JP2016121729A - 回転速度検出装置付き車輪用軸受装置 - Google Patents

回転速度検出装置付き車輪用軸受装置 Download PDF

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Abstract

【課題】シール部材が小径孔から脱落するのを防止して密封性を確保して信頼性を向上させると共に、取扱い性を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】キャップ本体13の取付部15にナット21がインサート成形によって埋め込まれ、取付フランジ20bを介して固定ボルト22を締結することにより、センサホルダ20が取付部15に固定されると共に、ナット21の端面に位置してナット21内からキャップ本体13の端面に貫通し、凹球面からなる受け面24を有する小径孔23が設けられ、この小径孔23の開口部に保持爪26が形成されると共に、受け面24とナット21の端面との間にゴム球からなるシール部材25がシメシロを持って介装されることにより密封し、保持爪26の周囲に環状の凸部27が形成され、この凸部27とシール部材25の頂点との間に段差δ1が設けられている。【選択図】図2

Description

本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が内蔵され、密封性を確保して信頼性を向上させると共に、取扱い性を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置に関するものである。
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御し、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が内蔵された回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が一般的に知られている。従来、このような車輪用軸受装置は、転動体を介して転接する内方部材および外方部材の間にシール装置が設けられ、円周方向に磁極を交互に並べてなる磁気エンコーダを前記シール装置に一体化させると共に、磁気エンコーダと、この磁気エンコーダに対面配置され、車輪の回転に伴う磁気エンコーダの磁極変化を検出する回転速度センサとで回転速度検出装置が構成されている。
前記回転速度センサは、懸架装置を構成するナックルに車輪用軸受装置が装着された後、当該ナックルに装着されているものが一般的である。しかし、この回転速度センサと磁気エンコーダとのエアギャップの調整作業の煩雑さを解消すると共に、よりコンパクト化を狙って、最近では回転速度センサをも軸受に内蔵した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が提案されている。
このような回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一例として図4に示すような構造が知られている。この回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、図示しないナックルに支持固定され、内周に複列の外側転走面51a、51aが形成された外方部材51と、この外方部材51に複列のボール53、53を介して内挿された内方部材52とを有している。内方部材52は、ハブ輪55と、このハブ輪55に外嵌された内輪56とからなる。
内方部材52は、前記した外方部材51の外側転走面51a、51aに対向する複列の内側転走面55a、56aが形成されている。これら複列の内側転走面55a、56aのうち一方の内側転走面55aはハブ輪55の外周に一体形成され、他方の内側転走面56aは内輪56の外周に形成されている。この内輪56は、ハブ輪55の内側転走面55aから軸方向に延びる軸状の小径段部55bに圧入されている。そして、複列のボール53、53がこれら両転走面間にそれぞれ収容され、保持器57、57によって転動自在に保持されている。
ハブ輪55は、外周に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ54を一体に有し、小径段部55bの端部を径方向外方に塑性変形して加締部58が形成され、この加締部58によって前記内輪56が軸方向に固定されている。そして、外方部材51の端部にはシール59およびセンサキャップ61が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
内輪56の外周には、磁性金属板により円環状に形成されたパルサリング60が圧入されている。このパルサリング60には円周方向に等間隔で並べた複数の窓60aが形成されている。
一方、センサキャップ61は外方部材51の内方側の端部内周に嵌合され、外方部材51の開口部を閉塞している。このセンサキャップ61は、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のキャップ本体62と、このキャップ本体62に結合され、鋼板をプレス成形して断面L字形の円環状に形成された金属環63とからなる。そして、キャップ本体62の射出成形時にモールドすることにより、このキャップ本体62に一体化されている。
キャップ本体62の径方向外方部には軸方向に突出する突部64が形成され、この突部64に、前記パルサリング60の窓60aに対応する位置に挿入孔65が形成されている。図5に示すように、挿入孔65の内周面にはスリーブ66が嵌合され、このスリーブ66内にセンサ67がOリング67aを介して挿入されている。このセンサ67は、パッシブ型センサからなり、内輪56と一体に回転するパルサリング60の窓60aがセンサ67の前を間欠的に横切ることにより、車輪回転数に比例した周波数の回転検出信号を出力する。
