JP2016113336A - チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法 - Google Patents

チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外的応力に対する耐久性に優れるアルミニウムケイ酸塩を短時間で製造する。【解決手段】チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法では、シラン化合物類、アルミニウム化合物および尿素またはアンモニアを混合し、一定の混合液を調製する工程S1と、前記混合物を水熱処理する工程S2と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明はチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法に関し、特に外的応力に対する耐久性に優れるアルミニウムケイ酸塩を短時間で製造しうる技術に関する。
イモゴライトとは、火山灰および軽石などの降下火山噴出物を母材とする土壌に現れる天然の粘土成分の一種で、ナノサイズのチューブ状非晶質アルミニウムケイ酸塩である。イモゴライトは、主な構成元素をケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)および水素(H)とする、多数の≡Si-O-Al≡結合で組み立てられたアルミニウムケイ酸塩であって、その形状が外径2.0〜3.0nm、内径0.5〜1.5nm、長さ数10nm〜数μmを呈するナノチューブ状構造体である。このイモゴライトは、ナノサイズにおけるチューブ状という特異な形状とそれによる高い比表面積、水との親和性、イオン交換能や物質吸着能力に優れることから、さまざまな工業的用途が期待されている。
しかし、天然のイモゴライトは採掘地域が限られており、その産出量も極めて少ない。さらに、天然土壌中から産出されるイモゴライトは、表面に酸化鉄の被膜が存在しており、その被膜は粘土から遊離酸化鉄を取り除く処理を行っても完全に取り除くことはできない。したがって、天然土壌中から高純度のイモゴライトを得ることは困難であり、人工的に合成する方法が試みられている。
イモゴライトの人工合成においては、ギブサイトと呼ばれるアルミニウムのシート構造に対し、オルトケイ酸が結合した前駆体を経ることが生成の必要条件となる。
ギブサイトシートは通常、ヘキサアクアアルミニウムイオンの中和(中和滴定)で形成される。かかる工程では、中和中にpHが高くなり水酸化アルミニウムが形成されうるため、これを避けるために当該中和はゆっくり時間をかけて行う必要がある。他方、オルトケイ酸については、ケイ酸重合体ではギブサイトシートに結合できないため、高純度のオルトケイ酸を準備する必要がある。
イモゴライトの人工合成においては、これらの問題点に照準を合わせて合成法が検討されている。
非特許文献1では、オルトケイ酸と過塩素酸アルミニウムとの混合液に、時間をかけて水酸化ナトリウムを滴定する合成方法が記載されている。
特許文献1では、オルトケイ酸ナトリウムと硝酸アルミニウムに尿素を加え加熱しており、中和反応として尿素の熱分解による均一中和反応を利用し中和工程自体をなくし、高純度のイモゴライトを短時間で製造しようとしている。
他方、非特許文献2では、ケイ素源としてオルトケイ酸テトラエチルを用い、かかるケイ素源を過塩素酸アルミニウムと混合し、その後に中和させる方法が記載されている。
特開2011-42520号公報
Farmer et al., J.C.S.CHEM.COMM.,1977, 349, pp462-463 Clement et al., J.AM.CHEM.SOC.,2009, 131, pp17080-17081
しかしながら、非特許文献1のように、オルトケイ酸と過塩素酸アルミニウムとの混合液に水酸化ナトリウムを滴定する方法によれば、高純度のイモゴライトを得ることはできるものの、中和に多大な時間を要する。
特許文献1のように、尿素の熱分解を利用する方法によれば、中和工程を設ける必要がないため、イモゴライトを短時間で合成することはできるものの、高純度のオルトケイ酸を準備する必要があり、やはり製造時間が長くなってしまう。
また、非特許文献2のように、ケイ素源としてオルトケイ酸テトラエチルを使用する方法によれば、ケイ素源が加水分解されいったんは高純度のオルトケイ酸が生成されるものの、長い中和時間中にケイ酸同士が重合してしまうことがある。かかる場合、チューブ構造が均一でない部分、すなわち、チューブ状をなしていない部分が存在し、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の構造全体が不安定になり、外的応力に対する耐久性が大きく低下する。そうすると、例えば、チューブ状アルミニウムケイ酸塩を所定の材料中に分散させて使用する場合などにおいて、分散工程中にチューブ状構造が崩壊し、期待される特性を得ることができない場合がある。
