JP2016111181A - 巻線抵抗器 - Google Patents

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【課題】高い導通の安定性を備えた巻線抵抗器を提供する。【解決手段】繊維状の絶縁物を束ねて成形した芯材11の外周に、抵抗線12aを巻回し、芯材の両端部にキャップ端子13を取り付け、抵抗線12aと接続した巻線抵抗器であって、芯材11はその外周近傍部分11aに固着剤を含浸させた。芯材11は中心部分11bに固着剤を含まない部分を有することが好ましい。芯材11はその断面積において、5〜70%程度固着材を含浸させた部分を有することが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗器に係り、特に繊維状の絶縁物を束ねて成形した芯材に抵抗線を巻装した巻線抵抗器に関する。
従来から、上記巻線抵抗器が知られている(特許文献1、2参照)。特許文献1には、ガラス繊維を束ねた芯材の外周面に抵抗線を連続的に巻装した巻線抵抗器であり、ガラス繊維等の絶縁材料からなる線を多数本束ねて、シリコンワニス等の耐熱性接着剤に含浸して固定した芯材に、抵抗線として炭素繊維糸を連続的に巻き付けた巻線抵抗器が開示されている。
特許文献2には、ガラス繊維製芯材に抵抗線を巻回し、その両端にコード接続端子を設けた抵抗素子をセラミックケースに収納し、セメント材を充填した抵抗器が開示されている。この抵抗素子は、ガラス繊維製芯材に抵抗線を巻回し、所要の長さにカットしたものの両端にコード接続用端子をカシメにより取り付けて抵抗素子を構成することが記載されている。
係る巻線抵抗器は、抵抗成分の他に高いインダクタンス成分を有し、フィルター素子(雑音防止抵抗)としても利用が可能である。当該製品は、例えば自動車のエンジン点火時に発生する高周波雑音の放射を効果的に抑制する等に用いられる。また、上述したように、セラミックケースに収納し、耐熱性の素子として利用することも可能である。
特開昭59−115501号公報 特開平9−320804号公報
巻線抵抗器は、ガラス等の繊維束からなる芯材の外周に抵抗線を巻回し、適当な寸法に切断した後、両端部にキャップ端子を装着し、外周方向からカシメて製造している。従来は、キャップ端子両端側からの圧縮強度の確保と、抗折強度の向上を目的として、さらに製造工程における搬送時のガラス繊維束の形状を維持するため、芯材全体に樹脂等の固着剤を含浸させている。そして、毛細管現象を利用してこの固着剤が芯材の全体に行き渡るように含浸させて、芯材全体を固めていた。
しかし、そうすると、外周方向からキャップ端子をカシメた場合、芯材が変形に耐えられずに芯材に亀裂が入ってしまうという問題が生じる場合がある。さらに、金属であるキャップ端子と、固着剤(樹脂材)が浸透したガラス等の芯材では熱膨張係数が異なるため、高温環境下では芯材が大きく膨張し、キャップ端子の口径を押し広げてしまうことがある。室温環境に戻した時にはキャップ端子も収縮するが、もとの口径にまで戻りにくく、広がったままの状態となり、その結果キャップ端子と抵抗線の間に隙間ができ、導通が取れなくなるという問題が生じる場合がある。
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、高い導通の安定性を備えた巻線抵抗器を提供することを目的とする。
本発明の巻線抵抗器は、繊維状の絶縁物を束ねて成形した芯材の外周に、抵抗線を巻回し、芯材の両端部にキャップ端子を取り付け、前記抵抗線と接続した巻線抵抗器であって、前記芯材はその外周近傍部分に固着剤を含浸させたことを特徴とする。
本発明の巻線抵抗器によれば、芯材は外周近傍部分に固着剤を含浸させ、中心部分には固着剤が浸透しないようにすることにより、繊維状の絶縁物を束ねて成形した芯材の全体が固まらず、全体として柔軟性を有している。その結果、キャップ端子カシメ時の圧力に対しては、中心部分の繊維状の成形体がクッションとしての役割を果たし、また使用環境の温度変化による熱膨張の影響が上記クッション作用により低減されるため、抵抗器としての導通の安定性を高めることができる。芯材の外周近傍部分は固着剤により硬化されるため、キャップ端子両端側からの圧縮強度と、抗折強度を十分に確保することができる。
本発明の一実施例の巻線抵抗器の長手方向に沿った断面図である。 本発明の一実施例の巻線抵抗器の断面図であり、左図は図1のB−B断面を示し、右図は図1のA−A断面を示す。右図においては、キャップ端子を省略している。 本発明の一実施例の巻線抵抗器の斜視図であり、キャップ端子カシメ前の状態を示す。 本発明の一実施例の巻線抵抗器の斜視図であり、キャップ端子カシメ後の状態を示す。
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
図1および図2は本発明の巻線抵抗器の要部の断面を示す。芯材11は、ガラス、フェライト、樹脂、アルミナ等の繊維からなる絶縁物を多数本結束して成形されたものである。耐熱性が求められる場合には、ガラス繊維またはアルミナを用いる。この芯材11は、外周近傍部分11aに固着剤を含浸させている。図2右図A−A断面のように、芯材の外周近傍部分11a(固着剤を含浸した部分)は、芯材の中心部分11bを取り囲んでいる。固着剤を含浸した部分11aは、芯材11の外周に沿って均一に形成する必要はなく、芯材の中心部分11bに固着剤があまり浸み込んでいない状態であれば良く、特に望ましい状態としては、芯材の中心部分11bにおいては全く固着剤が浸み込んでいない状態である。
