JP2016113420A - テレフタル酸の製造方法および再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents

テレフタル酸の製造方法および再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、ケミカルリサイクル技術によって、大掛かりな装置やコストをかけることなく処理し、該ポリエチレンテレフタレートの合成原料であるテレフタル酸を高い品質で回収可能なテレフタル酸の製造方法、および得られたテレフタル酸を用いて得られる再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供する。【解決手段】ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を密閉容器内に格納後、常圧〜飽和水蒸気圧の雰囲気下に暴露してポリエチレンテレフタレートを加水分解し、テレフタル酸および/またはテレフタル酸とエチレングルコールからなるオリゴマー(エチレンテレフタレートオリゴマー)を得る第1加水分解工程と、第1加水分解工程にて得られたエチレンテレフタレートオリゴマーを150〜300℃の熱水中にて加水分解し、粗テレフタル酸を得る第2加水分解工程とを含むテレフタル酸の製造方法とする。【選択図】図1

Description

本発明は、テレフタル酸の製造方法および再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法に関し、例えば、飲料用ボトルやフィルム、シートなどのポリエチレンテレフタレート成形品などから合成原料であるテレフタル酸を得るための処理方法、および得られたテレフタル酸を用いる再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法に関する。
ポリエステル系樹脂は、その優れた特性から様々な用途に広く用いられている。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)は、化学的安定性が優れていることから、繊維、フィルム、樹脂などの生活関連資材として、特に飲料水や炭酸飲料用のボトルなどとして食品分野において大量に生産され使用されている。しかしながら、生産量、使用量の増大に伴って大量に発生する繊維やフィルム、樹脂製品の廃棄物、規格外品の成形品などの処理は、現在大きな社会問題になりつつあり、また、資源の有効利用の観点からもこれらのポリエステル系樹脂成形品を有効にリサイクルする方法が求められている。
そのようなリサイクル方法としては、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルなどの各種方法が提案されている。
マテリアルリサイクルは、ポリエステル系樹脂を分解することなく、高温で溶融して再利用するものであるため、その熱履歴によりリサイクル品の品質はリサイクル前のポリエステル系樹脂と比べて徐々に低下するという問題点がある。また、ポリエステル系樹脂以外の成分(不純物)が含まれていると、該不純物を完全に除去するのが難しいため、さらに品質が低下するという問題点もある。そのため、リサイクル前のポリエステル系樹脂と同等品質のものを得ることは、一部の場合(射出成型時に発生するランナを粉砕後そのまま使用するなど)を除き困難であるという問題を抱えている。
一方、ケミカルリサイクルとしては一般的に、(1)原料化、(2)還元剤化、(3)ガス・油化、(4)サーマルリサイクルの4種類に分類できる。この中で原料化は、リサイクル前のポリエステル系樹脂と同等品質のものを得ることができるため、有利な方法であるとして注目されている。
特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートの原料化の例として、ポリエチレンテレフタレートを、エチレングリコール分解/メタノール処理により、テレフタル酸ジメチルさらにはテレフタル酸にまで分解し、再度エチレングリコールと縮重合させて「ボトルtoボトル」にする方法が開示されている。
また、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートに加水分解触媒としてのテレフタル酸を添加し、300℃の熱水中で加水分解すると、約10分でテレフタル酸が100%の収率で得られることが報告されている。
そして、特許文献3には、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、処理温度における飽和水蒸気圧の圧力で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露させ、その処理温度で発生した飽和水蒸気によって前記被処理物中に含まれるポリエチレンテレフタレートを加水分解し、エチレングリコールを気体または液状成分として、テレフタル酸を固形成分として分別回収する方法が開示されている。
特開2003−119316号公報 特開2007−332361号公報 特開2008−308416号公報
しかしながら、特許文献1の方法は、作業が煩雑でコストがかかることや設備投資額が大きくなるなどの課題を有し、特許文献2の方法ではジカルボン酸を添加せずに150〜350℃の高温水中にてポリエステルを加水分解する場合には、充分に加水分解ができないことが示されており、高温水中での加水分解では加水分解触媒としてのジカルボン酸が不可欠であることが示唆される。
