JP2001057828A - 癌性疼痛モデル動物及びそれを用いた癌性疼痛の強さの評価方法 - Google Patents

癌性疼痛モデル動物及びそれを用いた癌性疼痛の強さの評価方法

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JP2001057828A
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cancer pain
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知比古 鈴木
Toshiaki Tanaka
利明 田中
Kaoru Nakao
薫 中尾
Yasushi Kuraishi
泰 倉石
Ikuo Saiki
育夫 済木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 癌性疼痛を評価するための癌性疼痛モデル動
物及びそれを用いた癌性疼痛の強さの評価方法並びにそ
れらを用いた物質の癌性疼痛鎮痛効果を測定する方法を
提供すること。 【解決手段】 癌又は腫瘍を有する、癌性疼痛の強さを
評価するための癌性疼痛モデル動物、及びこの癌性疼痛
モデル動物に侵害刺激を与え、該侵害刺激に対する逃避
行動を観察することから成る癌性疼痛の強さの評価方法
を提供した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、癌性疼痛を評価す
るための癌性疼痛モデル動物及びそれを用いた癌性疼痛
の強さの評価方法並びにそれらを用いた物質の癌性疼痛
の鎮痛効果の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】癌患者において最も頻度の高い症状は痛
みであり、癌患者の38%が痛みを訴える(Fole
y,New Eng.J.Med.,313,84,1
985)。末期患者だけを対象にすると約69%の患者
が痛みを持っていると報告されている(Saunder
s,The Manag.Term.Malignan
tDis.,232,1984)。癌患者のQuali
ty of Life(QOL)を保持しながら痛みを
除去するには癌性疼痛の発生機序の解明とその新しい鎮
痛薬の開発が急務であるが、癌性疼痛の機序をヒトで研
究することは困難である。これまで癌性疼痛を適切に評
価できる動物モデルは無く、癌性疼痛の発生機序につい
て本格的に取り組んだ基礎研究も動物実験もない。ま
た、癌性疼痛に有効な鎮痛薬の評価系もなかった。
【0003】このような評価系に近いものとして、これ
までに座骨神経切断後のニューローマ形成時における動
物の活動度と体重変化を調べた報告(Chudler,
Pain,17,341,1983)があるが、疑似手
術群との差が体重変化で認められるのみで、疼痛との関
連は全く調べられていない。また、DBA/2マウスに
リンフォーマを移植した報告(van Loo,La
b.Anima.,31,318,1997)もある。
本報告では腫瘍細胞移植によると考えられる幾つかの行
動学的変化がマウスに見られているが、疼痛との関連が
明確ではない上に、通常用いられる鎮痛薬がこの行動学
的指標の変化を改善しないことから、癌性疼痛動物モデ
ルとしては充分ではない。また、マウスやラットの脊髄
に腫瘍細胞を移植した報告がある(Wu,Pain,5
6,203,1994)が、この報告ではこの移植によ
り腫瘍細胞からのカテコラミン放出が原因と考えられ
る、疼痛反応とは逆の鎮痛効果が得られたと報告してい
る。
【0004】癌による痛みには様々な原因があるといわ
れ、例えば癌組織による骨への転移、末梢神経や臓器へ
の浸潤、大血管への浸潤および圧迫、更に心因的要因な
どが考えられている(Bonica,Adv.Pain
Res.Ther.9,589,1985;Gron
d,Pain,64,107,1996)。しかし癌に
