JP2016121202A - 可食フィルム - Google Patents

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Noriaki Kurokawa
徳明 黒川
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Abstract

【課題】吸湿性物質を含む場合であっても、湿度に対する安定性すなわちフィルム製造後にフィルムがカールしたり、フィルムの着色や濁り等が発生することのない可食フィルムの提供。
【解決手段】 ポリビニルアルコール系樹脂を基剤とし、下記式(1)にて求められる水酸基含有量が0.2以上であり、分子量が300以下であり、1atmにおける沸点が100℃超である化合物(A)を含有する可食フィルムを用いる。
水酸基含有量=水酸基のモル質量/分子量 …(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、吸湿性物質を含有する可食フィルムに関し、より詳細には、製造後のフィルムカールや濁り、黄変等が起こらない可食フィルムに関する。
フィルム状衛生品、フィルム状医薬品、フィルム状食品等の可食フィルムは、通常、基剤に対して薬効成分、無機塩や清涼剤などの添加剤を含有する。かかる基剤としては、通常、メチルセルロース、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)等のセルロース系高分子が広く実用化されている。
一般にフィルム状衛生品、フィルム状医薬品、フィルム状食品等の可食フィルムが含有する医薬成分、食品成分、添加剤等が吸湿性物質である場合、可食フィルムの湿度に対する安定性が低下するという問題が発生する。これを防ぐ目的で、水不溶性高分子を併用する手法が提案されている(特許文献1、0017段落参照)。かかる実施例では、吸湿性物質として高分子量の吸湿性物質であるキダチアロエエキスを用い、基材としてメチルセルロースおよび水不溶性高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを併用することでフィルム製剤の柔軟性、ベタつき、付着といった湿度に対する安定性の向上効果を検証している(特許文献1、0050段落参照)。しかしながら、かかる技術においては水不溶性高分子を別途用意する必要があり、かつ水不溶性高分子を用いるために水/アルコール混合溶媒を用いる必要があるなど、フィルムの生産性に問題があった。
なお、その比較例として、吸湿性物質として同キダチアロエエキスを用い、基材としてポリビニルアルコールを用い、水不溶性高分子を用いない場合を検証した結果、前記湿度に対する安定性向上効果が得られないものであった(特許文献1、0051、0052段落参照)。
日本国特開2005−232072号公報
上記の様な技術をもってしても、可食フィルムが吸湿性物質を含む場合、フィルム製造後にフィルムがカールしたり、フィルムの着色や濁り等が発生するため、可食フィルムの湿度に対する安定性について、さらなる向上が課題となっていた。
本発明者らが鋭意検討した結果、予想外にも、セルロール系樹脂よりも水酸基含有割合が高く、親水性の高いと考えられるポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と称することがある)を基剤に用い、吸湿性物質の中でも低分子量かつ特定温度以上の沸点を有する化合物を用いる場合にのみ、本発明の目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂を基剤とし、下記式(1)にて求められる水酸基含有量が0.2以上であり、分子量が300以下であり、1atmにおける沸点が100℃超である化合物(A)を含有する可食フィルムに存する。
水酸基含有量=水酸基のモル質量/分子量 …(1)
本発明によれば、基材としてPVA系樹脂を用いることにより、吸湿性化合物のなかでも分子量が小さく、かつ特定温度以上の沸点を有する化合物(A)分子がPVA系樹脂の有する水酸基と水素結合を形成する等してPVA系樹脂分子間に安定して存在するためか、可食フィルムの湿度に対する安定性が向上し、フィルム製造後にフィルムがカールしたり、フィルムの濁りや黄変等の発生を抑制できるという効果を有する。
かかる効果は、PVA系樹脂を基剤に用い、一般的吸湿性物質の中でも、低分子量かつ特定温度以上の沸点を有する吸湿性物質成分を用いる場合にのみ得られるという、特定物質を選択して用いる場合にのみ発現する特有の効果である。
また、従来一般品より親水性の高いと考えられるPVA系樹脂を基剤に用い、一般的吸湿性物質の中でも、特に吸湿性が高いと考えられる低分子量成分を用いる場合にのみ得られるという、従来一般の傾向とは異なる予想外の効果である。
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
本発明の可食フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を基剤とし、下記式(1)にて求められる水酸基含有量が0.2以上であり、分子量が300以下であり、1atmにおける沸点が100℃超である化合物(A)を含有する可食フィルムである。
水酸基含有量=水酸基のモル質量/分子量 …(1)
以下、順次説明する。
<水酸基含有化合物(A)>
本発明で用いる化合物(A)とは、低分子量の吸湿性物質であり、より詳細には、水酸基含有賞すなわち分子中の水酸基の割合が高く、低分子量でありかつ特定温度以上の沸点を有する化合物を意味する。
なお、本発明における水酸基含有量とは、化合物(A)1分子が含有する水酸基のモル質量を分子量で割った値であり、物質の吸湿性を表す数値である。本パラメータにおける「水酸基」とは、対象とする化合物1分子が有する水酸基および、カルボキシル基およびスルホン酸基の水酸基部分の総和を意味する。本発明において、かかる値が0.2以上の物質は親水性が高いために吸湿性物質であるといえる。