また、特許文献3の方法は内部に攪拌手段を備えた耐圧性の処理チャンバーや、エチレングリコールを回収するための冷却塔を準備しなければならず、装置が大掛かりとなり改善の余地があった。また、ポリエチレンテレフタレートが不純物を含む場合には、加水分解処理によって回収されたテレフタル酸およびエチレングリコールの品質が低下するという問題点がある。
ポリエステル系樹脂は、限りある石油資源から得られる合成樹脂であり、その供給を持続可能とする社会を構築するためには、ポリエステル系樹脂の廃棄物をケミカルリサイクルする技術の確立は喫緊の課題である。特にポリエチレンテレフタレートは、耐薬品性、耐熱性に優れ、食品に対して使用する場合はその安全性も良好であるため、各種分野において汎用されており、そのリサイクルは重要な課題となっている。しかし、上述のように、品質の維持と経済性(ランニングコスト及びイニシャルコストの抑制)が共に成り立つ方法の確立には未だ至っておらず、その開発が早急に求められているのが実情である。
そこで本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、ケミカルリサイクル技術によって、大掛かりな装置やコストをかけることなく処理し、また、特別な加水分解触媒を用いずとも該ポリエチレンテレフタレートの合成原料であるテレフタル酸を高い品質で回収可能なテレフタル酸の製造方法の提供、および得られたテレフタル酸を用いて得られる再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレートの成形品(被処理物)を、まず常圧から飽和水蒸気圧の雰囲気に暴露して加水分解し、テレフタル酸やエチレンテレフタレートオリゴマーを含む第1の加水分解物を得て、さらにこの第1の加水分解物を特定の温度範囲の熱水中で加水分解することによって従来のケミカルリサイクル法に比べて簡便にテレフタル酸が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を密閉容器内に格納後、常圧〜飽和水蒸気圧の雰囲気下に暴露してポリエチレンテレフタレートを加水分解し、テレフタル酸および/またはテレフタル酸とエチレングルコールからなるオリゴマー(エチレンテレフタレートオリゴマー)を得る第1加水分解工程と、第1加水分解工程にて得られたエチレンテレフタレートオリゴマーを150〜300℃の熱水中にて加水分解し、粗テレフタル酸を得る第2加水分解工程とを含むことを特徴とするテレフタル酸の製造方法に関するものである。
また、好ましい製造方法として、第2加水分解工程にて得られた粗テレフタル酸を150〜300℃の熱水中にて加水分解し、テレフタル酸を得る第3加水分解工程をさらに含むことが好ましい。
また、第2加水分解工程にて得られる粗テレフタル酸におけるテレフタル酸の含有率が、5重量%以上であることが好ましい。
さらにまた、第1加水分解工程にて得られるテレフタル酸および/またはエチレンテレフタレートオリゴマーの全量を、第2加水分解工程に移行させることが好ましい。
また、第3加水分解工程にて得られる加水分解物中のテレフタル酸の含有率が、99重量%以上であることが好ましい。
さらに、本発明は上記にて得られたテレフタル酸を、エチレングリコールと縮重合してポリエチレンテレフタレートを製造することを特徴とする再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法に関するものである。
本発明のテレフタル酸の製造方法は、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、常圧から飽和水蒸気圧の雰囲気に暴露して加水分解し、テレフタル酸やエチレンテレフタレートオリゴマー(テレフタル酸とエチレングリコールからなるオリゴマー)を含む第1の加水分解物を得る第1加水分解工程、および、前記第1加水分解工程にて得られたオリゴマーを特定の温度範囲の熱水中で加熱し、該オリゴマーをさらに加水分解し、粗テレフタル酸を含む第2の加水分解物を得る第2加水分解工程を有するものである。また、上記第1加水分解工程および第2加水分解工程にて得られる粗テレフタル酸を特定の温度範囲の熱水でさらに加水分解する第3加水分解工程を付加することによって、粗テレフタル酸からより純度の高い精製テレフタル酸を得ることができるものである。
第1加水分解工程では、被処理物中のポリエチレンテレフタレートが水蒸気によって分解され、オリゴマー化(一部テレフタル酸まで分解)する。このオリゴマーを続く第2加水分解工程において特定温度範囲の熱水中でさらに加水分解することにより、ポリエチレンテレフタレートやこのオリゴマーの合成原料のうち、エチレングリコールのような水溶性のものは熱水中に溶解し、テレフタル酸のような非水溶性のものは熱水中で固体となり、それぞれの原料を簡単に、かつコストをかけることなく、高い品質で回収することができる。
なお、ポリエチレンテレフタレートだけでなく、本発明の技術を利用することによって、ポリエチレンナフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートのような多量に使用され、かつその多量故に処理が困難である他のポリエステル系樹脂を被処理物とした場合であっても、コストをかけることなく、その合成原料を簡単に高い品質で回収することができる。
また、本発明における前記第1加水分解工程および第2加水分解工程を、密閉容器内で連続的に行えば、特許文献3に記載の攪拌手段や冷却塔などを必要とせず、低コストで、高い品質で、かつ高い回収率でポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を処理することが可能となる。
