以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る流路切換弁の第1実施例を示し、(A)は一側面図、(B)は上面側配置図、(C)は下面側配置図である。また、図2、図3、図4は、それぞれ図1(B)のA−A矢視線に従って部分的に破断した他側面図、B−B矢視線に従って部分的に破断した他側面図、C−C矢視線に従う主弁部分の拡大断面図である。
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
[主弁の第1実施例]
図示実施例の流路切換弁1は、四方切換弁であり、例えば前述した図22に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における四方切換弁140として用いられるもので、ロータリー式の主弁5と、流体圧式のアクチュエータ7とを備える。
以下においては、まず、主として主弁5について説明し、その後にアクチュエータ7について説明する。
主弁5は、主弁ハウジング10と、この主弁ハウジング10内に回動可能かつ上下動可能に配在された主弁体20とを備える。
主弁ハウジング10は、アルミあるいはステンレス等の金属製とされ、円筒状の胴部10Cと、この胴部10Cの上面開口を気密的に封止するようにかしめ固定され、さらにはんだ付け、ろう付け、溶接等により固定された厚肉円板状の上側弁シート10Aと、胴部10Cの下面開口を閉塞するように前記上側弁シート10Aと同様に前記胴部10Cに固定された厚肉円板状の下側弁シート10Bとを有し、上側弁シート10Aの左右には、管継手からなる第1ポート11、第2ポート12が垂設され、下側弁シート10Bの左右には、管継手からなる第3ポート13、第4ポート14が垂設されている。各ポート11〜14は同一円周上に設けられており、第1ポート11と第3ポート13及び第2ポート12と第4ポート14は平面視同一位置に配在されている。上側弁シート10Aの下面及び下側弁シート10Bの上面は、平坦で滑らかな弁シート面17、17となっている。
本実施例では、図22に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100に組み込まれた場合において、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートDとされ、第2ポート12は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートEとされ、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートCとされ、第4ポート14は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートSとされる(図1参照)。
前記主弁ハウジング10における上側弁シート10Aの下面(内面)側中央(主弁ハウジング10の中心線O上)には、主弁体20の上側回転軸部30A(後述)を回転自在に支持する軸受穴15Aが設けられている。また、下側弁シート10Bの下面側中央(すなわち、第3ポート13と第4ポート14の間)には、前後方向に延びる突設部19が設けられ、下側弁シート10B及び突設部19における中央(主弁ハウジング10の中心線O上)に、主弁体20の下側回転軸部30B(後述)を回転自在に支持する軸受穴15Bが設けられている。軸受穴15B(の内周面)と主弁体20の下側回転軸部30B(の摺動面)との間には、Oリング16が介装されている。
また、下側弁シート10Bの下面側(主弁体20の回転軸線O方向の端面側)には、アクチュエータ7の本体部50が前記突設部19と一体的に設けられ、突設部19の下面が、前記本体部50の作動室55の上面(ピストンに装着されたパッキンとの摺動面)を形成している(後で詳述)。前記本体部50は、主弁ハウジング10の中心線Oに垂直な前後方向に延びる中心線Qに沿うように第3ポート13と第4ポート14の間に設けられ、平面視で主弁ハウジング10から側方には突出しないようになっている(すなわち、下側弁シート10Bの径内に収まっている)。なお、パイロット弁80は、流路切換弁1の適宜の位置に配置することができる。
主弁体20は、短円柱状の上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成となっている。詳しくは、比較的厚みのある第1層部材21と該第1層部材21の下面側に溶接等により一体的に接合された第2層部材22とで上半部20Aが構成され、厚肉円板状の第3層部材23と該第3層部材23の下面側に溶接等により一体的に接合された比較的厚みのある第4層部材24とで下半部20Bが構成されている。
前記上半部20A(の第2層部材22)と下半部20B(の第3層部材23)との間に、それらを相互に逆方向に付勢する付勢手段としての4本の圧縮コイルばね29が縮装されている(図2参照)。4本の圧縮コイルばね29は、第3層部材23の上面側の同一円周上に等角度間隔で設けられた4個のばね収納穴23h(図9参照)に、その一部を上方に突出させた状態で装填されている。
主弁体20の第1層部材21の上面側及び第4層部材24の下面側の平面視同一位置には、主弁体20の中心線O(主弁ハウジング10と共通)を通る断面矩形の横断溝27、27が形成されている。この横断溝27、27の両端近くには、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bとを一体回動可能かつ上下動可能とすべく、図3に示される如くに、2本の貫通穴26が形成されるとともに、この2本の貫通穴26に上下端部が小径とされた棒部材としての段付きの一体回動棒25がそれぞれ挿入されている。一体回動棒25の上下の小径部25aは、上側回転軸部30A及び下側回転軸部30Bの角棒部30b、30dの両端近くに設けられた挿通穴30e、30fに圧入やかしめ固定等されて嵌挿されている。
主弁体20の回転軸部は、図2〜4に示される如くに、主弁体20の本体部分(上半部20A、下半部20B)と一体的に挙動可能な上側回転軸部30Aと下側回転軸部30Bとに分けられ、それらが前記一体回動棒25により接続されている。上側回転軸部30Aは、前記軸受穴15Aに挿入される枢軸部30aと、前記横断溝27に嵌合する、それと長さが略同じで断面矩形の角棒部30bとからなっている。下側回転軸部30Bは、前記軸受穴15Bに挿入される枢軸部30cと、前記横断溝27に嵌合する、それと長さが略同じで断面矩形の角棒部30dとを有するとともに、前記枢軸部30cは、後述するアクチュエータ7の作動室55(の作動室中央部55C)まで延びていて、その下端に更に小径の駆動軸部30gが連接されている。この駆動軸部30gには、枢軸部30cと駆動軸部30gとで形成される段差部に接当するように運動変換機構58の一部である従動ディスクが連結固定されるとともに、その先端は、作動室55を形成する円筒体51の下面中央に設けられた軸受穴51Aに挿入される(図18参照)。角棒部30b、30dの両端近くには、前記挿通穴30e、30fが設けられている。