かかる化合物(A)は例えば、有機化合物と無機化合物が挙げられる。中でも、可食フィルムの有効成分や配合剤として適用される機会が多く、本発明の効果がより有効に得られる点で有機化合物が好ましい。
無機化合物としては例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物が挙げられ、有機化合物としては、例えば脂肪族化合物や芳香族化合物が挙げられる。可食フィルムの有効成分や配合剤として適用される機会が多く、本発明の効果がより有効に得られる点で好ましくは脂肪族化合物である。
脂肪族化合物としては、例えば脂肪族アルコール類、脂肪族カルボン酸類、脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、脂肪族スルホン酸類等が挙げられ、芳香族化合物としては、例えば芳香族アルコール類、芳香族カルボン酸類、芳香族ヒドロキシカルボン酸類、芳香族スルホン酸類等が挙げられる。可食フィルムの有効成分や配合剤として適用される機会が多く、本発明の効果がより有効に得られる点でアルコール類、カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類が好ましく、より好ましくはアルコール類である。
脂肪族アルコール類としては、水酸基を有する脂肪族化合物、例えばブタノール(分子量74、水酸基モル質量17)等のモノアルコール類;エチレングリコール(分子量62、水酸基モル質量34)、ジエチレングリコール(分子量106、水酸基モル質量34)、プロピレングリコール(分子量76、水酸基モル質量34)等のジアルコール類;グリセリン(分子量92、水酸基モル質量51)等の3価以上のアルコールであるポリオール類が挙げられる。また、本発明においては、水酸基を有する脂肪族化合物である点で、アスコルビン酸(分子量176、水酸基モル質量68)、エリソルビン酸(分子量176、水酸基モル質量68)等のラクトン構造含有化合物、グルコース(分子量180、水酸基モル質量85)、フルクトース(分子量180、水酸基モル質量85)、スクロース(分子量342、水酸基モル質量136)等の糖類も脂肪族アルコール類として挙げられる。
脂肪族カルボン酸類としては、カルボキシル基を有する脂肪族化合物、例えばギ酸(分子量46、水酸基モル質量17)、酢酸(分子量60、水酸基モル質量17)、プロピオン酸(分子量74、水酸基モル質量17)、酪酸(分子量88、水酸基モル質量17)等のモノカルボン酸類;シュウ酸(分子量90、水酸基モル質量34)、マロン酸(分子量104、水酸基モル質量34)、コハク酸(分子量118 、水酸基モル質量34)、グルタル酸(分子量132、水酸基モル質量34)、アジピン酸(分子量146、水酸基モル質量34)等のジカルボン酸類が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸類としては、水酸基とカルボキシル基を有する脂肪族化合物、例えばグリコール酸(分子量76、水酸基モル質量34)、2‐ヒドロキシ酸(分子量104、水酸基モル質量34)、3‐ヒドロキシ酸(分子量104、水酸基モル質量34)、4‐ヒドロキシ酸(分子量104、水酸基モル質量34)等のモノヒドロキシモノカルボン酸類;タルトロン酸(分子量120、水酸基モル質量51)、リンゴ酸(分子量134、水酸基モル質量51)等のモノヒドロキシジカルボン酸類;クエン酸(分子量192、水酸基モル質量68)、イソクエン酸、(分子量192、水酸基モル質量68)等のヒドロキシトリカルボン酸類;グリセリン酸(分子量106、水酸基モル質量51)等のジヒドロキシモノカルボン酸類;酒石酸(分子量150、水酸基モル質量68)等のジヒドロキシジカルボン酸類が挙げられる。
芳香族アルコール類としては、水酸基を有する芳香族化合物、例えばハイドロキノン(分子量110、水酸基モル質量34)、カテコール(分子量110、水酸基モル質量34)等が挙げられる。
芳香族カルボン酸類としては、カルボキシル基を含む芳香族化合物、例えばフタル酸(分子量166、水酸基モル質量34)、イソフタル酸(分子量166、水酸基モル質量34)、テレフタル酸(分子量166、水酸基モル質量34)等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸類としては、水酸基およびカルボキシル基を含む芳香族化合物、例えばサリチル酸(分子量138、水酸基モル質量34)、アミノサリチル酸(分子量153、水酸基モル質量34)、クマル酸(分子量164、水酸基モル質量34)等が挙げられる。
これら有機化合物はアルカリ金属またはアルカリ土類金属等の金属塩の状態であってもよい。また、本発明で用いる化合物(A)はいずれか1種類を単独で、または複数種を同時に使用することができる。
本発明で用いる化合物(A)の分子量は300以下であり、好ましくは50〜280、特に好ましくは100〜250である。かかる分子量が高すぎると基材たるPVA系樹脂との相互作用が不足し、本発明の効果が得られ難い傾向があり、上記範囲内である場合に本発明の効果が効率的に得られる傾向がある。
また、化合物(A)における、水酸基含有量すなわち水酸基モル質量/分子量は0.2以上である。好ましくは0.3〜0.9、さらに好ましくは0.32〜0.80、特に好ましくは0.34〜0.60である。かかる量が小さすぎる場合、水酸基による水素結合の形成が弱いため、可食フィルムにおけるPVA系樹脂分子間での安定化効果が不十分という傾向があり、上記範囲内にある場合本発明の効果が効率的に得られる傾向がある。
上述したように、かかる「水酸基含有量」すなわち水酸基モル質量/分子量は、化合物(A)の吸湿性を意味し、本パラメータにおける「水酸基」とは、対象とする化合物1分子が有する水酸基および、カルボキシル基およびスルホン酸基の水酸基部分の総和を意味する。なお、化合物(A)がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩である場合、該金属塩を形成していない分子の状態にて上記「水酸基」量を考慮するものとする。
