JP2018141212A - 摺動部材用銅合金及び摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部材用銅合金において被削性を改善する。【解決手段】一実施形態に係る摺動部材用銅合金は、25重量%以上50重量%以下のZnと、1重量%以上7重量%以下のMnと、0.5重量%以上3重量%以下のSiと、10重量%以下のBiとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Cu−Zn及びMn−Siの共晶と、Mn−Si初晶とを含み、断面における前記Mn−Si初晶の面積率が0.5%以下である。【選択図】図3
Description
本発明は、摺動部材用銅合金及び摺動部材に関する。
Cu及びZnを含むマトリクスにMn−Si化合物の粒子を分散させた摺動部材用銅合金が知られている。例えば特許文献1には、耐摩耗性を向上させるため、Mn−Si初晶、並びにMn−Si及びCu−Znの共晶を含む銅合金が記載されている。
特許文献1に記載の技術において、Mn−Si化合物は硬さが1000Hv程度であるため被削性に改善の余地があった。
これに対し本発明は、Cu−Zn−Mn−Si系の摺動部材用銅合金において被削性を改善する技術を提供する。
これに対し本発明は、Cu−Zn−Mn−Si系の摺動部材用銅合金において被削性を改善する技術を提供する。
本発明は、25重量%以上50重量%以下のZnと、1重量%以上7重量%以下のMnと、0.5重量%以上3重量%以下のSiと、10重量%以下のBiとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Cu−Zn及びMn−Siの共晶と、Mn−Si初晶とを含み、断面における前記Mn−Si初晶の面積率が0.5%以下である摺動部材用銅合金を提供する。
断面における前記共晶の面積率が、5%以上60%以下であってもよい。
また、本発明は、上記の摺動部材用銅合金を用いた摺動部材を提供する。
本発明によれば、摺動部材用銅合金において被削性を改善することができる。
1.構成
図1は、一実施形態に係る摺動部材1を例示する斜視図である。この例において、摺動部材1は、円筒形状を有するいわゆるブシュである。摺動部材1は、例えば内燃機関用のターボ式過給機において用いられるフローティングブシュである。摺動部材1は、シャフト2を回転可能な状態で支持するすべり軸受である。シャフト2においては、タービン翼及びコンプレッサ翼(いずれも図示略)が軸方向の両端に固定される。摺動部材1は、シャフト2に作用する径方向の荷重を支持する。摺動部材1において軸方向に直交する断面は円環形状を有している。摺動部材1において、内周面がシャフト2と摺動する。内周面すなわち摺動面には潤滑油が供給される。
図1は、一実施形態に係る摺動部材1を例示する斜視図である。この例において、摺動部材1は、円筒形状を有するいわゆるブシュである。摺動部材1は、例えば内燃機関用のターボ式過給機において用いられるフローティングブシュである。摺動部材1は、シャフト2を回転可能な状態で支持するすべり軸受である。シャフト2においては、タービン翼及びコンプレッサ翼(いずれも図示略)が軸方向の両端に固定される。摺動部材1は、シャフト2に作用する径方向の荷重を支持する。摺動部材1において軸方向に直交する断面は円環形状を有している。摺動部材1において、内周面がシャフト2と摺動する。内周面すなわち摺動面には潤滑油が供給される。
摺動部材1は、銅合金で形成される。この銅合金は、本発明に係る摺動部材用銅合金の一例である。この銅合金は、いわゆるCu−Zn−Mn−Si系の銅合金であり、以下の組成を有する。
(A)25重量%以上50重量%以下のZn。
(B)1重量%以上7重量%以下のMn。
(C)0.5重量%以上3重量%以下のSi。
(D)10重量%以下のBi。
なお、残部はCu及び不可逆不純物からなる。不可避不純物は、例えば、Al、Fe、Sn、Mg、Ni、Ti、B、Pb、及びCrの少なくとも1種を含む。不可逆不純物は、例えば、精錬又はスクラップにおいて混入する。不可避不純物の含有量は、一例として、総量で1.0重量%以下である。
(A)25重量%以上50重量%以下のZn。
(B)1重量%以上7重量%以下のMn。
(C)0.5重量%以上3重量%以下のSi。
(D)10重量%以下のBi。
