JP2016104037A - 細胞亜集団の同定及び濃縮 - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞亜集団の同定及び濃縮の提供。【解決手段】本明細書の教示により、本発明者らは、広範な種類の腫瘍由来の癌幹細胞を正確に同定、ソーティング、濃縮及び/又は特徴づけるために独立に又は集合的に使用することができる一連のマーカーを発見した。本発明はこれら及びその他の目的を達成するものであり、広くは、過剰増殖症又は腫瘍性疾患に関連付けられる特定の腫瘍形成性細胞又は細胞亜集団を同定若しくは特徴づけるために及び所望によりそれらを単離、分画、分離又は濃縮するために使用可能な方法、化合物、組成物、及び製品を目的とする。好ましい実施形態では、対象となる細胞又は細胞亜集団は、腫瘍開始細胞及び/又は腫瘍永続細胞及び/又は腫瘍前駆細胞を含む。【選択図】なし

Description

相互参照出願
本明細書は、アメリカ合衆国法典35巻119条(e)項に基づき、2010年9月3日付けで出願された米国特許仮出願第61/380,181号及び2011年7月21日付で出願された同第61/510,413号の利益を主張し、前記各特許出願は参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
発明の分野
本発明は、広くは、細胞又は細胞亜集団の、具体的には様々な腫瘍に由来する腫瘍開始細胞の、同定、特徴づけ、及び所望により単離又は濃縮に関する。 選択された態様では、本発明は、腫瘍開始細胞の単離方法及びその結果得られる製剤、並びに診断、治療及びその他の臨床及び非臨床用途における薬剤研究開発のために腫瘍開始細胞及び細胞集団を使用するための様々な方法にもまた関する。
発明の背景
幹細胞及び前駆細胞の細胞分化並びに細胞増殖は、器官形成中の組織の成長を支え、あらゆる生物の生涯にかけてほとんどの組織の細胞の置換と修正を支えるように協調作用する正常な継続的過程である。 分化及び増殖の決定は、細胞の運命の決定及び組織の構造を維持するために均衡される数々の因子及び信号によってしばしば制御される。 正常な組織構造は、細胞が細胞分裂及び組織成熟を調節する微小環境の信号に応答する結果として維持される。 したがって、細胞の増殖及び分化は、通常、傷害を受けた細胞又は死につつある細胞の置換のためか、若しくは成長のための必要に応じてのみ生じる。 残念なことに、例えば、様々な信号生成化学物質の不足又は過剰、微小環境の変化の存在、遺伝的突然変異、若しくはそれらの何らかの組み合わせなどを含む多様な因子の結果として、細胞の増殖及び/又は分化が乱されることがある。 正常な細胞の増殖及び/又は分化に何らかの混乱が来たされると、癌を含む様々な病気又は疾患に至ることがある。
癌の従来の治療としては、化学療法、放射線療法、外科手術、免疫療法(例えば、生物反応修飾物質、ワクチン又は標的治療)、若しくはそれらの組み合わせが挙げられる。 悲しいことに、そのような従来の治療に反応しないか、又はわずかにしか反応しない癌はあまりにも多く、患者に残されるオプションはほとんどない。 更には、癌の種類によっては、外科手術のような利用可能な治療のいくつかは、実行可能な代替手段となり得ない。 現在の標準的治療法に元来存在する限界は、すでに治療を受け、その後に再発を経験する患者の治療を試みるときに、特に明白である。そのような場合には、失敗した治療計画及びその結果としての患者の病態の悪化は、最終的に治療不能であることが明らかになる、より攻撃的な疾患として現れる難治性腫瘍に寄与し得る。 長年にわたり、癌の診断及び治療には偉大な改善がもたらされてきたが、既存の治療法では治療後の再発、腫瘍の再発及び転移を防ぐことができないために、多くの固形腫瘍の全体的な生存率はいまだに大きくは変化していない。 したがって、より標的化された強力な治療法の開発はなお課題として残されている。
前途有望な研究分野の一つには、多くの癌の根底にあると思しき腫瘍形成「種」細胞を標的とした標的治療の使用が関与する。 この点に関し、組織の大半を成す分化された細胞の種類を生成する成熟した組織居住性幹細胞集団をほとんどの固形組織が含むことは、今では周知のことである。 これらの組織において発生する腫瘍はまた同様に、幹細胞から生じる細胞の異種集団から成るが、それらは、それらの腫瘍は全体的な増殖及び機構において著しく異なる。 大多数の腫瘍細胞の増殖能力は限られているが、(癌幹細胞又はCSCとして周知の)癌細胞の少数集団が高度な固有の自己再生能力によって腫瘍を再び開始する能力を有することは広く認識されつつある。 より具体的には、癌幹細胞について提案されている仮説によると、各腫瘍の内部には特異的な細胞のサブセット(すなわちCSC)が存在し(約0.1〜10%)、前記サブセットは永続的な自己再生能力及び腫瘍細胞生成能力を有するが、それらの腫瘍細胞が腫瘍前駆細胞へと分化し、結果的に最終分化した腫瘍細胞になることにより、漸進的にその複製能力は制限されていく。
近年では、これらのCSC(腫瘍永続細胞すなわちTPCとしても知られる)は従来の化学療法薬又は放射線に対してより強い抵抗力を有し、したがって標準臨床療法後も持続する可能性があり、後の再発腫瘍及び二次腫瘍の成長並びに転移の原因となる可能性があることが、明らかになってきている。 更には、正常な組織居住性幹細胞の器官形成及び/又は自己再生を調節する経路がCSCにおいて無秩序化又は変更される結果として自己再生性癌細胞の継続的な拡大及び腫瘍形成に至ることを示唆する証拠も増えている。 広くは、Al−Hajj et al., 2004, PMID:15378087及びDalerba et al., 2007, PMID: 17548814を参照。
前記各文献は参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。 したがって、従来の、及びより最近の標的治療法の有効性は、これらの多様な治療方法にさらされても癌を持続させることができる抵抗力のある癌細胞の存在及び/又は出現によって、明らかに限界に来ている。特許文献1及び特許文献2の各々の全体は、参考として本明細書に組み込まれる。 かかる所見が正しいことは、腫瘍の成長、再発及び転移の機序に関する詳細な理解がますます深まっているのに従来のデバルキング剤がいまだに固形腫瘍患者の生存率を実質的に増加させることができないことにより裏付られている。したがって、腫瘍性疾患を治療するための最近の戦略は、腫瘍の再発、転移又は患者の治療後の再発の可能性を低減するために、腫瘍永続細胞の分化を根絶、除去、抑制又は促進することの重要性を認識している。
そのような戦略を展開するための努力には、免疫不全マウスにヒト原発固形腫瘍標本を移植して排他的に継代する非従来型ゼノグラフト(NTX)モデルが関与する最近の研究が取り入れられてきた。 そのような技法によって、異種腫瘍を生成しそれらの成長を永久に駆動し続けるユニークな能力を有する細胞の亜集団の存在が確認される。 すでに仮設となっているように、NTXモデルにおける研究によって、同定されたCSC腫瘍細胞亜集団が例えば化学療法及び放射線のようなデバルキング治療計画に対してより抵抗力があるように見受けられることが確認されており、これにより、臨床反応率と全体的生存率との不釣合いが解明される可能性がある。 更に、CSCの研究におけるNTXモデルの採用は、腫瘍の再発及び転移に多大な影響を有するCSC標的療法をもたらすことによって患者の生存率を向上する可能性のある新薬発見及び新薬候補の前臨床評価に根本的な変化をもたらすきっかけともなっている。
残念なことに、そのような技法及び関連する方法論は、効果的に分析できるように腫瘍永続細胞亜集団を効率的且つ信頼できるやり方で同定、特徴づけ及び/又は分画、単離若しくは濃縮する能力に大きく依存する。 最終的にそのような作業を実行するためには、細胞階層の分解及び組織解明を可能にする腫瘍細胞マーカーの同定及び関連性が非常に重要である。 したがって、腫瘍永続細胞(すなわちCSC)と結びつく信頼できるマーカーの同定は、臨床研究及び基礎研究の両方の設定における多様な用途に有用且つ貴重な情報をもたらす。 特定の腫瘍又は転移性病変からの腫瘍永続細胞の同定、及び次いで行われるそれらの単離は、例えば、疾患の病理学的原因の診断及び/又は合理的な治療法の開発において有用である。 その他の例においては、TPCの同定、特徴づけ、単離、分画又は濃縮は、生理学的機序及び分子機序に関する生体外実験を行うために、あるいは腫瘍の生成、進行及び/又は治療の生体内研究のための動物への移植のために、必要である。
本発明は、過剰増殖症の理解、治療、予防及び/又は管理を促進するために新規組成物、モデル及び方法を提供することによって、これらの課題のいくつかに対処する。
Huff et al., European Journal of Cancer 42: 1293−1297 (2006) Zhou et al., Nature Reviews Drug Discovery 8: 806-823 (2009)
本発明はこれら及びその他の目的を達成するものであり、広くは、過剰増殖症又は腫瘍性疾患に関連付けられる特定の腫瘍形成性細胞又は細胞亜集団を同定若しくは特徴づけるために及び所望によりそれらを単離、分画、分離又は濃縮するために使用可能な方法、化合物、組成物、及び製品を目的とする。 好ましい実施形態では、対象となる細胞又は細胞亜集団は、腫瘍開始細胞及び/又は腫瘍永続細胞及び/又は腫瘍前駆細胞を含む。
より具体的には、本明細書の教示により、本発明者らは、広範な種類の腫瘍由来の癌幹細胞を正確に同定、ソーティング、濃縮及び/又は特徴づけるために独立に又は集合的に使用することができる一連のマーカーを発見した。 開示されるこれらのマーカーと腫瘍構造における特定の自己再生性悪性細胞との新規な結びつきは、選択された生化学的技法を用いて、持続的自己再生能力及び腫瘍反復発生能力を有する表現型の特異的な細胞又は腫瘍細胞亜集団の濃縮、単離、又は精製を提供する。 先行技術と異なり、且つ下記の実施例によって実証されるように、本開示のマーカーは、様々な種類の腫瘍由来の腫瘍開始細胞を認識又は同定することができる。 これらのマーカーによって定義される比較的均一の細胞集団の濃縮及び単離は、その構成要素である癌幹細胞の広範な特徴づけを可能にし、例えば、潜在的治療標的の解明及び医薬化合物のスクリーニングを可能にする。 その他の実施形態では、本発明の細胞及び組成物は、研究及び新薬開発努力を促進するために非従来型ゼノグラフトモデルのような動物モデルとともに使用することができる。 更には、本開示のマーカーは、過剰増殖症の診断、分類、監視及び管理のために臨床及び非臨床設定において使用することができ、付随するキット又はその他の製品を提供するために使用することもまたできる。
特に好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に定めた選択されたマーカー又はマーカーの組み合わせの新規な使用を通じて、腫瘍開始細胞(TIC)、腫瘍永続細胞(TPC)及び腫瘍前駆細胞(TProg)の同定、特徴づけ、濃縮及び/又は単離を提供する。 癌幹細胞パラダイムに関して述べると、前述のそれぞれの細胞亜集団は程度の差はあれ腫瘍形成性であり、したがって、腫瘍の成長、維持、転移及び再発に関与するものである。 重大なことに、本発明は、かかる細胞亜集団を同定すること、及び所望によりそれらを多様な異なる種類の腫瘍及び癌病期から誘導することを可能にする。 すなわち、腫瘍開始細胞関連マーカー(TICAM)、腫瘍永続細胞関連マーカー(TPCAM)及び腫瘍前駆細胞関連マーカー(TProgAM)を含む特定の癌幹細胞マーカーの同定を通じて、本発明は、その他の態様とともに、純度の高い腫瘍形成性細胞亜集団を均一に且つ再現可能に認識、特徴づけ及びソーティング又は単離することを提供し、それによって、診断用として見込みのある、癌幹細胞に特異的な治療標的及びタンパク質の同定を可能にする。
これに関して、本開示のマーカーを単独で又は組み合わせとして用いて定義されるこれらの細胞又は濃縮された細胞亜集団を医薬品の研究及び開発に効果的に利用して、腫瘍に寄与する癌幹細胞の抑制又は枯渇のために最適化された新規治療標的を特定することができる。
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1種類のTICAMの発現のために濃縮された、単離された腫瘍形成性細胞集団を提供する。 関連した方法では、本発明は、腫瘍形成性細胞集団の濃縮方法を含み、この方法は、
腫瘍細胞集団を、少なくとも1種類のTICAMと優先的に結びつく結合剤と接触させる工程と、
濃縮された腫瘍形成性細胞集団を提供するために、前記少なくとも1種類のTICAMと結びつく前記細胞をソーティングする工程と、を含む。
特に好ましい実施形態では、前記ソーティング工程は、蛍光活性化細胞ソーティング、磁気による細胞ソーティング、基質による細胞ソーティング、レーザー介在式セクショニング、蛍光光度法、フローサイトメトリー又は顕微鏡検査法を含む。 その他の好ましい実施形態では、前記ソーティング工程は、前記腫瘍細胞集団を複数の結合剤と接触させる工程を含む。
本発明はまた、異種腫瘤由来の濃縮された腫瘍形成性細胞集団及びこれらの腫瘍由来の腫瘍開始細胞も提供する。 本明細書で開示される腫瘍開始細胞ソーティング方法は、生体内細胞継代並びに生体外培養技術及び精製された細胞集団によって、以下に詳細に説明するように、広範な用途を提供するものとして評価されるであろう。
本発明の別の態様は、腫瘍を有する被験体に応じてあつらえられる治療方法を含み、この方法は、本発明の方法による、前記被験体自身の腫瘍に由来する腫瘍形成性細胞の容易な入手可能性及び操作性によって可能となる。
この点に関して、本発明の別の実施形態は、治療又は診断方法を必要とする被験体の治療又は診断方法を含み、この方法は、前記被験体から腫瘍検体を得る工程と、
前記腫瘍検体を、TICAMと優先的に結びつく少なくとも1種類の結合剤と接触させる工程と、を含む。
好ましい実施形態では、腫瘍検体は固形腫瘍検体を含む。 その他の好ましい実施形態では、この方法は、前記腫瘍検体と関連づけられた腫瘍形成性細胞を特徴づける又は評価する工程を更に含む。
本発明のまた別の態様は、腫瘍検体から得られた細胞が腫瘍形成性細胞かどうかを決定する方法を含み、この方法は、前記腫瘍細胞を少なくとも1種類のTICAMと接触させる工程を含む。
本発明の更に別の態様は、癌患者である被験体の治療方法を提供し、この方法は、前記被験体から得た検体中のTICAM陽性細胞を評価する工程を含む。 所望により、前記評価は前記被験体の治療後に行われてもよく、他の実施形態では、前記評価は前記被験体が1つ以上の抗癌剤で治療された後に行われる。 更に他の実施形態では、前記評価は前記患者/被験体が治療される前に行われることになる。
本発明の別の実施形態は、被験体が再発の危険にさらされているかどうかを決定する方法に関するものであり、この方法は、TICAMと優先的に結びつく結合剤の導入を介してTICAM陽性細胞の存在を評価する工程を含み、この腫瘍開始細胞の検出は、前記被験体が転移性又は再発性の癌の危険にさらされていることを示す。 かかる実施形態では、前記被験体は、当業者に既知の抗癌剤又は抗癌療法を受けることができる。
これに関連して、本発明は、癌のような腫瘍開始細胞に関連づけられる疾患の診断及び監視に有用なキットもまた提供する。 この点に関して、本発明は、好ましくは、腫瘍開始細胞関連マーカーと優先的に結びつく1つ以上の結合剤を含む1つ若しくは複数のレセプタクルと、その使用方法の説明資料と、を備える、かかる疾患の診断又は治療に有用な製品を提供する。
本発明のまた別の実施形態は、遺伝子型又は表現型分析の実施方法であって、この方法は、
1種類以上のTICAMを含む腫瘍形成性細胞又は濃縮された腫瘍細胞集団を提供する工程と、
遺伝物質又はプロテオーム物質を提供するために前記細胞又は細胞集団を処置する工程と、
前記遺伝物質又はプロテオーム物質を分析する工程と、を含む。
好ましい実施形態では、前記分析は、そのトランスクリプトームの少なくとも1部分のNext−Genシークエンシングを含む。 他の実施形態では、本発明は質量分光分析を含む。
更に別の実施形態では、本発明は、医薬化合物となる可能性のある化合物のスクリーニング方法を含み、この方法は、
腫瘍形成性細胞又は腫瘍形成性細胞集団を候補化合物に曝露する工程と、前記腫瘍形成性細胞又は腫瘍形成性細胞集団を少なくとも1種類のTICAMと接触させる工程と、を含む。
選択された実施形態では、前記曝露工程は生体内で実施される。 他の好ましい実施形態では、前記曝露工程は生体外で実施される。 更に他の好ましい実施形態では、前記方法は、前記腫瘍形成性細胞又は腫瘍形成性細胞集団を特徴づける工程を更に含む。
別の実施形態では、本発明は、癌の誘導方法を提供し、この方法は、
1種類以上のTICAMが濃縮された腫瘍形成性細胞集団を提供する工程と、
前記腫瘍形成性細胞集団を被験体に導入する工程と、を含む。
更に別の好ましい実施形態では、本発明は、癌の誘導方法を提供し、この方法は、
1種類以上のTIMCAMを呈する腫瘍形成性細胞を単離する工程と、
単離された腫瘍形成性細胞を被験体に導入する工程と、を含む。
好ましくは、前記細胞は、1種類以上のTICAMと優先的に結びつく1種類以上の結合剤と前記細胞とを接触させることによって単離される。
本発明は、腫瘍検体の生成方法を更に提供し、この方法は、
1種類以上のTICAMを含む腫瘍形成性細胞又は濃縮された腫瘍細胞集団を提供する工程と、
前記腫瘍形成性細胞又は濃縮された腫瘍形成性細胞集団を被験体内に導入する工程と、
前記腫瘍形成性細胞又は細胞集団が異種腫瘍を生成するのを待つ工程と、
前記異種腫瘍を採取する工程と、を含む。
好ましい実施形態では、前記採取された腫瘍は標準的な技法を用いて凍結及び保存されるであろう。 更に他の好ましい実施形態では、前記採取された腫瘍由来の細胞は、被験体に移植されるであろう。 本発明の更に他の好ましい実施形態は、そのような採取された腫瘍を含む腫瘍バンクを含むであろう。
なお別の特に好ましい実施形態では、本発明は、1種類以上のTICAMが精製又は濃縮された腫瘍形成性細胞又は細胞集団を移植した被験体を含む、医薬化合物の分析のための動物モデルを提供する。特に好ましい実施形態では、前記被験体は免疫不全マウスを含むであろう。関連する好ましい実施形態は、1種類以上のTICAMが精製又は濃縮された腫瘍形成性細胞又は細胞集団を導入する工程を含む、医薬化合物の分析のための動物モデルの生産方法を含む。
前述の態様に加えて、本発明の選択された実施形態は、生体内における癌の進行及び/又は発症機序の分析方法を提供し、この方法は、
1種類以上のTICAMを含む1つ以上の腫瘍開始細胞を被験体に導入する工程と、
前記被験体における癌の進行及び/又は発症機序を分析する工程と、を含む。
好ましい実施形態では、前記動物は、前記1つ以上の腫瘍開始細胞の導入の後に1種類以上の抗癌剤によって治療される。
本発明と適合性のある好ましいTICAMは、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9を含む。 特に好ましい実施形態では、本明細書に定めたように濃縮又は単離された細胞及び細胞集団は、1種類以上のTICAMを含むマーカー表現型を含むものである。 下記に詳細に説明し、添付の実施例によって例示するように、前述の各マーカーを本明細書の教示にしたがって使用して、腫瘍形成性細胞集団を同定及び特徴づけること、並びに所望により分離又は濃縮することができる。
前述の全ての実施形態に関して、特に好ましいTICAMは、CD46、CD324及びCD66cから成る群から選択されるTICAMを含んでなることが理解されるであろう。 この点に関して、選択される特に好ましい腫瘍形成性細胞又は濃縮された細胞集団はCD46hi 表現型を含むものであると理解される。 他の好ましい実施形態では、本開示による細胞又は細胞集団はCD324 表現型を含む。 更に他の特に好ましい実施形態では、本発明の細胞又は細胞組成物はCD46hl CD324 表現型を含む。 また他の好ましい実施形態では、本開示の細胞はCD 46hl CD324 CD66c 表現型を有し、更に他の実施形態では、前記細胞はCD 46hl CD324 CD66cを呈する。 勿論、前述の表現型を含む細胞集団は、その各特定のマーカーと反応する結合剤を用いて誘導することができるものと理解される。
本発明の好ましい実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
少なくとも1種類のTICAMの発現のための濃縮された腫瘍形成性細胞集団。
(項目2)
前記少なくとも1種類のTICAMが、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CDU 1、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン5、HER3、IL−20Ra、インテグリン a9bl、インテグリン b5、LDL−R、メール、セマフォリン 4B、TROP−2及びVb9から成る群から選択される、項目1に記載の濃縮された腫瘍形成性細胞集団。
(項目3)
前記少なくとも1種類のTICAMが、CD46、CD324、CD66c及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、 項目1に記載の濃縮された腫瘍形成性細胞集団。
(項目4)
前記細胞が、CD46hi CD324を含むマーカー表現型を有する、項目1に記載の濃縮された腫瘍形成性細胞集団。
(項目5)
項目1に記載の濃縮された腫瘍形成性細胞集団と、医薬的に許容され得る担体と、を含む組成物。
(項目6)
少なくとも1種類のTICAMを含む単離された腫瘍形成性細胞。
(項目7)
前記少なくとも1種類のTICAMが、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD 104、CD 105、CD 108、CD111、CD 130、CD 136、CD151、CD 155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2及びVb9から成る群から選択される、項目6に記載の細胞。
(項目8)
前記少なくとも1種類のTICAMが、CD46、CD324、CD66c及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、 項目7に記載の細胞。
(項目9)
前記細胞が、CD46hi CD324を含むマーカー表現型を有する、項目6に記載の細胞。
(項目10)
項目6に記載の細胞と、医薬的に許容され得る担体と、を含む組成物。
(項目11)
腫瘍形成性細胞の検出方法であって、
腫瘍細胞集団を、少なくとも1種類のTICAMと好んで結びつく結合剤と接触させる
工程と、
前記腫瘍形成性細胞と結びついた前記結合剤を検出する工程と、を含む、方法。
(項目12)
前記結合剤が核酸を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記結合剤がタンパク質を含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記タンパク質がリガンドを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記タンパク質が抗体を含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
TICAMと好んで結びつく前記抗体が、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記検出工程が、蛍光活性化細胞ソーティング、磁気による細胞ソーティング、基質による細胞ソーティング、レーザー介在式セクショニング、蛍光光度法、フローサイトメトリー又は顕微鏡検査法を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記腫瘍細胞集団が固形腫瘍由来である、項目11に記載の方法。
(項目21)
前記固形腫瘍が、副腎癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌及び乳癌から成る群から選択される腫瘍性疾患を有する被験体から得られるものである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記検出される細胞が転移性細胞である、項目11に記載の方法。
(項目23)
前記接触工程が生体内で行われる、項目11に記載の方法。
(項目24)
前記接触工程が、免疫不全マウスで行われる、項目23に記載の方法。
(項目25)
腫瘍形成性細胞集団の濃縮方法であって、
腫瘍細胞集団を、少なくとも1種類のTICAMと好んで結びつく結合剤と接触させる工程と、
濃縮された腫瘍形成性細胞集団を提供するために、前記TICAMと結びついた前記細胞をソーティングする工程と、
(項目26)
前記結合剤が核酸を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記結合剤がタンパク質を含む、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記タンパク質がリガンドを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記タンパク質が抗体を含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
TICAMと好んで結びつく前記抗体が、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記TICAMが、CD46、CD324、CD66c及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、 項目30に記載の方法。
(項目32)
前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記ソーティング工程が、蛍光活性化細胞ソーティング、磁気による細胞ソーティング、基質による細胞ソーティング、レーザー介在式セクショニング、蛍光光度法、フローサイトメトリー又は顕微鏡検査法を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記腫瘍細胞集団が固形腫瘍由来である、項目25に記載の方法。
(項目36)
前記固形腫瘍が、副腎癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌及び乳癌から成る群から選択される腫瘍性疾患患者から得られるものである、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記濃縮された腫瘍形成性細胞集団が、CD46hi CD324を含むマーカー表現型を有する、項目25に記載の方法。
(項目38)
項目37に記載の濃縮された腫瘍形成性細胞集団と、医薬的に許容される担体と、を含む組成物。
(項目39)
腫瘍形成性細胞のソーティング方法であって、
腫瘍細胞集団を、少なくとも1種類のTICAMと好んで結びつく結合剤と接触させる工程と、
前記少なくとも1種類のTICAMと結びついた細胞をソーティングする工程と、を含む、方法。
(項目40)
前記結合剤が核酸を含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記結合剤がタンパク質を含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記タンパク質がリガンドを含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記タンパク質が抗体を含む、項目41に記載の方法。
(項目44)
TICAMと好んで結びつく前記抗体が、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子を含む、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記ソーティング工程が、蛍光活性化細胞ソーティング、磁気による細胞ソーティング、基質による細胞ソーティング、レーザー介在式セクショニング、蛍光光度法、フローサイトメトリー又は顕微鏡検査法を含む、項目39に記載の方法。
(項目48)
腫瘍検体から得られた細胞が腫瘍形成性細胞かどうかを決定する方法であって、前記腫瘍細胞を少なくとも1種類のTICAMと接触させる工程を含む、方法。
(項目49)
前記TICAMが、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記接触させる工程が、2種類以上のTICAMを含む、項目48に記載の方法。
(項目51)
前記腫瘍細胞が、CD46hi CD324を含むマーカー表現型を含む、項目48に記載の方法。
(項目52)
疾患の治療又は診断を必要とする患者被験体の治療又は診断方法であって、
前記被験体から腫瘍検体を得る工程と、
前記腫瘍検体を、TICAMと好んで結びつく少なくとも1種類の結合剤と接触させる工程と、を含む、方法。
(項目53)
前記結合剤が核酸を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記結合剤がタンパク質を含む、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記タンパク質がリガンドを含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記タンパク質が抗体を含む、項目54に記載の方法。
(項目57)
TICAMと好んで結びつく前記抗体が、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記TICAMが、CD46、CD324、CD66c及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、 項目52に記載の方法。
(項目59)
前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目56に記載の方法。
(項目60)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子を含む、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記疾患が固形腫瘍を含む、項目25に記載の方法。
(項目62)
前記疾患が、副腎癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌及び乳癌から成る群から選択される腫瘍性疾患を含む、項目35に記載の方法。
(項目63)
腫瘍検体から得られた細胞の腫瘍形成性を決定する方法であって、前記腫瘍細胞を少なくとも1種類のTICAM結合剤と接触させる工程を含む、方法。
(項目64)
前記結合剤が核酸を含む、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記結合剤がタンパク質を含む、項目63に記載の方法。
(項目66)