本発明で用いる化合物(A)は分子中の水酸基(およびカルボキシル基、スルホン酸基)の割合が高い吸湿性物質の中でも、分子量が低い点で、更に吸湿性が高い傾向にある化合物であるといえる。
本発明で用いる化合物(A)は1atmにおける沸点が100℃超であり、好ましくは1atmにおける沸点が101〜300℃である。また、通常常温常圧にて液体または固体の状態である。本発明の効果がより効果的に得られる点で、好ましくは常温常圧で固体状態の物質である。
本発明で用いる化合物(A)の含有量は、可食フィルムの重量に対して通常1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは8〜40重量%、殊に好ましくは10〜20重量%である。かかる値が大きすぎる場合、可食フィルムとしての強度が不十分となる傾向があり、小さすぎる場合、薬効成分や食品成分配合量が少なくなり、目的とする薬効成分や食品成分を摂取するにあたり、多量のフィルムを服用または摂取する必要性が生じる傾向がある。
<基剤>
本発明の可食フィルムにおいては、基剤としてPVA系樹脂を用いる。かかるPVA系樹脂は水溶性樹脂として公知の樹脂を意味し、具体的には未変性のポリビニルアルコールや、水溶性を阻害しない範囲にてビニルアルコール単量体以外の単量体単位を含む変性ポリビニルアルコールが含まれる。
未変性のポリビニルアルコールとは、ビニルエステル系モノマーを重合し、得られるポリビニルエステルをケン化することにより製造することができる。ビニルエステル系モノマーとしては代表的には酢酸ビニルであり、その他に酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとは、例えば、共重合変性ポリビニルアルコールと後変性ポリビニルアルコールとがある。その変性量としては、変性基の性質により異なるが、通常1〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、より好ましくは1〜5モル%である。
上記の共重合変性ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルと、ビニルエステル系モノマーと共重合可能な他の不飽和単量体とを共重合させた後、ケン化することにより製造することができる。
上記他の不飽和単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート等が挙げられる。かかる不飽和単量体は、単独で、または複数種を併用して用いることも可能である。
また、変性ポリビニルアルコールとして、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂を用いることもできる。このような側鎖に1,2−ジオール結合を有するポリビニルアルコールは、例えば、(ア)酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)ビニルエステル系モノマーとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)ビニルエステル系モノマーと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)ビニルエステル系モノマーとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法等により得られる。
PVA系樹脂が側鎖に1,2−ジオール結合を有する構造単位を有する場合、水溶性が向上する傾向がある。したがって、PVA系樹脂が側鎖に1,2−ジオール結合を有する構造単位を有する場合、その含有量(変性量)は、上記とは異なり、通常0.1〜30モル%、好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは1〜10モル%である。
次に、前記の後変性PVA系樹脂はこれらのPVA系樹脂を後変性することにより製造することができる。かかる後変性に際しては公知の方法を採用可能であり、例えばアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
本発明において用いるPVA系樹脂は、水酸基数が多く、かつ経済性が良好である点で未変性PVA系樹脂であることが好ましい。
本発明において用いるPVA系樹脂の平均重合度は、通常300〜1000である。好ましくは300〜800、より好ましくは400〜600である。かかる平均重合度が低すぎるとフィルムにしたときの機械強度が低下する傾向にあり、平均重合度が高すぎるとフィルムの口腔内での溶解性が低下する傾向にある。また、その分子量は通常10000〜80000、好ましくは13000〜50000である。
また、PVA系樹脂の平均ケン化度は、通常80〜95モル%である。好ましくは83〜92モル%、より好ましくは85〜90モル%である。平均ケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向があり、高すぎるとフィルムの口腔内での溶解性が低下する傾向がある。
なお、上記平均重合度及び平均ケン化度は、JIS K6726に準じて測定される値である。
また、上記PVA系樹脂の4重量%水溶液の粘度としては、通常3〜10mPa・s(20℃)が好ましく、特には3〜8mPa・s(20℃)、更には4〜6mPa・s(20℃)が好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度などの機械的物性が低下する傾向があり、高すぎるとフィルムの口腔内溶解性が低下する傾向がある。
なお、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