上記のようにして得られたテレフタル酸は、別途調達するエチレングリコールと縮重合反応させることによって、品質劣化が生じていない再生ポリエチレンテレフタレートを製造することができるので、有用資源の循環(リサイクル)に有益な方法である。
本発明のテレフタル酸の製造方法を説明するための製造工程図である。 本発明の好適な形態における製造方法を説明するための模式図である。
以下、本発明のテレフタル酸の製造方法に用いる被処理物は、ポリエチレンテレフタレートを含むものであって、その種類や、その中に含まれるポリエチレンテレフタレート以外の原材料については特に制限されず、従来から公知または公用の各種被処理物であることができる。
本発明における被処理物としてのポリエチレンテレフタレートは、その原料であるポリオールとしてのエチレングリコールと、ポリカルボン酸成分としてのテレフタル酸との縮重合によって得られるポリエステル系樹脂であって、ポリカルボン酸成分としてはテレフタル酸以外に一部イソフタル酸やフタル酸が含有されていてもよいものである。
また、本発明における被処理物の形態としては、特に制限されるものではなく、各種成形品、典型的には使用済であって再処理すべき各種成形品を使用することができ、例えば、繊維、フィルム、シート、飲料水や炭酸飲料用のボトル、粘着テープ、食品用トレイなどを挙げることができる。
また、上記被処理物としての各種成形品には、使用形態によってポリエチレンテレフタレート以外の各種添加剤などの原材料が配合されていることが多いが、本発明においては、これらの原材料の種類について制限されない。
このような原材料としては、例えば公知の難燃剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、表面処理剤などが挙げられる。
また、上記被処理物は、ポリエチレンテレフタレート単体からの成形品だけでなく、他の材料との複合品でもよい。すなわち、ポリエチレンテレフタレートを含む層と、ポリエチレンテレフタレート以外の樹脂を含む層とからなる積層体のような複合品であってもよい。具体的には、例えば被処理物が粘着テープである場合には、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などからなる粘着剤層との積層体や、さらにシリコーン樹脂などからなる剥離シートを粘着剤層表面に設けた積層体が挙げられるが、本発明ではこのような積層体であっても処理することができる。
しかし、本発明の製造方法によって得られるテレフタル酸の回収率の観点からは、被処理物中のポリエチレンテレフタレートの割合は、例えば40重量%以上、好ましくは60重量%以上であるのがよい。
本発明において、被処理物は、そのままの形状であってもよいが、後述する本発明の第1加水分解工程および第2加水分解工程によってポリエチレンテレフタレートが効率よく加水分解されて、加水分解物であるテレフタル酸にまで効率よく分解され得るようにするために、加水分解処理前に適当なサイズに破砕または裁断し、さらに洗浄操作によって表面に付着している異物を除去しておくことが好ましい。
本発明のテレフタル酸の製造方法は、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、常圧から飽和水蒸気圧の水蒸気雰囲気下に暴露してポリエチレンテレフタレートのエステル結合を加水分解し、テレフタル酸および/またはテレフタル酸とエチレングルコールからなるオリゴマー(エチレンテレフタレートオリゴマー)を含む第1の加水分解物を得る第1加水分解工程と、得られた前記第1の加水分解物を特定温度範囲の熱水中で加熱し、エチレンテレフタレートオリゴマーをさらに加水分解して第2の加水分解物である粗テレフタル酸を得る第2加水分解工程と、を少なくとも含む。なお、第2加水分解工程にて得られる粗テレフタル酸に多くの不純物が混入している場合には、エチレングリコールが溶解している第2加水分解工程における熱水を、新しい熱水に置換して再度加水分解処理(第3加水分解工程)を行うことによって、純度の高いテレフタル酸を得ることができる。
以下、本発明のテレフタル酸の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のテレフタル酸の製造方法を説明するための製造工程図である。
まず、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を準備し(ステップS10)、第1加水分解工程および第2加水分解工程によって効率よく加水分解物としてのテレフタル酸に分解され得るように、必要に応じて被処理物を適当なサイズに破砕もしくは裁断したのち、表面に付着する異物などを洗浄除去する(ステップS11)。
被処理物の粉砕方法としては公知の方法を用いて行うことができ、例えば、必要に応じて裁断機で裁断し、その後に粉砕する方法が挙げられる。粉砕機としては、例えば、ニ軸回転せん断式破砕機、一軸回転せん断式破砕機等のせん断式破砕機、ハンマーミル、インパクトクラッシャー等の衝撃式破砕機、シュレッダー等を用いることができる。粉砕物の大きさは特に制限はされないが、第1加水分解工程に供するために被処理物を収容する第1容器に設けられた孔部よりも大きいものとすればよい。孔部の長径(最大長さ)は、例えば、0.01mm〜20mmの間で適宜調整すればよい。
被処理物の洗浄方法としては、例えば、粉砕物の上から散水洗浄する方法、粉砕物を水中に搬送しながら洗浄する方法等が挙げられる。
続いて、被処理物に対して、第1加水分解工程および第2加水分解工程による二段階の加水分解反応を行う(ステップS12,S13)。
