JP5867539B2 - 蓄熱タンクユニットならびに空調システム - Google Patents

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Description

本発明は、蓄熱媒体の蓄熱作用を利用して冷熱を蓄える蓄熱タンクユニット、及び、当該冷熱を利用して空調を行う空調システムに関するものである。
空調システムには、特許文献1に示すように、蓄熱回路と冷媒回路とで構成され、蓄熱媒体を冷熱源として利用して室内の空調を行うシステムが知られている。蓄熱回路は、主として、蓄熱媒体を貯留する蓄熱タンク、蓄熱媒体を冷媒等の熱媒体と熱交換する蓄熱用熱交換器、及び循環ポンプ等によって構成される。冷媒回路は、主として、蓄熱用熱交換器及び利用側熱交換器等によって構成される。利用側熱交換器は、蓄熱用熱交換器にて蓄熱媒体から取り出された冷熱を用いて室内空気を冷却する。
上記特許文献1では、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱材(例えば臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液)が蓄熱媒体として利用されている。特許文献1では、蓄熱タンク内に冷熱を蓄えるために、蓄熱用熱交換器で冷却された蓄熱媒体を蓄熱タンクに貯留する蓄冷運転が行われる。
特開2013−083439号公報
蓄冷運転では、蓄熱用熱交換器における蓄熱媒体の通路(蓄熱側通路)が包接水和物によって閉塞され、蓄熱用熱交換器の熱交換能力が低下する虞がある。そのため、蓄冷運転がある程度行われた際には、蓄熱側通路を熱媒体によって加熱する加熱運転を行うことが好ましい。蓄熱側通路が加熱されることで、蓄熱側通路を閉塞している包接水和物が蓄熱側通路から剥離され、蓄熱側通路の閉塞状態が解消されるからである。剥離された包接水和物は蓄熱タンクに流入される。
この加熱運転の際、蓄熱タンク内には、蓄冷運転にて冷却された蓄熱媒体(具体的には、過冷却の溶液と包接水和物とを含む蓄熱媒体)が貯留されている。一方、加熱運転では、蓄熱側通路が温められるため、蓄熱タンクには、蓄冷運転時よりも温度の高い(例えば水和物生成温度以上の)蓄熱媒体が流入される。蓄熱タンク内に流入してきた蓄熱媒体は包接水和物を溶かし、溶けて概ね溶液となった蓄熱媒体は蓄熱タンクの上部へと流動する。
ところが、一般的には、蓄熱タンクにおける蓄熱媒体の流入口は流出口よりも下部に位置し、しかも流入口及び流出口はいずれもタンクの側壁に設けられている。溶液である蓄熱媒体は、タンクの側壁等の流動し易い部分を流動する傾向にある。そのため、加熱運転時、蓄熱タンク内には、流入口と流出口とを最短距離で結ぶ蓄熱媒体の所定流路が形成されてしまう。すると、加熱運転後の蓄冷運転時、蓄熱用熱交換器で冷却された蓄熱媒体は、蓄熱タンク内の蓄熱媒体に対して何ら温度変化を生じさせることなく、流入された状態のままで蓄熱タンク内の所定流路を経て蓄熱タンク外へと流出してしまう。すると、蓄熱タンクでは、必要な量の冷熱が貯留されにくくなる。また、蓄熱タンク外へと流出した蓄熱媒体は、再度蓄熱用熱交換器に流入するため、蓄熱用熱交換器では閉塞が生じ易くなり、熱交換能力が低下する。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄熱タンク内に所定流路が形成されることを抑制することである。
第1の発明は、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体と熱媒体との熱交換を行う蓄熱用熱交換器(29)に接続された蓄熱タンクユニットであって、上記蓄熱用熱交換器(29)にて熱交換された後の上記蓄熱媒体を内部に貯留可能であって、軸方向が上下方向となっている筒状の蓄熱タンク(52)と、入口端が上記蓄熱用熱交換器(29)の流出側に接続され出口端(55a)が上記蓄熱タンク(52)内部に連通されており、上記蓄熱媒体を該蓄熱タンク(52)内部に流入させる流入管(55)と、入口端(56a)が上記蓄熱タンク(52)内部に連通され出口端が上記蓄熱用熱交換器(29)の流入側に接続されており、上記蓄熱タンク(52)内部の上記蓄熱媒体を該蓄熱タンク(52)から流出させる流出管(56)とを備え、上記流入管(55)の出口端(55a)は、上記流出管(56)の入口端(56a)よりも下方に位置し、上記流入管(55)は、横断面視における上記蓄熱タンク(52)内部の概ね中心にて、該蓄熱タンク(52)の軸方向に上記蓄熱媒体を排出する。そして、上記流入管(55)は、上記蓄熱タンク(52)内において、上記蓄熱タンク(52)の軸方向のうち下方向に上記蓄熱媒体を排出することを特徴とする蓄熱タンクユニットである。
この蓄熱タンクユニットでは、蓄熱媒体が蓄熱タンク(52)内部に排出される際、蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)の概ね中心にて蓄熱タンク(52)の軸方向に排出される。すると、蓄熱媒体は、排出された箇所から四方八方に蓄熱タンク(52)内部に散らばるように流動し易くなる。これにより、蓄熱タンク(52)内部に所定流路(pa)が形成されることを抑制することができる。従って、蓄熱タンク(52)では、必要な量の冷熱が貯留される。また、蓄熱用熱交換器(29)では、包接水和物による蓄熱側通路(29b)の閉塞は生じにくくなり、熱交換能力の低下は抑制される
また、蓄熱媒体は、流入管(55)から蓄熱タンク(52)の底部側へと排出されると、底部及びタンク側壁に沿って四方八方に伝わりながら蓄熱タンク(52)の上部側へと流動し易くなる。従って、所定流路(pa)の形成が抑制される
第2の発明は、第1の発明において、上記流出管(56)には、横断面視における上記蓄熱タンク(52)内部の概ね中心にて、上記蓄熱タンク(52)の軸方向のうち上方向から上記蓄熱媒体が吸入されることを特徴とする蓄熱タンクユニットである。
ここでは、流出管(56)には、主として溶液である蓄熱媒体が、蓄熱タンク(52)内部の概ね中心且つ上方向から吸入される。これにより、流入管(55)から排出された蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)内部をより四方八方に蓄熱タンク(52)の上部側へ流動し易くなり、蓄熱タンク(52)内における蓄熱媒体の偏流は、より発生しにくくなる。更に、上方向から蓄熱媒体を吸入しないタイプの流出管(56)に比して、より高い温度の蓄熱媒体を蓄熱タンク(52)から流出させることができる。従って、上方向から蓄熱媒体を吸入しないタイプの流出管(56)が採用された蓄熱タンクユニットに比して、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の閉塞は生じにくく、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換率能力も高まる。