これらのPVA系樹脂は、それぞれ単独で使用し、または2種以上を混合して併用することができる。
本発明で用いるPVA系樹脂は、特に重金属成分の含有量が低い、純度の高いものであることが好ましい。かかる重金属成分の含有量は通常30ppm以下、好ましくは20ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。
本発明においては、可食フィルムを構成する基剤の主たる成分がPVA系樹脂であり、基剤を構成する成分の通常80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上がPVA系樹脂である。基剤におけるPVA系樹脂の含有量が少なすぎると、本発明の効果が十分に得られ難い傾向がある。
なお、可食フィルムにおける基剤の含有量は、可食フィルムの重量に対して通常1〜99重量%、好ましくは15〜99重量%、より好ましくは30〜99重量%である。
また、基剤として、上記PVA系樹脂以外の樹脂であって、可食性かつ水溶性である樹脂(ポリマー)を併用することが可能である。例えばこのような樹脂としては、ゼラチン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等が挙げられる。これら基剤成分は1種類または2種類以上を用いることができる。
このような樹脂を併用する場合、その含有量は基剤の通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは0〜10重量%である。
本発明によれば、基材としてPVA系樹脂を用いる場合、吸湿性物質のなかでも低分子量かつ特定温度以上の沸点を有する化合物(A)を用いることにより、化合物(A)分子がPVA系樹脂の有する水酸基と水素結合を形成し、かつ1分子あたりの水素結合数が多いために、水酸基含有化合物(A)分子がフィルム中に安定して存在することが可能になると推測される。その結果、吸湿性物質の中でも、樹脂フィルムの配合剤として一般的に高分子成分よりもブリードアウトする傾向が高いと推測される、低分子成分のブリードアウトを抑制することが可能となり、可食フィルムの湿度に対する安定性が向上し、フィルム製造後にフィルムがカールしたり、フィルムの濁りや黄変等の発生を抑制できるという効果を有するものと推測する。
かかる効果は、PVA系樹脂を基剤に用い、吸湿性物質の中でも、低分子量かつ特定温度以上の沸点を有する吸湿性物質成分を用いる場合にのみ得られるものであり、特定物質を選択して用いる場合にのみ発現する特有の効果である。
また、可食フィルムの基材として従来一般に用いられているセルロース系樹脂より親水性の高いと考えられるPVA系樹脂を基剤に用い、吸湿性物質の中でも、特に吸湿性が高いと考えられる低分子量成分を用いる場合にのみ得られるという、従来一般の傾向とは異なる予想外の効果である。
<他成分>
本発明においては、化合物(A)以外の一般的に可食フィルムが包含する配合剤物(例えば、薬効成分、食品成分、添加剤等)を併用することが可能である。
薬効成分として例えば具体的には、下記のようなものが挙げられる。
・アスピリン(アセチルサリチル酸メチル)、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン等の解熱鎮痛剤、
・ジフェニルピラリン、メブヒドロリン、メキタジン、dl−クロルフェニラミン、フェニラミン、トリプロリジン、トンジルアミン、メトジラジン、カルビノキサミン、アリメマジン、クレマスチン、プロメタジン、ケトチフェン、イソチペンジル、d−クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、トリペレナミン、シプロヘプタジン、ジフェテロール、ホモクロルシクリジン、フェネタジン、イプロヘプチン等の抗ヒスタミン剤、
・アロクラミド、クロペラスチン、ペンタトキシベリン(カルベタペンタン)、チペピジン、ジブナート、デキストロメトルファン、コデイン、ジヒドロコデイン、ノスカピン、メチルエフェドリン、ジメモルファン等の鎮咳剤、
・チペピジン、メチルエフェドリン、グアヤコールスルホン酸、グアイフェネシン等の去痰剤、
・エフェドリン、メチルエフェドリン等の気管支拡張剤、
・サリチル酸メチル、ジフルニサルおよびアモキシプリン等のサリチル酸誘導体、ジクロフェナック、インドメタシンおよびスリンダク等のアリールアルカン酸類; カプロフェン、ナプロキセンおよびケトプロフェン等のプロピオン酸誘導体(プロフェン類);メフェナム酸、メクロフェナム酸およびフルフェナム酸等のN−アリールアントラニル酸類(フェナム酸誘導体);ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカムおよびメロキシカム等のオキシカム類;セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パルセコキシブおよびエトリコキシブ等のコキシブ類;ニメスリド等のスルホンアニリド類;およびテポキサリン等のシクロオキシゲナーゼ等の非ステロイド性抗炎症剤、
・テオフィリン、サルブタモール、アミノフィリン、デキストロメトルファン、シュードエフェドリン等の呼吸器系疾患治療剤、
・ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニィル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ラボルファノール、メペリジン、モルヒネ、オキシコドン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、トラマドール等のオピオイド類、
・フルオキセチン、パロキセチン、ブスピロン、カルマバゼピン、カルビドパ、レボドパ、メチルフェニデート、トラゾドン、バルプロ酸、アミトリプチリン、カルバマゼピン、エルゴロイド、ハロペリドール、ロラゼパム等の精神神経系薬物、