前記タンパク質がリガンドを含む、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記タンパク質が抗体を含む、項目65に記載の方法。
(項目68)
TICAMと好んで結びつく前記抗体が、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記TICAMが、CD46、CD324、CD66c及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、 項目63に記載の方法。
(項目70)
前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目67に記載の方法。
(項目71)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子を含む、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記腫瘍細胞が固形腫瘍細胞である、項目63に記載の方法。
(項目73)
前記固形腫瘍が、副腎癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌及び乳癌から成る群から選択される腫瘍性疾患患者から得られるものである、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記細胞が、CD46hi CD324を含むマーカー表現型を有する、項目72に記載の方法。
(項目75)
癌を患う被験体が再発の危険にさらされているかどうかを決定する方法であって、
前記患者から腫瘍検体を得る工程と、
前記腫瘍検体を、TICAMと好んで結びつく少なくとも1種類の結合剤と接触させる工程と、を含む、方法。
(項目76)
前記結合剤が核酸を含む、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記結合剤がタンパク質を含む、項目75に記載の方法。
(項目78)
前記タンパク質がリガンドを含む、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記タンパク質が抗体を含む、項目77に記載の方法。
(項目80)
TICAMと好んで結びつく前記抗体が、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9から成る群から選択される、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記TICAMが、CD46、CD324、CD66c及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、 項目80に記載の方法。
(項目82)
前記抗体がモノクローナル抗体を含む、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子を含む、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記接触工程が生体内で行われる、項目75に記載の方法。
(項目85)
前記接触工程が免疫不全マウスで行われる、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記接触工程が生体外で行われる、項目75に記載の方法。
(項目87)
前記腫瘍検体が固形腫瘍検体である、項目75に記載の方法。
(項目88)
前記腫瘍検体が、副腎癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌及び乳癌から成る群から選択される腫瘍性疾患患者被験体から得られるものである、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記腫瘍検体が、CD46hi CD324を含むマーカー表現型を有する、項目75に記載の方法。
(項目90)
前記患者がデバルキング手術を受けた患者である、項目75に記載の方法。
(項目91)
過剰増殖症の診断又は監視に有用なキットであって、過剰増殖症の診断又は監視をするために、1種類以上のTICAM結合剤を含む容器と、前記1種類以上のTICAM結合剤の使用方法説明資料と、を備える、キット。
(項目92)
前記1種類以上のTICAM結合剤がモノクローナル抗体を含む、項目91に記載のキット。
(項目93)
前記モノクローナル抗体がレポーター分子と結びつけられるものである、項目92に記載のキット。
(項目94)
前記容器が、読み取り可能なプレートを備える、項目91に記載のキット。
(項目95)
遺伝子型又は表現型分析の実施方法であって、
1種類以上のTICAMを含む腫瘍形成性細胞又は濃縮された腫瘍細胞集団を提供する工程と、
遺伝物質又はプロテオーム物質を提供するために前記細胞又は細胞集団を処置する工程と、
前記遺伝物質又はプロテオーム物質を分析する工程と、を含む、方法。
(項目96)
前記物質が遺伝物質である、項目95に記載の方法。
(項目97)
前記遺伝物質がトランスクリプトーム物質を含む、項目96に記載の方法。
(項目98)
医薬化合物としての可能性のある化合物をスクリーニングする方法であって、
腫瘍形成性細胞又は腫瘍形成性細胞集団を候補化合物に曝露する工程と、
前記腫瘍形成性細胞又は腫瘍形成性細胞集団を少なくとも1種類のTICAM結合剤と接触させる工程と、を含む、方法。
(項目99)
前記候補化合物が低分子化合物である、項目98に記載の方法。
(項目100)
前記腫瘍形成性細胞又は腫瘍形成性細胞集団のソーティング工程を更に含む、項目98に記載の方法。
(項目101)
前記ソーティング工程が、蛍光活性化細胞ソーティング、磁気による細胞ソーティング、基質による細胞ソーティング、レーザー介在式セクショニング、蛍光光度法、フローサイトメトリー又は顕微鏡検査法を含む、項目100に記載の方法。
(項目102)
癌の誘導方法であって、
1種類以上のTICAMが濃縮された腫瘍形成性細胞集団を提供する工程と、
前記腫瘍形成性細胞集団を被験体に導入する工程と、を含む、方法。
(項目103)
癌の誘導方法であって、
1種類以上のTIMCAMを呈する腫瘍形成性細胞を単離する工程と、
単離された腫瘍形成性細胞を被験体に導入する工程と、を含む、方法。
(項目104)
腫瘍検体の生成方法であって、
1種類以上のTICAMを含む腫瘍形成性細胞又は濃縮された腫瘍細胞集団を提供する工程と、
前記腫瘍形成性細胞又は濃縮された腫瘍形成性細胞集団を被験体内に導入する工程と、
前記腫瘍形成性細胞又は細胞集団が異種腫瘍を生成するのを待つ工程と、
前記異種腫瘍を収穫する工程と、を含む、方法。
(項目105)
前記待つ工程中に前記被験体に候補化合物が投与される、項目104に記載の方法。
(項目106)
前記異種腫瘍のソーティングが行われる、項目105に記載の方法。
(項目107)
1種類以上のTICAMが精製又は濃縮された腫瘍形成性細胞又は細胞集団が移植された被験体を含む、医薬化合物の分析のための動物モデル。
(項目108)
前記被験体が免疫不全マウスを含む、項目107に記載の方法。
(項目109)
1種類以上のTICAMが精製又は濃縮された腫瘍形成性細胞又は細胞集団を導入する工程を含む、医薬化合物の分析のための動物モデルの生産方法。
(項目110)前記被験体が免疫不全マウスを含む、項目109に記載の方法。
(項目111)
生体内における癌の進行及び/又は発症機序の分析方法であって、
1種類以上のTICAMを含む1つ以上の腫瘍形成性細胞を被験体に導入する工程と、
前記被験体における癌の進行及び/又は発症機序を分析する工程と、を含む、方法。
上記の記述は概要であり、したがって、単純化された表現、一般化された表現、及び細部の省略を含まざるを得ないものであり、当然、当業者は上記概要があくまで例示であり、いかなる限定をも意図しないものであることを理解するであろう。 これらの方法、組成物及び/又は装置の他の態様、特徴及び利点、並びに本明細書に記載の他の目的物は、本明細書に記載の図を参照することによって、及びその教示において、明らかになるであろう。
図1A及び1Bは、ヒストグラム図として表示された個々の腫瘍細胞に関するフローサイトメトリーによるタンパク質発現データを図示し、図中、アイソタイプコントロール抗体の背景染色は灰色に塗られたヒストグラムで示されており、CD46発現は太い黒線で表示されている。 図2は、ヒストグラム図として表示された個々の腫瘍細胞に関するフローサイトメトリーによるタンパク質発現データをグラフ化したものであり、図中、アイソタイプコントロール抗体の背景染色は灰色で塗られたヒストグラムで示されており、CD324発現は太い黒線で表示されている。 図3A及び3Bは、ヒストグラム図として表示された個々の腫瘍細胞に関するフローサイトメトリーによる発現データを示し、アイソタイプコントロール抗体の背景染色は灰色に塗られたヒストグラムで示されており、CD24又はCD34の発現は太い黒線で表示されている。 図4A及び4Bは、代表的な結腸直腸腫瘍から濃縮されたCD46hl CD324細胞集団の腫瘍形成性を実証する散布図及びグラフ表示である。 図5A及び5Bは、代表的な膵臓腫瘍から濃縮されたCD46hl CD324細胞集団の腫瘍形成性を実証する散布図及びグラフ表示である。 図6A及び6Bは、代表的な肺腫瘍から濃縮されたCD46hl CD324細胞集団の腫瘍形成性を実証する散布図及びグラフ表示である。 図7A及び7Bは、代表的なトリプルネガティブ乳房腫瘍から濃縮されたESA (CD46hl) CD324細胞集団の腫瘍形成性を実証する散布図及びグラフ表示である。 図8は、CD46とCD324の様々な組み合わせを発現する単離された腫瘍細胞亜集団を利用した、代表的な結腸直腸腫瘍細胞、非小細胞肺腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、及びトリプルネガティブ乳房腫瘍細胞の移植実験の概要を表で表したものである。 図9A及び9Bは、表示されている代表的な固形腫瘍型においてCD46hl CD324細胞で共発現することが観察されたマーカーを表にまとめたものである。 図9A及び9Bは、表示されている代表的な固形腫瘍型においてCD46hl CD324細胞で共発現することが観察されたマーカーを表にまとめたものである。 図10は、散布図(上)又はヒストグラム図(下)として表示された個々の結腸直腸腫瘍細胞に関するフローサイトメトリーによるタンパク質発現データをグラフ表示したものであり、ヒストグラム図では、アイソタイプコントロール抗体の背景染色は灰色に塗られたヒストグラムで示されており、表示されているタンパク質抗原の細胞表面発現は太い黒線で表示されている。 図11は、等高線図(上)又はヒストグラム図(下)として表示された個々の膵臓腫瘍細胞に関するフローサイトメトリーによるタンパク質発現データをグラフ表示したものであり、ヒストグラム図では、アイソタイプコントロール抗体の背景染色は灰色に塗られたヒストグラムで示されており、表示されているタンパク質抗原の細胞表面発現は太い黒線で表示されている。 図12は、散布図(上)又はヒストグラム図(下)として表示された個々の非小細胞肺腫瘍細胞に関するフローサイトメトリーによるタンパク質発現データをグラフ表示したものであり、ヒストグラム図では、アイソタイプコントロール抗体の背景染色は灰色に塗られたヒストグラムで示されており、表示されているタンパク質抗原の細胞表面発現は太い黒線で表示されている。 図13A〜Cは、親腫瘍から得られた結腸直腸腫瘍由来のCD46hl CD324 CD66c 濃縮細胞集団が異種腫瘍を再構成する能力を描いたグラフ表示である。 図14A及び14Bは、一次移植における特異的な結腸直腸腫瘍細胞集団によるCD66c細胞の再構成を示すヒストグラム図、及び二次移植における記述した腫瘍細胞亜集団による腫瘍形成のグラフ表示である。 図15A〜Cは、連続移植を通じてCD46hl CD324 CD66c濃縮細胞集団が示した頑強な腫瘍形成性を示す散布図及び要約表である。; 16A〜Dは、CD46、CD324及びCD66cを様々なレベルで発現する特異的な腫瘍細胞亜集団が、コロニーを形成し、分化し、可溶性のCD66cを生体外で生成する能力をグラフ表示したものである。 ; 図17A〜Dは、治療された腫瘍におけるCD46hl CD324 CD66細胞の相対頻度の増加を示すことによって、化学療法剤が結腸直腸腫瘍細胞亜集団に与える影響を示すデータを提供する。 図18A及び18Bは、治療された腫瘍におけるCD46hl細胞の相対頻度の増加を示すことによって、化学療法剤が結腸直腸腫瘍細胞亜集団に与える影響を示すデータを提供する。 図19A及び19Bは、本開示によって描出された細胞階層を反映した概略図である。 図19A及び19Bは、本開示によって描出された細胞階層を反映した概略図である。 図20A〜20Dは、結腸直腸ゼノグラフト腫瘍内において、NTG細胞、TProg細胞及びTPCとそれぞれ結びつけられるNOTUM(図20A)、APCDD1(図20B)、代表的な 膵臓タンパク質(図20C)及びMUC20(図20D)の代表的な遺伝子発現をグラフに示したものである。
発明の詳細な説明
I. 序文
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解をもたらすために数々の具体的な詳細を記載する。 しかし、当業者は、本発明の態様はこれらの具体的な詳細がなくとも実行可能であることを理解するであろう。場合によっては、本発明を不明瞭にしないために、周知の方法、手順及び構成要素についての説明は省いた。
これまで、治療戦略を定め有効な治療標的を提供するために治療的に重要な腫瘍形成及び成長の態様を特徴づけることは極めて困難であることが示されてきた。 様々な癌の治療に成果のある治療計画をこれまで作成できなかったのは、少なくとも部分的に、腫瘍の成長及び再発を促す根本的な力の理解の欠如と、研究技法及びツールの制限によるものである可能性がある。 しかし、過去数年にわたる癌幹細胞パラダイムの開発及び検証、並びにより有効性の高い研究方法によってもたらされた腫瘍生理学の複雑さの理解の向上は、患者の生存率によって示される実質的な臨床上の進歩として自明となるべきである。 残念ながら、いくつかの特筆すべき例外を除き、期待されたそのような改善は、とりわけ特定の固形腫瘍に関しては、まだ認識されていない。
部分的には、この臨床上の成功の相対的な欠如は、一般に腫瘍形成性であるとみなされている、誤った理解又は不適正な定義がされている細胞集団に対して、一般には正確で啓蒙的な研究技法が誤ったやり方で応用されていることによる可能性がある。 例えば、識別的遺伝子発現は、癌に関連づけられる遺伝子活性の識別及び、治療的又は診断的な価値がある可能性のある発現タンパク質の同定に、広く用いられているが、患者の生存率の改善におけるこの技法の価値は限られている。 これは、非特異的又は不適切な癌幹細胞マーカーを用いてソーティングされた腫瘍細胞又は亜集団の複雑な混合物から入手された遺伝子情報を用いてそのような分析が実施されることがしばしばあったためである。
これらの手順は、広く均一に発現された腫瘍関連遺伝子生成物に関してはある程度の洞察をもたらす可能性があるが、腫瘍の再発及び転移の予防のための標的療法の開発のために利用し得る特定の、関連性のある癌幹細胞の同定に関しては、ほとんど役に立たない。すなわち、出発材料の質が不十分であるために、そのような識別的発現の研究は、表現型が多様な分化された細胞をもとに、(病理学的観点からは)無関係である又は比較的重要性の低い遺伝子及び/又はタンパク質の関係を示すことがしばしばあり、結局、追加的な研究の癌幹細胞マーカーとしてはそれらが一般に有効でないことが示される。 対照的に、腫瘍開始細胞関連マーカー(TICAM)、腫瘍永続細胞関連マーカー(TPCAM)及び腫瘍前駆細胞関連マーカー(TProgAM)を含む特定の癌幹細胞マーカーの同定を通じて、本発明は、他の態様とともに、高度に純粋な腫瘍形成性細胞亜集団を均一に且つ再現可能に認識し、特徴づけ、ソーティング又は単離することを提供し、それによって、診断用として見込みのある癌幹細胞に特異的な治療標的及びタンパク質の同定を可能にする。
より広くは、本明細書の教示により、本発明の発明者らは、広範な種類の腫瘍由来の癌幹細胞を正確に同定、ソーティング、濃縮及び/又は特徴づけるために独立に又は集合的に使用することができる一連のマーカーを発見した。 開示されるこれらのマーカーと腫瘍構造における特定の自己再生性悪性細胞との新規な関連付けは、選択された生化学的技法を用いて、持続的自己再生能力及び腫瘍反復発生能力を有する表現型が明確に異なる細胞すなわち腫瘍細胞亜集団の濃縮、単離、又は精製をもたらす。 先行技術と異なり、且つ下記の実施例によって実証されるように、開示される前記マーカーは、様々な種類の腫瘍由来の腫瘍開始細胞を認識又は同定することができる。 これにより、これらのマーカーによって定義される比較的均一の細胞集団の濃縮及び単離は、潜在的治療標的の解明及び医薬化合物のスクリーニングを含めた、その構成要素である癌幹細胞の広範な特徴づけを可能にする。 その他の実施形態では、本発明の細胞及び組成物は、研究及び新薬開発努力を促進するために非従来型ゼノグラフトモデルのような動物モデルと併用することができる。 更には、開示される前記マーカーは、過剰増殖症の診断、分類、監視及び管理のために臨床及び非臨床設定において使用すること、並びに付随するキット又はその他の製品を提供するために使用することもまたできる。
本発明の特定の特徴を例示及び説明してきたが、当業者は多くの修正、置換、変更及び同等物を想起するであろう。したがって、添付の請求項は本発明の真の意図の範囲内のそのような全ての修正及び変更を網羅することを意図するものと理解されたい。
II.略語抜粋
CSC(cancer stem cells):癌幹細胞、ETP(early tumor progenitor cells):初期腫瘍前駆細胞、FACS(fluorescence activated cell sorting):蛍光活性化細胞ソーティング、LTP(late tumor progenitor cells):後期腫瘍前駆細胞、MACS(magnetic−assisted cell sorting):磁気による細胞ソーティング、TIC(tumor initiating cells):腫瘍開始細胞、TICAM(tumor initiating cell associated marker):腫瘍開始細胞関連マーカー、TPC(tumor perpetuating cells):腫瘍永続細胞、TPCAM(tumor perpetuating cell associated marker):腫瘍永続細胞関連マーカー、TProg(tumor progenitor cells):腫瘍前駆細胞、TProgAM(highly proliferative tumor progenitor cell associated marker):高増殖性腫瘍前駆細胞関連マーカー、NTX(non−traditional xenograft):非従来型ゼノグラフト。
III. 定義
便利のために、本明細書全体(明細書、実施例及び添付の請求項)に使用されている特定の用語をここにまとめる。 特に別の定めがない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。
本明細書に使用される用語「腫瘍開始細胞」(TIC)は、免疫不全マウスに移植されたときに少なくとも有意な増殖能力及び腫瘍形成開始能力を有することが可能な腫瘍形成性細胞又はそれらの集団を意味するものとする。 これに関し、腫瘍開始細胞集団は、腫瘍永続細胞及び高増殖性腫瘍前駆細胞の両方を含む。
本開示の目的上、「腫瘍永続細胞」(TPC)又は「癌幹細胞」(CSC)は、互換性をもって使用できる用語として用いることができ、自己再生、異常増殖、及び分化を経て腫瘍を形成することができる細胞として定義される。 腫瘍永続細胞は腫瘍形成性であることをその機能的特徴とし、自己再生によって追加的な腫瘍形成性細胞を作り出すことができ、且つ、非腫瘍形成腫瘍細胞を作り出すことによって異種腫瘤の過程を完全に繰り返すことができる。
本発明に関して、用語「腫瘍前駆細胞」(TProg)は、TPCの子孫であり且つ、生体外で培養されたとき又は適合性のある動物宿主を介して継代されたときに少なくとも何らかの腫瘍反復能力及び限られた自己再生能力を有する、腫瘍形成性細胞又はそれらの集団を指す。 本明細書では、特定のTProg細胞又は集団は高増殖性と呼ばれる。 下記に詳述するように、TProg細胞集団は、表現型(例えば、細胞表面マーカー)及び異なる腫瘍細胞構造反復能力によって区別され得る「初期腫瘍前駆細胞」(ETP)と「後期腫瘍前駆細胞」(LTP)との両方を含む。
本明細書においては、「腫瘍開始細胞関連マーカー」(TICAM)は、腫瘍開始細胞又は細胞亜集団と結びつく任意のマーカーを含むものとし、それらの同定、特徴づけ及び任意による単離又は濃縮を可能にする。
本明細書においては、「腫瘍永続細胞関連マーカー」(TPCAM)は、腫瘍永続細胞又は細胞亜集団と結びつく任意のマーカーを含むものとし、それらの同定、特徴づけ及び任意による単離又は濃縮を可能にする。 TICAM及びTPCAMは相互排他的ではなく、個々のマーカーは両方を同時に含み得るものと理解されたい。
本明細書の目的上、「腫瘍前駆細胞関連マーカー」(TProgAM)は、腫瘍前駆細胞又は細胞亜集団と結びつく任意のマーカーを含み、それらの同定、特徴づけ及び任意による単離又は濃縮を可能にする TICAM及びTProgAMは相互排他的ではなく、個々のマーカーは両方を同時に含み得るものと理解されたい。
本明細書で使用されるとき、特に単離された細胞又は単離された細胞集団を指していうとき、用語「腫瘍形成性」は、解離されて免疫不全マウスのような好適な動物モデルに移植されたときに腫瘍の形成能力を有する腫瘍由来の細胞を指す。
本明細書においては、「非腫瘍形成性細胞」(NTG)は、腫瘍開始細胞からもたらされるがそれ自身は自己再生能力がない、又は腫瘍を含む腫瘍細胞の異種系列を生成しない、腫瘍細胞を指す。 実験的に、NTG細胞は、過多な細胞数で移植されても免疫不全マウスに再現可能に腫瘍を形成する能力がない。
本明細書の目的上、選択された細胞、細胞集団又は細胞亜集団を「選択(する)」、「ソーティング(する)」、「分画(する)」、「セクショニング(する)」又は「単離(する)」という用語は互換性をもって使用することができ、特に文脈により別の意味に定められない限りは、選択された細胞又は画定された細胞のサブセットが組織検体から取り出され、その細胞又は細胞集団を定義するパラメータの範囲に含まれない他の細胞及び汚染物質から分離されることを意味する。 単離された癌幹細胞は、一般には、他の細胞型による汚染がなく、自己再生能力及び腫瘍反復能力を有し、分化した子孫の生成を可能にする。 しかし、その過程又は治療の結果として細胞集団がもたらされたときは、絶対的な純度の組成物を提供することは実用的でないと理解される。 そのような場合は、細胞集団は、選択された細胞亜集団の機能又は特性を実質的には干渉しない様々な汚染物質(他の細胞型を含む)の存在下でそのときに存在するその選択された細胞に関して「濃縮」される。
本明細書で使用される、細胞又は細胞集団に関して使用される用語「濃縮(された)」は、広く解釈されてよく、処置されていない同等の細胞集団又は検体に見出されるより高い割合の選択された細胞型を含む、処理された又は処置された任意の細胞集団を意味することができる。いくつかの好ましい実施形態では、細胞集団の濃縮は、その細胞集団の割合をその開始細胞集団と比較して、細胞集団における1つの型の細胞を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、又は50%を超える割合で増加することを指す。他の好ましい実施形態では、本発明の濃縮された細胞集団は、選択された細胞型を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%含む。更に他の実施形態では、腫瘍永続細胞の濃縮製剤は、製剤中に含有される合計細胞集団の約1%以上又は約0.5%〜約40%を含むものとして説明され得る。比較として、代表的な腫瘍細胞の濃縮されていない製剤は、二次コロニー形成球をもたらす能力を有する又は生体内において異種腫瘍を持続する能力を有する腫瘍永続細胞をわずか約0.2%〜約2.0%以下含むであろう。いくつかの実施形態では、前記濃縮された製剤は、100倍、200倍、500倍、1,000倍、又は最高2,000倍若しくは10,000倍〜20,000倍に濃縮された、少ない細胞数から開始して二次コロニーをもたらす能力を有する、又は生体内において異種腫瘍を持続する能力を有する、癌幹細胞の製剤を含む。
本発明の他の態様では、特定の細胞集団に関しての用語「実質的に純粋」は、合計細胞集団を成す細胞に対して、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、更に好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の純度の細胞の集団を指す。 換言すると、1つ以上の部分的に及び/又は終端まで分化された細胞型の調製に関しての用語「実質的に純粋」又は「本質的に精製された」は、腫瘍開始細胞ではない細胞を約20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%、又は1%未満含有する細胞集団を指す。
細胞又は組織に関する文脈において本明細書で使用される「マーカー」又は「細胞マーカー」は、特定の細胞、細胞集団又は組織に対して識別可能に関連づけられる、又はそれらの中若しくは上に特異的に見出される、化学的又は生物学的実体の形態における任意の特徴又は特性を意味し、疾病又は疾患による影響を受けた組織又は細胞集団の中、若しくは上において識別されるものも含む。 マーカーの性質は形態学的であっても、機能的であっても、生化学的であってもよい。 好ましい実施形態では、前記マーカーは、特定の細胞型(例えば、TPC)又は細胞によって特定の条件下で(例えば、前記細胞のライフサイクルの特定の時点の間、又は特定のニッチにある細胞)差異的に若しくは選択的に発現する(又はしない)細胞表面抗原である。 本明細書で企図されるマーカーは、陽性又は陰性を特定するとみなされ、その存在(陽性)又は欠如(陰性)によって細胞又は細胞亜集団を示すことができる。
同様に、組織、細胞又は細胞集団に関する文脈における用語「マーカー表現型」(例えば、安定したTPC表現型)は、
特定の細胞又は細胞集団を特徴づけ、同定、定量化、分離、単離、精製又は濃縮するために使用できる任意のマーカー若しくはマーカーの組み合わせを意味する。 特定の好ましい実施形態では、前記マーカー表現型は、細胞表面マーカーの組み合わせの発現を検出又は同定することによって決定され得る細胞表面表現型である。
マーカー又はマーカー表現型についての発現レベルが「陽性」、「低い」及び「陰性」であることは、以下のように定義される。 陰性発現(すなわち「−」)を伴う細胞は、本明細書では、その蛍光チャネルにおいて、追加的な蛍光発光チャネルにおける他の関心対象のタンパク質に関しての完全な抗体染色カクテルラベリングの存在下で、アイソタイプコントロール抗体によって95パーセンタイル値以下の発現が観察される細胞と定義される。 当業者は、陰性イベントを定めるためのこの手順が「FMO(Fluorescence Minus One)」染色と呼ばれるものであることを理解するであろう。
上記FMO染色手順を用いたアイソタイプコントロール抗体で観察される発現が95パーセンタイル値を越す細胞は、本明細書では、「陽性」(すなわち「+」)と定義される。 本明細書の定義によると、広く「陽性」と定義される様々な細胞集団が存在する。 第1に、低発現(すなわち「lo」)の細胞は、広くは、アイソタイプコントロール抗体でのFMO染色を用いた決定で観察された発現が95パーセンタイル値より上で、且つ前記FMO染色手順を用いたアイソタイプコントロール抗体で観察された発現が95パーセンタイル値から1標準偏差の範囲内である細胞と定義される。 「高」発現(すなわち「hi」)の細胞は、アイソタイプコントロール抗体でのFMO染色を用いた決定で観察された発現が95パーセンタイル値より上で、且つ前記FMO染色手順を用いたアイソタイプコントロール抗体で観察された発現が95パーセンタイル値から+1標準偏差より高い細胞と定義される。 他の実施形態では、陰性と陽性のFMO染色を分ける点として99パーセンタイル値を使用することが好ましい場合があり、特に好ましい実施形態では、前記パーセンタイル値は99%を越す場合がある。
本明細書で使用するとき、用語「系列」は共通の起源を有する細胞の説明である。 例えば、同じ腫瘍開始細胞由来の細胞は、その子孫が様々なクラスの細胞に分化したとしても、同系列であり得る。
本開示の目的上、用語「結合剤」、「結合分子」及び「結合エンティティ」は、状況によって別の意味に定められない限り同義語であり、互換性をもって使用することができる。 本発明の文脈では、前記結合剤は、画定された細胞又は細胞亜集団上の選択されたマーカーと結合する、相互作用する、認識する、反応する、ないしはその他の方法で優先的に結びつく。 代表的な結合剤としては、抗体又はそのフラグメント、抗原、アプタマー、核酸(例えば、DNA及びRNA)、
タンパク質(例えばレセプター、酵素、酵素阻害剤、酵素基質、リガンド)、ペプチド、レクチン、脂肪酸又は脂質、及び多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。 例えば、選択された実施形態では、適合性のある結合剤は、麻疹ウィルスの赤血球凝集素タンパク質又はそのCD46結合フラグメントを含むことができる。 他の特に好ましい実施形態では、前記結合剤又はエンティティは、抗体又はそのフラグメントを含む。
本明細書に記載される用語「抗体」は、その最も広義の意味において用いられ、具体的には、合成抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体又はポリクローナル抗体、マルチクローナル抗体、組み換え技術により生成された抗体、イントラボディ(細胞内発現抗体)、多特異性抗体、二重特異性抗体、一価抗体、多価抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、単鎖FvFcs (scFvFc)、単鎖Fvs (scFv)、抗イディオタイプ抗体(anti−Id)及び、所望の生物活性(すなわち、マーカーの結びつき、すなわち結合)を呈するその他の任意の免疫活性抗体フラグメントを網羅する。 より広義には、本発明の抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性フラグメントを含み、それらの分子は、前記フラグメントが例えばFc領域又はそのフラグメント(ただし限定せず)を含む別の免疫グロブリンドメインと融合する場合又はしない場合がある抗原結合部位を含有する。 更には、本明細書に更に詳述するように、抗体という用語は、具体的に、Fc領域を含む完全長抗体及び変異型Fc融合体(Fc−Fusions)を含むFc変異型又はそれらのフラグメントを含み、所望により、少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、免疫グロブリンの免疫活性フラグメントに融合される。
