本実施形態における水晶振動子は、図1及び図2に示されているように、基板110と、基板110の上面に接合された水晶素子120と、水晶素子120を気密封止するための蓋体130と、基板110の貫通孔H内に設けられた感温導体部115とを含んでいる。このような水晶振動子は、電子機器等で使用する基準信号を出力するのに用いられる。
基板110は、矩形状であり、上面で実装された水晶素子120を実装するための実装部材として機能すると共に、貫通孔H内部に感温ペーストを充填することで設けられた感温導体部115を設けるための部材として機能するものである。基板110の一辺に沿って、水晶素子120を接合するための電極パッド111が設けられている。基板110の下面の四隅には、外部端子112が設けられている。また、四つの外部端子112の内の二つが、水晶素子120と電気的に接続されて、水晶素子120の入出力端子として用いられる。
基板110の中央付近で、基板110の上下方向に貫通した貫通孔Hが設けられている。貫通孔Hの上開口部及び下開口部は、平面視すると、円形状になっている。貫通孔H内には、図2に示されているように、感温ペーストが充填されることで感温導体部115が設けられている。感温導体部115の上面及び下面には、感温導体電極116が設けられている。感温導体電極116は、第一感温導体電極116a及び第二感温導体電極116bによって構成されている。また、四つの外部端子112の内の残りの二つが、感温導体部115と電気的に接続されている。
基板110は、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板110は、絶縁層を一層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。基板110の上面及び下面には、上面に設けられた電極パッド111と下面の外部端子112とを電気的に接続するための配線パターン113がそれぞれ設けられている。また、基板110の上面及び下面には、上面及び下面に設けられた感温導体電極116と下面の外部端子112とを電気的に接続するための接続パターン118がそれぞれ設けられている。また、基板110の上面には、第一電極パッド111aと第三電極パッド111cとを電気的に接続するための第三配線パターン113cが設けられている。
基板110の電極パッド111は、図1〜図3に示すように水晶素子120を実装するために用いられている。電極パッド111は、図1〜図3に示すように、第一電極パッド111a、第二電極パッド111b及び第三電極パッド111cによって構成されている。また、第三電極パッド111cは、水晶素子120が第一電極パッド111a及び第二電極パッド111b上に実装されている場合には、水晶素子120の外周縁が基板110と接触することを抑制するために用いられている。第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bは、図3に示すように、基板110の一辺に沿って設けられており、第三電極パッド111cは、基板110の一辺と対向する一辺に沿って設けられている。また、第二電極パッド111bと第三電極パッド111cとは、基板110の上面の対角の位置に設けられている。また、電極パッド111は、基板110の上面及び下面に設けられた配線パターン113及び基板110の角部に設けられた導体部114を介して、外部端子112と電気的に接続されている。外部端子112は、基板110の下面の四隅に、基板110の外周縁に沿って設けられている。
電極パッド111は、図4に示すように、第一電極パッド111a、第二電極パッド111b及び第三電極パッド111cによって構成されている。また、外部端子112は、図4(b)に示すように第一外部端子112a、第二外部端子112b、第三外部端子112c及び第四外部端子112dによって構成されている。配線パターン113は、図4に示すように、第一配線パターン113a、第二配線パターン113b及び第三配線パターン113cによって構成され、導体部114は、第一導体部114a、第二導体部114b及び第三導体部114cによって構成されている。第二電極パッド111bと第二外部端子112bとは、基板110の上面及び下面に設けられた第一配線パターン113aと、基板110の角部に設けられた第一導体部114aにより接続されている。第三電極パッド111cと第四外部端子112dとは、基板110の上面及び下面に設けられた第二配線パターン113bと、基板110の角部に設けられた第二導体部114bにより接続されている。また、第一電極パッド111aと第三電極パッド111cとは、基板110の上面に設けられている第三配線パターン113cにより電気的に接続されている。よって、第一電極パッド111aは、第三電極パッド111cを介して第四外部端子112dと電気的に接続されることになる。
外部端子112は、外部の電子機器等を構成する実装基板上に実装するために用いられている。外部端子112は、基板110の下面の四隅に設けられている。外部端子112の内の二つの端子は、基板110の上面に設けられた一対の電極パッド111とそれぞれ電気的に接続されている。また、電極パッド111と電気的に接続されている外部端子112は、基板110の下面の対角に位置するように設けられている。また、第三外部端子112cが、外部の実装基板上の基準電位であるグランド電位と接続されている実装パッド(図示せず)と接続されている。