・ベザフィブラート、フェノフィブラート、ジェムフィブロジル、ナイアシン、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、エトフィブラート、ロバスタチン、シムバスタチン等の高脂血症治療薬、
・クロファジミン、シクロセリン、エチオナミド、リファブチン等の抗マイコバクテリア薬、
・アルベンダゾール、イベルメクチン、メベンダゾール、プラジクァンテル等の駆虫薬、
・バラシクロビル、ジダノシン、ファムシクロビル、バルガンシクロビル、インジナビル、ラミブジン、メシル酸ネルフィナビ、ネビラピン、リトナビル、スタブジン、燐酸オセルタミビル等の抗ウイルス薬、
・アモキシシリン、アンピシリン、セフロキシムナトリウム、セフロキシムアクセチル、ペニシリンGおよびV塩、セフジトレン、セフィキシム、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム等のβ−ラクタム系抗生物質、
・エリスロマイシンエストレート、エチルコハク酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン等のマクロライド系抗生物質、
・シプロフロキサシン、エノキサシン等のフルオロキノロン、
・塩酸デメクロサイクリン、ドキシサイクリンカルシウム、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン等のテトラサイクリン類、
・アルトレタミン、ブスルファン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、塩酸プロカルバジン、テモゾロミド等のアルキル化剤、
・メトトレキセート、メルカプトプリン、チオグアニン等の代謝拮抗物質、
・ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール等のホルモン薬および拮抗薬、
・燐酸エトポシド等の有糸分裂阻害剤、
・アザチオプリン、シクロスポリン、マイコフェノラートモフェチル、シロリムス、タクロリムス等の免疫抑制薬、
・塩酸アミノダロン、ジゴキシン、燐酸ジソピラミド、ドフェチライド、塩酸メキシレチン、塩酸モリシジン、塩酸プロカインアミド、塩酸プロパフェノン、塩酸ソタロール、硫酸キニジン、グルコル酸キニジン、トカイニド等の抗不整脈薬、
・メシル酸ドキサゾシン、ロサルタンカリウム、トランドラプリル、イルベサルタン、テルミサルタン、ロサルタン、塩酸クロニジン、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、塩酸メチルドーペート、カンデサルタン、バルサルタン、モエキシプリル、塩酸プラゾシン、塩酸ヒドロラジン、塩酸テラゾシン、塩酸ラベタロール、ミノキシジル、酢酸グアナベンズ、硫酸グアナドレル、塩酸グアンファシン、レセルピン等の抗高血圧薬、
・アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、ラベタロール、カルベジロール、メトプロロール、ナドロール、ピンドロール、ペンブトロール、チモロール、プロプラノロール、ソルタロール等のβ−アドレナリン作動性遮断薬、
・アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ベラパミル、ニモジピン、ニソルジピン等のカルシウムチャンネル遮断剤、
・二硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム等の硝酸塩、
・カルバマゼピン、エトスクシミド、フェルバメート、ガバペンチン、クロナゼパム、レベチラセタム、オキシカルバゼピン、ラモトリジン、フェノバルビタール、フェニトイン、チアガビン、プリミドン、トピラメート、ゾニサミド、バルプロ酸、プロエックスナトリウム等の抗痙攣薬、
・ミルタザピン、アモキサピン、ブプロピオン、フェネルジン、トラニルシプロミン、シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、ベンラファキシン、トラゾドン、マプロチリン、ネファゾドン、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、デキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン等の抗うつ薬、
・クロルプロマジン、チオリダジン、ロキサピン、モリンドン、オランザピン、クロザピン、クエチアピン、ジプラシドン、リスペリドン、フルフェナジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオチキセン、トリフルオペラジン等の抗精神病薬、
・アカルボース、メトホルミン、ナテグリニド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トラザミド、グリメピリド、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グリピシド、レパグリニド、グルブリド、トルブタミド等の抗糖尿病薬、
・エストラジオールおよびそのエステル、エストロゲン、エストロピペート、ヒドロキシプロゲステロン、酢酸ノルエチンドロン、ミフェプリストン、ラロキシフェン等のホルモン、
・アロプリノール、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン等の痛風治療薬。
また、上記食品成分は、摂取が可能なものであれば特に制限はなく、常温で固体または
液体いずれの状態であってもよい。