したがって、本発明の主な目的は、外的応力に対する耐久性に優れるアルミニウムケイ酸塩を短時間で製造することができる、アルミニウムケイ酸塩の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明によれば、
シラン化合物類、アルミニウム化合物および尿素またはアンモニアを混合し、一定の混合液を調製する工程と、
前記混合物を水熱処理する工程と、
を備えることを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法が提供される。
本発明によれば、外的応力に対する耐久性に優れるアルミニウムケイ酸塩を短時間で製造することができる。
チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法を概略的に示す図である。 チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造メカニズムを概略的に示す図である。 酸性またはアルカリ性条件下でのアルコキシシランの挙動を概略的に説明する図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
数値範囲を示す「〜」の記載については、その前後に記載される下限値および上限値が当該数値範囲に含まれる。
[チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法]
図1(a)に示すとおり、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法は主に、
(1)シラン化合物類、アルミニウム化合物および尿素またはアンモニアを混合し、一定の混合液を調製する工程S1と、
(2)調製後の混合物を水熱処理する工程S2と、
(3)水熱処理後の混合液を限外濾過しチューブ状アルミニウムケイ酸塩を回収する工程S3とを、備えている。
かかる製造方法は、シラン化合物類の水熱処理による加水分解を利用しオルトケイ酸の逐次的な生成を実現し、尿素の水熱処理による熱分解を利用しアルミニウム化合物の中和を省略している。
かかる製造方法によれば、チューブ状構造が均一で外的応力に対する耐久性に優れるチューブ状アルミニウムケイ酸塩が短時間で製造される。
以下、製造工程の内容や原料などについて説明する。
(1)調製工程
調製工程S1では、シラン化合物類、アルミニウム化合物、尿素またはアンモニアおよび溶媒を混合し、pH2.5〜7.5の一定の混合物を調製する。
(1.1)シラン化合物類
シラン化合物類として、アルコキシシラン化合物であって、詳しくは一般式(1)または一般式(2)で表される群より選ばれた少なくとも1種以上のシラン化合物類が使用される。
好ましくはシラン化合物類として2種以上のシラン化合物類が使用され、一方のシラン化合物類は好ましくは一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、他方のシラン化合物類は好ましくは一般式(2)で表される構造を有する化合物である。
SiX1X2X3Y … (1)
一般式(1)中、X1〜X3はそれぞれ加水分解性基を表す。
加水分解性基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、アセチル基、ブトキシ基、ハロゲン基などが挙げられる。
一般式(1)中、Yは置換官能基を表す。
置換官能基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基などが挙げられる。
SiX1X2X3X4 … (2)
一般式(2)中、X1〜X4はそれぞれ加水分解性基を表し、当該加水分解性基は一般式(1)の加水分解性基と同義である。
シラン化合物類としては、徐々に加水分解されシラノールとなりかつ自身の縮合反応が遅いのが望ましい。「徐々に加水分解され」とは加水分解速度が遅いのがよいという意味であり、「自身の縮合反応が遅い」とは重合体を形成しにくいという意味である。
一連の加水分解反応は主に、加水分解性基の種類、置換官能基(有機官能基)の種類、混合液のpHなどに依存する。