の発明は、第の発明において、上記流出管(56)の入口端(56a)は、上記流出管(56)の管径よりも広がっていることを特徴とする蓄熱タンクユニットである。
これにより、蓄熱媒体における包接水和物が流出管(56)の入口端(56a)の周縁部に付着して堆積したとしても、当該入口端(56a)は閉塞しづらくなる
本発明によれば、蓄熱タンク(52)内部に所定流路(pa)が形成されることを抑制することができる。従って、蓄熱タンク(52)では、必要な量の冷熱が貯留される。また、蓄熱用熱交換器(29)では、包接水和物による蓄熱側通路(29b)の閉塞は生じにくくなり、熱交換能力の低下は抑制される。
また、第1の発明によれば、所定流路(pa)の形成が抑制される
また、第の発明によれば、上方向から蓄熱媒体を吸入しないタイプの流出管(56)が採用された蓄熱タンクユニットに比して、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の閉塞は生じにくく、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換率も高まる。
また、第の発明によれば、包接水和物が流出管(56)の入口端(56a)の周縁部に付着して堆積したとしても、当該入口端(56a)は閉塞しづらくなる
図1は、空調システムの構成図である。 図2は、蓄冷運転時及び加熱運転時の冷媒の流れと蓄熱媒体の流れとを表す図である。 図3は、第1利用冷房運転時の冷媒の流れと蓄熱媒体の流れとを表す図である。 図4は、第2利用冷房運転時の冷媒の流れと蓄熱媒体の流れとを表す図である。 図5では、実施形態1に係る蓄熱タンクユニットの外観を(A)、蓄熱タンクユニットの縦断面を(B)で表している。 図6は、従来の蓄熱タンクユニットの縦断面図である。 図7では、実施形態2に係る蓄熱タンクユニットの外観を(A)、蓄熱タンクユニットの縦断面を(B)で表している。 図8では、実施形態3に係る蓄熱タンクユニットの外観を(A)、蓄熱タンクユニットの縦断面を(B)で表している。 図9は、実施形態4に係る蓄熱タンクユニットの外観を表す図である。 図10では、従来の流出管の入口端近傍を(A)、図9の流出管の入口端近傍を(B)で表している。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
≪実施形態1≫
図1は、空調システム(10)の構成図である。図1に示すように、空調システム(10)は、空気調和装置(20)、蓄熱装置(50)、及びコントローラ(100)(運転制御部に相当)を有する。
蓄熱装置(50)は、本実施形態1に係る蓄熱タンクユニット(51)、補助熱交換器(28)、蓄熱用熱交換器(29)、蓄熱用膨張弁(30)、循環ポンプ(58)、及びその他の各種弁(32,33,34)を有する。蓄熱装置(50)が有する機器によって蓄熱回路(61)が構成されている。
空気調和装置(20)は、室外ユニット(20a)と室内ユニット(20b)とを有する。各ユニット(20a,20b)に含まれる機器と、蓄熱装置(50)が有する一部の機器(具体的には、補助熱交換器(28)、蓄熱用熱交換器(29)、蓄熱用膨張弁(30)及びその他の各種弁(32,33,34))によって冷媒回路(11)が構成されている。
コントローラ(100)は、空調システム(10)の運転を制御するためのものであって、冷媒回路(11)の圧縮機(21)や蓄熱回路(61)の循環ポンプ(58)等の駆動制御を行う。
<冷媒回路の構成>
冷媒回路(11)には冷媒(熱媒体に相当)が充填されており、冷媒が循環することによって冷凍サイクルが行われる。図1に示すように、冷媒回路(11)は、主として、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、室内膨張弁(24)、室内熱交換器(25)、四方切換弁(26)、補助熱交換器(28)、蓄熱用熱交換器(29)及び蓄熱用膨張弁(30)によって構成されている。圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)及び四方切換弁(26)は、室外ユニット(20a)に設けられ、室内膨張弁(24)及び室内熱交換器(25)は、室内ユニット(20b)に設けられている。
圧縮機(21)は冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機(21)は、例えば容量可変式であって、図示しないインバータ回路によって回転数(運転周波数)が可変される。
室外熱交換器(22)は、配管(12)を介して四方切換弁(26)と接続されている。室外熱交換器(22)は、例えばクロスフィンアンドチューブ式であって、室外ユニット(20a)に設けられた室外ファン(22a)によって室外空気が供給されると、当該室外空気と冷媒との熱交換を行う。
室外膨張弁(23)は、配管(13)を介して室外熱交換器(22)と接続され、配管(14a,14b)を介して室内膨張弁(24)と接続されている。室外膨張弁(23)及び室内膨張弁(24)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を可変することで冷媒の圧力を調整する。
室内熱交換器(25)は、配管(15)を介して室内膨張弁(24)と接続され、配管(16)を介して四方切換弁(26)と接続されている。室内熱交換器(25)は、例えばクロスフィンアンドチューブ式であって、室内ユニット(20b)に設けられた室内ファン(25a)によって室内空気が供給されると、当該室内空気と冷媒との熱交換を行う。
四方切換弁(26)は、4つポートを有する。具体的に、四方切換弁(26)の第1ポートは、圧縮機(21)の吐出側に接続され、四方切換弁(26)の第2ポートは、アキュムレータ(27)を介して圧縮機(21)の吸入側に接続されている。四方切換弁(26)の第3ポートは、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に接続され、四方切換弁(26)の第4ポートは、配管(16)を介して室内熱交換器(25)に接続されている。四方切換弁(26)は、空調システム(10)の運転種類に応じて、各ポートの接続状態を第1状態(図1の実線で示す状態)または第2状態(図1の破線で示す状態)に切り換える。
補助熱交換器(28)は、冷媒側通路(28a)と蓄熱側通路(28b)とを有する。冷媒側通路(28a)は、配管(14a)上、つまりは室外膨張弁(23)と蓄熱用膨張弁(30)との間に位置し、内部には冷媒が流れる。蓄熱側通路(28b)は、蓄熱回路(61)に直列に接続され、内部には蓄熱媒体(後述)が流れる。補助熱交換器(28)は、冷媒と蓄熱媒体との熱交換を行う。
蓄熱用熱交換器(29)は、冷媒側通路(29a)(熱媒体側通路に相当)と蓄熱側通路(29b)とを有する。冷媒側通路(29a)は、配管(14b)上において蓄熱用膨張弁(30)と室内膨張弁(24)との間に位置し、内部には冷媒が流れる。蓄熱側通路(29b)は、蓄熱回路(61)に直列に接続され、内部には蓄熱媒体が流れる。蓄熱用熱交換器(29)は、冷媒と蓄熱媒体との熱交換を行う。