食品成分の具体例としては、例えば、香料、果汁、植物エキス、動物エキス、ビタミン等が挙げられる。より具体的には、メントール、レモンオイル、ペパーミント、スペアミント、シソ果汁、コエンザイムQ10、キダチアロエエキス、セイヨウオトギリソウエキス、マリアアザミエキス、イチョウ葉エキス、アカブドウ葉エキス、ノコギリヤシ果実エキス、パンプキン種子エキス、セイヨウニンジンボクエキス、セイヨウ力ノコソウエキス、ホップエキス、ローズヒップエキス、エヒナセアエキス、ショウガエキス、ニンニクエキス、DHA、EPA、ラクトフェリン抽出物、アスコルビン酸以外のビタミン、アミノ酸等が挙げられる。なお、上記の薬効成分および食品成分には、その性質上、薬効成分および食品成分の両方に該当するものもある。
これらの薬効成分および食品成分は、いずれか1種類を単独で、または他の薬効成分ま
たは食品成分と組み合わせて使用することができる。
上記薬効成分および食品成分以外の、一般的に可食フィルムが包含する添加物(例えば、可塑剤、賦形剤、乳化剤、着色剤、香料、防腐剤等)として、具体的には、分子量が300を超えるポリエチレングリコール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン等の分子量が300を超えるデンプン類、アラビアゴム、ペクチン、アラビノキシラン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、プルラン等のセルロース以外の分子量が300を超える多糖類、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のエステル類、食用色素、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ウイキョウ油、オレンジ油、カミツレ油、スペアミント油、ケイヒ油、チョウジ油、ハッカ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、ローズ油、ローマカミツレ油の油類、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の芳香族化合物等が挙げられる。これらの添加剤は1種類を単独で使用し、または2種類以上を併用することができる。
以上の薬効成分、食品成分および添加物の総含有量は、可食フィルムの重量に対して、通常0.001〜40重量%、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%である。かかる含有量が多すぎるとフィルムの成型性が低下する傾向があり、少なすぎると、目的とする薬効成分や食品成分を摂取するにあたり、多量のフィルムを服用または摂取する必要性が生じる傾向がある。
<可食フィルム>
本発明の可食フィルムの厚さは、通常、0.1〜1000μmであり、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜200μm、特に好ましくは10〜100μmである。
また、可食フィルムの大きさは、必要に応じて折り畳んだり、分割するなどして口腔内にはいるサイズであればよい。通常、0.1〜300cm2であり、好ましくは0.1〜200cm2である。
本発明の可食フィルムは、そのまま単層で用いることが可能である。
また、口腔内溶解性や崩壊性をさらに向上させたり、味マスキング性、可食フィルムの包装材に対する耐ブロッキング性など任意の機能を付与するために、本発明の可食フィルムの両面あるいは片面に水溶性高分子層を有する多層可食フィルムとして用いることも可能である。例えば、本発明の可食フィルムは多層フィルム構造において主剤となる「薬効成分、食品成分含有層」となり、かかる薬効成分、食品成分含有層の少なくとも一方面側に水溶性高分子層を有する多層可食フィルムが挙げられる。例えば2種2層、2種3層等の任意の多層構造が採用可能である。
上記水溶性高分子層に用いる水溶性高分子は、可食性の水溶性高分子である。例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルフタレート、セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース)、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)等のセルロース誘導体、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、キサンタンガム、カラギーカルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、カラゲーン、デキストラン、トラガカント、ゼラチン、ペクチン、ヒアルロン酸、ジェランガム、コラーゲン、カゼイン、キサンタンガム等が挙げられる。かかる水溶性高分子は1種のみ用いても、2種以上を併用することも可能である。
上記水溶性高分子層には、前記した一般的にフィルム状医薬品が包含する任意の添加物を含有してよい。
また、上記薬効成分、食品成分含有層と水溶性高分子層(I)との間に、水溶性高分子層(I)とは異なる水溶性高分子層(II)が存在する多層フィルム状医薬品も挙げられ、例えば3種3層、3種4層、3種5層、4種4層等の任意の多層構造が採用可能である。
さらに、本発明の可食フィルムは多層フィルム構造において副材となる「保護層」となり、例えば薬効成分、食品成分含有層の少なくとも一方面側に本発明の可食フィルムを有する多層可食フィルムが挙げられる。
<可食フィルムの製造方法>
本発明の可食フィルムは、溶融成形法や溶液から形成する方法などの通常の製法により製造することができる。好ましくは溶液から形成する方法である。
以下、溶液から形成する方法について説明する。
溶液から形成する方法に使用する媒体はPVA系樹脂の良溶媒である水や炭素数1〜3の低級アルコール(これらは1atmにおける沸点が100℃以下である)を用いることが好ましく、必要に応じてグリセリン、ポリオール等の多価アルコールを併用することが可能である。これらは1種類を単独で使用し、または2種類以上を併用することができる。好ましくは、水を用いる。
