JP2016120464A - 汚泥の脱水方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】汚泥の脱水処理に対し、従来の汚泥脱水剤よりも少ない添加量で粒径が大きく強固な凝集フロックを形成することにより、処理液量が多く、処理後のSS量が少なく、且つ脱水後のケーキ含水率が低い汚泥の脱水方法を提供する。【解決手段】汚泥に汚泥脱水剤、無機凝結剤、汚泥脱水剤の順に添加混合した後、脱水処理する汚泥の脱水方法。【選択図】なし

Description

本発明は、汚泥の脱水方法に関し、詳しくは、アミジン構成単位及び(メタ)アクリル酸構成単位を有するアミジン系両性ポリマーから成る汚泥脱水剤、無機凝結剤及び前記汚泥脱水剤をこの順に汚泥に添加混合した後、脱水処理する汚泥の脱水方法に関する。
従来、下水処理場、し尿処理場、食品処理場、及び産業廃棄物処理場等の廃水より生じる汚泥の脱水は、カチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤が使用されている。しかしながら、近年の汚泥発生量の増加及び汚泥性状の悪化により、従来のカチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤では、汚泥の処理量に限界があった。凝集後のフロック粒径とフロック強度、SS回収率、脱水後のケーキ含水率等の点で従来の高分子凝集剤の処理性能は必ずしも満足できるものではなく、その改善が求められていた。
特に初沈汚泥あるいは混合生汚泥(初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥)を微生物菌体により嫌気性消化処理した消化汚泥は、以下のような特徴があり、他の汚泥に比較して脱水処理することが困難である。
(1)浮遊固形物(SS)の粒径が小さく、汚泥の比重が低い。
(2)凝集フロックの核になる繊維が少ない。
(3)汚泥コロイド値で示される負電荷を有するコロイド物質を多く含む。
(4)炭酸塩及びリン酸塩等の無機塩類を多く含む。
前記消化汚泥を遠心脱水機又はスクリュープレス脱水機による脱水処理は、特に大きな凝集フロック粒径及びフロック強度が要求される。これに対し、下水消化汚泥に無機凝集剤を添加混合した後に、アミジン系ポリマーと両性高分子凝集剤を混合してなる汚泥脱水剤を添加混合した後、脱水する汚泥の処理方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この汚泥の処理方法によれば、遠心脱水機による脱水処理においても、大きな粒径の凝集フロック及び高いフロック強度から、得られる脱水ケーキ含水率は改善されるものの、上記問題点を全て満足できるものとは言い難い。
更に、近年、微生物菌体による嫌気性消化処理により排出されるメタンガスは、ガス発電燃料や都市ガス代替利用等に有効利用されることが期待されている。そこで、より多くのメタンガスを回収するため、汚泥の消化処理を行う処理場が多くなってきている。その中でも特に、食品残渣を含む産業廃棄物工場から排出される消化汚泥には、微生物菌体の増殖や溶菌等で生じた糖類やタンパク質、及び微生物菌体が含まれている。そのため、汚泥の粘性が高く、下水消化汚泥の処理は困難となっており、従来の技術では処理ができず、更なる処理方法の改善が期待されている。
従来のカチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、及びアミジン系ポリマーの凝集性能を改良するため、両性タイプのアミジン系ポリマーが提案されている(特許文献2)。例えば、両性タイプのアミジン系ポリマーに、無機凝結剤を併用し消化汚泥に適用することも考えられるが、具体的効果については不明である。
食品残渣を含む産業廃棄物工場から排出される消化汚泥を脱水処理する処理方法において、従来の処理技術は、凝集後のフロック粒径とフロック強度、SS回収率、脱水後のケーキ含水率等の問題点を全て解決できず、更なる処理技術の改善が強く望まれている。
特開平10−15600号公報 特開平8−243600号公報
本発明における課題は、汚泥の脱水処理に対し、従来の汚泥脱水剤よりも少ない添加量で粒径が大きく強固な凝集フロックを形成することにより、処理液量が多く、処理後のSS量が少なく、且つ脱水後のケーキ含水率が低い汚泥の脱水方法を提供することである。
そこで、本発明者は、上記のような要求性能を持つ汚泥脱水剤を用いた汚泥の脱水方法について鋭意検討した結果、消化汚泥にアミジン構成単位及び(メタ)アクリル酸構成単位を有するアミジン系両性ポリマーから成る汚泥脱水剤、無機凝結剤及び前記汚泥脱水剤をこの順に添加混合した後、脱水する処理方法は、従来のアミジン系ポリマーと両性高分子凝集剤を混合した汚泥脱水剤や両性タイプのアミジン系ポリマーからなる汚泥脱水剤を用いた場合に比較して、より少ない添加量で大きく強固な凝集フロックを形成し、処理液のSS量が少なく、脱水後のケーキ含水率が低くなり、優れた汚泥の脱水方法となり得ることを見出し、本発明に達した。
すなわち、本発明は、汚泥に汚泥脱水剤、無機凝結剤及び汚泥脱水剤をこの順に添加混合した後、脱水処理する汚泥の脱水方法である。
また、本発明は、前記汚泥脱水剤として、アミジン構成単位及び(メタ)アクリル酸構成単位を有するアミジン系両性ポリマーから成る汚泥脱水剤を用いる前記の汚泥の脱水方法である。
また、本発明は、前記アミジン構成単位が下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミジン構成単位である前記の汚泥の脱水方法である。
[R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。Xは、アニオン基を示す。]
更に本発明は、前記汚泥脱水剤として全モノマー構成単位に対するアミジン構成単位の割合が20〜70モル%、(メタ)アクリル酸構成単位の割合が3〜30モル%である汚泥脱水剤を用いる前記の汚泥の脱水方法である。
本発明の汚泥の脱水方法は、従来の汚泥の脱水方法よりも少ない添加量で粒径が大きく強固な凝集フロックを形成することにより、処理液量が多く、処理後のSS量が少なく、且つ脱水後のケーキ含水率が低い汚泥の脱水方法を提供することができる。また、汚泥、特に食品残渣を含む産業廃棄物工場から排出される消化汚泥の脱水処理を効率良く行うことができる。そのため、スクリュープレス型脱水機を用いた脱水処理に要求される脱水初期での良好な水切れ、及び脱水の際に凝集フロックに働くせん断力に対して優れた耐性を有する強固な凝集フロックを形成することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する汚泥は、特に限定し得ないが、初沈汚泥あるいは混合生汚泥(初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥)を微生物菌体により嫌気性消化処理した難脱水性の消化汚泥に対しても本発明の汚泥の脱水方法を好適に使用することができる。
<消化汚泥>