また、電極パッド111及び外部端子112は、基板110に沿って設けられた形状となっている。ここで基板110を平面視したときの長辺の寸法が、1.2〜2.5mmであり、短辺の寸法が、1.0〜2.0mmである場合を例にして、電極パッド111及び外部端子112の大きさを説明する。第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bの長辺の長さは、0.20〜0.60mmであり、短辺の長さは、0.10〜0.50mmとなっている。第三電極パッド111cは、長辺の長さが、0.60〜1.10mmであり、短辺の長さは、0.10〜0.50mmとなっている。外部端子112の長辺の長さは、0.30〜0.90mmであり、短辺の長さは、0.20〜0.60mmとなっている。
配線パターン113は、電極パッド111と外部端子112との間及び電極パッド111間を電気的に接続させるためのものである。第一配線パターン113a及び第二配線パターン113bは、基板110の上面及び下面に設けられ、電極パッド111及び外部端子112から近傍の基板110の角部に向けて引き出されている。第一配線パターン113aの長さと第二配線パターン113bの長さは、略等しい長さとなる。ここで、略等しい長さとは、基板110の上面及び下面に設けられた第一配線パターン113aの長さと基板110の上面及び下面に設けられた第二配線パターン113bの長さとの差が0〜200μm異なるものを含むものとする。配線パターン113の長さは、各配線パターン113の中心を通る直線の長さを測定したものとする。
また、第三配線パターン113cは、基板110の上面に設けられており、その一端で第一電極パッド111aと接続されており、他端で第三電極パッド111cと電気的に接続されている。このようにすることで、第一電極パッド111aは、第三電極パッド111cを介して第四外部端子112dと電気的に接続されることになる。
導体部114は、図4に示すように、基板110の角部に設けられた切れ込みの内部に設けられている。導体部114の両端は、配線パターン113と接続されている。このようにすることで、電極パッド111は、配線パターン113及び導体部114を介して外部端子112と電気的に接続されている。また、導体部114は、切り込み内に導体ペーストを印刷するようにして設けられているため、基板110の上面の外周縁と導体部114との境界線箇所の導体部114の厚みが薄くなっている。このような導体部114は、銀パラジウム合金により形成されており、ガラス成分も含有されている。
感温導体部115は、温度変化によって電気抵抗が顕著な変化を示すものであり、この抵抗値の変化から電圧が変化するため、抵抗値と電圧との関係及び電圧と温度との関係により、出力された電圧から温度情報を得ることができる。感温導体部115は、貫通孔H内に、サーミスタペーストを充填することで形成される。サーミスタペーストは、負の抵抗温度特性を有する半導体セラミック粉末を主体とするものが用いられる。感温導体部115の上面及び下面には、貫通孔Hを塞ぐと共に、感温導体部115と電気的に接続されている感温導体電極116が設けられている。感温導体部115は、第一外部端子112a及び第三外部端子112c間の電圧が、第一外部端子112a及び第三外部端子112cを介して水晶振動子の外へ出力されることにより、例えば、電子機器等のメインIC(図示せず)で出力された電圧を温度に換算することで温度情報を得ることができる。このような感温導体部115を水晶振動子の近くに配置して、これによって得られた水晶振動子の温度情報に応じて、メインICにより水晶振動子を駆動する電圧を制御し、いわゆる温度補償をすることができる。
感温導体電極116は、感温導体部115を外部端子112と電気的に接続するために用いられている。感温導体電極116は、図2及び図4に示すように、接続パターン118を介して外部端子112と電気的に接続されている。感温導体電極116は、第一感温導体電極116a及び第二感温導体電極116bによって構成されている。第一感温導体電極116aは、基板110の上面及び下面に設けられた第一接続パターン118a及び第三導体部114cを介して第三外部端子112cと電気的に接続されている。この第三外部端子112cは、外部の実装基板上の基準電位であるグランドと接続されている実装パッドと接続されることにより、グランド端子の役割を果たす。よって、第一感温導体電極116aは、基準電位であるグランドに接続されることになる。また、第二感温導体電極116bは、基板110の下面に設けられた第二接続パターン118bを介して第一外部端子112aと電気的に接続されている。
また、感温導体部115は、図3に示すように、平面視で水晶素子120に設けられる励振用電極122の平面内に位置させていることにより、励振用電極122の金属膜によるシールド効果によって感温導体部115を、電子機器を構成するパワーアンプ等の他の半導体部品や電子部品からのノイズから保護する。よって、励振用電極122のシールド効果により、感温導体部115にノイズが重畳することを低減し、感温導体部115の正確な電圧を出力することができる。また、感温導体部115から正確な電圧値を出力することができるので、感温導体部115から出力された電圧を換算することで得られた温度情報と、実際の水晶素子120の周囲の温度情報との差異をさらに低減することが可能となる。