キャップ本体62の突部64には、その外表面に開口させてインサートナット68が埋め込まれると共に、センサ支持部材69が取り付けられている。このセンサ支持部材69はボルト挿通孔70を有し、このボルト挿通孔70にスリーブ71が嵌合されている。そして、このスリーブ71内に挿入されたセンサ固定ボルト72をインサートナット68にねじ込むことにより、センサ支持部材69がキャップ本体62の突部64に締め付け固定され、センサ67がキャップ本体62に取り付けられる。
ここで、キャップ本体62の突部64には、インサートナット68の奥側端面に位置してインサートナット68内からキャップ本体62の内側面に貫通する小径孔73が設けられている。この小径孔73は、インサートナット68の奥側端面に対向する受け面74を内周に有している。その受け面74とインサートナット68の奥側端面の間にゴム球からなるシール部材75がシメシロを持って介装されている。これにより、インサートナット68のねじ孔や、インサートナット68の外周とキャップ本体62の合成樹脂部分との接触は、軸受内部に対して小径孔73を介して通じているだけであり、ねじ孔やセンサ固定ボルト72の周辺で、他に軸受内部に通じる箇所がないので、小径孔73はシール部材75によって密封されている。そのため、インサートナット68のねじ孔やセンサ固定ボルト72、センサ支持部材69等の間に生じている僅かな隙間と軸受内部とが遮断され、隙間を通じて、泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防止することができる(例えば、特許文献1参照。)。
特許第4626979号公報
このような従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前述したゴム球からなるシール部材75が介装される小径孔73の構成では、図6(a)に示すように、搬送時に単体同士で重ねた際や組立の際、シール部材75が他部品と干渉する。そして、(b)に示すように、シール部材75が損傷したり、外力により小径孔73から脱落したりしてしまう恐れがある。
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、搬送時や組立時、小径孔に介装されたシール部材が他の部品と干渉しないような構成に着目し、シール部材が損傷したり小径孔から脱落したりするのを防止して密封性を確保して信頼性を向上させると共に、取扱い性を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、前記外方部材のインナー側の端部に内嵌固定され、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のセンサキャップと、を備え、このセンサキャップの合成樹脂の部分の径方向外方部に取付部が軸方向に突出して形成され、この取付部の前記パルサリングに対応する位置に軸方向に延びる挿入孔が形成されると共に、この挿入孔にセンサユニットを構成するセンサホルダが装着され、このセンサホルダに包埋された回転速度センサが前記パルサリングに対峙されている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記センサホルダに取付フランジが設けられ、前記センサキャップの取付部に、内周に雌ねじが形成されたナットがインサート成形によって埋め込まれ、前記取付フランジを介して固定ボルトを締結することにより、前記センサホルダが前記取付部に固定されると共に、前記ナットのアウター側の端面に位置して当該ナット内から前記センサキャップの軸受内部側の端面に貫通し、内周が凹球面に形成された受け面を有する小径孔が設けられ、前記受け面とナットのアウター側の端面との間にゴム球からなるシール部材がシメシロを持って介装されることにより密封し、このシール部材のアウター側の頂点よりもアウター側に突出する遮蔽壁が形成されている。
このように、内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、外方部材のインナー側の端部に内嵌固定され、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のセンサキャップを備え、このセンサキャップの径方向外方部に取付部が軸方向に突出して形成され、この取付部のパルサリングに対応する位置に軸方向に延びる挿入孔が形成されると共に、この挿入孔にセンサユニットを構成するセンサホルダが装着され、このセンサホルダに包埋された回転速度センサがパルサリングに対峙されている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、センサホルダに取付フランジが設けられ、センサキャップの取付部に、内周に雌ねじが形成されたナットがインサート成形によって埋め込まれ、取付フランジを介して固定ボルトを締結することにより、センサホルダが取付部に固定されると共に、ナットのアウター側の端面に位置して当該ナット内からセンサキャップの軸受内部側の端面に貫通し、内周が凹球面に形成された受け面を有する小径孔が設けられ、受け面とナットのアウター側の端面との間にゴム球からなるシール部材がシメシロを持って介装されることにより密封し、このシール部材のアウター側の頂点よりもアウター側に突出する遮蔽壁が形成されているので、ナットの雌ねじや、ナットの外周とセンサキャップの合成樹脂部分との接触は、軸受内部に対して小