本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムの構成について、図1乃至図5を用いて説明する。このX線回折測定システムは、測定対象物OBの残留応力を測定及び評価するために、X線を測定対象物OBに照射するとともに、測定対象物OBから発生する回折X線の強度を複数の位置で検出し、検出した強度と位置とから回折環の半径値を回折環の複数の回転位置で取得する。なお、本実施形態では、測定対象物OBは鉄製の部材である。
図1及び図2が示すように、X線回折測定装置は、X線を出射するX線出射器10、X線検出センサ15,16が取り付けられたステージ21を移動させるステージ移動機構20、X線が出射されないときにX線と同じ光軸でLED光を出射するLED光出射機構40、測定対象物OBの周囲を撮像する結像レンズ48、撮像器49、及びこれらを収容する筐体50を備えている。そして、X線回折測定システムは、上記X線回折測定装置とともに、X線回折測定装置の筐体50に接続され、X線回折測定装置の位置及び姿勢を調整するアーム式移動装置(先端部以外は図示せず)、コンピュータ装置90及び高電圧電源95を備え、さらに筐体50とアーム式移動装置との接続部は、筐体50を回転させるモータがある回転機構51を備えている。また、筐体50内には、X線出射器10、X線検出センサ15,16、ステージ移動機構20及び回転機構51に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1において筐体50外に示された2点鎖線で囲まれた各種回路は、筐体50内の2点鎖線内に納められている。なお、図1及び図2においては、回路基板、電線、固定具、空冷ファンなどは省略されている。
筐体50は、略直方体状に形成されるとともに、底面壁50a、前面壁50b、後面壁50e、上面壁50f、側面壁50d、及び底面壁50aと前面壁50bの角部を紙面の表側から裏側に向けて切り欠くように設けた切欠き部壁50cを有するように形成されている。切欠き部壁50cは側面壁50dと垂直であり底面壁50aと所定の角度を有している。この所定の角度は、例えば30〜45度である。底面壁50aには、X線出射器10から出射されるX線を通過させ、測定対象物OBで発生した回折X線であって、回折環を形成する回折X線を通過させるための円形孔50a1が設けられている。上面壁50fには、支持アーム52に連結される回転機構51が備えられており、回転機構51は内部に有するモータの回転駆動により、筐体50を回転させることができるようになっている。回転機構51の回転軸はX線出射器10から出射するX線の光軸と同じ位置になっており、筐体50は、X線出射器10から出射するX線の光軸周りに回転する。これにより、回転機構51により筐体50を回転させても、測定対象物OBのX線照射位置を変化させないようにすることができる。また、支持アーム52は、図示されていないアーム式移動装置の先端であり、アーム式移動装置を操作することにより、筐体50(X線回折測定装置)を任意の位置と姿勢にすることができる。これにより、測定対象物OBに対して筐体50(X線回折測定装置)の位置と姿勢を調整することができる。
X線出射器10は、長尺状に形成され、筐体50内の上部にて図示左右方向に延設されて筐体50に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線制御回路71により制御されて、X線を下方(図示左下方向)に向けて出射する。筐体50の底面壁50aは出射されるX線の光軸に対して略垂直になっており、切欠き部壁50cを測定対象物OBの表面と平行にすると、出射されるX線は測定対象物OBの表面の法線に対して切欠き部壁50cと底面壁50aとが成す角度(例えば30〜45度)になる。
X線制御回路71は、後述するコンピュータ装置90を構成するコントローラ91によって制御され、X線出射器10から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器10に高電圧電源95から供給される駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給される駆動信号も制御する。これにより、X線出射器10の温度が一定に保たれる。
