JP2016100316A - 試料台 - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー分散型X線分析装置が付属する走査型電子顕微鏡用の試料台として、カーボン製の試料台を使用すると、脆性破壊によって試料台に割れ等が生じるという問題があり、アルミニウム製の試料台を使用すると、未知試料の金属粉末を元素分析するときに、試料台の構成元素であるアルミニウムが誤検出されるという問題があった。【解決手段】電子顕微鏡で電子線が照射される試料を設置するために用いられる試料台8である。この試料台8は、金属製の本体部11と、本体部11の上面を覆うカーボン製の台座部12と、を備える。台座部12の上面12aは、試料の設置面になっている。【選択図】図2

Description

本発明は、電子顕微鏡に用いられる試料台に関する。
微小部に対する元素分析装置として走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析(以下、「SEM−EDX」ともいう。)装置が広く用いられている。SEM−EDX装置は、走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分析装置を付属したものである。SEM−EDX装置では、走査型電子顕微鏡の試料台の上に試料を設置し、その試料に電子線を照射する。そうすると、電子線の照射によって試料から特性X線が放出されるため、この特性X線をエネルギー分散型X線分析装置で検出し、エネルギーで分光することにより、元素分析や組成分析を行う。
SEM−EDX装置を用いて試料の分析を行う場合は、通常、走査型電子顕微鏡の試料台の上にカーボンテープを貼り付け、そのカーボンテープの上に対象となる試料を置いて分析を実施する。その際、走査型電子顕微鏡用の試料台としては、一般的にアルミニウム製のものやカーボン製のものが用いられている(たとえば、特許文献1および特許文献2を参照)。
具体例として、樹脂埋めした粉末材料や金属膜の断面を観察する場合は、まず、クロスセクションポリッシャーやイオンビーム加工装置などを用いて、試料の断面を露出させる。次に、その露出させた試料の断面を覆うように導電物質を蒸着することにより、帯電防止のための導通を確保する。導電物質としては、カーボンや白金などが用いられる。次に、その試料を試料台の上に設置する。その際、アルミニウム製の試料台を用いる場合は、試料台の上にカーボンテープを貼り付け、このカーボンテープの上に試料を置いて、SEMによる観察やEDXによる元素分析に供する。一方、カーボン製の試料台を使用する場合は、上述のようにカーボンテープを用いて試料を固定するか、あるいは導電性ペーストを用いて試料を固定し、SEMによる観察やEDXによる元素分析に供する。
特開2014−146493号公報 特開2005−276773号公報
ところで、元素等が未知の未知試料もしくは試料中に含有するアルミニウムのEDX分析を実施する場合、たとえば対象試料が金属粉末であるとすると、アルミニウム製の試料台を用いたときに、次のような不具合を招くおそれがある。すなわち、金属粉末の試料に電子線を照射すると、試料の表面から放出された連続X線もしくは特性X線が試料台に当たり、そこでアルミニウムの蛍光励起が生じることがある。そうした場合は、試料台の構成元素であるアルミニウム固有のエネルギーを持つ特性X線がピークとして検出されることになる。そのため、たとえば、未知試料の金属粉末について元素分析を行う場合に、本来では試料の表面に存在しないはずのアルミニウムを、試料の構成元素の一つとして誤検出してしまう可能性がある。
また、試料の前処理としてイオンビーム加工を行う場合に、イオンビームが試料台まで到達し、そこで試料台が削れてしまうことがある。そうすると、試料台を構成しているアルミニウムの加工滓が試料の表面に付着(リデポジション)する可能性がある。このため、加工滓に含まれるアルミニウムをEDX分析で誤検出してしまうおそれがある。
