JP2016094674A - 水系サイズ剤 - Google Patents

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  • Surface Treatment Of Glass Fibres Or Filaments (AREA)
  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)

Abstract

【課題】表面処理されたガラス繊維を経糸として織機に安定供給することができ、加えて、耐熱性に優れた複合材料を得ることができる水系サイズ剤を提供する。
【解決手段】シランカップリング剤(A)100質量部と、皮膜形成剤(B)1質量部以上50質量部未満と、帯電防止剤(C)1〜10質量部と、柔軟剤(D)1〜10質量部とを含有し、澱粉およびエポキシ樹脂を含有しないことを特徴とする水系サイズ剤、および皮膜形成剤(B)が、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルを含む前記水系サイズ剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス繊維の表面処理に用いることにより耐熱性に優れた複合材料を得ることができる水系サイズ剤に関する。
従来、電子機器または電子通信機器等に使用されるプリント基板の補強材料には、ガラス繊維クロスが用いられている。近年、電子機器の小型化、薄肉化の進行にともない、前記ガラス繊維クロスは薄くすることが求められている。ガラス繊維クロスを薄くするには、ガラス繊維の繊維径をさらに細くし、かつ束ねる本数を減らす必要がある。
しかしながら、従来よりも繊維径を細くし束ねる本数を減らしたガラス繊維を用いて、従来からおこなわれている、ガラス繊維に澱粉を含んだサイズ剤で被覆し、製織後、澱粉をヒートクリーニング処理する方法でガラス繊維クロスを製造すると、強度が低下するという問題があった。
ヒートクリーニング処理を必要としない水系サイズ剤としては、例えば、特許文献1で、エポキシ樹脂と、エチレンオキサイドが付加されたビスフェノールAエーテルと、シランカップリング剤とを含む水系サイズ剤が提案され、特許文献2で、特定の組成を有するエチレンオキサイド−プロプレンオキサイドアルキルエーテル界面活性剤を含む水系サイズ剤が提案されている。しかしながら、特許文献1の水系サイズ剤を用いて表面処理したガラス繊維は、前記水系サイズ剤にエポキシ樹脂を含むため、静電気が発生しやすく、ビーミング工程でガラス繊維どうしが絡み合あったり、糸切れしたり、毛羽が生じたりして、経糸として織機に安定供給できないという問題があった。また、特許文献2の水系サイズ剤を用いて表面処理したガラス繊維を用いてガラス繊維クロスを作製し、それに樹脂を含浸させた複合材料は、耐熱性が低いという問題があった。
特開2007−162171号公報 特開2013−35697号公報
本発明は、上記課題を解決するものであって、表面処理されたガラス繊維を経糸として織機に安定供給することができ、加えて、耐熱性に優れた複合材料を得ることができる水系サイズ剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、シランカップリング剤と、皮膜形成剤と、帯電防止剤と、柔軟剤とを特定の割合で含有した水系サイズ剤で表面処理したガラス繊維を経糸として用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)シランカップリング剤(A)100質量部と、皮膜形成剤(B)1質量部以上50質量部未満と、帯電防止剤(C)1〜10質量部と、柔軟剤(D)1〜10質量部とを含有し、澱粉およびエポキシ樹脂を含有しないことを特徴とする水系サイズ剤。
(2)皮膜形成剤(B)が、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルを含む(1)記載の水系サイズ剤。
(3)ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルが、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルである(2)記載の水系サイズ剤。
(4)ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの水酸基価が200mgKOH/g以下である(3)記載の水系サイズ剤。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維。
(6)(5)記載のガラス繊維を用いたガラス繊維クロス。
(7)(6)記載のガラス繊維クロスを用いた複合材料。
本発明の水系サイズ剤で表面処理されたガラス繊維は、経糸として織機に安定供給することができ、加えて、耐熱性に優れた複合材料を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、シランカップリング剤(A)と、皮膜形成剤(B)と、帯電防止剤(C)と、柔軟剤(D)とを含む水系サイズ剤に関する。より具体的には、本発明の水系サイズ剤は、シランカップリング剤(A)と、皮膜形成剤(B)と、帯電防止剤(C)と、柔軟剤(D)とを水に分散させたものである。本発明の水系サイズ剤は、澱粉、およびエポキシ樹脂を含有しない。ここでいう、「含有しない」とは、実質的に含まないことを意味し、本発明の効果を損なわない範囲であれば、微量含んでもよい。
