱回路(61)においては蓄熱媒体が蓄熱用熱交換器(37)にて冷媒により冷却され蓄熱タンク(62)に貯留される蓄冷サイクルが行われる。つまり、冷房サイクルと蓄冷サイクルとが同時に行われる。
この場合、冷媒回路(11)側においては、室外熱交換器(22)が凝縮器、室内熱交換器(27)が蒸発器となる。特に、バイパス流路(31)においては、予熱用熱交換器(36)は過冷却器(即ち放熱器)、蓄熱用熱交換器(37)は蒸発器となる。なお、冷媒は、第1分岐流路(35)には流れない。
具体的には、四方切換弁(28)は第1状態、第1開閉弁(25)及び第3開閉弁(40)は開状態、第2開閉弁(39)及び第4開閉弁(41)は閉状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)の開度は全開状態、室外側過冷却熱交換器(24)の膨張弁(24c)は全閉状態、蓄熱用膨張弁(38)及び室内膨張弁(26)の開度は、コントローラ(100)によって冷媒流量調節のための開度制御が行われる。圧縮機(21)、室外ファン(22a)及び室内ファン(27a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、全開である室外膨張弁(23)及び室外側過冷却熱交換器(24)の高圧側通路(24a)を通過する。第1開閉弁(25)は開状態であって、且つ蓄熱用膨張弁(38)は全閉状態ではないため、室外側過冷却熱交換器(24)から流出した冷媒は、配管(14b)の途中にて、第1開閉弁(25)側とバイパス流路(31)側とに分岐して流れる。
第1開閉弁(25)側に流れた冷媒は、配管(14c)を介して蓄熱側過冷却熱交換器(29)の高圧側通路(29a)に流入し、更に冷却される。更に冷却された冷媒は、配管(14d)を介して室内膨張弁(26)に流入し、室内膨張弁(26)にて減圧される。室内膨張弁(26)にて減圧された冷媒は、室内熱交換器(27)にて室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。
一方、バイパス流路(31)側に流れた冷媒は、配管(32)を介して予熱用熱交換器(36)の冷媒側通路(36a)に流入し、当該冷媒側通路(36a)を通過する間に蓄熱側通路(36b)を流れる蓄熱媒体を加熱する。これにより、蓄熱タンク(62)から流出する蓄熱媒体に含まれる包接水和物は融解する。従って、予熱用熱交換器(36)を通過後の蓄熱媒体が通過する配管(蓄熱用熱交換器(37)の蓄熱側通路(37b)を含む)にて、蓄熱媒体の包接水和物が大量に生成されて蓄熱回路(61)が閉塞することを防ぐことができる。
特に、冷房蓄冷運転では、室外側過冷却熱交換器(24)での冷媒の冷却が行われていない。仮に室外側過冷却熱交換器(24)で冷媒が冷却されると、予熱用熱交換器(36)にて冷媒が蓄熱媒体を加熱する効果が薄れてしまい、包接水和物による蓄熱回路(61)の閉塞が生じ易くなるためである。
そして、予熱用熱交換器(36)にて蓄熱媒体を加熱した冷媒は、冷やされた状態で予熱用熱交換器(36)から流出し、蓄熱用膨張弁(38)にて減圧される。その後、冷媒は、蓄熱用熱交換器(37)において、冷媒側通路(37a)を通過する間に、蓄熱側通路(37b)を流れる蓄熱媒体から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第3開閉弁(40)及び配管(34)を流れ、室内熱交換器(27)を通過した冷媒と配管(16)にて合流する。合流した冷媒は、四方切換弁(28)を介して圧縮機(21)に吸入されて再び圧縮される。
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(63)が作動する。蓄熱タンク(62)内の蓄熱媒体は、該タンク(62)から流出して予熱用熱交換器(36)の蓄熱側通路(36b)に流入する。この蓄熱側通路(36b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(36a)を流れる冷媒から吸熱することで加熱される。これにより、蓄熱媒体に含まれる包接水和物は融かされる。吸熱した蓄熱媒体は、循環ポンプ(63)を介して蓄熱用熱交換器(37)の蓄熱側通路(37b)に流入する。蓄熱側通路(37b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(37a)を流れる冷媒によって冷却される。冷却された蓄熱媒体は、蓄熱タンク(62)内に流入する。このようにして、蓄熱タンク(62)には冷熱が蓄えられる。