よる痛みは単純な一つの原因で起こるのではなく、特に
転移巣がある場合、非常に複雑で痛みが広範にわたる
(花岡、痛みの概念の整理、82、1996)。また、
癌の転移が進行した末期癌では多くの患者が疼痛を訴え
ることから、癌の転移・浸潤と疼痛には深い関連がある
と言われる。
【0005】ヒト以外の正常動物を用いて痛みを測定す
る方法は、主に、動物に外部から熱刺激、電気刺激、化
学的刺激や圧刺激など侵害刺激を与え、それらに対する
動物の反射や逃避反応を含む適応行動を仮性疼痛反応と
して観察することで行われている(高倉ら、痛みの神経
科学、245、1997)。しかしこれらの侵害刺激は
癌による痛みの原因の一部でしかなく、癌性疼痛を反映
する動物モデルとは言いがたい。また、近年、神経因性
疼痛を含む慢性痛の動物モデルが数多く報告されている
(G.J.Bennet&Y.K.Xie、Pain、
33:87−107、1988:J.X.Hao、Pa
in、45:175−185、1991)が、これらも
癌の転移・浸潤も包括した癌性疼痛モデルとしては充分
なものではない。
【0006】一方、癌や腫瘍そのものの動物モデルは転
移・浸潤のモデル動物も含め数多く報告されており(ヌ
ードマウスと抗癌剤評価,野村ら編,1991:がんの
浸潤・転移研究マニュアル,がん転移研究会編、199
4)、既に抗腫瘍薬や腫瘍転移抑制薬等の研究開発に用
いられている。しかしながら、これら腫瘍動物モデルを
痛みと関連づけ、更に癌性疼痛モデルとしたものは無
い。
【0007】痛みの強い末期癌患者において、痛みの薬
物治療の主軸はモルヒネであるが、モルヒネなどのオピ
オイド鎮痛薬は依存性や多くの副作用を有するため、医
師は臨床での使用において大きな制約を受ける。また、
癌性疼痛の中で、モルヒネ抵抗性の痛みが一割あると言
われている(Warncke,Pain,57,10
9,1994;Foley,Scientific A
merica,275,164,1996)。従って、
モルヒネに代わる癌性疼痛に有用な鎮痛薬の開発が望ま
れているが、いまだ実現には至っていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、癌性
疼痛を評価するための癌性疼痛モデル動物及びそれを用
いた癌性疼痛の強さの評価方法並びにそれらを用いた物
質の癌性疼痛鎮痛効果を測定する方法を提供することで
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、鋭意研
究の結果、癌又は腫瘍を有するモデル動物を用いて癌性
疼痛の強さを評価することが可能であることを見出し、
本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は、癌又は腫瘍を有す
る、癌性疼痛の強さを評価するためのヒト以外の癌性疼
痛モデル動物を提供する。また、本発明は、上記本発明
の癌性疼痛モデル動物に侵害刺激を与え、該侵害刺激に
対する反応を観察することから成る癌性疼痛の強さの評
価方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の癌性
疼痛モデル動物の、癌性疼痛に起因する行動を観察する
ことから成る癌性疼痛の強さの評価方法を提供する。さ
らに、本発明は、癌性疼痛の鎮痛効果を評価すべき物質
を上記本発明の癌性疼痛モデル動物に投与し、上記本発
明の方法で癌性疼痛を評価することにより該物質の癌性
疼痛の鎮痛効果を測定することから成る、物質の癌性疼
痛の鎮痛効果の評価方法を提供する。さらに本発明は、
上記評価方法により得られる癌性疼痛に対する鎮痛効果
を有する物質を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明における「癌性疼痛」と
は、原発腫瘍、転移腫瘍をとわず、癌または腫瘍が関与
する全ての痛みを包含するものである。
【0012】本発明の癌性疼痛モデル動物の動物種とし
ては、ヒト以外の哺乳動物であれば何ら限定されるもの
