JP2016125112A - すべり軸受用銅合金およびすべり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】Mn−Si初晶が焼付きを生じさせることを防止できるすべり軸受用銅合金およびすべり軸受を提供する。【解決手段】本発明のすべり軸受用銅合金およびすべり軸受は、25wt%以上かつ48wt%以下のZnと、1wt%以上かつ7wt%以下のMnと、0.5wt%以上かつ3wt%以下のSiと、1wt%以上かつ10wt%以下のBiと、を含有し、残部が不可避不純物とCuとからなるすべり軸受用銅合金であって、相手材との摺動面において、少なくともMn−Si初晶とBi粒子とが存在し、Bi粒子のうち、円形度が0.7以上のBi粒子の個数割合は70%以上である、ことを特徴とする。【選択図】図2
Description
本発明は、黄銅系のすべり軸受用銅合金およびすべり軸受に関する。
Mn−Si初晶が摺動面に晶出している軸受が知られている(特許文献1、参照)。特許文献1において、Mn−Si初晶の粒子が相手軸の摺動方向に伸長して分散している。
しかしながら、摩耗が進行すると、Mn−Si初晶が破壊されて軸受から脱落し、脱落したMn−Si初晶が軸受の摺動面を傷つけるという問題があった。さらに、摺動面に形成された傷が原因となって焼き付きが生じるという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、Mn−Si初晶が焼付きを生じさせることを防止できる軸受用銅合金およびすべり軸受を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、Mn−Si初晶が焼付きを生じさせることを防止できる軸受用銅合金およびすべり軸受を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明のすべり軸受用銅合金およびすべり軸受は、25wt%以上かつ48wt%以下のZnと、1wt%以上かつ7wt%以下のMnと、0.5wt%以上かつ3wt%以下のSiと、1wt%以上かつ10wt%以下のBiと、を含有し、残部が不可避不純物とCuとからなるすべり軸受用銅合金およびすべり軸受であって、相手材との摺動面において、少なくともMn−Si初晶とBi粒子とが存在し、Bi粒子のうち、円形度が0.7以上のBi粒子の個数割合は70%以上である。
前記のように構成したすべり軸受用銅合金において、Bi粒子から供給されたBiが摺動面を覆うことにより耐焼付性を向上させることができる。ここで、相手材との摺動面において、Bi粒子のうち、円形度が0.7以上のBi粒子の個数割合は70%以上である。これにより、破壊されたMn−Si初晶が一旦は摺動面から脱落しても、円形度が大きいBi粒子にてMn−Si初晶を埋収できる。すなわち、軟質のBi粒子が摺動面に分散することにより、摺動面上を移動するMn−Si初晶をBi粒子にて捕捉し埋収することができる。特に、円形度が大きいBi粒子の個数割合が大きいため、破壊されたMn−Si初晶を確実に埋収できる。例えば、Bi粒子が細長の形状である場合、Bi粒子の短手方向において、破壊されたMn−Si初晶がBi粒子の外縁(Bi粒子よりも硬質のマトリクス)に干渉して、破壊されたMn−Si初晶をBi粒子に埋収されないこととなる。さらに、Bi粒子の円形度が大きいと、Bi粒子の外縁が滑らかな曲面を構成し、当該曲面に沿って破壊されたMn−Si初晶が滑って移動することにより、Bi粒子における深い位置に、破壊されたMn−Si初晶をスムーズに誘導できる。従って、破壊されたMn−Si初晶が摺動面を傷つけることを防止し、Mn−Si初晶が焼付きを生じさせることを防止できる。