蓄熱用膨張弁(30)は、配管(14a)を介して補助熱交換器(28)に接続されると共に、配管(14b)を介して蓄熱用熱交換器(29)と接続されている。蓄熱用膨張弁(30)は、例えば電子膨張弁で構成されており、開度を可変することで冷媒の圧力を調整する。
また、冷媒回路(11)には、3つの開閉弁(31,32,33)及び1つの逆止弁(34)が設けられている。第1開閉弁(31)は、第1バイパス配管(17)上に位置し、第2開閉弁(32)は、第2バイパス配管(18)上に位置している。ここで、第1バイパス配管(17)は、配管(12)と、配管(14a)における室外膨張弁(23)及び補助熱交換器(28)の間とを繋いでいる。第2バイパス配管(18)は、配管(16)と、配管(14b)における蓄熱用熱交換器(29)及び室内膨張弁(24)の間とを繋いでいる。第3開閉弁(33)は、配管(14b)のうち蓄熱用熱交換器(29)と室内膨張弁(24)との間であって、且つ第2バイパス配管(18)と配管(14b)との接続部分よりも室内膨張弁(24)側に位置している。逆止弁(34)は、第3開閉弁(33)に並列に接続されている。逆止弁(34)は、第3開閉弁(33)における室内膨張弁(24)側の冷媒圧力が所定値を超えた場合に、室内膨張弁(24)側から蓄熱用熱交換器(29)側に向けて冷媒が流れるように設けられている。
<蓄熱回路の構成>
蓄熱回路(61)には蓄熱媒体が充填されており、蓄熱媒体を循環させて冷熱を蓄熱するサイクル等が行われる。蓄熱回路(61)は、主として、蓄熱タンクユニット(51)及び循環ポンプ(58)の他に、上述した補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)によって構成されている。
ここで、本実施形態1に係る蓄熱媒体について説明する。蓄熱媒体には、冷却によって包接水和物が生成される蓄熱材、即ち流動性を有する蓄熱材が採用される。蓄熱媒体の具体例としては、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB:Tetra Butyl Ammonium Bromide)水溶液、トリメチロールエタン(TME:Trimethylolethane)水溶液、パラフィン系スラリーなどが挙げられる。例えば、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、安定的に冷却されて当該水溶液の温度が水和物生成温度よりも低くなった過冷却状態でもその水溶液の状態を維持するが、この過冷却状態にて何らかのきっかけが与えられると、過冷却の溶液が包接水和物を含んだ溶液(即ちスラリー)へと遷移する。即ち、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、過冷却状態を解消して、臭化テトラnブチルアンモニウムと水分子とからなる包接水和物(水和物結晶)が生成されて粘性の比較的高いスラリー状となる。ここで、過冷却状態とは、蓄熱媒体が水和物生成溶液以下の温度となっても包接水和物が生成されずに溶液の状態を保っている状態を言う。逆に、スラリー状となっている臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液は、加熱により当該水溶液の温度が水和物生成温度よりも高くなると、包接水和物が融解して流動性の比較的高い液状態となる(溶液)。なお、臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液の水和物生成温度は、0℃よりも高い温度、例えば12℃となっている。
蓄熱タンクユニット(51)は、図1及び図5に示すように、蓄熱タンク(52)、流入管(55)及び流出管(56)を備える。図5に示すように、蓄熱タンク(52)は、軸方向が上下方向となるように配置された中空の円筒状容器であって、上端及び下端は閉塞されている。蓄熱タンク(52)の内部には蓄熱媒体が貯留される。また、蓄熱タンク(52)の側壁のうち該タンク(52)の下部には、第1開口(53)が形成され、蓄熱タンク(52)の側壁うち該タンク(52)の上部には、第2開口(54)が形成されている。
図1及び図5に示すように、流入管(55)は、第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)に取り付けられており、蓄熱タンク(52)内部に蓄熱媒体を流入させる。流入管(55)の蓄熱媒体の入口端は、配管(62)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の一端に接続されている。流入管(55)の蓄熱媒体の出口端(55a)は、蓄熱タンク(52)内部と連通している。
図1及び図5に示すように、流出管(56)は、第2開口(54)を介して蓄熱タンク(52)に取り付けられており、蓄熱タンク(52)内部の蓄熱媒体を該タンク(52)から流出させる。流出管(56)の蓄熱媒体の入口端(56a)は、蓄熱タンク(52)内部と連通している。流出管(56)の蓄熱媒体の出口端は、配管(63)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)の一端に接続されている。
なお、蓄熱タンクユニット(51)の更なる構成については、後述する。
循環ポンプ(58)は、図1の蓄熱回路(61)において、補助熱交換器(28)から蓄熱用熱交換器(29)に向かう方向に蓄熱媒体を循環させる。循環ポンプ(58)は、配管(64)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)の他端に接続され、配管(65)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の他端に接続されている。従って、流入管(55)の入口端は、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の流出側に接続され、流出管(56)の出口端は、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱媒体の流入側に接続されていると言える。循環ポンプ(58)の運転のオン及びオフや蓄熱媒体の搬送量は、コントローラ(100)によって制御される。
以上の構成により、蓄熱回路(61)は、閉回路となっている。
<空調システムの運転動作>
空調システム(10)の運転種類は、冷媒回路(11)における冷媒の循環と並行して蓄熱回路(61)における蓄熱媒体の循環が行われる運転と、冷媒回路(11)における冷媒の循環のみが行われる運転とに大別される。以下では、前者の場合の運転動作について説明する。前者の場合としては、蓄冷運転、利用冷房運転(冷房運転に相当)及び加熱運転が挙げられる。
―蓄冷運転―