したがって、上下の回転軸部30A、30Bと左右の一体回動棒25、25は、一体回動可能に井形状ないし矩形状に組まれた枠状体28を構成しており、この枠状体28により、運動変換機構58における受圧移動体60A、60Bからの荷重が主弁体20(上半部20Aと下半部20B)に偏り無く確実に伝達されるとともに、二分割構成とされた主弁体20(上半部20A、下半部20B)が一体回動棒25に沿って若干摺動可能とされていることにより、その上下動、傾き、位置ずれ等に柔軟に対応できる。
流路切換にあたり、主弁体20は、後述するアクチュエータ7により、正逆両方向に回転せしめられ、図6(A)に示される如くの第1の回転位置と、この第1の回転位置から時計回りに60°回転させた、図6(B)に示される如くの第2の回転位置とを選択的にとり得るようにされている。
主弁体20には、第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路31及び第2ポート12と第4ポート14とを連通させる第2連通路32とが設けられるとともに、第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させる第3連通路33及び第3ポート13と第4ポート14とを連通させる第4連通路34とが設けられている。
詳細には、前記第1〜第4連通路31〜34を構成する、第1〜第4層部材21〜24に設けられた各通路部の上面開口又は下面開口は、第1〜第4ポート11〜14と同一円周上に配在されており、また、その口径は各ポート11〜14の口径と略同じとされ、さらに、第1連通路31と第2連通路32は、各ポート11〜14の口径と略同じ通路径となっている。
主弁体上半部20Aの上部を構成する第1層部材21には、図7に示される如くに、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部21A、21Bが設けられるとともに、第2層部材22によりその下面開口が閉塞される、平面視波状の横穴21Eにより結ばれた2つの横穴付き通路部21C、21Dが設けられている。横穴付き通路部21Cと21Dは、180°間隔をあけて配在されており、2つ合わせてU字状の比較的容積の大きな連通路(第3連通路33)を形成する。直線貫通路部21A、21Bと横穴付き通路部21C、21Dとの角度間隔は60°とされている。
したがって、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、直線貫通路部21A、21Bが第1ポート11、第2ポート12の真下に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させると、直線貫通路部21A、21Bの上面開口が上側弁シート10Aにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部21C、21Dの上面開口が第1ポート11、第2ポート12の真下に位置する。
主弁体上半部20Aの下部を構成する第2層部材22には、図8に示される如くに、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部22A、22Bが設けられている。直線貫通路部22A、22Bは第1層部材21の直線貫通路部21A、21Bの真下に位置している。
主弁体下半部20Bの上部を構成する第3層部材23には、図9に示される如くに、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部23A、23Bが設けられている。直線貫通路部23A、23Bは第2層部材22の直線貫通路部22A、22Bの真下に位置している。
主弁体下半部20Bの下部を構成する第4層部材24には、図10に示される如くに、第1層部材21と同様に、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部24A、24Bが設けられるとともに、第3層部材23によりその上面開口が閉塞される、平面視波状の横穴24Eにより結ばれた2つの横穴付き通路部24C、24Dが設けられている。直線貫通路部24A、24Bは第3層部材23の直線貫通路部23A、23Bの真下に位置している。横穴付き通路部24Cと24Dは、180°間隔をあけて配在されており、2つ合わせてU字状の比較的容積の大きな連通路(第4連通路34)を形成する。直線貫通路部24A、24Bと横孔付き通路部24C、24Dとの角度間隔は60°とされている。
したがって、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、直線貫通路部24A、24Bが第3ポート13、第4ポート14の真上に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させると、直線貫通路部24A、24Bの下面開口が下側弁シート10Bにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部24C、24Dの下面開口が第3ポート13、第4ポート14の真上に位置する。
第1層部材21と第2層部材22の2つの部材を合わせて連通路(第3連通路33)を形成したため、断面視で視て、横穴付き通路部21C、21Dの間には、横穴21E側に膨出した案内部が、中心線Oに垂直な方向に比較的長く設けられている。この案内部により、流体(冷媒)がU字状に曲がる部分に発生する渦流を防止することができ、また、横穴21Eの口径と各ポート11〜14の口径とがほぼ同じ通路径となるので、流路の体積を一様にすることができるため、主弁5内で流体の膨張や縮小が発生せず、圧力損失を低減できる。仮に、後述する3Dプリンターを用いずに成形品にて主弁体上半部20Aを作成した場合には、前記連通路は、案内部の無い椀型とせざるを得ず、渦流が発生したり、流路の体積を一様にできないため、圧力損失が大きくなる。
前記した各連通路31、32、33、34の両端部には、図4、図5、図7を参照すればよくわかるように、上側弁シート10A、下側弁シート10Bの弁シート面17、17における各ポート11〜14の開口周りに密接する円環状シール面37、37を持つ凸部36が突設されている。隣り合う凸部36、36(のシール面37、37)は連設されて平面視メガネ状を呈するものとなっており、第4層部材24に設けられた凸部36(のシール面37)も同様である。
また、第1連通路31と第2連通路32は、図4に示される如くに、主弁体20の上半部20Aと下半部20Bとに跨がる分割連通路となっているので、シール性を確保するため、次のような方策が講じられている。すなわち、第1連通路31を代表して説明するに、第1連通路31を構成する第2層部材22の直線貫通路部22Aの下部に大径部22cが形成されるとともに、第3層部材23の直線貫通路部23Aの上端に、前記大径部22cに摺動自在に挿入される円筒状部23cが延設され、大径部22cと円筒状部23cとの間にOリング49が介装され、当該Oリング49の脱落を防止するワッシャ49aが大径部22cの端部に溶接にて接合されている。第2連通路32も同様な構成となっている。