(第1加水分解工程)
第1加水分解工程では、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、密閉容器(耐圧性容器)内に格納し、常圧〜飽和水蒸気圧の雰囲気下に暴露してポリエチレンテレフタレートにおけるエステル結合を加水分解し、第1の加水分解物を得る。
加水分解とは、よく知られているように、一つの結合が切断するときその結合がイオン的に開裂し、HO1分子がH、OHに分かれて、開裂位置に付加する反応である。
本発明において、第1加水分解工程にてまず、被処理物を水蒸気雰囲気下に暴露することにより、目的とする第1の加水分解物とポリエチレンテレフタレート由来でない不純物を分離させる。第1の加水分解物としては、ポリエチレンテレフタレート中のエステル結合が分解して生成するオリゴマーを含む加水分解物であり、本発明においては流動状態を呈するものである。具体的には、第1の加水分解工程にて得られる加水分解物は、ポリエチレンテレフタレートが分解して生成するテレフタル酸および/またはテレフタル酸とエチレングリコールからなるオリゴマー(エチレンテレフタレートオリゴマー)を含む混合物であり、第1加水分解工程中および工程後では流動状態となり、その状態で後述する第2加水分解工程に供される。
本発明の第1加水分解工程において、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を水蒸気雰囲気に暴露する際の温度(以下、「水蒸気雰囲気温度」ともいう)は、適宜決定すればよいが、例えば100〜260℃であることが好ましく、より好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは140〜260℃である。前記温度の範囲内で処理することにより、ポリエチレンテレフタレートを水蒸気雰囲気下で効果的に加水分解することができる。特に、反応時間の短縮と融点(ポリエチレンテレフタレートの融点:約260℃)の観点から、水蒸気雰囲気温度は、例えば150〜260℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは180〜260℃、さらに好ましくは200〜260℃である。
第1加水分解工程における加水分解時間は、例えば1分〜20時間であることが好ましく、より好ましくは5分〜10時間である。前記範囲内で行うことにより、得られる第1の加水分解物の分子量を低下させ効率よくテレフタル酸を生成させることができ、しかも副生成物の生成も抑制することができる。特に、得られるエチレンテレフタレートオリゴマーの分子量を低下させる観点と副生成物の抑制の観点から、加水分解時間は、例えば5分〜10時間の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは10分〜5時間である。
また本発明の第1加水分解工程は、常圧から加圧条件下である飽和水蒸気圧下で加水分解を行う。加圧条件下としては上記水蒸気雰囲気温度での飽和水蒸気圧が好ましく、飽和水蒸気圧としては、例えば0.4〜5MPaであることが好ましく、1〜5MPaであることがより好ましい。前記範囲内で加水分解を行うことにより、短時間で第1の加水分解物を得ることができる。
なお、本発明における水蒸気圧は、飽和水蒸気圧曲線に沿って上昇させるのが好ましく、このようなステップを採用することによって、被処理物としてのポリエチレンテレフタレートが熱分解を起こして炭化または変性するのを防止することができる。水蒸気の供給は、公知の各種手段を採用することができる。
また、本発明における第1加水分解工程においては、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物が水と接触しないような水蒸気雰囲気下に暴露された状態で、加水分解を開始することが好ましい。水と接触しないようにして水蒸気雰囲気下に暴露することで、被処理物が内部から分解されるので、効率良く分解処理することができる。
本発明において、第1加水分解工程で得られる第1の加水分解物は、テレフタル酸やエチレンテレフタレートオリゴマーを含むものであり、その他の中間生成物などを含んでいてもよい。エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えば、2〜10個のモノマー(構成ユニット)からなるものであり、そのオリゴマーの重量平均分子量としては、例えば200〜1000である。
なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算による平均分子量として測定することができる。
本発明において、第1加水分解工程で得られる第1の加水分解物の溶融粘度は、被処理物の種類や加水分解の程度によって適宜設定することができるが、第1加水分解工程でポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を載置する第1容器の底に加水分解物取り出し用の孔部を設けておけば、その孔部から流動性を有する第1の加水分解物のみを通過させて第2加水分解工程に供することができる。この場合には第1の加水分解物とそれ以外の不純物を分離することができる程度の溶融粘度に調整することが好ましい。
ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物は、密閉容器(耐圧性容器)内に設置され、例えば、被処理物を通過させず、かつ第1の加水分解物を通過させ得る孔部を容器の底部に備えている第1容器に載置し、この第1容器中で加水分解を行うことが好ましい。