径孔を介してのみ通じ、雌ねじや固定ボルトの周辺で、他に軸受内部に通じる箇所がなくなり、小径孔はシール部材によって密封されることになり、ナットの雌ねじや固定ボルトおよび取付フランジ等の間に生じている僅かな隙間と軸受内部とが遮断され、隙間を通じて、泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防止することができるので、密封性を確保して信頼性を向上させると共に、搬送時にセンサキャップ同士で重ねた際や組立の際、シール部材が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔から脱落したりするのを防止することができ、取扱い性を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することができる。
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記小径孔のアウター側の開口部に保持爪が形成され、この保持爪の最小径が前記シール部材の直径よりも小径になるように設定されていれば、シール部材が小径孔から脱落するのを防止することができる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記保持爪の周囲に前記遮蔽壁となる環状の凸部が同心状に突出して形成され、この凸部の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられていれば、シール部材が他部品と干渉するのを防止することができる。
また、請求項4に記載の発明のように、前記凸部の断面が先端に向って薄肉となる台形状に形成されていれば、凸部の成形時に樹脂が流動し易くなり、成形性を向上させることができ、寸法精度を高めることができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記保持爪の周囲に前記遮蔽壁となる凸部が櫛状に突出して形成され、この凸部の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられていても良い。
また、請求項6に記載の発明のように、前記保持爪が先端に向って漸次拡径するようにラッパ状に形成され、この保持爪の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられていれば、シール部材が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔から脱落したりするのを防止することができると共に、シール部材の装着時に弾性変形し易くなって装着性が良くなり作業性を向上させることができる。
また、請求項7に記載の発明のように、前記センサキャップが、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のキャップ本体と、このキャップ本体の開口部に一体モールドされた芯金とからなり、この芯金が前記キャップ本体の外周部に露出し、前記外方部材の端部内周に圧入されていれば、センサキャップの強度・剛性を高めることができると共に、金属嵌合により嵌合部の密封性を向上させることができる。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、前記外方部材のインナー側の端部に内嵌固定され、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のセンサキャップと、を備え、このセンサキャップの合成樹脂の部分の径方向外方部に取付部が軸方向に突出して形成され、この取付部の前記パルサリングに対応する位置に軸方向に延びる挿入孔が形成されると共に、この挿入孔にセンサユニットを構成するセンサホルダが装着され、このセンサホルダに包埋された回転速度センサが前記パルサリングに対峙されている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記センサホルダに取付フランジが設けられ、前記センサキャップの取付部に、内周に雌ねじが形成されたナットがインサート成形によって埋め込まれ、前記取付フランジを介して固定ボルトを締結することにより、前記センサホルダが前記取付部に固定されると共に、前記ナットのアウター側の端面に位置して当該ナット内から前記センサキャップの軸受内部側の端面に貫通し、内周が凹球面に形成された受け面を有する小径孔が設けられ、前記受け面とナットのアウター側の端面との間にゴム球からなるシール部材がシメシロを持って介装されることにより密封し、このシール部材のアウター側の頂点よりもアウター側に突出する遮蔽壁が形成されているので、ナットの雌ねじや、ナットの外周とセンサキャップの合成樹脂部分との接触は、軸受内部に対して小径孔を介してのみ通じ、雌ねじや固定ボルトの周辺で、他に軸受内部に通じる箇所がなくなり、小径孔はシール部材によって密封されることになり、ナットの雌ねじや固定ボルトおよび取付フランジ等の間に生じている僅かな隙間と軸受内部とが遮断され、隙間を通じて、泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防止することができるので、密封性を確保して信頼性を向上させると共に、搬送時にセンサキャップ同士で重ねた際や組立の際、シール部材が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔から脱落したりするのを防止することができ、取扱い性を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することができる。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。 図1のセンサの取付部を示す要部拡大図である。 (a)は、図2の変形例を示す要部拡大図、(b)は、(a)の他の変形例を示す要部拡大図、(c)は、同上、他の変形例を示す要部拡大図である。 従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を示す縦断面図である。 図4の要部拡大図である。 (a)は、図5のセンサキャップ同士が干渉した状態を示す説明図、(b)は、(a)のシール部材が脱落する状態を示す説明図である。