ここで、25.0wt%以上のZnを含有することにより、Cu−Znマトリクスの強度を強化することができるとともに、潤滑油中のS成分による硫化腐食を抑制することができる。Mn−Si初晶が疎となる領域では、Mn−Si初晶における摩擦熱によってS成分による硫化腐食が生じやすくなるが、Mn−Si初晶が疎となる領域をBiで覆うことができるためS成分による硫化腐食を抑制できる。なお、35.0wt%以上のZnを含有することにより、より優れた耐摩耗性を得ることができる大きさまでMn−Si初晶の粒子を成長させることができる。また、Znの含有量を48.0wt%以下に抑えることにより、Cu−Znマトリクス中にγ相が多量に析出することを防止でき、Cu−Znマトリクスが脆くなることを防止できる。
また、1.0wt%以上のMnおよび0.5wt%以上のSiを含有することにより、耐摩耗性を向上させるのに十分なMn−Si初晶の粒子を析出させることができる。一方、Mnの含有量を7.0wt%以下に抑え、Siの含有量を3.0wt%以下に抑えることにより、過剰なMn−Si初晶が析出することによって靭性が低下することを防止できる。なお、本発明の銅合金は、不可避不純物を含有し得る。
さらに、摺動面において、Mn−Si初晶の平均円相当径よりも円相当径が大きいBi粒子と、Mn−Si初晶の平均円相当径よりも円相当径が小さいBi粒子と、が存在するように構成されてもよい。Bi粒子から供給されたBiが摺動面を覆うことにより耐焼付性を向上させることができる。ここで、Mn−Si初晶の平均円相当径よりも円相当径が小さいBi粒子が摺動面に分散することにより、摺動面におけるBiの疎密を抑制し、摺動面において均一にBiを供給できる。従って、耐焼付性を向上させることができる。さらに、Mn−Si初晶の平均円相当径よりも円相当径が大きいBi粒子が摺動面に分散することにより、破壊されたMn−Si初晶が一旦は摺動面から脱落しても、当該Mn−Si初晶よりも円相当径が大きいBiにおいてMn−Si初晶を埋収できる。従って、破壊されたMn−Si初晶が摺動面を傷つけることを防止し、Mn−Si初晶が焼付きを生じさせることを防止できる。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ラジアル軸受の構成:
(2)ラジアル軸受の製造方法:
(3)実験結果:
(4)他の実施形態:
(1)ラジアル軸受の構成:
(2)ラジアル軸受の製造方法:
(3)実験結果:
(4)他の実施形態:
(1)ラジアル軸受の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかるすべり軸受用銅合金によって形成されたすべり軸受としてのラジアル軸受1(フローティングブシュ)の斜視図である。ラジアル軸受1は、例えば内燃機関用のターボ式過給機において、タービン翼とコンプレッサ翼とが軸方向の両端に備えられた相手軸2(一点鎖線)に作用する荷重をラジアル方向に支持する。ラジアル軸受1は円筒状に形成されており、軸方向に直交する断面が円環形状となっている。これにより、ラジアル軸受1の内側にて相手軸2を軸受け可能となる。本実施形態のラジアル軸受1の内径は7.5mmであり、外径は13.6mmである。ラジアル軸受1と相手軸2との間に潤滑油としてのエンジンオイルの油膜が形成される。相手軸2が回転することにより、ラジアル軸受1の内側の表面である摺動面1a上において相手軸2が摺動する。なお、図示しないが相手軸2に作用する荷重をスラスト方向に支持するスラストベアリングもラジアル軸受1と同一の銅合金によって形成してもよい。また、ラジアル軸受1は、半割形状の軸受部品を円筒状に2個組み合わせることによって形成されてもよい。
図1は、本発明の一実施形態にかかるすべり軸受用銅合金によって形成されたすべり軸受としてのラジアル軸受1(フローティングブシュ)の斜視図である。ラジアル軸受1は、例えば内燃機関用のターボ式過給機において、タービン翼とコンプレッサ翼とが軸方向の両端に備えられた相手軸2(一点鎖線)に作用する荷重をラジアル方向に支持する。ラジアル軸受1は円筒状に形成されており、軸方向に直交する断面が円環形状となっている。これにより、ラジアル軸受1の内側にて相手軸2を軸受け可能となる。本実施形態のラジアル軸受1の内径は7.5mmであり、外径は13.6mmである。ラジアル軸受1と相手軸2との間に潤滑油としてのエンジンオイルの油膜が形成される。相手軸2が回転することにより、ラジアル軸受1の内側の表面である摺動面1a上において相手軸2が摺動する。なお、図示しないが相手軸2に作用する荷重をスラスト方向に支持するスラストベアリングもラジアル軸受1と同一の銅合金によって形成してもよい。また、ラジアル軸受1は、半割形状の軸受部品を円筒状に2個組み合わせることによって形成されてもよい。