上記に加え、本実施例では、主弁体20の第1層部材21と上側弁シート10Aとの間、及び、第4層部材24と下側弁シート10Bとの間に、主弁体20の回転時において、主弁体20側のシール面37、37を上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの弁シート面17、17から離れさせるボール式シール面離隔機構45が設けられている。
ボール式シール面離隔機構45は、第1層部材21と上側弁シート10Aとの間に設けられたものが図4、図5に代表例で示されているように、ボール46と、該ボール46を、その一部を上下方向に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で収容する収容部47と、主弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、主弁体20側のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17から離れないように、前記収容部47から突出する前記ボール46の一部が嵌め込まれ、主弁体20の回転時(流路切換中)においては、ボール46が主弁体20を押し下げながら転がり出るような寸法形状とされた逆円錐状の凹穴48とを備えている。なお、収容部47は、丸穴47aと該丸穴47aに圧入等により固定された、上部が窄まった筒状抜け止め金具47bとで構成されている。
前記ボール46が収容された収容部47は、図7及び図10の(A)の(1)に示される如くに、主弁体20の第1層部材21と第4層部材24の同一円周上にそれぞれ90°間隔をあけて4箇所に設けられており、また、凹穴48は上側弁シート10Aと下側弁シート10Bの同一円周上の、平面視で前記収容部47と同一位置及び該位置から時計回りに60°離れた位置の計8箇所に設けられている。
かかるシール面離隔機構45では、主弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、図5(A)に示される如くに、上側弁シート10Aの凹穴48内にボール46の一部が嵌り込んでいる。この嵌り込み量(上側弁シート10Aの弁シート面17からボール46の頂上までの高さ)をhとする。この状態から主弁体20を60°回転させ始めると、収容部47が周方向に移動(回転)し、これに伴ってボール46は、図5(B)に示される如くに、主弁体20(上半部20A)を、上半部20Aと下半部20Bとの間に縮装された圧縮コイルばね29の付勢力に抗して、押し下げながら凹穴48から転がり出る。これによって、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17から離れる。この際の主弁体20の押し下げ量は前記嵌り込み量hとなる。
なお、主弁体20が60°回転すると、ボール46が次の凹穴48に嵌り込むので、主弁体20(上半部20A)は圧縮コイルばね29の付勢力によって押し上げられ、主弁体20のシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17に押し付けられる。
以上の説明から理解されるように、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路31は、直線貫通路部21A、22A、23A、及び24Aで構成される直線状通路となり、また、第2ポート12と第4ポート14とを連通させる第2連通路32は、直線貫通路部21B、22B、23B、及び24Bで構成される直線状通路となる。
それに対し、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第2ポート12とを連通させる第3連通路33は、主弁体20の上半部20Aに設けられた横穴付き通路部21C及び21Dで構成されるU字状通路となり、また、第3ポート13と第4ポート14とを連通させる第4連通路34は、主弁体20の下半部20Bに設けられた横穴付き通路部24C及び24Dで構成されるU字状通路となる。
上記のように、本実施例の流路切換弁1では、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させることにより、第1連通路31により連通するポート11−13間及び第2連通路32により連通するポート12−14間から、第3連通路33により連通するポート11−12間及び第4連通路34により連通するポート13−14間への流路の切り換えが行われ、主弁体20を第2の回転位置から反時計回りに60°回転させることにより、第3連通路33により連通するポート11−12間及び第4連通路34により連通するポート13−14間から、第1連通路31により連通するポート11−13間及び第2連通路32により連通するポート12−14間への流路の切り換えが行われる。
本実施例の流路切換弁1を、図22に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システムに組み込む際には、前述したように、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートD、第2ポート12は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートE、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートC、第4ポート14は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートSとされる。
そして、冷房運転を行う場合には、主弁体20に図6(A)に示される如くの第1の回転位置をとらせる。これにより、図6(A)の(2)に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→直線状の第1連通路31→室外側入出ポート13(C)へと流れるとともに、室内熱交換器からの低圧冷媒が室内側入出ポート12(E)→直線状の第2連通路32→吸入側低圧ポート14(S)へと流れる。
一方、暖房運転を行う場合には、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させて図6(B)に示される如くの第2の回転位置をとらせる。これにより、流路の切り換えが行われ、図6(B)の(2)に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→U字状の第3連通路33→室内側入出ポート12(E)へと流れるとともに、室外側熱交換器からの低圧冷媒が室外側入出ポート13(C)→逆U字状の第4連通路34→吸入側低圧ポート14(S)へと流れる。
このような構成とされた本実施例の流路切換弁1においては、第1連通路31及び第2連通路32は始端から終端までの太さ(通路径)が第1ポート11及び第2ポート12の口径と略同じ直線状の通路とされ、冷媒は第1ポート11、第2ポート12から真下にストレートに流れるので、主弁5(主弁体20)内での圧力損失はほとんど生じない。また、二つの横穴付き通路部21C及び21D、24C及び24Dで構成される第3連通路33及び第4連通路34は、内容積が比較的大きくされているので、圧力損失が軽減され、トータルでは従来の流路切換弁に比べて圧力損失を相当軽減できる。