ステージ移動機構20は、X線出射器10の下方にて、ステージ21を備えている。ステージ21は、フィードモータ22及びスクリューロッド23により、X線出射器10から出射されたX線の光軸と、X線の光軸と交差する切欠き部壁50cに平行な平面の法線とを含む平面内であって、出射されたX線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。ステージ21には、X線検出センサ15,16が取り付けられており、取り付け位置は、ステージ21が移動したとき、X線検出センサ15,16の中心点が移動するラインが、X線出射器10から出射されたX線の光軸と交わる位置である。すなわち、X線検出センサ15,16は出射されたX線の光軸に対してそれぞれ反対側の位置にあり、ステージ21の移動により、出射されたX線の光軸に対し垂直に交差するライン上を移動する。
図3は、X線回折測定装置の筐体50の底面壁50aを取外して、底面壁50a側から見た図であり、(A)は底面壁50a側から見てステージ21が左側に動く場合の移動開始時の図であり、(B)は移動終了時の図である。なお、ステージ21は、移動限界位置から反対側の移動限界位置まで動くようになっているので、(A)はステージ21が右側の移動限界位置にあるときの図であり、(B)はステージ21が左側の移動限界位置にあるときの図でもある。ステージ21は直方体状であり、後述する円筒状パイプ27を囲むように直方体状の穴が形成されており、ステージ21の移動限界位置は、直方体状の穴の端部が後述する円筒状パイプ27の近傍になる位置で設定されている。X線出射器10からのX線の出射により、回折環は図3に一点鎖線で示す位置に形成されるが、X線検出センサ15,16は、ステージ21の移動限界位置から移動限界位置までの移動により、この一点鎖線で示す回折環を横切る。X線検出センサ15,16は、受光したX線の強度に相当する強度の信号を出力するセンサであり、後述するように、この信号強度をX線検出センサ15,16の移動位置とともに検出することで、回折環の半径方向のX線強度分布を検出することができる。
X線検出センサ15,16は、X線の強度を精度よく検出することができれば、どのようなものであってもよい。例えば、シンチレータから出た蛍光を、光電子増倍管(PMT)で検出するシンチレーションカウンタを用いることができる。また、X線CCDであってもよい。X線強度検出回路65,66は、コントローラ91からデータ出力の指令信号を入力すると、設定された時間間隔で、X線検出センサ15,16が出力する信号の強度の瞬時値をデジタルデータにして、コントローラ91に出力する。
フィードモータ22は、ステージ移動機構20内に固定されていて筐体50に対して移動不能となっている。スクリューロッド23は、X線出射器10から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されていて、その一端部がフィードモータ22の出力軸に連結されている。スクリューロッド23の他端部は、ステージ移動機構20内に設けた軸受部24に回転可能に支持されている。また、ステージ21は、それぞれステージ移動機構20内にて固定された、対向する1対の板状のガイド25,25により挟まれていて、スクリューロッド23の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ22を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ22の回転運動がステージ21の直線運動に変換される。フィードモータ22内には、エンコーダ22aが組み込まれている。エンコーダ22aは、フィードモータ22が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動方向の指令信号を入力すると、移動方向に応じてフィードモータ22を正転又は逆転駆動する。フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から負側への移動指令を入力すると、フィードモータ22を駆動してステージ21を軸受部24側へ移動させ、コントローラ91から正側への移動指令を入力すると、フィードモータ22を駆動してステージ21をフィードモータ22側へ移動させる。このとき、フィードモータ制御回路73は、エンコーダ22aから入力するパルス列信号の単位時間当たりのパルス数が、設定された移動速度のパルス数になるよう、フィードモータ22に出力する駆動信号を制御する。これにより、ステージ21は設定された移動速度で移動する。そして、後述する位置検出回路72から移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、フィードモータ22への駆動信号の出力を停止する。