以下、ラジアル軸受1を構成するすべり軸受用銅合金について説明する。すべり軸受用銅合金は、40.0wt%のZnを含有し、4.0wt%のMnを含有し、1.3wt%のSiを含有し、3.4wt%のBiを含有し、残部がCuと不可避不純物とからなる。不可避不純物はMg,Ni,Ti,B,Pb,Cr等であり、精錬もしくはスクラップにおいて混入する不純物である。不可避不純物の含有量は、全体で1.0wt%以下である。すべり軸受用銅合金における各元素の質量は、ICP発光分光分析装置(島津製作所製ICPS−8100)によって計測した。
図2Aは、ラジアル軸受1の摺動面の写真である。ラジアル軸受1の摺動面の写真は、電子顕微鏡(日本電子製 JSM6610A)で200倍の倍率で撮影した写真である。図2に示すように、ラジアル軸受1の摺動面においては、Cu−Znマトリクス5(灰色)中に、Mn−Si初晶4(黒色)とBi粒子3とが分散している。Mn−Si初晶4は棒状、円形状または環状の断面形状を有しており、Bi粒子3はほぼ円形状の断面形状を有している。
図2Aに示す摺動面の写真の画像(以下、解析画像)を画像解析装置(ニレコ社製 LUZEX_AP)に入力し、Mn−Si初晶4とBi粒子3の各粒子の像について円相当径(計測パラメータ:HEYWOOD)を計測した。そして、Mn−Si初晶4の各粒子の像の円相当径の算術平均値を、摺動面におけるMn−Si初晶4の平均円相当径として算出したところ4.3μmであった。同様に、Bi粒子3の像の円相当径の算術平均値を、摺動面におけるBi粒子3の平均円相当径として算出したところ5.4μmであった。Bi粒子3には、Mn−Si初晶4の平均円相当径よりも円相当径が大きいもの(大Bi粒子)と、Mn−Si初晶4の平均円相当径よりも円相当径が小さいもの(小Bi粒子)が存在する。Bi粒子3の像うち、Mn−Si初晶4の平均円相当径未満の円相当径のBi粒子3の像の円相当径の算術平均値を、小Bi粒子の平均円相当径として算出したところ2.4μmであった。Bi粒子3の像うち、Mn−Si初晶4の平均円相当径以上の円相当径のBi粒子3の像の円相当径の算術平均値を、大Bi粒子の平均円相当径として算出したところ11.9μmであった。
図3Aは、摺動面におけるMn−Si初晶4とBi粒子3の円相当径のヒストグラムである。同図の横軸は円相当径の階級(0.2μm刻み)を示し、縦軸は各階級における度数(摺動面2.7×105μm2におけるMn−Si初晶4のBi粒子3の個数)を示す。図3Aに示すように、Mn−Si初晶4の円相当径の分布の方がBi粒子3の円相当径の分布の方よりも分布が偏っている。Mn−Si初晶4の円相当径の標準偏差は4.1μmであり、Bi粒子3の円相当径の標準偏差は8.5μmである。Bi粒子3の円相当径の方がMn−Si初晶4の円相当径よりも広く分布している。1.8μm以下の円相当径の範囲においてMn−Si初晶4の方がBi粒子3よりも個数が大きいが、1.8μm未満の円相当径の範囲においてMn−Si初晶4の方がBi粒子3よりも個数が大きいが、1.8μm以上の範囲において概ねBi粒子3の方がMn−Si初晶4よりも個数が大きくなっている。
図3Bは、摺動面におけるBi粒子3の個数割合を円相当径ごと累積した累積比率を示すグラフである。図3Bの横軸は円相当径の階級(0.2μm刻み)を示し、縦軸は累積比率を示す。累積比率とは、円相当径の階級に属するBi粒子3の数を、Bi粒子3の数の全個数で除算した値を、円相当径が小さい方から順に累積した比率である。図3Bに示すように、Mn−Si初晶4の平均円相当径(4.3μm(破線))における累積比率が78.6%となっており、Bi粒子3の全個数のうちの78.6%がMn−Si初晶4よりも円相当径が小さいことを意味する。