加水分解性基の種類は加水分解速度に影響を与える。ケイ素に結合した加水分解性基があまりに嵩高くなってしまうと立体障害の影響が大きくなり過ぎ、加水分解速度が工業的に適さないほど遅くなるし、逆に加水分解性基としてアセチル基やハロゲン基を有する場合は加水分解速度が速くなる。ケイ素に結合した加水分解性基は立体構造上の嵩が低いほうが立体障害の影響が少なく、加水分解速度も遅すぎずに工業的量産に適しており、メトキシ基、エトキシ基とアセチル基、ハロゲン基とでは、前者の加水分解性基を有する場合のほうが加水分解速度は遅くなる。したがって、加水分解性基としては好ましくはメトキシ基、エトキシ基などが適している。
置換官能基の種類も加水分解速度に影響を与える。ケイ素に結合した置換官能基は、立体障害効果に加え、電子供与性であるか電子吸引性であるかによっても変わってくる。図2に示すとおり、酸性条件下では、水素イオンがアルコキシ基(RO)の酸素に配位し、水分子中の酸素がケイ素原子に配位し、引き続き起こる置換反応によってアルコキシシランの加水分解反応が進行する。かかる条件下では、置換官能基として電子供与性基を有するシラン化合物では、ケイ素原子上の電荷量が上昇しやすいため、加水分解速度が遅くなる傾向がある。したがって、置換官能基としては好ましくは電子供与性基が適しており、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基などが適している。アルカリ性条件下でも、ヒドロキシ基がケイ素原子に求核反応し加水分解反応が進行するため、かかる条件下でも置換官能基としては好ましくは電子供与性基が適している。
混合液のpHはシラン化合物類同士の縮合反応速度に影響を与える。上記加水分解速度は中性付近で最も遅くなり、縮合反応速度は酸性側に極小値を有している。したがって、混合液のpHは好ましくは2.5〜7.5であり、より好ましくは2.8〜5.0であるのがよい。
なお、シラン化合物類は、上記のとおり一般式(1)の化合物と一般式(2)の化合物との2種以上が混合され使用されてもよいし、一般式(1)の化合物と一般式(2)の化合物とのうちいずれか一方が単種類で使用されてもよい。
(1.2)アルミニウム化合物
アルミニウム化合物(無機アルミニウム化合物溶液)としては、溶媒和した際にアルミニウムイオンが生じるものであれば特に制限されない。
アルミニウム化合物としては、たとえば、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミニウムsec−ブトキシドなどが挙げられる。
(1.3)尿素またはアンモニア
尿素またはアンモニアとしては、いずれか一方を用いればよく、所定の濃度に調製された溶液として添加することが取扱い性の観点から好ましい。
特に尿素を用いると、他の各種条件を適宜調整することにより、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の長さを精度よく調整することができるため、各粒子の均一性を向上させることができる。
(1.4)溶媒
溶媒としてはケイ素源およびアルミニウム源と溶媒和しやすいものを適宜選択して使用しうる。
具体的に溶媒としては水、アルコール類などを使用しうる。塩の溶解性および加熱時の取扱い易さの観点から、溶媒としては好ましくは水を用いるのがよい。
(1.5)混合液のpH調整
混合液は好ましくはpH2.5〜7.5に調整し、より好ましくはpH2.8〜5.0に調整する。
pHを当該範囲に調整するためには、たとえば、混合液に対し、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液などの塩基性溶液を添加する方法や、塩酸、酢酸または硝酸などの酸性溶液を添加する方法などが挙げられる。
pH測定は一般的なガラス電極を用いたpHメーターによって測定できる。
たとえば、MODEL(F−71S)(株式会社堀場製作所)を使用することができる。
混合液のpHは、フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)と、中性リン酸塩pH標準液(pH:6.86)と、ホウ酸塩pH標準液(pH:9.18)とをpH標準液として用い、pHメーターを3点校正した後、pHメーターの電極を混合液に入れて、5分以上経過して安定した後の値を読み取ることで得られる。
このとき、混合液とpH標準液との液温はたとえば25℃に調整する。
上記のとおり、混合液のpHはシラン化合物類同士の縮合反応速度に影響を与える。加水分解速度は中性付近で最も遅くなり、自己縮合反応速度は酸性側に極小値を有するため、混合液は好ましくはpH2.5〜7.5であり、より好ましくはpH2.8〜5.0である。
(1.6)混合液の電気伝導率の調整
混合液は好ましくは電気伝導率を10〜10000μS/cmに調整する。
混合液の電気伝導率は好ましくは10〜10000μS/cmであり、より好ましくは500〜3000μS/cmである。
理論純水の電気伝導率は約0.055μS/cmの絶縁体であるため、特に混合液の溶媒が水である場合には混合液の電気伝導率は液中の全イオン量を示す指標といえる。