なお、以上の説明では、冷房蓄冷運転において、蒸発圧力調整弁(43)の開度が全閉状態に設定され、第3開閉弁(40)が開状態に設定される場合を例に挙げているが、冷房蓄冷運転において、第3開閉弁(40)を閉状態に設定し、蒸発圧力調整弁(43)の開度を所定の開度に調節してよい。この場合、蓄熱用熱交換器(37)から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁(43)において減圧され、配管(16)と四方切換弁(28)とを順に通過して圧縮機(21)に吸入されることになる。このように制御することにより、蓄熱用熱交換器(37)における冷媒の蒸発圧力を圧縮機(21)の吸入圧力よりも高くすることができ、蓄熱用熱交換器(37)における冷媒の蒸発温度が低くなり過ぎることを防止することができる。これにより、蓄熱用熱交換器(37)において蓄熱媒体が冷却され過ぎて、包接水和物が大量に生成されて蓄熱媒体の循環効率が低下することを防止することができる。
<目標低圧圧力制御と冷房蓄冷運転との関係について>
次に、上述した冷房蓄冷運転がどのような場合に実行されるかについて説明する。
圧縮機(21)としては、上述したように、回転数(運転周波数)に応じて容量が変化するタイプが採用されている。容量の変更、即ち回転数の変更制御は、コントローラ(100)によって行われる。
特に、本実施形態に係るコントローラ(100)は、冷房サイクル時、冷媒回路(11)における高圧側の冷媒の圧力(即ち、高圧圧力)が概ね一定となるように、圧縮機(21)の運転制御を行っている。そのため、コントローラ(100)は、冷房負荷が変化した場合、変化後の冷房負荷が大きい程圧縮機(21)の回転数を増大させて、冷媒回路(11)における低圧側の冷媒の圧力(低圧圧力)を下げる制御を行っている。具体的には、コントローラ(100)は、冷房サイクル時、冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度Teを決定し、決定された蒸発温度Teに相当する目標低圧圧力に現在の低圧圧力が近づくように、圧縮機(21)の回転数を調整することで圧縮機(21)の運転容量を調整している。このような運転制御を、「目標低圧圧力制御」という。
なお、上述した冷媒回路(11)における高圧側とは、単純暖房運転以外の場合において、冷媒を減圧する弁(26,38)よりも圧縮機(21)の吐出側に接続された配管(13,14a〜14d,32)側を意味する。冷媒回路(11)における低圧側とは、冷媒を減圧する弁(26,38)よりも圧縮機(21)の吸入側に接続された配管(16,33,34)側を意味する。
また、本実施形態に係る冷房蓄冷運転では、蒸発温度Teは、約4℃〜7℃の範囲内に収まるように制御されるが、これは以下の理由による。図6に示す冷房蓄冷運転では、室内熱交換器(27)及び蓄熱用熱交換器(37)が冷媒の蒸発器として機能しており、蓄熱用熱交換器(37)では、冷媒による蓄熱媒体の冷却が、互いに対向流となる状態にて行われる。蓄熱媒体の水和物生成温度が約12℃であることと蓄熱用熱交換器(37)の大きさとを鑑みると、蓄熱用熱交換器(37)の冷媒の蒸発温度Teを約4℃〜7℃の範囲内とすることで、蓄熱用熱交換器(37)では、冷媒と蓄熱媒体との温度差が適切となり、蓄熱媒体は、過冷却状態を安定的に維持したまま冷却される。
上述した目標低圧圧力制御では、冷房負荷が大きいと、冷媒回路(11)における高圧圧力は概ね一定に保たれつつ圧縮機(21)の回転数が増大することから、冷媒の蒸発温度Teは低下する。しかし、冷房負荷の大きさによっては、蒸発温度Teが上述した4℃〜7℃の範囲から外れ、当該範囲の下限値である4℃を下回る場合がある。すると、冷房蓄冷運転時の蓄熱用熱交換器(37)では、特に冷媒側通路(37a)の冷媒出口側付近に対応する蓄熱側通路(37b)の蓄熱媒体入口側付近において、蓄熱側通路(37b)を構成する配管の内壁温度が、冷媒の影響により冷媒の蒸発温度Te(即ち4℃以下)近傍にまで冷却される。このように、蓄熱側通路(37b)の内壁温度が4℃以下に冷却されると、蓄熱媒体は、安定して過冷却状態を維持することができなくなる。すると、蓄熱媒体に何らかのきっかけがわずかでも与えられると、当該蓄熱媒体は、過冷却状態を解消してスラリー状に遷移し、蓄熱側通路(37b)を閉塞させてしまうおそれがある。このようになれば、蓄熱回路(61)では、蓄熱媒体が循環しにくくなるため、蓄冷サイクルが実行され難くなる。
