JP2016094744A - 転倒抑制工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】既設橋脚の重心よりも上側の部分から、必要な強度を確保できる範囲で、当該既設橋脚を形成する形成体の一部22を撤去することによって、当該既設橋脚の重心位置を下げる。また当該既設橋脚として必要な強度を確保するために、前記形成体が撤去された部分を補強する補強部材21を設置し、かつ前記補強部材の総重量は、前記撤去した形成体22の総重量よりも軽い。また前記形成体を撤去する前または後に、前記既設橋脚の重心よりも下側の部分に、重錘を固定する。
【選択図】図3
Description
このような既設橋脚を転倒しにくくする転倒抑制工法としては、例えば、地盤と橋脚とをグラウンドアンカーで一体化させる工法(例えば特許文献1参照)や、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法などが考えられる。
地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法の場合、橋脚が河川や海に設置されている際には、接触面積を増加させる部材を設置するために遮水しなければならず、遮水のための大掛かりな設備が必要となるため、費用が嵩む、工期が長くなる等の問題が生じる。また、漏水が発生して、安全に施工できない場合もある。
地盤に直接設けられた既設橋脚を転倒しにくくする転倒抑制工法であって、
前記既設橋脚の重心位置を下げるように構成されている。
少なくとも前記既設橋脚の重心よりも上側の部分から、当該既設橋脚を形成する形成体の一部を撤去することによって、当該既設橋脚の重心位置を下げるように構成することが可能である。
前記形成体の一部を、橋脚として必要な強度を確保できる範囲で撤去するように構成することが可能である。
橋脚として必要な強度を確保するために、前記形成体が撤去された部分を補強する補強部材を設置し、
前記補強部材の総重量は、前記撤去した形成体の総重量よりも軽いように構成することが可能である。
前記形成体を撤去する前または後に、前記既設橋脚の重心よりも下側の部分に、重錘を固定するように構成することが可能である。
前記重錘として、前記撤去した形成体の少なくとも一部を用いるように構成することが可能である。
少なくとも前記既設橋脚の重心よりも下側の部分に、重錘を固定することによって、当該既設橋脚の重心位置を下げるように構成することが可能である。
あと施工アンカーを用いて、前記重錘を固定するように構成することが可能である。
前記既設橋脚の重心よりも下側の部分の側面に凸部がある場合、あるいは前記既設橋脚が裾広がり形状である場合には、前記重錘が取り付けられた環状部材を、前記既設橋脚の重心よりも上側の部分から下側の部分へと移動させて、当該上側の部分に遊びを持って外嵌された状態から当該下側の部分に引っ掛かった状態にすることによって、当該重錘を固定するように構成することが可能である。
まず、既設橋脚10について説明する。
図1は、既設橋脚10の構成の一例を示す図である。
既設橋脚10は、無筋コンクリート製の鉄道用橋脚であり、図1に示すように、四角柱状をなし、その上端部に軌道を敷設可能な床版1が橋桁2を介して架設されている。
構造物が傾斜しても当該構造物の重心Gが当該構造物の回転中心(転倒支点)Oを通る鉛直線Lを越えなければ当該構造物は転倒しないが、重心Gが鉛直線Lを超えると当該構造物は転倒してしまう。すなわち、図2(a),(b)の右図に示すように、回転中心(転倒支点)Oを通る鉛直線L上に重心Gが位置したときが転倒限界である。転倒限界角度θ(転倒限界に達した時点の構造物の傾斜角度)が大きいほど、転倒までに必要な傾斜角度が大きくなるため、転倒しにくくなる。この転倒限界角度θは、構造物全体を軽量化したり重量化したりしても変化しないが、構造物の重心位置を変えると変化する。具体的には、重心Gの位置を低くすると転倒限界角度θが大きくなり、重心Gの位置を高くすると転倒限界角度θが小さくなる。例えば、図2(b)に示す構造物は、上部に貫通孔Hが設けられているため、図2(a)に示す構造物(貫通孔Hを設ける前の構造物)に比べて、重心Gの位置が低く、転倒限界角度θが大きいため、転倒しにくい。
図3は、第1実施形態の転倒抑制工法の一例を説明する図である。
既設橋脚10の上部Aから当該既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去する手法としては、例えば図3(a)に示すように、既設橋脚10の上部Aのうち、橋桁2と接する上面部分以外の部分から、当該既設橋脚10を形成する形成体を撤去し、撤去した形成体の総重量よりも軽い軽量部材21で受け替える手法(以下「手法[ア]」という。)、例えば図3(b)に示すように、既設橋脚10の上部Aに貫通孔22を形成する手法(以下「手法[イ]」という。)、例えば図3(c)に示すように、既設橋脚10の上部Aに凹部23を形成する手法(以下「手法[ウ]」という。)等が挙げられる。
また、図3(c)では、既設橋脚10の4つの側面のうち対向する2つの側面に直方体状の凹部23が形成されている例を示しているが、凹部23を形成する場所、凹部23の個数、凹部23の形状等は適宜変更可能である。
また、図3(a)〜(c)に示す例では、既設橋脚10の上部Aのみから、当該既設橋脚10を形成する形成体を撤去しているが、既設橋脚10の重心位置を下げることができるのであれば、例えば図3(d)〜(f)に示すように、既設橋脚10の上部Aだけでなく下部Bからも当該既設橋脚10を形成する形成体を撤去してもよい。