ではなく、例えば、マウス、ラット、スナネズミ、モル
モット、ウサギ、ブタ、イヌ、サルなどがあげられる
が、齧歯類が好ましく、特にマウスが好ましい。
【0013】本発明に用いられる癌または腫瘍の形成は
自然発生であっても人工的であっても良いが簡便な動物
モデルとしては人工的なものであることが望ましい。ま
た人工的に癌・腫瘍を形成させる方法は化学物質の暴露
を長期にわたって行う方法なども可能であるが、好まし
くは可移植性の腫瘍細胞または腫瘍組織を移植する方法
を用いる。さらに好ましくは可移植性の培養腫瘍細胞を
移植する。
【0014】癌又は腫瘍の由来は何ら限定されるもので
はなく、いずれの器官又は組織由来のものであってもよ
く、例えば気道、肺、舌、食道、胃、腸、肝臓、腎臓、
膵臓、脾臓、膀胱、乳房、リンパ節、卵巣、精巣、脳、
および皮膚由来の癌又は腫瘍を挙げることができる。こ
れらのうち、癌性疼痛の強さの評価を容易かつ正確に行
えることから、メラノーマ細胞等の、皮膚由来の癌又は
腫瘍細胞を用いることが好ましい。また、癌又は腫瘍の
由来動物は、特に限定されず、上記したモデル動物の動
物種と同様な種由来の癌又は腫瘍を用いることができる
が、移植・生着または転移を容易に成立させるために、
モデル動物の種と同種の動物由来の癌又は腫瘍を移植す
ることが好ましい。もっとも、ヌードマウスやSCID
マウス等の免疫不全動物を用いる場合は何ら限定されな
い。
【0015】癌又は腫瘍細胞の移植は、皮内、皮下、静
脈内、経気管的など様々な経路で、肺、脾臓、肝臓、腎
臓、皮膚、四肢、脳など様々な部位に移植する方法がと
られるが、癌性疼痛の強さの評価を容易かつ正確に行え
ることから足、特に足蹠、さらには後足蹠皮内に移植す
ることが好ましい。また、移植・生着または転移を容易
に成立させるために、癌又は腫瘍細胞の由来器官又は組
織と同じ器官又は組織に移植することが好ましい。従っ
て、最も好ましい態様では、皮膚癌細胞を足蹠皮下又は
皮内に移植する。
【0016】移植する癌又は腫瘍細胞の数は、特に限定
されず、用いる動物種や癌又は腫瘍の種類等に基づき適
宜選択されるが、例えばマウスの後足蹠にメラノーマ細
胞を移植する場合には、通常、104〜106個、好まし
くは1x105〜5x105個程度の細胞を緩衝液中に浮
遊させた液を皮下注射することが好ましい。
【0017】癌細胞又は腫瘍細胞を移植した場合、移植
された癌細胞又は腫瘍細胞が生着した後の方が癌性疼痛
が大きくなり、疼痛に対して鋭敏になるので、鎮痛効果
の評価等をより高感度かつ正確に行うことができるので
好ましい。癌細胞又は腫瘍細胞の生着による疼痛の増大
は、下記実施例において具体的に示されるように、移植
後1週間程度から観察され始め、移植約2週間後には疼
痛は大幅に増大する。従って、癌性疼痛モデル動物とし
ては、癌又は腫瘍細胞移植後1週間以上、さらに好まし
くは2週間以上経過したものが好ましい。
【0018】上記本発明の癌性疼痛モデル動物の癌性疼
痛の強さの評価は、癌性疼痛モデル動物に侵害刺激を与
え、該侵害刺激に対する反応を観察することにより行う
ことができる。例えば、侵害刺激開始から逃避行動が起
きるまでの時間(潜時)を測定することにより癌性疼痛
の強さを評価することができる。すなわち、癌性疼痛が
強い程、潜時が短くなるので、潜時を測定することによ
り、その癌性疼痛モデル動物の疼痛の強さを評価するこ
とができる。なお、侵害刺激としては、熱刺激、電気刺
激、化学的刺激及び圧刺激等を挙げることができる。こ
れらのうち、特に熱刺激が好ましい。
【0019】癌性疼痛モデル動物の癌性疼痛の強さの評
価はまた、癌性疼痛モデル動物の、癌性疼痛に起因する
行動を観察することによっても行うことができる。例え
ば、癌性疼痛モデル動物が、癌又は腫瘍を移植された部
位を舐める頻度を測定することにより癌性疼痛の強さを
評価することができる。すなわち、癌性疼痛が強い程、
移植部位を舐める頻度が高くなるので、舐める頻度を測