外周に車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、前記外方部材のインナー側の端部に内嵌固定されたセンサキャップと、を備え、このセンサキャップが、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のキャップ本体と、このキャップ本体の開口部に一体モールドされた芯金とからなり、前記キャップ本体の径方向外方部に取付部が軸方向に突出して形成され、この取付部の前記パルサリングに対応する位置に軸方向に延びる挿入孔が形成されると共に、この挿入孔にセンサユニットを構成するセンサホルダが装着され、このセンサホルダに包埋された回転速度センサが前記パルサリングに対峙されている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記センサホルダに取付フランジが設けられ、前記キャップ本体の取付部に、内周に雌ねじが形成されたナットがインサート成形によって埋め込まれ、前記取付フランジを介して固定ボルトを締結することにより、前記センサホルダが前記取付部に固定されると共に、前記ナットのアウター側の端面に位置して当該ナット内から前記キャップ本体の軸受内部側の端面に貫通し、内周が凹球面に形成された受け面を有する小径孔が設けられ、この小径孔のアウター側の開口部に保持爪が形成されると共に、この保持爪の最小径が前記シール部材の直径よりも小径になるように設定され、前記受け面とナットのアウター側の端面との間にゴム球からなるシール部材がシメシロを持って介装されることにより密封し、前記保持爪の周囲に環状の凸部が同心状に突出して形成され、この凸部の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1のセンサの取付部を示す要部拡大図、図3(a)は、図2の変形例を示す要部拡大図、(b)は、(a)の他の変形例を示す要部拡大図、(c)は、同上、他の変形例を示す要部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
この回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は従動輪側の第3世代と呼称され、ハブ輪1と、このハブ輪1に圧入された内輪2とからなる内方部材3と、この内方部材3に複列の転動体(ボール)4、4を介して外挿された外方部材5とを備えている。
ハブ輪1は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ6を一体に有し、この車輪取付フランジ6の円周等配位置には車輪を締結するためのハブボルト6aが植設されている。また、外周にアウター側(一方)の内側転走面1aと、この内側転走面1aから軸方向に延びる軸状の小径段部1bが形成され、この小径段部1bに内輪2が所定のシメシロを介して圧入されている。そして、小径段部1bの端部を径方向外方に塑性変形させて加締部1cが形成され、この加締部1cによってハブ輪1に対して内輪2が所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。なお、内輪2の外周にはインナー側(他方)の内側転走面2aが形成されている。
一方、外方部材5は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に固定される車体取付フランジ5bを一体に有し、内周に前記内方部材3の複列の内側転走面1a、2aに対向する複列の外側転走面5a、5aが一体に形成されている。そして、これら両転走面5a、1aおよび5a、2a間に保持器7、7によって転動自在に保持された複列の転動体4、4が収容されている。
外方部材5の両端部にはシール8およびセンサキャップ9が装着され、外方部材5と内方部材3との間に形成される環状空間の開口部を密封している。そして、これらシール8およびセンサキャップ9により、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
ハブ輪1はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面1aをはじめ、シール8のシールランド部となる車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部1bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部1cは、鍛造後の素材表面硬さ30HRC以下の未焼入れ部としている。