位置検出回路72は、コントローラ91から移動方向の指令信号が入力すると、エンコーダ22aから入力するパルス列信号のパルス数をカウントし、移動方向が正側の場合はカウント値をカウントアップさせ、移動方向が負側の場合はカウントダウンさせて移動距離wとし、設定された時間間隔で、移動距離wを表すデジタルデータの信号をコントローラ91に出力する。また、コントローラ91から指令信号が入力した後、エンコーダ22aから出力されるパルス列信号が入力されなくなると、移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路73に出力する。このとき、コントローラ91から入力した移動指令が負側であるとカウント値を「0」にリセットする。すなわち、ステージ21が軸受部24側の移動限界位置にあるとき移動距離wは「0」であり、ステージ21がフィードモータ22側の移動限界位置にあるとき移動距離wは最大となる。コントローラ91は測定開始時において、負側への移動指令を出力した後、位置検出回路72から入力する移動距離wが「0」になってから、本来の移動を開始する。また、コントローラ91には、ステージ21が軸受部24側の移動限界位置にあるときの(移動距離が「0」のときの)、X線検出センサ15,16の出射されるX線の光軸からの距離a,bが記憶されており、位置検出回路72から入力する移動距離wから(a−w)と(b+w)を計算し、それぞれの値をX線検出センサ15,16の出射されるX線の光軸からの距離とする。
一対のガイド25,25の上端は、板状の上壁26によって連結されている。図4に拡大して示すように、上壁26には孔が開けられていて、孔には円筒状パイプ27が挿入され、板状の上壁26の面に端部を合わせて固定されている。この円筒状パイプ27は、その中心軸が板状の上壁26の面に垂直であり、X線出射器10の出射口11の中心を通るように位置と姿勢が調整されている。X線出射器10の出射口11から出射されたX線は、円筒状パイプ27の内部を介し、底面壁50aに設けた円形孔50a1を介して外部下方に位置する測定対象物OBに向かって出射される。円筒状パイプ27の端部2箇所の内部には、貫通孔が開けられた通路部材28,29が取り付けられており、出射口11から出射されたX線は、通路部材28の貫通孔を介して円筒状パイプ27の内部に入射し、通路部材29の貫通孔を介して出射することで円筒状パイプ27の中心軸に略平行な平行光となる。すなわち、X線出射器10から出射されるX線の光軸は、円筒状パイプ27の中心軸である。
また、円筒状パイプ27の上壁26側の端部には、LED光源44を有する。LED光源44は、図2、図4及び図5に示すように、X線出射器10とステージ移動機構20の上壁26との間に配置されたプレート45の一端部下面に固定されている。プレート45は、その他端部上面にて、筐体50内に固定されたモータ46の出力軸46aに固着されており、モータ46の回転により、ステージ移動機構20の上壁26に平行な面内を回転する。ステージ移動機構20の上壁26にはストッパ部材47a,47bが設けられており、ストッパ部材47aは、プレート45を図5のD1方向に回転させたとき、LED光源44がX線出射器10の出射口11及びステージ移動機構20の円筒状パイプ27の上壁26側の端部に対向する位置(A位置)に静止するように、プレート45の回転を規制する。一方、ストッパ部材47bは、プレート45を図5のD2方向に回転させたとき、プレート45がX線出射器10の出射口11と円筒状パイプ27の上壁26側の端部との間を遮断しない位置(B位置)に静止するように、プレート45の回転を規制する。言い換えれば、A位置は、プレート45が図2及び図4に示す状態にある位置であり、LED光源44から出射されるLED光が円筒状パイプ27の内部に入射する位置である。B位置は、X線出射器10から出射されるX線がプレート45によって遮られない位置である。
LED光源44は、コントローラ91によって作動制御されるLED駆動回路85からの駆動信号によりLED光を出射する。LED光は拡散する可視光であり、プレート45がA位置にあるとき、その一部は、円筒状パイプ27の内部に入射し、円筒状パイプ27の端部及び底面壁50aの円形孔50a1から出射される。このLED光の場合も、円筒状パイプ27の内部を介し貫通孔が開けられた通路部材29から出射することで、円筒状パイプ27の中心軸に平行な平行光となり、円形孔50a1から出射される。したがって、LED光の照射位置はX線出射器10から出射されるX線の照射位置と同一であり、LED光の照射位置を調整することでX線の照射位置(すなわち測定位置)を調整することができる。