本発明で使用する消化汚泥は、下水処理場、し尿処理場、製紙工場、化学工場、畜産工場、食品残渣を含む産業廃棄物工場から排出される消化汚泥であり、特に、食品残渣を含む産業廃棄物工場から排出される消化汚泥が好適である。食品残渣には、食品の製造加工業から発生する動植物性残渣、流通段階で売れ残り廃棄される賞味期限切れの食品、外食産業や家庭から出る調理くず、食べ残し等が含まれる。
本発明で使用する消化汚泥は、蒸発残留物、毛管吸引時間、揮発性浮遊物質、Mアルカリ度、及びコロイド荷電量を測定することで消化汚泥の汚泥性状を示すことができる。
本発明で使用する消化汚泥の蒸発残留物(以下、「TS」と略す。)は、1質量%以上で毛管吸引時間(以下、「CST」と略す。)が1000秒以上が好ましく、TSは、1質量%以上でCSTが2000秒以上がより好ましい。
TSが1質量%以上でCSTが1000秒以上の消化汚泥は粘性が高い。これは微生物菌体が増殖や溶菌等で糖類やタンパク質となり、あるいは微生物菌体が汚泥の粘性増加に起因しているものと思われる。
本発明で使用する消化汚泥の揮発性浮遊物質(以下、「VSS」と略す。)は20質量%以上が好ましい。また、70質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。ここでのVSSは、残存する微生物菌体、あるいは微生物菌体が一部増殖や溶菌したことによる糖類やタンパク質の塊であり、VSSが前記範囲内であれば、汚泥の消化は十分に進行しており、糖類やタンパク質は汚泥中に存在し、更に微生物菌体も共存していることを示している。前記範囲内であれば、VSSの値が大きい程、微生物菌体由来の糖類やタンパク質が汚泥中に多く存在する傾向となる。また、前記範囲内であれば、VSSの値が小さい程、微生物菌体が増殖や溶菌等せずに存在する傾向となる。
本発明で使用する消化汚泥のMアルカリ度は、1000mg/L以上が好ましく、10000mg/L以上がより好ましい。また、20000mg/L以下が好ましい。Mアルカリ度が前記範囲内であれば、汚泥の消化は十分に進行していることを示している。前記範囲内であれば、Mアルカリ度の値が大きい程、汚泥中に無機塩類は多く存在し完全消化の傾向となる。また、前記範囲内であれば、Mアルカリ度の値が小さい程、汚泥中に存在する無機塩類は少なくなる傾向にあり、消化は完全には進行していない傾向となる。
本発明で使用する消化汚泥のコロイド荷電量(以下、「Cv」と略す。)は、−30meq./L以上が好ましい。また、−1meq./L以下が好ましく、−10meq./L以下がより好ましい。ここでのCvは、消化汚泥を3000rpmで5分間遠心分離した上澄み液の値である。これは微生物菌体の増殖や溶菌等により生じたマイナス荷電をもつ糖類やタンパク質が含まれていることを示している。Cvが前記範囲内であれば、汚泥の消化は進行しており、糖類やタンパク質は汚泥中に存在し、更に微生物菌体も共存していることを示している。前記範囲内であれば、Cvの値が小さい程、微生物菌体由来の糖類やタンパク質が汚泥中に多く存在する傾向となる。また、前記範囲内であれば、Cvの値が大きい程、微生物菌体が増殖や溶菌等せずに存在する傾向となる。
<汚泥脱水剤>
本発明の汚泥脱水剤(以下、「本汚泥脱水剤」と略す。)は、アミジン構成単位及びアニオン性構成単位として(メタ)アクリル酸構成単位を有するアミジン系両性ポリマーから成る。
アミジン系両性ポリマーは、下記一般式(3)、(4)、(5)及び/又は(6)で表されるモノマーを共重合し、得られたコポリマーを酸加水分解反応及びアミジン化反応を行うことにより得ることができる。

[Rは水素原子又はメチル基を示す。]
本発明に用いる一般式(3)で表される化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。その中でも得られるアミジン系両性ポリマーの凝集性能から特にアクリロニトリルが好ましい。

[Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
本発明に用いる一般式(4)で表されるN−ビニルカルボン酸アミド化合物としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルブチルアミド等が挙げられる。その中でも得られるアミジン系両性ポリマーの凝集性能から特にN−ビニルホルムアミドが好ましい。

[Rは水素原子又はメチル基を示し、R、Rは、各々同一又は異なる水素又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
本発明に用いる一般式(5)で表されるアクリルアミド系化合物としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルエチル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピル(メタ)アクリルアミド、エチルプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。その中でも得られるアミジン系両性ポリマーの凝集性能から特にアクリルアミドが好ましい。

[Rは水素原子又はメチル基を示し、Aは水素原子又はカチオン基を示す。]
本発明に用いる一般式(6)で表されるアクリル酸系化合物としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸カリウム塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム塩、メタクリル酸カリウム塩等が挙げられる。その中でも得られるアミジン系両性ポリマーの凝集性能から特にアクリル酸ナトリウム塩が好ましい。
一般式(3)、(4)、(5)及び/又は(6)で表されるモノマーを共重合する際のモノマーの重合モル比は、次の通りである。すなわち、一般式(3)で表されるモノマーは、通常35モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。また、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。一般式(4)で表されるモノマーは、通常35モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。また、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。一般式(5)及び/又は(6)で表されるモノマーは、通常3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましい。また、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
更に、一般式(3)及び(4)の重合モル比は、接近している方がより好ましい。これは、両者の高い交互共重合性及び重合後の酸加水分解反応により、一般式(4)から成るモノマー構成単位の一部はビニルアミン構成単位となる。その後、一般式(3)から成るモノマー構成単位とビニルアミン構成単位との側鎖間におけるアミジン化反応によりアミジン環構造を形成し、前記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミジン構成単位となる。