図2に示される蓄冷運転では、室外熱交換器(22)及び補助熱交換器(28)にて凝縮及び冷却された冷媒が蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)にて蒸発することで、蓄熱側通路(29b)内の蓄熱媒体が冷却されて蓄熱タンク(52)に貯留される。冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が凝縮器となり蓄熱用熱交換器(29)が蒸発器となる冷凍サイクルを行う。蓄熱回路(61)は、蓄熱タンク(52)から流出した蓄熱媒体が補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)を順に通過して蓄熱タンク(52)に再度流入するように蓄熱媒体を循環させる。
具体的に、四方切換弁(26)は第1状態、第1開閉弁(31)及び第3開閉弁(33)は閉状態、第2開閉弁(32)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)の開度は全開状態、室内膨張弁(24)の開度は全閉状態、蓄熱用膨張弁(30)の開度は所定の開度(蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)の出口における冷媒の過熱度が所定目標値となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)および室外ファン(22a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、室外膨張弁(23)を介して補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)に流入するが、冷媒側通路(28a)を通過する間に蓄熱側通路(28b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。補助熱交換器(28)から流出した冷媒は、蓄熱用膨張弁(30)にて減圧された後、蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第2バイパス配管(18)及び四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に一旦吸入され、液冷媒から分離されたガス冷媒がその後圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(58)が作動する。蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体は、第2開口(54)及び配管(56,63)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)に流入する。この蓄熱側通路(28b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(28a)を流れる冷媒によって加熱される。加熱された蓄熱媒体は、循環ポンプ(58)及び配管(64,65)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。この蓄熱側通路(29b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(29a)を流れる冷媒によって冷却される。冷却された蓄熱媒体は、配管(62,55)及び第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。このようにして、蓄熱タンク(52)には冷熱が蓄えられる。
―利用冷房運転―
図3及び図4に示される利用冷房運転では、上記蓄冷運転にて蓄熱タンク(52)に貯留された蓄熱媒体を冷熱源として用いて、室内熱交換器(25)により室内(空調対象空間に相当)の冷房が行われる。冷媒回路(11)は、蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体から冷熱を得た冷媒が室内熱交換器(25)にて蒸発するように冷媒を循環させる。蓄熱回路(61)は、蓄熱タンク(52)から流出した蓄熱媒体が補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)を順に通過して蓄熱タンク(52)に再度流入するように蓄熱媒体を循環させる。
利用冷房運転には、図3の第1利用冷房運転と図4の第2利用冷房運転とがある。
―第1利用冷房運転―
第1利用冷房運転では、蓄熱タンク(52)に蓄えられた冷熱と冷媒回路(11)の冷凍サイクルによって得られる冷熱とを用いて室内の冷房が行われる。冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が凝縮器、補助熱交換器(28)及び蓄熱用熱交換器(29)が過冷却器(即ち放熱器)、室内熱交換器(25)が蒸発器となる冷凍サイクルを行う。
具体的には、図3に示すように、四方切換弁(26)は第1状態、第1開閉弁(31)及び第2開閉弁(32)は閉状態、第3開閉弁(33)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)及び蓄熱用膨張弁(30)の開度は全開状態、室内膨張弁(24)の開度は所定の開度(室内熱交換器(25)の出口における冷媒の過熱度が所定目標値となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)、室外ファン(22a)及び室内ファン(25a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)を介して室外熱交換器(22)に流入し、室外熱交換器(22)にて室外空気に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、全開である室外膨張弁(23)を介して補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)に流入し、冷媒側通路(28a)を通過する間に蓄熱側通路(28b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。補助熱交換器(28)から流出した冷媒は、全開である蓄熱用膨張弁(30)を介して蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)に流入し、蓄熱側通路(29b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。この冷媒は、室内膨張弁(24)にて減圧された後、室内熱交換器(25)にて室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、配管(16)及び四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に一旦吸入され、液冷媒から分離されたガス冷媒がその後圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(58)が作動する。蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体は、第2開口(54)及び配管(56,63)を介して補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)に流入する。この蓄熱側通路(28b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(28a)を流れる冷媒から吸熱する。吸熱した蓄熱媒体は、循環ポンプ(58)及び配管(64,65)を介して蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。この蓄熱側通路(29b)を通過する間に、蓄熱媒体は、冷媒側通路(29a)を流れる冷媒から更に吸熱する。更に吸熱した蓄熱媒体は、配管(62,55)及び第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。このようにして、蓄熱媒体から冷媒へ冷熱が付与される。