化合物(A)をPVA系樹脂溶液に配合し、さらに必要に応じて薬効成分や食品成分、添加物などの他の成分を配合してフィルム形成用溶液を調製する。
化合物(A)を配合するときのPVA系樹脂溶液におけるPVA系樹脂の濃度は、通常3〜30重量%であり、好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは8〜28重量%、特に好ましくは10〜25重量%である。
上記フィルム形成用溶液を基板上に塗布して製膜し、乾燥することにより本発明の可食フィルムを得ることが可能である。塗布方法は常法でよく、例えばスプレーコート法、キャスト法、塗布法等が挙げられ、好ましくはキャスト法である。
上記基板としては例えばPET樹脂等のポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂製基板や、ガラス、アルミ、ステンレス板などの無機基板等が挙げられる。
乾燥温度は通常20〜100℃、好ましくは40〜90℃であり、乾燥時間は通常1〜120分、好ましくは3〜60分、より好ましくは5〜30分である。
上記のようにして基板上に本発明の可食フィルムが得られる。
前記した多層可食フィルム医薬品を得る場合、上記で得られた可食フィルムに対し、任意の水溶性高分子層を公知の手法で形成することにより所望の多層可食フィルムを得ることができる。例えば、「薬効成分含有層」としての本発明の可食フィルムに対して水溶性高分子を溶融コート法によりコートしたり、水溶性高分子層を熱接着したりする方法が挙げられる。
このようにして得られる可食フィルムは、フィルム状衛生品、フィルム状医薬品、フィルム状食品として有用である。また、粉末状であったり、苦味等により直接口腔内に含むことが困難であったりする薬効成分や食品等を包装し、嚥下を容易にするための包材としても有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「%」および「部」とあるのは重量基準を意味する。
<評価>
(1)可食フィルム作成直後のカール評価
可食フィルム(10cm×10cmサイズ)を基板から剥離した直後のカール発生の有無について、フィルムを目視評価した。カールの発生が無いほど良好な可食フィルムであることを意味する。
(2)可食フィルムの外観評価
可食フィルムを23℃50%RH条件下にて20日保管した場合の外観について、黄色味を日本電色工業(株)の分光色差計(SE6000)のb*値で評価、フィルムに発生した白濁を目視で評価した。可食フィルムの外観が無色かつ透明であるほど良好な可食フィルムであることを意味する。
〔実施例1〕
基材として未変性ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、平均重合度500、20℃における4重量%水溶液粘度5mPa・s)20部、化合物(A)としてアスコルビン酸(分子量176、水酸基モル質量68、1atmにおける沸点、553 ℃)2部、水78部からなるフィルム形成用溶液(基剤溶液は、ポリビニルアルコール20重量%水溶液である)を、クリアランス230μmのアプリケータで基板たるPETフィルム上にキャストし、80℃、9分間乾燥させてPETフィルム上に可食フィルムを得た。基板より剥離した可食フィルムの大きさは10cm×10cmであり、厚みは30μmであった。
得られた可食フィルムについて、上記(1)、(2)の評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
基材として未変性ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%、平均重合度500、20℃における4重量%水溶液粘度5mPa・s)20部、化合物(A)としてアスコルビン酸(分子量176、水酸基モル質量68、1atmにおける沸点 553 ℃)6部、水74部からなるフィルム形成用溶液(基剤溶液は、PVA20重量%水溶液である)を、クリアランス230μmのアプリケータで基板たるPETフィルム上にキャストし、80℃、9分間乾燥させてPETフィルム上に可食フィルムを得た。基板より剥離した可食フィルムの大きさは10cm×10cmであり、厚みは30μmであった。
得られた可食フィルムについて、上記(1)、(2)の評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
基材としてHPMC(信越化学工業株式会社製メトローズ60SH−06)20部、化合物(A)としてアスコルビン酸(分子量176、水酸基モル質量68、1atmにおける沸点 553 ℃)2部、水78部からなるフィルム形成用溶液(基剤溶液は、HPMC20重量%水溶液である)を、クリアランス230μmのアプリケータで基板たるPETフィルム上にキャストし、80℃、9分間乾燥させてPETフィルム上に可食フィルムを得た。基板より剥離した可食フィルムの大きさは10cm×10cmであり、厚みは30μmであった。
得られた可食フィルムについて、上記(1)、(2)の評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
基材としてHPMC(信越化学工業株式会社製メトローズ60SH−06)20部、化合物(A)としてアスコルビン酸(分子量176、水酸基モル質量68、1atmにおける沸点 553 ℃)6部、水74部からなるフィルム形成用溶液(基剤溶液は、HPMC20重量%水溶液である)を、クリアランス230μmのアプリケータで基板たるPETフィルム上にキャストし、80℃、9分間乾燥させてPETフィルム上に可食フィルムを得た。基板より剥離した可食フィルムの大きさは10cm×10cmであり、厚みは30μmであった。
得られた可食フィルムについて、上記(1)、(2)の評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