本明細書で使用されるとき、用語「エピトープ」は、特定の抗体によって認識され且つ特異的に結合され得るその標的マーカー又は抗原の部分を指す。 前記マーカーが細胞表面レセプターのようなポリペプチドであるとき、エピトープは、隣接アミノ酸及びタンパク質の三次折れたたみによって並列される非隣接アミノ酸の双方から形成され得る。 隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質の変性の際に維持されるが、三次折れたたみによって形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質の変性の際に失われる。 エピトープは、典型的には、一意の空間配座に少なくとも3つ、より典型的には少なくとも5個又は8〜10個のアミノ酸を含む。 より具体的には、当業者は、エピトープという用語が、免疫グロブリン又はT細胞レセプターと特異的に結合する若しくは他の方法で分子と相互作用することが可能な任意のタンパク質決定因子を含むことを理解するであろう。 エピトープ決定因子は、一般には、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面の集合体を含み、一般には、特定の三次元構造的特徴及び特定の電荷特性を有する。 加えて、エピトープは直線状の場合も立体配座の場合もある。直線状のエピトープでは、そのタンパク質と相互作用している分子(例えば抗体)との間の相互作用の全ての点は、そのタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状に生じる。 立体配座のエピトープでは、それらの相互作用の点は、互いから直線的に分離されているそのタンパク質のアミノ酸残基を渡って生じる。
本明細書で使用されるとき、用語「誘導体」は、例えば、ユビキチン化、ラベリング(フルオロフォア)、ペギレーション(ポリエチレングリコールによる誘導)又は他の分子の追加のような技法(ただし限定せず)によって、標準的な分子生物学的方法又は化学的方法を介して修飾されたタンパク質及び核酸を含む分子を指す。
用語「官能性誘導体」と「模倣剤」は互換性をもって使用され、官能性誘導体の元のエンティティ又は分子の生物活性と実質的に相似の生物活性(機能的又は構造的に)を有する化合物を指す。 官能性誘導体という用語は、分子のフラグメント、変異型、類似体又は化学的誘導体を含むことが意図される。
本明細書で使用されるとき、ポリヌクレオチド又はポリペプチドに関しての「変異型」は、それぞれ対応する基準とするポリヌクレオチド又はポリペプチドと比較したときに(例えば、野生型のポリヌクレオチド又はポリペプチドと比較したときに)、一次、二次又は三次構造において変化があり得るポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。 抗体の「変異型」は、例えば、構造及び機能において実質的に相似の分子を指すことを意味し、前記変異型は、選択された抗原又はそのフラグメントと結合する能力は保持しているが、生化学的影響は変化している。
ある分子は、分子と別の分子との両方が実質的に相似の構造を有するならば、あるいはそれら両方の分子が同様の生物活性を有するならば、別の分子と「実質的に相似」であると言われる。 したがって、2つの分子が同様の活性を有するならば、それらの分子のうちの1つの構造が他方の分子中に見つからないとしても、あるいはアミノ酸残基の配列が同一ではないとしても、それらは本明細書で使用される用語としての変異型であるとみなされる。
分子の「フラグメント」は、その分子の任意の隣接したポリペプチド又はヌクレオチドのサブセットを意味する。 例えば、トランスメンブレンタンパク質のフラグメントは、その細胞外ドメイン又はその何らかのタンパク質のみを含む構成体を含む場合がある。 本発明に関しては、マーカーフラグメント又は誘導体は、選択されたマーカーの任意の免疫反応性又は免疫活性部分を含む場合がある。
マーカーのような分子の「類似体」とは、その分子全体又はそのフラグメントのいずれかと機能において類似している分子を意味する。 本明細書で使用されるとき、分子は、通常はその分子の一部ではない追加的な化学的部分を含有する場合、別の分子の「化学的誘導体」であると言われる。 そのような部分は、その分子の可溶性、吸収性、生物学的半減期等を改善することができる。あるいは、それらの部分は、前記分子の毒性を減少すること、前記分子の不要な副作用を除去又は軽減することなどができる。そのような効果を媒介する能力を有する部分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. R. Gennaro,
Ed., MackPubl., Easton, Pa. (1990)に開示されている。
本明細書で使用され、ポリヌクレオチドの説明に用いられるとき、「相同」は、2つのポリヌクレオチド又はその指定された配列が、最適に整列され比較されたときに、前記ヌクレオチドの少なくとも70%、通常は約75%〜99%、より好ましくは少なくとも約98〜99%において適切なヌクレオチドの挿入又は削除を伴い同一であることを示す。
本明細書で使用される用語「相同体」又は「相同」は、構造及び/又は機能に関しての相同もまた指す。 配列の相同性に関しては、配列が少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一であるか、少なくとも97%同一であるか、又は少なくとも99%同一であれば、それらは相同である。 用語「実質的に相同」は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%同一である配列を指す。 相同な配列は異なる種における同じ機能遺伝子であり得る。
本明細書で使用されるとき、ポリペプチド配列に関する文脈における用語「実質的相似性」は、そのポリペプチドが、約10個〜100個のアミノ酸残基の比較枠(例えば、抗体の重鎖又は軽鎖可変領域)にかけて、基準配列と少なくとも60%の配列同一性を有する又は前記基準配列と70%、又は80%、又は85%の配列同一性を有する又は最も好ましくは90%の配列同一性を有する配列を含むことを示す。 アミノ酸配列の文脈では、「実質的相似性」は、更に、アミノ酸の同類置換を含む。 したがって、例えば、2つのペプチドが1つ以上の同類置換によって異なる場合、ポリペプチドは第2のポリペプチドと実質的に相似である。 用語「実質的同一性」は、デフォルトのギャップ重量を用いてGAPプログラム又はBESTFITプログラムなどによって最適に整列されたときの2つのペプチド配列が、少なくとも65%の配列同一性、好ましくは少なくとも80又は90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%以上の配列同一性(例えば99%以上の配列同一性)を共有することを意味する。 好ましくは、同一ではない残基の位置は、同類アミノ酸の置換によって異なる。
本発明の遺伝子又はポリペプチドの相同体の決定は、当業者によって容易に達成され得る。 本明細書では、用語「相同性」、「同一性」又は「相似性」は互換性をもって使用され、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列の相似性を指す。 相同性及び同一性は、それぞれ、比較を目的として整列させられる各配列における位置を比較することによって決定され得る。 その比較された配列における同等の位置を同じ塩基又はアミノ酸が占めているならば、それらの分子はその位置において同一であり、同じ又は相似の(例えば、立体構造及び/又は電子的性質において相似の)アミノ酸残基によって前記同等の位置が占められているならば、それらの分子は
その位置において相同である(相似である)ということができる。 相同性/相似性又は同一性の百分率としての表現は、それらの比較された配列によって共有される位置で同一又は相似のアミノ酸の数の関数を指す。 「無関係」又は「非相同」の配列は、本明細書の配列と40%未満の同一性を共有するが、25%未満の同一性を共有するのが好ましい。
本明細書で使用されるとき、用語「被験体」又は「患者」は互換性をもって使用されてよく、本発明の任意の誘導された医薬組成物が投与され得る、癌又は増殖性疾患が発生し得る任意の生物を指す。 前記用語は、ヒト、及び例えばチンパンジー及び他のサル種などヒト以外の霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなど家畜動物、イヌ及びネコなど飼育動物、マウス、ラット及びモルモットなどげっ歯動物を含む実験動物など、ヒト以外の動物を含むが、これらに限定されない。 前記用語は特定の年齢又は性別を定めない。 したがって、成熟した被験体、新生児である被験体、並びに胎児のオス(男性)又はメス(女性)を網羅することが意図される。 また、前記用語「被験体」は、本明細書を通して全体に開示されているような状態又は疾病(ただし限定せず)の影響をうけやすい生物もまた含む。 被験体の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、マウスが挙げられ、形質転換種も含まれる。本明細書において用語「ヒト以外の動物」及び「ヒト以外の哺乳動物」は互換性をもって使用され、例えば、ヒト以外の霊長類(特に高度な霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯動物(例えばマウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシのような哺乳動物、並びにニワトリ、両生類、爬虫類などのような非哺乳動物など、全ての脊椎動物を含む。一実施形態では、被験体はヒトである。別の実施形態では、被験体は、疾病モデルとしての実験動物又は動物代用物である。
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は、前記疾病又は疾患の少なくとも1つの症状を遅延、軽減、又は改善するために必要とされる薬剤及び/又は医薬組成物の量を指す。 例えば、タンパク質薬剤化合物の有効量は、実験動物に移植された腫瘍開始細胞の成長速度を低下するために必要とされる量である。したがって、有効量は、疾病の症状の進行を防ぐために、又は症状を軽減する若しくは症状の進行速度を低下するために十分な量でもある。
本明細書では用語「悪性」、「腫瘍」及び「癌」は互換性をもって用いられ、制御不能な、過剰増殖性の、又は異常な、細胞の成長若しくは転移を特徴とする疾病又は疾患を指す。 他の態様では、前記用語は、正常又は異常な細胞の増殖の制御が不十分であること又は制御されていないこと及び全身へのその影響を特徴とする、哺乳動物における器官又は組織(例えば、結腸直腸、膵臓、乳房など)の任意の疾病を含むこともまた意図される。前記定義の範囲内の疾患としては、良性腫瘍、異形成症、過形成症、並びに転移成長、又は任意の他の変質、例えば、癌の症状の発現若しくは再発の前にしばしば見られる白板症などが挙げられる。
本明細書で使用されるとき、用語「難治性」は、最も多くの場合、臨床上の終点である例えば反応、反応の長期的持続、長期的無病状態での生存、再発なき生存、進行なき生存、及び総合的生存などに達することができないことによって決定される。 別の方法として、患者が治療への反応を達成することができず、したがってその治療が治療上有効ではないと決定されることによっても、治療に対し難治性であると定義される。
本明細書で使用されるとき、言葉「診断作用物質」は、疾病又は疾患を診断する目的で使用される任意の分子、化合物、及び/又は物質を指す。 好ましい実施形態では、前記診断作用物質は、レポーターと結びつく結合剤を含むものである。 他の非限定的な診断作用物質の例としては、抗体、抗体フラグメント、又は他のタンパク質が挙げられ、検出可能な作用物質とコンジュゲートされたものも含まれる。 本明細書で使用されるとき、用語「検出可能な作用物質」又は「レポーター」は、当業者に利用可能な任意の方法によって検出可能な任意の分子、化合物及び/又は物質を指す。検出可能な作用物質又はレポーター分子の非限定的な例としては、染料、蛍光タグ、ガス、金属、又は放射性同位体が挙げられる。 本明細書の定めによると、「診断作用物質」、「造影剤」並びに「レポーター」若しくは「レポーター分子」は同等物であり、文脈によって別の意味に定められない限りは互換性をもって使用することができる。
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」は、例えば、癌においてのように、細胞の不適切な増殖に伴う状態、疾病又は疾患の少なくとも1つの有害作用又は症状の進行を防ぐこと、及び/又は軽減すること若しくは逆行させることを含む。
本明細書で使用されるとき、用語「投与する」及び「導入する」は本明細書において互換性をもって使用することができ、所望の部位において、本明細書に開示された医薬組成物の少なくとも部分的な局在をもたらす方法又は経路によって前記医薬組成物を被験体に配置することを指す。 本発明の化合物は、被験体における有効な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与され得る。
本明細書で使用されるとき、言葉「非経口投与」及び「非経口投与される」は、腸内投与及び局所投与を除く投与形態を意味し、通常、注射によるものであり、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内小孔内への注射及び注入を含む。 本明細書で使用されるとき、言葉「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」及び「末梢投与される」は、ピラゾロアントロン及び任意選択による他の作用物質又は材料を含む本発明の医薬品組成物を、中枢神経系への直接の投与以外の方法で前記組成物が前記動物のシステムに入るように、したがって前記組成物が代謝及び他の同様の過程にさらされるように、例えば皮下投与によって、投与することを意味する。
本明細書で使用される言葉「医薬的に許容され得る」は、健全な医療的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に応じて、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは弊害なしに、人間及び動物の組織と接触して使用されるために好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
本明細書で使用されるとき、言葉「医薬的に許容され得る担体」は、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤又はカプセル化剤のような医薬的に許容され得る材料、組成物又はビヒクルを意味するものであり、身体の一器官又は一部から身体の別の器官又は部分へと、前記物質を運ぶ若しくは輸送することに関与する。 各担体は、その製剤の他の成分と適合性を有するという意味において「許容され得る」ものであるか、あるいは生物学的に不活性である必要がある。
IV.腫瘍形成性細胞及び細胞亜集団
特に好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に定めた選択されたマーカー又はマーカーの組み合わせの新規な使用を介して、腫瘍開始細胞(TIC)、腫瘍永続細胞(TPC)及び腫瘍前駆細胞(TProg)の同定、特徴づけ、濃縮及び/又は単離を提供する。 癌幹細胞パラダイムに関して述べると、前述のそれぞれの細胞亜集団は、程度の差はあれ多かれ少なかれ腫瘍形成であり、したがって、腫瘍の成長、維持、転移及び再発に関与するものである。 重大なことに、本発明は、かかる細胞亜集団を同定すること、及び所望によりそれらを多様な異なる種類の腫瘍及び癌病期から誘導することを可能にする。
したがって、これらの細胞を解明し除去することは、多様な種類の腫瘍の有効な管理及び治療にとって重要である可能性が高い。 これに関して、単独で又は組み合わせとしてのこれらの細胞又は濃縮された細胞亜集団を医薬品の研究及び開発に効果的に利用して、腫瘍に寄与する癌幹細胞の抑制又は枯渇のために最適化された新規治療標的を特定することができる。
血液疾患及び造血細胞疾患に関して実証されてきたように、多くの固形腫瘍内には細胞の階層がおそらく存在し、それらの明確に異なる腫瘍細胞亜集団は、異なる増殖及び分化の可能性を有する。 より具体的には、図19が例示するように、本明細書に開示されたマーカーを用いて単離された細胞集団は、有意な分化能及びこれらの分化プログラムと係わり合う能力が存在する腫瘍において、腫瘍永続細胞(すなわちCSC)が、癌のその細胞階層の最上位にあるという仮説を支持するものである。これらの細胞は幹細胞を定義づける古典的特徴を呈するが、腫瘍前駆細胞は類似した特徴を呈するものの、定められた高純度の細胞の連続移植によって示されるような自己再生能力がない。
すでに示唆したように、腫瘍開始細胞集団は腫瘍永続細胞と高増殖性腫瘍前駆細胞との両方を含み、それらの細胞がともになって腫瘍の塊すなわち腫瘤の一意の亜集団(すなわち0.1〜40%)を一般に構成する。本開示の目的上、腫瘍永続細胞及び癌幹細胞という用語は本明細書では同意であり、互換性をもって使用され得る。 逆に、TPCは、腫瘍内に存在する腫瘍細胞組成物が辿る過程を完全に繰り返すことができることにおいて、及び少数の単離された細胞の連続移植(マウスを介した2つ以上の継代)によって示されるような無限の自己再生能力を有することにおいて、TProgと異なる。 より詳細に以下に説明するように、適切な細胞表面マーカーを使用する蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)は、高度に濃縮された腫瘍細胞亜集団(純度>99%)を単離するための信頼できる方法であり、それは、少なくともある程度は、単独の細胞と細胞の集合(例えば二重細胞など)とを区別するその能力のおかげである。
そのような技法を用いて、少ない細胞数の高純度のTProg細胞を免疫不全マウスに移植すると、一次移植において腫瘍の成長を駆動し得ることが示された。 しかし、精製されたTPC亜集団と異なり、TProgが生成した腫瘍は、表現型の細胞異種性において親腫瘍を完全には反映しないものである、及び/又は、後の移植において連続して腫瘍発生を再起動するには明らかに非効率的である。 対照的に、TPC(又はCSC)亜集団は親腫瘍の細胞異種性を完全に再構成するものであり、連続的に単離及び移植されると、効率的に腫瘍を発生させることができる。 したがって、TPCとTProgは双方とも一次移植においては腫瘍形成性であり得るが、当業者は、少ない細胞数での連続移植で異種腫瘍の成長を持続的に駆動するTPCのユニークな能力がそれらの間の決定的な違いであることを認識するであろう。 TPCを特徴づけるための他の一般的な方法は、細胞表面マーカーの形態学及び検査、コロニー形成アッセイを用いた生体外の示差的増殖/分化能力の実証、転写プロファイリング、及び薬物耐性の特徴づけを含むが、マーカー発現は培地条件及び生体外細胞株継代によって変化し得る。
したがって、本発明の目的上、正常な組織における細胞階層を支持する正常な幹細胞と同様に、腫瘍永続細胞は、多系列分化能を維持する一方で永久に自己再生するそれらの能力によって定義づけられることが好ましい。 したがって、腫瘍永続細胞は、腫瘍形成性細胞の子孫(すなわち腫瘍開始細胞:TPC及びTProg)と 非腫瘍形成性(NTG)細胞の子孫との双方を生成する能力を有する。 上記に定めたように、非腫瘍形成性細胞は、腫瘍開始細胞から生じるが、それ自体では自己再生する能力又は腫瘍を構成する腫瘍細胞の異種系列を生成する能力を有さない腫瘍細胞を指す。 実験的に、NTG細胞は、過多な細胞数で移植されてもマウスに再現可能に腫瘍を形成する能力がない。
本開示の目的上、TProgもまた、それらがマウスにおいて腫瘍を生成する能力が限られているために、腫瘍開始細胞として分類される。 TProgはTPCの子孫であり、典型的には、限られた数の非自己再生的な細胞分裂の能力を有する。 更には、以下の実施例に示されるように、TProg細胞は、更に、初期腫瘍前駆細胞(ETP)と後期腫瘍前駆細胞(LTP)とに分類することができ、それぞれ、表現型(例えば細胞表面マーカー)によって、及び腫瘍細胞構造が辿る過程を繰り返す能力の違いによって、区別され得る。 そのような技術的な相違にもかかわらず、ETP及びLTPの双方は、少ない細胞数で移植されたときに腫瘍を連続的に再構成する能力が概して劣ること及びその親腫瘍の異種性を典型的には反映しないことにおいて、TPCとは機能的に異なる。 上記の違いにもかかわらず、様々なTProg集団が、稀に、幹細胞に通常は帰属する自己再生能力を獲得し、それら自体がTPCになり得ることが示されてきた。 いずれにせよ、どちらのタイプの腫瘍開始細胞も、単一の患者の典型的な腫瘤におそらく見出されるものであり、下記実施例に示されるように、本明細書に記載の同定、特徴づけ、分離及び/又は濃縮若しくは単離の対象となる。
より広くは、TPCは、TProg(ETPとLTPの双方)、NTG細胞、及び腫瘍のバルクを構成する腫瘍浸潤性の非TPC由来細胞(例えば、線維芽細胞/間質細胞、内皮細胞及び造血細胞)より腫瘍形成性が高く、相対的により不活発であり、しばしば、より化学療法耐性が強い。 従来の治療法及び治療計画が、大方、腫瘍をデバルキングし、急速に増殖する細胞を攻撃するように設計されてきたことを鑑みると、より速く増殖するTProg及び他のバルク腫瘍細胞集団と比べて、TPCは従来の治療法及び治療計画に対して耐性がより強い可能性が高い。 更に、TPCは、しばしば、多薬剤耐性を有するトランスポーターの発現の増加、DNA修復機序の強化、及び抗アポトーシスタンパク質など、従来の治療法の化学療法に対するその耐性を高める他の特徴も発現する。 これらの性状は、TPCによる薬剤耐性にそれぞれ寄与するものであり、後期腫瘍を有する患者のほとんどに対して標準的な癌治療計画が長期的利益を確保することができなかった(すなわち、持続的な腫瘍の成長と再発を駆動する細胞(すなわちTPC又はCSC)を十分に標的化若しくは抹消できなかった)主たる理由である。 本明細書に開示される、これらの特異的な細胞亜集団を同定、特徴づけ、及び分離又は濃縮する能力は、腫瘍の病因学の理解及び、その理解に基づくより有効な治療のための基礎を形成し得る新規化合物又はモジュレーターの特定のために、極めて重要である。
より詳細に以下に説明するように、実質的に全ての結腸直腸、膵臓、非小細胞肺癌及びトリプルネガティブ乳房腫瘍の細胞はESA CD24 CD34であり、したがって、これらのマーカーは腫瘍細胞亜集団の同定にはほとんど役に立たない。 驚くべきことに、本開示のTICAM、TPCAM及びTProgAMは、選択された腫瘍形成性細胞集団の同定及び特徴づけ、並びに所望により単離又は濃縮のために、特に有効なマーカーである。 例えば、結腸直腸癌を含む特に好ましい一実施形態では、CD46hl CD324 CD66c及びCD66c細胞を部分的に含有する完全に異種の腫瘍をCD46hl CD324 CD66c細胞が生成できることが実証された。 このことは、CD46hl CD324 CD66c 細胞が腫瘍形成性ではあってもCD46hl CD324 CD66c 細胞を生成する能力を有さず、連続移植を介して効率的に腫瘍成長を駆動する能力がない故に、重大な意味を持つ。 これらのデータを、a)連続移植での安定した異種腫瘍産生能、b)最も高いコロニー形成能、及びc)生体外でのCD66c細胞及びタンパク質の産生能を有する細胞はCD46hi CD324 CD66c細胞であるという所見と組み合わせると、CD46hi CD324 CD66c細胞が限られた増殖能力及び増殖能を有するCD46hl CD324 CD66c細胞のドーターであるという仮説が支持される。
細胞がCD324の発現を失うにつれて減少するCD66cの産生能に伴う生体内腫瘍形成能及び生体外コロニー形成能の一般的な減少は、いくらかの残された増殖能力を有するが概して自己再生能力を有さない後期腫瘍前駆(LTP)細胞集団がCD46hl CD324 CD66 細胞によって表されるという仮説を支持するものである。 最後に、CD46細胞がCD324細胞でもあり、広くはCD66cでもあることは、図19Aに図示した細胞階層を裏付けるものである。 これらのNTG細胞は、終末分化した子孫をおそらく表し、結腸においては分泌系列の杯細胞(G)及び腸内分泌細胞(eE)又は吸収系列の腸内細胞(E)を含む。 CD46細胞は結腸直腸組織に典型的な終末分化した分泌細胞型及び/又は吸収細胞型に帰属する多くの遺伝子を発現するので、これらの単離された細胞亜集団の遺伝子発現は、この仮説を支持するものである。
多くの従来の先行技術の治療剤と異なり、本発明にしたがって同定及び開発された新規化合物及び組成物は、選択されたモジュレーターの形態又は特定の標的(例えば、遺伝物質、細胞表面タンパク質等)に関わらず、被験体に投与されると腫瘍開始細胞の頻度を優先的に減少する。 腫瘍開始細胞の頻度の減少が、a)腫瘍開始細胞の除去、枯渇、感作、抑制又は阻害、b)腫瘍開始細胞の成長、拡張又は再発の制御、c)腫瘍開始細胞の開始、繁殖、維持、又は増殖の妨害、あるいはd)他の何らかの方法による、腫瘍開始細胞の生存、再生及び/又は転移の妨害、によって生じ得ることは、理解されるであろう。 選択されたモジュレーターによる前記腫瘍開始細胞の頻度の減少は、1つ以上の生理学的経路における変化の結果として生じる。 前記腫瘍開始細胞の減少又は除去によって、あるいはそれらの潜在能(例えば、誘導される分化、ニッチ妨害)の修正によって若しくはそれらがその腫瘍環境又は他の細胞に影響を及ぼす能力を何らかの方法で妨害することによって行われる経路介入又はモジュレーションは、腫瘍発生、腫瘍維持及び/又は転移及び再発の抑制によって腫瘍性疾患のより有効な治療を可能にする。
より詳細に下記に説明し、実施例により示すように、そのような腫瘍開始細胞の頻度の減少を評価するために用いられる好ましい方法は、本発明にしたがって特徴づけられ単離されたバルク腫瘍細胞又は腫瘍細胞亜集団のいずれかを用いて生体外又は生体内のいずれかで行う限界希釈解析を含む。 好ましくは、前記評価はポアソン分布統計解析を使用する、若しくは、生体内あるいは生体外の腫瘍産生能のような測定可能なイベントの頻度を他の何らかの方法で評価する。 そのような限界希釈解析は腫瘍開始細胞の頻度の減少を計算する好ましい方法を含むものであるが、要件がそれほどは厳しくない他の方法を使用して、わずかに劣る精度であるとしても所望の値を有効に測定することは可能であり、それらの方法もまた本明細書の教示と完全に適合性がある。 本明細書に記載されているように、それぞれの腫瘍細胞亜集団をそれらのプロファイル又はマーカー発現に基づいて評価する周知のフローサイトメトリー若しくは免疫組織化学的手段によって頻度の減少を測定することもまた可能である。 上記の全ての方法に関しては、例えば、Dylla et al. 2008, PMCID: PMC2413402 & Hoey et al. 2009, PMID: 19664991を参照されたい。前記各文献は参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
V. 腫瘍開始細胞のソース
別に要求されない限り、本発明は任意の脊椎動物種の腫瘍開始細胞を用いて実施することができる。これには、ヒト、並びに通常研究に用いられるヒト以外の霊長類、家庭飼育動物、家畜及び他のヒト以外の哺乳動物が含まれる。
当業者は、異なる臨床期又は病理学的段階の多様な腫瘍から上記の細胞及び細胞集団が得られることを理解するであろう。更には、下記実施例によって例示するように、出発材料の異種細胞集団は、一次腫瘍検体から、又は前記患者から直接採取した生検から、又は生体内で継代された若しくは生体外で培養された二次腫瘍から得られる場合がある。 特定の好ましい実施形態では、分析、特徴づけ及び/又は濃縮される対象となる前記腫瘍細胞集団は、TICを含有するバルク腫瘍材料若しくは免疫不全マウスに移植された濃縮されたTIC集団のいずれかからの腫瘍から誘導される。
他の実施形態では、前記腫瘍検体は非従来型ゼノグラフト(NTX)腫瘍バンクから得られることになる。 どの腫瘍ソースが選択されるとしても、前記腫瘍は、適正な実験実施基準(GLP)にしたがって取り扱われることが好ましく、特徴づけ、分離及び/又は単離が行われる前に、当該技術分野で認識されている機械による及び酵素による解離技法を用いて単一細胞懸濁液中に解離することができる。
生体外培養又は生体内継代により直接又は間接に細胞ソースとして使用可能な代表的な腫瘍としては、肉腫及び癌腫(ただし限定せず)が挙げられ、 線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、リンパ管内、滑膜腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、肺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、アストロサイト腫瘍(例えば、拡散、浸潤神経膠腫、退形成性星細胞腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、毛様細胞性星細胞腫、多形黄色星状膠細胞腫)、オリゴデンドログリア腫及び混合神経膠腫(例えば、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、乏突起星細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫)、上衣腫瘍(例えば、上衣腫、退形成性上衣腫、粘液乳頭上衣腫、上衣下腫)、脈絡叢腫瘍、原因不明の神経上皮腫瘍(星状芽細胞腫、脊索腫神経膠腫、神経膠腫症大脳)、神経及び混合神経膠細胞腫瘍(例えば、神経節膠腫及び神経節細胞腫、線維形成性乳児星細胞腫及び神経節膠腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、中枢神経細胞腫、小脳リポ神経細胞腫、パラ神経節膠腫)、松果体実質腫瘍、胎児性腫瘍(髄様上皮腫、上衣芽細胞腫、髄芽腫、プリミティブ神経外胚葉性腫瘍、非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍)、末梢神経芽腫瘍、脳神経及び末梢神経の腫瘍(例えば、神経鞘腫、神経鞘線維腫、神経周膜腫、悪性末梢神経鞘腫瘍)、髄膜腫瘍(例えば、髄膜腫、間葉系、非髄膜腫瘍、血管周皮細胞腫、メラノサイト病変)、胚細胞腫瘍、鞍領域(例えば、頭蓋咽頭腫、神経性下垂体の顆粒細胞腫)、血管芽腫、黒色腫、網膜芽細胞腫の腫瘍などが挙げられるが、これらに限定されない。
特に好ましい実施形態では、腫瘍検体はヒトの結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌又は頭頸部の腫瘍から得られるであろう。