また、主弁体20が上半部20Aと下半部20Bとの二分割構成とされ、上半部20Aと下半部20Bはそれぞれ独立して上下動できるようにされるとともに、上半部20Aと下半部20Bとの間に圧縮コイルばね29が縮装されているので、そのばね力により、上半部20Aは押し上げられてそのシール面37が上側弁シート10Aの弁シート面17における各ポート11、12周りに押し付けられるとともに、下半部20Bは押し下げられてそのシール面37が下側弁シート10Bの弁シート面17における各ポート13、14周りに押し付けられる。
この場合、主弁体20(上半部20Aと下半部20B)側に凸部36が突設されてその端面が環状シール面37とされていることから、弁シート面17に対接する部分の面積が必要最小限とされ、そのため、対接面圧が高められる。これにより、十分なシール性を確保できて、流体(冷媒)が主弁体20の摺動面から漏れる弁洩れを効果的に抑制できる。
加えて、上側弁シート10A及び下側弁シート10Bは平板状とされるので、弁シート面17を平坦な平滑面とする(容易に面精度を上げる)ことができ、これによっても、従来例のようにシールすべき面に円筒面を含んでいるものに比べて、シール性を格段に向上できる。
さらに、主弁ハウジング10の上側弁シート10A及び下側弁シート10Bに全てのポート11〜14が設けられることから、配管の取り回しが容易となるとともに、配管を含めた実質的な占有スペースを小さくできる。
さらに加えて、本実施例においては、ボール式シール面離隔機構45により、主弁体20の回転時(流路切換中)には、主弁体20の上半部20Aが押し下げられるとともに、下半部20Bが押し上げられ、主弁体20側のシール面37、37が上側弁シート10A及び下側弁シート10Bの弁シート面17、17から離されるようにされているので、摺動摩擦がほとんど生じず、そのため、スティックスリップ等を生じ難くでき、摺動部分の摩耗を大幅に抑制することができ、さらに、摩耗が抑制されることから、シール性が向上して弁洩れを効果的に抑えることができる。
また、従来のスライド式主弁体を有する四方切換弁においては、流路の切換時に高圧配管Dと低圧配管Sとの流路開口面積が急激に変化するため、高圧の冷媒が低圧配管に一気に入り込むことより異音(切換音)が発生する。この異音を防止するために、冷暖房システム側で圧縮機の周波数を徐々に低下させて、高圧配管Dと低圧配管Sとの圧力差による異音が許容できる程度の差圧になるようにしてから流路の切り換えを行う必要があった。本実施例の流路切換弁1においては、ボール式シール面隔離機構45により主弁体を弁シート面から嵌り込み量hの分だけ浮かせてから切り換えるので、切換直後から一定の流路開口面積を確保でき、高圧配管Dと低圧配管Sとの間の流路開口面積が急激に変化することがなく、それゆえ上記の異音の発生を抑制できる。また、嵌り込み量hを適宜変更することにより、流路切換時の圧縮機の周波数の低下度合を従来の四方切換弁を用いた冷暖房システムより小さくすることもできるし、圧縮機の周波数の低下を行うことなく流路を切り換えることもできる。
さらに、本実施例の流路切換弁1は、高圧を受ける主弁体20(上半部20Aと下半部20B)が円柱状とされ、その内部に連通路31〜34が設けられるので、従来例のような変形(撓み)等は生じ難く、十分な強度や耐久性を確保できる。
上記に加え、本実施例の流路切換弁1をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、各連通路31〜34は主弁体20内で比較的大きく離されて設けられているので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが近接した状態(薄壁一枚を隔てた状態)で流される従来のものに比べて、主弁ハウジング内での熱交換量を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
次に、上記した第1実施例の主弁体の変形例について説明する。
図11は、第1実施例の主弁体20の上半部20Aと下半部20Bをそれぞれ一体物とした例を示す。すなわち、上記第1実施例では、第1層部材21とこれに接合された第2層部材22とで上半部20Aが、また、第3層部材23とこれに接合された第4層部材24とで下半部20Bが構成されていたが、本例では、3Dプリンター等で上半部20A及び下半部20Bをそれぞれ始めから一体物として作製したものである。他の構成は、上記第1実施例と同じであり、上記第1実施例と略同様な作用効果が得られる。
図12は、第1実施例の主弁体20の上半部20Aと下半部20Bを一体物とした例を示す。すなわち、主弁体20全体(第1〜第4層部材21〜24)を、3Dプリンター等で始めから一体物として作製したものである。この例のものでは、主弁体20を上下方向に付勢する手段を設けることができないので、所要のシール性を確保することは難しくなる。
[主弁の第2実施例]
以下、本発明の第2実施例の流路切換弁2を図13〜15を参照しながら説明する。
本第2実施例の流路切換弁2は、上記第1実施例の主弁体20内に設けられる連通路構成が異なるだけで、他の構成は略同じであるので、第1実施例の流路切換弁1との共通部分は図示を簡略化ないし省略し、以下においては、相違点(連通路構成)のみを重点的に説明する。なお、図13〜図15において、第1実施例の流路切換弁1の各部に対応する部分には共通の符号が付されている。
図13の(A)は主弁体20が第1の回転位置にある状態を示し、(B)は主弁体20が、第1の回転位置から時計回りに90°回転した第2の回転位置にある状態を示しており、(1)は上面側配置図、(2)は各状態における連通路構成を示す概略図、(3)は下面側配置図である。
図14の(A)は、第2実施例における主弁体20が第1の回転位置にある状態の、(1)第1層部材21、(2)第2層部材22、(3)第3層部材23、(4)第4層部材24のそれぞれの平面図、(B)は、主弁体20が第1の回転位置にある状態における連通路構成を示し、(B)の(1)〜(4)は、(A)の(1)〜(4)のX−X矢視線に従う断面図である。
図15(A)は、主弁体20が第2の回転位置にある状態の、(1)第1層部材21、(2)第2層部材22、(3)第3層部材23、(4)第4層部材24のそれぞれの平面図、(B)は、主弁体20が第2の回転位置にある状態における連通路構成を示し、(B)の(1)の上段側、下段側は、それぞれ(A)の(1)におけるU−U矢視線、V−V矢視線に従う部分断面図、(B)の(2)及び(3)は、(A)の(2)及び(3)のY−Y矢視線に従う断面図、(B)の(4)の上段側、下段側は、それぞれ(A)の(4)におけるJ−J矢視線、K−K矢視線に従う部分断面図である。
本実施例の流路切換弁2を、図22に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システムに組み込む際には、第1実施例とは異なり、例えば、第1ポート11は圧縮機吐出側に接続される吐出側高圧ポートD、第2ポート12は圧縮機吸入側に接続される吸入側低圧ポートS、第3ポート13は室外熱交換器に接続される室外側入出ポートC、第4ポート14は室内熱交換器に接続される室内側入出ポートEとされる。