―第2利用冷房運転―
第2利用冷房運転では、蓄熱タンク(52)に蓄えられた冷熱のみを用いて室内の冷房が行われる。冷媒回路(11)は、蓄熱用熱交換器(29)を通過した冷媒が室内熱交換器(25)において蒸発するように冷媒を循環させる。
具体的には、図4に示すように、四方切換弁(26)は第1状態、第2開閉弁(32)は閉状態、第1開閉弁(31)及び第3開閉弁(33)は開状態にそれぞれ設定される。室外膨張弁(23)の開度は全閉状態、蓄熱用膨張弁(30)の開度は全開状態、室内膨張弁(24)の開度は所定の開度(室内熱交換器(25)の出口における冷媒の過熱度が所定目標値となる開度)にそれぞれ設定される。圧縮機(21)及び室内ファン(25a)は作動する。
圧縮機(21)から吐出された冷媒は、配管(12)、第1バイパス配管(17)及び配管(14a)を介して補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)に流入し、蓄熱側通路(28b)を流れる蓄熱媒体に放熱して凝縮する。凝縮された冷媒は、全開状態である蓄熱用膨張弁(30)を通過後、蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)に流入し、冷媒側通路(29a)を通過する間に蓄熱側通路(29b)を流れる蓄熱媒体によって更に冷却される。当該冷媒は、その後第3開閉弁(33)を介して室内膨張弁(24)に流入し、減圧される。減圧された冷媒は、室内熱交換器(25)を通過する間に室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、配管(16)及び四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に一旦吸入され、液冷媒から分離されたガス冷媒がその後圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
蓄熱回路(61)では、循環ポンプ(58)が作動する。蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体は、第2開口(54)、配管(56,63)、補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)、配管(64)、循環ポンプ(58)、配管(65)を、この順に流れた後、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。各蓄熱側通路(28b,29b)を通過する間に、蓄熱媒体は、各冷媒側通路(28a,29a)を通過する冷媒から吸熱する。吸熱した蓄熱媒体は、配管(62,55)及び第1開口(53)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。このようにして、蓄熱媒体から冷媒へ冷熱が付与される。
−加熱運転−
既に述べたように、本実施形態1では、冷却により包接水和物が生成される蓄熱媒体が用いられている。すると、蓄熱用熱交換器(29)にて蓄熱媒体を冷却させる蓄冷運転では、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)には冷却により包接水和物へと遷移した蓄熱媒体が蓄積し、当該蓄熱媒体によって蓄熱側通路(29b)が閉塞される虞がある。蓄熱側通路(29b)が閉塞されると、蓄熱用熱交換器(29)での冷媒と蓄熱媒体との熱交換が妨げられ、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換効率が悪化する虞がある。
そのため、空調システム(10)は、例えば、蓄熱媒体の流量が所定量よりも低下した場合や蓄熱用熱交換器(29)における蓄熱側通路(29b)の入口と出口との温度差が所定温度よりも低下した場合に、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)を加熱することで包接水和物を強制的に当該通路(29b)から剥離させる加熱運転を行う。
具体的に、加熱運転では、蓄熱用膨張弁(30)の開度が蓄冷運転時よりも大きい(例えば全開状態)ことを除き、図2に係る蓄冷運転と同じ動作が行われる。即ち、圧縮機(21)から吐出された冷媒は、室外熱交換器(22)にて凝縮された後、室外膨張弁(23)、補助熱交換器(28)の冷媒側通路(28a)、蓄熱用膨張弁(30)、蓄熱用熱交換器(29)の冷媒側通路(29a)及び第2バイパス配管(18)をこの順に流れる。特に、蓄熱用膨張弁(30)の開度が蓄冷運転時よりも大きいため、補助熱交換器(28)を流出した冷媒は、比較的減圧量が小さい状態で蓄熱用熱交換器(29)に流入される。蓄熱用熱交換器(29)を流れる冷媒の温度は、蓄冷運転にて蓄熱用熱交換器(29)を流れる冷媒よりも温度が高く、具体的には蓄熱媒体の水和物生成温度よりも高くなっている。蓄熱用熱交換器(29)を流れた冷媒は、その後四方切換弁(26)を介してアキュムレータ(27)に吸入される。
蓄熱回路(61)では、蓄熱タンク(52)から流出し補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b)に流入した蓄熱媒体は、冷媒側通路(28a)を流れる冷媒から吸熱した後、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)に流入する。冷媒側通路(29a)を流れる冷媒の温度は蓄熱媒体の水和物生成温度よりも高いため、蓄熱側通路(29b)を閉塞する包接水和物は、蓄熱側通路(29b)を構成する配管の内壁に近い部分から徐々に融解していき、やがて当該配管の内壁から剥離される。剥離された包接水和物は、循環ポンプ(58)による循環動作により、蓄熱タンク(52)の内部に再度流入する。
<本実施形態1に係る蓄熱ユニットの更なる構成>
しかしながら、流入管(55)及び流出管(56)の蓄熱タンク(52)への接続構造によっては、上述した加熱運転の際に蓄熱用熱交換器(29)の熱交換能力が低下する等の問題が生じる虞がある。