更に、上述したように、本発明の濃縮された細胞集団は、腫瘍性疾患を患う被験体から直接採取した原発腫瘍に由来してもよい。 しかし、他の実施形態では、単離された細胞集団は、生体外で培養された又は非ヒト動物を介して継代された患者由来の腫瘍から得られる。 本発明に関しては、以下により詳細に且つ実施例に記載されるように、NTX腫瘍バンクは当該技術分野で認識された技法を使用して開発し、維持したものである。 特異的な腫瘍細胞株を多数含んでなるこのNTX腫瘍バンクは、多様な固形悪性腫瘍を患う多数の癌患者からもともと得られた異種腫瘍細胞の複数の継代によって免疫不全マウスで増殖させたものである。 よく定義された系列を有する多数の特異的な初期継代NTX腫瘍が継続的に利用可能であることは、その細胞株から精製された細胞の再現可能且つ反復可能な特徴づけを可能にするので、本明細書に記載のTPCの同定及び単離を促進する。
より具体的には、そのようなモデルの存在は、その同定又は単離された細胞又は細胞亜集団(マーカー表現型によって定義される)が実際にTICであることを一貫して検証するのを可能にするものであり、すなわち、そのTPC構成要素は、それらの細胞が由来する前記患者の腫瘍検体の辿る過程を繰り返すマウスにおいて、表現型的及び形態学的に異種の腫瘍を生成する能力に応じて、遡及的に最も正確に定義される。 すなわち、マウスにおいて完全に異種の腫瘍を生成するために、濃縮又は単離された細胞の小集団を使用することができることは、それらの単離細胞がTPCを含むものであるという事実を強く示すものであり、関連づけられるマーカー及び推定上の治療標的の有効性を裏付けている。 そのような作業では、最少限の継代のNTX細胞株は生体内実験を著しく簡易化し、容易に検証可能な結果をもたらす。 更には、初期継代NTX腫瘍がイリノテカンのような従来の治療剤にもまた反応することは、腫瘍成長を駆動する基本的な機序、現行治療法への耐性、及び腫瘍再発に関する臨床的に関連のある洞察を提供する。
VI.腫瘍形成性細胞集団の定義づけ
好ましい実施形態では、本発明は、選択された腫瘍開始細胞又は細胞集団の同定、特徴づけ、及び所望により濃縮又は単離を提供する。 この分析及び/又は癌幹細胞集団の物理的な濃縮は、異なる細胞集団に関して、表現型的に異種である1つ以上のマーカー(すなわち、TICAM、TPCAM及びTProgAM)を用いて細胞を示差分析することによって達成される。上述したように、様々な細胞集団の差別化を可能にする任意の特質又は識別可能な特徴、又はその組み合わせが、本明細書の教示に従って使用することができるマーカーを構成していることは、理解されるであろう。 したがって、好ましい実施形態において、そのようなマーカーは細胞表面タンパク質であるが、他の特徴又は特質も前記細胞亜集団を差別化する機能を果たすことができ、それらもまた本発明の範囲内にあることが明示的に企図される。 例えば、細胞表面表現型に加えて、特定の腫瘍永続性の細胞特性に基づいて細胞亜集団を定量化又は特徴づけることもまた、有用であり得る。 例えば、培地においてそれらの細胞の自己再生能力及び増殖能力を測定することによって、あるいは、これらの細胞内の特定の活性化経路の存在を決定することによって、これらの属性を決定することができる。 例えば、好ましい実施形態では、細胞又は細胞集団に核酸コンストラクトを導入することができ、この核酸コンストラクトは、検出可能なマーカーをエンコードする配列を含み、前記マーカーは、選択された経路(例えば、細胞表面タンパク質TICAMの発現をカバーする経路)によって調節される又は結びつけられる転写応答要素と動作可能に結合される。 その経路が活性化されるにつれて、その検出可能なマーカーが発現し、その細胞又は細胞集団が腫瘍永続細胞を含むものであることを示す。 本発明のいくつかの実施形態では、検出可能なマーカーは蛍光タンパク質であり、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその変異体である。 目的の細胞亜集団を単離又は濃縮するために、GFPを発現する生存細胞を分類することができる。 本発明のこの態様では、本開示の方法を使用して腫瘍永続細胞を濃縮することができる。
本明細書に開示されるように、本発明の特定の態様は、腫瘍開始細胞又はその細胞亜集団(例えば、TPC及び/又はTProg)を同定又は特徴づけること、及び所望により濃縮又は単離することを目的とする。 これに関して、本発明者らは、驚くべきことに、腫瘍開始細胞又はその集団の急速且つ有効な同定、特徴づけ、及び所望により濃縮又は単離を可能にする選択されたマーカー及び/又はマーカーの組み合わせを発見した。 上記において簡単に説明したように、細胞又は組織に関する文脈において本明細書で使用される「マーカー」は、特定の細胞、細胞集団又は組織に関して、識別可能に関連づけられる、又はそれらの中若しくは上に特異的に見出される、化学的又は生物学的実体の形態における任意の特徴を意味し、疾病又は疾患による影響を受けた組織又は細胞集団の中、若しくは上において識別されるものも含む。 明示されるマーカーの性質は形態学的であっても、機能的であっても、生化学的であってもよい。 好ましい実施形態では、前記マーカーは、特定の細胞型(例えば、TPC)又は細胞によって特定の条件下で(例えば、前記細胞のライフサイクルの特定の時点の間、又は特定のニッチにある細胞)示差的に若しくは選択的に発現する細胞表面抗原である。
それらのマーカー、マーカーの組み合わせ、又はマーカーの表現型が特定の細胞又は細胞亜集団に対して若しくは細胞のライフサイクル又は階層に関して変化し得ることは理解されるであろう。
いくつかの実施形態では、マーカーは、特定の細胞型又は集団に特定の表現型的、形態学的、機能的又は生化学的(例えば酵素的)特徴のどれであるかに関わらず安定した特徴又は遷移的な特徴を含む。
特に好ましい実施形態では、適合性のあるマーカーはタンパク質又はポリペプチドであり、より好ましくは、抗体又はその免疫反応性フラグメント、リガンド、基質又は酵素(ただし限定せず)を含む結合分子の結びつきを可能にする1つ以上のエピトープ又は活性部位を有する。 しかし、本明細書の目的上、マーカーは、タンパク質(ペプチド及びポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸及びステロイドが挙げられるがこれらに限定されない、細胞と結びつけられる任意の分子又は代謝産物を含むものでよい。 特に好ましい実施形態では、目的のマーカーは、適切な時に細胞の表面に位置づけられるが、他の実施形態では、前記マーカーは細胞間又は細胞内(例えば細胞核上に)位置づけられる若しくは配置される。 形態学的マーカーの特徴の例としては、形、寸法、及び核対細胞質比が挙げられるが、これらに限定されない。 機能的マーカーの特徴又は特質の例としては、例えば、特定の基質に付着する能力、例えば非限定的に親油性染料など特定の染料を組み込む又は除外する能力、特定の条件下でマイグレーションする能力、及び特定の系列に沿って分化する能力が挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書に記載されるように、当業者に利用可能な任意の方法によって適合性のあるマーカーを検出することができることは、更に理解されるであろう。また、マーカーは、例えば、マーカーとして使用できるレポータータンパク質の生成をもたらすレポーター遺伝子を細胞にエンコードする核酸配列の導入の結果として細胞によって発現されるレポーター遺伝子及びその転写産物など、レポーター遺伝子から発現されたタンパク質であってもよい。 マーカーとして使用できるそのようなレポーター遺伝子としては、例えば、蛍光タンパク質、酵素、クロモメリックタンパク質、抵抗性遺伝子などが挙げられるが、これらに限定されない。 特定の好ましいマーカーを以下に詳細に説明する。
そのようなマーカーからそのようにして得られた情報は、疾病の加速のしやすさ、病態状況、及び時間の経過、薬品による治療又は他のモダリティのような環境の変化に対する反応を含む予後や診断に有用である。 また、それらの細胞を治療剤及び治療に反応するそれらの能力によって分類すること、研究目的のために単離すること、遺伝子発現のためにスクリーニングすることができる。 分類に有用なマーカーの存在を決定するために、遺伝学的解析、プロテオミクス、細胞表面染色、又は他の手段によって臨床検体を更に特徴づけることができる。 例えば、遺伝子異常は、疾病感受性や薬剤応答性の原因である場合がある、又は、そのような表現型と結びつけられる場合がある。
細胞集団を同定又は特徴づけるためにどのマーカーが最終的に選択されたとしても、実際のモニタリング又は分析は、当業者に周知の数多くの標準的な技法のいずれかを使用して行うことができる。
例えば、細胞表面マーカー発現は、ウェスタンブロット、免疫組織化学、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、免疫蛍光「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定法、免疫蛍光検査法、プロテインAイムノアッセイ、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション、多数パラメータマスサイトメトリー(massively multiparametric mass cytometry)、フローサイトメトリー、及びFACS分析が含まれるがこれらに限定されないイムノアッセイ(免疫学的測定法)によって測定することができる。 特定の実施形態では、被験体からの試験検体中の癌幹細胞の量は、それらの結果を基準検体(例えば、検出可能な癌を有さない被験体からの検体)と、又は既定の基準範囲と、又はそれ以前の時点(例えば、治療の前又は治療中)の患者自身と、比較することによって、決定することができる。
特定の実施形態では、癌幹細胞集団は、患者から得た腫瘍検体から得られ、フローサイトメトリーによって特徴づけられる。 当該技術分野で周知のように、且つ添付の実施例において実証されるように、この方法は腫瘍のバルクに対する癌幹細胞上の特定の表面マーカーの示差的発現を利用する。 磁気による分離又はFACSを含む数々の方法によって、細胞を濃縮又は単離する目的のために、その検体中の細胞上のマーカーと反応する標識付けした抗体(例えば蛍光抗体)、すなわちそれらのマーカーを認識する他の結合剤(すなわち二次結合剤)を認識する結合剤を使用することができる。 いくつかの実施形態では、(例えば、免疫イムノアッセイ又は免疫組織化学によって)あるいは腫瘍の解離(例えば、フローサイトメトリー又は多数パラメータのマスサイトメトリー(massively multiparametric mass cytometry))の後に単一細胞を分析する方法を用いて、in situで検体中の癌幹細胞を更に定義づける又は定量化するために、細胞表面マーカーの組み合わせを使用する。 例えば、陽性及び陰性の細胞ソーティングを使用して、多様なTPC亜集団を評価すること、又は検体中の癌幹細胞の量を定量化することができる。 前記検体中の癌幹細胞の数又は頻度は、限界希釈の濃縮されていない腫瘍細胞を免疫不全マウスに移植し、次いで、速度と無関係に異なる希釈によってポアソン分布統計を用いて腫瘍形成の頻度を分析することによってもまた測定し得る。 更には、以下の実施例で実証されるように、特定の腫瘍型は、腫瘍永続細胞マーカー及び/又は腫瘍前駆細胞マーカーを発現する細胞の頻度及び性質を評価することによって特徴づけることができる。 好ましくは、それらの腫瘍は本明細書に開示されているマーカーを用いて同定される腫瘍開始細胞を含み、それらのマーカーとしては、対応するTIC集団(すなわちTICAM)と共発現することが実証されている、
本明細書に記載されているような、免疫不全マウスにおける単離及び移植によって存在を確認することが可能なものが含まれる。
他の選択された実施形態では、固形腫瘍生検のような例えば組織検体である検体中の腫瘍開始細胞の同定及び特徴づけは、免疫組織化学法又は免疫蛍光検査法を用いて決定される。 当業者に周知のように、これらの方法は、腫瘍バルクに対する、腫瘍開始細胞上の特定の表面マーカーの示差的発現を利用する。 目的の細胞集団と反応する抗体(例えば、フルオロフォアとコンジュゲートされた抗体)を使用することができる。 これらの抗体は直接標識づけされるか、一次抗体を検出する二次結合剤によって検出される。 好ましい実施形態では、更なる定義づけのために、及び所望により(in situで)未解離の検体中の癌幹細胞を定量化するために、特定の細胞表面マーカーの組み合わせが使用される。 更に、そのような染色技法は、関心対象の癌幹細胞又は前駆細胞を区別する特定のマーカーの発現を評価することによって、選択された腫瘍細胞亜集団の可視化を可能にする。 そのような技法は、その腫瘍のコンテクストの範囲内の癌幹細胞及び/又は前駆細胞の位置の特定を可能にし、血管からの距離のような空間的な特徴の確立を可能にする。
細胞及び細胞集団の認識及び特徴づけのための上記の技術的に認識された技法を本明細書の教示とともに使用して、本開示の腫瘍形成性細胞亜集団を容易に同定することができる。 より具体的には、本明細書で詳細に説明されるように、本発明は、少なくとも部分的には、特定の腫瘍開始細胞関連マーカー(TICAM)と腫瘍開始細胞若しくは細胞亜集団との間のこれまで未知であった結びつきを基礎とするものである。 これらのマーカーは、関連のある細胞集団上にこれらのマーカーが存在するか否かによって腫瘍開始細胞及びそれらに対応するTPC及びTProg構成要素亜集団を有効に同定又は特徴づけることを可能にする。 更には、下記の実施例に記載したような好ましい実施形態では、同じこれらのマーカーは、画定された腫瘍開始細胞集団又はそれらの対応するTPC及び/又はTProg細胞亜集団の急速且つ効率的な同定、分離、分画、セクショニング、単離又は濃縮を可能にする。 上述のように、及び本発明にしたがって、TICAMは、腫瘍開始細胞又は細胞集団の同定、特徴づけ、及び所望により単離及び濃縮を可能にする任意のマーカー又はマーカー表現型を意味するものとする。 同様に、それらの存在又は欠如によってTPC又はTProgの同定又は特徴づけ、及び所望により単離及び濃縮を可能にするためにも使用できるマーカー又はマーカー表現型は、上記に定めたように、TPCAM又はTProgAMを含む。 上に明記したように、3つのマーカーセットは相互排他的ではなく、個々のマーカーは異なる細胞亜集団と結びつくことができる(例えば、単一のマーカーがTICAMである場合もTPCAMである場合もある。好ましくはそのようなマーカーはタンパク質であり、より好ましくは細胞表面タンパク質である。
本明細書の目的上、好ましいTICAMは、CD9、CD13、CD15、CD24、CD26、CD29、CD46、CD49a、CD49b、CD49c、CD49f、CD51、CD54、CD55、CD58、CD63、CD66a、CD66c、CD66e、CD71、CD73、CD81、CD82、CD91、CD98、CD99、CD104、CD105、CD108、CD111、CD130、CD136、CD151、CD155、CD157、CD164、CD166、CD172a、CD186、CD221、CD230、CD262、CD273、CD275、CD295、CD298、CD317、CD318、CD324、CD340、CCR10、c−Met、Eph−B2、Eph−B4、FLORI、GLUT−2、グリピカン 5、HER3、IL−20Ra、インテグリンa9bl、インテグリンb5、LDL−R、メール、セマフォリン4B、TROP−2 及びVb9を含む。 特に好ましい実施形態では、前記マーカーはCD46を含むであろう。 他の好ましい実施形態では、前記マーカーはCD324を含むであろう。 更に他の好ましい実施形態では、前記マーカーはCD66cを含むであろう。
また更に他の好ましい実施形態では、CD46マーカーとCD324マーカーとの組み合わせを使用して、腫瘍形成性細胞亜集団の同定、及び所望により濃縮又は単離を行う。
記載のTICAMに関しては、図 9A及び9Bは表形式で腫瘍発現情報を提供し、図 10〜12は、定められた腫瘍開始細胞集団由来の個々のマーカーの発現データを示す。 これに関して、本発明の教義は、最も一般的には前記TICAMマーカー CD46及びCD324を用いて例示又は確認されるが、本明細書の教義に対する他の記載のマーカーの適合性は、過度の実験なしに特定の腫瘍に関して容易に決定される。 すなわち、これらの腫瘍が生じている癌の異なる病因及び各組織の生物学にもかかわらず、図 10〜12は、標準的技法を用いて記載のマーカーの適合性及び有用性を容易に解明できることを実証している。 これらの教え及びそれに関連するデータを鑑みると、当業者は、特殊な型の腫瘍由来の腫瘍形成性細胞亜集団を分析又は分離するために使用すべき最適なTICAM又はTICAMの組合せを容易に決定することができるであろう。 本開示のマーカーが、ある範囲の腫瘍に対して有用であるというこの予想外の発見は、あくまでも本発明の新規性の裏付けである。
本開示に基づき、当該技術分野で認識されている技術を使用して定義された腫瘍形成性細胞集団を同定、特徴づけ、又は所望により精製、分離、濃縮又は単離するために、単独又は組み合わせによって前述のTICAMを使用することが可能であることが理解されるであろう。 好ましい実施形態では、前記細胞集団は腫瘍永続細胞を含むであろう。 他の好ましい実施形態では、選択されたTICAMを用いて同定又は濃縮される細胞集団は腫瘍永続細胞及び腫瘍前駆細胞を含むものとする。 これらの後者の実施形態に関しては、添付の実施例において示されるように、TIC構成要素は、TICAMで濃縮した集団を対応する腫瘍形成性細胞亜集団の単離のためのTPCAM及び/又はTprogAMと接触させることによって更に特徴づけ及び/又は分離され得る。
例えば、特に好ましい実施形態では、TICはCD46とCD324との組み合わせによって同定及び特徴づけることができ、CD46hl CD324 マーカー表現型を呈し得ることが実証された。 同様に、他の特に好ましい実施形態では、単離又は濃縮された腫瘍細胞亜集団は、TICをCD324及びCD46の結合剤と接触させることによって得られ、この場合、任意の順序で若しくは同時にそれらの結合剤をTICと接触させることができる。 関連のある好ましい実施形態は、CD46hl CD324 マーカー表現型を含む単離又は濃縮されたTIC集団を含む。
結腸直腸癌におけるTICを含む別の選択された実施形態では、CD46hl CD324 CD66c及びCD66c細胞を部分的に含有する完全に異種の腫瘍をCD46hl CD324 CD66c細胞が生成できることが実証された。 このことは、CD46hl CD324 CD66c 細胞は腫瘍形成性ではあってもCD46hi CD324 CD66c 細胞を生成する能力はなく、連続移植を介して効率的に腫瘍成長を駆動することができないことを鑑みると、重大なことである。 したがって、本発明の他の好ましい実施形態は、CD46hl CD324 CD66c マーカー表現型を含む単離又は濃縮されたTIC集団を含む。
本明細書に開示されるように、腫瘍形成性細胞と関連づけられる特に好ましいマーカーは、TICAMとして有利に作用することが見出されたCD46である。 下記の実施例全体を通して示されるように、このCD46マーカーを単独で又は他のマーカーとの組み合わせとして使用して、腫瘍開始細胞、腫瘍永続細胞又はそれらの特異的な細胞亜集団を同定、特徴づけ、詳細評価、認識又は区別ことができる。 更に、他の好ましい実施形態では、前記CD46マーカーを単独で又は他のマーカーとの組み合わせとして使用して、腫瘍形成性細胞又はそれらの亜集団を効果的にセクショニング、分画、単離、精製又は濃縮することができる。 好ましくは、それらの癌幹細胞又は細胞亜集団の同定、特徴づけ又は単離は、完全な長さのCD46又はそのスプライス変異型又はアイソフォームと免疫特異的に反応する結合剤によって行うことができる。 他の好ましい実施形態では、CD46結合剤は抗体又はその免疫反応性フラグメントを含むであろう。 他の好ましい実施形態では、CD46結合剤は検出可能なレポーターエンティティと結びつけられる。
CD46は、膜補因子タンパク質すなわちMCPとしても知られている。 それは広く発現しているI型膜貫通タンパク質であるが、代替エキソンのスプライシング及びグリコシル化の結果として、アイソフォームを多数有する。 最近、その重要性から本明細書に参考として全体が組み込まれるKarosi et al., Laryngoscope 118: 1669−1676 (Sept. 2008)は、前記分子の14種類のアイソフォームを検出したと報告している。 そのmRNAは、染色体lq32に位置する単一の遺伝子から転写され、広範な代替スプライシングを経て、様々なタンパク質のアイソフォームをエンコードする複数の転写産物を生成する。 この遺伝子を含むそれら14種類のエキソンのうち、エキソン1〜6は、全てのCD46たんぱく質アイソフォームに保存され、一方、エキソン7〜9はそれらのタンパク質アイソフォームにおける主要な超可変性につながる、様々なやり方で利用されるセリン − スレオニン − プロリン(「STP」)の豊富な領域をエンコードする。 エキソン11及び12はCD46の膜貫通領域をエンコードし、エキソン13及び14はそのタンパク質の細胞質尾部をエンコードする。 最も長いmRNA転写産物である変異型A(NM_002389)は、前記遺伝子の14種類の全てのエキソンからの配列を含有する。 エキソン7、8、9及び13の可変スプライシングはCD46の14種類のアイソフォームの大多数をもたらすと考えられ、観察された支配的なタンパク質アイソフォームである66及び56kDaはエキソン8の代替的包含又は除外によって生じる。エキソン13の代替的包含/除外はその分子の細胞質尾部のエンコードされた配列の変化につながり、これらの変化が細胞内輸送、安定性、及びそのタンパク質のシグナル伝達特性に影響することを示唆している。
Karosiらが記載しているように、CD46のmRNADアイソフォームDはCD46遺伝子のエキソン1〜6、8〜12及び14(タンパク質NP_722548をエンコードするNM_153826配列と同等)を含み、アイソフォームFはエキソン1−6、9〜12、及び14 (NP_758863をエンコードする配列NM_172353と同等)、アイソフォームJはエキソン1〜6、8、10〜12及び14 (NP_758866をエンコードするNM_172356と同等)を含む。 より具体的には、前記CD46分子はN末端のショートコンセンサスリピート(SCR)モジュールを4つ含み(「スシ」ドメイン: 1−3、2−4結合トポロジーの4つのシステイン)、これらのSCRドメインは前記遺伝子の最初の6つのエキソンによってエンコードされる。 SCR2、3及び4モジュールはC3b/C4bの結合活性及び調節活性(下記に説明する)を有し、一方、SCR4の遠位のSCR1モジュール及び配列は補完的調節機能にとって不可欠ではない。代替的に利用されるエキソン7〜9及びエキソン10によってエンコードされる膜に近位の細胞外配列は、O結合炭水化物を介して高度にグリコシル化される。
本開示の目的上、用語「CD46」は、文脈により別の意味に定められない限りは、前記に定めたような任意のタンパク質の任意のスプライス変異型又は免疫反応性フラグメントを含む任意のタンパク質及びそのようなタンパク質、スプライス変異型又はフラグメントをエンコードする任意の核酸配列を意味するものとする。 したがって、上述のように、「CD46マーカー」は前記CD46の抗原を構成する又はエンコードする任意の検出可能なタンパク質、ペプチド又は核酸シーケンスを広範に含むであろう。 好ましい実施形態では、CD46マーカーは完全な長さのグリコタンパク質(変異型A)又はそのレポートされるスプライス変異型又は免疫反応性フラグメントを含む。 更には、より好ましくは、前記CD46タンパク質マーカーは選択された腫瘍形成性細胞集団の細胞表面上に存在する。 他の好ましい実施形態では、CD46マーカーは、完全な長さのCD46、又はそのスプライス変異型若しくはフラグメントをエンコードする核酸配列(例えば、DNA又はmRNA)を含む。
選択された腫瘍開始細胞亜集団を特徴づけるために所望により使用することができる別の好ましいマーカーは、ヒトCD324(hCD324)であり、これはGenBankアクセッション番号NM_004360に対応する代表的な核酸及びGenBankアクセッション番号NP_004351に対応する代表的なプレプロアミノ酸配列を有するものであり、それらは各々、参考として本明細書に組み込まれる。 CD324(E−カドヘリン、ウボモルリン、カドヘリン−1又はCAM120/80としても知られている)は、カルシウム依存性細胞接着を仲介する膜貫通タンパク質である。 これは、それらの表現型の維持に関与している上皮細胞に特異的に発現される。 E−カドヘリンの細胞質ドメインはβ‐カテニンと結合し、β‐カテニン自体は細胞骨格のアクチンフィラメントのネットワークと結合している。 この、E−カドヘリン/β‐カテニン結合は、上皮細胞の細胞同士の接着の安定化において欠かせない役割を果たす。 したがって、E−カドヘリンの損失は細胞接着を減少し、癌細胞の侵襲能力を増大し得る。 E−カドヘリン又はβ‐カテニンの発現が減少するにつれて、一般に、またとりわけ胃腸器官の癌に関しては、腫瘍の攻撃性及び脱分化が増す。 また、結腸直腸癌を有しE−カドヘリンの発現が弱い患者の予後は正常な発現レベルを有する患者と比べて芳しくないことも示されてきた。
本発明にしたがって使用できるまた別の好ましいマーカーは、CD66cである( NCA−90 若しくはCEACAM6とも呼ばれる)。 ヒトCD66c(hCD66c)核酸配列はGenBankアクセッション番号 NMJ302483に相当し、そのタンパク質前駆体(344aa)のアミノ酸配列はGenBankアクセッション番号 NP_002474に相当するものであり、各々、参考として本明細書に組み込まれる。 CD66cグリコタンパク質は免疫グロブリンファミリーに属し、前記タンパク質のN末端部分の可変ドメイン、及びループの形成を誘導するジスルフィド架橋を含む定常ドメインによって特徴づけられる(Hammarstrom and Baranov 2001)。 CD66cは、通常、顆粒球、マクロファージ及び多核好中球の表面に発現するだけでなく、大腸、肺、脾臓中の上皮細胞によってもまた発現される(Audette et al., 1987; Kolbinger et al., 1989; von Kleist et al., 1972; Jantscheff et al., 2003)。 CD66cは、正常な粘膜と比較して過形成性の結腸ポリープ及び腺腫の増殖細胞によっても発現され、また、多くのヒト癌によっても発現される(Scholzel et al., Am J Pathol 157:1051−52, 2000; Kuroki et al., Anticancer Res 19:5599−5606, 1999)。
VII. 結合剤
本発明全体を通じて説明されるように、本開示のマーカーは、好ましくは、本明細書で定めたような結合剤によって検出、認識又は解明される。 本発明の目的のために広く解釈すると、適合性のある結合剤は、あるマーカーと優先的に結びつく検出可能な任意のエンティティ又は分子を本質的に含んでなることができる。 これに関して、前記結合剤は、低分子、ペプチド、タンパク質、及びDNA及びRNAを含む核酸など(ただし限定せず)、多くの形態を採ることができる。 より具体的には、本発明の結合剤は、レセプター、酵素、酵素阻害剤、酵素基質、リガンド、レクチン、脂肪酸、アプタマー、脂質又は多糖類を含み得る。 例えば、選択された実施形態では、適合性のある結合剤は、麻疹ウィルスの赤血球凝集素タンパク質又はそのCD46結合フラグメントを含むことができる。 他の特に好ましい実施形態では、前記結合剤又はエンティティは、抗体又はそのフラグメントを含む。 更にまた他の好ましい実施形態では、結合剤は、レセプターとリガンドの相互作用又はレセプター活性又は二重体化/多重体化、共レセプター結合、若しくは他の数々の細胞内プロセスを妨害し得るマーカーに特異的な低分子結合剤を含み得る。 本開示の観点では、適合性のある結合剤の選択は、過度の実験を行うことなく、当業者の裁量の範囲で十分に行われる。
本発明の特に好ましい実施形態は、示唆したように、抗体の形態の結合剤を含む。 本明細書で使用される時、用語「抗体」は、その最も広義の意味において用いられ、具体的には、合成抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体又はポリクローナル抗体、マルチクローナル抗体、組み換え技術により生成された抗体、イントラボディ(細胞内発現抗体)、多特異性抗体、二重特異性抗体、一価抗体、多価抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、単鎖FvFcs (scFvFc)、単鎖Fvs (scFv)、抗イディオタイプ抗体(anti−Id)、及び、所望の生物活性(すなわち、マーカーの結びつき、すなわち結合)を呈することを条件として、その他の任意の免疫活性抗体フラグメントを網羅する。 より広義には、本発明の抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性フラグメントを含み、それらの分子は、前記フラグメントが、例えばFc領域又はそのフラグメント(ただし限定せず)を含む別の免疫グロブリンドメインと融合する場合又はしない場合がある抗原結合部位を含有する。 更には、本明細書で更に詳述するように、「抗体」という用語は、具体的には、Fc領域を含む完全長抗体及び変異型Fc融合体(Fc−Fusions)を含むFc変異型又はそれらのフラグメントを含み、所望により、少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含み、免疫グロブリンの免疫活性フラグメントに融合される。
更には、5つの全てのクラスの抗体(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)及び全てのアイソタイプ(すなわち、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、IgA2)並びにそれらの変異型は本発明の範囲内であり、IgGクラスの免疫グロブリンを含む好ましい実施形態について、例示のみを目的としていくらか詳細に説明する。 しかし、そのような開示は、あくまでも本発明を実施するための代表的組成物及び方法を明確に示すにすぎず、
いかなるやり方でも本発明又はその添付請求項の範囲を制限するものではないことが理解されるであろう。
本発明の文脈の範囲で、開示されるTICAMに特異的な適合性のある抗体が多くの場合市販されていることは理解されるであろう(例えば、Life Technologies社又はBioLegend社から市販されている)。 いずれにせよ、抗体又はそれらの誘導体及び/又はそれらのフラグメントは、正常な若しくはトランスジェニックのマウス又はウサギにおけるハイブリドーマ技術又はファージ表示抗体技術を含む当業者に周知の方法によって提供され得る。 一実施形態では、遺伝子免疫が使用される。 この技法は、少なくとも1つの関心対象の抗原をエンコードする核酸配列又はその機能的同等物を非ヒト動物に投与することを含む。 エンコードされる1つ若しくはそれ以上の抗原は前記動物によって生成され、前記抗原に対する前記動物の免疫系を刺激する。 他の実施形態では、アジュバントとともに及びアジュバントなしで、タンパク質又はペプチドの形態の抗原を直接注射する。 どのようにしてその免疫原が導入されても、抗原に対する免疫反応は前記動物において誘発される。 したがって、関心対象の抗原に特定のT細胞、B細胞及び/又は抗体は、前記動物から得られるのが好ましい。 前記T細胞、B細胞及び/又は抗体は、所望により更に処理される。 好ましい一実施形態では、得られた目的のB細胞は、前記得られたB細胞が腫瘍細胞と融合されてハイブリッド抗体生成細胞を生成するために、ハイブリドーマ技術に使用される。