さらに、上述した画像解析装置によってBi粒子3の各像について円形度を計測した。そして、すべてのBi粒子3の像のうち、円形度が0.7以上のBi粒子3の個数割合は97%であった。円形度とは、Bi粒子3の像の面積と等しい面積の円の円周の長さ(=円相当径×π)を、Bi粒子3の像の輪郭の長さで除算した値であり。円形度は、Bi粒子3の像が円形である場合に1となり、Bi粒子3の像の形状が円形から乖離するほど小さい値となる。
図3Cは、摺動面におけるBi粒子3の円形度のヒストグラムである。同図の横軸は円形度の階級(0.1刻み)を示し、縦軸は各階級における度数(Bi粒子3の個数)を全Bi粒子3の個数で除算した比率を示す。図3Bに示すように、円形度が0.5未満のBi粒子3の個数は極めて少なく、0.5以上において円形度が増加するにつれてBi粒子3の個数が増加する傾きが大きくなることが分かった。
(1−2)耐焼付性の評価:
ラジアル軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の耐焼付性を評価するために焼付試験を行った。図4Aは、焼付試験に使用したピンオンディスク試験機を説明する模式図である。焼付試験は、回転する円盤状の相手材Aを厚み方向に挟み込むように一対の試験片Tを配置し、油圧シリンダーWによって試験片T間に静荷重を作用させることにより行った。相手材Aと試験片Tとの接触部における両者の相対速度が15m/secとなるように相手材Aの回転速度を調整した。また、相手材Aに対して潤滑油(SAE30 CD級)を保持する給油パッドPを接触させることにより、相手材Aと試験片Tとの接触部に給油を行った。相手材Aは、焼き入れ処理を行ったSCM415で形成した。一対の試験片Tは相手材Aと平行な面内にて回転可能に保持された梁部Eの先端に取り付けられ、当該梁部Eの水平回転を妨げるようにロードセルYを配置した。梁部Eのうち試験片Tが備えられない端部には、バランスウェイトBを取り付け、油圧シリンダーWによって梁部Eに生じる鉛直方向のモーメントを相殺させた。
ラジアル軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の耐焼付性を評価するために焼付試験を行った。図4Aは、焼付試験に使用したピンオンディスク試験機を説明する模式図である。焼付試験は、回転する円盤状の相手材Aを厚み方向に挟み込むように一対の試験片Tを配置し、油圧シリンダーWによって試験片T間に静荷重を作用させることにより行った。相手材Aと試験片Tとの接触部における両者の相対速度が15m/secとなるように相手材Aの回転速度を調整した。また、相手材Aに対して潤滑油(SAE30 CD級)を保持する給油パッドPを接触させることにより、相手材Aと試験片Tとの接触部に給油を行った。相手材Aは、焼き入れ処理を行ったSCM415で形成した。一対の試験片Tは相手材Aと平行な面内にて回転可能に保持された梁部Eの先端に取り付けられ、当該梁部Eの水平回転を妨げるようにロードセルYを配置した。梁部Eのうち試験片Tが備えられない端部には、バランスウェイトBを取り付け、油圧シリンダーWによって梁部Eに生じる鉛直方向のモーメントを相殺させた。
相手材Aと試験片Tとの間に摩擦力が生じ、当該摩擦力によって梁部Eが水平回転することとなる。そのため、ロードセルYには梁部Eを水平回転させる摩擦力が作用し、ロードセルYが計測する荷重の大きさは、試験片Tと相手材Aとの間に生じる摩擦力の大きさを意味する。そのため、ロードセルYに作用する荷重が所定の閾値以上となった場合に、試験片Tと相手材Aとの間の摩擦力が異常に大きく、焼付きが生じたと判定した。
油圧シリンダーWによって試験片T間に作用する静荷重の大きさを徐々(2MPa/5min)に大きくしていき、試験片Tと相手材Aとの間に焼付きが生じた際の静荷重である焼付荷重を計測した。さらに、焼付荷重を試験片Tと相手材Aとの接触面積で除算することによって焼付面圧を計測した。