モータ46はエンコーダ22aと同様なエンコーダ46bを備えており、エンコーダ46bはモータ46が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を回転制御回路86に出力する。回転制御回路86は、コントローラ91から回転方向と回転開始の指令信号が入力されると、モータ46に駆動信号を出力して、モータ46を指令された回転方向に回転させる。そして、エンコーダ46bからのパルス列信号の入力が停止すると、駆動信号の出力を停止する。これにより、プレート45を、上述したA位置及びB位置までそれぞれ回転させることができる。
図1および図2に示すように、筐体50の底面壁50aにはくぼみ50a2が設けられ、レンズ枠に取り付けられた結像レンズ48がくぼみ50a2内に取り付けられている。また、筐体50内の結像レンズ48の光軸上には撮像器49が設けられている。撮像器49は、多数の撮像素子をマトリクス状に配置したCCD受光器又はCMOS受光器で構成され、各撮像素子で受光した光の強度に応じた大きさの受光信号(撮像信号)を、撮像素子ごとにセンサ信号取出回路87にそれぞれ出力する。これらの結像レンズ48及び撮像器49は、X線検出センサ15,16の中心点の移動ライン(以下、X線検出センサ移動ラインという)に対して設定された位置にある、測定対象物OBのLED光の照射点を中心とした領域の画像を撮像する。すなわち、結像レンズ48及び撮像器49は、測定対象物OBを撮像するデジタルカメラとして機能する。このX線検出センサ移動ラインに対して設定された位置とは、測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点からX線検出センサ移動ラインまでの垂直距離Lが、予め決められた所定距離Loとなる位置である。なお、この場合の結像レンズ48及び撮像器49による被写界深度は、前記照射点を中心とした前後の範囲で設定されている。センサ信号取出回路87は、撮像器49の各撮像素子からの受光信号(撮像信号)の強度データを、各撮像素子の位置(すなわち画素位置)が分かるデータと共にコントローラ91に出力する。したがって、コントローラ91には、測定対象物OBにおけるLED光の照射点を含む、照射点近傍の画像を表す画像データが出力されることになる。
また、結像レンズ48の光軸は、X線出射器10から出射されるX線の光軸とX線検出センサ移動ラインを含む平面に含まれるように調整されている。そして、この平面は、X線回折測定装置の筐体50の底面壁50a及び切欠き部壁50cに略垂直になっている。また、結像レンズ48の光軸と、測定対象物OBに照射されるX線及びLED光の光軸が交わる点は、X線検出センサ移動ラインに対して設定された位置にある測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点である。さらに、設定された位置にある測定対象物OBにおけるX線及びLED光の照射点を含み、切欠き部壁50cに平行な平面の法線に対して、結像レンズ48の光軸がなす角度は、X線出射器10から出射されるX線及びLED光源44から出射されるLED光の光軸が前記法線に対してなす角度(X線の入射角度ψ)に等しい。
したがって、LED光源44からのLED光を測定対象物OBに照射したとき、測定対象物OBのX線及びLED光の照射点がX線検出センサ移動ラインに対して設定された位置にあり、この照射点における平面が切欠き部壁50cと平行である場合には、照射点を含む測定対象物OBの画像が撮像器49で撮像されることに加えて、測定対象物OBにて反射したLED光の受光点も撮像器49で照射点P1と同じ位置に撮像されることになる。すなわち、測定対象物OBに照射されるLED光は平行光であり、測定対象物OBにおけるLED光の照射点において、LED光は散乱光と、略平行光のまま反射する反射光を発生させる。そして、散乱光のうち結像レンズ48に入射した光は撮像器49の位置で結像して照射点の画像となり、結像レンズ48に入射した反射光は結像レンズ48により集光されて撮像器49で受光され、受光点の画像となる。測定対象物OBにおけるLED光の照射点が設定された位置にあり、照射点の表面が切欠き部壁50cと平行であるとき、結像レンズ48に入射する散乱光の光軸と反射光の光軸は、いずれも結像レンズ48の光軸と一致するため、照射点の画像と受光点の画像は同じ位置になる。なお、撮像器49は測定対象物OBを撮像するもので、撮像器49は結像レンズ48の焦点位置よりも若干量だけ後方に位置するので、厳密には、撮像器49によって受光される反射光は集光した後にやや拡散したものである。