アミジン系両性ポリマーの製造方法は、特に制限されず、通常のラジカル重合法が用いられ、塊状重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相乳化重合等のいずれも選択することができる。重合反応は、一般に、不活性ガス気流下、温度30〜100℃の範囲で実施される。溶媒中で重合を行う場合、モノマー濃度は通常、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。重合開始剤は一般的なラジカル重合開始剤が用いられるが、好ましくはアゾ系開始剤であり、例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、生成するポリマーの重合度や粘度等を考慮して適宜決められるが、通常、原料全モノマーに対して100〜10000ppmである。重合反応液のpHはモノマー溶液調合液の安定性から5〜8に調節することが好ましい。
得られるポリマーはそのままの状態で、あるいは溶媒で希釈してすなわち溶液状態又は懸濁状態で酸加水分解反応及びアミジン化反応(以下、「酸変性反応」と略す。)に供することができる。あるいは公知の方法で脱溶媒、乾燥することでポリマーを固体として取り出し、酸変性反応に供することもできる。通常は、水懸濁液中で酸変性反応に供される。酸変性反応のポリマー濃度としては、1〜20質量%である。1質量%以上のポリマー濃度では、得られるポリマーの品質上特に問題はなく、かつ生産性を高く維持することができる。また、20質量%以下のポリマー濃度では、酸変性反応が進むにつれてポリマー水溶液粘度の増加を抑制することができ、これにより反応に使用する攪拌翼の回転不良で生じる酸変性反応の系内不均一化を回避することができる。
酸変性反応に用いられる酸は、一般的には鉱酸であり、反応性が高いことから好ましくは塩酸である。酸の添加量は、N−ビニルカルボン酸アミド構成単位と一般式(5)及び/又は(6)で表されるモノマー構成単位の合計に対して、通常、0.5倍当量以上が好ましく、1.0倍当量以上がより好ましい。また、5.0倍当量以下が好ましく、2.0倍当量以下がより好ましい。反応温度は、通常、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。反応時間は通常、1〜20時間である。
酸変性反応の際に、反応の阻害あるいは得られたポリマーの品質上の問題がなければ、その他の添加剤を適宜加えることができる。例えば、重合後の残存モノマーを低減させるための添加剤として、硫酸ヒドロキシアンモニウムを挙げることができる。
このようにして得られたアミジン系両性ポリマーの全構成単位に対するアミジン構成単位の割合は、通常、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。また、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。アミジン系両性ポリマーの全構成単位に対する(メタ)アクリル酸構成単位の割合は、通常、3モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
本汚泥脱水剤の分子量は、その指標となる1Nの塩化ナトリウム水溶液中、0.1g/dLのポリマー水溶液として30℃で測定した還元粘度は、通常、0.1dL/g以上が好ましく、1dL/g以上がより好ましい。また、10dL/g以下が好ましく、5dL/g以下がより好ましい。0.1dL/g以上の還元粘度では、本汚泥脱水剤を汚泥に添加混合し、その後、無機凝結剤、汚泥脱水剤の順に添加混合した後の凝集フロックは大きく強固となる。また、10dL/g以下の還元粘度では、汚泥に本汚泥脱水剤を添加混合しても、十分に反応することができる。これにより、大きく強固な凝集フロックを形成させることができる。
前記範囲の還元粘度を有するアミジン系両性ポリマーを製造するためには、必要に応じて重合を連鎖移動剤の存在下で行うことができる。連鎖移動剤は適宜添加され、その種類は特に制限されず、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸水素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等の還元性の無機塩類が挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、生成するポリマーの重合度や粘度等を考慮して適宜決められるが、原料全モノマーに対して通常1〜1000ppmである。
<汚泥の脱水方法>
本発明の汚泥の脱水方法は、前述した本汚泥脱水剤を例えば、TSが1質量%以上でCSTが1000秒以上、VSSが1〜50質量%、Mアルカリ度が1000〜20000mg/L、Cvが−30〜−1meq./Lを示す消化汚泥に代表される汚泥に添加混合し、その後、無機凝結剤、汚泥脱水剤の順に添加混合した後、脱水処理する汚泥の脱水方法である。
本汚泥脱水剤の汚泥への添加方法及び凝集フロックの形成方法としては、本汚泥脱水剤を用いる以外は公知の方法が適用できる。すなわち、本汚泥脱水剤を公知の方法により汚泥に添加することで凝集フロックを形成させることができる。
本汚泥脱水剤の汚泥への添加方法としては、汚泥脱水剤を水に0.2〜0.3質量%の濃度で溶解させた後、汚泥に添加することが好ましい。また、本汚泥脱水剤は、他のカチオン性ポリマー、両性ポリマー、ノニオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、及び/又はアミジン系ポリマーを混合した1剤型薬剤として添加しても良い。場合によっては、本汚泥脱水剤を粉末のまま汚泥に添加しても良い。また、本汚泥脱水剤に加えて、本汚泥脱水剤の水への溶解性を向上させるために酸性物質を添加しても良い。酸性物質としては、例えば、スルファミン酸が挙げられる。
凝集フロックを形成させた後は、脱水機を用いて凝集フロックを脱水し、脱水ケーキを得ることにより汚泥脱水処理を完了することができる。脱水機としては、特に制限はなく、例えば、フィルタープレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機、真空型脱水機、ベルトプレス型脱水機、遠心型脱水機、多重円板型脱水機が挙げられる。本発明の汚泥の脱水方法では、安定して凝集フロックの粒径と凝集フロックの強度を保ちやすい点から、スクリュープレス型脱水機を使用することが好ましい。