したがって、一般に、分析対象試料中にアルミニウムを含む場合には、アルミニウム以外の試料台を用いることにより、試料台の構成元素であるアルミニウムの誤検出を回避している。具体的には、アルミニウム以外の試料台として、カーボン製の試料台を使用している。カーボン製の試料台を使用する理由は、次のような事情による。すなわち、カーボンは原子番号=6の元素であるため、その特性X線のエネルギーはアルミニウムなどの金属元素に比べて低くなる。このため、カーボン製の試料台を使用すると、低エネルギー側にK線のみが現れる。したがって、金属粉末の試料を対象にEDX分析を行う場合、仮に試料台の構成元素に由来する特性X線のピークが検出されたとしても、このピークが、試料に含まれるアルミニウムなどの特性X線のピークに重畳して検出されることがない。このため、試料から放出される特性X線を反映した正確な分析結果が得られる。
ただし、カーボン製の試料台は非常に脆く、耐久性にも劣る。このため、試料台をピンセットで保持しただけでも脆性破壊を起こし、いとも簡単に試料台が割れてしまうことがある。このため、カーボン製の試料台は、取り扱いが非常に難しいという欠点がある。
そこで、代替案として、アルミニウム製の試料台の表面全面にカーボンテープを貼り付けて対応することも考えられる。ただし、この代替案では、試料の準備中にコンタミネーションが発生することが懸念される。また、SEMによる観察終了後は、試料室から試料台を取り出すことになるが、この試料台の表面からカーボンテープを剥がす作業が非常に面倒になる。その理由は、SEMによる観察等のために試料室を真空にすると、カーボンテープの状態が変化し、カーボンテープが剥がれにくくなるからである。また、上記代替案では、試料台の表面全面に貼り付けたカーボンテープを利用して、試料台の上に試料を設置することになるが、カーボンテープは非常に粘着力が強い。このため、強度の弱い試料を取り扱う場合は、観察終了後に試料をカーボンテープから剥がすときに試料を破壊してしまうおそれがある。
本発明の主な目的は、金属製の試料台の利点とカーボン製の試料台の利点を併せ持つ試料台を提供することにある。
本発明の第1の態様は、
電子顕微鏡で電子線が照射される試料を設置するために用いられる試料台であって、
前記試料台は、
金属製の本体部と、
前記本体部の上面を覆うカーボン製の台座部と、を備え、
前記台座部の上面が前記試料の設置面になっている
ことを特徴とする試料台である。
本発明の第2の態様は、
前記本体部は、板状のベース部を有し、
前記台座部は、前記ベース部よりも外形寸法が大きい板状に形成され、
前記台座部の下面側には、前記ベース部と前記台座部の外形寸法差による段付き部が形成されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の試料台である。
本発明の第3の態様は、
前記本体部は、アルミニウムによって構成されている
ことを特徴とする上記第1又は第2の態様に記載の試料台である。
本発明によれば、カーボン製の試料台の利点と金属製の試料台の利点を併せ持つ試料台を提供することができる。
本発明を適用可能な走査型電子顕微鏡の構成例を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る試料台の構成を示す正面図である。 図2のA−A断面図である。 本発明の実施の形態に係る試料台の構成を示す平面図である。 本発明の実施の形態に係る試料台の構成を示す底面図である。 本発明の実施例で得られたEDX分析結果(その1)を示す図である。 本発明の実施例で得られたEDX分析結果(その2)を示す図である。 第1変形例を示す図である。 第2変形例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明に係る試料台は、電子顕微鏡に用いられる試料台であって、特に、エネルギー分散型X線分析装置が付属する走査型電子顕微鏡に用いて好適な試料台である。以下に、走査型電子顕微鏡の構成と、これに用いて好適な試料台の構成について順に説明する。
(走査型電子顕微鏡の構成)
図1は本発明を適用可能な走査型電子顕微鏡の構成例を示す概略図である。
図示した走査型電子顕微鏡1は、主として、電子銃2と、集束レンズ3と、対物レンズ4と、走査コイル5と、試料ホルダ6と、二次電子検出器7と、を備えている。対物レンズ4と走査コイル5の位置関係は上下逆の場合もありうる。