シランカップリング剤(A)は、ガラス繊維または得られる複合材料の機械物性を改善する目的で用いられる。シランカップリング剤(A)としては、一般式:Y−R−Si(CH3−nで示される加水分解性のシラン化合物が好ましい。官能基Yとしては、例えば、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基が挙げられ、これらの中でも、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基が好ましい。Rとしては、直鎖状、分岐状のアルキレン基、フェニレン基、イミノ基等が挙げられ、またRを介さずに、YがSiに直接結合してもよい。官能基Xとしては、例えば、メトキシ基またはエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基、オキシム基、イソプロペノキシ基、アミノ基が挙げられる。nは2または3の整数である。nが2または3の場合、複数のXは、互いに同一であっても異なってもよい。より具体的には、このような加水分解性のシラン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。中でも、ガラス繊維とマトリクス樹脂の界面接着性に優れることから、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
皮膜形成剤(B)は、ガラス繊維に潤滑性を付与し繊維を接触具材との摩擦から保護し、帯電の防止や毛羽の発生を抑制する目的で用いられる。皮膜形成剤(B)としては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオール、またはその誘導体が挙げられる。このようなポリオールとしては、例えば、アジペートジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレントリメチルロールプロパンエーテル、ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルが挙げられ、好ましくはエポキシ基を含まない。中でも、毛羽抑制および潤滑性付与の観点から、皮膜形成剤(B)としては、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルであることが好ましく、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルまたはポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルがより好ましく、特に潤滑性に優れることから、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルがさらに好ましい。
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの水酸基価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/gであることがより好ましい。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの水酸基価が200mgKOH/g以下である場合、分子量が高くなるため、アルキレンビスフェノールAエーテルとガラス繊維とが密着しやすくなる。その結果、静電気が発生しにくくなり、表面処理したガラス繊維を経糸としてより安定して供給することができる。一方、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの水酸基価が200mgKOH/gを超えると水に分散することが困難となり水系サイズ剤を作製することができない場合がある。
皮膜形成剤(B)の含有量は、シランカップリング剤(A)100質量部に対して、1質量部以上50質量部未満であることが必要で、20〜40質量部であることが好ましい。皮膜形成剤(B)の含有量が1質量部未満の場合、静電気が発生しやすく、ビーミング工程でガラス繊維どうしが絡み合あったり、糸切れしたり、毛羽が生じたりして、表面処理したガラス繊維を経糸として織機に安定供給することが困難となる場合があるので好ましくない。一方、皮膜形成剤(B)の含有量が50質量部以上の場合、得られる複合材料の耐熱性が低下する場合があるので好ましくない。
帯電防止剤(C)は、ガラス繊維の帯電性を低下させる目的で用いられる。帯電防止剤(C)としては、例えば、脂肪族ポリアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、もしくはそれらの誘導体、第4級アンモニウム塩、または無機塩が用いられ、好ましくはエポキシ基を含まない。ポリオキシアルキレンアルキルエステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエステルが挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、例えば、アルキルアンモニウム塩が挙げられる。無機塩としては、例えば、塩化リチウム等のリチウム塩や、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩や、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。