本汚泥脱水剤の添加量は、汚泥の質、濃度等により異なり画一的に決められないが、大まかな目安として、汚泥が消化汚泥の場合には消化汚泥の乾燥固形物100質量部に対し、通常、0.1質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、3.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以下がより好ましい。本汚泥脱水剤の前記添加量が0.1質量部以上では、十分なフロック粒径及びフロック強度を有する凝集フロックが形成されやすい。また、本汚泥脱水剤の前記添加量が3.0質量部以下では、本汚泥脱水剤が過剰となることで形成される凝集フロックの粒径が小さくなったり、処理速度が遅くなったり、脱水ケーキの含水率が高くなったりすることを抑制しやすい。
本発明の汚泥の脱水方法においては、本汚泥脱水剤に加えて、無機凝結剤を併用し、本汚泥脱水剤、無機凝結剤及び本汚泥脱水剤をこの順に添加混合することが必須である。
無機凝結剤としては、例えば、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、ポリ鉄(ポリ硫酸鉄、ポリ塩化鉄等)が挙げられる。
無機凝結剤の汚泥への添加量は、汚泥の乾燥固形物100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。無機凝結剤の前記添加量が1質量部以上では、無機凝結剤を併用した効果が得られやすく、汚泥と本汚泥脱水剤との反応により得られる凝集物と無機凝結剤との荷電中和による凝結作用を促すことで本汚泥脱水剤の性能がより発揮されやすくなる。また、無機凝結剤の前記添加量が50質量部以下では、無機凝結剤の添加量増加に伴って生じる脱水ケーキの含水率増加を抑制することができる。
本汚泥脱水剤は、比較的分子量が低い有機凝結剤と比較的分子量が高い高分子凝集剤である場合がある。また、本汚泥の脱水方法においては、本汚泥脱水剤、無機凝結剤に加えて、有機凝結剤を併用することが好ましい。
有機凝結剤としては、例えば、ポリアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアルキルアミノアルキルメタクリレートのアルキルクロライド4級塩、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレートのアルキルクロライド4級塩−アクリルアミド)、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
有機凝結剤は、特に制限はないが、本汚泥脱水剤を添加する前の工程で添加することが好ましい。有機凝結剤の汚泥への添加量は、汚泥の乾燥固形物100質量部に対し、0.01〜1質量部が好ましい。有機凝結剤の前記添加量が0.01質量部以上では、有機凝結剤と汚泥との反応により予め細かな凝集フロックが形成し、本汚泥脱水剤の脱水性能が発揮されやすくなる。また、有機凝結剤の前記添加量が1質量部以下では、薬剤の処理コストを抑えることができる。
以上説明した本発明の汚泥の脱水方法によれば、汚泥、特に食品残渣を含む産業廃棄物工場から排出される消化汚泥の脱水処理において、大粒径で且つ高強度の凝集フロックを安定して形成させることができ、SS量が少ない処理水及び含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。
汚泥への本汚泥脱水剤及び無機凝結剤の添加順序を汚泥脱水剤→無機凝結剤→汚泥脱水剤にすることで、本発明が対象としている無機塩類に加えて、微生物菌体の増殖や溶菌等で生じた糖類やタンパク質、及び微生物菌体が含まれている消化汚泥に対して、効果的に汚泥と汚泥脱水剤及び無機凝結剤とが荷電中和反応及びポリマー鎖による橋かけ反応が起こる。更に本汚泥脱水剤は、より疎水性の高いアミジン構造単位を有することにより、アミジン系カチオン性ポリマー及びエステル系ポリマーを併用したり、あるいは本汚泥脱水剤及び無機凝結剤を用いて本発明の汚泥の脱水方法とは異なる脱水方法を行っても、強固な凝集フロックを形成し易くなり、その結果、SS量が少ない処理水及び含水率の低い脱水ケーキが得られ易くなる。
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載によって限定されるものではない。なお、実施例と比較例における「%」は特に断りのない限り「質量%」を示す。また、以下の製造例及び比較製造例で得られた各ポリマーについては、その物性を示す指標として下記に示す還元粘度、カチオン当量、及び0.5%不溶解分量の測定を行った。
[還元粘度の測定]
製造例及び比較製造例で得られた3%ポリマー水溶液あるいは比較製造例で得られた粉末状ポリマーを1規定の塩化ナトリウム水溶液中に、純分(別途、105℃で90分間熱風乾燥した後の乾燥残分より算出)0.1g/dLの濃度に溶解し、ガラスフィルターでろ過後、30℃においてオストワルド型粘度計を用いて流下時間を測定した。同様に、1規定塩化ナトリウム水溶液の流下時間を測定し、次式により還元粘度を算出した。
[数1]
還元粘度 ηSP/C(dL/g)=(t−t)/t/0.1
t:サンプル溶液の流下時間[秒]
:1規定塩化ナトリウム水溶液の流下時間[秒]
[カチオン当量値の測定]
製造例及び比較製造例で得られたポリマーサンプルのカチオン当量値は、以下に示すコロイド滴定法により測定した。
(1)コニカルビーカーに脱イオン水90mLを計り取り、下記(2)の方法で調製したポリマーサンプル500ppm水溶液の10mLを加え、塩酸水溶液でpHを3.0に調整し、約10分間撹拌した。次に、指示薬として0.1%トルイジンブルー水溶液を2〜3滴加え、N/400−ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400−PVSK)で滴定した。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色し、10秒間以上保持する時点を終点とした。N/400−PVSKの滴定量から、以下に記載の式によりカチオン当量値(Kv)を算出した。
(2)前記ポリマーサンプル500ppm水溶液の調製は以下の方法で行った。共栓付三角フラスコに製造例及び比較製造例で得られた3%ポリマー水溶液1.0gを、あるいは製造例及び比較製造例で得られた粉末状ポリマー0.03gを精秤し、脱イオン水11mLを加えて溶解した。この5mLを25mLメスフラスコにて脱イオン水でメスアップした。
[数2]
カチオン当量値 Kv(meq./g)
=(N/400−PVSK滴定量)×(N/400−PVSKの力価)/2
[0.5%不溶解分量の測定]
製造例及び比較製造例で得られた3%ポリマー水溶液83.3gを、あるいは製造例及び比較製造例で得られた粉末状ポリマー2.5gを脱イオン水に溶解し、0.5%ポリマー水溶液500gを調製した。これを直径20cm、目開き180μmの篩でろ過し、篩上の残留物(不溶解分)の水分を拭き取り、その質量を測定した。
製造例及び比較製造例で用いた原料を以下に示す。
[モノマー]
N−ビニルホルムアミド(以下、「NVF」と略す。)、三菱レイヨン社製、純度99.2%。
アクリロニトリル(以下、「AN」と略す。)、三菱レイヨン社製、純度100%。
アクリルアミド(以下、「AAM」と略す。)、三菱レイヨン社製、純度50%水溶液。
アクリル酸(以下、「AA」と略す。)、三菱化学社製、純度100%。
