JP2016102290A - 建造物の補強構造 - Google Patents
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Abstract
Description
そして、空間Aを構成する既存柱1,1と既存梁2,2のそれぞれには、空間Aに向かって突出する柱用アンカーボルト3と梁用アンカーボルト4とを多数打ち込む。
空間Aにはめ込んだ鉄骨枠Fと、上記既存柱1,1及び既存梁2,2との間に形成された間隔には、スパイラル筋9を配置するとともに、このスパイラル筋9を配置した上記間隔にグラウト材8を充填している。
なお、スパイラル筋9は、上記間隔に充填したグラウト材8が崩れるのを防止するためのものである。
このようにして既存柱1,1及び既存梁2,2のそれぞれが、グラウト材8を介して鉄骨枠Fと一体化するので、既存柱1,1及び既存梁2,2に作用した地震力が、上記柱用アンカーボルト3、梁用アンカーボルト4、グラウト材8及びボルト7を介して鉄骨枠Fに伝達される。
したがって、上記地震力は、既存柱1,1、既存梁2,2及び鉄骨枠Fによって支えられるが、鉄骨枠Fは上記空間Aの内側から上記地震力を支えることになる。
また、既存柱1,1の脆弱化が進めば進むほど、打ち込んだ柱用アンカーボルト3の抜け耐力が弱くなってしまう。柱用アンカーボルト3の抜け耐力が弱くなれば、地震力が作用したときに、柱用アンカーボルト3がいろいろな方向に動きやすくなってしまう。
このように両者の形態保持力がアンバランスになれば、鉄骨枠Fが上記空間Aから飛び出してしまう、いわゆる面外変形を起こしやすくなり、二次災害を起こすという危険もあった。
この発明の目的は、鉄骨枠Fの補強機能を安定的に期待でき、しかも二次災害のおそれもない建造物の補強構造を提供することである。
上記既存柱及び既存梁のそれぞれには、上記空間に向かって複数のアンカーボルトを突出させ、上記鉄骨枠の周辺にはボルトを突出させて、上記鉄骨枠と、上記既存柱及び既存梁との間に形成されたすき間にグラウト材を充填してなる建造物の補強構造に関する。
そして、第1の発明は、上記一対の既存柱の周囲を、一定の間隔を保持した柱用補強鋼板で囲い、上記柱用補強鋼板と既存柱との間にグラウト材を充填して補強柱を構成する一方、上記補強柱には上記柱用補強鋼板を貫通して上記鉄骨枠方向に突出する柱用アンカーボルトを複数設けることを特徴とする。
そして、図2に示すように、既存柱1,1の周囲を柱用補強鋼板E1で囲い、既存柱1,1と既存梁2,2との交差部を交差部用補強鋼板E2で囲うとともに、これら柱用補強鋼板E1と既存柱1,1との間、及び交差部用補強鋼板E2と上記交差部との間に形成されるすき間にグラウト材15が充填されている。
そして、上記柱用補強鋼板E1は、図3に示すように4枚の分割鋼板10で構成されている。これら4枚の分割鋼板10は、平板を直角に折り曲げてなり、その折り曲げ片同士を互いに重ね合わせて、既存柱1,1の断面形状にあわせた矩形の柱用補強鋼板E1を構成するようにしている。なお、上記柱用補強鋼板E1の軸方向長さは、既存柱1の補強対象部分の軸方向長さを複数に分割した長さにしている。
また、既存柱1と既存梁2との交差部は、図2に示すように、既存柱1と既存梁2とをまたぐ交差部用補強鋼板E2で囲っている。
なお、この交差部用補強鋼板E2と、既存柱1及び既存梁2との間にも所定の間隔を保持するとともに、交差部用補強鋼板E2の両側をボルト11で既存梁2に固定している。