X線回折測定装置の上面壁50fに備えられた回転機構51は、内部に有するモータにモータ制御回路74から駆動信号が入力すると、支持アーム52に対して筐体50(X線回折測定装置)を回転させる。モータ制御回路74及び回転角度検出回路75は、コントローラ91からの指令により作動開始する。モータ制御回路74は、コントローラ91から、回転角度と回転開始の指令が入力すると、回転角度検出回路75が出力する回転角度を入力し、コントローラ91から入力した回転角度から回転方向を判定して、その回転方向に回転するための駆動信号を回転機構51内部のモータに供給する。このとき、モータ制御回路74は、回転機構51内部のモータ内にあるエンコーダ51cが出力するパルス信号を入力し、このパルス信号の単位時間当たりのパルス数が設定された回転速度のパルス数になるように駆動信号の強度を制御する。これにより、筐体50(X線回折測定装置)の回転時は常に設定された速度で回転する。また、モータ制御回路74は、駆動信号を出力している期間中は回転角度検出回路75が出力する回転角度を入力し続け、入力した回転角度がコントローラ91から入力した回転速度に等しくなったとき、駆動信号の出力を停止する。これにより、筐体50(X線回折測定装置)は、コントローラ91から指令された回転角度になる。
回転角度検出回路75は、コントローラ91から、回転角度と回転開始の指令が入力すると、設定された時間間隔で回転角度のデジタルデータをコントローラ91およびモータ制御回路74に出力する。回転角度検出回路75は、回転機構51内部のモータ内にあるエンコーダ51cが出力するパルス列信号を入力して、パルス列信号のパルス数をカウントし、指令入力前の回転角度であるカウント値からカウントアップまたはカウントダウンさせて、回転角度とする。カウントアップまたはカウントダウンは、指令入力時点での回転角度と入力した回転角度から回転方向が判定できるのでこれからどちらを行うか判定することができる。また、エンコーダ51cが出力するパルス列信号には、位相差がπ/2あるA相信号とB相信号があるので、どちらの信号が進んでいるかにより回転方向を判定してもよい。また、回転角度検出回路75は、エンコーダ51cが360°の回転中、所定の回転位置で出力するインデックス信号を入力し、入力した時点でカウント値を「0」にリセットする。すなわち、インデックス信号が入力した時点が回転角度0°の位置である。
回転機構51は、内部に有するストッパにより1回転以上回転されないようになっており、図1及び図2に示すX線回折測定装置の姿勢は1回転における中間位置である。そして、この位置近傍にエンコーダ51cがインデックス信号を出力する回転位置があり、図1及び図2に示すX線回折測定装置の姿勢が回転角度0°の状態である。X線回折測定システムの電源が入れられたとき、コントローラ91は初期設定の指令信号をモータ制御回路74及び回転角度検出回路75に出力し、モータ制御回路74は、回転機構51内部のモータに駆動信号を出力し、エンコーダ51cからインデックス信号が入力した時点で、回転を停止する。このとき、パルス列信号の入力が停止するまで(ストッパにより回転が停止するまで)インデックス信号が入力しないときは、駆動信号の出力を停止し、反対方向に回転する駆動信号を出力する。これにより、回転角度検出回路75はエンコーダ51cからインデックス信号が入力して回転角度を「0」にできるので、以後、パルス列信号をカウントして正規の回転角度を出力することができる。
上述したように、回転機構51は1回転以上回転されないようになっており、X線回折測定システムの電源が入れられたとき、X線回折測定装置の姿勢は1回転における中間位置である回転角度0°の位置になる。そして、回転角度検出回路75が出力する及びコントローラ91から入力する回転角度(カウント値)は、−180°〜180°に相当する値であり、本実施形態では、図1及び図2に示すX線回折測定装置の姿勢から、上面壁50f側から見て反時計回りに、0〜180°の回転角度であり、時計回りに、0〜−180°の回転角度である。回転角度は反時計回りに、増大していくので、モータ制御回路74及び回転角度検出回路75は、コントローラ91から入力する回転角度がその時点での回転角度に対して大きいか小さいかにより回転方向を判定することができる。