定することにより癌性疼痛の強さを評価することができ
る。
【0020】これらの方法により、癌性疼痛モデル動物
の癌性疼痛の強さを測定することができるので、本発明
の癌性疼痛モデル動物を用いて、物質の鎮痛効果の有無
及び大きさを測定することができる。すなわち、複数の
本発明の癌性疼痛モデル動物を2群に分け、一群に鎮痛
効果を評価すべき物質を投与し、他の群を対照群として
両群の癌性疼痛の強さを上記の方法により測定する。物
質が鎮痛効果を有する場合には、投与群において癌性疼
痛が弱くなるので、該物質が鎮痛効果を有するか否かを
調べることができ、また、癌性疼痛がどの程度弱くなる
かを調べることにより鎮痛効果の大きさを測定すること
ができる。従って、本発明の方法により種々の物質につ
いて、その癌性疼痛に対する鎮痛効果を評価することに
より、癌性疼痛に対する鎮痛薬として利用可能な物質を
スクリーニングすることができ、癌性疼痛に対する鎮痛
効果を有する物質を得ることができる。なお、本明細書
において、「鎮痛効果の評価」とは、鎮痛効果を有する
か否かを調べること及び鎮痛効果の大きさを調べること
の両者が包含される。
【0021】本発明により得られる癌性疼痛の鎮痛効果
を有する物質を、癌性疼痛の治療に用いることができ
る。上記物質を癌性疼痛治療剤として使用する際には、
一種のみならず数種を有効成分として使用できる。これ
らの化合物は、医薬品用途にまで純化され、必要な安定
性試験に合格した後、そのまま、または公知の薬理学的
に許容される酸、担体、賦形剤などと混合した医薬組成
物として、経口または非経口的に投与することができ
る。投与形態として、例えば注射剤、錠剤、カプセル
剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などによる経口剤、座剤
による経腸投与等を挙げることができる。上記医薬組成
物は、有効成分を1〜90重量%、より好ましくは30
〜70重量%含有することが望ましい。その使用量は症
状、年齢、体重、投与方法等に応じて適宜選択される
が、成人に対して、注射剤の場合、有効成分量として1
日0.0001 mg〜1gであり、経口剤の場合、0.005 mg〜
10gであり、それぞれ1回または数回に分けて投与す
ることができる。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づきより具体的に
説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定される
ものではない。
【0023】実施例1 雄性C57BLマウス(約25g)は、1ケージ当たり
1013匹の状態で、室温22±1℃、湿度55±10
%、12時間明暗サイクル(明期:午前7時午後7時)
の環境下で飼育した。飼料(CE-2:日本クレア製)
と水は自由に摂取させた。
【0024】B16-BL6メラノーマ細胞(Sat
o,Jpn.J.Cancer Res.,83,10
81,1992)は7.5%Fetal Bovine
Serum、vitamin solution,s
odium pyruvate、非必須アミノ酸および
L-glutamineを含んだEagles's mi
nimal essential mediumで単層
培養した(Hart,Am.Assoc.Pathol
ogists,93,587,1979)。このメラノ
ーマ細胞を、20mL phosphate-buffe
red saline中に2×105個となるように調
整し、マウスの片側後肢の足蹠に、ディスポーザブル
0.5mL注射筒を用いて皮下移植した。対側後足に
は、対照として20μlの PBSを投与した。メラノ
ーマ細胞移植後経日的に後肢輻射熱刺激法(paw-r
adiant heat法)により、熱刺激に対する侵
害受容(疼痛)反応を測定した。すなわち、熱刺激鎮痛
検定装置(Ugo Basil,Milan,Ital
y)を用いて、拘束下にマウス後肢足蹠に一定の強度の