このようにした交差部用補強鋼板E2は、柱用補強鋼板E1に連続して積層され、それら柱用補強鋼板E1若しくは交差部用補強鋼板E2と既存柱1との間に形成される空間を連続させている。
なお、この第1実施形態では、4枚の分割鋼板10を用いたが、2枚の分割鋼板を用いてもよい。また、交差部用補強鋼板E2は、図2に示すように2枚の分割鋼板で構成しているが、それを一枚板で構成してもよい。
そして、上記柱用アンカーボルト17は、その先端側を必要長さ分だけ柱用補強鋼板E1の外側に突出させたとき、その基端側が、図4に示すように、既存柱1と柱用補強鋼板E1との間の中間に位置する長さを保持している。
これら柱用補強鋼板E1及び交差部用補強鋼板E2と既存柱1及び既存梁2との間には、グラウト材15を充填して補強柱Pを構成している。
上記交差部分の変形を押さえる力は、既存柱1,1と既存梁2,2とで形成される空間Aの変形を押さえる力として寄与することになる。
さらに、上記柱用補強鋼板E1の周囲及び交差部用補強鋼板E2の表面には、強度の高い繊維からなる帯状シート14を貼り付け、補強柱Pの強度をさらに向上させるようにしている。
また、鉄骨枠Fは、フレーム材5の周辺にボルト7を多数突出させている。上記補強柱P,P及び既存梁2,2と鉄骨枠Fとの間にはグラウト材16が崩れるのを防止するスパイラル筋9を配置している。
そして、補強柱P,P及び既存梁2,2と鉄骨枠Fとの間にグラウト材16を充填することによって、補強柱P,P及び既存梁2,2は、柱用アンカーボルト17及び梁用アンカーボルト18を介してグラウト材16と一体化し、鉄骨枠Fはボルト7を介してグラウト材16と一体化する。
先ず、既存梁2,2の空間A側の側面には、梁用アンカーボルト18をあらかじめ打ち込んでおく。
そして、一対の既存柱1,1の周囲4隅に、既存柱1,1の長手方向に沿って軸方向筋13を配置しておく。このようにした軸方向筋13の上下端は、スラブなどに固定される。さらに、この既存柱1の4隅に配置された軸方向筋13の周りには帯筋が複数本配置される。
このように柱用補強鋼板E1を積層したら、さらにその上に交差部用補強鋼板E2を積層するとともに、この交差部用補強鋼板E2の両側を、図2に示すように既存梁2,2にボルト11で固定する。
このアンカー孔19には、柱用アンカーボルト17を通し、柱用アンカーボルト17の基端側を既存柱1と柱用補強鋼板E1との間に形成されるグラウト材15層の中の中間に位置させるとともに、この柱用アンカーボルト17の先端側は、必要長さ分だけ鉄骨枠F方向に突出させる。柱用アンカーボルト17の先端側には、グラウト材15としっかり固定するために、ナットなどの突出部20を形成させる。
なお、グラウト材15が充填されていない状態で、上記アンカー孔19に通した上記柱用アンカーボルト17を柱用補強鋼板E1に止めるためには、柱用アンカーボルト17に一対のナットをはめ、これらナットで柱用補強鋼板E1を挟持するか、あるいは溶接などによって、上記柱用アンカーボルト17を柱用補強鋼板E1に直接固定するようにしてもよい。
そして、柱用補強鋼板E1及び交差部用補強鋼板E2内にグラウト材15を充填して補強柱Pを構築する。
この穴に柱用アンカーボルト17を固着するための接着剤を充填する。その後、接着剤を充填した穴に柱用アンカーボルト17の基端側を挿入して固定させる。
なお、上記補強柱P,P及び既存梁2,2と鉄骨枠Fとの間にはスパイラル筋9を配置し、それらの間に充填するグラウト材16が崩れるのを防止する。
しかも、柱用アンカーボルト17は、上記補強柱P,Pに支持され、簡単には動かないので、地震力が作用したとしても、上記した一体化が損なわれたりしない。