帯電防止剤(C)の含有量は、シランカップリング剤(A)100質量部に対して、1〜10質量部であることが必要で、4〜6質量部であることが好ましい。帯電防止剤(C)の含有量が1質量部未満の場合、静電気が発生しやすく、ビーミング工程でガラス繊維どうしが絡み合あったり、糸切れしたり、毛羽が生じたりして、表面処理したガラス繊維を経糸として織機に安定供給することが困難となる場合があるので好ましくない。一方、帯電防止剤(C)の含有量が10質量部を超える場合、得られる複合材料の耐熱性が低下する場合があるので好ましくない。
柔軟剤(D)は、ガラス繊維の柔軟性を向上する目的で用いられる。柔軟剤(D)としては、例えば、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、またはそれらの誘導体が挙げられ、中でも、脂肪酸アミド、ポリアルキレングリコール類が好ましく、エポキシ基を含まないものがより好ましい。脂肪酸アミドとしては、例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミドが挙げられる。また、脂肪酸アミドとしては、例えば、ポリエチレンアミンと、脂肪酸とで構成されるものが挙げられる。ポリエチレンアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンぺンタミンが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ラウリン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸イソプロピル、アジピン酸エチレングリコール、トリオクタン酸トリメチルロールプロパンが挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。
柔軟剤(D)の含有量は、シランカップリング剤(A)100質量部に対して、1〜10質量部であることが必要で、4〜6質量部であることが好ましい。柔軟剤(D)の含有量が1質量部未満の場合、柔軟性を発現することが困難となり、静電気が発生しやすく、ビーミング工程でガラス繊維どうしが絡み合あったり、糸切れしたり、毛羽が生じたりして、表面処理したガラス繊維を経糸として織機に安定供給することが困難となる場合があるので好ましくない。一方、柔軟剤(D)の含有量が10質量部を超える場合、得られる複合材料の耐熱性が低下する場合があるので好ましくない。
本発明の水系サイズ剤には、ガラス繊維クロスの開繊効率を高め、複合材料とする際の前記クロスへのマトリクス樹脂の含浸性を向上させ、得られる複合材料の機械特性を向上させることを目的として、さらにポリマー微粒子や無機微粒子等の微粒子を含んでもよい。微粒子の平均粒子径は、ガラス繊維クロスの開繊効率の観点から、1.0μm以下であることが好ましい。
ポリマー微粒子のポリマーとしては、水に溶解しないものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ダイマー酸ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、共重合ポリエステル、ポリエチレンイミン、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、イミン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチル架橋物が挙げられる。無機微粒子しては、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、クレイ、窒化ホウ素、グラファイト、金属ジカルコゲナイド、ヨウ化カドミウム、インジウム、タリウム、スズ、銅、亜鉛、金、銀が挙げられる。中でも、開繊効率が高いことから、窒化ホウ素であることが好ましい。ポリマー微粒子や無機微粒子は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。
本発明の水系サイズ剤は、紡糸時の繊維の集束性の向上、製織時の毛羽の発生抑制を目的として、さらに水に溶解することができるエポキシ樹脂以外の水系樹脂を含んでもよい。水系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミドおよびその誘導体、ポリエチレングリコール、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、変性ポリオレフィン、ダイマー酸ポリアミドが挙げられる。水系樹脂は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。
本発明の水系サイズ剤は、さらに酢酸等のpH調整剤を含んでもよい。
本発明の水系サイズ剤は、さらに硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒としては、例えば、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリスエチルヘキシル酸塩が挙げられる。また、本発明の水系サイズ剤は、さらに硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、アミン−エポキシ付加生成物、ポリアミドポリアミン、芳香族ポリアミン、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類が挙げられる。