第1容器の材質は、第1の加水分解物を得る加水分解反応に影響を及ぼさない限り特に限定されないが、例えば、金属、セラミックスなどからなる容器を用いることができる。
第1容器の孔部は、被処理物を通過させずかつ第1の加水分解物を通過させることができれば、形状やサイズは特に限定されない。形状は、円形、多角形、不定形などがあげられ、サイズ(孔隙の最大長さ)は、上記した第1の加水分解物の溶融粘度に応じて適宜設定することが好ましい。
(第2加水分解工程)
第1加水分解工程に続く本発明の第2加水分解工程では、前記第1加水分解工程にて得られた第1の加水分解物を熱水中で加熱し、前記第1の加水分解物をさらに加水分解し、第2の加水分解物として粗テレフタル酸を得る。この場合、第1加水分解工程にて得られるテレフタル酸および/またはエチレンテレフタレートオリゴマーを第2加水分解工程に用いるが、これら全量を第2加水分解工程に移行させることが好ましく、連続式またはバッチ式で移行させればよい。
また、目的とする加水分解物としてのテレフタル酸を得るための加水分解効率を高めるために、第2加水分解工程で第1の加水分解物をさらに加水分解することで、加水分解物中に混入する水溶性の不純物を抽出することができ、第2の加水分解物を高純度で得ることができる。第2の加水分解物としては、ポリエチレンテレフタレートの合成原料であるテレフタル酸とエチレングリコールを含む加水分解物である。得られた加水分解物からは、テレフタル酸とエチレングリコールを分別、精製工程によってそれぞれ回収することが可能である。
具体的には、密閉容器(耐圧性容器)内に設置した第1容器を通過した第1の加水分解物を、耐圧性容器内に設置された第2容器に収容して、さらに熱水中で加水分解を行う。この場合、予め熱水を入れておいた第2容器に第1の加水分解物を収容してもよいし、あるいは、第2容器内の第1の加水分解物に熱水を加えてもよい。また、いずれの場合でも、熱水の代わりに水を最初に用いて、その後、本発明の好ましい範囲の温度の熱水となるよう加熱してもよい。さらに、水蒸気から生成された結露水を熱水の代用とすることもできる。
第2容器の材質は、第2の加水分解物を得る反応に影響を及ぼさない限り特に限定されず、例えば、金属、セラミックスなどの容器が用いることができるが、得られたテレフタル酸を用いて再生ポリエチレンテレフタレートを製造する際に問題となるような金属イオンなどの溶出を起こさない材質を採用することがより好ましい。
第2加水分解工程は、加圧下で行われるのが好ましい。なお、下記で説明するように、第1加水分解工程および第2加水分解工程が同じ耐圧性容器内で連続的に行われる態様では、第2加水分解工程は、例えば第1加水分解工程で採用される常圧から飽和水蒸気圧の雰囲気下で行うことができる。加圧条件としては、例えば0.4〜10MPaであることが好ましく、1〜10MPaであることがより好ましい。
第2加水分解工程における熱水の温度は、150〜300℃であり、好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは200〜300℃である。前記温度の範囲内で行うことにより、得られる第2の加水分解物の分子量を低下させ、かつ副生成物を抑制し、かつ不純物を減らすことができる。熱水中での加熱時間は、例えば1分〜10時間であることが好ましく、より好ましくは5分〜5時間である。前記範囲内で行うことにより、得られる第2の加水分解物の分子量を低下させ、かつ副生成物を抑制し、さらに不純物を減らすことができる。
本発明における第2加水分解工程で得られる第2の加水分解物は、大部分がポリエチレンテレフタレートの合成原料であるエチレングリコールおよびテレフタル酸であり、その他、第2加水分解工程で加水分解されなかったエチレンテレフタレートオリゴマーや、その他の中間生成物などを少量含むものである。水溶性であるエチレングリコールは、熱水中に溶解し、非水溶性であるテレフタル酸は熱水中で固体として析出し、分別回収可能となる。
なお、第2の加水分解物は、必要に応じて、公知の精製方法によってさらに精製し、さらに純度を高めた上で、回収してもよい。
本発明における第2加水分解工程後の第2の加水分解物は、水溶性の加水分解物としてのエチレングリコールおよび非水溶性の加水分解物としてのテレフタル酸であるので、上記したように水溶性の加水分解物は、熱水に溶解し、非水溶性の加水分解物は、熱水に溶解せず、析出して固体となる。そこで、固体状の粗テレフタル酸を水溶性の加水分解物(エチレングリコール)が溶解した熱水と分離する(ステップS14,S17)。
分離方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、ろ過、吸引、遠心分離、デカント等により分離すればよい。
溶解した水溶性の加水分解物(エチレングリコール)は、必要に応じて公知の精製処理を行い(ステップS15)、回収する(ステップS16)。一方、固体状の非水溶性加水分解物(粗テレフタル酸)も同様に、必要に応じて公知の精製処理を行い(ステップS19)、回収する(ステップS20)。
なお、第1加水分解工程および第2加水分解工程は、後述するように連続的に行ってもよいし、第1加水分解工程で得られた第1の加水分解物を一旦、全て回収し、次いで、この第1の加水分解物を第2加水分解工程に供する、いわゆるバッチ方式を採用してもよい。