図4は、形成体を撤去した部分を補強する手法の一例を示す図である。
手法[ウ]によって得られた橋脚の場合も、凹部23内を充填部材25で埋めることによって、補強することができる。
手法[ウ]によって得られた橋脚の場合も、凹部23内に突っ張り部材26を設置することによって、補強することができる。
手法[ウ]によって得られた橋脚の場合も、凹部23の開口面を板状部材27で塞ぐことによって、補強することができる。
既設橋脚10の重心位置を下げる度合いは、既設橋脚10のサイズ、既設橋脚10の設置場所の形状、既設橋脚10の設置場所において要求される耐震性能等に応じて適宜設定可能である。
図5は、手法[ア]を採用した場合の転倒抑制工法の手順の一例を示す図である。
次いで、図5(b)に示すように、形成体を撤去する部分と撤去しない部分との境界に、ワイヤーソー等を用いて切れ込みKを入れる。
次いで、図5(c)に示すように、既設橋脚10の上部Aから、形成体の一部を撤去する。
そして、図5(d)に示すように、形成体を撤去した部分に軽量部材21を設置し、必要であれば形成体を撤去した部分を補強して、支持部材Sを取り外す。このようにして、既設橋脚10を耐転倒性橋脚20に変えることができる。
具体的には、少なくとも既設橋脚10の重心よりも上側の部分(上部A)から、当該既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去するだけなので、施工時の補強が不要あるいは小規模な補強で足りる。よって、地盤と橋脚とをグラウンドアンカーで一体化させる工法等の従来の転倒抑制工法と比較して、安価な施工が可能となる。
また、既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去することによって、橋脚全体の重量が、撤去前の重量よりも小さくなるので、基礎の補強が不要となり、安価な施工が可能となる。
また、少なくとも既設橋脚10の重心よりも上側の部分(上部A)から、当該既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去するだけなので、既設橋脚10が河川や海に設置されている場合であっても水面上で作業できる。よって、遮水のための大掛かりな設備が不要であり、また、漏水に対する安全性の考慮も不要であるので、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法等の従来の転倒抑制工法と比較して、安価で安全な施工が可能となり、かつ、工期の短縮が可能となる。
さらに、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法であって、橋脚が鉄道用橋脚の場合、線路付近の狭隘な空間では、施工が煩雑になる、接触面積を増加させる部材を設置する箇所を確保できない等の問題が生じるが、少なくとも既設橋脚10の重心よりも上側の部分(上部A)から、当該既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去するだけなので、線路(軌道)に影響されない施工が可能となる。
ここで、地盤に直接設けられた既設橋脚10は、橋脚として必要な強度を大幅に上回る強度を有している場合が多い。そのような場合には特に、形成体を撤去する部分の位置や寸法にもよるが、形成体を撤去しても橋脚として必要な強度を確保することが可能となる。
形成体の一部を、橋脚として必要な強度を確保できる範囲で撤去する場合、既設橋脚10の少なくとも上部Aから当該既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去する手法として、例えば手法[イ]や手法[ウ]が採用される。
なお、形成体を撤去したことで橋脚として必要な強度を確保できなくなった場合だけでなく、形成体の一部を橋脚として必要な強度を確保できる範囲で撤去した場合にも、形成体が撤去された部分を補強する補強部材を設置してもよい。
第1実施形態では、既設橋脚10の上部Aを軽量化することによって、既設橋脚10の重心位置を下げることとしたが、第2実施形態では、既設橋脚10の下部Bを重量化することによって、既設橋脚10の重心位置を下げることとする。
既設橋脚10の下部Bを重量化する手法としては、例えば図6(a)に示すように、あと施工アンカー等(図示省略)を用いて、重錘31を既設橋脚10の下部Bに固定する手法(以下「手法[エ]」という。)を用いることができる。
また、既設橋脚10が裾広がり形状である場合には、手法[エ]だけでなく、例えば図6(b)に示すように、重錘31が取り付けられた環状部材32を、上部Aから下部Bへと移動させて、上部Aに遊びを持って外嵌された状態から下部Bの側面に引っ掛かった状態にすることによって、重錘31を固定する手法(以下「手法[オ]」という。)も用いることができる。
なお、手法[オ]は、既設橋脚10が裾広がり形状である場合だけでなく、既設橋脚10の下部Bの側面に、環状部材32が引っ掛かることのできる凸部がある場合にも用いることができる。また、環状部材32は、変形自在な策状部材によって形成されたものに限定されるものではなく、例えば、鋼材等の変形困難な剛部材によって形成されたものであってもよい。
また、既設橋脚10に固定する重錘31の数や形状、重錘31を固定する場所は、図6(a),(b)に示すものに限定されず、適宜変更可能である。
具体的には、少なくとも既設橋脚10の重心よりも下側の部分(下部B)に、重錘31を固定するだけなので、施工時の補強が不要あるいは小規模な補強で足りる。よって、地盤と橋脚とをグラウンドアンカーで一体化させる工法等の従来の転倒抑制工法と比較して、安価な施工が可能となる。