なお、残部はCu及び不可逆不純物からなる。不可避不純物は、例えば、Al、Fe、Sn、Mg、Ni、Ti、B、Pb、及びCrの少なくとも1種を含む。不可逆不純物は、例えば、精錬又はスクラップにおいて混入する。不可避不純物の含有量は、一例として、総量で1.0重量%以下である。
図2は、一実施形態に係る銅合金の断面組織を例示する模式図である。図3及び図4は、銅合金の断面写真の一例である。図3及び図4の断面写真は、電子顕微鏡(日本電子製JXA8100)を用いて1000倍の倍率において撮影した組成像である。なお、図3は後述する実施例における実験例1の断面写真であり、図4は実験例2の断面写真である。
この銅合金の組織は、初晶11、共晶12、マトリクス13、及びBi相15を含む。初晶11は、Mn−Si系の初晶に相当する相である。図3及び図4の写真においては黒色の領域として写っている。共晶12は、Cu−Zn及びMn−Siの共晶である。図3及び図4の写真においては黒斑を含む灰色の領域として写っている。共晶12は、Mn−Si相121及びCu−Zn相122を含む。共晶12は、Cu−Zn相122(灰色の領域)にMn−Si相121(黒斑に相当する領域)が分散された組織を有するマトリクス13は、Cu−Znマトリクスに相当する相である。図3及び図4の写真においては灰色の領域として写っている。マトリクス13は、β相131を含む。β相131は、Cu−Zn2元系におけるβ相に相当する相である。ただし、β相131は、純粋なCu−Zn2元系におけるβ相ではなく、微量のMn及びSiを含む。Bi相15は、主としてBiにより構成される相である。
断面組織における各相の面積率は、例えば以下のとおりである。
初晶11: 0.5%以下
共晶12: 5%以上60%以下
Bi相15: 0%以上10%以下
マトリクス13:残部
初晶11: 0.5%以下
共晶12: 5%以上60%以下
Bi相15: 0%以上10%以下
マトリクス13:残部
ここで、各相の硬さは概ね以下のとおりである。
初晶11: 1000HV
共晶12: 200HV
マトリクス13: 150HV
初晶11: 1000HV
共晶12: 200HV
マトリクス13: 150HV
初晶11は約1000Hvの硬さを有するので、例えば円相当径20μm程度の大きさで晶出させることにより、合金の耐摩耗性を向上させることができる。しかし、この硬さゆえ合金の被削性は低下する。なお被削性とは切削加工のしやすさをいう。初晶11を小さく、かつその面積率を少なくすれば被削性は改善する。
2.製造方法
図5は、摺動部材1の製造方法を例示するフローチャートである。ステップS1において、銅合金の原料が溶融される。銅合金の原料としては、例えば、Cu、Zn、Cu−Si、及びBiのインゴットが用いられる。これらの原料は所望の組成となるように計量され、混合される。混合された原料は高周波誘導炉等で高温(例えば1200℃)に加熱される。こうして原料は溶融する。このとき、Arガス等の気泡を分散噴出し、水素ガス及び介在物を除去してもよい。
図5は、摺動部材1の製造方法を例示するフローチャートである。ステップS1において、銅合金の原料が溶融される。銅合金の原料としては、例えば、Cu、Zn、Cu−Si、及びBiのインゴットが用いられる。これらの原料は所望の組成となるように計量され、混合される。混合された原料は高周波誘導炉等で高温(例えば1200℃)に加熱される。こうして原料は溶融する。このとき、Arガス等の気泡を分散噴出し、水素ガス及び介在物を除去してもよい。
ステップS2において、連続鋳造が行われる。詳細には例えば以下のとおりである。まず溶融した原料が鋳型に注入される。銅合金は、鋳型の開口から鋳造方向に連続的に引き抜かれる。引き抜かれた原料は室温まで冷却される。こうして、すべり軸受用銅合金の連続鋳造棒が得られる。溶融状態から連続鋳造における凝固過程において合金組織の各相が形成される。
ステップS3において、連続鋳造棒が切断される。連続鋳造棒は、摺動部材1のサイズに応じた大きさ又は形状に切断される。
ステップS4において、切断された部材が機械加工される。機械加工は、例えば、プレス加工及び切削加工を含む。こうして、摺動部材1が得られる。
3.実施例
本願の発明者らは、種々の条件で摺動部材の試験片(サンプル)を作製し、これらの試験片について各種の特性を評価した。まず、作製した試験片に用いた合金の組成及び断面組織における各相の面積率は表1のとおりである。この例において、実験例1が本発明の実施例に相当し、実験例2〜5が比較例に相当する。