本発明のテレフタル酸の製造方法において、前記第2加水分解工程にて得られる粗テレフタル酸におけるテレフタル酸の含有率は、5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。テレフタル酸の含有率が5重量%に満たない場合には、第2の加水分解物に含まれるエチレンテレフタレートオリゴマーから水溶性であるエチレングリコールが生成され熱水中に溶解し可逆反応を起こして平衡状態になってしまい、オリゴマーをテレフタル酸に加水分解することが十分にできなくなるので、所望するテレフタル酸が得られにくくなる傾向を示す。
上記したように、本発明の製造方法によれば、被処理物としてのポリエチレンテレフタレートは、まず前記第1加水分解工程によって、ポリエチレンテレフタレートのエステル結合が加水分解により分断され、エチレングリコールユニットを含むエチレンテレフタレートオリゴマーおよびテレフタル酸ユニットを含むエチレンテレフタレートオリゴマーが生じる。そして、続く第2加水分解工程によって、これらのオリゴマーが熱水中で最小モノマー単位であるエチレングリコールモノマー単位とテレフタル酸モノマー単位にまで加水分解され、水溶性であるエチレングリコールモノマー単位は熱水中に溶解し、水難溶性であるテレフタル酸モノマー単位は熱水中で固体化し、それぞれを高い収率で回収することが可能になる。
(第3加水分解工程)
本発明のテレフタル酸の製造方法においては、上記したように第1加水分解工程および第2加水分解工程によって、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物からテレフタル酸を得ることができるものである。しかしながら、加水分解処理条件によって得られるテレフタル酸の純度は異なるが、エチレンテレフタレートオリゴマーの加水分解が不充分なために純度の低い粗テレフタル酸しか得られない場合には、第3加水分解工程(図1ステップS18)を施すことが好ましい。
第3加水分解工程は、上記第2加水分解工程と同様、第2加水分解工程にて得られた粗テレフタル酸を150〜300℃、好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは200〜300℃の熱水中にて加水分解処理を施し、第3の加水分解物として得られるテレフタル酸の純度を高める工程であり、第2加水分解工程にて得られた粗テレフタル酸の精製工程も兼ねることができるものである。
第3加水分解工程は、第2加水分解工程に続き、連続して行うことができるが、第2加水分解工程にて得られた加水分解物であるエチレングリコールは熱水中に溶解しているので、そのままで第3加水分解工程を行っても、加水分解反応が可逆反応を起こして平衡状態になってしまい、オリゴマーをテレフタル酸に加水分解することが充分にできない場合がある。そこで、第3加水分解工程では、エチレングリコールが多量に溶解している第2加水分解工程にて用いた熱水を系外に一旦除去して、新たな熱水に置換して処理を行うことによって加水分解反応を促進できるので好ましい。このように新たな熱水中で第3加水分解工程を行うことで、テレフタル酸への加水分解が加速され、純度が高いテレフタル酸を得ることができるのである。
本発明の製造方法において第3加水分解工程を行う場合には、得られる加水分解物中のテレフタル酸の含有率は、99重量%以上であることが好ましく、より好ましくは99.5重量%以上である。含有率が99重量%以上であれば、エチレングリコールと共に縮重合させて再生ポリエチレンテレフタレートを製造するに際して問題なく用いることができる。
次に本発明の方法のさらに好適な形態について説明する。
本発明の好適な態様によれば、前記第1加水分解工程および前記第2加水分解工程は、密閉容器(耐圧性容器)内で連続的に行われる。耐圧性容器は、系全体を加熱するためにヒータを備えていることが好ましい。ヒータを備えた耐圧性容器を使用することにより、第1加水分解工程および第2加水分解工程における水蒸気による処理圧力および加熱温度を任意に調整することができる。例えば、上記のように、飽和水蒸気圧曲線に沿って水蒸気を上昇させる操作などを簡単に行うことができる。なお、圧力および温度の上昇・下降は、公知の制御手段を適宜適用することにより制御可能である。一つの容器内で第1加水分解工程および第2加水分解工程を実施することにより、簡便な処理操作が可能となり、設備コストおよび処理コストを低減することができる。
また、前記耐圧性容器内に、被処理物を通過させずかつポリエチレンテレフタレートを加水分解して得られる第1の加水分解物を通過させるに足る孔部を底部に備えた第1容器と、この第1容器の下部に第1の加水分解物の受け皿としての第2容器を設置し、第1容器内の被処理物に第1加水分解工程を施し、第1容器を通過した第1の加水分解物を第2容器で受け入れて、この第2容器内の第2の加水分解物に第2加水分解工程を施す態様がさらに好ましい。この態様によれば、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物の処理を連続的に、かつ低コスト、高い品質、かつ高い回収率でもって処理することが可能となる。
図2は、上記の本発明の好適な形態における処理方法を説明するための模式図である。
図2(a)に示すように、ヒータ(図示せず)を備えた密閉容器(耐圧性容器)20内に、耐圧性容器20の上方に第1容器21が、該第1容器21の下部に第2容器22がそれぞれ設置されている。第1容器21は、被処理物Sを通過させずかつ第1の加水分解物を通過させ得る複数の孔部Aを備え、第1容器21内には、被処理物Sが収容されている。また第2容器22内には熱水W1が貯留されている。耐圧性容器20の底部には、ポリエチレンテレフタレートの加水分解処理に用いる水蒸気を発生するための水W2が貯留されている。なお水蒸気は、水W2を用いずに外部に設けた水蒸気発生装置(図示せず)により、耐圧性容器20内に供給されてもよい。