本発明の更に特に好ましい実施形態は、モノクローナル抗体を結合剤として使用する。
好ましい実施形態では、抗体生成細胞株は、免疫性を与えられた動物から単離された細胞から調製される。 免疫を与えた後、前記動物を屠殺し、リンパ節及び/又は脾臓B細胞を当該技術分野で周知の手段によって不死化する。細胞を不死化する方法としては、癌遺伝子でそれらをトランスフェクションすること、発癌ウイルスでそれらを感染させ、不死化細胞が選択される条件下でそれらを培養すること、発癌性又は突然変異性の化合物にそれらをさらすこと、それらを例えば骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合すること、及び腫瘍抑制遺伝子を不活化することが挙げられるが、これらに限定されない。 骨髄腫細胞との融合を用いる場合は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない骨髄腫細胞が好ましい(非分泌性細胞株)。 不死化細胞は、CD46又はその免疫反応性部分を用いてスクリーニングする。 好ましい実施形態では、最初のスクリーニングは、酵素結合免疫測定法(ELISA)又はラジオイムノアッセイを用いて実施される。
より一般的には、本発明と一致する特異的なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え技術、ファージディスプレイ技術、酵母ライブラリ、トランスジェニック動物(例えばXenoMouse(登録商標)又はHuMAb Mouse(登録商標))又はそのいくつかの組み合わせを含む当該技術分野で周知の様々な技術を用いて調製することができる。 例えば、モノクローナル抗体は、広くは上記に説明したような、及び参考として本明細書に各々組み込まれるHarlow et al., Antibodies:A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling, et al., in: Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681 (Elsevier, N.Y., 1981) により詳細に教示されているような、ハイブリドーマ技法を用いて生成できる。 本開示のプロトコルを用いて、抗体は、好ましくは、関連する抗原及びアジュバントを皮下又は腹腔内に複数回注射することにより、哺乳動物において育てられる。 上述したように、この免疫付与は、概して、活性化された脾細胞又はリンパ球からの抗原反応性抗体(その免疫付与動物がトランスジェニックの場合は完全にヒトであってもよい)の産生を含む免疫応答を誘発する。 得られる抗体は、ポリクローナル製剤を提供するために前記動物の血清から収穫され得るが、一般には、脾臓、リンパ節又は末梢血からの個々のリンパ球を単離してモノクローナル抗体の均一な製剤を提供することがより望ましい。 最も典型的には、リンパ球を脾臓から得て不死化して、ハイブリドーマを提供する。
更に広くは、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の生成方法は、当業者には周知である。例えば、以下の参考文献を参照されたい:Coligan, Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, N.Y., 1991; 及びHarlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY, 1989; Stites et al., (eds.) Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, Calif., 及びそこに記載の参考文献;Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, N.Y., 1986; 及びKohler and Milstein, Nature 256: 495−497, 1975。抗体の調製に好適な他の技法としては、ファージ又は同様のベクターにおける組み換え抗体のライブラリの選択が挙げられる。 Huse et al., Science 246: 1275−1281, 1989; 及びWard et al., Nature 341: 544−546, 1989を参照のこと。免疫グロブリン及びそれらの特定の変異型は周知であり、多くは、組み換え細胞培養において調製される(例えば、米国特許第4,745,055号、米国特許第4,444,487号、WO88/03565号、EP 256,654号、EP 120,694号、EP 125,023号、Faoulkner et al., Nature 298:286, 1982; Morrison, J. Immunol. 123:793, 1979; Morrison et al., Ann Rev. Immunol 2:239, 1984を参照のこと)。 キメラ(ヒト)抗体の詳細な調製方法は米国特許第5,482,856号に見出される。ヒト化及び他の抗体生成及び工学技術の追加的な詳細は、Borrebaeck (ed), Antibody Engineering, 2nd Edition Freeman and Company, NY, 1995; McCafferty et al., Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL at Oxford Press, Oxford, England, 1996, 及びPaul Antibody Engineering Protocols Humana Press, Towata, N.J., 1995に見出される。前記の各々は参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
その抗体結合剤がいかにして得られるかあるいはそれが前述の形態のどれを採るかに関わらず(例えばヒト化、ヒト等)、本開示の好ましい実施形態は、様々な特徴を呈することができる。 これに関して、TICAM抗体生成細胞(例えば、ハイブリドーマ又は酵母コロニー)は、例えば、堅牢な成長、高い抗体産生、及び、以下により詳細に述べるような、親和性、エピトープ又はドメイン特異性などのような望ましい抗体特性を含む望ましい特徴のために選択、クローン化、及び更にスクリーニングされ得る。ハイブリドーマは、同系動物及び例えばヌードマウスなど免疫系の欠如した動物において生体内で拡張すること、あるいは生体外で細胞培養で拡張することができる。 各々が特異的な抗体種を産生するハイブリドーマ及び/又はコロニーを選択、クローニング及び拡張する方法は、当業者には周知である。
本開示の抗体が特異的な選択されたマーカーによって提示されるエピトープ又は決定因子と結びつく、すなわち結合することもまた理解されるであろう。 本明細書で使用されるとき、用語「エピトープ」は、特定の抗体によって認識され且つ特異的に結合され得るその標的抗原の部分を指す。 前記抗原がCD46のようなポリペプチドであるとき、エピトープは、隣接アミノ酸及びタンパク質の三次折れたたみによって並列される非隣接アミノ酸の双方から形成され得る。 隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質の変性の際に維持されるが、三次折れたたみによって形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質の変性の際に失われる。 エピトープは、典型的には、一意の空間配座に少なくとも3個、より典型的には少なくとも5個又は8〜10個のアミノ酸を含む。 より具体的には、当業者は、エピトープという用語が、免疫グロブリン又はT細胞レセプターと特異的に結合する若しくは他の方法で分子と相互作用することが可能な任意のタンパク質決定因子を含むことを理解するであろう。 エピトープ決定因子は、一般には、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面の集合体を含み、一般には、特定の三次元構造的特徴及び特定の電荷特性を有する。 加えて、エピトープは直線状の場合も立体配座の場合もある。 直線状のエピトープでは、そのタンパク質とその相互作用している分子(例えば抗体)との間の相互作用の全ての点は、そのタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状に生じる。 立体配座のエピトープでは、それらの相互作用の点は、互いから直線的に分離されているそのタンパク質のアミノ酸残基を渡って生じる。
抗原上で所望のエピトープがいったん決定されたら、例えば本発明に記載の技法を用いて、そのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。 あるいは、その発見過程中に、抗体の生成及び特徴づけは、所望のエピトープについての情報を解明し得る。 次いで、この情報をもとに、同じエピトープと結合する抗体を競合的にスクリーニングすることが可能である。 これを達成する1つの方法は、競合して互いに結合する抗体、すなわちその抗体と結合するために競合する抗体を見出すために、競合法による研究を実施することである。 抗体の競合に基づいて抗体を収集するためのハイスループットのプロセスは、WO03/48731号に記載されている。
本明細書で使用されるとき、用語「ビニング」は、抗体の抗原結合特性に基づいて抗体を分類する方法を指す。ビンの割り当ては、試験抗体に観察された結合パターンがどのように異なるかに応じて、いくらか恣意的である。したがって、この技法は本発明の抗体の分類のために有用なツールであるが、それらのビンがエピトープと常に直接相関するとは限らず、そのような初期の決定は、当該技術分野で認識されている他の方法によって更に確認されなくてはならない。
この警告を踏まえて、当該技術分野において周知の方法及び本明細書の実施例に記載の方法によって、選択された一次抗体(又はそのフラグメント)が同一のエピトープに結合するかどうか、あるいは二次抗体との結合に関して競合するかどうかを判定することができる。選択された実施形態では、本発明の一次抗体を飽和条件下でそのマーカーと結合させ、次いで、その二次抗体が同じマーカーと結合する能力を測定することができる。試験抗体が一次マーカー抗体と同時にマーカーと結合することができるならば、二次抗体は一次抗体と異なるエピトープと結合する。しかし、二次抗体が同時にマーカーと結合することができないならば、二次抗体は同じエピトープと、又は重なっているエピトープと、又は一次抗体によって結合されたエピトープに近接したエピトープと、結合する。当業者に周知のように、所望のデータは、固相の直接的又は間接的ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相の直接的又は間接的酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ、Biacor(商標)システム(すなわち、GE Healthcare社の表面プラズモン共鳴)、ForteBio(登録商標)Analyzer(ForteBio社のバイオレイヤー干渉法)、又はフローサイトメトリー法を用いて得ることができる。本明細書では、用語「表面プラズモン共鳴」は、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイムの生体特異的相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。特に好ましい実施形態では、この解析はBiacore社又はForteBio社の計器を用いて実施される。
同じエピトープに対して競合する抗体の文脈で使用されるときの用語「競合する」は、抗体間の競争が、テスト対象の抗体又は免疫学的に機能的なフラグメントが共通抗原への基準抗体の特異的結合を防止又は阻害するアッセイによって決定されることを意味する。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面に結合された精製された抗原又はこれらのいずれかを運ぶ細胞、標識付けされていない試験免疫グロブリン、及び標識付けされた基準免疫グロブリンの使用を含む。競合的阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面又は細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。競合的アッセイ(抗体同士の競合)によって同定される抗体は、基準抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び立体障害を生じさせるために基準抗体によって結合されたエピトープと十分に近接している隣接エピトープと結合する抗体を含む。競合的結合を決定するための追加的な詳細は本明細書の実施例に提供される。通常、競合する抗体が過剰に存在するときには、共通の抗原への基準抗体の特異的結合は少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%阻害されるであろう。場合によっては、結合は少なくとも80%、85%、90%、95%、又は97%以上阻害される。
エピトープ特異性に加えて、本開示の抗体は、例えば、結合親和性、融解温度(Tm)、及び等電点を含む数多くの異なる物理的特性を用いて特徴づけることができる。
これに関して、本発明は、更に、選択されたマーカーに対して高い結合親和性を有する抗体の使用も包含する。本発明の抗体は、解離定数Kd (koff/kon)が< 10−mであるとき、その標的抗原と特異的に結合すると言われている。その抗体は、Kdが< 5x10−mのとき、高い親和性で抗原と特異的に結合し、Kが< 5x10−10mのとき、非常に高い親和性で抗原と特異的に結合する。本発明の一実施形態では、抗体は< 10−mのKd及び約1x10−/秒のオフレートを有する。本発明の一実施形態では、オフレートは< 1x10−/秒である。本発明の他の実施形態では、抗体は約10−m〜10−10mのKdを有するCD46と結合し、更に別の実施形態では、抗体はKd < 2x10−10mのものと結合する。本発明の更に他の選択された実施形態は、10−m未満、5x10−m未満、10−m未満、5xlO−m未満、10−m未満、5x10−m未満、10−m未満、5x10−m未満、10−m未満、5x10−m未満、10−m未満、5xlO−m未満、10−m未満、5xlO−m未満、10−m未満、5xlO−m未満、10−10m未満、5x10−10m未満、10−11m未満、5x10−11m未満、10−12m未満、5xlO−12m未満、10−13m未満、5x10− 13m未満、10−14m未満、5xlO−14m未満、10−15m 未満、又は5x10−15m未満である解離定数すなわちKd (kff/kon) を有する抗体を含む。
特定の実施形態では、CD46と免疫特異的に結合する本発明の抗体は、解離速度定数すなわちkon 速度 (CD46 (Ab) + 抗原 (Ag) on<−Ab−Ag)が少なくとも10m−s−、少なくとも2x10m−s−、少なくとも5x10m−s−、少なくとも10m−s−、少なくとも5x10m−s−、少なくとも10m−s−1’、少なくとも5x10m−s−、又は少なくとも10m−s−である。
別の実施形態では、CD46と免疫特異的に結合する本発明の抗体は、%で表す割合(CD46 (Ab) + antigen (Ag) off^−Ab−Ag) が10−s− 未満、5x10−s− 未満、10−s−未満、5x10−s−未満、10−s−未満、5x10−s− 未満、10−s− 未満、5x10−s−未満、10−s− 未満、5x10−s− 未満、10−s− 未満、5x10−s− 未満、10− s−未満、5x10−s−未満、10−s−未満、5x10−s−未満、10−s−未満、5x10−s− 未満、又は10−10s−である。
本発明の他の選択された実施形態では、抗CD46抗体は、
親和定数すなわちK (kon/koff) が少なくとも10_1、少なくとも5x10M−’、少なくとも10_1、少なくとも5x10_1、少なくとも10_1、少なくとも5x10_1、少なくとも10_1、少なくとも5x10M−’、少なくとも10_1、少なくとも5x10_1、少なくとも10_1、少なくとも5x10_1、少なくとも10−1、少なくとも5x10_1、少なくとも10M−’、少なくとも5x10M−’、少なくとも1010_1、少なくとも5x1010_1、少なくとも1011_1、少なくとも5x1011_1、少なくとも1012_1、少なくとも5x1012_1、少なくとも1013_1、少なくとも5x1013_1、少なくとも1014 _1
少なくとも5x1014M−、少なくとも1015M−、又は少なくとも5x1015M−である。
本発明のタンパク質又は免疫グロブリン結合剤が組換え発現により産生された後、免疫グロブリン分子の精製のための当該技術分野で周知の任意の方法によって、あるいはより一般的には、タンパク質を精製するための当該分野で周知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性(特にタンパク質Aの後の特定の抗原に対する親和性)およびサイズ排除クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、又はタンパク質の精製のための他の任意の標準的な技術によって、それを精製することができる。更に、本発明の抗体結合剤を本明細書に記載の又は当該技術分野で周知の異種ポリペプチド配列と融合して精製を促進することもできる。特に好ましい実施形態では、本発明のモジュレーターは、タンパク質A又はタンパク質G親和性クロマトグラフィーを用いて、少なくとも部分的に精製される。
他の好ましい実施形態では、本発明の結合剤又はそれらのフラグメント又は誘導体は、生体分子又は低分子若しくは放射性同位体であり得る診断に使用可能な又は検出可能な薬剤又はレポーターと共役である、結合している、又は別の何らかの方法で結びつけられる。本明細書に記載されているように、そのような標識付けされた結合剤は、過剰増殖性疾患の発症又は進行をモニタリングするために有用であり得る、又は本開示のモジュレーターを含む特定の治療法の有効性を決定するための臨床試験手順の一環として有用であり得る。特に好ましい実施形態では、レポーター又は検出可能な薬剤と結びつけられる本開示の結合剤は、選択された腫瘍形成性細胞集団の同定又は特徴づけ、及び所望により濃縮、単離、セクショニング、分画、又は精製に有用であり得る。そのような集団は、標的特定、薬剤研究開発、毒性学研究等(ただし限定せず)を含む数々の目的に使用することができる。
そのような診断、検出、及び/又は分離若しくは濃縮は、前記結合剤を検出可能な物質と結合する又は結びつけることによって達成し得るものであり、前記物質としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼなどが含まれる様々な酵素類、ストレプトアビジンビオチン及びアビジン/ビオチンなどの(ただし限定せず)補欠分子族、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、
ジクロロフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンなどの(ただし限定せず)蛍光物質、ルミノールなどの(ただし限定せず)発光材料、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンなどの(ただし限定せず)生物発光材料、ヨウ素(131I、1251、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115In、113In、1I2In、H1In,)、and テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(!8F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、U3Sn、and 117Tinなどの(ただし限定せず)放射性物質が挙げられるが、これらに限定されない。そのような実施形態では、適切な検出方法は当該技術分野で周知であり、多くの市販ソースから容易に入手可能である。特に好ましい実施形態では、前記標識付けされた結合剤をフローサイトメトリーすなわちFACS分析に用いることができる。
以下でより詳細に説明するように、前記結合剤は、細胞集団の精製あるいは免疫組織化学法又はFACSのような分離若しくは診断手順を促進するためにペプチド又は蛍光色素などのマーカー配列と結びつけられる。特に好ましい実施形態では、そのような標識はMAXPAR(商標)試薬系(University of Toronto, Stemspec)を含む。好ましい実施形態では、前記マーカーのアミノ酸配列は、例えばpQEベクター(Qiagen社)が提供しているタグなどのようなヘキサ − ヒスチジンペプチドであり、それらの多くは市販により入手可能である。精製に有用なその他のペプチドタグとしては、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質由来のエピトープに相当するヘマグルチニン「HA」タグ(Wilson et al., 1984, Cell
37:767)、及び「フラグ」タグ(米国特許第4,703,004号)が挙げられるが、これらに限定されない。
VIII.腫瘍形成性細胞亜集団の分析
前記において説明したように、本明細書に開示されるマーカーは、TPC及びTProgの分化をもたらし(例えば結腸直腸癌において)、且つ多様な他の腫瘍においてTIC及びNTG細胞をもたらす。生細胞の単離は機能的再構成を示すために、またしたがって腫瘍の持続能力を決定的に示すため(すなわちCSC同定)に必要であるが、本開示のマーカーを用いて解明されるTIC、それらの複合TPC及びTProg細胞、並びにNTG細胞の識別の知識は、これらの各対応する細胞集団と結びつけられる遺伝子及び/又はタンパク質の発見を促進することによって、診断用及び/又は治療用の標的タンパク質の発見を可能にする。
本明細書に開示されているマーカーをTIC又はTPC集団の同定のためのツールとして使用し、当該技術分野で認識されている上記の技法、例えば磁気分離、FACS(実施例2)、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション若しくは他の技法を使用することにより、これらの細胞から単離された細胞又は遺伝物質及び/又はプロテオーム物質をNTG細胞又は汚染物質から同定及び単離することができる。更に、マイクロアレイ技術(実施例1)、次世代シークエンシング(実施例8)、質量分析、及びこれらの技術のいくつかの側面を組み合わせたその他の技術、例えば多数パラメータマスサイトメトリー(massively multiparametric mass cytometry)を用いて、それらの単離又は濃縮された集団の特徴づけ及び/又は定量化が可能である。本明細書に開示されているそれぞれの腫瘍細胞亜集団を分析するためにそのような技術を用いることは追加的なTICマーカーの同定につながる可能性があり、そのようなTICマーカーとしては、例えば、タンパク質、又は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により同定可能であり得るRNAマーカー、染色体又は蛍光性染料によって可視化できる生化学マーカー、又は材料基材(すなわちガラス、プラスチック等)への示差的接着のような物理化学的特性、又は数多くのトランスフェクション又はウイルス形質導入法を用いてゲノムに挿入された蛍光又は発光レポーター遺伝子コンストラクトを用いて同定することができる転写調節因子の発現が挙げられる。
当業者は、本明細書に開示されている細胞集団が任意の単一のマーカー、選択される開示のマーカーの任意の組み合わせ、又は本明細書に開示されているマーカー(すなわちTICAM)の発現と関連する代理マーカーを用いて濃縮又は単離され得ることを理解するであろう。前記のように、腫瘍細胞亜集団を結合剤と接触させ、次いで、固有の物理化学的特性(すなわちそれらの電荷又は特定の基材への示差的接着)若しくはTICAMと結びつく結合剤を介して個別の腫瘍細胞亜集団に付与される物理化学的特性に基づいて、磁気分離、FACS、又は、本開示の腫瘍細胞亜集団を分離することが可能な任意の他の技術を用いることによって、腫瘍細胞亜集団を濃縮又は単離することができる。磁気分離法は、特定のマーカーを発現する細胞集団の濃縮において一般的であり、概して成功するが、この方法で濃縮された検体は、一般的には、様々な死細胞、非標的細胞及び細胞塊によって汚染される。同様に、標的細胞集団(例えばCD66c)上に発現しないものを除く全てのマーカーを用いて細胞の集団を枯渇させることによって得られた細胞が純粋であることも稀である。
したがって、本明細書の特に好ましい実施形態は、細胞の濃縮又は単離のために蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用するが、それは、フローサイトメトリーは単一の細胞類を急速に詳細分析することができ、且つ個々の細胞の寸法及び複雑さ、生きているものと死んでいるもの、大きいものと小さいもの、単一細胞と細胞塊、及びある程度は顆粒細胞をそれ以外のものと差別することができるからである。寸法及び複雑さのパラメーターに加えて、発光される蛍光を反射鏡及びバンドパスフィルターの配列を介して測定することもでき、この方法では、毎秒数千個の細胞という規模で、個別の蛍光タンパク質からの複数の発光波長、細胞内化学反応、維持されている染料、又はフルオロクローム共役抗体をインタロゲーションすることができる。
更には、一般的には、細胞単離能力を有するフローサイトメーターを用いて(例えば、Becton Dickenson社のFACSAria)、個別の形態学的特徴、物理化学的特徴及び/又は蛍光的特徴を有する単一細胞を高い純度(> 99%)で単離することが可能である。そのような技法を本明細書の教示にしたがって使用することにより、癌患者から及びマウスで成長したNTX腫瘍から直接得た一次腫瘍及び転移腫瘍から得た単一細胞の異種集団の特徴づけをすることができた。更には、その過程においてこれらの細胞の生存率を維持し、1匹のマウスにつきわずか3個の細胞を移植することを可能にし、本明細書に開示したマーカーを用いて単離した細胞集団の堅牢な腫瘍形成性を実証することができた。
本発明に開示されているマーカーは例えば結腸直腸癌におけるTPCの正確な同定及び単離、並びにTProg細胞、NTG細胞及びストローマ細胞からのこれらの細胞の区別を可能にするので、得られる腫瘍形成性細胞集団は、タンパク質をエンコーディングする遺伝子、マイクロRNA、長い又は短いノンコーディングRNA及び/又はCSCと結びつくタンパク質の検出をもたらす。すなわち、比較的均質な腫瘍細胞集団によって優先的に発現されるこれらの遺伝物質及び/又はプロテオームによる、自己再生、分化、増殖及び/又は生存の決定因子は、本明細書に記載のように同定され得、例えば結腸直腸癌におけるTPC(すなわちCSC)によるそれらの優先的な発現に基づいて、疾患の重篤度、特定の治療計画への反応、あるいは疾患の転帰を真に予測し得る期待される診断マーカーとしての使用に関して評価され得る。同様に、膵臓癌、非小細胞肺癌及びトリプルネガティブ乳癌からのTIC及びNTG細胞の単離を可能にする本明細書に開示されるマーカーは、TICと結びつけられるより良い診断用マーカーの発見を可能にする。
本発明によって提供される濃縮又は単離された固形腫瘍細胞亜集団は、更に、細胞階層の正確な解明及び細胞表現型のより詳しい特徴づけを可能にする。これに関して、腫瘍を構成する細胞が容易に得られること及びそれらの細胞の運命及び潜在能を決定する生体内及び生体外のアッセイが広範に開発されていることのおかげで、血液悪性腫瘍が最もよく理解されている悪性腫瘍の一つとなっていることは理解されるであろう。同様に、癌研究は、腫瘍の成長の刺激に関与する細胞が同定できるだけでなく、本明細書に記載の方法を用いて確実に単離でき、それらの特徴を生体内と生体外の両方で試験することができるところまで進化してきている。腫瘍開始細胞(TIC)は生体内で腫瘍の成長を刺激するそれらの能力によって所望により遡及的に同定されるので、能力を有するTICの単離を可能にする技法及び機器はそれらの正確な同定のために不可欠である。これに関して、腫瘍永続細胞(すなわちTICの癌幹細胞サブセット)は、
結腸直腸癌に関して本明細書で示したように、よく定義付けられた細胞を少数使用した少なくとも2回の連続移植によって、異種腫瘍の成長を刺激するそれらの能力に基づいて遡及的(レトロスペクティブ)に同定するのが最善である。
一次移植は腫瘍形成性の初期読み取りを得るには十分であり、それによってTIC及びNTG細胞の遡及的同定を可能にするが、TPCとTProgは双方が腫瘍形成集団であるので、TPCとTProgを決定的に区別するには1回の移植では不十分である。本明細書に示したように、結腸直腸癌に関して本明細書において特定及び開示されているTProg細胞は、腫瘍の異種性を完全に再構成することができないことにおいてTPC(すなわちCSC)と異なるが、TPCレベルは典型的に低いので、この異種性の損失(すなわち、TProg細胞によって精製される腫瘍におけるTPCの損失)は、観察することが困難であり得る。TProg細胞集団には自己再生性がなく、その増殖能力は二次移植の前に使い果たされることになるので、TProg細胞に対するTPC細胞の再構成能力の実証のためには、少数の細胞を使用する2回目の移植が必要である。正しく行われれば、これらの連続移植実験は非常に少ない数の高度に増殖した細胞(FACSによって単離された200個未満の細胞)を使用するはずであり、一次移植からの腫瘍は> 1,500 mmに成長させられ、TProg細胞が二次移植の前に生体内で増殖能力を使い果たす機会が提供されるはずである。そのような分析は本明細書に開示された技法によって大いに促進される。
そのような問題に関して、幹細胞及び/又は前駆細胞の任意の定義された集団を正確に同定するためにマーカーの組み合わせが好ましくは使用されることが理解されるであろう。より一般的には、特定の個々のマーカーによって定義された細胞集団は必ずしも純粋ではなく、いくつかの異なる細胞型又は異なる潜在能の細胞を包含する場合があり、その場合は残りの異種性を解明するために追加的なマーカーが必要とされる。特定の細胞集団を正確に同定するためにマーカーの組み合わせが十分であるかどうかを決定するために、その特定の細胞集団の潜在能を、好ましくは、単一の細胞移植及び/又は生体内系列トレーシングによってその単一の細胞レベルで実証する。上記の連続移植法は、TIC(TPC及びTProg)及びNTG細胞を含むそれぞれの腫瘍細胞亜集団の同定を可能にする。