N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド4級塩(以下、「DME」と略す。)、大阪有機化学工業社製、純度80%水溶液。
[開始剤]
2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、商品名V−50(以下、「V−50」と略す。)、和光純薬社製、純度100%。
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、商品名DAROCUR 1173(以下、「D−1173」と略す。)、Ciba社製、純度100%。
[分散媒]
シクロヘキサン(以下、「CHX」と略す。)、林純薬社製、純度100%。
[界面活性剤]
ポリオキシエチレンオレイルエーテル、商品名ノイゲンET140E(以下、「ノイゲンET140E」と略す。)、第一工業製薬社製、HLB=14.0、純度100%。
[添加剤]
塩化アンモニウム(以下、「AC」と略す。)、和光純薬社製、純度100%。
硫酸ヒドロキシアンモニウム(以下、「HX」と略す。)、キシダ化学社製、純度100%。
[酸]
塩酸(以下、「HCA」と略す。)、和光純薬社製、純度35%水溶液。
[連鎖移動剤]
次亜リン酸(以下、「HP」と略す。)、関東化学社製、純度100%。
<アミジン系両性ポリマーの製造>
[製造例1]
攪拌機、冷却管、滴下ロート、及び窒素ガス導入管を備えた1リットルの4ツ口フラスコにCHX338.0g、ノイゲンET140E3.0g、AC5.7g、及び脱イオン水39.7gを入れ、攪拌下50℃に昇温した。
次に、NVF50.8g、AN37.6g、AAM50.4g、及び脱イオン水7.8gを十分に混合し、モノマー水溶液を調製した(NVF:AN:AAM=40:40:20(モル比)、モノマー濃度60%)。これを滴下ロート内に充填した。
窒素ガス気流下、V−50の12%水溶液2.8gを添加した後、前記モノマー水溶液を3時間かけて前記フラスコ内に滴下した。その後、50℃で1時間保持し、更に55℃で2時間保持した。これにより、NVF−AN−AAMポリマーを得た。得られたポリマーをフラスコから取り出し、ロートにて固液分離した。分離した湿粉状のポリマーを減圧乾燥機にて、真空下、60℃で10時間乾燥させた。これにより、粉末状NVF−AN−AAMポリマーを得た。
攪拌機、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた1リットルの3ツ口フラスコに脱イオン水466.9g及び前記粉末状ポリマー15.0gを入れ、攪拌下50℃に昇温した。昇温後、HXの25%水溶液3.6gを添加し、1時間保持した。その後、70℃に昇温し、HCA14.5g(NVF及びAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)添加し、1時間保持した。更に80℃で10時間保持した。これにより、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA1)水溶液を得た。
[製造例2]
粉末状NVF−AN−AAMポリマーを得る工程において使用するモノマーを、NVF61.8g、AN45.8g、AAM12.9g、及び脱イオン水を25.7g(NVF:AN:AAM=47.5:47.5:5(モル比)、モノマー濃度60%)、3%のアミジン系両性ポリマー水溶液を得る工程においてHCAを12.7g(NVF及びAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)、及び脱イオン水を468.7gに変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA2)水溶液を得た。
[製造例3]
粉末状NVF−AN−AAMポリマーを得る工程において使用するモノマーを、NVF43.5g、AN32.2g、AAM74.0g、及び脱イオン水を3.7g(NVF:AN:AAM=35:35:30(モル比)、モノマー濃度60%)、3%のアミジン系両性ポリマー水溶液を得る工程においてHCAを15.7g(NVF及びAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)、及び脱イオン水を465.7gに変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA3)水溶液を得た。
[製造例4]
実施に当たり、AAは予め48%水酸化ナトリウムで全て解離させ、脱イオン水で調整し純度50%のアクリル酸ナトリウム水溶液(以下、「AA−Na」と略す。)として使用した。
粉末状NVF−AN−AA−Naポリマーを得る工程において使用するモノマーを、AA−Na50.4g(NVF:AN:AA−Na=40:40:20(モル比)、モノマー濃度60%)に変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA4)水溶液を得た。
[製造例5]
粉末状NVF−AN−AAMポリマーを得る工程において使用するモノマーを、NVF63.8g、AN47.2g、AAM5.1g、及び脱イオン水を30.5g(NVF:AN:AAM=49:49:2(モル比)、モノマー濃度60%)、3%のアミジン系両性ポリマー水溶液を得る工程においてHCAを12.3g(NVF及びAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)、及び脱イオン水を469.1gに変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA5)水溶液を得た。
[製造例6]
粉末状NVF−AN−AAMポリマーを得る工程において使用するモノマーを、NVF64.4g、AN47.7g、AAM2.7g、及び脱イオン水を31.8g(NVF:AN:AAM=49.5:49.5:1(モル比)、モノマー濃度60%)、3%のアミジン系両性ポリマー水溶液を得る工程においてHCAを12.2g(NVF及びAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)、及び脱イオン水を469.2gに変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA6)水溶液を得た。
[製造例7]
粉末状NVF−AN−AAMポリマーを得る工程において使用するモノマーを、NVF26.1g、AN48.2g、AAM77.5g、及び脱イオン水を0.6g(NVF:AN:AAM=20:50:30(モル比)、モノマー濃度60%)、3%のアミジン系両性ポリマー水溶液を得る工程においてHCAを12.1g(NVF及びAAM構成単位の合計に対して1.1倍当量)、及び脱イオン水を469.3gに変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系両性ポリマー(ポリマーA7)水溶液を得た。
<アミジン系カチオン性ポリマーの製造>
[比較製造例1]