外方部材5は、ハブ輪1と同様、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面5a、5aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。一方、内輪2はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。また、転動体4はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで62〜67HRCの範囲で硬化処理されている。なお、ここでは、転動体4をボールとした複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず転動体に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されたものであっても良い。また、第3世代の構造を例示したが、一対の内輪をハブ輪に圧入した、所謂第2世代構造であっても良い。
内輪2の外周にはパルサリング10が圧入されている。このパルサリング10は、円環状に形成された支持環11と、この支持環11の側面に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ12とで構成されている。この磁気エンコーダ12は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されて車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダを構成している。
支持環11は強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって断面略L字状に形成され、内輪2に圧入される円筒部11aと、この円筒部11aから径方向内方に延びる立板部11bとを有している。この立板部11bのインナー側の側面に磁気エンコーダ12が接合されている。
センサキャップ9は外方部材5のインナー側の端部に内嵌固定され、外方部材5の開口部を閉塞している。このセンサキャップ9は、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のキャップ本体13と、このキャップ本体13の開口部に一体モールドされた芯金14とからなる。この芯金14は、耐食性を有するステンレス鋼板をプレス成形して断面L字形の円環状に形成されている。特に、この芯金14は、後述する回転速度センサ19の感知性能に悪影響を及ぼさないように、非磁性体の鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)で形成されるのが好ましい。ここでは、芯金14が外方部材5との嵌合部に露出するようにインサート成形により一体に固着されているので、長期間に亘って外方部材5とセンサキャップ9との嵌合面の気密性を高めることができる。
キャップ本体13は、GF(グラス繊維)等の繊維状強化材が10〜40wt%充填されたPA(ポリアミド)66等の熱可塑性の合成樹脂からなり、射出成形によってカップ状に形成されている。ここで、GFの充填量が10wt%未満ではその補強効果が発揮されず、また、40wt%を超えて充填されると、成形品内の繊維が異方性を引き起こして密度が大きくなって寸法安定性が低下すると共に、靭性が低下し、外方部材5に圧入される時に割損する恐れがあるため好ましくない。なお、繊維状強化材としては、GFに限らず、これ以外に、CF(炭素繊維)やアラミド繊維、ホウ素繊維等を例示することができる。
なお、キャップ本体13の材質として、前述したPA66以外に、PPA(ポリフタルアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の所謂エンジニアリングプラスチックと呼称される熱可塑性の合成樹脂やポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)等の所謂スーパーエンジニアリングプラスチックと呼称される熱可塑性の合成樹脂、あるいは、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリイミド樹脂(PI)等の熱硬化性の合成樹脂であっても良い。また、環境負荷を軽減する生分解性の合成樹脂であっても良い。この生分解性の合成樹脂の成分としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン等を例示することができる。
ここで、図2に拡大して示すように、キャップ本体13の径方向外方部には軸方向インナー側に突出する取付部15が一体に突設され、この取付部15のうち前記磁気エンコーダ12に対応する位置に軸方向に貫通する挿入孔16が形成されている。この挿入孔16にセンサユニット17がOリング18を介して挿入されている。
センサユニット17は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子からなる回転速度センサ19およびこの磁気検出素子の出力波形を整える波形整形回路が組み込まれたIC等からなり、車輪の回転速度を検出してその回転数を制御する自動車のアンチロックブレーキシステムを構成している。
回転速度センサ19は合成樹脂からなるセンサホルダ20内に包埋されている。このセンサホルダ20には、挿入部20aと取付フランジ20bが一体に形成されている。また、キャップ本体13の取付部15には、内周に雌ねじ21aが形成されたナット21がインサート成形によって埋め込まれている。そして、取付フランジ20bを介して固定ボルト22を締結することにより、センサユニット17が取付部15に固定される。なお、ナット21の外周には環状溝21bが形成され、ナット21が軸方向に移動するのを防止している。