以上のようにして、本実施形態のラジアル軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の焼付面圧を計測したところ、26MPaと良好であった。なお、焼付面圧が大きいほど、耐焼付性が高いことを意味する。
以上のようにして、本実施形態のラジアル軸受1を構成するすべり軸受用銅合金の焼付面圧を計測したところ、26MPaと良好であった。なお、焼付面圧が大きいほど、耐焼付性が高いことを意味する。
図2Bは、相手軸2を摺動させた後の摺動面の写真である。同図に示すように、Bi粒子3において、破壊されたMn−Si初晶4が埋収されている。図2Aのようにもともとほぼ円形であったBi粒子3は、図2Bのように相手軸2との摺動によって一部が引き延ばされた形状となる。このように、Biが摺動面上にて延びることにより、摺動面上に広くBiを供給できる。本実施形態において、Mn−Si初晶4の平均円相当径よりも円相当径が小さいBi粒子3が摺動面に分散することにより、摺動面におけるBiの疎密を抑制し、摺動面において均一にBiを供給できる。従って、耐焼付性を向上させることができる。さらに、Mn−Si初晶4の平均円相当径よりも円相当径が大きいBi粒子3が摺動面に分散することにより、破壊されたMn−Si初晶4が一旦は摺動面から脱落しても、当該Mn−Si初晶4よりも円相当径が大きいBi粒子3においてMn−Si初晶4を埋収できる。従って、破壊されたMn−Si初晶4が摺動面を傷つけることを防止し、Mn−Si初晶4が焼付きを生じさせることを防止できる。
また、Bi粒子3の円相当径の標準偏差はMn−Si初晶4の円相当径の標準偏差よりも大きく、Bi粒子3の方が、円相当径が大きい側に分布が広いため、Mn−Si初晶4を埋収できる可能性を高くすることができる。さらに、Bi粒子3の全個数のうちの78.6%がMn−Si初晶4よりも円相当径が小さくなるようにすることにより、円相当径が大きいBi粒子によるMn−Si初晶の埋収性と、円相当径が小さいBi粒子によるBiの供給の均一性とを両立させることができる。
また、円形度が大きいBi粒子3の個数割合が大きいため、破壊されたMn−Si初晶4を確実に埋収できる。図4Bは、摺動面の垂直断面の模式図である。図4Bに示すように、Bi粒子3の円形度が大きいため、Bi粒子3の外縁が滑らかな曲面を構成し、当該曲面に沿って破壊されたMn−Si初晶4が滑って移動することにより、Bi粒子3における深い位置に、破壊されたMn−Si初晶4をスムーズに誘導できる。従って、破壊されたMn−Si初晶4が摺動面を傷つけることを防止し、Mn−Si初晶4が焼付きを生じさせることを防止できる。
(2)ラジアル軸受の製造方法:
本実施形態においてラジアル軸受1は、a.溶融、b.連続鋳造、c.切断、d.機械加工の各工程を順に行うことにより製造される。以下、各工程について説明する。
本実施形態においてラジアル軸受1は、a.溶融、b.連続鋳造、c.切断、d.機械加工の各工程を順に行うことにより製造される。以下、各工程について説明する。
a.溶融
まず、40.0wt%のZnを含有し、4.0wt%のMnを含有し、1.3wt%のSiを含有し、3.4wt%のBiを含有し、残部がCuと不可避不純物とからなるすべり軸受用銅合金が形成できるように各原料を計量して用意した。本実施形態では、Cuのインゴットと、Znのインゴットと、Cu−Mnのインゴットと、Cu−Siのインゴットとをそれぞれを計量して用意した。ここでは、目標とするラジアル軸受1の機械特性に応じた質量の原料を用意すればよい。目標とするラジアル軸受1の機械特性は、例えば相手軸2の機械特性に応じて定められる。次に、用意した各原料を高周波誘導炉によって1200℃まで加熱する。これにより、各インゴットが融解する。その後、Arガスの気泡を分散噴出させて、水素ガスや介在物の除去を行う。