粉末状NVF−ANポリマーを得る工程において使用するモノマーを、NVF65.2g、AN48.3g、及び脱イオン水を33.1g(NVF:AN:AAM=50:50:0(モル比)、モノマー濃度60%)、3%のアミジン系カチオン性ポリマー水溶液を得る工程においてHCAを12.1g(NVF構成単位に対して1.1倍当量)、及び脱イオン水を469.3gに変更する以外は、製造例1と同様の操作を行い、3%のアミジン系カチオン性ポリマー(ポリマーB1)水溶液を得た。
<エステル系カチオン性ポリマーの製造>
[比較製造例2]
DME1030.5g及びAAM151.2gを、内容積2000mL褐色耐熱瓶に投入し、HPを、全モノマーの総質量に対して、100ppm(0.09g)となるように投入し、更に蒸留水を加え、総質量が1200gのモノマー水溶液(DME:AAM=80:20(モル比)、モノマー濃度75%)を調製した。このモノマー水溶液を1mol/L硫酸により、pH4.5となるようにpHを調整した。更に、D−1173を、全モノマーの総質量に対して、30ppm(0.036g)となるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながらモノマー水溶液の温度を15℃に調節した。
その後、モノマー水溶液をステンレス反応容器に移し、容器の下方から10℃の水を噴霧しながら、ケミカルランプを用いて、容器の上方から5W/mの照射強度で、表面温度計が40℃になるまで光を照射した。表面温度計が40℃に到達した後は、0.5W/mの照射強度で30分間光を照射した。更にモノマーの残存量を低減させるために、照射強度を50W/mにして15分間光を照射した。これにより、含水ゲル状のポリマーを得た。
得られた含水ゲル状のポリマーを容器から取り出し、小型ミートチョッパーを用いて10mm以下に切断した後、温度60℃で16時間乾燥した。その後、ウィレー型粉砕機を用いて乾燥したポリマーを粉砕し、粉末状エステル系カチオン性ポリマー(ポリマーB2)を得た。
<エステル系両性ポリマーの製造>
[比較製造例3]
モノマー種、モノマー比、モノマー濃度、開始剤、及び連鎖移動剤を下記表2−1及び表2−2に記載の内容に変更する以外は、比較製造例2と同様の操作を行い、粉末状エステル系両性ポリマー(ポリマーB3)を得た。
前記の各製造例で得られたポリマーの組成を次のようにして求め、表2−1に示した。
(1)製造例1〜7及び比較製造例1のポリマーについては、それぞれ得られた3%のポリマー水溶液に重水を加え、NMRスペクトロメーター(日本電子社製、270MHz)にて13C−NMRスペクトルを測定し、13C−NMRスペクトルの各構成単位に対応したピークの積分値より各構成単位の組成を算出した。なお、前記一般式(1)及び(2)の構成単位は区別することなく、その総量として求めた。
(2)比較製造例2、3のポリマーについては、各々のモノマーに由来する構成単位の割合を各モノマーの仕込み量から計算した。
以下の実施例と比較例は、下記の表2−1記載の各種ポリマーを0.3%水溶液に希釈して使用した。尚、表2−1中のポリマーの構成単位としての原料モノマーの略号は表1の通りである。また、前記の各製造例で得られたポリマーについて、ポリマーの還元粘度、カチオン当量値、及び0.5%不溶解分量を測定し、表2−2に示した。
本発明のアミジン系両性ポリマーの例としては、上記表2−1中のポリマーA1〜A7を挙げることができる。尚、比較のために(メタ)アクリル酸構成単位を有さないアミジン系カチオン性ポリマーの例としては、上記表2−1中のポリマーB1を挙げることができる。更に、比較のためにアミジン構成単位を有さないエステル系カチオン性ポリマー及びエステル系両性ポリマーの例としては、それぞれ上記表2−1中のポリマーB2及びポリマーB3を例示した。
<汚泥の分析測定>
汚泥性状の測定を行った。各特性の測定項目は以下の方法で行った。
[pH(水素イオン濃度)値]
(1)汚泥試料にpH測定器の電極を入れた。
(2)pH計の指示値が安定したところをpH値として測定した((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」、平成9年8月25日発行、p.296)。
[TS(蒸発残留物)値]
(1)初めに汚泥試料を蒸発乾燥させた。
(2)105〜110℃で2時間加熱乾燥したときに残留する物質の質量を測定した。
(3)汚泥試料に対する前記の残留する物質の質量百分率をTS値として求めた(財団法人日本下水道協会編、「下水試験方法上巻1997年版」、平成9年8月25日発行、p.296−297)。
[CST(毛管吸引時間)値]
(1)ろ紙上にセットしたセルに汚泥試料を入れた。
(2)汚泥試料中の水分がろ紙に吸引され円周方向に拡大して、筒の同心円の2点間を通過するのに要する時間を計測した(財団法人日本下水道協会編、「下水試験方法上巻1997年版」、平成9年8月25日発行、p.308−309)。
[VSS(揮発性浮遊物質)値]
(1)汚泥試料を遠心分離機にセットし、3000rpmで10分間遠心分離し、その上澄み液を捨て沈殿物を試料とした。
(2)沈殿物をるつぼ(質量Eg)に水で洗い入れ、105〜110℃で2時間加熱乾燥したときに残留する物質の質量(Dg)を測定した。
(3)その後、るつぼを600℃で30分間加熱乾燥したときに残留する物質の質量(Ig)を測定した。下記式により、VSSを算出した。
VSS(%)= (D−I/D−E) × 100
[Mアルカリ度]
(1)汚泥試料を遠心分離機にセットし、3000rpmで10分間遠心分離し、その上澄み液を試料液とした。
(2)前記試料液約100mLを200mLのビーカーにとり、攪拌しながら0.1mol/L塩酸を用いてpHが4.8に達するまでの塩酸量(amL)から下記式により、Mアルカリ度を算出した。
Mアルカリ度(mg/L)= a × F × (1000/試料液量mL) × 5
F:0.1mol/L塩酸のファクター
[コロイド荷電量(Cv)]
(1)汚泥試料を遠心分離機にセットし、3000rpmで5分間遠心分離し、その上澄み液を試料液とした。
(2)前記試料液10mL及び純水100mLを200mLのビーカーにとり、攪拌しながらN/200メチルグリコールキトサン溶液2mLを加えた。
(3)更に指示薬として0.1%トルイジンブルー水溶液を2〜3滴加え、N/400−PVSKで滴定した。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色し、10秒間以上保持する時点を終点とし、滴定量をAmLとした。
(4)ブランクテストとして、純水100mLのみをビーカー200mLにとる以外は前記(2)及び(3)と同様の操作を実施し、滴定量をBmLとした。下記式よりCvを算出した。
コロイド荷電量 Cv(meq./L)=(A−B)/10×1/400×1000
<汚泥脱水試験>
以下、前記製造例で得られたポリマー(A1〜A7)及び比較製造例で得られたポリマー(B1〜B3)を汚泥脱水剤として用いた汚泥処理について説明する。
[実施例1〜7]