本実施形態では、ナット21のアウター側の端面に位置してナット21内からキャップ本体13のアウター側(軸受内部側)の端面に貫通する小径孔23が設けられている。この小径孔23の内周には、ナット21のアウター側の端面に対向し、凹球面に形成された受け面24が形成されている。そして、この受け面24とナット21のアウター側の端面との間に、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)のゴム球からなるシール部材25がシメシロを持って介装されている。これにより、ナット21の雌ねじ21aや、ナット21の外周とキャップ本体13との接触は、軸受内部に対して小径孔23を介してのみ通じている。雌ねじ21aや固定ボルト22の周辺で、他に軸受内部に通じる箇所がなくなり、小径孔23はシール部材25によって密封されることになり、ナット21の雌ねじ21aや固定ボルト22および取付フランジ20b等の間に生じている僅かな隙間と軸受内部とが遮断され、隙間を通じて、泥水等の異物が軸受内部に浸入するのを防止することができる。
なお、ここでは、シール部材25の材質としてNBRを例示したが、これ以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
シール部材25が小径孔23から脱落しないように、小径孔23のアウター側の開口部に先端に向って漸次薄肉となる環状の保持爪26が形成されている。保持爪26の開口径(最小径)Wがシール部材25の直径dよりも小径になるように設定されている(W<d)。そして、この保持爪26とシール部材25とを弾性変形させてシール部材25が装着される。なお、保持爪26は、シール部材25の装着性を向上させるために、図示はしないが、周方向に一定間隔で対向する2つ一組の保持爪で構成されていても良いし、周方向等間隔に複数のスリットが形成されたものであっても良い。
ここで、保持爪26の周囲に環状の凸部(遮蔽壁)27が同心状に突出して形成されている。この凸部27の先端と、小径孔23に装着されたシール部材25のアウター側の頂点との間に段差δ1が設けられている。すなわち、凸部27はシール部材25よりもアウター側に突出するように形成されている。これにより、搬送時にセンサキャップ9同士で重ねた際や組立の際、シール部材25が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔23から脱落したりするのを防止することができ、密封性を確保して信頼性を向上させると共に、取扱い性を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することができる。
ここでは、凸部27が他部品と干渉した際、凸部27自体の弾性変形により段差δ1がなくなり、他部品にシール部材25が接触しないよう、凸部27が環状に形成され、その段差δ1は、成形時の寸法バラツキを考慮して0.1mm以上に設定されている。なお、凸部27を環状かつ同心状に形成しなくても、小径孔23の保持爪26の近傍、すなわち、保持爪26の根元部の周辺に形成すれば良い。この場合、段差δ1は、その凸部の弾性変形量を考慮して設定すれば良い。
図3に変形例を示す。この実施形態は、前述したものと基本的には小径孔周辺の構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
(a)に示す凸部28は、保持爪26の周囲に櫛状に突出して形成されている。そして、この凸部28の先端と、小径孔23に装着されたシール部材25のアウター側の頂点との間に段差δ1が設けられている。これにより、前述した実施形態と同様、シール部材25が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔23から脱落したりするのを防止することができる。
(b)に示す凸部29は、保持爪26の周囲に同心状に突出し、その断面が先端に向って薄肉となる台形状に形成されている。そして、この凸部29の先端と、小径孔23に装着されたシール部材25のアウター側の頂点との間に段差δ1が設けられている。これにより、前述した実施形態と同様、シール部材25が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔23から脱落したりするのを防止することができると共に、凸部29の成形時に樹脂が流動し易くなり、成形性を向上させることができ、寸法精度を高めることができる。
(c)に示す実施形態は、前述した実施形態と異なり、小径孔23の周辺に凸部28、29は形成されておらず、小径孔23の保持爪30によってシール部材25が他部品と干渉するのを防止している。具体的には、小径孔23のアウター側の開口部に遮蔽壁となる環状の保持爪30が形成されている。この保持爪30は、先端に向って漸次拡径するようにラッパ状に形成され、その最小径Wがシール部材25の直径dよりも小径(W<d)に設定され、シール部材25を弾性変形させながら装着する。
そして、この保持爪30の先端と、小径孔23に装着されたシール部材25のアウター側の頂点との間に段差δ2が設けられている。これにより、前述した実施形態と同様、シール部材25が他部品と干渉して外力により損傷したり小径孔23から脱落したりするのを防止することができると共に、シール部材25の装着時に弾性変形し易くなって装着性が良くなり作業性を向上させることができる。
ここでは、保持爪30が他部品と干渉した際、その弾性変形により段差δ2がなくなり、他部品にシール部材25が接触しないよう、保持爪30が環状に形成され、その段差δ2は、成形時の寸法バラツキを考慮して0.2mm以上に設定されている。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、外方部材に合成樹脂製のキャップ本体が嵌合された車輪用軸受装置に適用することができる。
1 ハブ輪