図2(b)に示すように、第1加水分解工程が実施されると、被処理物Sが加水分解され、第1の加水分解物H1となり、矢印で示すように第1容器21の孔部Aから落下する。落下した第1の加水分解物H1は、第2容器22の熱水W1中に受け入れられ、第2加水分解工程に施され、熱水中で第2の加水分解物が生じる。
次に、図2(c)に示すように、第2の加水分解物には、水溶性の加水分解物であるエチレングリコールおよび非水溶性の加水分解物である粗テレフタル酸が含まれているので、水溶性の第2の加水分解物(エチレングリコール)H2は、熱水W1に溶解し、一方、非水溶性の第2の加水分解物(粗テレフタル酸)H3は、熱水W1に溶解せず、固体となり析出する。これらの第2の加水分解物H2,H3は、必要に応じて公知の精製処理を行い、回収される。なお第1容器21内には、第1加水分解工程で加水分解されなかった高分子量の残渣S1が孔部Aを通過せずに残存する。なお、加水分解の諸条件は、上記と同様である。
本発明において、第2加水分解工程終了後は、耐圧性容器20内の圧力と温度を制御しつつ耐圧性容器20内部を自然冷却や強制冷却によって降温させるのが好適である。この操作により回収した原料の品質の劣化を抑制することができる。
第1容器21および第2容器22は、第1加水分解工程および第2加水分解工程の加水分解条件に充分に耐え得る金属製のものが好適であり、例えば第1容器21は公知のパンチングメタルやメタルメッシュなどを利用することができる。
本発明の製造方法において、第3加水分解工程を施す場合には、図2(c)に示すように、第2容器22内には熱水W1中に水溶性の第2の加水分解物であるエチレングリコールH2が溶解しているので、熱水W1を第2容器から除去した後、図2(d)に示すように、新たな熱水W3を加えて第3加水分解工程の処理を施すことが好ましい。このように処理することによって、第2加水分解工程で得られ、テレフタル酸にまで加水分解されていないエチレンテレフタレートオリゴマーの加水分解反応が促進され、図2(e)に示すように高収率で非水溶性の第3の加水分解物(テレフタル酸)H5と水溶性の第3の加水分解物H4を得ることができると共に、粗テレフタル酸の精製処理も兼ねることができるのである。
本発明では上記のようにして得られたテレフタル酸を用いて再生ポリエチレンテレフタレートを製造することができる。具体的には、上記第1加水分解工程および第2加水分解工程、必要に応じて第3加水分解工程を経て得られたテレフタル酸を、別途準備したエチレングリコールと縮重合させることによって再生ポリエチレンテレフタレートを得ることができる。
縮重合の方法は自体公知の方法によって行うことができ、得られた再生ポリエチレンテレフタレートはペレット状などの形状で各種成形品に加工される。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の応用が可能であり、下記実施例の記載の限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示す装置を用い、被処理物としてポリエチレンテレフタレート製フィルム(厚み35μm、重量平均分子量20000)の処理を行った。
まず、図2(a)に示したように、ヒータ(図示せず)、第1容器21および第2容器22を備えた耐圧性容器20を準備した。
第1容器21の内容積は5Lであり、その中に、被処理物としてのフィルムを500g投入した。第2容器22内には水を2kg入れておいた。耐圧性容器20の底部には、水蒸気を発生するための水W2が貯留され、ヒータによって加水分解処理に必要な水蒸気を発生させることができる。
第1容器21は、被処理物を通過させず、かつ第1加水分解工程で生じる第1の加水分解物を通過させ得る複数の孔部Aを備えている。孔部Aはステンレス製のパンチングメタルにより形成され、孔Aのサイズは1mm角に設定した。
続いて、図2(b)および(c)に示すように、耐圧性容器20内で第1加水分解工程および第2加水分解工程を連続的に実施した。第1加水分解工程および第2加水分解工程において、耐圧性容器20の水蒸気雰囲気温度は220℃、熱水W1の温度は220℃、飽和水蒸気圧(圧力2.3MPa)の条件下、被着体であるポリエチレンテレフタレート製フィルムを加水分解した。耐圧性容器内の水蒸気雰囲気温度が220℃に達してから2時間経過した段階で第2容器22内の第2の加水分解物H3を一部サンプリングし、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により加水分解物の組成を調べた。なお、HPLC分析条件は以下の通りである。
〔分析条件〕
分析装置:Thermo Fisher Scientific製 製品名UltiMate3000
カラム:CAPCELLPAK(4.6mmφ×150mm,5μm、株式会社資生堂製)
溶離液組成:ギ酸水溶液/メタノールグラジエント
流量:1mL/min
検出器:DAD(ダイオードアレイ検出器、190nm〜800nm、242nm抽出)
カラム温度:40℃
注入量:5μL
次に、図2(d)に示すように、熱水に溶解していない非水溶性の第2の加水分解物H3を第3の容器23に入れ、新たに水2kgを入れた。
続いて、図2(d)および(e)に示すように、第1、第2加水分解工程を実施したのと同じ上記耐圧性容器20内で第3加水分解工程を実施した。第3加水分解工程において、熱水W3の温度は230℃、飽和水蒸気圧条件下で第2容器22内の固形分解物を加水分解した。耐圧性容器内の水蒸気雰囲気温度が230℃に達してから2時間経過した段階で第3容器23内の第3の加水分解物H5をサンプリングし、HPLCにより加水分解物の組成を調べた。