まず、40.0wt%のZnを含有し、4.0wt%のMnを含有し、1.3wt%のSiを含有し、3.4wt%のBiを含有し、残部がCuと不可避不純物とからなるすべり軸受用銅合金が形成できるように各原料を計量して用意した。本実施形態では、Cuのインゴットと、Znのインゴットと、Cu−Mnのインゴットと、Cu−Siのインゴットとをそれぞれを計量して用意した。ここでは、目標とするラジアル軸受1の機械特性に応じた質量の原料を用意すればよい。目標とするラジアル軸受1の機械特性は、例えば相手軸2の機械特性に応じて定められる。次に、用意した各原料を高周波誘導炉によって1200℃まで加熱する。これにより、各インゴットが融解する。その後、Arガスの気泡を分散噴出させて、水素ガスや介在物の除去を行う。
b.連続鋳造
次に、すべり軸受用銅合金の溶融材料を鋳型に注入し、当該鋳型の開口からすべり軸受用銅合金を鋳造方向に連続的に引き抜き、そのまま室温まで冷却することにより、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒を形成する。例えば、炭素で形成された鋳型によって1060℃にて鋳造を行い、90mm/minの引抜速度で引き抜いて連続鋳造棒を形成する。溶融状態から連続鋳造における凝固過程において、まずMn−Si初晶4が晶出し、その後Cu−Znマトリクス5が晶出し、最後にMn−SiとCu−Znとの共晶が凝固すると考えられる。なお、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒の直径は、ラジアル軸受1の外径よりも機械加工における切削量だけ大きくされる。
次に、すべり軸受用銅合金の溶融材料を鋳型に注入し、当該鋳型の開口からすべり軸受用銅合金を鋳造方向に連続的に引き抜き、そのまま室温まで冷却することにより、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒を形成する。例えば、炭素で形成された鋳型によって1060℃にて鋳造を行い、90mm/minの引抜速度で引き抜いて連続鋳造棒を形成する。溶融状態から連続鋳造における凝固過程において、まずMn−Si初晶4が晶出し、その後Cu−Znマトリクス5が晶出し、最後にMn−SiとCu−Znとの共晶が凝固すると考えられる。なお、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒の直径は、ラジアル軸受1の外径よりも機械加工における切削量だけ大きくされる。
c.切断
次に、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒をラジアル軸受1の厚み(相手軸2の長さ方向の厚み)ごとに切断する。
次に、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒をラジアル軸受1の厚み(相手軸2の長さ方向の厚み)ごとに切断する。
d.機械加工
最後に、切断後のすべり軸受用銅合金の連続鋳造棒に対して切削加工やプレス加工をすることにより、ラジアル軸受1を完成させる。ここでは、相手軸2の外径よりも所定量だけ大きい内径を有する貫通穴を形成するとともに、ラジアル軸受1の外径の大きさが設計値と一致するように切削加工を行う。
最後に、切断後のすべり軸受用銅合金の連続鋳造棒に対して切削加工やプレス加工をすることにより、ラジアル軸受1を完成させる。ここでは、相手軸2の外径よりも所定量だけ大きい内径を有する貫通穴を形成するとともに、ラジアル軸受1の外径の大きさが設計値と一致するように切削加工を行う。
(3)実験結果:
表1は、実施例1〜3についての実験結果を示す表である。なお、実施例1は第1実施形態と同じである。実施例1〜3は第1実施形態とほぼ同様の製造方法によって製造した。ただし、実施例3については、引き抜き速度(凝固速度)を実施例1,2よりも大きくすることにより、Mn−Si初晶4とBi粒子3の平均円相当径が実施例1,2よりも小さくなるようにした。なお、凝固速度が大きいほどMn−Si初晶4とBi粒子3の平均円相当径を小さくすることができるが、連続鋳造における鋳型の冷却水の流量を大きくすることによっても凝固速度を大きくすることができる。