例えば、図6に示すように、流入管(55)の出口端(55a)及び流出管(56)の入口端(56a)が、蓄熱タンク(52)の側壁付近にて水平方向に開口するよう位置しており、且つ流出管(56)の入口端(56a)が流入管(55)の出口端(55a)よりも上方に位置する従来例を考える。加熱運転時には、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)から剥離した包接水和物を含む蓄熱媒体が、水和物生成温度よりも高い状態で流入管(55)の出口端(55a)を介して蓄熱タンク(52)内に流入する。この蓄熱媒体は、既に蓄熱タンク(52)内に貯留されている蓄熱媒体のうちの包接水和物の層(図6のドット部分)を部分的に融解させながら流出管(56)の入口端(56a)に向かって流動する。ところが、従来例では、流入してきた蓄熱媒体は、流動し易い蓄熱タンク(52)の側壁に沿って流出管(56)の入口端(56a)へと流動するため、所定流路(pa)が形成されてしまう。図6では、所定流路(pa)が、蓄熱タンク(52)の側壁に沿って延びており且つ流入管(55)の出口端(55a)から流出管(56)の入口端(56a)までを最短距離にて結ぶようにして形成された流路である場合を一例として示している。
加熱運転時に上記所定流路(pa)が形成されると、加熱運転後に蓄冷運転が行われた際、蓄熱用熱交換器(29)で冷却され流入管(55)の出口端(55a)から蓄熱タンク(52)内に流入した蓄熱媒体は、所定流路(pa)を通過して流出管(56)の入口端(56a)から蓄熱タンク(52)外部へと流出してしまう。すると、蓄冷運転時、蓄熱タンク(52)内では、新たに流入してきた蓄熱媒体が予め貯留されている蓄熱媒体のうちの過冷却の溶液と接触することで過冷却の溶液が包接水和物へと遷移する現象は生じ難く(即ち、過冷却解消が生じにくい)、よって蓄熱タンク(52)内では蓄熱媒体の温度変化が生じない状態が維持される。故に、蓄熱タンク(52)には必要な量の冷熱が蓄熱されない虞がある。また、この状態では、蓄熱タンク(52)から流出した蓄熱媒体は、蓄熱回路(61)を循環して蓄熱用熱交換器(29)に再度流入される。再度流入してきた蓄熱媒体は、過冷却の溶液と包接水和物とを含むため、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)は、再度流入してきた蓄熱媒体の包接水和物によって閉塞し易くなり、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換能力が低下する虞がある。
そこで、本実施形態1では、蓄熱タンクユニット(51)の構成として、図5(A)(B)に示す構成が採用されている。図5(A)(B)に示すように、流入管(55)の出口端(55a)は、流出管(56)の入口端(56a)よりも下方に位置している。流入管(55)の出口端(55a)は、蓄熱タンク(52)内部に位置しており、流出管(56)の入口端(56a)は、蓄熱タンク(52)の側壁付近にて水平方向に開口するようにして位置している。
特に、流入管(55)は、横断面視における蓄熱タンク(52)内部の中心にて、蓄熱タンク(52)の軸方向のうち下方向に蓄熱媒体を排出するようになっている。即ち、流入管(55)は、第1開口(53)から水平方向に蓄熱タンク(52)内部に差し込まれ、且つ、流入管(55)の出口端(55a)が円筒状の蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて蓄熱タンク(52)の底部に向かって開口するように、途中で曲げられている。
これにより、加熱運転時、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)から流出してきた蓄熱媒体は、水和物生成温度よりも高い温度の状態にて、流入管(55)を介して蓄熱タンク(52)内に流入される。この際、当該蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて下向きに流入管(55)から排出されるため、蓄熱タンク(52)の底部に衝突する。一方で、加熱運転時、蓄熱タンク(52)内部には、加熱運転の前に行われていた蓄冷運転によって、過冷却の溶液と包接水和物とを含む蓄熱媒体が貯留されている。すると、蓄熱タンク(52)の底部に衝突した流入直後の蓄熱媒体は、図5(B)の矢印に示すように、蓄熱タンク(52)の底部及び側壁に沿って四方八方に伝わりながら蓄熱タンク(52)の上部側に流動する。また、流入直後の蓄熱媒体は、水和物生成温度よりも高い温度を有するため、蓄熱タンク(52)内を流動しつつも、既に蓄熱タンク(52)内に貯留されている蓄熱媒体のうち包接水和物に接触しながら当該包接水和物を融解させていく。溶けて少量の包接水和物を含んだ溶液の蓄熱媒体(即ち、包接水和物の密度が比較的低くなった蓄熱媒体)は、包接水和物の層の上層に溜まり、流出管(56)の入口端(56a)から蓄熱タンク(52)の外部(具体的には、補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b))へと排出されていく。
即ち、本実施形態1では、加熱運転時、蓄熱タンク(52)内に流入してきた蓄熱媒体は、図5(B)の矢印に示すように流動することで、図6に示すような所定流路(pa)の形成を妨げる。それ故、加熱運転後の蓄冷運転の際、蓄熱用熱交換器(29)で冷却された蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)内部に流入すると、当該タンク(52)内の過冷却の溶液を包接水和物へと遷移させていく。これにより、蓄冷運転時、安定した包接水和物の生成動作が行われ、必要な量の冷熱が蓄冷されることとなる。また、蓄熱用熱交換器(29)で冷却された蓄熱媒体の中に包接水和物が含まれていても、その包接水和物が再度蓄熱用熱交換器(29)に流入される虞はなく、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の閉塞は防がれる。従って、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換能力は低下することなく維持された状態となる。
なお、加熱運転時に蓄熱タンク(52)内に流入される蓄熱媒体の流速は、十分に低いことが好ましい。一例として、蓄熱タンク(52)の容積が約250リットル、蓄熱タンク(52)の高さが約2mとした場合、蓄熱媒体の流速は、流入管(55)の管径を調整することにより、約“0.3m/sec”と設定される。
これは、加熱運転時、蓄熱タンク(52)のサイズに対して蓄熱媒体の流速が速すぎると、流入管(55)の出口端(55a)と蓄熱タンク(52)の底面との距離が設定距離から僅かにずれただけで、蓄熱タンク(52)内の蓄熱媒体が図5(B)とはならずに偏流してしまい、かえって所定流路(pa)が形成される虞が考えられるためである。従って、加熱運転時、流入管(55)の出口端(55a)と蓄熱タンク(52)内の底面との距離の誤差に関係なく、図5(B)に示すように蓄熱媒体が流動するようにするべく、蓄熱媒体の流速は、蓄熱タンク(52)の容積や高さ等から十分低い値に適宜設定されることが好ましい。