感温導体部115及び感温導体電極116の形成方法について説明する。まず、サーミスタペーストを基板110の貫通孔H内に塗布される。次に、貫通孔Hの上下を塞ぐと共にサーミスタペーストに接触するようにして感温導体電極116が形成される。そしてサーミスタペースト及び感温導体電極116は、加熱することで焼成される。よって、貫通孔H内に、感温導体部115が形成されると共に、感温導体部115を塞ぐようにして感温導体電極116が形成される。
接続パターン118は、基板110の上面及び下面に設けられ、感温導体電極116からから近傍の外部端子112に向けて引き出されている。また、接続パターン118は、図3に示すように、第一接続パターン118a及び第二接続パターン118bによって構成されている。
また、第二接続パターン118bは、図4に示すように、平面視して、第一電極パッド111aと第二電極パッド111bとの間に位置するように設けられている。また、このようにすることによって、水晶素子120から伝わる熱が、第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bから直下にある基板110を介して、第二接続パターン118bから第二感温導体電極116b及び感温導体部115に伝わることになる。よって、このような水晶振動子は、熱伝導経路をさらに短くすると共に熱伝導経路の数をさらに増やすことにより、水晶素子120の温度と感温導体部115の温度とが近似することになり、感温導体部115から出力された電圧を換算することで得られた温度と、実際の水晶素子120の周囲の温度との差異をさらに低減することが可能となる。
貫通孔Hは、基板110の上下面を貫通するようにして設けられており、平面視して、開口部の形状が円形状となっている。貫通孔Hの直径は、0.45〜0.7mmとなっている。
ここで、基板110の作製方法について説明する。基板110がアルミナセラミックスから成る場合、まず所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面或いはセラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔H内に、従来周知のノズル等によって所定のサーミスタペーストを塗布する。さらに、これらのグリーンシートを積層してプレス成形したものを、高温で焼成する。最後に、導体パターンの所定部位、具体的には、電極パッド111、外部端子112、配線パターン113、導体部114及び接続パターン118となる部位にニッケルメッキ又、金メッキ、銀パラジウム等を施すことにより作製される。また、導体ペーストは、例えばタングステン、モリブデン、銅、銀又は銀パラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
水晶素子120は、図1及び図2に示されているように、導電性接着剤140を介して電極パッド111上に接合されている。水晶素子120は、安定した機械振動と圧電効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。
また、水晶素子120は、図1及び図3に示されているように、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに励振用電極122及び引き出し電極123を被着させた構造を有している。励振用電極122は、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに金属を所定のパターンで被着・形成したものである。励振用電極122は、上面に第一励振用電極122aと、下面に第二励振用電極122bを備えている。引き出し電極123は、励振用電極122から水晶素板121の一辺に向かってそれぞれ延出されている。引き出し電極123は、上面に第一引き出し電極123aと、下面に第二引き出し電極123bとを備えている。第一引き出し電極123aは、第一励振用電極122aから引き出されており、水晶素板121の一辺に向かって延出するように設けられている。第二引き出し電極123bは、第二励振用電極122bから引き出されており、水晶素板121の一辺に向かって延出するように設けられている。つまり、引き出し電極123は、水晶素板121の長辺又は短辺に沿った形状で設けられている。また、本実施形態においては、第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bと接続されている水晶素子120の一端を基板110の上面と接続した固定端とし、他端を基板110の上面と間を空けた自由端とした片持ち支持構造にて水晶素子120が基板110上に固定されている。
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、外部からの交番電圧が引き出し電極123から励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