輻射熱を当てて惹起される逃避行動を仮性疼痛反応の指
標とし、刺激開始からの逃避行動が起こるまでの潜時を
自動的に測定した。輻射熱の強度は無処置下での平均潜
時が約13秒となるように設定し、cut off t
imeは21秒とした。反応潜時を3回測定し、それら
の平均値を測定値とした。結果を図1に示した。メラノ
ーマ細胞移植後5日目頃から移植側後肢の侵害受容反応
の潜時が短縮し始め、1週間後には反応潜時の短縮(侵
害受容反応が増大)が軽度ながら有意になり、その後数
日間比較的安定した反応を示した後、10日目頃から反
応潜時が再び更に短縮し始め、2週間目には急速,顕著
な反応潜時の短縮が見られた。PBSを注射した対側後
足および無処置群の後足の侵害受容反応も図1に示した
が、観察期間中明らかな変化は見られなかった。メラノ
ーマ細胞移植後1週間目の反応潜時の変化は、カラゲニ
ン炎症による反応潜時の変化とほぼ同程度であった(図
1)が、2週間目の反応潜時の変化は、カラゲニン炎症
による変化とは明らかに異なり、極めて著しいものであ
ったことから、これまで知られている薬物誘発痛覚過敏
モデルとは、全く異なる癌性疼痛モデルであることが明
らかとなった。
【0025】実施例2 癌組織中の液性因子が生体の疼痛反応を増大する可能性
をしらべるため、癌組織抽出液を調製した。すなわち、
メラノーマ細胞移植後8日目および16日目に、癌移植部
位の組織を摘出し、組織重量の9倍の超純水を加えて、
ホモジナイズ (2500 rpm, 10 stroke)した。ホモジネー
トを遠心分離 (25000×g, 20 min)し上清を得た。ここ
までの抽出操作は全て4 ℃で行ない、上清は凍結乾燥
後、実験に使用するまで-80 ℃で保存した。凍結乾燥前
の上清の容量に対して10分の1量のsalineに溶解したも
のをマウスの後肢足蹠に20μL投与した。その結果、移
植後8日目の癌移植部組織抽出液は、反応潜時に有意な
影響を及ぼさなかったが、移植後16日目の癌移植部組織
抽出液が反応潜時を有意に短縮した(図2)。反応潜時
短縮は、投与後30分がピークで、1時間後にほぼ投与前
のレベルに回復した。このことから癌組織中の液性因子
が生体の疼痛反応を引き起こす、あるいは増大すること
が確認された。
【0026】実施例3 実施例1に示した同様の方法を用い、雄性C57BLマ
ウスの片側後肢の足蹠にB16-BL6メラノーマ細胞
を皮下移植した。侵害受容反応の反応潜時が軽度で安定
していた移植後8日目、および反応潜時の著しい短縮が
安定して観察された移植後16日目にモルヒネ(三共)
を単回投与して鎮痛効果を調べた。モルヒネは生理食塩
水(大塚製薬製)に溶解し、皮下に投与した。図3に結
果を示した。メラノーマ細胞移植により短縮した反応潜
時は、移植後8日目、16日目ともにモルヒネの投与用
量に依存して延長し、8日目では1mg/kgで、16
日目では5mg/kgで反応潜時をほぼ健常値のレベル
にまで回復させた。
【0027】このことから当該モデルを用いて癌性疼痛
の除痛を目的とした医薬品のスクリーニング、評価が可
能であることが確認された。
【0028】実施例4 実施例1に示した方法と同様に、雄性C57BLマウス
の片側後肢の足蹠にB16-BL6メラノーマ細胞を皮
下移植した。対側後足には,対照として20μlの P
BSを投与した。メラノーマ細胞移植後経日的に本モデ
ルの自発痛の指標として、マウスの後肢の舐め行動を測
定した。足舐め行動の観察はマウスを、四つに仕切った
アクリル製観察ケージ(22cm×22cm×24c
m)に入れ、ビデオカメラを用いてケージの下からマウ
スの行動を無人環境下に1時間撮影し、ビデオの再生に
より行った。なお、マウスは実験環境に順応させるため
に、実験前に少なくとも1時間観察ケージ中に放置し
た。その結果を図4に示した。メラノーマ細胞移植後足
の舐め行動は、移植後18日目から、PBSを注射した
対側後足に比較して有意に増加した。このことから本モ