本発明の水系サイズ剤は、さらに、増粘剤、レベリング剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、繊維状補強材、機能性フィラーを含んでもよい。機能性フィラーとしては、例えば、熱伝導性フィラー、電磁波遮蔽粒フィラー、断熱フィラー、高誘電フィラーが挙げられる。
本発明の水系サイズ剤は、澱粉を含まない。そのため、本発明においては、ヒートクリーニング処理をした場合に生じる機械特性の低下は生じない。
本発明の水系サイズ剤は、エポキシ樹脂を含まない。そのため、エポキシ樹脂を含む水系サイズ剤を用いた場合に生じる糸質の変動や静電気量の増大が抑制され安定した製織が可能となる。ここで、エポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂が挙げられる。
本発明の水系サイズ剤中における、上記の(A)〜(D)を合計した固形分濃度は、2〜10質量%であることが好ましい。固形分濃度が2質量%未満の場合、ガラス繊維に均一に被覆することが困難となり、毛羽が立ち易くなり、機械物性が低下する場合がある。一方、固形分濃度が10質量%を超えると、ガラス繊維への固形分の付着量が増すことで、繊維表面のべたつき、過剰なシランの付着により製織性が低下する場合がある。
本発明の水系サイズ剤は、上記の(A)〜(D)を水中に分散させることによって製造することができる。より具体的には、最初にシランカップリング剤(A)を水に混合し、25℃以下の温度で撹拌し、加水分解反応を進める。この加水分解反応がある程度進んだ段階で、皮膜形成剤(B)、帯電防止剤(C)、柔軟剤(D)をさらに加え、撹拌する。上記の(B)〜(D)を、それぞれ、上記の(A)を含む水に加えて混合してもよく、上記の(B)〜(D)を混合したものを、上記の(A)を含む水に加えて混合してもよい。
上記の(A)〜(D)の混合物に硬化剤を加える場合、攪拌翼、ビーズミル、3本ロールミル、ジェットミルを用いて、上記の(A)〜(D)の混合物および硬化剤を混合すればよい。上記の(A)〜(D)の混合物と硬化剤は、無機物等の固形物を混合しない場合に限り、ディスパーまたは振動攪拌を用いて混合してもよい。
ディスパーの場合、回転数は500〜3000rpmが好ましい。振動攪拌の場合、振動数は30〜50Hzが好ましい。回転数および振動数が上記範囲内である場合、攪拌熱による発熱を抑制しながら水系サイズ剤を得ることができる。また、上記の(A)〜(D)の混合物と硬化剤に固形物を混合するためにビーズミルを用いる場合、攪拌熱による発熱を抑制するため、チラーを用いてもよい。発熱を抑制することでシランカップリング剤の反応促進を抑制することができ、安定した水系サイズ剤を得ることができる。
本発明の水系サイズ剤は、ガラス繊維を表面処理するために用いる。製織性の観点から、ガラス繊維に付着する水系サイズ剤(固形分)の量は、ガラス繊維および前記ガラス繊維に付着した水系サイズ剤(固形分)の合計100質量部に対して、0.10〜4.00質量部であることが好ましく、0.15〜1.00質量部であることがより好ましく、0.15〜0.20質量部であることがさらに好ましい。
本発明の表面処理されたガラス繊維は、例えば、上記の水系サイズ剤を、ローラーサイジング法、ローラー浸漬法、スプレー法等の公知の方法により、ガラス繊維に塗布することにより得ることができる。
表面処理されたガラス繊維は、撚りをかけながらボビンに巻き取られ、続いて、複数のボビンから、1本1本引き出され、ガラス繊維どうしが交差しないように一定の張力を与えた状態で整経ビームに巻き取られる。その後、さらにビーミング工程で複数の整経ビームから引き出された前記ガラス繊維は引き揃えながらまとめ経糸とされる。
得られた経糸は、シャトル織機、エアージェット織機、レピア織機を用いた公知の方法により、緯糸を挿入することにより、ガラス繊維クロスを製織することができる。
得られたガラス繊維クロスは、水開繊処理することにより、水系サイズ剤を容易に除去することができる。水開繊処理は、通常、0.1〜5.0MPaの水圧を加えておこなわれる。
さらに、得られたガラス繊維クロスにマトリクス樹脂を含浸させることにより、複合材料を得ることができる。マトリクス樹脂を含浸させる方法としては、マトリクス樹脂の溶液に、水開繊処理やシランカップリング処理がなされたガラス繊維クロスを浸漬する方法が挙げられる。エポキシ樹脂をマトリクス樹脂として含浸させた場合、例えば、150〜200℃で1〜10分かけて半硬化状態のプリプレグに加工し、プリプレグを20〜40枚積層し、プレス圧10〜40kg/cm、加熱温度150〜200℃、真空下で1.5〜2時間加熱し、硬化した複合材料とすることができる。
本発明のガラス繊維、ガラス繊維クロスおよび複合材料は、プリント基板;スマートフォン、タブレット、パワーデバイス、パソコン、家庭用ゲーム機等のコンピュータ類の部品;DVDプレーヤー、DVDレコーダーの部品、HDDレコーダーの部品、家庭用テレビ、プラズマディスプレイ、液晶テレビ等のディスプレイ電源ユニット等の部品;携帯電話、各種AV機器、OA機器等の部品;カーステレオ、カーナビゲーションシステム、インバーター、照明、自動車電装部材、自動車エンジン部材、自動車ブレーキ部材、自動車内装部材、宇宙航空材料、スポーツ用途、アウトドア用途、一般産業資材に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