そして、本第2実施例の流路切換弁2の主弁体20には、第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路41及び第4ポート14と第2ポート12とを連通させる第2連通路42とが設けられるとともに、第1の回転位置から時計回りに90°回転した第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第4ポート14とを連通させる第3連通路43及び第3ポート13と第2ポート12とを連通させる第4連通路44とが設けられている。
上記第1〜第4連通路41〜44を形成するために、主弁体20を構成する第1〜第4層部材21〜24には、それぞれ4個ずつ通路部が設けられており、第1層部材21に設けられた4個の通路部の上面開口及び第4層部材24に設けられ4個の通路部の下面開口は、第1〜第4ポート11〜14と同一円周上に配在されており、また、その口径は各ポート11〜14の口径と略同じとされ、さらに、第1連通路41と第2連通路42は、各ポート11〜14の口径と略同じ通路径となっている。
主弁体上半部20Aの上部を構成する第1層部材21には、第1実施例の直線貫通路部21A、21Bと同様に、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部41A、41Bが設けられる。また、図15(B)の(1)の上段側及び下段側に示される如くに、一端部が開口し(上面開口41a、41c)、下面側全体が開口した横穴付き通路部41C、41Dが設けられる。横穴付き通路部41C、41Dの上面開口41a、41cは直線貫通路部41A、41Bから90°離れた位置に配在され、また、他端部以外の下面開口は第2層部材22により閉塞され、第2層部材22により閉塞されていない他端部(下面開口41b、41d)は、直線貫通路部41A、41Bの中心を結ぶ直線上に配在されている。
したがって、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、直線貫通路部41A、41Bが第1ポート11、第2ポート12の真下に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに90°回転させると、直線貫通路部41A、41Bの上面開口が上側弁シート10Aにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部41D、41Cの上面開口が第1ポート11、第2ポート12の真下に位置する。
主弁体上半部20Aの下部を構成する第2層部材22には、前記した第1層部材21の直線貫通路部41A、41Bの中心を結ぶ直線上に所定間隔をあけて4つの直線貫通路部42A、42B、42C、42Dが設けられている。直線貫通路部42A、42Dは、第1層部材21の直線貫通路部41A、41Bの真下に位置している。直線貫通路部42Bは、横穴付き通路部41Cの下面開口41bの真下に位置し、直線貫通路部42Cは、横穴付き通路部41Dの下面開口41dの真下に位置している。
主弁体下半部20Bの上部を構成する第3層部材23には、第2層部材22に設けられた4つの直線貫通路部42A、42B、42C、42Dの真下に、4つの直線貫通路部43A、43B、43C、43Dが設けられている。
主弁体下半部20Bの下部を構成する第4層部材24には、第1実施例の直線貫通路部21A、21Bと同様に、180°間隔をあけて2つの直線貫通路部44A、44Bが設けられる。また、図15(B)の(4)の上段側及び下段側に示される如くに、一端部が開口し(下面開口44a、44c)、上面側全体が開口した横穴付き通路部44C、44Dが設けられる。横穴付き通路部44C、44Dの下面開口44a、44cは直線貫通路部41A、41Bから90°離れた位置に配在され、また、他端部以外の上面開口は第3層部材23により閉塞され、第3層部材23により閉塞されていない他端部(上面開口44b、44d)は、直線貫通路部44A、44Bの中心を結ぶ直線上に配在されている。
したがって、主弁体20が第1の回転位置にあるときには、直線貫通路部44A、44Bが第3ポート13、第4ポート14の真上に位置し、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに90°回転させると、直線貫通路部44A、44Bの下面開口が下側弁シート10Bにより閉塞されるとともに、横穴付き通路部44D、44Cの下面開口44c、44aが第3ポート13、第4ポート14の真上に位置する。
以上の説明から理解されるように、主弁体20が第1の回転位置をとるとき、第1ポート11と第3ポート13とを連通させる第1連通路41は、直線貫通路部41A、42A、43A、及び44Aで構成される直線状通路となり、また、第4ポート14と第2ポート12とを連通させる第2連通路42は、直線貫通路部41B、42D、43D、及び44Bで構成される直線状通路となる。
それに対し、主弁体20が第2の回転位置をとるとき、第1ポート11と第4ポート14とを連通させる第3連通路43は、上から順に横穴付き通路部41D→直線貫通路部42C→直線貫通路部43C→横穴付き通路部44Cで構成されるクランク状通路となる。また、第3ポート13と第2ポート12とを連通させる第4連通路44は、下から順に横穴付き通路部44D→直線貫通路部43B→直線貫通路部42B→横穴付き通路部41Cで構成されるクランク状通路となる。
上記のように、本実施例の流路切換弁2では、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに90°回転させることにより、第1連通路41により連通するポート11−13間及び第2連通路42により連通するポート14−12間から、第3連通路43により連通するポート11−14間及び第4連通路44により連通するポート13−12間への流路の切り換えが行われ、主弁体20を第2の回転位置から反時計回りに90°回転させることにより、第3連通路43により連通するポート11−14間及び第4連通路44により連通するポート13−12間から、第1連通路41により連通するポート11−13間及び第2連通路42により連通するポート14−12間への流路の切り換えが行われる。
本実施例の流路切換弁2を、図22に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システムに組み込んで、冷房運転を行う場合には、主弁体20に図13(A)の(1)に示される如くの第1の回転位置をとらせる。これにより、図13(A)の(2)に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→直線状の第1連通路41→室外側入出ポート13(C)へと流れるとともに、室内熱交換器からの低圧冷媒が室内側入出ポート14(E)→直線状の第2連通路42→吸入側低圧ポート12(S)へと流れる。