さらに、既存柱1はグラウト材15によってその体積が大きくなっているため、せん断耐力が向上し、軸方向筋等によって曲げ耐力も増すなど、柱としての強度を飛躍的に向上させている。
このように、補強柱Pの強度を積極的に高めたことによって、空間Aの変形が押さえられ、鉄骨枠Fの形態保持力に追随できるようになった。
このように両者の形態保持力がバランスよく機能することになり、鉄骨枠Fが上記空間Aから飛び出してしまう、いわゆる面外変形を起こしにくくなった。
そのため、地震力Qが作用したときでも、柱用アンカーボルト17が動くことを防止できるようになった。柱用アンカーボルト17が動かなければ、補強柱P,P及び既存梁2,2と鉄骨枠Fとは一体化を保持したまま、耐震効果を相乗的に発揮させることができる。
上記のように、柱用アンカーボルト17の抜け耐力が強くなり、補強柱Pの耐震強度が増したことから、大きな地震力Qが作用しても、鉄骨枠Fが上記空間Aから外れて前面に飛び出すようなことがなくなり、鉄骨枠Fの補強機能を安定化させることができる。
上記柱用補強鋼板E1には上記アンカー孔19を所定の位置に形成し、既存柱1の表面に所定の間隔を保って上記柱用補強鋼板E1を配置する。
柱用アンカーボルト17は、先端側を上記柱用補強鋼板E1に形成された上記アンカー孔19を貫通させ、上記柱用補強鋼板E1から突出させて固定している。
上記以外の構成は第1実施形態と同じである。
このように補強柱P,Pによって、アンカーボルト17の抜け耐力も維持できるので、地震力が作用したとしても、補強柱P,P及び既存梁2,2と、鉄骨枠Fとの一体化も保たれる。鉄骨枠Fが補強柱P,P及び既存梁2,2と一体化されている限り、その補強機能がいかんなく発揮されることになる。
上記柱用補強鋼板E1は、ほぼ直角に折り曲げた4つの分割鋼板23からなる。これら分割鋼板23のそれぞれの縁には、横リブ24と縦リブ25とを形成している。
なお、この第3実施形態を示す図6には交差部用補強鋼板E2を示していないが、この交差部用補強鋼板E2にも横リブあるいは縦リブを設けるようにしてもよい。
柱用補強鋼板E1を構成する分割鋼板23であって、鉄骨枠Fに対向する分割鋼板23には、柱用アンカーボルト17を貫通させる複数のアンカー孔19を形成している。
上記以外の構成は第1実施形態と同じである。
2 既存梁
A 空間
F 鉄骨枠
7 ボルト
8 グラウト材
9 スパイラル筋
E1 柱用補強鋼板
E2 交差部用補強鋼板
13 軸方向筋
14 帯状シート
15 グラウト材
P 補強柱
16 グラウト材
17 柱用アンカーボルト
18 梁用アンカーボルト
19 アンカー孔
21 接着剤
上記既存柱及び既存梁のそれぞれには、上記空間に向かって複数のアンカーボルトを突出させ、上記鉄骨枠の周辺にはボルトを突出させて、上記鉄骨枠と、上記既存柱及び既存梁との間に形成されたすき間にグラウト材を充填してなる建造物の補強構造に関する。
そして、第1の発明は、上記一対の既存柱の周囲を、一定の間隔を保持した柱用補強鋼板で囲い、上記柱用補強鋼板内には、上記既存柱の上下に位置する既存梁間の間隔以上の長さを保つ軸方向筋がその軸方向筋の上下端が固定された状態で複数埋設され、上記柱用補強鋼板と既存柱との間にグラウト材を充填して補強柱を構成する一方、上記補強柱には上記鉄骨枠に対向する側であって、柱用補強鋼板内のコーナー部に配置される一対の上記軸方向筋の間に、上記柱用補強鋼板を貫通して上記鉄骨枠方向に突出する柱用アンカーボルトを複数設けることを特徴とする。