水系サイズ剤の特性の測定、評価する方法は下記のとおりである。
(1)水系サイズ剤のガラス繊維への付着量
ガラス繊維への水系サイズ剤の付着量の測定は、JIS R 3420に従い、強熱減量として以下のように測定した。
水系サイズ剤の付着したガラス繊維を110℃で1時間熱風乾燥し、ガラス繊維から水分(水系サイズ剤由来の水分)を除去した。水を除去した後のガラス繊維の重量Wを測定した後、そのガラス繊維を電気炉用いて625℃の環境下で30分間静置し、ガラス繊維からさらに水系サイズ剤(固形分)を除去した。水系サイズ剤(固形分)を除去した後のガラス繊維の重量Wを測定した。
水系サイズ剤のガラス繊維への付着量は、以下の式から求めた。
ガラス繊維への付着量=[(水分除去後のガラス繊維重量W)−(水系サイズ剤(固形分)除去後のガラス繊維重量W)]/(水分除去後のガラス繊維重量W)×100
(2)皮膜形成剤の水酸基価
皮膜形成剤10gを、無水酢酸およびピリジン(無水酢酸/ピリジン(体積比)=1/5)の混合液5mLに溶解させた後、100℃で1時間、無水酢酸と皮膜形成剤中の水酸基とを反応させた。その後、さらに蒸留水を添加し、100℃で10分間撹拌して、過剰の無水酢酸を分解し、試料液を得た。0.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて試料液の滴定を行い、滴定量W(mL)を求めた。同様に、皮膜形成剤を用いない場合(上記の混合液のみ)についても滴定を行い、滴定量W(mL)を求めた。下記式より、水酸基価を算出した。
水酸基価(mgKOH/g)=(W−W)×f×28.05/10
(f:0.5モル/L水酸化カリウム水溶液の力価)
(3)静電気の発生量
表面処理したガラス繊維を検尺機で巻き取り、その巻き取り部である回転体の下部に静電気センサ(オムロン社製 ZJ−SD100)を設置し、前記ガラス繊維が配列する過程で発生する静電気量を測定した。巻き取り回数は100回とした。
(4)製織時の経糸の供給安定性
蛭田理研株式会社製の抱合力試験機を用い、表面処理したガラス繊維とセラミックガイドの摩擦による糸の毛羽の発生状態を観察した。測定するガラス繊維をヤーンガイドに通し、ガラス繊維両端をまとめ、30gの荷重で固定した。固定後、摩擦盤を100rpm×1分間動かし、得られたガラス繊維の状態を観察した。
糸切れの本数が、0本の場合「◎」、1〜4本の場合「○」、5本以上の場合「×」とした。
(5)複合材料の耐熱性
得られたガラス繊維クロスを、水で開繊処理し、シランカップリング処理を行い、120℃の乾燥工程にて乾燥を実施した後、エポキシ樹脂のワニスに浸漬し、ワニスから取り上げた後、150℃で5分間、170℃で1.5〜2時間の加熱処理を行い硬化プリプレグを作製した。なお、水での開繊処理は、0.1〜5.0MPaの水圧を加えておこない、シランカップリング処理は、アミノシランカップリング剤を用いておこなった。またエポキシ樹脂のワニスとして、NBMA規格のFR−4組成のエポキシ樹脂100質量部をメチルエチルケトン14質量部で希釈したワニスを用いた。
続いて、得られた硬化プリプレグに湿熱処理および半田浴による熱履歴を与え、その後の硬化プリプレグの状態を評価した。なお、湿熱処理は、プレッシャークッカーを用いて、水蒸気圧力1.05kg/cmG、環境温度121℃、12時間の条件で実施した。半田浴による熱履歴は、湿熱処理された複合材料を20〜25℃の水に15分間浸した後、260℃の半田浴に25秒浸漬させておこなった。
半田浴に浸漬した後の硬化プリプレグから、張り付いた半田を削り落とし、硬化プリプレグの表面を、フラットベッドスキャナー(EPSON社製)を用いて観察し、硬化プリプレグの表面の総面積に対する白化した部分(白化部)の面積の割合を求めた。硬化プリプレグ表面の白化部の割合が1%未満の場合「◎」、1%以上〜30%未満の場合「○」、30%以上の場合「×」として、複合材料の耐熱性を評価した。
水系サイズ剤を構成する材料を、以下に示す。
(1)シランカップリング剤(A)
(A1)N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩と、90%酢酸と、水とからなる混合溶液(東レ・ダウコーニング社製、Z6032)
(2)皮膜形成剤(B)
(B1)ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(吉村油化学社製、GF690、水酸基価123mgKOH/g)
(B2)ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(三洋化成社製、ニューポール BPE−60、水酸基価228mgKOH/g)
(B3)ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル(三洋化成社製、ニューポール BP−5P、水酸基価211mgKOH/g)
(B4)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(シキボウ社製、エポリカ)
(B5)澱粉(日澱化学社製、パイオスターチ)
(3)帯電防止剤(C)
(C1)ポリオキシエチレンアルキルエステル(一方社油脂工業社製、ノイラン)
(4)柔軟剤(D)
(D1)カチオン性脂肪酸アミド(一方社油脂工業社製、KSK)
実施例1〜9、比較例1〜10、参考例1