電子銃2は、電子線EBを放出するものである。電子銃2から放出された電子線EBは、集束レンズ3、対物レンズ4および走査コイル5を順に経由して試料(不図示)に照射される。電子銃2が放出する電子線EBは、加速電圧にしたがって加速される。その際、加速電圧を相対的に高くすると、より高速の電子線EBが電子銃2から放出され、加速電圧を相対的に低くすると、より低速の電子線EBが電子銃2から放出される。このため、加速電圧の設定値は、電子銃2から放出される電子のエネルギーの大きさを決めるパラメータとなる。
集束レンズ3は、電子線EBを集束させるものである。対物レンズ4は、電子線EBの焦点合わせを行うものである。走査コイル5は、電子線EBを二次元的に走査するものである。具体的には、走査コイル5は、X軸とY軸を含む直交座標系で定義される平面内において、電子線EBをX方向に偏向する偏向コイルと、電子線EBをY方向に偏向する偏向コイルとを備え、これらの偏向コイルの偏向磁界により電子線EBを二次元的に走査する。
試料ホルダ6は、試料台8を着脱可能に保持するものである。試料台8は、観察の対象となる試料を設置するために用いられるものである。試料ホルダ6は、試料ステージ9とともに試料室SRに収容されている。試料ステージ9は、試料ホルダ6に保持された試料台8を5つの方向に移動可能なステージになっている。具体的には、試料ステージ9は、上記直交座標系で定義される平面と平行なX方向およびY方向のほか、これに直交するZ方向(上下方向)、さらには回転方向や傾き方向に対して、それぞれ試料台8を移動可能なステージになっている。
二次電子検出器7は、試料に電子線EBを照射したときに試料から放出される二次電子を検出するものである。二次電子検出器7は、試料室SRに臨む状態で取り付けられ、そこで検出した二次電子の量に応じた電気信号を出力する。この電気信号は図示しない表示装置に送られる。これにより、表示装置の画面には、観察画像として、二次電子の量に応じて明暗差がついた画像(二次電子像)が表示される。
また、走査型電子顕微鏡1には図示しないエネルギー分散型X線分析装置が付属され、これによってSEM−EDX装置が構成されている。エネルギー分散型X線分析装置は、試料台8に置かれた試料に電子線EBを照射した際に生じる特性X線を検出し、エネルギーで分光することにより、元素分析や組成分析を行うものである。
(試料台の構成)
図2は本発明の実施の形態に係る試料台の構成を示す正面図であり、図3は図2のA−A断面図である。また、図4は本発明の実施の形態に係る試料台の構成を示す平面図、図5は同底面図である。
以降の説明では、上記図1に示す使用状態の試料台8の姿勢を基準に、上下左右の方向を規定するものとする。
図示した試料台8は、本体部11と、台座部12と、を備えている。本体部11と台座部12は、接着によって一体に結合されている。本体部11と台座部12の接着には、導電性ペーストなどの導電性接着剤を用いることが好ましい。非導電性の接着剤(たとえば、エポキシ樹脂など)を用いる場合は、接着面以外の箇所で本体部11と台座部12を導通させる必要がある。本体部11と台座部12は、互いに異なる材料で構成されている。つまり、試料台8は、異種の材料部を組み合わせたハイブリッドな構成になっている。また、本体部11は試料台8の下部側に位置し、台座部12は試料台8の上部側に位置している。
本体部11は、導電性を有する材料、具体的には金属材料、より具体的にはアルミニウムによって構成されている。本体部11は、ベース部14と、ロッド部15と、を一体に有している。ベース部14は、適度な厚みを有する円板状に形成されている。ベース部14の上面および下面は、それぞれ平面になっている。
ベース部14の外径は、走査型電子顕微鏡1の仕様に合わせて、たとえば、10〜40mmの範囲内に設定されている。ベース部14の厚み寸法は、試料台8をピンセット等で保持するときの作業(ハンドリング等)のしやすさを考慮して、たとえば3〜5mm程度に設定されている。ロッド部15は、ベース部14の下面中央部から垂下するように形成されている。ロッド部15は、上述した試料ホルダ6に試料台8をセットするときに、試料ホルダ6の上面に設けられた孔(不図示)に挿入されるものである。ロッド部15には、必要に応じて雄ネジを形成してもよい。