本明細書に記載のように単離された全く同じ細胞集団の希釈によって少なくとも3群のマウスの移植を含むように更に修正すると、入力細胞集団の中のTIC、又はそれを構成するTPC又はTProg細胞の実際の頻度を決定することもまた可能である。例えば、この頻度は、既知の入力細胞集団の限界希釈を用いて、腫瘍が生じる速度と無関係に、腫瘍形成の頻度(TIC能力の機能的実証)に関しての経験的試験によって既知の細胞集団の中のTICの定量化を可能にするポアソン分布統計を用いて決定される。入力細胞のそれぞれの希釈で達成される定義された結果(すなわち腫瘍)の数を使用して、入植細胞集団間のTICの数を算出する。この方法により、定義された潜在能(すなわち腫瘍形成性)を有する細胞の親の頻度を評価することができる。ポアソン分布統計がその実験で評価される希釈のコースにかけての限られた数の定義されたイベント(すなわち腫瘍形成)からその指数を獲得するものであることに注意することは重要である。結腸直腸NTX−CR4 癌患者由来のゼノグラフト株から単離されたCD46hl CD324− CD66c− 細胞集団に関して本明細書で示したように、TICはこの細胞集団内で5分の1の頻度で表現されるようであるが(図15)、その他のマーカーを発現する細胞は非腫瘍形成性であるか、又は腫瘍形成性が非常に乏しい(図4及び8)。同様の実験で、TIC集団に関して当該技術分野で認識されている他のマーカーでは、細胞は1:75の腫瘍形成性細胞頻度を示しているので、本明細書に開示されるような5分の1のTIC頻度は、それらの他のマーカーと比べて有意な改善を表しており、本発明の新規性を裏付けている(Dylla et al.2008, PLoS ONE3:e2428)。
更に、好ましい実施形態では、腫瘍細胞集団のマーカープロファイルに基づいて特定の腫瘍細胞集団を定量化することが可能である。例えば、期待される治療剤での治療後に腫瘍内のCSC及びNTG細胞を検出及び定量化し、次いで、それらを治療前の対照と比較することができる。上述したように、腫瘍を解離し、それぞれの腫瘍細胞亜集団を定めるマーカーと結合する薬剤と接触させて、それらの細胞の相対的頻度をフローサイトメトリーにより評価することができる。本明細書の教示にしたがって、このことは以下の実施例に記載のように実証され、それらの実施例において、CSCは、結腸直腸腫瘍ではイリノテカン、膵臓腫瘍ではゲムシタビンがそれぞれ関与する標準的な化学療法治療計画への曝露の際に、結腸直腸腫瘍及び膵臓腫瘍において濃縮される。
限界希釈解析に関しては、特徴づけられた及び/又は分画されたヒト腫瘍細胞(例えば、それぞれ、治療された腫瘍及び治療されていない腫瘍)を、コロニー形成を育成する生体外成長条件に置くことによって、腫瘍開始細胞の頻度の計数を生体外で得ることができる。このようにして、コロニーを単純に数えること及び特徴づけることによって、あるいは例えばヒト腫瘍細胞を連続希釈プレートに配置し、少なくとも10日経ってからコロニー形成が陽性か陰性かによって各ウェルを評価する工程からなる分析によって、コロニー形成細胞の計数を得ることが可能である。腫瘍開始細胞の頻度の決定能力が概してより正確である生体内限定希釈実験又は分析では、治療されていない対照又は治療された状態からのヒト腫瘍細胞を連続希釈において免疫不全マウスに移植し、移植から少なくとも60日以上経ってから、各マウスの腫瘍形成が陽性か陰性かを評価する。すでに示唆したように、生体外又は生体内の限界希釈分析による細胞頻度値の誘導は、好ましくは、陽性及び陰性のイベントの既知の頻度にポアソン分布統計を適用することによって陽性イベントの定義を満たすイベントの頻度を提供することによって行われ、この場合、その陽性イベントとは、生体外ではコロニーの形成であり、生体内では腫瘍の形成である。
腫瘍開始細胞の頻度の計算に使用することができる、本発明と適合性のある他の方法に関しては、定量化可能なフローサイトメトリー法及び免疫組織化学染色法が最も一般的である。これらの方法は、前述の限界希釈分析法ほど正確ではないものの、はるかに少ない労力で行うことができ、比較的短い時間内に合理的な値を提供する。したがって、当業者は、腫瘍開始細胞の濃縮に関しての既知の当該技術分野で認識されている細胞表面タンパク質と結合する1つ以上の抗体又は試薬を使用するフローサイトメトリー細胞表面マーカープロファイル測定を使用し(例えば、適合性がある可能性のあるマーカーは下記実施例1に記載されている)、それにより、様々な検体のTICレベルを測定することができる。更に別の適合性のある方法では、当業者は、これらの細胞の境界を定めると考えられる細胞表面タンパク質と結合できる1つ以上の抗体又は試薬を使用する免疫組織化学法によるin situ (すなわち組織部分)のTIC頻度の計数を得ることができる。
生体外培養条件は生体内で遭遇する生理学的環境を模倣することがなかなかできないが、生体外アッセイは、本明細書に開示されるマーカーを用いて濃縮又は単離された細胞集団を使用する連続移植によって、生体内の腫瘍の機能的再構成を示す適切な代理役を果たすことができる。具体的には、関心対象の細胞の増殖能及び/又は分化能のような機能的な特性を生体外アッセイで評価して、生体内での挙動を予測することができる。定義された無血清培地が生体外で腫瘍形成性細胞を維持及び拡張できることを示す例は存在し(Dylla et al.2008, PLoS ONE 3:e2428 )、腫瘍形成性細胞が生体外で少なくとも短期間維持され得ることを実証している。そのようなアッセイは、典型的には、コロニー(合計50個より多くの細胞が接合している細胞の集まり)を開始する細胞集団の能力又は浮いている細胞球(すなわち球)を測定する例えばコロニー形成細胞(CFC)アッセイ又は球形成アッセイに限られてきた(Bao et al. 2006, Nature 444:756)。形成されたCFC又は細胞球の数は、TIC頻度の代わりに使用することができる。更には、これらのコロニー及び/又は球の解離の際に、それらの複合細胞が後にコロニー又は球を再び開始する能力は、自己再生性の読み出しの代用としての役割を果たす。このようにして、多様な培地条件下でのCFC/球形成細胞の頻度及び自己再生の程度を用いて、本明細書に開示されているマーカーを用いて単離された腫瘍細胞亜集団のような腫瘍細胞亜集団の潜在能を特定すること及び特徴づけることができる。
また、当該技術分野において標準とされているように、例えば、異なる接着マトリックス(例えばコラーゲン又はフィブロネクチン)上の腫瘍細胞亜集団の培養、特定の成長因子及び/又は例えばウシ胎児血清の添加によって分化を促進することができ、それによって、前記腫瘍細胞亜集団の分化能の実験的インタロゲーションが可能となる。更には、自己再生するか分化するかのような、幹細胞及び/又は前駆細胞の運命の決定に影響する遺伝子、タンパク質及び/又は因子を、そのような因子を用いて、又は遺伝子及び/又は関心対象のタンパク質でのトランスフェクション又は形質導入の後に、定義されたTICの共培養によってインタロゲーションすることもまた可能である。例えば、従来のCFC様のアッセイは、本明細書に示されているように(図16B及び16C)、これらのアッセイを例えばNTG細胞関連遺伝子産生物(例えばCEACAM6)の生成のような分化能力の読み出しとリンクすることができることにおいて有益であり得る。より明確には、細胞分化能は、定義された細胞集団を入力し、自己再生又は分化につながる培養条件によって駆動され得る分化過程をモニタリングし、次いで、得られた細胞及びこれらの細胞が生成しているタンパク質を特徴づけることによって生体外で測定することによって、及び/又は得られる集団の潜在能を生体内移植によってインタロゲーションすることによって、測定することが可能である。本明細書に開示されるマーカーを発現する細胞集団の同定を可能にする他の特徴づけの方法としては、ハイコンテント撮像技術の使用が挙げられる。生細胞又は固定細胞における特定のマーカーの同定及びそれらの位置の特定を促進するマルチスペクトル解析のようなパラメーターを使用することにより、例えば、合計コロニー数、コロニー当たりの細胞数、及びそのコロニー内の細胞の細胞形態の定量化(例えば核対細胞質比)のようなパラメーターを分析することができる。これらの分析の多くは手作業でも行える。TIC、それらの複合TPC又はTProg細胞、及び/又はNTG細胞を示すマーカーがそれぞれハイコンテントのマルチスペクトル撮像によってモニタリングされる生体外アッセイでは、数又は頻度、あるいは腫瘍細胞亜集団を生体外で決定することができ、これらの細胞集団の自己再生又は分化に影響し得る多様な刺激因子に対するこれらの細胞集団の反応を評価することができる。
本開示が裏付けているように、濃縮又は単離された腫瘍開始細胞集団を動物において継代及び分析する能力は貴重であり、本発明の重要な態様である。これに関し、適合性のある動物宿主としては、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュなどのモデル生物が挙げられ、好ましくは、マウス(ヌードマウス、SCIDマウス、NOD / SCIDマウス、ベージュ/SCIDマウス、FOX/ SCIDマウス)、ラット、ウサギ、又は霊長類のような実験用哺乳動物である。重度の免疫不全NOD−SCIDマウスは、移植したヒト癌幹細胞の受け手として特に好適な動物である。免疫不全マウスはヒト組織を拒絶せず、SCID及びNOD−SCIDマウスはヒトの造血細胞及び組織移植の生体内研究の宿主として特徴づけられてきた。(McCune et al., Science 241:1632−9 (1988); Kamel−Reid & Dick, Science 242:1706−9 (1988); Larochelle et al., Nat. Med. 2:1329−37 (1996))。 特に好ましい実施形態では、VP−16、アシアロGMIタンパク質抗体、放射線療法、化学療法、又は他の免疫生物学的物質を用いてNOD/SCID又はベージュ/SCIDマウスを更に免疫抑制することができる。ゼノグラフトヒト腫瘍の増殖能力を有する追加的なマウスモデルとしては、ヌード.ベージュ、NOD/SCID/IL2Rg−/−、RAG2−/−/IL2Rg−/−、RAGl−/−/IL2Rg−/−、NOD/β−2−マイクログロブリン−/−、及び胸腺ヌードマウスが挙げられる。これらのマウスモデル系はそれぞれ、適応免疫応答に重度の不全を有し、更に、先天性免疫に選択的な不全を有することにより、そうでなければ宿主免疫系によって拒絶されるであろう組織の移植を受けつける。
典型的には、単離された癌幹細胞の単一細胞懸濁液(又は、例えば20,000個、理想的には100個未満、好ましくは10個未満の細胞などでなるいくつかの細胞凝集体を有する懸濁液)は、細胞懸濁液とマトリックス担体であるMatrigel(Invitrogen社)とを1:1の比率で含む混合液中にて調製され、マウスの適切な身体構造部位に移植される。細胞の製剤及び注射の一般的技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed.(Mack Publishing Co., Easton, Pa.)に見出すことができる。好適な経路としては、例えば、筋肉内、皮下、髄内注射ならびに鞘内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、脳内、又は眼内注射を含む非経口投与が挙げられる。注射に関しては、本発明の細胞は、水溶液中にて、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合性のある緩衝液中にて、製剤することができる。そのような経粘膜投与に関しては、透過される障壁に適切な浸透剤が前記製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において広く周知である。本明細書に記載したように、腫瘍形成性が確立された後、広範な生物アッセイ及び分子アッセイに前記動物モデルを使用して、腫瘍形成性の幹細胞及びそれらから誘発される腫瘍を特徴づけることができる。
例えば、進行した腫瘍の治療では、所望の寸法まで腫瘍を成長させ、その所望の寸法範囲を超える腫瘍又は成長が不十分な腫瘍を有する動物を除去する。そうして選択した動物を治療群と対照群にランダムに割り付ける。腫瘍と結びつけられる物質から生じる毒性に対する試験薬からの毒性又は前記薬剤への反応を解離することができるように、それらの腫瘍を持っている動物と同じ治療を、腫瘍を持っていない動物にも施す。NTX腫瘍の型に応じて移植後概ね21〜60日に化学療法を開始し、動物を毎日観察する。標的とされる積荷タンパク質は、例えば腹腔内注射、静脈注射、腫瘍(若しくは腫瘍器官)への直接注射、又はボーラス注入によって動物に投与することができる。
注入される試験化合物の量は当業者によって容易に決定され得る。典型的には、試験の終了まで、異なる動物群の体重を週に約1〜2回測定する。腫瘍が触知可能になったら腫瘍を測定し、腫瘍が既定の寸法及び/又は重量になるまで、あるいは、腫瘍が既定の寸法及び/又は重量になる前の場合は動物が死ぬ若しくは安楽死されるまで、電子キャリパー又は3Dスキャンを使用して週に約1〜2回、直接測定により継続的にモニタリングする。次いで、それらの動物を屠殺し、RNA、DNA、タンパク質、IHC及び他の分析のために組織を保存するだけでなく、それぞれの集団について同様の分析を行うために本明細書に記載の方法を用いて腫瘍細胞亜集団を濃縮又は単離する。
IX.可能性のある治療化合物の分析
本明細書に開示されるTICAMは、腫瘍形成性細胞亜集団の同定、特徴づけ、モニタリング、及び分離又は単離のための極めて有効な方法を提供する。本開示の観察技法及び高度に定義された細胞亜集団が、選択された疾患の治療、予防又は診断のための治療用又は診断用標的並びに医薬化合物の同定及び検証のために利用できる強力なツールを提供することは、理解されるであろう。
本発明の一実施形態では、単離された細胞又は細胞集団の遺伝子型分析又は表現型分析を実施することができる(例えば、下記の実施例8)。より具体的には、単離又は濃縮された細胞を当該技術分野で周知の技法を用いて処置又は調製して、遺伝物質又はプロテオーム物質(すなわち、トランスクリプトームのような情報)を提供する。次いで、この調製又は処置された材料を次世代シークエンシング又は質量分析のような現代的技法を用いて分析して、タンパク質の発現又は形態学のような、その腫瘍形成性細胞又は細胞亜集団についての選択された情報を提供する。
更に、本明細書に開示されている定義された腫瘍形成性細胞亜集団を使用して、それらが癌細胞量及び/又は癌細胞を減少させる能力、若しくはそれらが癌細胞量及び/又は癌細胞の増殖を阻害する能力に関して、試験化合物又は候補化合物の評価を生体外及び/又は生体内で実施することができる。候補化合物が癌細胞量、癌細胞及び/又は免疫細胞(例えば白血球)を安定させる又は減少させる能力、あるいはそれらの増殖を阻害する能力の評価は、癌細胞上の抗原の発現と癌細胞と免疫細胞の検出、増殖癌細胞と癌細胞と免疫細胞の検出、及び癌細胞と癌細胞の検出を機能的アッセイを用いて行うことによって実施できる。特に好ましい実施形態では、この分析は、腫瘍形成性細胞亜集団の同定、特徴づけ、及び/又は単離並びに濃縮を含む。当業者に周知の技法を用いてこれらの活性を測定することができる。例えば、細胞増殖は、H−チミジン取り込みアッセイおよびトリパンブルー細胞計数によるアッセイで測定できる。抗原発現は、例えば、ウェスタンブロット、免疫組織化学ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、免疫蛍光サンドイッチイムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定法、プロテインAイムノアッセイ、免疫蛍光検査法、フローサイトメトリー、およびFACS分析のような技法を用いる競合的及び非競合的アッセイ系が含まれる(ただし限定せず)イムノアッセイ(免疫学的測定法)によって測定できる。
可能性のある医薬化合物、医薬組成物、又は提案される治療計画は、好ましくは、ヒトでの使用に先立って所望の治療又は予防活性について、まず生体外で、次いで生体外で、試験される。例えば、特定の化合物の投与が適応かどうかの決定に使用することが可能なアッセイとしては、患者の組織検体(例えば、腫瘍全体又は濃縮された細胞亜集団)を免疫不全マウスで継代してから本発明の化合物に曝露し、若しくは何らかの別の方法で接触させ、その組織検体に対するそのような化合物の影響を観察する細胞培養アッセイが含まれる。前記組織検体は患者からの生検によって得ることができる。この試験は、それぞれの患者のために治療的に最も有効な治療(例えば予防薬又は治療薬)の特定を可能にする。一般には、治療は、ヒトでの使用に先立って所望の治療又は予防活性についてまず生体外で、次いで生体内で試験されるのが好ましい。
より具体的には、マーカー及び関連づけられる細胞、培地、集団、それを含む組成物、及びその前駆体を使用して、腫瘍開始細胞又はその前駆体の機能又は活性に影響する化合物又は薬剤(例えば薬物)をスクリーニングすること又は特定することができる。したがって、本発明は、更に、濃縮された集団において示されるような選択された経路又は機能の阻害により腫瘍開始細胞又はその前駆体の機能又は活性に影響し得る化合物又は薬剤の評価若しくは特定のためのシステム及び方法を提供する。そのような化合物及び薬剤は、例えば、過剰増殖症の治療のためのスクリーニングの対象となる薬物候補であり得る。一実施形態では、システム又は方法は、腫瘍開始細胞及び化合物又は薬剤(例えば薬物)の濃縮された集団を含み、それらの細胞及び化合物又は薬剤(例えば薬物)は互いに接触している。
別の好ましい実施形態では、方法は、濃縮された腫瘍開始細胞又はその前駆細胞の集団に試験薬又は化合物を生体内又は生体外で接触させる工程と、その試験薬又は化合物がその腫瘍開始細胞の活性又は機能を調節するかどうかを決定する工程と、を含む。
調節され得る代表的な活性又は機能としては、細胞の形態、マーカーの発現、分化及び脱分化、成熟、増加、生存率、アポトーシス、細胞死、神経前駆細胞、又はその前駆体における変化が挙げられる。
いくつかの実施形態では、複数の腫瘍形成性亜集団に影響し得る化合物のスクリーニング及び選択をすることが有利である。したがって、全体的生存率が治療計画によって影響される場合は、これらの薬物の標的の選択は主にTPCにおけるそれらの発現に基づくが、TProgにおけるそれらの発現にもまた基づくのが最善であろう。選択されたTPCの標的が腫瘍の最終回帰をもたらすことが期待されるかもしれないが、それが生じるまではいくらか時間がかかる場合があり、本明細書ではTProgは結腸直腸癌において重要な増殖能力を有することが示されている。TPCだけでなくTProgによっても発現される治療標的は、腫瘍の自己再生性構成成分と高増殖TProgコンパートメントとの両方が並行して根絶され、顕著な腫瘍回帰及び長期的な全体的生存率をもたらす可能性があるので、より好ましい場合がある。これらの薬物標的は、例えば、遺伝子、タンパク質、マイクロRNA、及び/又は長い又は短いノンコーディングRNAであり得る。薬物標的はまた、TPC又はTProgが発現しないがTPC又はTProg上のレセプターと結合するリガンドもまた含み、これらのリガンドはTPCの自己再生又はTProgの増殖のために非常に重要である。
より広くは、細胞、又は細胞培養若しくは方法工程若しくは治療に関して使用される「接触」は、濃縮された又は選択された腫瘍細胞又は細胞集団と、別の基準エンティティとの直接若しくは間接の相互作用を意味する([and])。直接相互作用の具体例は物理的相互作用である。更には、そのような接触は生体外又は生体内(すなわち、試験化合物をNTX動物に投与する)で実施し得る。間接相互作用の具体例は、組成物が介在分子に作用し、次いでその介在分子が基準エンティティ(例えば細胞又は細胞培地)に作用する場合である。
本発明のこの態様では、「調節する」は、本発明の腫瘍開始細胞又は前駆細胞の特定の側面(例えば、転移又は増殖)と関連することが決定された細胞の活性又は機能への影響を検出する工程と適合性のあるやり方で腫瘍開始細胞又は前駆細胞の活性又は機能に影響を与えることを示す。代表的な活性及び機能としては、形態、発育マーカー、分化、増殖、生存率、細胞呼吸、ミトコンドリア活性、膜完全性、又は特定の条件と関連づけられたマーカーの発現の測定が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、化合物又は薬剤(例えば薬物候補)の評価は、本明細書に開示されているように、又は当業者に周知であろうように、そのような細胞又は前駆細胞を前記化合物又は薬剤と接触させ、腫瘍開始細胞又は前駆細胞の活性又は機能の調節を測定することによって、前記化合物又は薬剤が腫瘍開始細胞又は前駆細胞に与える影響に関して実施することができる。
薬剤及び化合物のスクリーニング及び特定の方法は、所望により規定の場所又はアドレスに位置づけられた又は配置された細胞の配列(例えばマイクロアレイ)を含むハイスループットスクリーニングに好適な方法が含まれる。ハイスループットロボットで又は手作業で処理する方法は、化学相互作用をプローブし、多くの遺伝子の短期間の発現レベルを決定することができる。分子信号(例えばフルオロスフォア)及び超高速で情報を処理する自動分析(例えばPinhasov et al., Comb. Chem. High Throughput Screen.7:133 (2004))を参照)を利用する技術はすでに開発されている。例えば、数千個の遺伝子の相互作用を一度にプローブする一方で特定の遺伝子の情報を提供するためのマイクロアレイ技術は広く利用されている(例えば、Mocellin and Rossi, Adv. Exp. Med. Biol. 593:19 (2007)を参照)。
複雑な生物学的薬剤に加えて、候補薬剤は、特に水素結合である構造的相互作用のために必要な官能基を含む有機分子を含み、典型的には、少なくとも1個のアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を含み、多くの場合、前記官能性化学基を少なくとも2個含む。それらの候補薬剤は、しばしば、1つ以上の上記の官能基で置換された環状炭素又は複素環構造および/又は芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤は、ペプチド、ポリヌクレオチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体又はそれらの組み合わせを含む生分子にもまた見出される。
薬理学的活性薬剤、遺伝的活性分子なども含まれる。関心対象の化合物としては、化学療法剤、ホルモン、又はホルモンアンタゴニストなどが挙げられる。本発明に好適な医薬薬剤の例は、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」( Goodman and Gilman, McGraw−Hill, New York, N.Y., (1996), Ninth edition)の以下の各項に記載されている。Water, Salts and Ions; Drugs Affecting Renal Function and Electrolyte Metabolism; Drugs Affecting Gastrointestinal Function; Chemotherapy of Microbial Diseases; Chemotherapy of Neoplastic Diseases; Drugs Acting on Blood−Forming organs; Hormones and Hormone Antagonists; Vitamins, Dermatology; and Toxicology。これら全ては参考として本明細書に組み込まれる。また、毒素、並びに生物・化学兵器用薬剤もま含まれる(Somani, S. M. (Ed.), −Chemical Warfare Agents,− Academic Press, New York, 1992を参照)。
そのようなスクリーニング方法(例えばハイスループット)は、活性薬剤・化合物を急速且つ効率的に特定することができる。例えば、細胞を培養皿、チューブ、フラスコ、ローラーボトル又はプレート(例えば、単一のマルチウェルプレート又は例えば8、16、32、64、96、384および1536マルチウェルプレート又はディッシュ上に、所望により定められた場所に位置づける又は配置(プリシード)して、可能性のある治療用分子を特定することができる。スクリーニン対象となり得るライブラリとしては、
例えば、低分子ライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、完全ヒト抗体酵母ディスプレイライブラリー(Adimab、LLC)、siRNAライブラリー、およびアデノウイルストランスフェクションベクターが挙げられる。他の好ましい実施形態では、該方法は、濃縮された腫瘍形成性細胞の製剤を含む培地における活性のために、関心対象の化学化合物ライブラリーをスクリーニングする工程を含む。そのような化学ライブラリーとしては、Spectrum(商標)Collectionライブラリー、Lopac(商標)Collectionライブラリー、Prestwick Chemical Library(登録商標)Maybridge(登録商標)Collectionライブラリーが挙げられる(いずれもスクリーニング用化合物のライブラリーである)。
更に、候補薬剤を含む化合物は、合成化合物又は天然化合物のライブラリーを含む広範なソースから得られる。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドの発現を含む、生分子を含む広範な種類の有機化合物のランダム合成及び指定合成のために利用可能な数々の手段がある。あるいは、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形状の天然化合物のライブラリーも入手可能である、又は容易に作製可能である。加えて、自然に又は合成により作製されるライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的及び生化学的手段により容易に修正することができ、また、コンビナトリアルライブラリーの作製のために使用することもできる。既知の薬理学的薬剤に、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような、方向性のある化学修飾又はランダムな化学修飾を施して、構造類似体を生成してもよい。
そのような実施形態では、測定されるパラメーターは定量可能な細胞構成要素を含み、具体的には、望ましくはハイスループットシステムにより正確に測定可能な構成要素を含む。パラメーターは任意の細胞構成要素又は細胞産生物であってよく、細胞表面決定因子、レセプター、タンパク質又はその立体配座的修飾物又は翻訳後修飾物、脂質、炭水化物、有機又は無機分子、核酸、例えばmRNA、DNAなど、又はそのような細胞構成要素又はこれらの組合せに由来する部分が含まれる。ほとんどのパラメーターは定量的読み出しを提供するが、場合によっては準定量的又は定性的な結果も許容可能であろう。読み出しは単一の測定値を含むことができ、平均値、中央値又は分散等を含むことができる。特徴的には、各パラメーターに関して、複数の同じアッセイから、ある範囲のパラメーター読み出し値が得られる。変動は予想され、試験パラメーターのそれぞれのセットに関する値の範囲は、個々の値を提供するために使用される共通の統計法により、標準的な統計法を用いて得られる。
薬剤は通常、それらの薬剤を欠く細胞と一緒に、少なくとも1つ、通常は複数の細胞検体にそれらの薬剤を加えることによって、生物学的活性についてスクリーニングされる。それらの薬剤への反応におけるパラメータの変化を測定し、その結果を、それらの薬剤の存在下および非存在下において、例えば他の薬剤で得られた基準培地などと比較することにより評価する。
それらの薬剤は、便利なやり方で溶液として、又は容易に溶解される形状で、培養中の細胞の培地に加えられる。それらの薬剤は、ストリームとしてフロースルーシステムにおいて断続的又は連続的に添加してもよく、あるいは、その化合物のボーラスを一度に又は徐々に、それが添加されること以外は静的である溶液に加えてもよい。フロースルーシステムでは、2種類の流体が使用され、1つは生理学的に中性の溶液であり、もう1つはその同じ溶液に試験化合物が添加されたものである。第1の流体を細胞の上に通過させ、次いで第2の流体を通過させる。単一溶液法では、細胞を取り巻く媒体の容量に試験化合物のボーラスを加える。培地の構成成分の全体的な濃度はボーラスの添加により有意に変化してはならず、また、フロースルー法では2つの溶液間で有意に変化してはならない。
選択されたマーカーの存在を定量化するために様々な方法を利用することができる。存在している分子の量を測定するために便利な方法は、例えば蛍光部分、発光部分、放射性部分、酵素活性部分などであり得る検出可能な部分で分子に標識を付けることであり、具体的には、高い親和性でそのパラメーターと結びつく特定の分子に標識を付けることである。蛍光部分は、実質的に任意の生体分子、構造体、又は細胞型に標識付けするために容易に入手可能である。免疫蛍光部分は、特定のタンパク質だけでなく、特定の立体配座、切断産物、又はリン酸化のような修飾部位とも結合するように指定することができる。個々のペプチド及びタンパク質は、例えば、細胞内部の緑色蛍光タンパク質としてそれらを発現することによって、自己蛍光性に作ることができる(Jones et al. (1999) Trends Biotechnol. 17(12):477−81を参照)。このように、抗体の構造の一部として蛍光染料を提供するように抗体を修飾することができる。選択された標識に応じて、蛍光標識以外にラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)、均質酵素免疫測定法、および関連する非酵素的な技法などのイムノアッセイ(免疫測定法)を用いてパラメータを測定することができる核酸、特にメッセンジャーRNAの定量もまたパラメータとして関心がもたれる。これらは、核酸ヌクレオチドの配列に応じてハイブリダイゼーション法によって測定できる。技法としては、ポリメラーゼ連鎖反応法及び遺伝子アレイ法が含まれる。カレント・プロトコールについては、例えば以下を参照されたい。Molecular Biology, Ausubel et al., eds, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 2000; Freeman et al. (1999) Biotechniques 26(1): 112−225; Kawamoto et al. (1999) Genome Res 9(12):1305−12; and Chen et al. (1998) Genomics 51(3):313−24。.