混合液の電気伝導率は一般的な電気伝導率計によって測定できる。
たとえば、ES−51(株式会社堀場製作所)を用いて常温(25℃)で測定される。
混合液の電気伝導率はチューブ状アルミニウムケイ酸塩の純度に関係する。電気伝導率が10000μS/cm以下であれば、チューブ状構造が形成されやすく、シリカやベーマイトなどの副生成物が生成され純度が低下するのが防止される。電気伝導率が10μS/cm以上であれば、一定数のイオンが存在し、反応が進み収率が向上する。
(1.7)混合液の濃度などの調整
混合液中のSi濃度は好ましくは1〜100mMとし、より好ましくは1〜10mMとする。
混合液中のAl濃度は好ましくは2〜200mMとし、より好ましくは2〜20mMとする。
混合液中のSi/Alモル比は好ましくは0.3〜1.0とし、より好ましくは0.3〜0.7とする。混合液中のSi/Alモル比を調整すると、製造されるチューブ状アルミニウムケイ酸塩の組成比を変更することができる。Si/Alモル比を当該範囲に調整すると、目的のチューブ状アルミニウムケイ酸塩を高純度で得ることができ、非結晶シリカ、ベーマイト、アロフェンなどの副生成物の生成を抑制することができる。
尿素を用いる場合、混合液中の尿素/Alモル比は好ましくは2以上とする。
(2)水熱処理工程
水熱処理工程S2では、調製後の混合液を水熱処理する。
「水熱処理」とは高温高圧で加熱するという一般的な意味であり、水熱処理工程S2では、たとえば混合液をオートクレーブ中で高温で加熱すればよい。
加熱温度は特に限定されないが、より高純度なチューブ状アルミニウムケイ酸塩を得る観点から、好ましくは80〜120℃であり、より好ましくは85〜110℃である。
加熱温度が120℃以下であると、副生成物であるベーマイト(一水和アルミニウム酸化物)の析出を抑制することができる傾向がある。なお、尿素を用いる場合、加熱温度が高すぎると加熱開始初期で急速な熱分解が起き、混合液中のアンモニア濃度が急上昇してpHがアルカリ性側に近似する可能性があるため、中性〜弱酸性で形成されるチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造には不向きだと考えられる。加熱温度が80℃以上であると、尿素の熱分解とそれに続くチューブ状アルミニウムケイ酸塩の合成速度が向上し、生産性を向上させることができる。
加熱時間は好ましくは3〜120時間である。
加熱時間を3時間以上とすると、粒子径D50が5nm以上のチューブ状アルミニウムケイ酸塩をより精度よく形成することができる。加熱時間を120時間以下とすると、粒子径D50が300nm以下のチューブ状アルミニウムケイ酸塩をより精度よく形成することができ、また、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造を効率的に行うことができる。
なお、粒子径D50はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製)で容易に測定されうる。
(3)回収工程
回収工程S3では、水熱処理後の混合液から、溶媒や未反応物などを除去してチューブ状アルミニウムケイ酸塩を回収する。
回収方法には限外濾過や塩析などがある。
(3.1)限外濾過
限外濾過は、基本的には、混合液を流通させながら加圧(または吸圧)して強制的に濾過膜を透過させ、溶媒を除去する方法である。
たとえば、図1(b)に示すように、限外濾過装置30の濾過器32に対し混合液を循環させ、その途中で混合液を加圧(または吸圧)して濾過膜34を強制的に透過させ、溶媒や未反応物を除去する。その後、除去後の混合液に対し、置換を行う溶媒を加えて再度限外濾過して溶媒や未反応物を除去し、これと同様の操作を繰り返す。
限外濾過は、濾過の一種で、英語の頭文字からUF(Ultrafiltration)とも呼ばれ、主として、タンパク質、DNA、デンプン、天然もしくは合成ポリマーなどの可溶性高分子の濃縮、またはダイアフィルトレーションに使用される。限外濾過膜の孔径は、逆浸透膜(RO膜、NF膜)より大きく精密濾過膜(MF膜)よりも小さいとされるが、孔といっても精密濾過膜のような孔は電子顕微鏡で観察しても見られないことが多く、そうした孔径が計測しにくいものについては、膜の分離能力は孔径ではなく、分子量が明らかなタンパク質やデキストランの阻止率による「公称分画分子量(NMWL;Nominal Molecular. Weight Limit)」または「分子量カットオフ評価(MWCO;Molecular Weight Cut Off)」から表されることが多い。