一方、暖房運転を行う場合には、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに90°回転させて図13(B)の(1)に示される如くの第2の回転位置をとらせる。これにより、流路の切り換えが行われ、図13(B)の(2)に白抜き矢印で示される如くに、圧縮機からの高圧冷媒が吐出側高圧ポート11(D)→クランク状の第3連通路43→室内側入出ポート14(E)へと流れるとともに、室外側熱交換器からの低圧冷媒が室外側入出ポート13(C)→クランク状の第4連通路44→吸入側低圧ポート12(S)へと流れる。
このような構成とされた本実施例の流路切換弁2においても第1実施例とほぼ同様な作用効果が得られる。
[主弁の第3実施例]
図16は、第3実施例の流路切換弁を示し、(A)は主弁体が第1の回転位置にある状態、(B)は主弁体が第2の回転位置にある状態であり、(1)は上面側配置図、(2)は(1)のX−X矢視線に従う断面図である。なお、図16において、第1実施例の流路切換弁1の各部に対応する部分には共通の符号が付されている。
本第3実施例の流路切換弁3は、三方切換弁であり、上記第1実施例の主弁ハウジング10に設けられている第2ポート12が無く、第1層部材21と第2層部材22とが一体化され(U字状の連通路(第3連通路33)を形成する必要がないため)、また、第1実施例における第2連通路32及び第3連通路33を構成する直線貫通路部21B、22B、23B、24Bと横穴付き通路部21C、21D及びそれに付随する部分を削除したものである。
したがって、本第3実施例の流路切換弁3では、主弁体20を第1の回転位置から時計回りに60°回転させることにより、第1連通路31により連通するポート11−13間から第4連通路34により連通するポート13−14間への流路の切り換えが行われ、主弁体20を第2の回転位置から反時計回りに60°回転させることにより、第4連通路34により連通するポート13−14間から、第1連通路31により連通するポート11−13間への流路の切り換えが行われる。
このような構成とされた本実施例の流路切換弁3においても、三方切換弁と四方切換弁との違いはあるが、第1実施例の四方切換弁1とほぼ同様な作用効果が得られる。
なお、本実施例の三方切換弁3を前述したヒートポンプ式冷暖房システムに使用する場合には、当該三方切換弁3を2個使用して四方切換弁として働かせる、あるいは、冷媒又は冷気・暖気供給先の切り換え(例えば、2室のうちの一方に送るか、他方に送るかの切り換え)等に使用する。
[アクチュエータの実施例]
次に、図17〜図20を参照しながら、前記第1実施例の流路切換弁1における主弁体20を回動させるためのアクチュエータ7について説明する。
本実施例1のアクチュエータ7は、前記主弁5内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用した流体圧式のもので、前記主弁ハウジング10における下面側に設けられた突設部19に一体的に設けられた本体部50を有する。本体部50は、前後方向に延びる中心線Q(主弁体20の回転軸線Oに垂直な方向の中心線)に沿って延びる円筒体51と、この円筒体51の両端開口を気密的に封止するように固着されてかしめ固定された、中央に内側へ向かう凸部52a、52bを持つ断面ハット形状の前端面閉塞部材52A及び後端面閉塞部材52Bとを備え、その内部に、作動室55が設けられている。作動室55の上面は、突設部19の下面により形成される。
前記作動室55には、本体部50の中心線Qに沿って摺動可能に一対の受圧移動体60A、60Bが収容され、各受圧移動体60A、60Bに、運動変換機構58を構成する駆動ピン64A、64Bが設けられ、作動室55(の作動室中央部55C)に延設された主弁体20の回転軸部30Bの駆動軸部30gに、運動変換機構58を構成する従動ディスク65が連結固定されている。
詳細には、各受圧移動体60A、60Bは、平面視略L形状を有し、前記作動室55内に対向配置された短円柱状のピストン61A、61Bを備え、該ピストン61A、61Bの中心線Qから(左右方向に)外れた位置に、前記中心線Qに沿って延びる上下一対の支持アーム63A、63Bが前記ピストン61A、61Bと一体に設けられ、この上下一対の支持アーム63A、63Bの先端付近に、上下方向に垂設された棒部材からなる駆動ピン64A、64Bが溶接・ろう付け等により固着されて支持されている。各受圧移動体60A、60Bのピストン61A、61Bの外周には、作動室55の内周面との間を気密的に封止して該作動室55を容積可変の前側部55Aと後側部55Bと中央部55Cとに気密的に仕切るパッキン62A、62Bが装着されており、各受圧移動体60A、60Bは、そのパッキン62A、62Bが作動室55の内周面と摺動しながら直線的に前後方向に移動(往復直線運動)する。一方、駆動軸部30gに固定された従動部材としての円板状の従動ディスク65は、上下一対の支持アーム63A、63Bにより挟持されるとともに、前記駆動ピン64A、64Bに連れ回されるように、その外周面に180°間隔をあけて(すなわち、中心線Oに対して点対称の位置に)平面視U字形の係合溝65A、65Bが形成され、その係合溝65A、65B内に駆動ピン64A、64Bが摺動自在に嵌挿されている。また、この従動ディスク65には、径方向に向かって段付きの嵌合溝66が設けられ、その内部に平面視略矩形状の固定子67が嵌合されている。従動ディスク65が駆動軸部30gに取り付けられた状態で、固定子67が嵌合溝66に嵌挿され、その固定子67の平坦な端面が駆動軸部30gに設けられたDカット面30hに接当することで、従動ディスク65が、駆動軸部30gに対して設定された角度位置で固定される。
なお、図17には、各受圧移動体60A、60Bが最も外側にある状態、すなわち、受圧移動体60A、60Bの外側移動限界を規定する前端面閉塞部材52A及び後端面閉塞部材52Bの凸部52a、52bと接当した状態(外動行程完了状態)が示され、図19には、各受圧移動体60A、60Bが最も内側にある状態、すなわち、各受圧移動体60A、60Bの支持アーム63A、63B(の先端)が対向する受圧移動体60B、60Aのピストン61B、61A(の対向面)と接当した状態(内動行程完了状態)が示されている(後で詳述)。すなわち、本実施例では、各受圧移動体60A、60Bの支持アーム63A、63B(の先端)は、対向する受圧移動体60B、60Aの内側移動限界を規定するストッパとされる。
また、本体部50の前端面閉塞部材52Aの凸部52aに対応する箇所には、作動室前側部55Aに高圧流体を導入・排出するための側部ポート56が設けられるとともに、その中央部(主弁体20の中心線Oに対応する箇所)には、作動室中央部55Cに高圧流体を導入・排出するための中央部ポート57が設けられ、前端面閉塞部材52Aの凸部52aに対応する箇所と後端面閉塞部材52Bの凸部52bに対応する箇所とは、連通管59により接続されている。
なお、図1に示す例では、側部ポート56、中央部ポート57、連通管59が、本体部50の下面側に配在されているが、図17及び図19では、理解を容易にするため、側部ポート56、中央部ポート57、連通管59が、図1に示す例とは異なる位置(中心線Qに対して対向する位置)に配在されている。
次に、アクチュエータ7の本体部50内の動作について説明する(四方パイロット弁80の構成及びそれを用いた動作については後述する)。