上記のシランカップリング剤(A)、皮膜形成剤(B)、帯電防止剤(C)、および柔軟剤(D)と、水とを混合して、水系サイズ剤を作製した。
上記の水系サイズ剤の作製において、シランカップリング剤(A)、皮膜形成剤(B)、帯電防止剤(C)、柔軟剤(D)の種類、および各固形分の混合比率(質量部)を、表1、2に示すように変更した。
Figure 2016094674
Figure 2016094674
水系サイズ剤は、固形分濃度(上記(A)〜(D)の固形分を合計した量の濃度)が4〜8質量%の範囲内に収まるように、添加する水の量を調整した。
上記で得られた水系サイズ剤をノズルから紡出した複数のガラス繊維(繊維総本数:40本)に付着させ、前記ガラス繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにケークに巻き取った。得られたケークから解舒したガラス繊維ロービングを、撚り(撚り数:0.5Z)をかけながら、ボビンに巻き付け、水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維ヤーンを得た(平均繊維径:4.1μm、番手:1.3tex)。なお、ガラス繊維への水系サイズ剤(固形分)の付着量は、水系サイズ剤の固形分濃度により変動する。水系サイズ剤中の固形分濃度が4〜8質量%である場合、水系サイズ剤(固形分)の付着量は、ガラス繊維および前記ガラス繊維に付着した水系サイズ剤(固形分)の合計100質量部に対して0.10〜4.00質量部となる。
上記で得られたガラス繊維が巻かれたボビン94本を、一本一本を引き出し、ガラス繊維どうしが交差しないよう一様な張力を与えた状態で整経ビームに巻き取った。整経ビームには、ガラス繊維を700m巻き取り、それを4本採取した。採取した4本はビーミング工程にて引き揃えながらまとめ、合計で15040本(単繊維本数40本×ボビン94本×4ビーム)、横幅1350mmの経糸を得た。
製織時に用いる緯糸は参考例1の水系サイズ剤で処理されたガラス繊維を用い、津田駒工業社製のエアージェット織機を用いて製織し、ガラス繊維クロスを得た。
上記で得られた、ガラス繊維、ガラス繊維クロスについて、上記の各種評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
実施例1〜10のガラス繊維は、静電気の発生量が抑制されていたため、経糸として織機に安定供給することができた。また、実施例1〜10のガラス繊維から得られた複合材料は、いずれも耐熱性が高かった。
実施例1のガラス繊維は水酸基価200mgKOH/g以下の皮膜形成剤を含む水系サイズ剤を用いたため、水酸基価が200mgKOH/gを超える皮膜成形剤を含む水系サイズ剤を用いた実施例9、10のガラス繊維よりも、静電気の発生量が少なかった。その結果、経糸として織機により安定して供給することができた。
比較例1のガラス繊維は、水系サイズ剤中の皮膜形成剤の含有量が少なかったため、静電気の発生量が多かった。そのため、経糸として織機に安定供給することができず、製織することができなかった。
比較例2は、水系サイズ剤中の皮膜形成剤の含有量が多かったため、得られた複合材料の耐熱性が低かった。
比較例3は、水系サイズ剤中の帯電防止剤の含有量が少なかったため、静電気の発生量が多かった。そのため、経糸として織機に安定供給することができず、製織することができなかった。
比較例4は、水系サイズ剤中の帯電防止剤の含有量が多かったため、得られた複合材料の耐熱性が低かった。
比較例5は、水系サイズ剤中の柔軟剤の含有量が少なかったため、静電気の発生量が多かった。そのため、経糸として織機に安定供給することができず、製織することができなかった。
比較例6は、水系サイズ剤中の柔軟剤の含有量が多かったため、得られた複合材料の耐熱性が低かった。
比較例7、8は、水系サイズ剤中にエポキシ樹脂を含んでいたため、静電気の発生量が多かった。そのため、経糸として織機に安定供給することができず、製織することができなかった。
比較例9、10は、水系サイズ剤中に澱粉を含んでいたため、耐熱性が低かった。

Claims (7)

  1. シランカップリング剤(A)100質量部と、皮膜形成剤(B)1質量部以上50質量部未満と、帯電防止剤(C)1〜10質量部と、柔軟剤(D)1〜10質量部とを含有し、澱粉およびエポキシ樹脂を含有しないことを特徴とする水系サイズ剤。
  2. 皮膜形成剤(B)が、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルを含む請求項1記載の水系サイズ剤。
  3. ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルが、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルである請求項2記載の水系サイズ剤。
  4. ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの水酸基価が200mgKOH/g以下である請求項3記載の水系サイズ剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の水系サイズ剤で表面が処理されたガラス繊維。
  6. 請求項5記載のガラス繊維を用いたガラス繊維クロス。
  7. 請求項6記載のガラス繊維クロスを用いた複合材料。
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