限外濾過は、接線流濾過方式(クロスフロー方式)や全量濾過方式によって行う。大部分の用途では、限外濾過は接線流濾過方式で実施され、この場合には、供給液体が膜表面を通過するときに、膜の孔径よりも小さな分子は透過し(濾液)、残り(保持液)が膜を透過せずに残留する。接線流濾過方式を使用する利点としては、膜の面全体を流体が常に流れるので、膜表面およびその付近でゲル層、ケーキ層の生成が抑制され、これによって安定した透過液量と除去性能が得られやすく膜の寿命が延長されることである。
接線流濾過方式としては、ビバフロー50限外濾過濃縮機 VF05P9(MWCO:3000)、VF05P1(MWCO:5000)、VF05P0(MWCO:10000)、VF05C0(MWCO:10000)、VF05P2(MWCO:30000)、VF05P3(MWCO:50000)、VF05P4(MWCO:100000)、VF05C4(MWCO:100000)、VF05P6(MWCO:1000000)、VF05P7(孔径:0.2μm)、ビバフロー200限外濾過濃縮機 VF20H9(MWCO:2000)、VF20P9(MWCO:3000)、VF20P1(MWCO:5000)、VF20H1(MWCO:5000)、VF20P1(MWCO:5000)、VF20H1(MWCO:5000)、VF20P0(MWCO:10000)、VF20H0(MWCO:10000)、VF20P2(MWCO:30000)、VF20H2(MWCO:30000)、VF20P3(MWCO:50000)、VF20P4(MWCO:100000)、VF20C4(MWCO:100000)、VF20P7(孔径:0.2μm)(以上、Sartorius AG社製)、チューブラー型モジュール MH25−NV−DUYM010(MWCO:20000)、MH25−NV−DUYL010(MWCO:40000)、MH25−NV−DUS0410(MWCO:40000)、MH25−NV−DUS1010(MWCO:100000)、20100P18A(MWCO:100000)、20100P18B(MWCO:100000)、20100P18LP(MWCO:100000)(以上、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)などを用いて行うことができるが、これらに限定されるものではない。
全量濾過方式の場合には、流体の流れ全体がフィルターを透過して濾過され、フィルターを通過しないあらゆる材料は、フィルター上面に残留する。このため、阻止された微粒子や不純物により短時間で膜が閉塞する場合がある。
ここでは、限外濾過は接線流濾過方式と全量濾過方式ともに実施可能であるが、フィルターが詰まりにくく膜の寿命が延長され、経済的に有利な点から接線流濾過方式が望ましい。
限外濾過を行う際の条件としては、水熱処理して得られた混合液の固形分濃度を1〜20%、pHを3〜8、電気伝導度(塩濃度)を10〜5000μS/cmとすることが好ましく、更に、当該混合液の固形分濃度を1〜5%、pHを3〜5、電気伝導度(塩濃度)を10〜200μS/cmとすることがより好ましい。これにより、水熱処理して得られた混合液中においてチューブ状アルミニウムケイ酸塩の分散性が向上し、平均粒子径(D50)が5nm以上であって、粒子径の変動係数が小さいチューブ状アルミニウムケイ酸塩をより確実に得ることができる。
(3.2)塩析
回収工程S3では、水熱処理後の混合液から塩析によりチューブ状アルミニウムケイ酸塩を回収してもよい。
かかる場合、水熱処理後の混合液に対し、凝集剤としてNaCl水溶液を添加してゲル化させ、これを遠心分離することでチューブ状アルミニウムケイ酸塩を回収することができる。
目的のチューブ状アルミニウムケイ酸塩を得るためには、凝集剤として添加するNaCl水溶液の濃度および添加量を適宜調整して行う必要がある。
NaCl水溶液の濃度および添加量が大き過ぎるとチューブ状アルミニウムケイ酸塩が凝集し過ぎてしまい、粒子径の変動係数が大きいチューブ状アルミニウムケイ酸塩が得られてしまい、逆にNaCl水溶液の濃度および添加量が小さ過ぎるとチューブ状アルミニウムケイ酸塩がほとんど凝集されず、遠心分離してもチューブ状アルミニウムケイ酸塩を得ることができない。
(4)その他
チューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法では、必要に応じて、溶媒置換、粉末乾燥など更に別の工程を有していてもよい。
以上の本実施形態では、図3に示すとおり、シラン化合物類を水熱処理して徐々に加水分解させオルトケイ酸を生成し、その一方、尿素またはアンモニアを水熱処理して熱分解させアルミニウム化合物からアルミニウムのギブサイトシートを形成している。