そして、図2に示すように、既存柱1,1の周囲を柱用補強鋼板E1で囲い、既存柱1,1と既存梁2,2との交差部分を交差部用補強鋼板E2で囲うとともに、これら柱用補強鋼板E1と既存柱1,1との間、及び交差部用補強鋼板E2と上記交差部分との間に形成されるすき間にグラウト材15が充填されている。
そして、上記柱用補強鋼板E1は、図3に示すように4枚の分割鋼板10で構成されている。これら4枚の分割鋼板10は、平板を直角に折り曲げてなり、その折り曲げ片同士を互いに重ね合わせて、既存柱1,1の断面形状にあわせた矩形の柱用補強鋼板E1を構成するようにしている。なお、上記柱用補強鋼板E1の軸方向長さは、既存柱1の補強対象部分の軸方向長さを複数に分割した長さにしている。
また、既存柱1と既存梁2との交差部分は、図2に示すように、既存柱1と既存梁2とをまたぐ交差部用補強鋼板E2で囲っている。
なお、この交差部用補強鋼板E2と、既存柱1及び既存梁2との間にも所定の間隔を保持するとともに、交差部用補強鋼板E2の両側をボルト11で既存梁2に固定している。
このようにした交差部用補強鋼板E2は、柱用補強鋼板E1に連続して積層され、それら柱用補強鋼板E1若しくは交差部用補強鋼板E2と既存柱1との間に形成される空間を連続させている。
そして、上記柱用アンカーボルト17は、その先端側を必要長さ分だけ柱用補強鋼板E1の外側に突出させたとき、その基端側が、図4に示すように、既存柱1と柱用補強鋼板E1との間の中間に位置する長さを保持している。さらに、上記柱用アンカーボルト17は、上記補強柱Pの上記鉄骨枠Fに対向する側であって、柱用補強鋼板E1内のコーナー部12に配置される一対の上記軸方向筋13,13の間に位置するように配置される。
これら柱用補強鋼板E1及び交差部用補強鋼板E2と既存柱1及び既存梁2との間には、グラウト材15を充填して補強柱Pを構成している。
Claims (6)
- 一対の既存柱と既存梁とで囲われた矩形の空間に矩形の鉄骨枠を組み込み、
上記既存柱及び既存梁のそれぞれには、上記空間に向かって複数のアンカーボルトを突出させ、
上記鉄骨枠の周囲にはボルトを突出させて、
上記鉄骨枠と、既存柱及び既存梁との間に形成されたすき間にグラウト材を充填してなる建造物の補強構造であって、
上記一対の既存柱の周囲を、一定の間隔を保持した柱用補強鋼板で囲い、
この柱用補強鋼板と既存柱との間にグラウト材を充填して補強柱を構成する一方、
上記補強柱には上記柱用補強鋼板を貫通して上記鉄骨枠方向に突出する柱用アンカーボルトを複数設けてなる建造物の補強構造。 - 上記既存柱と既存梁との交差部分を、その交差部と一定の間隔を保持した交差部用補強鋼板で囲うとともに、
上記交差部分と交差部用補強鋼板との間にグラウト材を充填してなる請求項1に記載された建造物の補強構造。 - 上記柱用アンカーボルトの基端側を、柱用補強鋼板と既存柱との間に充填したグラウト材層に埋設するとともに、この柱用アンカーボルトの先端側を補強柱から突出させた請求項1又は2に記載された建造物の補強構造。
- 上記柱用アンカーボルトの基端側を直接既存柱に打ち込むとともに、この柱用アンカーボルトの先端側を補強柱から突出させた請求項1又は2に記載された建造物の補強構造。
- 上記交差部用補強鋼板と上記柱用補強鋼板との周囲に、帯状シートを貼り付けて一体化した請求項1〜4のいずれかに記載された建造物の補強構造。
- 上記既存柱と柱用補強鋼板との間に充填した上記グラウド材内には、軸方向筋が複数埋設される請求項1〜5のいずれかに記載された建造物の補強構造。
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