台座部12は、導電性を有する単一の元素材料、より具体的にはカーボンによって構成されている。台座部12は、たとえば、カーボン粉末を固めた焼結体からなるもので、上述した本体部11のベース部14よりも一回り大きい円板状に形成されている。台座部12の上面(符号12aで示す)および下面は、それぞれ平面になっている。台座部12の上面12aは、試料の設置面になっている。台座部12の下面には、本体部11(ベース部14)の上面が接着されている。本体部11と台座部12とは、たとえば両者の接着に導電性接着剤を用いることにより、互いに導通している。また、台座部12は、本体部11の上にベース部14と同心状に配置されている。このため、ベース部14の上面は、全面にわたって台座部12によって覆われている。また、台座部12の外周部は、ベース部14の外周部よりも外側にはみ出している。このため、台座部12の下面側には、台座部12とベース部14の外径差による段付き部17が全周にわたって形成されている。
台座部12の厚み寸法T1は、少なくとも、試料固定用に供されている一般的なカーボンテープの厚み寸法(0.1〜0.2mm)に比べて十分に大きい寸法になっている。具体的には、台座部12の厚み寸法Tは、その機械的な強度を考慮して、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上に設定されている。ただし、台座部12をあまり厚くすると、試料台8の重心が上方に過度に偏って全体の質量バランスが悪くなることが懸念される。このため、台座部12の厚み寸法Tは、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下に設定するとよい。
上記構成からなる試料台8を用いて、SEMによる観察やEDXによる元素分析を行う場合は、観察や分析の対象となる試料を試料台8の上に設置する。その際、試料台8の上に試料を固定する方法としては、カーボンテープなどの導電性テープを使用する方法や、導電性ペーストを使用する方法などがある。導電性テープを使用する場合は、必要な大きさに切断した導電性テープを試料台8の台座部12の上面12aに貼り付け、その上に試料を置く。導電性ペーストを使用する場合は、まず、薄片状に切り出した試料の四隅に導電性ペーストを塗布する。あとで試料を取り外すことを考慮すると、導電性ペーストの塗布量はできるだけ少量とするのが好ましい。次に、導電性ペーストの塗布面を台座部12の上面12aに対向させて、台座部12の上面12aに試料を貼り付ける。次に、コンタミネーションが発生しにくい場所で導電性ペーストを乾燥させる。
こうして試料台8の上に試料を設置したら、走査型電子顕微鏡1の試料ステージ9に試料ホルダ6を用いて試料台8をセットする。これにより、試料を設置した試料台8が試料室SRに収容される。その際、試料室SRにセットする試料台8をピンセットで保持する場合は、ベース部14の外周部をピンセットの把持部(先端部)で挟むようにする。ベース部14はアルミニウムで構成されているため、その部分をピンセットで強く挟んでも試料台8に破損等が生じることはない。また、試料台8をピンセットで保持する場合は、ベース部14よりも外側にはみ出した段付き部17をガイドにピンセットの把持位置を決めることができる。また、ピンセットの把持部を段付き部17に当接(引っ掛け)させて配置すれば、万一、ピンセットの把持力が不用意に弱まった場合でも、段付き部17とピンセットとの引っ掛かりによって試料台8の脱落が防止される。
その後、試料室SRを真空引きにより真空状態にする。そして、試料室SRの圧力があらかじめ設定された真空度になったら、電子銃2から放出させた電子線EBを、集束レンズ3と対物レンズ4を通して試料に照射し、SEMによる観察やEDXによる元素分析を行う。
SEMによる観察を行う場合は、走査コイル5によって電子線EBを二次元的に走査し、この走査中に試料の表面から放出される二次電子を二次電子検出器7で検出する。これにより、試料の表面形状を表す二次電子像が得られる。また、EDXによる元素分析を行う場合は、電子線EBの照射によって試料の表面から放出される特性X線を、試料室SRに配置した半導体検出器(不図示)で検出し、その検出信号を分析用のソフトウェアで信号処理する。これにより、試料の表面に含まれる元素の特性X線をエネルギーで分光したスペクトルが得られる。