<効果>
本実施形態1に係る蓄熱タンクユニット(51)では、蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)内の概ね中心にて、蓄熱タンク(52)の軸方向、より具体的には下方向に排出される。すると、当該蓄熱媒体は、図5(B)に示すように、蓄熱タンク(52)の底部及び側壁に沿って四方八方に伝わりながら蓄熱タンク(52)の上部側に流動する。これにより、図6に示すような所定流路(pa)が蓄熱タンク(52)内部に形成されることを抑制することができる。従って、蓄熱タンク(52)では、必要な量の冷熱が貯留される。また、蓄熱用熱交換器(29)では、包接水和物による蓄熱側通路(29b)の閉塞は生じにくくなり、熱交換能力の低下は抑制される。
また、流出管(56)の入口端(56a)は、蓄熱タンク(52)の側壁付近に位置しており、流出管(56)には概ね水平方向に蓄熱媒体が吸入されるようになっている。そのため、主として溶液である蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)内の上部において、流出管(56)に水平方向から吸入されると、蓄熱タンク(52)の外部に流出する。
また、本実施形態1の空調システム(10)では、蓄熱タンクユニット(51)として図5に係る構成が採用されているため、たとえ加熱運転を行ったとしても、図6に示した所定流路(pa)は形成されにくい。従って、空調システム(10)は、必要な量の冷熱を蓄熱タンク(52)に貯留することができ、貯留された冷熱を利用して室内の冷房を行うことができる。
≪実施形態2≫
本実施形態2では、蓄熱タンクユニット(51)の構成が上記実施形態1とは異なっている。なお、本実施形態2に係る空調システム(10)のその他の構成は、上記実施形態1と同様である。
本実施形態2では、図7(A)(B)に示すように、流入管(55)の出口端(55a)は、流出管(56)の入口端(56a)よりも下方に位置している。流入管(55)の出口端(55a)は、蓄熱タンク(52)内部に位置しており、流出管(56)の入口端(56a)は、蓄熱タンク(52)の側壁付近にて水平方向に開口するようにして位置している。
特に、流入管(55)は、横断面視における蓄熱タンク(52)内部の中心にて、蓄熱タンク(52)の軸方向のうち上方向に蓄熱媒体を排出するようになっている。即ち、流入管(55)は、第1開口(53)から水平方向に蓄熱タンク(52)内部に差し込まれ、且つ、出口端(55a)が上記実施形態1とは逆に蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて蓄熱タンク(52)の上面部に向かって開口するように、途中で曲げられている。
これにより、加熱運転時、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)から流入管(55)へと、水和物生成温度よりも高い温度の蓄熱媒体が流入される。当該蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて上向きに流入管(55)から排出されるため、流入管(55)の出口端(55a)の上方に位置する蓄熱タンク(52)内の包接水和物の層に衝突する。すると、衝突した蓄熱媒体は、図7(B)の矢印に示すように、流入管(55)に沿いながら蓄熱タンク(52)の底部に向けて流動し、その後蓄熱タンク(52)の底部及び側壁に沿って四方八方に伝わりながら蓄熱タンク(52)の上部側に流動する。また、流入直後の蓄熱媒体は、水和物生成温度よりも高い温度を有するため、蓄熱タンク(52)内を流動しつつも、蓄熱タンク(52)内の包接水和物に接触しながら当該包接水和物を融解させていく。溶けて少量の包接水和物を含んだ溶液の蓄熱媒体(即ち、包接水和物の密度が比較的低くなった蓄熱媒体)は、包接水和物の層の上層に溜まり、流出管(56)の入口端(56a)から蓄熱タンク(52)の外部(具体的には、補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b))へと排出されていく。
このような蓄熱タンクユニット(51)は、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
なお、本実施形態2の場合も、上記実施形態1と同様、蓄熱媒体の流速は十分に低いことが好ましい。加熱運転時、蓄熱媒体の流速が速すぎると、蓄熱タンク(52)内に流入された蓄熱媒体は、流入管(55)の出口端(55a)の直上に位置する包接水和物を溶かすだけにとどまらず、包接水和物の層を蓄熱タンク(52)の上面側に向けて貫通させてしまい、かえって所定流路(pa)が形成する虞があるためである。
≪実施形態3≫
本実施形態3では、蓄熱タンクユニット(51)の構成が上記実施形態1,2とは異なっている。なお、本実施形態3に係る空調システム(10)のその他の構成は、上記実施形態1,2と同様である。
本実施形態3では、図8(A)(B)に示すように、流入管(55)の出口端(55a)は、流出管(56)の入口端(56a)よりも下方に位置している。
特に、流入管(55)の出口端(55a)及び流出管(56)の入口端(56a)は、共に蓄熱タンク(52)内部に位置している。流入管(55)は、横断面視における蓄熱タンク(52)内部の中心にて、蓄熱タンク(52)の軸方向のうち下方向に蓄熱媒体を排出するようになっている。即ち、流入管(55)は、第1開口(53)から水平方向に蓄熱タンク(52)内部に差し込まれ、且つ、出口端(55a)が蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて蓄熱タンク(52)の底部に向かって開口するように、途中で曲げられている。
更に、流出管(56)は、横断面視における蓄熱タンク(52)内部の中心にて、蓄熱タンク(52)の軸方向のうち上方向から蓄熱媒体を吸入するようになっている。即ち、流出管(56)は、第2開口(54)から水平方向に蓄熱タンク(52)内部に差し込まれ、且つ、入口端(56a)が蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて蓄熱タンク(52)の上面部に向かって開口するように、途中で曲げられている。