ここで、水晶素子120の作製方法について説明する。まず、水晶素子120は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し、水晶素板121の外周の厚みを薄くし、水晶素板121の外周部と比べて水晶素板121の中央部が厚くなるように設けるベベル加工を行う。そして、水晶素子120は、水晶素板121の両主面にフォトリソグラフィー技術、蒸着技術又はスパッタリング技術によって、金属膜を被着させることにより、励振用電極122、引き出し電極123を形成することにより作製される。
水晶素子120の基板110への接合方法について説明する。まず、導電性接着剤140は、例えばディスペンサによって第一電極パッド111a及び第二電極パッド111b上に塗布される。水晶素子120は、導電性接着剤140上に搬送され、導電性接着剤140上に載置される。そして導電性接着剤140は、加熱硬化させることによって、硬化収縮される。水晶素子120は、電極パッド111に接合される。つまり、水晶素子120の第一引き出し電極123aは、第二電極パッド111bと接合され、第二引き出し電極123bは、第一電極パッド111aと接合される。これによって、第二外部端子112bと第四外部端子112dが水晶素子120と電気的に接続されることになる。
また、水晶素子120は、水晶素子120の自由端と対向する位置に第三電極パッド111cが配置されているように実装されている。このようにすることによって、水晶素子120の引き出し電極123と、電極パッド111とが接合している箇所を軸として傾いても、水晶素子120の自由端が第三電極パッド111cに接触するので、基板110の上面に水晶素子120の自由端が接触することを抑制することできる。仮に、水晶素子120の自由端が基板110に接触した状態で、落下試験を行うと、水晶素子120の自由端が欠けてしまう虞がある。このようにすることで、水晶素子120の自由端側が欠けてしまうことを抑えつつ、水晶素子120の発振周波数が変動することを低減することができる。
導電性接着剤140は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又はニッケル鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
保護部材160は、感温導体部115の上面及び下面に設けられた感温導体電極116を塞ぐようにして、基板110の上面及び下面に設けられている。このようにすることにより、収容空2間K内を気密封止すると共に、感温導体電極116に異物が付着することを抑えることができる。保護部材160は、500〜800℃のものを用いている。また、保護部材160は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で基板110に設けられた感温導体電極116を塞ぐようにして塗布され焼成することで設けられる。また、保護部材160の上下方向の厚みは、0.01〜0.03mmとなっている。
蓋体130は、矩形状の封止基部130aと、封止基部130aの下面の外周縁に沿って設けられている封止枠部130bとで構成されており、封止基部130aの下面と封止枠部130bの内側側面とで収容空間Kが形成されている。封止枠部130bは、封止基部130aの下面に収容空間Kを形成するためのものである。封止枠部130bは、封止基部130aの下面の外縁に沿って設けられている。
封止基部130a及び封止枠部130bは、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなり、一体的に形成されている。このような蓋体130は、真空状態にある収容空間K又は窒素ガスなどが充填された収容空間Kを気密的に封止するためのものである。具体的には、蓋体130は、所定雰囲気で、基板110の上面に載置され、基板110の上面と封止枠部130bの下面との間に設けられた接合部材150とが熱が印加されることで、溶融接合される。
接合部材150は、蓋体130の下面と基板110の上面の外周縁とを接合するために用いられている。接合部材150は、図2に示すように、封止枠部130bの下面から基板110上の外周縁上にかけて設けられている。
接合部材150は、300℃〜400℃で溶融するガラスである例えばバナジウムを含有した低融点ガラス又は酸化鉛系ガラスから構成されている。ガラスは、バインダーと溶剤とが加えられペースト状であり、溶融された後固化されることで他の部材と接着する。接合部材150は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で封止枠部130bの下面に沿って環状に塗布され焼成することで設けられる。また、この酸化鉛系ガラスの組成は、酸化鉛、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅及び酸化カルシウムとから構成されている。