そこで、図7に示すように、本実施形態に係るコントローラ(100)は、冷媒の蒸発温度Teが第1所定温度よりも高い場合、冷房蓄冷運転を実行させるが、冷媒の蒸発温度Teが第1所定温度よりも低い場合、冷房蓄冷運転の実行を禁止する制御を行う。第1所定温度とは、蓄熱媒体の水和物生成温度よりも低い温度であって、水和物生成温度が12℃であれば、第1所定温度は4℃であることができる。即ち、第1所定温度は、蓄熱媒体が安定して過冷却状態を採り得る蒸発温度Teの温度範囲の下限値“4℃”に概ね相当する。言い換えると、冷房蓄冷運転は、圧縮機(21)の目標低圧圧力が蒸発温度Teの当該下限値に相当する圧力を上回る場合は実行されるが、圧縮機(21)の目標低圧圧力が蒸発温度Teの当該下限値に相当する圧力を下回る場合は実行されない。
このように、本実施形態では、冷房負荷が比較的大きいが故に蒸発温度Teが適切な温度範囲の下限値(第1所定温度)を下回った際、冷房蓄冷運転は行われない。従って、蓄熱用熱交換器(37)の蓄熱側通路(37b)を構成する配管の内壁温度が第1所定温度(4℃)付近にまで冷却され、蓄熱側通路(37b)を通過する蓄熱媒体がスラリー状に変化し蓄熱側通路(37b)が閉塞されることを防止できる。
次に、冷房負荷が逆に極端に小さくなる場合を考える。目標低圧圧力制御では、冷房負荷が小さいと、冷媒回路(11)における高圧圧力は概ね一定に保たれつつ圧縮機(21)の回転数が減少する。そのため、冷媒回路(11)の低圧圧力が上昇し、冷媒の蒸発温度Teも上昇する。しかし、冷房負荷の大きさによっては、蒸発温度Teが上述した4℃〜7℃の範囲から外れ、当該範囲の上限値である7℃を上回る場合がある。すると、冷房蓄冷運転時の蓄熱用熱交換器(37)では、冷媒側通路(37a)の冷媒と蓄熱側通路(37b)の蓄熱媒体との温度差は、蒸発温度Teが上述した4℃〜7℃の範囲内である場合に比して小さくなる。そのため、冷媒側通路(37a)の冷媒が蓄熱側通路(37b)の蓄熱媒体から吸熱できる吸熱量は、蒸発温度Teが4℃〜7℃の範囲内である場合よりも減少し、蓄熱用熱交換器(37)では蓄熱媒体を十分に冷却することができなくなる。この場合、蓄熱回路(61)では、非効率な蓄冷サイクルが行われることになる。
そこで、図7に示すように、本実施形態に係るコントローラ(100)は、冷媒の蒸発温度Teが第2所定温度よりも低い場合、冷房蓄冷運転を実行させるが、冷媒の蒸発温度Teが第2所定温度よりも高い場合、冷房蓄冷運転の実行を禁止する制御を行う。第2所定温度とは、蓄熱媒体の水和物生成温度と第1所定温度との間の温度であって、水和物生成温度が12℃、第1所定温度が4℃であれば、第2所定温度は8℃であることができる。即ち、第2所定温度は、蓄熱媒体が安定して過冷却状態を採り得る蒸発温度Teの温度範囲の上限値“7℃”よりも高い“8℃”である。言い換えると、冷房蓄冷運転は、圧縮機(21)の目標低圧圧力が蒸発温度Teの当該上限値に相当する圧力を下回る場合は実行されるが、圧縮機(21)の目標低圧圧力が蒸発温度Teの当該上限値に相当する圧力を上回る場合は実行されない。
従って、冷房蓄冷運転は、蓄熱用熱交換器(37)にて蓄熱媒体が十分に冷却できる場合にのみ行われると言うことができる。
まとめると、本実施形態に係る蓄熱式空気調和機(10)は、冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度Teを変化させる制御を行うが、特に、冷媒の蒸発温度Teと水和物生成温度との関係に基づき、冷房蓄冷運転の実行を許可及び禁止する。蓄熱式空気調和機(10)は、当該蒸発温度Teが水和物生成温度よりも低い温度範囲である“第1所定温度から第2所定温度の範囲”内であれば、冷房蓄冷運転を行う。蓄熱式空気調和機(10)は、当該蒸発温度Teが“第1所定温度から第2所定温度の範囲”外であれば、冷房蓄冷運転を行わない。
<効果>
本実施形態に係る蓄熱式空気調和機(10)では、冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度Teが変化するが、この蒸発温度Teが第1所定温度よりも低い場合は冷房蓄冷運転が行われない。これにより、蓄熱用熱交換器(37)における蓄熱側通路(37b)の内壁温度が第1所定温度付近にまで冷却され、包接水和物に変化した蓄熱媒体によって蓄熱側通路(37b)が閉塞されることはない。従って、蓄熱回路(61)では、過冷却状態を安定的に保ったままの蓄熱媒体が循環することとなる。