図17は、作動室中央部55Cに中央部ポート57を介して高圧流体(高圧冷媒)を導入するとともに、作動室前側部55Aから側部ポート56を介して高圧流体を排出し、作動室後側部55Bから連通管59、作動室前側部55A、及び側部ポート56を介して高圧流体を排出した状態を示している。この状態では、パッキン62A、62Bより内側の作動室中央部55C内が高圧流体で満たされる。
このような構成のもとで、図17に示される状態において、作動室前側部55Aに側部ポート56を介して高圧流体を導入するとともに、作動室中央部55Cから中央部ポート57を介して高圧流体を排出すると、作動室前側部55Aと作動室後側部55Bとは連通管59により流体連通しているので、作動室後側部55Bにも高圧流体が導入され、作動室中央部55Cより作動室前側部55A及び作動室後側部55Bの方が高圧となるので、図19に示される如くに、各受圧移動体60A、60Bが互いに近づくように内向きに押されて、受圧移動体60Aは後方に摺動し、受圧移動体60Bは前方に摺動し、これに伴って運動変換機構58の駆動ピン64Aは後方に移動し、駆動ピン64Bは前方に移動する。その際、駆動ピン64A、64Bが従動ディスク65の係合溝65A、65Bの内周面に当接して、主弁体20が周方向に押されることとなり、主弁体20は一方向(ここでは時計回り)に回転する。なお、駆動ピン64Aが後方に、64Bが前方に移動して主弁体20が回転する際には、各駆動ピン64A、64Bは、主弁体20の径方向(U字形係合溝65A、65Bの形成方向)に、従動ディスク65の係合溝65A、65B内を摺動する。各受圧移動体60A、60Bの支持アーム63A、63Bの先端が対向する受圧移動体60B、60Aのピストン61B、61Aに接当すると、各受圧移動体60B、60Aの受ける圧力は同等であるので、受圧移動体60A、60Bの内側への移動が停止し、主弁体20の回転も停止する。以下、この行程を内動行程と称し、図19に示される状態(各受圧移動体60A、60Bが最も内側にある状態)を内動行程完了状態と称する。
それに対し、前記内動行程完了状態において、作動室中央部55Cに中央部ポート57を介して高圧流体を導入するとともに、作動室前側部55Aから側部ポート56を介して高圧流体を排出すると、作動室前側部55Aと作動室後側部55Bとは連通管59により流体連通しているので、作動室後側部55Bからも高圧流体が排出され、作動室前側部55A及び作動室後側部55Bより作動室中央部55Cの方が高圧となるので、図17に示される如くに、各受圧移動体60A、60Bが互いに遠ざかるように外向きに押されて、受圧移動体60Aは前方に摺動し、受圧移動体60Bは後方に摺動し、これに伴って運動変換機構58の駆動ピン64Aは前方に摺動し、駆動ピン64Bは後方に移動する。その際、駆動ピン64A、64Bが従動ディスク65の係合溝65A、65Bの内周面に当接して、主弁体20が周方向に押されることとなり、主弁体20が他方向(ここでは反時計回り)に回転する。各受圧移動体60A、60Bの前後端(ピストン61A、61B)が前端面閉塞部材52A及び後端面閉塞部材52Bの凸部52a、52bに接当すると、各受圧移動体60A、60Bの外側への移動が停止し、主弁体20の回転も停止する。以下、この行程を外動行程と称し、図17に示される状態(各受圧移動体60A、60Bが最も外側にある状態)を外動行程完了状態と称する。
本実施例では、この回転角度は60°とされ、前述したように主弁体20が流路切換に必要とする回転角度である。
前記外動行程完了状態において各受圧移動体60A、60Bに内動行程をとらせることにより、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われ、それとは逆に、前記内動行程完了状態において各受圧移動体60A、60Bに外動行程をとらせることにより、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと回転して前述した如くの流路切換が行われる。
本実施例では、前記流路切換、すなわち、内動行程と外動行程との切り換えを、前記側部ポート56と中央部ポート57、及び、高圧部分である第1ポート11(吐出側高圧ポートD)と低圧部分である第4ポート14(吸入側低圧ポートS)とに接続された電磁式の四方パイロット弁80により行うようにされている(図1(A)参照)。
四方パイロット弁80は、その構造自体はよく知られているもので、図20に示される如くに、通電励磁用のコイル82a、このコイル82aの外周を覆うカバーケース82b、コイル82aの内周側に配在されてボルト82cによりカバーケース82bに固定された吸引子84、この吸引子84に対向配置されたプランジャ85等を備えている。プランジャ85は、コイル82aと吸引子84との間にその右端部が配在された円筒状のガイドパイプ86に摺動自在に嵌挿されており、ガイドパイプ86の右端部は、吸引子84の外周段丘部に溶接等により固定されている。また、吸引子84とプランジャ85との間には、プランジャ85を吸引子84から離れる方向(図では左方)に付勢する圧縮コイルばね87が縮装されている。
ガイドパイプ86の内面には、その内端面が弁座(シート面)92とされ、その右端面(プランジャ85側の面)がプランジャ85の吸引子84から離れる方向の移動を規制するストッパとされる断面かまぼこ形の弁座ブロック83が固着されている。また、ガイドパイプ86の左端面開口(吸引子84側とは反対側の端面開口)には、取付穴を有する蓋部材81が溶接・ろう付け・かしめ等により気密的に取着されており、蓋部材81とプランジャ85とガイドパイプ86とで囲まれる領域が弁室88となっている。
プランジャ85の吸引子84側とは反対側の端部には、弁体91をその自由端側で厚み方向に摺動可能に保持する板状の弁体ホルダ90がその幅広の基端部96をかしめにより取付固定されている。弁体ホルダ90には、弁体91を弁座92に押し付ける方向(厚み方向)に付勢する板ばね94が取り付けられている。弁体91は弁座92のシート面をプランジャ85の左右方向の移動に伴って摺動するようになっている。
前記弁座92には、左から順にポートa、ポートb、ポートcが設けられており、また、弁体91には、前記ポートaとポートb及びポートbとポートcを選択的に連通させ得る、厚み方向に凹む凹部93が設けられている。弁座ブロック83には、ポートaのみに連通するように細管95aの一端部が、ポートbのみに連通するように細管95bの一端部が、ポートcのみに連通するように細管95cの一端部が、それぞれガイドパイプ86の側壁に設けられた開口を通して気密的に挿着されている。
また、蓋部材81には、弁室88に連通するように細管95dの一端部が取付穴を通して気密的に挿着されている。
細管95aの他端部は、本体部50の側部ポート56を介して作動室前側部55Aに接続され、細管95bの他端部は、低圧部分である第4ポート14(吸入側低圧ポートS)に接続され、細管95cの他端部は、本体部50の中央部ポート57を介して作動室中央部55Cに接続され、細管95dの他端部は、高圧部分である第1ポート11(吐出側高圧ポートD)に接続され、すなわち、この弁室88は、細管95dを介して高圧部分である吐出側高圧ポートDに常時連通するようになっている。