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された各種プログラムを実行してX線回折測定装置の作動を制御する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、表示画面上に撮像器49によって撮像された照射点及び受光点を含む画像に加えて、照射点からX線検出センサ移動ラインまでの距離及び照射点におけるX線(LED光)の入射角度を適正に設定するためのマークも表示される。このマークに関しては後述する。さらに、表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果なども視覚的に知らせる。高電圧電源95は、X線出射器10にX線出射のための高電圧及び電流を供給する。
以下に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、測定対象物OBである鉄製の部材にX線を照射して回折X線の強度分布を検出し、測定対象物OBの残留応力を測定する具体的方法について説明する。この残留応力の測定は、電源を投入することによりX線回折測定システムを作動させた後、X線(LED光)の照射位置と入射角度を調整する位置姿勢調整工程S1、入力装置92からの入力により自動で行われる回折X線強度分布検出工程S2、及び検出された回折X線強度分布を用いてコントローラ91内で行われる残留応力計算工程S3により行われる。
まず、位置姿勢調整工程S1から説明する。なお、この調整は、先行技術文献に特許文献1として記載した特開2014−98677号公報に記載された内容において、位置姿勢の調整を行うものが測定対象物OBからX線回折測定装置(筐体50)に変わったのみであるので、説明は端的に行う。最初に作業者は、X線回折測定装置(筐体50)を目視しながら、切欠き部壁50cが測定対象物OBの測定箇所の面に平行になり、後述するようにLED光を照射したとき測定箇所にLED光が照射されるとともに、LED光照射点からX線検出センサ移動ラインまでの距離が設定距離になり、残留応力の測定方向が筐体50側面壁50dの面が測定箇所の面と交差する方向になるよう、X線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整する。次に、作業者は入力装置92を操作して、位置姿勢調整の開始を入力装置92から入力する。これにより、コントローラ91は、回転制御回路86とLED駆動回路85に指令を出力し、プレート45をA位置まで回転させ、LED光源44を点灯させる。これによりLED光は円筒状パイプ27の内部を介して、円形孔50a1から出射され、測定対象物OB又はその近傍に照射される。
次に、コントローラ91は、センサ信号取出回路87に指令を出力し、撮像器49からの撮像信号を出力させ、入力したこの撮像信号から作成した撮像画像信号を表示装置93に出力して、撮像画像を表示装置93に表示させる。さらに、コントローラ91は、撮像画像とは独立して、結像レンズ48の光軸が撮像器49と交差する位置に相当する撮影画像上の位置に十字マークを表示する。この十字マークの横線および縦線は、図2のX軸方向及びY軸方向にそれぞれ対応している。また、十字マークの縦軸位置は、LED光(X線)の光軸とX線検出センサ移動ラインを含む平面が撮像器49の受光面と交差するラインであり、十字マークのクロス点は、LED光照射点からX線検出センサ移動ラインまでの距離が設定距離であるときに、照射点が撮像される位置である。さらに、十字マークのクロス点は、LED光照射点からX線検出センサ移動ラインまでの距離が設定距離であり、LED光の光軸とX線検出センサ移動ラインを含む平面がLED光照射点における平面に垂直で、LED光が設定された入射角度で入射するときに、受光点が撮像される位置である。