ここで、固着剤は、低粘度のエポキシ系樹脂等からなり、絶縁物からなる繊維の束に毛細管現象を利用して入り込み、外周近傍部分11aに固着剤を含浸させてから加温硬化させ、固化した含浸層を形成する。例えば、ガラス繊維束はガラス繊維を集めた束であり、繊維径が数μmから十数μmと非常に細いものであるため、製造工程において切断前の長い状態で搬送する際に、芯材の形状を維持できずに湾曲してしまう。そこで、低粘度の樹脂等の固着剤を含浸させ、加温硬化してガラス繊維束を結束して形状を維持する。
芯材は断面積において5〜70%程度固着剤を含浸させた部分を有することが必要である。5%以下であると、ガラス繊維束を固着して芯材として形状維持することが難しく、また70%以上であると、後述するクッション性の効果が弱くなるからである。固着剤が浸透した部分を少なくし、繊維束が固着した部分を低減することが目的であるため、固着剤を含浸した部分の面積は少ない方がよく、断面の面積で固着剤浸透部分を10〜30%、繊維束のままの部分を70〜90%程度とすることが好ましい。これにより、繊維束の外周近傍部分11aに固着剤を含浸させた形状維持層と、その内部の繊維束のままの中心部分11bのバランスが取れた芯材11を形成できる。
この例えばガラス繊維束からなる芯材11は、外周近傍部分11aのみに固着剤を含浸させ、中心部分11bには固着剤が浸透しないようにすることにより、芯材11の全体が固まらず、全体として柔軟性を有している。その結果、後述するキャップ端子カシメの圧力に対しては、中心部分11bのガラス繊維がクッションとしての役割を果たし、また使用環境の温度変化による熱膨張の影響がクッション作用により低減されるため、抵抗器としての導通の安定性を確保でき、信頼性が向上する。芯材11は全長にわたって、中心部分11bに固着剤が浸透していないことが望ましいが、キャップ端子13内部に収まる芯材11が中心部分11bに固着剤を含まず、キャップ端子13に収められない芯材11は中心部分11bに固着剤を含浸させることにより、圧縮強度と抗折強度を高めるようにしてもよい。
固着剤含浸方法は、以下の方法が採用可能である。第1に、あらかじめ粘度を調整した樹脂を槽内に溜め、この槽内に繊維束からなる芯材を通し、芯材の内部まで十分に樹脂が浸透しないように搬送の速度を調整し、送り出す。すなわち、槽内の滞留時間を調整することで、樹脂の浸漬深さを調整することが可能である。第2に、ディスペンサー等により、繊維束からなる芯材の外周表層に樹脂を塗布する。上記と同様に樹脂の粘度をあらかじめ調整し、芯材の中心部分まで樹脂が浸透しない程度に塗布量を管理する。
そして、繊維束に浸透した樹脂を加温硬化させ、芯材11の製造工程が完了する。この芯材11の外周に抵抗線12aを巻回し、さらに樹脂12bにより抵抗線12aを芯材11の外周面に固定し、抵抗線の巻回層12を形成する。抵抗線12aとしては、Ni線、NiCr線、NiFe線、CuNi線等が用いられる。
次に、適当な寸法に切断した後、両端部にキャップ端子13を装着し、外周方向からカシメ加工により加圧して、略平坦面のカシメ痕13aを形成する。この際、中心部分11bの繊維束がクッションとして作用するため、深いカシメ痕を内部に食い込ませる必要がなく、カシメ痕13aは平坦で、内部に食い込んでなく、キャップ端子13が多角形を形成することが好ましい(図4参照)。これに伴い、キャップ端子13のカシメ部分における芯材11の断面は多角形となる(図2左図B−B断面参照)。
芯材11は、固着剤(樹脂)が浸透した部分が外周表面から外周近傍部分と少ないため、高温環境下での熱膨張が抑制され、キャップ端子13の口径を押し広げることを防止できる。したがって、室温環境に戻した時にも、キャップ端子13と抵抗線12aの間に隙間ができにくくなり、従来よりも長期にわたり抵抗線とキャップ端子の導通状態を維持することができ、導通の安定性、すなわち、信頼性が向上する。
さらに、芯材11は外周近傍部分11aに樹脂が含浸され、特に中心部分11bまでは固着剤が浸透していないため、芯材11が弾性を備える。すなわち、キャップ端子13をカシメる際に生じる外周方向からの応力は、固着剤を含まない繊維束が追従して変形することにより吸収され、芯材11に亀裂が入りにくくなる。
また、芯材11に含まれる固着剤が少なくなることにより、熱膨張の影響によるキャップ端子の口径の広がりを抑制することができるため、カシメ痕を内部に食い込ませなくても十分に導通を確保できる。その結果、キャップ端子13部分の断面は多角形になっている(図2左図B−B断面参照)。
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
本発明は、繊維状の絶縁物を多数本束ねて成形した芯材に抵抗線を巻装した巻線抵抗器に好適に利用可能である。

Claims (5)

  1. 繊維状の絶縁物を束ねて成形した芯材の外周に、抵抗線を巻回し、前記芯材の両端部にキャップ端子を取り付け、前記抵抗線と接続した巻線抵抗器であって、
    前記芯材はその外周近傍部分に固着剤を含浸させたことを特徴とする巻線抵抗器。
  2. 前記芯材は中心部分に固着剤を含まない部分を有することを特徴とする請求項1に記載の巻線抵抗器。
  3. 前記芯材はその断面積において、5〜70%程度前記固着材を含浸させた部分を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線抵抗器。
  4. 前記キャップ端子内部に収まる前記芯材は、その中心部分に固着剤を含まないことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の巻線抵抗器。
  5. 前記キャップ端子のカシメ部分における前記芯材の断面は、多角形であり、カシメ痕が内部に食い込んでいないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の巻線抵抗器。
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