本実施形態における水晶振動子は、貫通孔Hを有する基板110と、基板110の上面に設けられた電極パッド111と、基板110の下面に設けられた外部端子112と、貫通孔H内に設けられた感温導体部115と、電極パッド111及び外部端子112と電気的に接続され、基板110の上面及び下面に設けられた配線パターン113と、感温導体部115及び外部端子112と電気的に接続され、基板110の上面及び下面に設けられた接続パターン118と、配線パターン113又は接続パターン118と外部端子112と電気的に接続され、基板110に設けられた導体部114と、電極パッド111に実装された水晶素子120と、基板110の外周縁に沿って設けられた接合部材150と、接合部材150を介して基板110の上面に接合された蓋体130と、を備えている。このようにすることによって、感温素子を実装するためのスペースは必要なく、基板に設けられた貫通孔H内に感温導体部115が設けられることになり、従来の水晶振動子と比して枠体を削除することができるので、水晶振動子は、枠体の厚み分の薄型化をすることが可能となる。また、従来の水晶振動子のように、基板の接続パッドに感温素子を実装する必要がないため、水晶振動子の生産性を向上させることができる。
また、本実施形態における水晶振動子は、感温導体部115の上面及び下面には、感温導体電極116が設けられている。このように、感温導体部115の上面及び下面に、感温導体電極116が設けられていることにより、上面に設けられた第一感温導体電極116aと下面に設けられた第二感温導体電極116bが接触することがなくなり、短絡を防ぐことができる。また、基板110の反りにより、貫通孔Hの内壁面と感温導体部115との界面に亀裂が入ったとしても感温導体電極116が感温導体部115を塞ぐようにして設けられているため、収容空間K内を気密封止することができる。
また、本実施形態における水晶振動子は、感温導体電極116の上面及び下面に設けられた保護部材160と、を備えている。このようにすることにより、感温導体電極116に異物が付着することを抑えることができるので、感温導体部115の抵抗値が変動してしまうことを低減することができる。また、基板110の反りにより、貫通孔Hの内壁面と感温導体部115との界面に亀裂が入り、基板110と感温導体電極116の界面に亀裂が入ったとしても、保護部材160が感温導体電極116を塞ぐようにして設けられているため、収容空間K内をさらに気密封止することができる。
また、本実施形態における水晶振動子は、感温導体部115が、平面視して水晶素子120に設けられた励振用電極122の平面内に位置させている。このようにすることにより、励振用電極122の金属膜によるシールド効果によって感温導体部115を、電子機器を構成するパワーアンプ等の他の半導体部品や電子部品からのノイズから保護する。よって、励振用電極122のシールド効果により、感温導体部115にノイズが重畳することを低減し、感温導体部115の正確な電圧を出力することができる。また、感温導体部115から正確な電圧値を出力することができるので、感温導体部115から出力された電圧を換算することで得られた温度情報と、実際の水晶素子120の周囲の温度情報との差異をさらに低減することが可能となる。
また、本実施形態における水晶振動子は、電極パッド111が基板110の内周縁の一辺に沿って隣接するようにして設けられており、接続パターン118の一つが平面視して一対の電極パッド111の間に位置するように設けられている。また、このようにすることによって、水晶素子120から伝わる熱が、第一電極パッド111a及び第二電極パッド111bから直下にある基板110を介して、第二接続パターン118bから第二感温導体電極116b及び感温導体部115に伝わることになる。よって、このような水晶振動子は、熱伝導経路をさらに短くすると共に熱伝導経路の数をさらに増やすことにより、水晶素子120の温度と感温導体部115の温度とが近似することになり、感温導体部115から出力された電圧を換算することで得られた温度と、実際の水晶素子120の周囲の温度との差異をさらに低減することが可能となる。
(第一変形例)
以下、本実施形態の第一変形例における水晶振動子について説明する。なお、本実施形態の第一変形例における水晶振動子のうち、上述した水晶振動子と同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の第一変形例における水晶振動子は、図5に示されているように、感温導体部215が基板210に複数設けられており、複数の感温導体部215が基板210の上面及び下面に設けられた接続パターン218にて電気的に接続されている点において本実施形態と異なる。
基板210には、複数の貫通孔Hが隣接するようにして設けられている。第一変形例では、貫通孔Hは、第一貫通孔H1、第二貫通孔H2及び第三貫通孔H3によって構成されている。それぞれの貫通孔Hには、感温導体部215が設けられている。
第一貫通孔H1には、第一感温導体部215aが設けられており、第二貫通孔H2には、第二感温導体部215bが設けられている。また、第三貫通孔H3には、第三感温導体部215cが設けられている。第一感温導体部215a、第二感温導体部215b及び第三感温導体部215cは、第一接続パターン218a及び第二接続パターン218bによりそれぞれ電気的に接続されている。このように感温導体部215を複数個並列に配置し、接続パターン215により電気的に接続することにより、抵抗を並列接続した状態となるため、感温導体部215の一つ一つの抵抗値のバラつきをお互いに補うことが可能となる。