1a、2a 内側転走面
1b 小径段部
1c 加締部
2 内輪
3 内方部材
4 転動体
5 外方部材
5a 外側転走面
5b 車体取付フランジ
6 車輪取付フランジ
6a ハブボルト
6b 車輪取付フランジのインナー側の基部
7 保持器
8 シール
9 センサキャップ
10 パルサリング
11 支持環
11a 円筒部
11b 立板部
12 磁気エンコーダ
13 キャップ本体
14 芯金
15 取付部
16 挿入孔
17 センサユニット
18 Oリング
19 回転速度センサ
20 センサホルダ
20a 挿入部
20b 取付フランジ
21 ナット
21a 雌ねじ
21b 環状溝
22 固定ボルト
23 小径孔
24 受け面
25 シール部材
26、30 保持爪
27、28、29 凸部
51 外方部材
51a 外側転走面
52 内方部材
53 ボール
54 車輪取付フランジ
55 ハブ輪
55a、56a 内側転走面
55b 小径段部
56 内輪
57 保持器
58 加締部
59 シール
60 パルサリング
60a 窓
61 センサキャップ
62 キャップ本体
63 金属環
64 突部
65 挿入孔
66、71 スリーブ
67 センサ
67a Oリング
68 インサートナット
69 センサ支持部材
70 ボルト挿通孔
72 センサ固定ボルト
73 小径孔
74 受け面
75 シール部材
d シール部材の直径
W 保持爪の開口径
δ1 凸部とシール部材の段差
δ2 保持爪とシール部材の段差

Claims (7)

  1. 内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
    一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
    この内方部材と前記外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
    前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、
    前記外方部材のインナー側の端部に内嵌固定され、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のセンサキャップと、を備え、
    このセンサキャップの合成樹脂の部分の径方向外方部に取付部が軸方向に突出して形成され、この取付部の前記パルサリングに対応する位置に軸方向に延びる挿入孔が形成されると共に、
    この挿入孔にセンサユニットを構成するセンサホルダが装着され、このセンサホルダに包埋された回転速度センサが前記パルサリングに対峙されている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、
    前記センサホルダに取付フランジが設けられ、前記センサキャップの取付部に、内周に雌ねじが形成されたナットがインサート成形によって埋め込まれ、前記取付フランジを介して固定ボルトを締結することにより、前記センサホルダが前記取付部に固定されると共に、
    前記ナットのアウター側の端面に位置して当該ナット内から前記センサキャップの軸受内部側の端面に貫通し、内周が凹球面に形成された受け面を有する小径孔が設けられ、前記受け面とナットのアウター側の端面との間にゴム球からなるシール部材がシメシロを持って介装されることにより密封し、
    このシール部材のアウター側の頂点よりもアウター側に突出する遮蔽壁が形成されていることを特徴とする回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  2. 前記小径孔のアウター側の開口部に保持爪が形成され、この保持爪の最小径が前記シール部材の直径よりも小径になるように設定されている請求項1に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  3. 前記保持爪の周囲に前記遮蔽壁となる環状の凸部が同心状に突出して形成され、この凸部の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられている請求項2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  4. 前記凸部の断面が先端に向って薄肉となる台形状に形成されている請求項3に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  5. 前記保持爪の周囲に前記遮蔽壁となる凸部が櫛状に突出して形成され、この凸部の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられている請求項2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  6. 前記保持爪が先端に向って漸次拡径するようにラッパ状に形成され、この保持爪の先端と前記シール部材のアウター側の頂点との間に段差が設けられている請求項2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  7. 前記センサキャップが、合成樹脂を射出成形してなる有底円筒状のキャップ本体と、このキャップ本体の開口部に一体モールドされた芯金とからなり、この芯金が前記キャップ本体の外周部に露出し、前記外方部材の端部内周に圧入されている請求項1に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
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