上記EDXによる元素分析に際して、電子線EBの照射により試料の表面から放出された連続X線もしくは特性X線が試料台8に当たると、試料台8の構成元素に固有のエネルギーを持つ特性X線が検出される。本実施の形態においては、試料台8の上部が台座部12で構成され、この台座部12によって本体部11が覆い隠されている。このため、上記の連続X線もしくは特性X線は、台座部12には当たることがあっても、本体部11には当たらない。また、試料台8の台座部12はカーボンで構成されているため、上記の連続X線もしくは特性X線が台座部12の上面12aに当たった場合は、カーボン固有のエネルギーを持つ特性X線が検出される。
その後、SEMによる観察およびEDXによる元素分析を終えたら、試料室SRを大気圧に戻した後、試料室SRから試料台8を取り出す。次いで、試料台8の台座部12から試料を取り外す。取り外した試料は、必要に応じて保管する。試料の取り外しは、ピンセットを用いて行う。次に、試料を取り外した後の試料台8の表面を、たとえば、エタノールやアセトンなどの洗浄液を用いて洗浄した後、所定の場所に試料台8を保管する。
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態においては、走査型電子顕微鏡1に用いられる試料台8を、本体部11と台座部12といった2つの部分に分けている。そして、試料台8の下部に位置する本体部11を金属(アルミニウム)で構成し、試料台8の上部に位置する台座部12をカーボンで構成している。このため、試料台8をピンセット等で保持する場合は、金属製の本体部11を利用して試料台8を保持することができる。また、試料台8に試料を設置する場合は、カーボン製の台座部12を利用して試料を設置することができる。これにより、試料台8をピンセット等で保持する場合に、試料台8が破損等を起こすことは皆無となる。このため、試料台8の取り扱いが容易になる。また、EDXによる元素分析では、試料中に含まれる元素固有のエネルギーを持つ特性X線のピークのほかに、台座部12の構成元素であるカーボン固有のエネルギーを持つ特性X線のピークが検出されるものの、それ以外の元素に由来する特性X線のピークが誤検出されることはなくなる。このため、試料から放出される特性X線を反映した正確な分析結果が得られる。
また、本実施の形態においては、本体部11のベース部14を台座部12で覆うとともに、台座部12の外周部をベース部14の外周部よりも外側に突出させて段付き部17を形成している。このため、試料台8をピンセット等で保持する場合は、段付き部17をガイドに利用して試料台8をつかむことができる。したがって、試料台8のハンドリング性が良好なものとなる。また、試料台8を安全かつ確実に保持することが可能となる。
(実施例)
以下、本発明の実施例について記述する。
本実施例においては、まず、アルミニウム製の本体部11と、厚さ2mmのカーボン製の台座部12を用意した。次に、本体部11のベース部14の上面に、日本電子株式会社(JEOL)製のカーボンドータイトを均一に塗布し、その上に台座部12を載せて接着した。その後、本体部11の上で台座部12が動かないようにカーボンドータイトを乾燥させた。次に、試料台8の表面をエタノールで拭き取ることにより、台座部12の表面を清浄化した。次に、上記のカーボンドータイトを用いて、試料を台座部12の上面12aに固定した。試料には、銅ポリイミド基板から銅の薄膜部分を含む薄片を切り出したものを用いた。その後、カーボンドータイトを乾燥させてから、走査型電子顕微鏡の試料室に試料台8をセットし、そこに設置された試料の表面に電子線を照射して、SEMによる観察とEDXによる元素分析を行った。
その結果、図6に示すようなスペクトルが得られた。この図6では、グラフの横軸にX線のエネルギー、縦軸にX線の強度をとり、グラフの右上にSEM画像を表示している。図示したスペクトルにおいては、銅(Cu)固有のX線のエネルギーのところにピークが現れている。このため、試料を構成する元素の種類として、上述した銅ポリイミド基板の銅薄膜由来の元素が検出され、それ以外の元素は検出されないという良好な結果が得られた。