(実施例2)
実施例1における第1加水分解工程、第2加水分解工程の熱水W1ならびに飽和水蒸気温度を230℃にした以外は、全て実施例1と同じ条件ならびに方法にてポリエチレンテレフタレート製フィルムを加水分解処理した。
(比較例1)
実施例1における第1加水分解工程、第2加水分解工程の熱水W1ならびに飽和水蒸気温度を140℃にした以外は、全て実施例1と同じ条件ならびに方法にてポリエチレンテレフタレート製フィルムを加水分解処理した。
(実施例3)
実施例1における第1加水分解工程、第2加水分解工程のみを実施した。
熱水W1ならびに飽和水蒸気温度を230℃にした以外は、全て実施例1と同じ条件ならびに方法にてポリエチレンテレフタレート製フィルムを加水分解処理した。耐圧性容器内の水蒸気雰囲気温度が230℃に達してから4時間経過した段階で第2容器22内の分解物を一部サンプリングし、HPLCにより加水分解物の組成を調べた。
(比較例2)
実施例1における第1加水分解工程、第2加水分解工程のみを実施した。
熱水W1ならびに飽和水蒸気温度を140℃にした以外は、全て実施例1と同じ条件ならびに方法にてポリエチレンテレフタレート製フィルムを加水分解処理した。耐圧性容器内の水蒸気雰囲気温度が140℃に達してから30時間経過した段階で第2容器22内の分解物を一部サンプリングし、HPLCにより加水分解物の組成を調べた。
上記各実施例および比較例にて得られた第2の加水分解物および第3の加水分解物中のテレフタル酸含有率を測定し、加水分解率として表1に記載した。
Figure 2016113420
表1の結果から、第2加水分解工程完了後のポリエチレンテレフタレート製フィルムの加水分解率が16重量%以上の粗テレフタル酸を、さらに第3加水分解工程を用いて加水分解すると加水分解率が99重量%以上になった(実施例1、実施例2)。
一方、比較例1は、第2加水分解工程完了後の加水分解率が0.2重量%の粗テレフタル酸について、第3加水分解工程での処理を行ったが、加水分解率は90重量%以下であった。
また、実施例3は、第3加水分解工程を行わない例であるが、加水分解時間を延長(4時間)することにより、加水分解率が96重量%となった。一方、比較例2は、30時間加水分解処理を継続しても十分に加水分解できなかった。
以上の結果から、実施例の方法により95重量%以上の収率でテレフタル酸が得られることが明らかである。また、本発明における第2加水分解工程にて加水分解率が10重量%以上の粗テレフタル酸を生成させ、それを第3加水分解工程でさらに加水分解することによって、より効率的に高純度のテレフタル酸を得ることができることがわかった。
本発明は、ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を、大がかりな装置やコストをかけることなく処理し、該ポリエチレンテレフタレートの構成原料であるテレフタル酸を高い品質で回収可能な処理方法を提供することすることができる。従って、ケミカルリサイクル技術によって、限りある石油資源の供給を持続可能とする社会を構築の一助となり得る。
20 耐圧性容器
21 第1容器
22 第2容器
23 第3容器
A 孔部
H1 第1の加水分解物
H2、H3 第2の加水分解物
H4、H5 第3の加水分解物
S 被処理物
S1 残渣

Claims (6)

  1. ポリエチレンテレフタレートを含む被処理物を密閉容器内に格納後、常圧〜飽和水蒸気圧の雰囲気下に暴露してポリエチレンテレフタレートを加水分解し、テレフタル酸および/またはテレフタル酸とエチレングルコールからなるオリゴマー(エチレンテレフタレートオリゴマー)を得る第1加水分解工程と、
    第1加水分解工程にて得られたエチレンテレフタレートオリゴマーを150〜300℃の熱水中にて加水分解し、粗テレフタル酸を得る第2加水分解工程と
    を含むことを特徴とするテレフタル酸の製造方法。
  2. 第2加水分解工程にて得られた粗テレフタル酸を150〜300℃の熱水中にて加水分解し、テレフタル酸を得る第3加水分解工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のテレフタル酸の製造方法。
  3. 第2加水分解工程にて得られる粗テレフタル酸におけるテレフタル酸の含有率が、5重量%以上である請求項1または請求項2に記載のテレフタル酸の製造方法。
  4. 第1加水分解工程にて得られるテレフタル酸および/またはエチレンテレフタレートオリゴマーの全量を、第2加水分解工程に移行させる請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。
  5. 第3加水分解工程にて得られる加水分解物中のテレフタル酸の含有率が、99重量%以上である請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載のテレフタル酸の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の製造方法により得られたテレフタル酸を、エチレングリコールと縮重合してポリエチレンテレフタレートを製造することを特徴とする再生ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
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