作業者は表示装置93に表示された撮像画像を見ながら、LED光が測定箇所に照射され、十字マークのY軸方向が残留応力の測定方向になり、LED光の照射点と十字マークのクロス点が一致し、LED光の受光点が十字マークのクロス点と一致するように、アーム式移動装置を動かしてX線回折測定装置(筐体50)の位置と姿勢を調整する。これにより、X線が出射されたとき、X線は測定対象物OBの測定箇所に照射され、X線照射点からX線検出センサ移動ラインまでの距離が設定距離になり、X線の入射角度が設定角度になり、残留応力の測定方向が意図した方向になる。
次に作業者は、入力装置92から位置姿勢調整の終了を入力する。これにより、コントローラ91は、LED駆動回路85に指令を出力してLED光源44を消灯させ、センサ信号取出回路87に指令を出力して撮像信号の出力を停止させ、回転制御回路86に指令を出力して、プレート45をB位置まで回転させる。このプレート45の回転により、X線出射器10が出射するX線が円筒状パイプ27に入射され得る状態となる。
次に回折X線強度分布検出工程S2を説明する。作業者は入力装置92から、測定対象物OBの材質(本実施例では、鉄)、回折環の半径方向における回折X線の強度分布を検出する回転角度(−180°〜180°間の値)を入力し、測定開始を入力装置から入力する。これにより、コントローラ91は、メモリにインストールされている図6に示すフローのプログラムをスタートさせる。以後、図6に示すフローに従って説明する。まず、ステップS12にて、mとqに1を入力する。mは回転角度ごとに割り当てられる数値であり、入力装置92から入力した回転角度は、回転角度(1),回転角度(2)・・・回転角度(m)として記憶されている。qはステージ21の移動方向を表す数値であり、「1」は正側への移動を表し、「−1」は負側への移動を表す。次にステップS14にて、フィードモータ制御回路73と位置検出回路72に負側への移動の指令信号を出力し、ステップS16,S18にて位置検出回路72から入力する移動距離wの値が「0」になるまで待つ。ステージ21が負側(軸受部24側)の移動限界位置に達したとき、上述したように位置検出回路72は移動距離wを「0」にリセットするので、ステップS18にて「YES」と判定されたとき、ステージ21は負側(軸受部24側)の移動限界位置にある。
次にコントローラ91は、ステップS20にて、モータ制御回路74に回転角度(m)と回転開始の指令を出力する。この段階ではm=1であるので、回転角度(m)は回転角度(1)である。そして、ステップS22,S24にて回転角度検出回路75から入力する回転角度の値が回転角度(m)になるまで待ち、入力する回転角度の値が回転角度(m)になったとき、ステップS24にて「YES」と判定し、ステップS26に行く。これによりX線回折測定装置の筐体50は回転機構51により出射するX線の光軸周りに回転し、回転角度(m)の姿勢になる。
次にコントローラ91は、ステップS26にて、X線制御回路71にX線出射の指令を出力してX線出射器10からX線を出射させ、ステップS28にて、X線強度検出回路65,66に強度出力の指令を出力して、X線検出センサ15,16が出力するX線強度に相当する強度の信号のデジタルデータの出力を開始させる。次にステップS30乃至ステップS34にて、フィードモータ制御回路73と位置検出回路72に、qが「1」のときは正側への移動指令を出力し、qが「−1」のときは負側への移動指令を出力する。この段階ではq=1であるので、正側への移動指令を出力する。これにより、ステージ21は正側(フィードモータ22側)へ移動を開始する。
次にコントローラ91は、ステップS36にてデータを区別するために割り当てられる数値であるnに「0」を入力し、ステップS38にて時間tの計測を開始する。そして、ステップS40乃至ステップS52の繰り返しにより、微少時間ΔtごとにX線強度検出回路65,66が出力するX線強度に相当する値、及び移動距離wを取込み、X線強度(n,m,1),X線強度(n,m,2),移動距離(n,m)(n=0,1,2・・・,m=1)として記憶していく。この繰り返しの最中にステージ21は移動し続けるので、記憶されるデータは、回転角度(m)における回折環の半径方向のX線強度の分布に相当する。ステージ21は正側への移動の場合は移動距離wが最大となる位置へ向かって移動し、負側への移動の場合は移動距離wが「0」となる位置へ向かって移動するので、ステップS46乃至ステップS50にて、正側への移動の場合は取込んだ移動距離wが最大に達したとき、負側への移動の場合は取込んだ移動距離wが0になったとき、「YES」と判定し、ステップS54へ行く。この段階ではq=1で正側への移動であるので、移動距離wが最大に達したとき、「YES」と判定し、ステップS54へ行く。