本願の発明者らは、種々の条件で摺動部材の試験片(サンプル)を作製し、これらの試験片について各種の特性を評価した。まず、作製した試験片に用いた合金の組成及び断面組織における各相の面積率は表1のとおりである。この例において、実験例1が本発明の実施例に相当し、実験例2〜5が比較例に相当する。
表1における組成は、原料として投入された割合を示す。断面組織における各相の面積率は、以下の方法により計測した。まず、摺動部材1の断面を金属顕微鏡(オリンパス社製GX51)によって200倍の光学倍率で撮影し、観察画像の画像データを得た。そして、この画像データを画像解析装置(ニレコ社製LUZEX_AP)に入力し、観察画像に存在する相の面積を計測した。図3の例に示すように、銅合金の断面組織において、各相の像における色の濃さは、
初晶11>マトリクス13
の順である。また、共晶12は、黒斑が分散された領域である。以上の事情を考慮し、観察画像における像の色及び形状等から、初晶11、共晶12、及びマトリクス13を特定した。観察画像において各粒子の外縁にはエッジ(明度や彩度や色相角が所定値以上異なる境界)が存在する。そこで、画像解析装置によって、エッジによって閉じられた領域を各相の像として観察画像から抽出した。ただし、円相当径(計測パラメータ:HEYWOOD)が1μm以上となる像のみを計測対象とした。こうして抽出された初晶11及びマトリクス13のそれぞれの面積率を算出した。
初晶11>マトリクス13
の順である。また、共晶12は、黒斑が分散された領域である。以上の事情を考慮し、観察画像における像の色及び形状等から、初晶11、共晶12、及びマトリクス13を特定した。観察画像において各粒子の外縁にはエッジ(明度や彩度や色相角が所定値以上異なる境界)が存在する。そこで、画像解析装置によって、エッジによって閉じられた領域を各相の像として観察画像から抽出した。ただし、円相当径(計測パラメータ:HEYWOOD)が1μm以上となる像のみを計測対象とした。こうして抽出された初晶11及びマトリクス13のそれぞれの面積率を算出した。
実験例1〜5のそれぞれの試験片に対し、硬さ試験、被削性評価、及び摩耗試験を行った。硬さ試験は、硬さ試験機(明石製作所社製MVK−EII)を用い、JIS Z 2244に従って行った。被削性は、切削加工時の切削抵抗及び切削加工後の表面粗さによって評価した。まず切削抵抗については、以下の条件で試験片を切削し、その際の切削抵抗を測定した。
・測定装置(キスラー社製歪測定器)
・刃具:超硬合金
・刃先R:0.2
・周速:100m/min
・切込量:0.05mm
・送り速度:0.05mm/rev
・切削距離:400mm
・切削油:なし
上記の切削加工を行った後、試験片の表面粗さ(算術平均粗さRa)を、表面粗さ計(小坂研究所社製SE−3400)を用いて計測した。
・測定装置(キスラー社製歪測定器)
・刃具:超硬合金
・刃先R:0.2
・周速:100m/min
・切込量:0.05mm
・送り速度:0.05mm/rev
・切削距離:400mm
・切削油:なし
上記の切削加工を行った後、試験片の表面粗さ(算術平均粗さRa)を、表面粗さ計(小坂研究所社製SE−3400)を用いて計測した。
摩耗試験においては以下の条件に従って試験片と軸とを摺動させた。試験後の試験片の表面の粗さプロファイルを、前述の表面粗さ計を用いて計測した。得られたプロファイルから、平坦部と最深部との差を摩耗深さとした。硬さ試験及び摩耗試験の結果を表2に示す。
・試験機:円筒平板型摩擦摩耗試験機
・潤滑油:流動パラフィン
・軸材質:SCM415
・軸半径:20mm
・相対移動速度:200mm/sec
・サンプル幅:10mm
・荷重:139N
・試験温度:室温
・試験時間:3600sec
・試験機:円筒平板型摩擦摩耗試験機
・潤滑油:流動パラフィン
・軸材質:SCM415
・軸半径:20mm
・相対移動速度:200mm/sec
・サンプル幅:10mm
・荷重:139N
・試験温度:室温
・試験時間:3600sec