このような構成とされた四方パイロット弁80においては、コイル82aへの通電OFF時には、図20(A)に示される如くに、プランジャ85は圧縮コイルばね87の付勢力により、その左端が弁座ブロック83に接当する位置まで押されている。この状態では、弁体91がポートaとポートb上に位置し、その凹部93によりポートaとポートbが連通するとともに、ポートcと弁室88とが連通するので、第1ポート11(吐出側高圧ポートD)内の高圧流体が細管95d→弁室88→ポートc→細管95c→中央部ポート57を介して作動室中央部55Cに導入されるとともに、作動室前側部55Aの高圧流体が側部ポート56→細管95a→ポートa→凹部93→ポートb→細管95b→第4ポート14(吸入側低圧ポートS)へと流れて排出され、作動室後側部55Bの高圧流体が連通管59→作動室前側部55A→側部ポート56→細管95a→ポートa→凹部93→ポートb→細管95b→第4ポート14(吸入側低圧ポートS)へと流れて排出される。
それに対し、コイル82aへの通電をONにすると、図20(B)に示される如くに、プランジャ85は吸引子84の吸引力により、その右端が吸引子84に接当する位置まで引き寄せられる。このときには、弁体91がポートbとポートc上に位置し、その凹部93によりポートbとポートcが連通するとともに、ポートaと弁室88とが連通するので、第1ポート11(吐出側高圧ポートD)内の高圧流体が細管95d→弁室88→ポートa→細管95a→側部ポート56を介して作動室前側部55Aに導入され、更に連通管59を介して作動室後側部55Bに導入されるとともに、作動室中央部55Cの高圧流体が中央部ポート57→細管95c→ポートc→凹部93→ポートb→細管95b→第4ポート14(吸入側低圧ポートS)へと流れて排出される。
したがって、コイル82aへの通電をOFFにすると、前記外動行程がとられ、主弁体20が第2の回転位置から第1の回転位置へと回転し、前記した如くの流路切換が行われる一方、コイル82aへの通電をONにすると、前記内動行程がとられ、主弁体20が第1の回転位置から第2の回転位置へと回転し、前記した如くの流路切換が行われる。
このように、本実施例の流路切換弁1においては、電磁式四方パイロット弁80への通電をON/OFFで切り換えることで、主弁5内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用して主弁体20を回動させるようにされているので、電動モータ等で主弁体20を回動させる場合に比べて、コスト削減、消費電力の低減、省エネ化等を図ることができる。なお、本実施例のアクチュエータ7よる流路切換は、電動モータ+減速機で行う流路切換より素早く行うことができる。
また、主弁体20を回動させるアクチュエータ7は、流体圧により受圧移動体60を前後方向(主弁体の回転軸線に垂直な方向)に移動させ、この前後方向の移動を主弁体20に伝達して当該主弁体20の回転運動に変換する構成であるので、従来例のように高圧を受ける部分が主弁体の回転軸部の延長軸部に片持ち支持された、板厚に対して受圧面積の大きな板状体であるものに比して、高圧を受ける部分(受圧移動体60)に、十分な強度を確保でき、耐久性を向上させることができるとともに、十分な強度を確保できることから、受圧面積を大きくでき、そのため、流路切換を確実かつ迅速に行うことができる。
また、主弁体20を回動させるアクチュエータ7は、主弁ハウジング10の端面側(主弁体20の回転軸線O方向における端面側)に受圧移動体60A、60Bが収容された作動室55が設けられた本体部50を有し、流体圧により移動する受圧移動体60A、60Bからの前後方向の荷重を主弁体20の回転軸部30Bに設けられた従動ディスク65に伝達して当該主弁体20を回転運動させる構成であり、特に、互いに遠ざかるようにもしくは近づくように協働して移動する一対の受圧移動体60A、60Bからの前後方向の荷重を従動ディスク65に伝達して当該主弁体20を回転運動させる構成なので、同じ受圧面積で2倍の荷重を得ることができ、その本体部50を小型化しつつ、主弁体20の回動に要する必要トルクを確実に得ることができる。
上記に加え、本実施例の運動変換機構58を備えた流体圧式のアクチュエータは、極めてシンプルな構成であるので、コスト的に有利であるとともに、高温高圧環境下で使用する場合の対策(受圧移動体60A、60Bの肉厚を厚くする等)を容易にとることができ、そのため、本実施例の流路切換弁1は、特に、ヒートポンプ式冷暖房システム等の高温高圧環境下に組み込まれる流路切換弁として費用対効果に極めて優れるものとなる。
[アクチュエータの変形例]
図21は、アクチュエータの変形例を示す。図示例のアクチュエータ8は、基本構成は上記アクチュエータ7と同様に、本体部50、側部ポート56、中央部ポート57、連通管59、受圧移動体60A、60B、四方パイロット弁80等(符号は共通)を備えているが、本例のアクチュエータ8では、各受圧移動体60A、60Bと主弁体20との間で、高圧流体の圧力を利用した各受圧移動体60A、60Bの往復直線運動を主弁体20の正逆両方向の回転運動に変換する運動変換機構58がラックピニオン式で構成されている。
詳細には、各受圧移動体60A、60Bの中心線Qと平行に(且つ中心線Qに対して反対の位置で)延びるアーム63C、63Dの表面(主弁体20の回転軸部30Bの駆動軸部30g側の表面)にラックギアとしての駆動歯64C、64Dが形成され、駆動軸部30gにピニオンギアとしての従動歯65Cが外周に形成された従動部材としての従動ディスク65が連結固定され、前記従動歯65Cに前記駆動歯64C、64Dが噛合することで前記運動変換機構58が構成されている。図示例では、各受圧移動体60A、60Bの駆動歯64C、64Dは、主弁体20の中心線Oに対して点対称となる位置で従動歯65Cに噛合している。なお、駆動歯64C、64Dや従動歯65Cの長さ(言い換えれば、従動ディスク65の外径)は、主弁体20が流路切換に必要とする回転角度により決定される。
したがって、本実施例2では、駆動ピン64A、64Bやその係合溝65A、65Bへの嵌込工程は不要とされる。そのため、構成が簡素化され、コスト的には有利である。
なお、本発明に係る流路切換弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。
また、主弁ハウジング10、主弁体20等の素材としては、アルミやステンレス等が用いられるが、それに限られることはなく、その他の金属、樹脂等の、導入される流体の圧力に耐えられるものであれば、いかなるものであってもよい。
また、作動室前側部55Aと作動室後側部55Bを連通管59により接続することなく、作動室前側部55Aと作動室後側部55Bのそれぞれにポートを設け、作動室前側部55Aと作動室後側部55Bの各ポートに接続された細管を連結してポートaに連通させ、第1ポート11(吐出側高圧ポートD)内の高圧流体を作動室前側部55A及び作動室後側部55Bにそれぞれ個別に導入したり、作動室前側部55A及び作動室後側部55Bのそれぞれから高圧流体を第4ポート14(吸入側低圧ポートS)へ個別に排出してもよいことは勿論である。