また、少なくとも既設橋脚10の重心よりも下側の部分(下部B)に、重錘31を固定するだけなので、既設橋脚10が河川や海に設置されている場合であっても、重錘31の固定作業を水面上で行うようにすれば、遮水のための大掛かりな設備が不要であり、また、漏水に対する安全性の考慮が不要であるので、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法等の従来の転倒抑制工法と比較して、安価で安全な施工が可能となり、かつ、工期の短縮が可能となる。
さらに、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法であって、橋脚が鉄道用橋脚の場合、線路付近の狭隘な空間では、施工が煩雑になる、接触面積を増加させる部材を設置する箇所を確保できない等の問題が生じるが、少なくとも既設橋脚10の重心よりも下側の部分(下部B)に、重錘31を固定するだけなので、線路(軌道)に影響されない施工が可能となる。
具体的には、既設橋脚10の下部Bが水中にある場合であっても、重錘31が取り付けられた環状部材32を橋脚の周囲に配する作業(例えば、上部Aの周囲で、ワイヤロープ等の変形自在な索状部材や鋼材等の変形困難な剛部材などを上部Aは通過可能であるが下部Bは通過不能なサイズの環状に形成し、当該形成された環状部材32に重錘31を取り付ける作業)を水面上で行い、当該作業の後に、重錘31が取り付けられた環状部材32を落下させるだけで重錘31を下部Bに固定することができる。したがって、既設橋脚10の下部Bが水中にある場合であっても、重錘31の固定作業を水面上で行うことができるため、重錘31の固定作業を安全に行うことができる。
第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることも可能である。
具体的には、図7に示すように、第1実施形態の転倒抑制工法によって得られた耐転倒性橋脚20に、重錘31を固定してもよい。
既設橋脚10の少なくとも上部Aから当該既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去する手法は、手法[ア]に限定されるものではなく、手法[イ]であってもよいし、手法[ウ]であってもよいし、その他の手法であってもよい。
また、重錘31を固定する手法は、手法[エ]であってもよいし、手法[オ]であってもよいし、その他の手法であってもよい。
また、少なくとも上部Aから既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去した後に、重錘31を固定するのではなく、既設橋脚10に重錘31を固定した後に、少なくとも上部Aから既設橋脚10を形成する形成体の一部を撤去することも可能である。
また、既設橋脚10は、鉄道用橋脚に限定されるものではなく、その他の橋脚であってもよい。
また、既設橋脚10の形状に制限はなく、多角柱状であってもよいし、円柱状であってもよいし、裾広がり形状(多角錐台や円錐台など)であってもよい。また、既設橋脚10の側面には、凹凸があってもよい。また、既設橋脚10は、鉛直方向に立設されたものでも、鉛直方向に対して斜めに立設されたものでもよい。
24 帯状部材(補強部材)
25 充填部材(補強部材)
26 突っ張り部材(補強部材)
27 板状部材(補強部材)
31 重錘
32 環状部材
A 上部(重心よりも上側の部分)
B 下部(重心よりも下側の部分)
Claims (9)
- 地盤に直接設けられた既設橋脚を転倒しにくくする転倒抑制工法であって、
前記既設橋脚の重心位置を下げることを特徴とする転倒抑制工法。 - 少なくとも前記既設橋脚の重心よりも上側の部分から、当該既設橋脚を形成する形成体の一部を撤去することによって、当該既設橋脚の重心位置を下げることを特徴とする請求項1に記載の転倒抑制工法。
- 前記形成体の一部を、橋脚として必要な強度を確保できる範囲で撤去することを特徴とする請求項2に記載の転倒抑制工法。
- 橋脚として必要な強度を確保するために、前記形成体が撤去された部分を補強する補強部材を設置し、
前記補強部材の総重量は、前記撤去した形成体の総重量よりも軽いことを特徴とする請求項2に記載の転倒抑制工法。 - 前記形成体が撤去する前または後に、前記既設橋脚の重心よりも下側の部分に、重錘を固定することを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載の転倒抑制工法。
- 前記重錘として、前記撤去した形成体の少なくとも一部を用いることを特徴とする請求項5に記載の転倒抑制工法。
- 少なくとも前記既設橋脚の重心よりも下側の部分に、重錘を固定することによって、当該既設橋脚の重心位置を下げることを特徴とする請求項1に記載の転倒抑制工法。
- あと施工アンカーを用いて、前記重錘を固定することを特徴とする請求項5から7の何れか一項に記載の転倒抑制工法。
- 前記既設橋脚の重心よりも下側の部分の側面に凸部がある場合、あるいは前記既設橋脚が裾広がり形状である場合には、前記重錘が取り付けられた環状部材を、前記既設橋脚の重心よりも上側の部分から下側の部分へと移動させて、当該上側の部分に遊びを持って外嵌された状態から当該下側の部分に引っ掛かった状態にすることによって、当該重錘を固定することを特徴とする請求項5から7の何れか一項に記載の転倒抑制工法。
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