デルが、腫瘍を移植した部位への自発的仮性疼痛反応を
指標にすることでも癌性疼痛を評価できる動物モデルで
あることが示された。
【0029】以上の結果から、癌または腫瘍に関連した
疼痛反応を発現させることを特徴とするモデル動物が作
成可能であることが明らかとなった。また、当該モデル
動物を用いて、物質の癌性疼痛に対する鎮痛効果の評価
が可能であることが判明した。
【0030】
【発明の効果】本発明により、癌性疼痛を評価するため
に用いられる癌性疼痛モデル動物及びそれを用いた癌性
疼痛の強さの評価方法が初めて提供された。本発明の癌
性疼痛モデル動物およびその動物を用いた鎮痛薬の評価
方法によって、癌または腫瘍に関連する痛みに対する薬
物の鎮痛効果を判定し、それらの痛みを治療するための
医薬品、またはそれら痛みにともなう疾患(精神疾患、
心疾患等)を予防もしくは治療するための医薬品を開発
する目的で薬剤のスクリーニングが可能となり、更に癌
性疼痛の発生機序についての基礎的研究を行うモデル動
物を提供することとなり、癌性疼痛に対する鎮痛薬の開
発にきわめて大きな貢献を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調べた、メラノーマをマウスに移植
した後の疼痛閾値の変化を示す図である。
【図2】実施例2で調べた、癌組織中の液性因子による
生体疼痛反応への影響を示す図である。
【図3】実施例3で調べた、癌移植による疼痛閾値低下
に対するモルヒネの効果を示す図である。
【図4】実施例4で調べた、メラノーマを移植した後肢
への足舐め行動の変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中尾 薫 神奈川県鎌倉市手広1111番地 東レ株式会 社基礎研究所医薬研究所内 (72)発明者 倉石 泰 富山県婦負郡婦中町蛍川68―27 (72)発明者 済木 育夫 富山県婦負郡婦中町蛍川151―26 Fターム(参考) 2G045 AA26 AA29 CB02 CB17 CB30 FA18

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 癌又は腫瘍を有する、癌性疼痛の強さを
    評価するための癌性疼痛モデル動物。
  2. 【請求項2】 移植された癌又は腫瘍を有する請求項1
    記載の癌性疼痛モデル動物。
  3. 【請求項3】 移植された皮膚癌を有する請求項2記載
    の癌性疼痛モデル動物。
  4. 【請求項4】 前記皮膚癌を足に移植された請求項3記
    載の癌性疼痛モデル動物。
  5. 【請求項5】 癌又は腫瘍移植後1週間以上経過した請
    求項1ないし4のいずれか1項に記載の癌性疼痛モデル
    動物。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか1項に記載
    の癌性疼痛モデル動物に侵害刺激を与え、該侵害刺激に
    対する逃避行動を観察することから成る癌性疼痛の強さ
    の評価方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし5のいずれか1項に記載
    の癌性疼痛モデル動物の、癌性疼痛に起因する行動を観
    察することから成る癌性疼痛の強さの評価方法。
  8. 【請求項8】 癌性疼痛の鎮痛効果を評価すべき物質を
    請求項1ないし5のいずれか1項に記載の癌性疼痛モデ
    ル動物に投与し、請求項6又は7記載の方法で癌性疼痛
    の強さを評価することにより該物質の癌性疼痛の鎮痛効
    果を測定することから成る、物質の癌性疼痛の鎮痛効果
    の評価方法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の評価方法により得られる
    物質。
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