X.診断用途
別の好ましい態様では、本発明は、癌の診断方法又は癌細胞又は前癌細胞の検出方法を提供し、この方法は、被験体の腫瘍(例えば、TIC、TPC、TProg、NTG細胞、腫瘍間質、又は全腫瘍組織)から濃縮又は精製されたバルク腫瘍細胞又は腫瘍細胞亜集団を得る工程と、これらの腫瘍細胞集団から、これらの腫瘍細胞亜集団の頻度及び/又は、遺伝子及び/又はプロテオーム分子のプロファイルを評価する工程と、を含む。腫瘍形成性細胞は、本明細書に開示されているTICAMに基づいて単離してもよく、例えばヒトである被験体から腫瘍形成性細胞を単離する様々な方法は、当該技術分野の関連分野において周知である。
別の実施形態では、本発明は、生体内での癌の進行及び/又は発症機序の分析方法を提供する。別の実施形態では、生体内での癌の進行及び/又は発症機序の分析は、腫瘍の進行の程度を決定する工程を含む。別の実施形態では、分析は腫瘍の特定を含む。別の実施形態では、腫瘍の進行の分析は一次腫瘍に関して行われる。別の実施形態では、分析は、当業者に周知のような癌の種類に応じて時間をかけて行われる。別の実施形態では、原発腫瘍の転移細胞に由来する二次腫瘍の更なる生体内分析が行われる。別の実施形態では、二次腫瘍の寸法及び形状を分析する。いくつかの実施形態では、更なるex−vivo分析が行われる。別の実施形態では、患者の腫瘍を免疫不全マウスに移植し、ゼノグラフトとして成長させ、癌の進行、発症機序の分析及び/又は予測される又は実際の治療への反応を予測するための実験が行われる。
本発明の他の好ましい実施形態は、本開示のTICマーカー及びTICAM、又はTIC若しくはTICAMと関連づけられる遺伝子、タンパク質、マイクロRNA、又はこれらのTIC又はTICAMを使用して濃縮又は単離された細胞を利用して発見された短い及び長いノンコーディングRNAの特性もまた利用して、対照標本又は異なる時点で得られた標本に対する前記のTIC若しくはTICAMと関連づけられる遺伝子、タンパク質、マイクロRNA、又は短い及び長いノンコーディングRNAの発現に基づいて、所与の標本(例えば腫瘍生検)におけるTICの相対数又は頻度を定量化する。このようにして、本明細書に記載のように、検体内のTICの実際の数を直接に評価せずに治療への反応を予測及び/又は有効に評価することが可能となり得る。
腫瘍形成性細胞を検出及び/又は定量化できる当業者に周知の任意の生体外又は生体内アッセイを使用して疾患の経緯をモニタリングし、選択された治療及び/又は治療計画の影響を評価することができる。これらの方法を使用して、研究設定及び臨床設定での影響を評価することができる。次いでこれらのアッセイの結果を使用して被験体の治療の投与量、薬物又はタイミングを変更することができる。検体の癌幹細胞集団の検出、単離及び/又は測定の前に、その検体を1つ以上の前処理工程にさらしてもよい。特定の実施例では、遠心分離、ろ過、沈殿、透析、又はクロマトグラフィー、若しくはそのような前処理工程の組み合わせによって、体液を前処理する場合がある。他の実施例では、組織検体を凍結、化学固定、パラフィン包埋、脱水、浸透、又は均質化により前処理し、次いで遠心分離、ろ過、沈殿、透析、又はクロマトグラフィーによる前処理工程を行う。特定の実施例では、検体中の癌幹細胞の量を決定する前に、検体から腫瘍形成性細胞亜集団以外の細胞を除去することによって、又は検体から破片を除去することによって、検体を前処理する。
別の実施形態では、本発明は、細胞転移を決定する工程を含む、生体内での癌の進行及び/又は発症機序の分析方法を提供する。更に別の実施形態では、細胞転移の分析は、一次腫瘍と不連続の部位にある進行性の細胞の成長の決定を含む。別の実施形態では、細胞転移分析の部位は、腫瘍の拡張経路を含む。いくつかの実施形態では、細胞は血管系又はリンパ管を介して、又は体腔内で、若しくはそれらの組み合わせにおいて、分散することができる。別の実施形態では、細胞移動、播種、溢出、増殖又はそれらの組み合わせを鑑みて細胞転移分析が行われる。更に別の実施形態では、腫瘍形成性細胞亜集団の転移の可能性は、免疫不全マウスへの静脈内、同所性、又は腎臓カプセルの移植後に分析される。
特定の実施例では、治療前に又は治療計画がベースラインを確立する前に被験体又は被験体からの検体における腫瘍形成性細胞を評価又は特徴づけることができる。他の実施例では、検体は、治療を受けた被験体由来のものである。特定の実施例では、検体は、被験体が治療を開始又は終了してから少なくとも約1、2、4、6、7、8、10、12、14、15、16、18、20、30、60又は90日後、6ヶ月、9ヶ月又は12ヶ月後、あるいは12ヶ月後を越えてから被験体から採取される。特定の実施例では、腫瘍形成性細胞は一定の投与回数の後(例えば、用量が2、5、10、20又は30回、あるいは30回以上投与された後)に評価される又は特徴づけられる。他の実施例では、腫瘍形成性細胞は、1つ以上の治療を受けてから1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、1年後、2年後、3年後、4年後、あるいはそれ以上経過してから特徴づけられる又は評価される。
XI.製品
本発明は、本明細書に記載された腫瘍形成性細胞又は細胞亜集団を同定、特徴づけ、及び/又は濃縮又は単離するためのキットもまた提供する。そのようなキットは、患者の診断目的のために臨床の現場で、又は研究において、腫瘍形成性細胞集団の特徴づけ及び/又は濃縮のために使用することができる。本発明によるキットは、TICAM結合剤を含む1つ以上の容器と、その容器上の又はその容器に付随するラベル若しくはパッケージ挿入物と、を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、96ウェルプレートなどが挙げられる。これらの容器はガラス又はプラスチックなど多様な材料から形成することができる。この容器は1つ以上の組成物を保持するものであり、この組成物は、腫瘍形成性細胞の分析のために有効な結合剤を含み、且つ本明細書に記載されるような濃縮された又は単離された細胞又は細胞亜集団を所望により提供する。そのようなキットは、概して、1つ以上のTICAM結合剤の製剤を好適な容器内に包含し、複数の結合剤の場合は、それらの結合剤を同じ容器に入れても異なる容器に入れてもよい。また、前記キットは、診断のための、又はその包含されている結合剤の標識付け又は修飾のための、他の医薬的に許容可能な製剤も包含し得る。
より具体的には、前記キットは、前記1つ以上のTICAM結合剤を追加的な構成要素とともに又は前記構成要素なしに包含する単一の容器を有してもよく、あるいは、各構成要素のための個別の容器を有してもよい。共役のための組み合わされたレポーターが提供される場合、単一の溶液をモル等量の組み合わせにおいて、若しくは1つの構成成分が別の構成成分より多くなるように、予め混合することができる。あるいは、被験体に投与するまで又は生体外で使用するまで前記キットの結合剤及び任意の所望の標識剤を別々に個別の容器内に維持してもよい。前記キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル液及びデキストロース溶液のような滅菌された医薬的に許容され得る緩衝液又は他の希釈剤を包含するための第2/第3の容器手段もまた備えることができる。
前記キットの構成要素が1つ以上の溶液中にて提供される場合、その溶液は好ましくは水溶液であり、特に好ましいのは滅菌水溶液である。しかし、前記キットの構成要素を乾燥粉末で提供してもよい。試薬又は構成要素が乾燥粉末として提供される場合、その粉末は好適な溶剤の添加によって再構成することができる。その溶剤を別の容器にて提供してもよいものと企図される。
上記にて簡単に述べたように、前記キットは、前記結合剤及び任意の所望の構成要素を被験体に投与する手段もまた包含することができ、その手段は例えば1つ以上の針又は注射器、若しくは更には点眼器、ピペット、あるいは他の類似の装置であり、そこから、前記製剤を動物に注射又は導入すること若しくは身体の患部に適用することができる。本発明のキットは、典型的には、市販用にバイアル又はそれと類似のもの及び他の構成要素を密に閉じ込めて包含するための手段もまた含み、そのような手段は例えば、所望のバイアル及び他の装置を配置し保持する射出成形又はブロー成形されたプラスチック容器である。特に好ましい実施形態では、任意のラベル又はパッケージ挿入物は、その結合剤構成成分が例えば結腸直腸癌である癌の診断のために使用されることを示す。他の好ましい実施形態では、その同梱される説明書は、その構成成分を生体内又は生体外の研究設定及び1つ以上の治療にどのように使用するかを指示する又は示す。
XII.研究試薬
また、本発明の他の好ましい実施形態は、蛍光活性化細胞ソーティング、磁気活性化細胞ソーティング、又はレーザー介在式セクショニングのような方法を通じて腫瘍開始細胞の集団又は亜集団を同定、単離、セクショニング又は濃縮するために有用な手段としても、本開示のTICAMの特性を利用する。当業者は、癌幹細胞を含むTICの特徴づけ及び操作のためのいくつかの適合性のある技法においてモジュレーターが使用され得ることを理解するであろう(例えば、米国特許第12/686,359号、同第12/669,136号及び同第12/757号を参照されたく、前記各特許は参考としてその全体が本明細書に組み込まれる)。
XIII.雑則
本明細書において別に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含むものとする。具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形の 「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指示しない限りは、複数形の対象を含む。したがって、例えば、「タンパク質」への言及は、タンパク質の複数を含み、「細胞」への言及は、細胞の混合物等を含む。加えて、本明細書及びその特許請求の範囲で提供される範囲は、両方の終点及びそれらの終点間の全ての点を含む。したがって、2.0〜3.0の範囲は2.0、3.0、及び2.0と3.0の間のすべての点を含む。
概して、本明細書に記載される細胞・組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションの手法及びそれらとの関連において使用される命名法は、当該技術分野で周知であり且つ一般に使用されているものである。本発明の方法及び技術は、一般的に当該分野で一般に周知であり、特に断りがない限り、本明細書全体を通して言及及び説明される様々な一般的な参考及び具体的な参考において説明されているとおりである。参考として、例えば、以下を参照されたい。Sambrook J. & Russell D. Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2000); Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, John & Sons, Inc. (2002); Harlow and Lane Using Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1998); and Coligan et al, Short Protocols in Protein Science, Wiley, John & Sons, Inc.(2003)。酵素反応及び精製技法は、当該技術分野において一般的に達成されているように、又は本明細書に記載のように、製造業者の仕様に従って行われる。本明細書に記載の分析化学、有機合成化学、薬用・医薬化学の手法及びそれらとの関連において使用される命名法は、当該技術分野において周知であり、一般に使用されている。
この明細書の範囲内で開示又は引用される全ての参考文献又は文書は、その全体が参考として、限定なく、本明細書に組み込まれる。更には、本明細書に使用されている任意の項の見出しは整理のみを目的とし、記載の課題を限定するものとして解釈されるべきではない。
このように広く説明してきた本発明は、本発明を限定することではなく例示を目的として提供した以下の実施例を参考にすることによってより容易に理解されるであろう。これらの実施例は、実施された全ての実験を表すことを意図せず、また、これらの実験だけが行われたことを表す意図もない。特に断りがない限り、部は重量部により、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はそれに近い圧力である。
実施例1
腫瘍開始細胞集団の特徴づけ
癌患者に存在する固形腫瘍細胞の異種性を特徴づけ、特異的な表現型マーカーを使用して腫瘍永続細胞(TPCすなわち癌幹細胞(CSC))のアイデンティティを解明し、臨床的に関連する診断用バイオマーカー及び治療標的を同定するために、当該技術分野で認識されている技法を用いて大規模な非従来型ゼノグラフト(NTX(登録商標)腫瘍バンクを開発し、維持した。個別の一次腫瘍を多数含んでなるこのNTX腫瘍バンクは、様々な固形悪性腫瘍を患う癌患者からもともと得られた異種腫瘍細胞の複数継代を通じて免疫不全マウスで増殖させたものである。NTX腫瘍株の細胞は患者から直接採取した腫瘍の生物学をよく反映しており、NTX腫瘍株は生体内での腫瘍細胞亜集団の再現可能且つ反復される特徴づけを可能にするので、よく定義された系列を有する多数の個別の初期継代NTX腫瘍細胞株を利用できることは、TPCの同定及び単離を大いに促進する。より具体的には、単離又は精製されたTPCの最も正確な定義づけは、マウスにおいてそれらのTPCが表現型的及び形態学的に異種の腫瘍を生成する能力にしたがって、すなわちそれらの細胞が由来する患者の腫瘍検体の過程を繰り返す一方で低い細胞数(すなわち200個未満)の連続移植において腫瘍の成長を刺激し続ける能力にしたがって、遡及的に行われる。したがって、単離された細胞の小さい集団を使用して、少なくとも2回の連続移植を通じてマウスに十分に異種な腫瘍を生成できる能力は、その単離された細胞がTPCを含むという事実を強く示している。そのような作業では、(例えば細胞数を増やすことを目的として)生体外で拡張されたことのない最少限の継代のNTX細胞株の使用は、生体内実験を大いに簡易化し、生理学的に関連性のある設定において検証可能な結果をもたらす。更には、初期継代NTX腫瘍がイリノテカン(すなわちCamptosar(登録商標))のような治療剤にもまた反応することは、腫瘍成長を駆動する基本的な機序、現行治療法への耐性、及び腫瘍再発に関する臨床的に関連性のある洞察を提供する。
NTX腫瘍株が確立されるにつれて、それを構成する腫瘍細胞の表現型をフローサイトメトリーにより分析して、腫瘍開始細胞(TIC)の同定、特徴づけ、単離、精製又は濃縮、並びにかかる集団内のTPC及び腫瘍前駆細胞の分離又は分析を行うために使用可能な個別のマーカーを特定する。これに関し、本発明者らは、細胞のタンパク質発現を急速に特徴づけ、それに伴って、有用である可能性のあるマーカーの同定をもたらす、専有のプロテオームに基づくプラットフォーム(すなわちPhenoPrint(商標)Array)を採用した。
PhenoPrint Arrayは、96ウェルプレートに配列された数百もの個別の結合分子を含む専有のプロテオームプラットフォームであり、各ウェルはフィコエリトリン(PE)蛍光チャネルに特異的な結合分子を包含しており、それらの結合分子の多くは商用ソースから得たものである。腫瘍細胞検体内の亜集団を同定することを目的として、非PE蛍光チャネルの他の結合分子は、PhenoPrint Arrayのウェルに分配される前に全ての細胞に均一に適用される。PhenoPrint Arrayの使用は、非腫瘍形成性(NTG)バルク腫瘍細胞及び腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞及び内皮細胞)からTICを区別することが期待されるタンパク質又はマーカーの高速同定を可能にする。より具体的には、腫瘍細胞検体全体にかけて異種細胞表面発現を呈するタンパク質は、示差的なタンパク質発現に基づく、特異的且つ高純度のTIC亜集団の同定、単離及び移植を可能にする。本願のマーカー表現型に基づく細胞亜集団の特徴づけ及び濃縮(例えばフローサイトメトリー又は蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)による)が、免疫不全マウスへのそれらの移植を可能にし、それにより、生体内でのそれらの腫瘍形成能を機能的に検査することにより、一つの腫瘍細胞亜集団と別のそれとにおいてTICが濃縮されたかどうかを評価するのを可能にすることは、評価されるであろう。PhenoPrint Arrayを当該技術分野において周知の組織解離、移植及び幹細胞技術(Al−Hajj et al., 2004, Dalerba et al, 2007 and Dylla et al., 2008:それぞれ、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる)と組み合わせて使用したとき、本発明による関連マーカーを有効に同定し、次いで、非常に高い効率で特定のヒト腫瘍細胞亜集団を単離及び移植することが可能であった。
本件では、当該技術分野で認識されている技法を用いて、ヒトの腫瘍を含む様々なNTX腫瘍株を重度の免疫不全マウスにおいて確立した。腫瘍が800〜2,000mmに達した後、腫瘍をマウスから切除し、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ及びDNAselの使用を伴う当該技術分野で認識されている機械的及び酵素による解離技法を用いて単一細胞の懸濁液に解離した(例えば、本明細書に組み込まれる米国特許第2007/0292414号を参照)。標準的なフローサイトメトリー法を使用して、BD FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(BD Biosciences社)で、数百の細胞表面タンパク質の発現に関して個々の腫瘍細胞の特徴づけを行った。均一に発現した若しくは欠如していたほとんどの細胞表面タンパク質と比較して、CD46、CD324、及び図9〜12に記載したものを含む選択されたタンパク質は、程度の差はあれ、数々のヒト結腸直腸( 「CR」)、膵臓(「PA」)、トリプルネガティブ乳癌(「BR」)、及び非小細胞肺癌(「LU」)の原発腫瘍細胞の表面に陽性発現及び/又は異種発現した。いくつかの異なる腫瘍型に関してのこれらのマーカー(CD46及びCD324)の異種発現を図1及び図2に示す。より具体的には、図1及び図2は、ヒストグラムプロットとして表示される個々の腫瘍細胞に関してのフローサイトメトリーに基づくタンパク質発現データを図示し、アイソタイプコントロール抗体を使用したFMO(Fluorescence Minus One )染色は灰色で塗られたヒストグラムに示し、市販入手可能な抗原特異性のPE共役抗体を使用して決定した抗原発現(すなわち、CD46及びCD324)は太字の黒線で表示した。
図1Aに示したように、及び本発明にしたがって、CD46の発現は、多様な種類の固形腫瘍を呈する被験体において一般に観察された。更には、発現のレベルは様々であるが、概ね背景染色より高かった。新鮮な単離された腫瘍からの腫瘍細胞を使用したプロットの評価により、CD46の発現は、結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌及びトリプルネガティブ乳癌の患者由来の腫瘍において特に異種であり、亜集団は概して陰性lo /又は陽性の発現を示している(図1B)。具体的には、アイソタイプコントロール/FMO染色及び標準フローサイトメトリー法を用いた定量化で、CD46を陽性発現する細胞は、しばしば、低レベルから高レベルまでの染色範囲を有していた。図2に見られるようにCD324でも同様であり、CD324を発現する腫瘍細胞亜集団はしばしばマイノリティ集団を含むことが観察された。驚くべきことに、また当該技術分野での定説とは対照的に、腫瘍形成性細胞の亜集団のみと関連づけられると一般に考えられているタンパク質(例えばCD24及びCD34)は、類似した固形腫瘍型において同じ技法を用いて測定したとき、図3A(CD24)及び3B(CD34)に例示されているように概して均質な発現を呈した。したがって、これらの先行技術のマーカーは本明細書の教示と不適合である可能性がある。 いずれにせよ、上述のように腫瘍生理学を正確に反復するNTX腫瘍モデルと腫瘍細胞のPhenoPrint Array分析とを組み合わせた使用は、CD46及びCD324を含む数百種類の腫瘍抗原の細胞表面発現レベルの特徴づけにおけるその可能性及び有用性を示している。均一の発現を呈するマーカーと異なり、本発明のマーカーは数々の腫瘍型からの腫瘍細胞亜集団に対して概ね異種の発現を呈し、したがって、TIC又はその構成要素の同定、特徴づけ、及び/又は単離若しくは濃縮に際して劇的な利点をもたらす。
実施例2
FACS及び移植による腫瘍開始細胞集団の濃縮
関心対象の特定の1種類以上のタンパク質(例えばCD46及び/又はCD324)の異種発現を呈する腫瘍において、そのようなマーカーに基づいて細胞を濃縮又は単離し、次いで免疫不全マウスに移植した。より具体的には、表面のレベルが高いか低いかを決定するために、より高い腫瘍形成性とCD46及び/又はCD324を相関することが可能であり、上述のように最先端技術を用いてNTX腫瘍検体を解離し、FACSAria Flow Cytometer (BD Biosciences社)を使用して単離して、特異的マーカーで濃縮された亜集団を提供し、次いで、それらの亜集団を免疫不全マウスに移植した。これに関し、細胞は、典型的には1匹のマウスにつき1,000個〜50個の細胞の用量で、対象となるメスの免疫不全NOD/SCIDマウスの乳房脂肪体に皮下注射した。これらの移植から生じる腫瘍が800〜2,000 mmに達したときにマウスを安楽死させ、細胞の構成要素がその移植された単離細胞のもとであった親腫瘍を代表しているかどうかを評価するために、表現型の特徴づけを目的として腫瘍を取り出し、酵素消化により単一細胞懸濁液に解離した。
図4〜8は、結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌及びトリプルネガティブ乳癌の患者由来のNTX腫瘍を用いた代表的な実験の結果を示す。図8の空白は、示されている実施条件の試験が行われなかったことを示している。意義深いことに、CD46及びCD324を発現する細胞の亜集団が一貫して腫瘍形成性に結びつけられ、CD46hl CD324表現型を有する細胞によって生成される腫瘍はそれらの親腫瘍と類似した組成であった。更には、これらの固形腫瘍内の全てのヒト細胞は上皮細胞特異性の抗原(ESA; EpCAM)に陽性であるので、その全て若しくは少なくともほとんどは CD24及びCD34であり(図3)、 これらの腫瘍からの腫瘍開始細胞(TIC)及び分析されたそれらの腫瘍のほとんどは、ESA CD46 hi CD324 CD24 CD34” の表現型プロファイルを使用して特定することが可能である。しかし、ESA、CD24及びCD34の表面発現はほとんど変わらず、腫瘍細胞亜集団の定義づけにおいての有用性が限られているので、本明細書に開示のTIC亜集団は CD324として、及び所望によりCD46hlとして同定され得る。上で繰り返し述べたように、多くの結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌及びトリプルネガティブ乳癌の患者由来のNTX株を使用して、マウスに移植されたCD46hl 細胞は一貫して異種腫瘍を生成し、このことは、この単離された細胞の亜集団がTICを有意に濃縮することを示している。本明細書の教示にしたがってCD46及びCD324のそれぞれを単独で使用してTIC亜集団を濃縮及び特徴づけることは可能だが、本発明の様々な態様はこれらのマーカーを組み合わせて使用し、代替実施形態では、追加的なマーカーと組み合わせて使用して、腫瘍細胞亜集団のより正確な層化及び単離を可能にする(図8)。逆に、CD46又はCD324を発現しない若しくは低レベルで発現する腫瘍細胞は、それらを高レベルで又は陽性に発現するものよりはるかに腫瘍形成性が低い(図4〜8)。生成されたデータに基づき、驚くべきことに、CD46hl CD324 表現型を発現する腫瘍細胞の亜集団が一般には腫瘍形成能のほとんどを包含することが見出された。
実施例3
腫瘍開始細胞上に発現した代表的な細胞表面マーカー
腫瘍開始細胞は、全ての細胞と同様に、好ましくはそれらの細胞表面上に数千とまでは行かずとも数百ものマーカー又は抗原を発現することができる。したがって、CD46及びCD324はTICに対して好ましいマーカーであるが、CD46及び/又はCD324を検出可能な分子の使用とは無関係に、他の付随マーカーを使用して同じ腫瘍細胞亜集団を同定及び/又は単離することもできる。上述の細胞表面マーカープロファイルを使用してTIC集団を確認後、試薬を使用してPhenoPrint Arrayを繰り返し、CD46及び/又はCD324とほぼ同等の発現を呈するタンパク質、すなわち本発明の観点から代用として使用可能であり得るタンパク質を同定した。
TIC細胞集団と結びつく又はCD46及び/又はCD324で実質的に共発現するタンパク質を同定するために、PhenoPrint Array の全てのウェルにこれらの抗原に対する非PE共役抗体を含め、様々な特異的タンパク質を認識する一意の抗体を配列し、蛍光分子PEを用いて評価した。例えば、ゼノグラフトの結腸直腸癌、膵臓癌又は非小細胞肺癌のCD46−/lo(NTG)及び/又はCD324 亜分画と比較して、ヒトCD46hi CD324 (TIC) 亜分画内でより高く発現するタンパク質を図9A及び9Bに記載する。結腸直腸癌においてCD46及びCD324を伴う各マーカーの共発現を示す代表的なFACSプロットは図10に含まれる。膵臓癌においてCD46及びCD324を伴う各マーカーの共発現を示す代表的なFACSプロットは図11に含まれる。非小細胞肺癌においてCD46及びCD324を伴う各マーカーの共発現を示す代表的なFACSプロットは図12に含まれる。記載のそれぞれのマーカーの実質的な発現を伴う細胞の特徴づけ又は濃縮又は単離は、CD46hi CD324 細胞(すなわちTIC)の特徴づけ又は濃縮又は単離もまた示す。これに関し、図9〜12のマーカー、及びCD46又はCD324のいずれかの発現と相関する他のマーカーを代理として使用して、本明細書に記載のようにTICを有効に同定することができる。したがって、図9〜12に記載されているマーカーを使用してTIC亜集団を単離することができ、それらのマーカーは診断マーカー及び治療標的として十分な有用性を有する。
実施例4
CD66cは結腸直腸CD46hi CD324 亜集団を区別することが可能である
腫瘍細胞の大多数には腫瘍形成能がなく、したがってNTGとして特徴づけられるが、正常な細胞発育及び造血細胞腫瘍の両方で、移植された高増殖性の細胞が組織及び/又は腫瘍を再構成した後、自己再生能力がない(すなわち寿命が限られている)ためにやがて枯渇した前例があり、それらはすなわち、短期再構成細胞、トランジット増幅細胞又は前駆細胞である。癌に関しては、前駆細胞表現型を伴う細胞は、幹細胞集団に通常は限定される自己再生性を再獲得し、それ以降は、これらの細胞及びそれらの子孫が長期間生存することになるという意味においてTPC又はCSCの定義を満たすものとなる可能性があるが(Jamieson et al., N Engl J Med; 351, 2004:参考としてその全体が本明細書に組み込まれる)、前駆細胞に自己再生性を与えるこれらの変異イベントは稀である。にもかかわらず、a)前駆細胞の増殖能力が有意であり得ること、b)腫瘍が約1,500〜2,000mmに達した際に免疫不全マウスを安楽死させなくてはならないこと、及びc)免疫不全マウスの寿命がヒトの寿命と比べて短いこと(NOD/SCIDマウスでは約9〜12ヶ月)のために、TICが腫瘍をマウスに生成する能力は、TICがTPCであることを実証するために十分に堅牢な読み出しではない。当該技術分野で述べられているように、幹細胞による自己再生能力の実証は、できる限り連続移植において示されなくてはならない。
CD46hl CD324 細胞の亜集団が多少なりとも腫瘍形成性であったか及び/又は潜在能が変化したかを決定するために、この表現型を伴う細胞の異種性を体系的にスクリーニングして細胞単離及び移植実験を可能にする追加的なマーカーを特定した。具体的には、上述の実施例に記載したようにPhenoPrint Arrayを用いて、潜在的有用性のある関心対象の細胞表面マーカーを同定した。これらの実験の過程で、 CD46hl CD324 細胞集団の中で異種性を一般に表示する細胞表面マーカーとしてCD66cが同定され(図11 A)、異なる機能的再構成能力を有するCD46hl CD324 細胞の2つの特異な亜集団の単離が可能となった。1匹のマウスにつき200個の細胞を移植したこのそれぞれの集団を図11Aに表示する。CD46hI CD324細胞の CD66c細胞セブセットの移植から生じた結腸直腸腫瘍は完全に異種であり、それらが由来する親腫瘍を反映していた(図11B及び11C(白の棒対黒の棒)並びに図12A )。驚くべきことに、及びCD46hI CD324細胞の CD66c細胞セブセット由来の腫瘍と対照的に、少数のCD66c サブセットの移植では、CD46hi CD324 CD66c 細胞から生成される腫瘍に存在するCD66c細胞は有意に少なく(図11c(灰色の棒対黒の棒)、完全な異種腫瘍は生成されず、これらの細胞が、正常な前駆細胞と類似した性質であること、すなわち相当な増殖能力を伴うが自己再生能力はなく、CD46 111 CD324CD66c 細胞に脱分化することができない腫瘍前駆細胞(TProg)であることが示された。