ちなみに、EDXによる元素分析を終えた後に、走査型電子顕微鏡の試料室から試料台8を取り出し、ピンセットを使って試料台8から試料を取り外してみた。そうしたところ、試料に大きな外力を加えなくても、試料台8から試料を剥がすことができた。また、取り外した試料の状態を観察したところ、試料の表面や断面に目立った損傷は見つからなかった。
また参考までに、試料台8に試料を設置せずに台座部12の表面に電子線を照射してEDXによる元素分析を行ってみた。その結果、図7に示すように、台座部12の構成元素であるカーボン(C)固有のX線のエネルギーのところにピークが検出され、それ以外のところにはピークが検出されなかった。このことは、試料台8の本体部11を構成しているアルミニウム由来のピークが誤検出されないことを意味する。このため、たとえば、材料の組成などが未知の金属粉末を試料台8の台座部12に試料として設置し、EDXによる分析を行った場合は、金属元素由来のピークだけがカーボンよりも高エネルギー側に現れることになる。したがって、試料台8は、未知試料の分析に適したものとなる。
(変形例等)
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
たとえば、上記実施の形態においては、試料台8の本体部11をアルミニウムで構成したが、本発明はこれに限らず、本体部11は金属製(合金を含む)であればよい。一例を挙げると、真鍮製の本体部11を採用することが可能である。
また、上記実施の形態においては、本体部11のベース部14とこれが接着される台座部12とをそれぞれ円板状としたが、これに限らず、円板以外の板状としてもよい。
また、本体部11の形態については、たとえば下記の第1変形例または第2変形例のような形態としてもよい。
(第1変形例)
図8に示す試料台8においては、本体部11のベース部14と、その上に搭載された台座部12とが、互いに同一の外径を有して同心状に配置されている。このため、ベース部14の外周面と台座部12の外周面とは、段差のない状態でつながっている。
(第2変形例)
図9に示す試料台8においては、本体部11のベース部14が、上段部14aと下段部14bの二段構造になっている。上段部14aと下段部14bは、上方から見て同心状の円形に形成されている。上段部14aの上面は、台座部12の下面に接着されている。台座部12と下段部14bの間には、上段部14aの介在により、くびれ部16が形成されている。このくびれ部16は、ピンセットで試料台8を保持するときに、ピンセットのガイドとして利用することができる。具体的には、ピンセットの把持部をくびれ部16に挿入して上段部14aを挟み込むことにより、試料台8を安定的に保持することができる。
なお、第2変形例では、台座部12の外径を下段部14bの外径よりも大きくしているが、これに限らず、台座部12と下段部14bを同じ外径にしてもよい。また、上段部14aの平面視形状を、円形ではなく、四角形等の多角形としてもよい。また、上段部14aは、ベース部14の一部としてではなく、台座部12の一部として形成してもよい。
また、上記実施の形態においては、走査型電子顕微鏡1に用いられる試料台8を例に挙げて説明したが、本発明の試料台は、走査型電子顕微鏡以外の電子顕微鏡にも広く使用することが可能である。
1…走査型電子顕微鏡
8…試料台
11…本体部
12…台座部
14…ベース部
16…くびれ部
17…段付き部

Claims (3)

  1. 電子顕微鏡で電子線が照射される試料を設置するために用いられる試料台であって、
    前記試料台は、
    金属製の本体部と、
    前記本体部の上面を覆うカーボン製の台座部と、を備え、
    前記台座部の上面が前記試料の設置面になっている
    ことを特徴とする試料台。
  2. 前記本体部は、板状のベース部を有し、
    前記台座部は、前記ベース部よりも外形寸法が大きい板状に形成され、
    前記台座部の下面側には、前記ベース部と前記台座部の外形寸法差による段付き部が形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の試料台。
  3. 前記本体部は、アルミニウムによって構成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の試料台。
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