これにより、加熱運転時、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)から流入管(55)へと、水和物生成温度よりも高い温度の蓄熱媒体が流入される。当該蓄熱媒体は、蓄熱タンク(52)の中心軸(O)上にて下向きに流入管(55)から排出され、蓄熱タンク(52)の底部に衝突する。蓄熱タンク(52)の底部に衝突した蓄熱媒体は、図8(B)の矢印に示すように、蓄熱タンク(52)の底部及び側壁に沿って四方八方に伝わりながら蓄熱タンク(52)の上部側に流動する。また、流入直後の蓄熱媒体は、水和物生成温度よりも高い温度を有するため、蓄熱タンク(52)内を流動しつつも、既に蓄熱タンク(52)内に貯留されている蓄熱媒体のうち包接水和物に接触しながら当該包接水和物を融解させていく。溶けて少量の包接水和物を含んだ溶液の蓄熱媒体(即ち、包接水和物の密度が比較的低くなった蓄熱媒体)は、包接水和物の層の上層に溜まる。上層に溜まった蓄熱媒体は、図8(B)に示すように、流出管(56)の入口端(56a)から蓄熱タンク(52)の外部(具体的には、補助熱交換器(28)の蓄熱側通路(28b))へと排出されていく。
このような蓄熱タンクユニット(51)は、上記実施形態1,2と同様の効果を奏することができる。
特に、本実施形態3では、流出管(56)の入口端(56a)が蓄熱タンク(52)の中心にて上向きとなるように設けられているため、加熱運転時、蓄熱タンク(52)内では蓄熱媒体の偏流が上記実施形態1,2よりも発生しにくいと言える。従って、本実施形態3では、上記実施形態1,2よりも所定流路(pa)が形成されにくい。また、流出管(56)の入口端(56a)が上向きであるため、流出管(56)は、上層に溜まった蓄熱媒体の中でもより高い温度の蓄熱媒体を蓄熱タンク(52)から流出させることができる。従って、例えば加熱運転時、蓄熱用熱交換器(29)の熱交換率能力も上記実施形態1,2に比して高まり、蓄熱用熱交換器(29)の蓄熱側通路(29b)の閉塞も、上記実施形態1,2に比してより生じにくくなる。
なお、本実施形態3の場合も、上記実施形態1,2と同様、蓄熱媒体の流速は十分に低いことが好ましい。
≪実施形態4≫
図9に示すように、本実施形態4では、流入管(55)の出口端(55a)及び流出管(56)の入口端(56a)の向きが上記実施形態3と同様ではあるが、本実施形態4に係る流出管(56)の入口端(56a)は、流出管(56)の管径に比して広がっている。
上述したように、包接水和物の層の上層に溜まっている蓄熱媒体は、概ね溶液の熱媒体ではあるが、少量ではあるものの包接水和物を含んでいる。包接水和物の結晶粒径が大きい程、図10(A)に示すように、包接水和物(sl)は流出管(56)の入口端(56a)の周縁部に付着し易くなる。包接水和物(sl)が入口端(56a)の周縁部に付着すると、当該周縁部には、包接水和物(sl)が徐々に堆積していき、入口端(56a)の大きさ次第では、当該入口端(56a)が閉塞する虞がある。
これに対し、本実施形態4では、流出管(56)の入口端(56a)が流出管(56)の管径よりも広がっている。それ故、図10(B)に示すように、包接水和物(sl)が入口端(56a)の周縁部に付着して堆積したとしても、当該入口端(56a)は閉塞しづらくなる。
ここで、流出管(56)の入口端(56a)を管径からどの程度広げるかについては、例えば包接水和物(sl)の標準的な結晶粒径等によって適宜決定される。具体的な例示としては、流出管(56)の管径が約16mmである場合、入口端(56a)の直径は、管径の約2倍(約32mm)とすることができる。
なお、実施形態4では、流入管(55)の出口端(55a)及び流出管(56)の入口端(56a)の向きは、上記実施形態3と同様であるため、更に上記実施形態3と同様の効果を奏することができる。
≪その他の実施形態≫
上記実施形態2に示すように、流入管(55)の出口端(55a)が上向きであることに加え、更に実施形態3に示すように、流出管(56)の入口端(56a)が蓄熱タンク(52)の中心において当該蓄熱タンク(52)の上面部に向くようにして曲げられていても良い。更に、上記実施形態4と同様、流出管(56)の入口端(56a)が、流出管(56)の管径に比して広がっていてもよい。
上記実施形態1〜4において、流入管(55)のみ/または流入管(55)及び流出管(56)の両方は、蓄熱タンク(52)内部にて必ずしも軸方向に曲げられていなくともよい。即ち、流入管(55)の出口端(55a)のみ/または流入管(55)の出口端(55a)及び流出管(56)の入口端(56a)が、蓄熱タンク(52)の中心にて図5,7〜9に示した方向に向くように、第1開口(53)及び第2開口(54)の蓄熱タンク(52)への形成位置や流入管(55)及び流出管(56)の曲げ方向等が適宜調整されていてもよい。
上記実施形態1〜4において、流入管(55)及び流出管(56)それぞれの管径は、同一であってもよいし、異なっていても良い。
蓄熱タンク(52)の形状は、円筒状以外の形状であってもよく、例えば角形筒状であることができる。
以上説明したように、本発明は、冷却により包接水和物を生成する蓄熱媒体を用いて冷熱を蓄熱する蓄熱タンクユニット、及び、当該ユニットに蓄熱された冷熱を利用して空気調和を行う空調システム、として有用である。
10 空調システム
29 蓄熱用熱交換器
29a 冷媒側通路(熱媒体側通路)
29b 蓄熱側通路
51 蓄熱タンクユニット
52 蓄熱タンク
55 流入管
55a 出口端
56 流出管
56a 入口端
100 コントローラ(運転制御部)

Claims (3)

  1. 冷却によって包接水和物が生成される蓄熱媒体と熱媒体との熱交換を行う蓄熱用熱交換器(29)に接続された蓄熱タンクユニットであって、
    上記蓄熱用熱交換器(29)にて熱交換された後の上記蓄熱媒体を内部に貯留可能であって、軸方向が上下方向となっている筒状の蓄熱タンク(52)と、
    入口端が上記蓄熱用熱交換器(29)の流出側に接続され出口端(55a)が上記蓄熱タンク(52)内部に連通されており、上記蓄熱媒体を該蓄熱タンク(52)内部に流入させる流入管(55)と、
    入口端(56a)が上記蓄熱タンク(52)内部に連通され出口端が上記蓄熱用熱交換器(29)の流入側に接続されており、上記蓄熱タンク(52)内部の上記蓄熱媒体を該蓄熱タンク(52)から流出させる流出管(56)と
    を備え、
    上記流入管(55)の出口端(55a)は、上記流出管(56)の入口端(56a)よりも下方に位置し、
    上記流入管(55)は、横断面視における上記蓄熱タンク(52)内部の概ね中心にて、該蓄熱タンク(52)の軸方向に上記蓄熱媒体を排出し、
    上記流入管(55)は、上記蓄熱タンク(52)内において、上記蓄熱タンク(52)の軸方向のうち下方向に上記蓄熱媒体を排出する
    ことを特徴とする蓄熱タンクユニット。
  2. 請求項において、
    上記流出管(56)には、横断面視における上記蓄熱タンク(52)内部の概ね中心にて、上記蓄熱タンク(52)の軸方向のうち上方向から上記蓄熱媒体が吸入される
    ことを特徴とする蓄熱タンクユニット。
  3. 請求項において、
    上記流出管(56)の入口端(56a)は、上記流出管(56)の管径よりも広がっている
    ことを特徴とする蓄熱タンクユニット。
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