表1に示すように、実施例1〜3のいずれも摺動面においても、Mn−Si初晶4の平均円相当径よりも円相当径が大きいBi粒子3と、Mn−Si初晶4の平均円相当径よりも円相当径が小さいBi粒子3と、が存在する。そのため、円形度が大きいBi粒子3によって、破壊されたMn−Si初晶4を埋収することができ、実施例1〜3のいずれも摺動面においても良好な焼付面圧を得ることができた。また、表1に示すように、円形度が大きいBi粒子3の個数割合が大きいほど、良好な焼付面圧を得ることができ、破壊されたMn−Si初晶4を効率よく埋収することができることが分かった。Bi粒子3(大Bi粒子+小Bi粒子)の平均円相当径を大きくすると同時に、円形度が大きいBi粒子3の個数割合を大きくすることにより、Bi粒子3におけるMn−Si初晶4等の異物の埋収性を相乗的に向上させることができ、飛躍的に焼付面圧を向上させることができる。
表1は、実施例1〜3についての実験結果を示す表である。なお、実施例1は第1実施形態と同じである。実施例1〜3は第1実施形態とほぼ同様の製造方法によって製造した。ただし、実施例3については、引き抜き速度(凝固速度)を実施例1,2よりも大きくすることにより、Mn−Si初晶4とBi粒子3の平均円相当径が実施例1,2よりも小さくなるようにした。なお、凝固速度が大きいほどMn−Si初晶4とBi粒子3の平均円相当径を小さくすることができるが、連続鋳造における鋳型の冷却水の流量を大きくすることによっても凝固速度を大きくすることができる。
(4)他の実施形態:
前記実施形態においては、本発明の銅合金によってラジアル軸受1を形成した例を示したが、本発明の銅合金によって他の摺動部材を形成してもよい。例えば、本発明の銅合金によってトランスミッション用のギヤブシュやピストンピンブシュ・ボスブシュ等を形成してもよい。また、本発明のすべり軸受用銅合金は、連続鋳造以外の製造方法で製造されてもよい。
前記実施形態においては、本発明の銅合金によってラジアル軸受1を形成した例を示したが、本発明の銅合金によって他の摺動部材を形成してもよい。例えば、本発明の銅合金によってトランスミッション用のギヤブシュやピストンピンブシュ・ボスブシュ等を形成してもよい。また、本発明のすべり軸受用銅合金は、連続鋳造以外の製造方法で製造されてもよい。
1…ラジアル軸受、2…相手軸、3…Bi粒子、4…Mn−Si初晶、5…Cu−Znマトリクス
Claims (3)
- 25wt%以上かつ48wt%以下のZnと、
1wt%以上かつ7wt%以下のMnと、
0.5wt%以上かつ3wt%以下のSiと、
1wt%以上かつ10wt%以下のBiと、を含有し、
残部が不可避不純物とCuとからなるすべり軸受用銅合金であって、
相手材との摺動面において、少なくともMn−Si初晶とBi粒子とが存在し、Bi粒子のうち、円形度が0.7以上のBi粒子の個数割合は70%以上である、
ことを特徴とするすべり軸受用銅合金。 - 前記摺動面において、Mn−Si初晶の平均円相当径よりも円相当径が大きいBi粒子と、Mn−Si初晶の平均円相当径よりも円相当径が小さいBi粒子と、が存在する、
請求項1に記載のすべり軸受用銅合金。 - 25wt%以上かつ48wt%以下のZnと、
1wt%以上かつ7wt%以下のMnと、
0.5wt%以上かつ3wt%以下のSiと、
1wt%以上かつ10wt%以下のBiと、を含有し、
残部が不可避不純物とCuとからなるすべり軸であって、
相手材との摺動面において、少なくともMn−Si初晶とBi粒子とが存在し、Bi粒子のうち、円形度が0.7以上のBi粒子の個数割合は70%以上である、
ことを特徴とするすべり軸受。
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JP2015001420A JP2016125112A (ja) | 2015-01-07 | 2015-01-07 | すべり軸受用銅合金およびすべり軸受 |
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