かかる機構によれば、オルトケイ酸が逐次的に生成され、ケイ酸同士が反応する前にオルトケイ酸がアルミニウムのギブサイトシートと反応し、チューブ状構造が均一なチューブ状アルミニウムケイ酸塩が製造されるとともに、重合体の生成も抑制されるため、シリカなどの不純物の生成が抑制され、結果的に高純度のチューブ状アルミニウムケイ酸塩が製造される。
チューブ状構造が均一でない部分、すなわち、チューブ状をなしていない部分が存在すると、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の構造全体が不安定になり、外的応力に対する耐久性が大きく低下する。そうすると、たとえば、チューブ状アルミニウムケイ酸塩を所定の材料中で分散させて使用する場合などにおいて、分散工程中にチューブ状構造が崩壊し、期待される特性を得ることができない場合がある。この点、かかる機構では、チューブ状構造が均一であるため、外的応力に対する耐久性も向上する。
さらにかかる機構によれば、オルトケイ酸を別でいったん生成しこれをアルミニウムのギブサイトシートに供給するという必要がなく、オルトケイ酸の生成にかかる工程が省略され時間短縮が図られる。加えて、尿素またはアンモニアの水熱処理による熱分解によりアルミニウムのギブサイトシートを形成するため、アルミニウム化合物の中和にかかる工程も省略され時間短縮が図られる。
以上から、外的応力に対する耐久性に優れるチューブ状アルミニウムケイ酸塩を短時間で製造することができる。
(1)サンプルの作製
(1.1)サンプル1
表1のシラン化合物類、アルミニウム化合物、尿素および水を混合し、pH4.0の混合液を調製した。
具体的には3.0mMのメチルトリメトキシシラン水溶液を2.5L、3.0mMのテトラメトキシシラン水溶液を2.5L、30mMの硝酸アルミニウム水溶液を1L、28mMの尿素水溶液を1L、3.8mMのNaOH水溶液を1L、イオン交換水2Lを混合して、SiとAlのモル濃度が1:2の比になるように混合液を調製した。更に、混合液のpHが4.0になるようにNaOH水溶液を滴下した。調製した混合液のpHは上記と同様の方法(上記(1.5)混合液のpH調整参照)により測定した(調製工程)。
その後、混合液を充分に撹拌した後、この混合液をオートクレーブにて110℃で80時間加熱した(水熱処理工程)。
混合液が室温に戻った後、ビバフロー200限外濾過濃縮機VF20P2(MWCO:30000、Sartorius AG社製)を使用して限外濾過して100倍に濃縮し、硝酸でpH3.5に調整したイオン交換水を用いて濾過排液の電気伝導度が200μS/cm以下になるまで洗浄を行い、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の水分散液を得た(回収工程)。
(1.2)サンプル2〜12、14〜23
サンプル1の作製において原料や条件などを表1〜表3のとおりに変更した。
それ以外はサンプル1の作製と同様とした。
(1.3)サンプル13、24〜28
サンプル1の作製において原料や条件などを表2〜表3のとおりに変更した。
特に回収工程では、限外濾過に代えて塩析を行い、水熱処理後の混合液に対しNaCl水溶液を添加してゲル化させ、これを遠心分離した。
具体的には、混合液が室温に戻った後、5MのNaCl水溶液を混合液に1/10体積量加えてゲル化させ、遠心分離することで透明なチューブ状アルミニウムケイ酸塩のゲルを得た。得られたゲル中に含まれる塩であるNaClを、透析膜を用いて除去し、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の水分散液を得た。
それ以外はサンプル1の作製と同様とした。
(1.4)サンプル32
サンプル32は非特許文献1の内容を想定して作製したサンプルである。
サンプル32では、テトラエトキシシランを水で希釈し2時間ほど撹拌して加水分解させ、3.0mMのモノケイ酸溶液5Lを調製した。調製した溶液に、30mMの過塩素酸アルミニウム水溶液を1L加え、1Mの水酸化ナトリウムをpH5になるまで速度0.03mL/minで滴下し、さらに純水を入れて10Lの溶液とした後、10mmol分の塩酸と10mmol分の酢酸を加えた。このとき溶液はpH4.5であった。
調製した溶液を十分に撹拌した後、95℃で5日間加熱した。
反応液が室温になったらサンプル13と同様の方法で塩析、脱塩を行い、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の水分散液を得た。
(1.5)サンプル33
サンプル33は特許文献1(実施例3、4参照)の内容を想定して作製したサンプルである。
サンプル33では、水ガラス、水および塩酸を混合し、かかる混合液を遠心分離で3回洗浄した後透析膜にいれ、70℃程度で2.5日間保持し、オルトケイ酸溶液を生成した。