期待されるTPC (CD46hi CD324 CD66c)細胞及びTProg (CD46hl CD324 CD66c)細胞の少細胞数での連続移植では、CD46hl CD324 CD66c細胞によって生成された腫瘍から生じた
CD46hl CD324 CD66c細胞がわずか50個の細胞の連続移植で効率的に腫瘍を生成し、一方、CD46hl CD324 CD66c によって生成された腫瘍からのCD66c細胞亜集団及びCD66c 細胞亜集団のいずれも連続移植で効率的に腫瘍を再形成することができなかったことから、これらの腫瘍細胞亜集団の提案されているアイデンティティが確認された(図12)。明確に述べると、200個のCD46hl CD324 CD66c 細胞から生成された腫瘍から単離された50個のCD46hi CD324 CD66c 細胞又は50個のCD46hi CD324CD66c 細胞が腫瘍形成性であることは稀であった。驚くべきことに、これらのデータは、一部の結腸直腸癌患者からの固形腫瘍においてCD46hi CD324 CD66c細胞がTPCでありCD46hi CD324 CD66c細胞がTProg細胞であることを示している。
上述の結腸直腸癌におけるTPC表現型の正確さを決定するために、FACSによりCD46hi CD324 CD66c細胞を単離し(図13AはFACSの前、図13BはFACSの後)、1匹のマウスにつきそれぞれ1,000個、200個、50個、20個、8個及び3個の希釈で移植した。割合に依存しない腫瘍形成の成功として定義される陽性イベントに基づいてポアソン分布統計法を使用して算出した、CD46hi CD324 CD66c TPCにおける真のTIC頻度はおよそ5.4 ± 2.5個につき1個であった(図13C)。 本発明者らは、驚くべきことに、CD46hl CD324 CD66c の新規なマーカーの組み合わせの使用がTICの頻度を測定可能に豊かにし得ること、及びCD66cの使用が一部の患者のTIC亜集団のTPC対TProg解析を更に促進することを、代表的な結腸直腸NTX腫瘍において実証した。この発見は、必ずしも全てのTICが同等ではなく、任意の所与の患者において前記TPC亜集団のみが真に疾病の進行と再発を駆動する寿命の長い癌幹細胞であるという重大な意味を含んでいる。
結腸直腸腫瘍における上記に定義したTPC及びTProg細胞集団の濃縮に使用される細胞表面タンパク質の組み合わせは、これまで、いかなる組織又は腫瘍においてもそのような活性を含む細胞と結びつくことが知られていなかった。この作業は、TIC及びその亜集団の単離方法の解決における実質的な改善を表しており、自己再生能力を有する腫瘍形成性細胞亜集団すなわちTProgと、それを有さないTPCと、を区別して、移植されたときに腫瘍形成能力を限定的に抑える特異的な高度に濃縮された固形腫瘍細胞亜集団を同定、単離及び特徴づけるための技法を更に改善する。本明細書は、更に、漸次的に細胞数を少なくした希釈においてヒト腫瘍細胞を移植し、免疫不全マウスにおいてこれらの細胞の希釈が腫瘍形成を開始することができる速度に依存しない頻度を評価することにより、TICの計数を得る方法を説明する。専有のPhenoPrint Arrayを使用して同定されたほとんどの細胞表面マーカーは、標準のFACSプロトコルを用いて腫瘍からTIC集団を濃縮する能力を示さなかったが、特異的なマーカー及びそれらの組み合わせを使用して、幹細胞及び前駆細胞の技術分野で標準的な定義を満たすものとして機能的に実証されたTPC及びTProgを含む少なくとも2つのTIC亜集団を同定することができた。
実施例5
TPC及びTProg細胞集団は異なる潜在能を有する
生体外コロニー形成細胞(CFC)アッセイは、造血細胞階層における特異的な細胞集団の分化能の解析を助ける優れた有用性を有することが実証されているが、そのアッセイ条件は細胞成長及び/又は分化に伝達されないので、これらのアッセイは上皮組織又は固形腫瘍細胞には適していない。患者の腫瘍においてのように多くの表現型特異的腫瘍細胞亜集団が存在するNTX腫瘍モデルを使用し、TICの自己再生又は分化のいずれかを支持するFACS及び生体外アッセイ条件は、画定された腫瘍細胞亜集団の潜在能の決定を支援する。これらの生体外CFCアッセイは、最低限でも、これらのそれぞれの細胞集団の分化能を決定し、腫瘍細胞亜集団を定義する新しいマーカーの検索及び抗癌剤のスクリーニングにおいて有効な利点を提供する。
本発明のそのような態様を例示するために、定義されたCD46hi CD324 (TIC)又はCD46−/lo CD324 (NTG)の細胞表面表現型を伴う単一細胞をNTX CR腫瘍から単離し、FACSAriaフローサイトメーター(BD Biosciences社)を用いて、ウェルあたり468個、162個、54個、18個、6個又は2個の細胞の希釈で96ウェルプレートに直接に配置した。次いで、当該技術分野で標準とされる定義された無血清条件で細胞を37° Cで(CO2:5%、O2:5%)15日間培養し、次いで、コロニー形成が陽性のウェルを採点した(図16A)。最後に、L−Calc(商標)Software (Stemcell Technologies社)を使用して、a)開始した個々のウェルの数、b)各ウェルの開始に使用した細胞数、及びc)速度とは無関係に各希釈から陽性と評価されたウェルの数を含む実験設定情報を利用して、コロニー形成単位の頻度を決定した。
最も少なくは、ソーティングされた18個のCD46hl CD324細胞が播種されたウェルにコロニーが観察され、一方、ソーティングされたCD46−/lo CD324細胞からのコロニーを観察するために必要な最少細胞数は162であった。したがって、コロニー形成細胞は、TIC細胞集団では細胞7.3個/1,000個、NTG細胞集団では1.1個/1,000個の頻度で存在することが示された(図16A)。明確に述べると、CD46hi CD324 (TIC)細胞137個のうち1個の細胞が生体外でコロニーを形成したが、CD46−/lo CD324 (NTG)細胞では918個のうちわずか1個のみがコロニー形成能力を有していた。これらの結果は、結腸直腸癌細胞のCD46hl CD324分画においてコロニー形成細胞が有意に濃縮されたことを強く示しており、この活性は、生体内移植により上で実証された腫瘍形成能とも相関している。
結腸直腸腫瘍内のより特異的な腫瘍細胞亜集団の増殖能及び分化能を更に評価するために、CD46、CD324及びCD66cの様々な組み合わせを発現する細胞を、幹細胞の再生を支持する標準無血清培地条件を含むプレートにソーティングした( 上記Dylla et al., 2008)。単一細胞、生細胞、ヒトESA 細胞から以下の細胞集団をソーティングした。CD46−/lo(NTG; また、主にCD324)、CD46hi CD324、CD46hi CD324 CD66c及びCD46hi CD324CD66c。次いで、プレートに配置してから21日後に、これらのそれぞれの腫瘍細胞亜集団のコロニー開始能力、及びこれらのそれぞれの腫瘍細胞亜集団が可溶性のCD66c(すなわち、CEACAM6)タンパク質を生成する産生能を評価した。CD66cは、細胞表面から定期的に落とされるものであり、上述の生体外培地の上澄において容易に測定可能であり、代理の分化マーカーとして使用された。
具体的には、例えば、NTX腫瘍CR33からの2,000個の細胞を無血清培地条件において平底の96ウェルPrimariaプレート(BD Biosciences社)にソーティングし、上記の環境条件で培養した。21日後に、密に集合したコロニー(1つのコロニーにつき50個を越す細胞と定義する)が形成され、ウェル内で拡張していた。各ウェルのコロニーの数(白色の棒)を手作業で数え、上澄中のCD66cタンパク質の濃度(黒色の棒)をELISAにより測定した(図16B)。そのコロニー形成頻度は、生体内で観察された腫瘍形成性細胞の頻度とよく一致していた。すなわち、CD46−/lo細胞(すなわち、NTG細胞)は単一のコロニーのみを生成し(細胞数2,000分の1の頻度)、21日間の培養にもかかわらず可溶性CD66cタンパク質は培地に検出されなかった(図16B)。CD46hl CD324 細胞が生体内で腫瘍開始能を稀にしか示さないのと同じく、生体外でも少数のコロニーが観察され、培地に検出されたCD66cのレベルは比較的低かった。このことは、多くのNTX腫瘍においてCD46hl CD324 細胞の亜集団がCD66cを発現すること及びこれらの細胞が一般に短命のようであることを鑑みれば驚きに値しない。更には、CD66cの発現とは無関係に、CD46hl CD324 細胞は生体外でのほうがコロニーを形成でき、CD46−/lo若しくはCD46hi CD324 腫瘍細胞亜集団のいずれよりも有意に多くの可溶性CD66cを生成した(図16B)。加えて、その上澄に生成されたCD66cの量はコロニー数と相関しているようであり、最初にウェルに播種されたCD66とCD66の両方の細胞集団がCD66cの生成能力を有することを示唆した。このことは、CD66c細胞にCD66c 細胞の生成能力があるという、上で生体内で示された観察と一貫している。
コロニー形成は、生体内移植の代わりとしての役割を果たし、一つの腫瘍細胞亜集団に対する別の腫瘍細胞亜集団におけるTICの存在の有無を決定することを可能にし、一般に、候補となる幹細胞集団及び候補となる前駆細胞集団の可能性を評価することができる。しかし、最良の生体外細胞培養条件でさえ、生体内で遭遇する生理学的環境を模倣することはない。更には、これらの無血清培養条件は、一般に、自己再生を支持し、分化を防ぐが、分化を積極的に促進しない。
上記に定義した細胞表面表現型を伴う単一細胞の分化能をより正しく評価するために、当該技術分野で一般的なやり方で分化を積極的に促進するためにウシ胎児血清(FCS)を10%含むように培地条件を調整した。14日後に、培地を取り除き、その上澄中のCD66cの量をELISAにより評価した。倍地における、CD46hi CD324CD66c 細胞からのCD66cのレベルの上昇は予測されていたが、CD46hi CD324 CD66c 細胞が生体外で同レベルのCD66cを生成できたという事実は、CD46 CD324 CD66c 細胞がCD46hl CD324 CD66c 細胞に分化できるという考えと一致している。上記のような自己再生を支持する培地条件(すなわち、定められた無血清培地)での拡張はCD66cの産生を支持することはないようであるが、前記培地へのFCSの添加は分化を促進し、細胞のCD66c産生能を大いに助けた。上記の実証を鑑みるとおそらく当然のこととして、CD46hl CD324 CD66c”細胞は、多くの場合、自己再生能力(連続移植によって示される)を有する唯一の腫瘍細胞亜集団であり、生体外で最大のCD66c産生能を有する腫瘍細胞亜集団もまたCD46hl CD324 CD66c”であった。ウェルに播種されたそれらの細胞のCD66cタンパク質発現が陰性であったことを鑑みるとこの結果は予想外であったが、この細胞集団のTaqman qRT PCR分析は、CD66cの転写産物の存在をほとんど又は全く示さず(データは示されていない)、これらの結果は、CD46hl CD324 CD66c 細胞が最も高い増殖能及び分化能を有することを実証する生体内所見を裏付けている。このことはまた、 CD46hl CD324 CD66c細胞の生体外プレート培養がCD66cを発現する子孫を結果としてもたらすことも示唆しており、この過程は、分化を促進する細胞成長条件によって増強される。
FCSの添加により生体外で誘導したTICの分化は、上記のようにNTX結腸直腸癌細胞だけでなく膵臓癌TICでも観察された。血清なし及び血清ありでの14日間の膵臓ゼノグラフト腫瘍細胞培養の後、CD46hi細胞のパーセンテージ(これも主にCD324) はFCSが存在する条件下でNTX PA14及びPA20腫瘍細胞の双方で減少した(図16D)。 このデータは、分化の進んだNTX由来膵臓癌細胞と、より分化の程度が低いそれらとを生体外で区別するためのマーカーとしてのCD46及びCD324の使用を更に支持するものであり、いくつかの上皮細胞腫瘍型でTIC細胞とNTG細胞とを区別するためにこれらのマーカーが有用であるという主張を支持するものである。
この実施例は、TIC亜集団(例えばTPC及びTProg)がコロニーを開始する能力、及びタンパク質を分化する能力、並びに分化した細胞と通常関連づけられるタンパク質を産生する能力に基づいて、それらを生体外で区別できることを実証している。更には、分化を促進するFCSなし又はFCSありの培養条件もまた開発することが可能である。
実施例6
結腸直腸・膵臓腫瘍開始細胞は標準化学療法薬治療に対して比較的耐性である
癌幹細胞パラダイムの中心的教義は、概してCSCが化学療法及び放射線のような標準治療計画に対して耐性であるというものである。
イリノテカン(結腸直腸腫瘍の場合)及びゲムシタビン(膵臓腫瘍の場合)のような標準治療計画に対してそれぞれどの腫瘍細胞亜集団が最も耐性であるかを評価するために、結腸直腸又は膵臓のNTX腫瘍をマウスで開始し、次いで、腫瘍が180〜350mmに達した後にそれらのマウスをランダム化した。次いで、それらのマウスに約20日間、それぞれ15mg/kgのイリノテカン又は25mg/kgのゲムシタビンを腹腔内に週2回投与し、次いで、安楽死させて腫瘍切除し、細胞分析を行った。
腫瘍細胞亜集団の化学耐性を評価するために、各群の平均腫瘍体積がほぼ同等になるようにNTX結腸直腸腫瘍のマウスの生体内コホートを2群にランダム化した。次いで、それらの群に15mg/kgのイリノテカン又は同量のビヒクル緩衝液のいずれかを週2回投与した。週2回、注射による各投与の1日前に、腫瘍体積及び動物の健康状態をモニタリングし、記録した。結腸直腸腫瘍の場合、ビヒクルが投与された腫瘍は成長し続けたが、イリノテカンが投与された腫瘍には成長の遅延又は体積の減少が見られた(図17A)。イリノテカンが投与されたマウスの腫瘍の体積が減少し始めたとき、実験中の全てのマウスを安楽死させ、腫瘍を収穫し、単一細胞懸濁液に解離し、当該技術分野で認識されている技術を用いてフローサイトメトリーによりそれらの個々の細胞の表現型を分析した。生のヒト細胞のTPC表現型(CD46hl CD324 CD66c) を伴う細胞の頻度の測定は、イリノテカンが投与されたマウスからの腫瘍が、生理食塩水が投与されたマウスからのものと比較して2.5倍以上高いことを示した。これは、他の腫瘍細胞亜集団がイリノテカンに屈する一方で、TPC表現型(CD46hl CD324+ CD66c) を伴う細胞が、イリノテカンにより誘導される細胞毒性に抵抗することを示している。加えて、ビヒクルで処置した腫瘍のCD46hi CD324集団の残留細胞のほとんどはCD66cであったが、イリノテカンで処置したマウスのCD46hl CD324集団の残留細胞のほとんどはCD66c (すなわち、TPC又はCSC)であった(図17D)。このデータは、TPC表現型(CD46hi CD324CD66c)を伴う細胞が、TIC(すなわち、CD46hi CD324 CD66c)及びNTG細胞の 両方のTProgサブセットを含む他の腫瘍細胞亜集団より、イリノテカンが媒介する細胞毒性に対する耐性が強いことを示している。
代表的な膵臓NTX腫瘍でも類似した結果が観察され、この場合、ゲムシタビンでの処置経過中に残留膵臓NTX腫瘍を取り出し、それらの残留腫瘍細胞の亜集団をそれらのマーカー表現型に基づいて解析した。予想どおり、ビヒクルで処置したマウスからの膵臓腫瘍は弱まらずに成長し続け、一方、ゲムシタビンで処置したマウスからの腫瘍は、この化学療法剤に反応して体積を減少した(図18A)。次いで、収穫した腫瘍を解離し、それらを構成する単一細胞をフローサイトメトリーで分析した。イリノテカンで処置した直腸結腸癌のNTX腫瘍で見られたように、ゲムシタビンでの処置も、TICを示す腫瘍細胞発現マーカーの濃縮をもたらした(例えばCD46)。ビヒクル処置腫瘍とゲムシタビン処置腫瘍でのCD46の発現の代表的な例を図18Bに示す。結腸直腸癌の場合と同じく、膵臓TICも、標準治療の化学療法剤(ゲムシタビン)に対して比較的耐性のようである。
このように、全ての腫瘍細胞亜集団がイリノテカン又はゲムシタビンのような標準治療化学療法剤に同等に反応若しくは抵抗するとは限らないことを本発明者らは実証した。更には、結腸直腸癌ではTPC及びTProgの双方が腫瘍形成性であるが、TPC(すなわちCSC)は化学療法に対してより耐性であることを本発明者らは実証した。最も腫瘍形成性が高く化学耐性の強い腫瘍の亜集団を正確に特定するこの能力は、腫瘍形成性及び化学耐性と関連づけられる遺伝子及びタンパク質の同定を促進し、したがって、偉大な診断的及び/又は治療的有用性のある遺伝子/タンパク質の同定を可能にするであろう。
実施例7
結腸直腸腫瘍内細胞の階層の提案
上述のように、TProgは、それらがマウスにおいて腫瘍を生成する能力が限られていることを部分的な理由として、TICの亜集団として分類される。TProgはTPCの子孫であり、典型的には、限られた数の非自己再生的な細胞分裂の能力を有する。更には、例えば多系列分化能を維持するが、定められた細胞の運命を辿るまでは異なる増殖能力を有する、いくつかの特異的な前駆細胞集団に関しての造血細胞階層における前例がある。造血細胞系の前駆細胞の代表的な例は、短期再構成造血幹細胞(ST−HSC)及び多能性前駆細胞(MPP)である。これらの細胞集団は双方ともその造血細胞系を完全に再構成できるが、どちらもそれを永久に持続することはできず(すなわち、それらには真の幹細胞に元来備わる自己再生能力がない)、(ST−HSCの子孫である)MPPよりはST−HSCのほうが長期に渡ってそれを行える。これらの組織に由来する固形組織と腫瘍の両方における細胞の階層の定義は明確ではないが、特異的な細胞亜集団が異なる増殖能及び分化能を有する多くの器官及び腫瘍内に細胞の階層はおそらく存在する。結腸直腸癌内のTICのサブセットとしてTProgが存在するだけでなく、TProg細胞も更に分裂して初期腫瘍前駆細胞(ETP)及び後期腫瘍前駆細胞(LTP)になることができることをここに本発明者らは実証する。これらに対応するTProg細胞集団のそれぞれは、表現型(例えば、細胞表面マーカー)によって、及びそれらの増殖能及び分化能の漸進的減少によって、及びそれにより特定の腫瘍構造を反復するそれらの全体的な能力が異なることによって、区別することができる。
図19A及び19Bに示したように、上述の生体内データ及び生体外データ及び腫瘍の組織形態学的所見は、有意な分化能及びこれらの分化プログラムを実行する能力が存在する腫瘍においてTPCは正常な結腸幹細胞のアイデンティティを反映し得るという仮設を裏付けており、ここに本発明者らは、前記結腸幹細胞がESA CD46hi CD324 CD66c CD24 CD34のアイデンティティを有すると提案する。ここに本発明者らは、実質的に全ての結腸直腸腫瘍細胞はESA CD24 CD34であり、したがって、これらのマーカーが腫瘍細胞亜集団の同定にはほとんど役に立たないことを実証した。更に本発明者らは、CD46hi CD324 CD66c
及びCD66c細胞を部分的に含んでなる完全に異種の腫瘍をCD46hi CD324 CD66cが生成でき、 一方、CD46hi CD324 CD66c
細胞は腫瘍形成性であるもののCD46hl CD324 CD66c 細胞を生成する能力を有さず、連続移植を通じて腫瘍成長を効率的に駆動することはできないことを実証した。このデータは、a)連続移植に際して異種腫瘍を安定して生成する能力、b)最も高いコロニー形成能、及びc)生体外でCD66c細胞及びタンパク質を生成する潜在能力、を有する細胞がCD46hi CD324 CD66c”細胞であるという所見とともに、CD46hi CD324 CD66c細胞が限られた増殖キャパシティ及び増殖能を有するCD46hl CD324 CD66cのドーターであるという仮説を裏付けている。細胞がCD324の発現を失うにつれて生じる生体内腫瘍形成性及び生体外コロニー形成能の更なる減少及びCD66cの生成能力の減少は、折に触れ実証してきたように、CD46hl CD324 CD66 細胞が、いくらかの残留的な増殖能力を有するが概して自己再生能力を有さない後期腫瘍前駆細胞(LTP)集団を表しているという仮説を裏付けている。最後に、CD46細胞がCD324細胞でもあり、広くはCD66cでもあることは、図19Aに図示した細胞階層を裏付けている。これらのNTG細胞は、終末分化した子孫をおそらく表し、結腸においては分泌系列の杯細胞(G)及び腸内分泌細胞(eE)又は吸収系列の腸内細胞(E)を含む。CD46細胞は結腸直腸組織に典型的な終末分化した分泌細胞型及び/又は吸収細胞型に帰属する多くの遺伝子を発現するので、これらの単離された細胞亜集団の遺伝子発現は、この仮説を裏付けている(例えば、図20AのMUC2及びMUC20)。
上記実施例は、驚くべきことに、マウスに移植したときのそれらの腫瘍生成能力の異なりによって特徴づけられ且つ一意のマーカー表現型と関連づけられる腫瘍開始細胞の多集団の存在を立証している。更には、TICの特異的亜集団は腫瘍を自己再生する能力及び完全に再構成する能力において異なる。本明細書で定義したような腫瘍永続細胞(TPC)は、少数のよく定義された細胞での連続移植及び結果として得られた腫瘍異種性の分析によって確かめられたときにそれらが示す自己再生能力において、広く認識されている癌幹細胞(CSC)の定義を満たしている。逆に、腫瘍前駆細胞(TProg)は、一次移植では腫瘍形成性であるが、自己再生能力が欠如しているようであること及び分化能が限られている場合があることから、真のTPC又はCSCとは異なる。上記実施例は、漸進的に増殖能及び分化能が減少する特異的なTProg細胞集団の存在(ETP及びLTP)もまた実証している。癌及び潜在的には正常な組織の生物学との関連においてのこれらの細胞アイデンティティの知識は、診断及び治療に有用なタンパク質及び分子の同定にそれらのアイデンティティを使用することを可能にする。図19A及び19Bに図示し、且つ本開示において立証したように、腫瘍形成性細胞及びNTG細胞の細胞集団を含む異種腫瘍はTPCを提供し、その子孫はCD46hi CD324 CD66c表現型から進行して、CD66cの発現を獲得し(ETPのアイデンティティを採る)、やがてCD324(LTP表現型)の発現を失う。最後に、終末分化には、それに付随してCD66c及びCD46の損失が起こるようである。
実施例8
濃縮された腫瘍開始細胞集団からの予想される診断標的及び治療標的の同定
例えば、確立した結腸直腸NTX 腫瘍株SCRx−CR4を実施例1に記載したように継代し、免疫不全マウスで腫瘍を開始するために使用した。平均全身腫瘍組織量が約300mmに達した後、それらのマウスをランダム化し、少なくとも20日間、15mg/kgのイリノテカン又はビヒクル対照(PBS)を週2回投与し、屠殺した。次いで、概ね実施例2に記載した技法を用いて、腫瘍を取り除き、TPC、TProg及びNTG細胞をそれぞれ単離した。より具体的には、細胞集団はFACSによって単離し、直ちにペレット化し、Qiagen RLTplus RNA溶解緩衝液(Qiagen社)中で溶解した。使用するまで、その溶解液は−80℃で保管した。解凍し、Qiagen RNeasy単離キット(Qiagen社)を使用し、その販売元の説明書にしたがって全てのRNAを抽出し、Nanodrop (Thermo Scientific社)及び更にBioanalyzer 2100 (Agilent社)により、それらの販売元のプロトコル及び推奨機器設定を用いて定量化した。 このようにして、遺伝子のシークエンシング及び分析に好適なトータルRNA製剤を得た。
ビヒクル又はイリノテカンで処置したマウスから上述のように単離したそれぞれの細胞集団から得られたトータルRNA試料は、Applied Biosystems SOLiD 3.0(オリゴライゲーション/検出によるシークエンシング)次世代シークエンシングプラットフォーム(Life Technologies社)を使用して、全トランスクリプトームシークエンシングのために調製し、1つの試料につき> 5 ngのトータルRNAから始めた。ヒトゲノムからの34,609の遺伝子にマッピングしたSOLiDプラットフォームにより生成されたデータは、全ての試料における転写産物発現レベルの検証可能な測定値とともに関心対象の転移産物を検出することができた。
一般に、前記SOLID3次世代シークエンシングプラットフォームは、ビードと結合したクローン増幅RNA/DNAフラグメントの平行シークエンシングを可能にする。次いで、染料で標識付けしたオリゴヌクレオチドでのライゲーションによるシークエンシングを使用して、試料に存在する各フラグメントの50のベースリードを生成し、各試料につき少なくとも合計5000万リードとし、はるかに正確に前記ゲノムのタンパク質のmRNA転写レベルの発現を表した。SOLID3プラットフォームは発現だけでなく、SNP、既知及び未知の代替スプライシングイベントも捉えることができ、リードカバレッジ(ゲノムの位置に特異的にマッピングされたリード)のみに基づく新しいエキソンの発見の可能性も捉えることができる。したがって、この次世代プラットフォームは、転写レベルの発現における差異の決定、及びそれらの発現されたmRNA転写産物の特定のスプライスの変異型の差異又は優先性の決定を可能にした。更には、Applied Biosystemsの修正された全トランスクリプトームプロトコルを用いたSOLID3プラットフォームでの分析で必要とされる増幅前の開始材料はわずか約5ngであった。このことは、ソーティングされた細胞集団からトータルRNAを抽出する場合に細胞のTPCサブセットの数が例えばNTG又はバルク腫瘍よりはるかに少なく、したがって得られる使用可能な開始材料の量が非常に少ない場合、重要なことである。
業界の標準慣行にしたがい、重複実行したSOLID3プラットフォームからのシークエンシングデータを正規化及び変換し、倍比を算出した。このようにして、SCRx−CR4腫瘍から単離したNTG細胞(白)、TProg(灰色)及びTPC(黒)の転写遺伝子発現レベルを測定した(エキソンにマッピングされた100万個当たりのリード(RPM_エキソン)として表した)。この方法による全トランスクリプトームデータの分析は、いくつかのタンパク質及び関心対象の潜在治療標的(APCDD1、Notum、REGIA及びCD46のスプライス変異型を含む)を同定した。このデータの分析は、これらの関心対象のタンパク質が、ビヒクル及びイリノテカンで処置されたマウスにおいて、NTG細胞での発現より少なくとも2倍高い転写レベルで上方調節されたことを示した(図20A〜20C)。この方法で同定された期待される診断及び治療標的転写産物の代表的な例としては、NOTUM (図20A)、APCDD1(図20B)、代表的な膵臓タンパク質(図20C)及びMUC20が挙げられる。TPCにおけるこれらの転写産物の発現は、これらのタンパク質がそのタンパク質レベルでTPC細胞によって優先的に発現される(すなわち、APCDD1)又は分泌される(すなわち、代表的な膵臓タンパク質及びNOTUM)これらのタンパク質がTPCの維持及び/又は自己再生にとって非常に重要であることを含意している。同時に、NTG細胞集団によって優先的に発現される転写産物を同定することも可能であり(例えば、図20DのMUC20)、それらは終末分化した細胞を同定するためにマーカーとして使用することが可能であり、またそうすることによって、それらのバルク腫瘍細胞集団で腫瘍が枯渇している陰性選択が可能になるので、より腫瘍形成性の高い構成成分をより容易に特定及び/又は標的化することができる治療計画が可能となる。更に、NTG細胞は一般にTProg及びTPC細胞より多いので、これらの細胞集団によって発現されるタンパク質はより容易に検出され、したがって、疾病の重さ及び/又は状態のバイオマーカーとしての役割を果たすであろう。
当業者は、本発明がその意図又は中心的属性から逸脱せずに他の特定の形状においても具現化され得ることを更に理解するであろう。これに関し、本発明のこれまでの記述は、その代表的な実施形態のみを開示するものであって、他のバリエーションは本発明の範囲内にあるとみなされるものと理解されたい。したがって、本発明は本明細書に記述した具体的な実施形態に限定されない。むしろ、本発明の範囲及び内容を示すものとして、特許請求の範囲を参照すべきである。

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