実験例1は初晶11の面積率がほぼゼロである。初晶11の面積率が2.5%〜5%である実験例2〜4と比較すると、切削抵抗が低く、切削加工後の表面粗さが小さい。切削抵抗が低いということは切削加工がしやすいことを意味する。切削加工後の表面粗さが小さいということは、高い精度で切削加工ができることを意味する。これら2つの観点において実験例1は実験例2〜4よりも優れており、本発明の一実施例において被削性が改善されていることがわかる。実験例5は初晶11及び共晶12がいずれもほぼゼロである例、すなわちMn−Si相がほとんど晶出していない例である。実験例5において被削性は実験例2〜4よりも優れているものの、耐摩耗性が実験例2〜4と比較して著しく劣っており摺動部材に用いるには問題が残る。実験例1においては、実験例2〜4に対して優れた被削性を有しつつも、耐摩耗性の劣化も実験例5と比較して抑制されている。
4.変形例
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。摺動部材1はターボ式過給機において用いられるフローティングブシュに限定されるものではなく、種々の用途又は形状を有してもよい。例えば、摺動部材1は、内燃機関の主軸受として用いられる半割軸受、スラストワッシャ、斜板式コンプレッサにおける斜板、又はロータリーコンプレッサにおけるローター等、他の用途に用いられてもよい。
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。摺動部材1はターボ式過給機において用いられるフローティングブシュに限定されるものではなく、種々の用途又は形状を有してもよい。例えば、摺動部材1は、内燃機関の主軸受として用いられる半割軸受、スラストワッシャ、斜板式コンプレッサにおける斜板、又はロータリーコンプレッサにおけるローター等、他の用途に用いられてもよい。
なお実施例として例示した銅合金の組成及び製造方法はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施例の銅合金はBiを含んでいたが、Biは含まれていなくてもよい。
1…摺動部材
11…初晶
12…共晶
121…Mn−Si相
122…Cu−Zn相
13…マトリクス
15…Bi相
2…シャフト
11…初晶
12…共晶
121…Mn−Si相
122…Cu−Zn相
13…マトリクス
15…Bi相
2…シャフト
Claims (3)
- 25重量%以上50重量%以下のZnと、
1重量%以上7重量%以下のMnと、
0.5重量%以上3重量%以下のSiと、
10重量%以下のBiと
を含有し、
残部がCu及び不可避不純物からなり、
Cu−Zn及びMn−Siの共晶と、
Mn−Si初晶と
を含み、
断面における前記Mn−Si初晶の面積率が0.5%以下である
摺動部材用銅合金。 - 断面における前記共晶の面積率が、5%以上60%以下である
請求項1に記載の摺動部材用銅合金。 - 請求項1又は2に記載の摺動部材用銅合金を用いた摺動部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017036887A JP2018141212A (ja) | 2017-02-28 | 2017-02-28 | 摺動部材用銅合金及び摺動部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017036887A JP2018141212A (ja) | 2017-02-28 | 2017-02-28 | 摺動部材用銅合金及び摺動部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018141212A true JP2018141212A (ja) | 2018-09-13 |
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ID=63527672
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017036887A Pending JP2018141212A (ja) | 2017-02-28 | 2017-02-28 | 摺動部材用銅合金及び摺動部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018141212A (ja) |
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2017
- 2017-02-28 JP JP2017036887A patent/JP2018141212A/ja active Pending
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