食品の製造加工業から発生する動植物性残渣を含む産業廃棄物工場から排出された消化汚泥の脱水試験を行った。pH7.7、TS1.9%、CST2560秒、VSS34%、Mアルカリ度12100mg/L、Cv−18.1meq./Lの前記消化汚泥の処理に当たり、実施例1〜7にて表2−1及び表2−2に示す各ポリマーを用いて、下記(1)〜(7)の手順を順次行うことで汚泥の脱水試験を行った。結果を表3に示す。
(1)500mLのビーカーに前記汚泥300mLを採取した。
(2)表2−1及び表2−2に記載のポリマーA1〜A7を各々脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を表3に記載の最適添加量にて前記消化汚泥に添加した。次いで、この消化汚泥をスパチュラで攪拌速度:180回転/分、攪拌時間:30秒間撹拌混合して凝集フロックを形成させた。
(3)その後、無機凝結剤としてポリ硫酸鉄、該汚泥脱水剤水溶液の順に表3に記載の最適添加量にて前記消化汚泥に各々添加後、スパチュラで攪拌速度:180回転/分、攪拌時間:30秒間撹拌混合して凝集フロックを形成させた。
(4)凝集フロックを形成した汚泥を50メッシュのナイロンろ布に移し、重力濾過を10秒間行い、ろ過液の体積及びろ過液のSS量を測定した。結果を表3の10秒間ろ液量及びろ液のSS量評価の欄に示す。
(5)次いで、ろ布上の濃縮した汚泥をスパチュラで1杯分採取し、凝集フロック平均粒径を測定した。
(6)続いて、ろ布上の汚泥を左右に50回ころがしながら一塊にろ布の中央にまとめて、凝集フロック強度を評価した。
(7)ろ布上の濃縮した汚泥をろ布で挟んで、0.1MPaの圧力で1分間圧搾脱水し、脱水ケーキの含水率を測定した。結果を表3に示す。なお、汚泥脱水剤(1)、汚泥脱水剤(2)、無機凝結剤、及び有機凝結剤の添加率は、汚泥の蒸発残留物当たりに添加した量を質量百分率で示す値である。また、汚泥の蒸発残留物は、前記の汚泥を110℃の乾燥機内で恒量になるまで乾燥させて測定した。
<汚泥脱水試験評価項目>
実施例と比較例における脱水処理の評価は、以下に示す項目通りに行った。
[凝集フロック平均粒径]
汚泥脱水試験により凝集した汚泥を50メッシュのナイロン製のろ布にてろ過し、ろ布上の濃縮した汚泥をスパチュラで1杯分採取し、これを少量の水が張られたシャーレに移して、凝集フロックが破砕しない様に個々の凝集フロックに解し、各凝集フロックの粒径を測定し、その平均値を凝集フロック平均粒径とした。
[10秒間ろ液量]
汚泥脱水試験による凝集した汚泥を50メッシュのナイロン製のろ布上に注ぎ、ろ過を10秒間行い、ろ過液の体積を測定した。
[ろ液のSS量]
上記10秒間ろ液量の項目での操作を60秒間継続ろ過した後のろ過水のSS量を目視により以下の基準で評価した。
− :ろ過水がほとんど透き通っており、浮遊物はほぼ見られない(SS量目安:50ppm未満)。
+ :ろ過水に一部濁りが見られ、浮遊物がわずかに存在する(SS量目安:50〜100ppm未満)。
++ :ろ過水に部分的に濁りが見られ、浮遊物がところどころ存在する(SS量目安:100〜200ppm未満)。
+++ :ろ過水に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在する(SS量目安:200〜500ppm未満)。
++++:ろ過水に全体的に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在し、一部粗大な大きさで存在する(SS量目安:500〜1000ppm未満)。
× :ろ過水が完全に濁り、粗大な浮遊物が多数存在する(SS量目安:1000ppm以上)。
[凝集フロック強度]
汚泥脱水試験によりろ過、濃縮した凝集フロックをろ布上で50回ころがし、凝集フロックの強度を以下の基準で評価した。
◎:ろ布上でころがすことにより水が切れ、凝集フロックが数個の団子状になる。
○:ろ布上でころがすことにより水が切れ、凝集フロックが一塊状になる。
△:ろ布上でころがすことにより水が切れるが、凝集フロックが崩れ塊状にならない。
×:ろ布上でころがすことにより、凝集汚泥が崩れて流れ、ドロドロになる。
[脱水ケーキの含水率]
凝集フロック強度評価後の汚泥を、ポリプロピレン製のろ布で上下にはさみ、プレス機に装着して0.1MPaの圧力で1分間プレス脱水することで、脱水ケーキを得た。この脱水ケーキを蒸発乾固し、更に110℃で2時間加熱乾燥して得た残留物の質量を測定することで、蒸発した水の質量から含水率を求めた((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」、平成9年8月25日発行、p.296−297)。
[実施例8〜14]
有機凝結剤としてポリジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4級塩を用い、脱イオン水にて0.3%有機凝結剤水溶液を調製し、該有機凝結剤水溶液を表3に記載の最適添加量にて汚泥脱水剤(1)水溶液よりも先に消化汚泥に添加した。次いで、この消化汚泥をスパチュラで攪拌速度:180回転/分、攪拌時間:30秒間撹拌混合して凝集フロックを形成させた以外は、実施例1と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例1〜4]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。尚、比較例4は、ポリマーB1とポリマーB3を50:50の質量比で混合した混合物を脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を用いた。
[比較例5〜7]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りに変更した以外は、実施例8と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例8〜11]
無機凝結剤の添加順序を最初にし、汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例12〜15]
無機凝結剤の添加順序を最後にし、汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例16〜20]
無機凝結剤の添加順序を最初にし、汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りにし、実施例1に比較して添加量を2倍にし、一括で汚泥に添加した以外は、実施例1と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
実施例及び比較例における各試験結果を表3及び表4に示す。
表3及び表4に示すように、本汚泥脱水剤を用いた実施例1〜14では、少ない添加量で粗大な凝集フロックを生成させることができた。特に実施例1、4では、生成した凝集フロックの平均粒径が非常に大きく、その強度も非常に高い。更に、ろ過性能は非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率は低かった。また、有機凝結剤を併用し、本発明の汚泥脱水剤を用いた実施例8〜14においても、脱水性能に優れ、脱水ケーキの含水率は非常に低い結果であった。特に実施例8〜11では、生成した凝集フロックの平均粒径が非常に大きく、その強度も非常に高い。更に、ろ過性能は非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率は低かった。