また、本実施形態に係る蓄熱式空気調和機(10)は、水和物生成温度と第1所定温度との間の温度である第2所定温度よりも蒸発温度Teが高い場合、冷房蓄冷運転を行わず、第2所定温度よりも蒸発温度Teが低い場合、冷房蓄冷運転を行う。即ち、蒸発温度Teが第1所定温度よりも高く第2所定温度よりも低い場合に、冷房蓄冷運転が行われる。これにより、蓄熱用熱交換器(37)における蓄熱媒体と冷媒との温度差は、蒸発温度Teが第2所定温度より高い場合に比して大きくなる。従って、蓄熱用熱交換器(37)は、蓄熱媒体を十分に冷却することができ、蓄熱回路(61)では、効率的な蓄冷サイクルが行われる。
また、本実施形態では、蓄熱媒体として、臭化テトラnブチルアンモニウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液が採用されている。
また、本実施形態では、蓄熱媒体として、調和濃度(40%)の近傍の濃度を有する媒体が採用されている。
≪その他の実施形態≫
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
水和物生成温度及び第2所定温度よりも低い第1所定温度と蒸発温度Teとを比較した結果、蒸発温度Teが第1所定温度よりも高い場合は冷房蓄冷運転を行い、蒸発温度Teが第1所定温度よりも低い場合に冷房蓄冷運転を行わない制御は、必須である。しかし、蒸発温度Teが第2所定温度よりも高い場合には冷房蓄冷運転を行わない制御は、行われなくても良い。
蓄熱媒体は、冷却により包接水和物を生成する媒体であれば良く、臭化テトラnブチルアンモニウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液以外の蓄熱材であっても良い。
蓄熱媒体の濃度は、40%に限定されずとも良い。
以上説明したように、本発明は、室内の冷房を行いながらも蓄熱タンクに冷熱を蓄冷する蓄熱式空気調和機について有用である。
10 蓄熱式空気調和機
11 冷媒回路
21 圧縮機
22 室外熱交換器
27 室内熱交換器
31 バイパス流路
37 蓄熱用熱交換器
61 蓄熱回路
62 蓄熱タンク
63 循環ポンプ(ポンプ)
100 コントローラ(運転制御部)

Claims (4)

  1. 冷媒と空気とを熱交換させる室外熱交換器(22)及び室内熱交換器(27)を有する冷媒回路(11)と、
    上記冷媒回路(11)に含まれており、上記室内熱交換器(27)に並列に接続されており、冷媒と冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体とを熱交換させる蓄熱用熱交換器(37)を有するバイパス流路(31)と、
    上記蓄熱媒体を貯留する蓄熱タンク(62)と、上記蓄熱用熱交換器(37)と、該蓄熱タンク(62)及び該蓄熱用熱交換器(37)の間で上記蓄熱媒体を循環させるポンプ(63)とを有する蓄熱回路(61)と、
    上記冷媒回路(11)では上記室外熱交換器(22)で凝縮された冷媒が上記室内熱交換器(27)で蒸発するように冷媒が循環する冷房サイクルが行われながら、上記蓄熱回路(61)では上記蓄熱媒体が上記蓄熱用熱交換器(37)にて冷媒により冷却され上記蓄熱タンク(62)に貯留される蓄冷サイクルが行われる冷房蓄冷運転、を実行可能に制御する運転制御部(100)と
    を備え、
    上記運転制御部(100)は、
    冷房負荷に応じて冷媒の蒸発温度を変化させる制御を更に行い、
    上記蓄熱媒体の水和物生成温度より低い第1所定温度、よりも上記蒸発温度が高い場合、上記冷房蓄冷運転を実行させ、
    上記蒸発温度が上記第1所定温度よりも低い場合、上記冷房蓄冷運転の実行を禁止する
    ことを特徴とする蓄熱式空気調和機。
  2. 請求項1において、
    上記運転制御部(100)は、更に、
    上記水和物生成温度と上記第1所定温度との間の温度である第2所定温度よりも上記蒸発温度が高い場合、上記冷房蓄冷運転の実行を禁止する
    ことを特徴とする蓄熱式空気調和機。
  3. 請求項1または請求項2において、
    上記蓄熱媒体は、臭化テトラnブチルアンモニウムを含有する臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液である
    ことを特徴とする蓄熱式空気調和機。
  4. 請求項3において、
    上記蓄熱媒体は、調和濃度の近傍の濃度を有する媒体である
    ことを特徴とする蓄熱式空気調和機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114413364A (zh) * 2022-01-25 2022-04-29 大连理工大学 一种内循环式笼形水合物蓄冷系统及方法

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