感温導体電極216は、感温導体部215を外部端子212と電気的に接続するために用いられている。感温導体電極216は、図5に示すように、接続パターン218を介して外部端子212と電気的に接続されている。感温導体電極216は、第一感温導体電極216a、第二感温導体電極216b、第三感温導体電極216c、第四感温導体電極216d、第五感温導体電極216e及び第六感温導体電極216fによって構成されている。第一感温導体電極216a、第三感温導体電極216c及び第五感温導体電極216eは、基板210の上面及び下面に設けられた第一接続パターン218a及び導体部214cにより、第三外部端子212cと電気的に接続されている。この第三外部端子212cは、外部の実装基板上の基準電位であるグランドと接続されている実装パッドと接続されることにより、グランド端子の役割を果たす。よって、第一感温導体電極216aは、基準電位であるグランドに接続されることになる。また、第二感温導体電極216b、第四感温導体電極216d及び第六感温導体電極216fは、基板210の下面に設けられた第二接続パターン218bを介して第一外部端子212aと電気的に接続されている。
本実施形態の第一変形例における水晶振動子は、感温導体部215が基板210に複数設けられており、複数の感温導体部215が基板210の上面及び下面に設けられた接続パターン218にて電気的に接続されている。このように、感温導体部215を複数個並列に配置し、接続パターン218により電気的に接続することにより、抵抗を並列接続した状態となるため、感温導体部215の一つ一つの抵抗値のバラつきをお互いに補うことが可能となる。
(第二変形例)
以下、本実施形態の第二変形例における水晶振動子について説明する。なお、本実施形態の第二変形例における水晶振動子のうち、上述した水晶振動子と同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の第二変形例における水晶振動子は、図6に示されているように、配線パターン113及び基板110の四隅に設けられた接続パターン118を被覆するようにして設けられた絶縁部材170と、を備えている点において本実施形態と異なる。
絶縁部材170は、配線パターン113及び接続パターン118が金属製の蓋体130と接触して短絡することを低減するために用いられている。また、絶縁部材170は、図6に示すように、基板110の上面に設けられた配線パターン113及び接続パターン118を被覆するようにして設けられている。絶縁部材170は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で基板110に設けられた配線パターン113及び接続パターン118の上面に塗布され焼成することで設けられる。また、絶縁部材170の上下方向の厚みは、0.01〜0.03mmとなっている。
また、絶縁部材170は、基板110の角部に位置する配線パターン113及び接続パターン118上に設けられている。このようにすることによって、金属製の蓋体130を用いる際に、金属製の蓋体130が配線パターン113及び接続パターン118に接触することを抑えることが可能となる。また、絶縁部材170が、基板110の角に、平面視して円弧状になるように設けられており、導体部114が設けられている切欠き内には、絶縁部材170が設けられていない。このようにすることにより、基板110が電子機器等を構成する実装基板上に実装される際に、外部端子112に付着した半田が、導体部114に這い上がるようにして形成されるため、半田フィレットが形成される。また、半田が、絶縁部材170で覆われている基板110の配線パターン113及び接続パターン118上には、這い上がらないため、半田と金属製の蓋体130との短絡を低減することができる。
本実施形態の第二変形例における水晶振動子は、配線パターン113及び接続パターン118を覆うように絶縁部材170が設けられている。このように配線パターン113及び接続パターン118の上面を絶縁部材170で覆うことで、金属製の蓋体130を基板110の上面に接合する際に、金属製の蓋体130と基板110の上面に設けられている配線パターン113及び接続パターン118との短絡を低減することができる。
尚、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上記の実施形態では、水晶素子は、AT用水晶素子を用いた場合を説明したが、基部と、基部の側面より同一の方向に延びる二本の平板形状の振動腕部とを有する音叉型屈曲水晶素子を用いても構わない。また、上記の実施形態では、水晶素子は、片持ち支持構造にて基板110上に固定されている場合を説明したが、水晶素子が両持ち支持構造であっても構わない。
また、水晶素子120のベベル加工方法について説明する。所定の粒度のメディアと砥粒とを備えた研磨材と、所定の大きさに形成された水晶素板121とを用意する。円筒体に用意した研磨材と水晶素板121とを入れ、円筒体の開口した端部をカバーで塞ぐ。研磨材と水晶素板121とを入れた円筒体を、円筒体の中心軸線を回転軸として回転させる水晶素板121が研磨材で研磨されてベベル加工が行われる。
上記の実施形態では、接合部材150が蓋体130の封止枠部130bの下面に設けられた場合を説明したが、接合部材150が基板110上面の外周縁に環状に設けられるようにしても構わない。このような接合部材150は、例えば、ガラスフリットペーストがスクリーン印刷法で基板110の外周縁に沿って塗布され焼成することで設けられる。