基材としてPVA(ケン化度88モル%、平均重合度500、20℃における4重量%水溶液粘度5mPa・s)20部、配合化合物としてアロイン(日本粉末薬品株式会社製「キダチアロエエキスパウダーH」)(分子量418、水酸基モル質量119、1atmにおける融点145〜151℃)6部、水74部からなるフィルム形成用溶液(基剤溶液は、PVA20重量%水溶液である)を、クリアランス230μmのアプリケータで基板たるPETフィルム上にキャストし、80℃、9分間乾燥させてPETフィルム上に可食フィルムを得た。基板より剥離した可食フィルムの大きさは10cm×10cmであり、厚みは30μmであった。
得られた可食フィルムについて、上記(1)、(2)の評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
基材としてHPMC(信越化学工業株式会社製メトローズ60SH−06)20部、配合化合物としてアロイン(日本粉末薬品株式会社製「キダチアロエエキスパウダーH」(分子量418、水酸基モル質量119、1atmにおける融点145〜151℃)6部、水74部からなるフィルム形成用溶液(基剤溶液は、HPMC20重量%水溶液である)を、クリアランス230μmのアプリケータで基板たるPETフィルム上にキャストし、80℃、9分間乾燥させてPETフィルム上に可食フィルムを得た。基板より剥離した可食フィルムの大きさは10cm×10cmであり、厚みは30μmであった。
得られた可食フィルムについて、上記(1)、(2)の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016121202
HPMCを基剤として用いる場合には、低分子量の吸湿性物質を用いる場合(比較例1、2)であっても、高分子量の吸湿性物質(比較例4)を用いる場合であっても、可食フィルムの作成直後のカールが発生した。また、カール方向は全て基板と接した面を外側にしていたことから、かかるカールは、吸湿性物質が基材樹脂たるHPMCの分子間に安定に存在することが出来ず、基板と接しない面に向かって蒸発する溶媒分子と共に吸湿性物質が移行し、吸湿性物質が片面にのみ局在化する等して不均一となったことにより発生したものと考えられる。
また、フィルムの外観評価について、高分子量の吸湿性物質(比較例4)を用いる場合には黄色に着色し、濁りが発生した。また、低分子量の吸湿性物質を用いる場合(比較例1、2)には無色であったものの、比較例2ではフィルムに濁りが観察された(比較例1では、ごくわずかに白濁が観測されたが、実用には問題ないレベルであった。)。かかる濁りは、吸湿性物質が基材樹脂たるHPMCの分子間に安定に存在することが出来なかったため、長期間放置後には吸湿性物質がブリードアウトすることにより発生したものと考えられる。
これに対して、PVA系樹脂を基剤として用い、かつ低分子量の吸湿性物質である水酸基含有化合物(A)を用いる場合(実施例1および2)においては、可食フィルムの作成直後のカール評価およびフィルムの外観評価共に良好なものとなった。実施例2においては、ごくわずかに白濁が観測されたが、実用には問題ないレベルであった。一方、PVA系樹脂を基剤として用い、かつ高分子量の吸湿性物質である水酸基含有化合物を用いる場合(比較例3)においては、可食フィルムの作成直後にカールが発生し、かつフィルムの外観評価では黄色着色が観察された。これは、吸湿性化合物において、分子量の大きい化合物より、分子量の小さい化合物(A)のほうが、PVA系樹脂の水酸基と、多くの水素結合を形成することができ、その結果、分子量の小さい水酸基含有化合物(A)のほうが安定的にPVA系樹脂に存在できたためであると推測される。
そもそも本発明で用いる化合物(A)分子は、分子量が低いにも関わらず、分子中の水酸基の割合が高いため、吸湿性物質の中でも吸湿性が高い傾向にあると考えるのが通常であるが、このような化合物と、基材として従来一般に用いられているセルロース系樹脂よりも水酸基が豊富で水溶性が高いと思われるPVA系樹脂を組み合わせると、より吸湿性が高く、不安定な可食フィルムが得られると予想されるため、通常の当業者であれば避けるものである。しかしながら本発明者らはあえてこれらを組み合わせる事で、予想外にも上記の効果が得られることを見出した。
上記の結果より、かかる本発明の効果が、特定低分子量の吸湿性物質である化合物(A)を用い、基材樹脂としてPVA系樹脂を用いる場合のみ得られることが明らかである。
本発明の可食フィルムは、湿度に対する安定性、すなわちフィルム製造後にフィルムがカールしたり、フィルムの着色や濁り等が発生することがないので、フィルム状衛生品、フィルム状医薬品、フィルム状食品として有用である。また、粉末状であったり、苦味等により直接口腔内に含むことが困難であったりする薬効成分や食品等を包装し、嚥下を容易にするための包材としても有用である。

Claims (5)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂を基剤とし、下記式(1)にて求められる水酸基含有量が0.2以上であり、分子量が300以下であり、1atmにおける沸点が100℃超である化合物(A)を含有する可食フィルム。
    水酸基含有量=水酸基のモル質量/分子量 …(1)
  2. 上記化合物(A)の含有量が、可食フィルムの重量に対して1〜60重量%である請求項1に記載の可食フィルム。
  3. 上記化合物(A)が、固体である請求項1または2いずれかに記載の可食フィルム。
  4. 上記ポリビニルアルコール系樹脂が、平均重合度300〜1000のポリビニルアルコ
    ール系樹脂である請求項1〜3いずれかに記載の可食フィルム。
  5. 上記ポリビニルアルコール系樹脂が、ケン化度80〜95モル%のポリビニルアルコー
    ル系樹脂である請求項1〜4いずれかに記載の可食フィルム。
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