その後、オルトケイ酸溶液、硝酸アルミニウム、尿素および水酸化ナトリウム水溶液を混合し、pH5.0の混合液を調製し、かかる混合液を100℃で3日間程度加熱した。
その後、反応液が室温になったらサンプル13と同様の方法で塩析、脱塩を行い、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の水分散液を得た。
(1.6)サンプル34
サンプル34は非特許文献2(Clement et al., J.AM.CHEM.SOC.2009, Supporting Information p2参照)の内容を想定して作製したサンプルである。
サンプル34では、50mM過塩素酸アルミニウム水溶液5Lにテトラエトキシシランを25mMになるように加え、100mMNaOH水溶液5Lを1.5mL/minの速度で滴下しながら添加した。
その後、常温で12時間撹拌した後、95℃で5日加熱した。
その後、反応液が室温になったらサンプル13と同様の方法で塩析、脱塩を行い、チューブ状アルミニウムケイ酸塩の水分散液を得た。
Figure 2016113336
Figure 2016113336
Figure 2016113336
Figure 2016113336
(2)サンプルの評価
(2.1)純度評価
水熱処理後の混合液に対しケイ素濃度が1mMとなるように純水を加え、5MのNaCl水溶液を1/10体積量添加し、上下撹拌を行い、室温で静置した。この状態で、気泡の残存時間を測定し、気泡の残存時間から当該混合液の増粘を目視により確認した。
室温静置後の気泡の残存時間が長い、すなわち、粘度が高いものほど、目的のチューブ状アルミニウムケイ酸塩が高純度で形成されていることを示している。
サンプルの純度を、室温静置後の気泡の残存時間から、下記の基準に従って評価した。評価結果を表5〜表6に示す。
◎◎:12時間以上
◎:6時間以上、12時間未満
○:1時間以上、6時間未満
△:10分以上、1時間未満
×:10分未満
(2.2)チューブ状構造の均一性評価
(2.2.1)粒径評価
各サンプルの水分散液に対し、超音波分散機UH-300((株)MST製)を用いて24時間超音波分散した。
この超音波分散の前後で粒子径を測定し、粒径変化率を求めた。
粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製)で測定される粒子径D50とした。
粒径変化率は下記式で求めた。
粒径変化率=(分散後の粒子径D50)/(分散前の粒子径D50
粒径変化率の値が小さいものほど、超音波分散によってチューブ状アルミニウムケイ酸塩のチューブ状構造が破壊されているものと推定することができる。
サンプルのチューブ状構造の均一性を、上記のようにして求めた粒径変化率から、下記の基準に従って評価した。評価結果を表5〜表6に示す。
◎:0.90以上
〇:0.85以上、0.90未満
△:0.80以上、0.85未満
×:0.8未満
(2.2.2)吸水性評価
上記粒径評価時の超音波分散の前後で吸水試験を行い、吸水変化率を求めた。
吸水試験は、各サンプルを乾燥して粉体状態とし、温度60℃、湿度90%雰囲気下に放置し、飽和吸水率を測定した。
吸水変化率は下記式で求めた。
吸水変化率=(分散後の飽和吸水率)/(分散前の飽和吸水率)
吸水変化率の値が小さいものほど、超音波分散によってチューブ状アルミニウムケイ酸塩のチューブ状構造が破壊され、吸水特性が低下しているものと推定することができる。
サンプルのチューブ状構造の均一性を、上記のようにして求めた吸水変化率から、下記の基準に従って評価した。評価結果を表5〜表6に示す。
◎:0.95以上
〇:0.90以上、0.95未満
△:0.85以上、0.90未満
×:0.80未満
(2.3)製造時間評価
ケイ素源の原料調製(準備)からチューブ状アルミニウムケイ酸塩を回収するまでの工程時間を、合算し算出した。
サンプルの製造時間を、各工程時間とそれらの合計時間とに分けて表5〜表6に示す。
Figure 2016113336
Figure 2016113336
(3)まとめ
表5〜表6から、サンプル1〜28とサンプル32〜34とを比較すると、前者のサンプルでは、チューブ状構造の均一性評価が高く、短時間でチューブ状アルミニウムケイ酸塩が製造されている。
以上から、チューブ状構造が均一で外的応力に対する耐久性に優れるチューブ状アルミニウムケイ酸塩を短時間で製造するには、シラン化合物類、アルミニウム化合物および尿素を混合して一定の混合液を調製し、その混合物を水熱処理するのが有用であることがわかる。
その他、サンプル1〜20、25〜28とサンプル21〜24とを比較すると、前者のサンプルでチューブ状構造の均一性評価が高く、チューブ状構造が均一なチューブ状アルミニウムケイ酸塩を製造するには、シラン化合物類として一般式(1)または(2)で表される化合物を使用することが有用であることがわかる。