一方、ポリマーの構成単位に、AAを含有しない汚泥脱水剤(B1)、アミジンを含有しないエステル系ポリマーからなる汚泥脱水剤(B2、B3)、及びB1とB3との混合物から成る汚泥脱水剤(B1/B3混合物)を用いた比較例1〜4では、その最適添加量が本汚泥脱水剤を用いた実施例1〜14よりも多く、生成した凝集フロック平均粒径は小さく、その強度も低い。そのため、ろ過性能は低く、得られた脱水ケーキの含水率は高い結果であった。また、有機凝結剤を併用し、上記汚泥脱水剤B1〜B3を用いた比較例5〜7でも、比較例1〜3と同程度の性能を示した。
更に、添加する無機凝結剤の順序を最初、最後、及び無機凝結剤添加混合後に汚泥脱水剤(1)を通常の2倍量にして1回のみの添加方法を示すそれぞれ比較例8〜11、比較例12〜15、及び比較例16〜20において、本汚泥脱水剤を含むいずれのポリマーを用いても、最適添加量が本汚泥脱水剤を用いた実施例1〜14よりも多く、生成した凝集フロック平均粒径は小さく、その強度も低い。そのため、ろ過性能は低く、得られた脱水ケーキの含水率は高い結果であった。特に、比較例16〜20においてはそれが顕著に表れた。
[実施例15〜28]
下水処理場から排出された消化汚泥の脱水試験を行った。pH7.1、TS0.9%、CST1310秒、VSS63%、Mアルカリ度2500mg/L、Cv−2.8meq./Lの前記消化汚泥の処理に当たり、実施例15〜21は実施例1〜7と、実施例22〜28は実施例8〜14とそれぞれ同様の脱水試験を実施した。結果を表5に示す。
[比較例21〜24]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表6に示す通りに変更した以外は、実施例15と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。尚、比較例24は、ポリマーB1とポリマーB3を50:50の質量比で混合した混合物を脱イオン水にて0.3%汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を用いた。
[比較例25〜27]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表6に示す通りに変更した以外は、実施例22と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例28〜31]
無機凝結剤の添加順序を最初にし、汚泥脱水剤に用いたポリマーを表6に示す通りに変更した以外は、実施例15と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例32〜35]
無機凝結剤の添加順序を最後にし、汚泥脱水剤に用いたポリマーを表6に示す通りに変更した以外は、実施例15と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
[比較例36〜40]
無機凝結剤の添加順序を最初にし、汚泥脱水剤に用いたポリマーを表6に示す通りにし、実施例15に比較して添加量を2倍にし、一括で汚泥に添加した以外は、実施例15と同様にして凝集フロックを形成させ、消化汚泥の脱水処理を行った。
実施例及び比較例における各試験結果を表5及び表6に示す。
表5及び表6に示すように、本汚泥脱水剤を用いた実施例15〜28では、少ない添加量で粗大な凝集フロックを生成させることができた。特に実施例15、18では、生成した凝集フロックの平均粒径が非常に大きかった。更に、ろ過性能は非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率は低かった。また、有機凝結剤を併用し、本発明の汚泥脱水剤を用いた実施例21〜28においても、脱水性能に優れ、脱水ケーキの含水率は非常に低い結果であった。特に実施例22、25では、生成した凝集フロックの平均粒径が非常に大きく、その強度も非常に高い。更に、ろ過性能は非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率は低かった。
一方、ポリマーの構成単位に、AAを含有しない汚泥脱水剤(B1)、アミジンを含有しないエステル系ポリマーからなる汚泥脱水剤(B2、B3)、及びB1とB3との混合物から成る汚泥脱水剤(B1/B3混合物)を用いた比較例21〜24では、その最適添加量が本汚泥脱水剤を用いた実施例1〜14よりも多く、生成した凝集フロック平均粒径は小さく、その強度も低い。そのため、ろ過性能は低く、得られた脱水ケーキの含水率は高い結果であった。また、有機凝結剤を併用し、前記汚泥脱水剤B1〜B3を用いた比較例25〜27でも、比較例21〜23に比較して同程度の性能を示した。
更に、添加する無機凝結剤の順序を最初、最後、及び無機凝結剤添加混合後に汚泥脱水剤(1)を通常の2倍量にして1回のみの添加方法を示すそれぞれ比較例28〜31、比較例32〜35、及び比較例36〜40において、本汚泥脱水剤を含むいずれのポリマーを用いても、最適添加量が本汚泥脱水剤を用いた実施例15〜28よりも多く、生成した凝集フロック平均粒径は小さく、その強度も低い。そのため、ろ過性能は低く、得られた脱水ケーキの含水率は高い結果であった。特に、比較例16〜20においてはそれが顕著に表れた。
以上の消化汚泥の脱水処理評価結果より、本発明の汚泥の脱水方法は、十分な脱水性能を示している。特に、食品の製造加工業から発生する動植物性残渣を含む産業廃棄物工場から排出された消化汚泥に対しては非常に優れた脱水性能であることが明らかである。

Claims (4)

  1. 汚泥に汚泥脱水剤、無機凝結剤及び汚泥脱水剤をこの順に添加混合した後、脱水処理する汚泥の脱水方法。
  2. 前記汚泥脱水剤として、アミジン構成単位及び(メタ)アクリル酸構成単位を有するアミジン系両性ポリマーから成る汚泥脱水剤を用いる請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
  3. 前記アミジン構成単位が下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるアミジン構成単位である請求項2に記載の汚泥の脱水方法。
    [R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。Xは、アニオン基を示す。]
  4. 前記汚泥脱水剤として全モノマー構成単位に対するアミジン構成単位の割合が20〜70モル%、(メタ)アクリル酸構成単位の割合が3〜30モル%である汚泥脱水剤を用いる請求項2又は請求項3に記載の汚泥の脱水方法。
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