サンプル14〜17とサンプル18とを比較すると、前者のサンプルで純度評価が高く、高純度のチューブ状アルミニウムケイ酸塩を製造するには、混合液中のSi濃度を1〜100mM(Al濃度を2〜200mM)とするのが有用であることがわかる。サンプル25〜28でも同様となっている。
サンプル1〜4とサンプル5〜6とを比較、またはサンプル7〜10とサンプル11〜12とを比較すると、前者のサンプルで純度評価およびチューブ状構造の均一性評価が高く、高純度でチューブ状構造が均一なチューブ状アルミニウムケイ酸塩を製造するには、水熱処理工程の加熱温度を80〜120℃とすること、混合液のpHを2.5〜7.5と調整することが有用であることがわかる。サンプル26〜28でも同様となっている。
サンプル2とサンプル13とを比較すると、前者のサンプルでチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造時間が短く、短時間でチューブ状アルミニウムケイ酸塩を製造するには、限外濾過で回収するのが有用であることがわかる。
30 限外濾過装置
32 濾過器
34 濾過膜

Claims (8)

  1. シラン化合物類、アルミニウム化合物および尿素またはアンモニアを混合し、一定の混合液を調製する工程と、
    前記混合物を水熱処理する工程と、
    を備えることを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
  2. 請求項1に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    前記混合液を調製する工程では、前記シラン化合物類として下記一般式(1)または(2)から表される群より選ばれる少なくとも1種以上のシラン化合物類を使用することを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
    SiX1X2X3Y … (1)
    (一般式(1)中、X1〜X3はそれぞれ加水分解性基を表し、当該加水分解性基がメトキシ基、エトキシ基、アセチル基、ブトキシ基またはハロゲン基であり、Yは置換官能基を表し、当該置換官能基がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基またはメルカプト基である。)
    SiX1X2X3X4 … (2)
    (一般式(2)中、X1〜X4はそれぞれ加水分解性基を表し、当該加水分解性基が一般式(1)の加水分解性基と同義である。)
  3. 請求項2に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    前記加水分解性基がメトキシ基またはエトキシ基であり、
    前記置換官能基がメチル基またはエチル基であることを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    前記混合液を調製する工程では、前記混合液中のSi濃度を1〜100mMと、Al濃度を2〜200mMとすることを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
  5. 請求項4に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    前記混合液を調製する工程では、前記混合液中のSi濃度を1〜10mMと、Al濃度を2〜20mMとすることを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    前記混合液を調製する工程では、前記混合液をpH2.5〜7.5に調整し、
    前記混合液を水熱処理する工程では、前記混合液を80〜120℃で加熱することを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
  7. 請求項6に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    前記混合液を調製する工程では、前記混合液をpH2.8〜5.0に調整し、
    前記混合液を水熱処理する工程では、前記混合液を80〜120℃で加熱することを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法において、
    水熱処理後の前記混合液を限外濾過しチューブ状アルミニウムケイ酸塩を回収する工程を備えることを特徴とするチューブ状アルミニウムケイ酸塩の製造方法。
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