次にコントローラ91は、ステップS54にてX線制御回路71にX線出射停止の指令を出力してX線出射器10からのX線の出射を停止させ、ステップS56にて、X線強度検出回路65,66に強度出力停止の指令を出力して、データの出力を停止させる。次にコントローラ91は、ステップS58にて、測定開始前に入力し、記憶されている次の回転角度(m+1)が存在するか判定し、存在すれば「YES」と判定してステップS60に行く。現段階ではm=1であるので、回転角度(2)が存在すれば「YES」と判定してステップS60に行く。
測定開始前に入力した回転角度が1つのみのときは、回転角度(2)はないので、ステップS58にて、「No」と判定してステップS64に進み、後述する演算処理を行い、cosα法による残留応力の計算を行う。この場合、得られる回折環の半径値は、回折環の中心に対して互いに対称になる2つの位置においてのみであるが、cosα法による残留応力の計算は可能である。ただし、回折環の半径値が2つであるため測定精度は悪い。測定精度を上げるには、測定開始前に入力する回転角度の値を増やせばよいが、回転角度の値が多いほど測定時間はかかるので、作業者は測定精度と測定時間の兼ね合いから入力する回転角度の値の数を決めればよい。
コントローラ91は、ステップS58にて「YES」と判定してステップS60に行くと、ステップS60にてmをインクリメントし、ステップS62にてqに「−1」を乗算して、ステップS20に戻り、上述したステップS20乃至ステップS58の処理を行う。なお、この処理においてはqは「−1」であるので、ステップS30乃至ステップS34の処理においては負側への移動指令を出力し、ステップS46乃至ステップS50の処理においては移動距離wが0になったとき、「YES」と判定し、ステップS54へ行く。すなわち、1回目のステージ21の移動でステージ21は正側(フィードモータ22側)の移動限界位置に達しているので、2回目のステージ21の移動は負側(軸受部24側)へ向かって行われる。そして、ステップS58にて、次の回転角度(m+1)が存在するか判定し、存在すれば「YES」と判定してステップS60に行く。この段階ではm=2であるので、回転角度(3)が存在すれば「YES」と判定してステップS60に行く。そして、ステップS60にてmをインクリメントし、ステップS62にてqに「−1」を乗算してq=1とし、ステップS20に戻る。3回目はq=1になっているので、ステップS20乃至ステップS58の処理は1回目と同じである。すなわち、ステージ21は負側の移動限界位置から正側の移動限界位置に向けて移動する。
このようにして、X線回折測定装置の筐体50における、出射するX線の光軸周りの回転角度が、測定開始前に入力された回転角度(m)にそれぞれ設定され、それぞれの回転角度(m)ごとにステージ21が移動限界位置から反対側の移動限界位置まで移動し、コントローラのメモリにはX線強度(n,m,1),X線強度(n,m,2),移動距離(n,m)(n=0,1,2・・・,m=1,2,3・・・)が記憶されていく。そして、すべての回転角度(m)においてステップS20乃至ステップS58の処理が終了したとき、ステップS58において「NO」と判定されて、ステップS64に行く。
コントローラ91は、ステップS64にて、メモリに記憶されているX線強度(n,m,1),X線強度(n,m,2),移動距離(n,m)(n=0,1,2・・・,m=1,2,3・・・)を用いて残留応力の計算を行う。この処理が残留応力計算工程S3であり、コントローラ91は以下の順で計算処理を行う。
(1)回転角度ごとの回折環半径方向におけるX線強度分布算出
上述したようにステージ21が負側(軸受部24側)の移動限界位置にあるときの(移動距離が「0」のときの)、X線検出センサ15,16の中心点から出射されるX線の光軸までの距離a,bは予め記憶されている。距離aから移動距離(n,m)を減算して、半径値(n,m,1)を算出する。横軸により半径値をとり、縦軸にX線強度をとって、半径値(n,m,1)とX線強度(n,m,1)のデータにより点を打つと、図7で示すように回折環が発生する箇所でピークが発生する曲線となる。すなわち、半径値(n,m,1)とX線強度(n,m,1)のデータの組は、回転角度(m)における回折環半径方向のX線強度分布に相当する。
また、距離bに移動距離(n,m)を加算して、半径値(n,m,2)を算出し、横軸により半径値をとり、縦軸にX線強度をとって、半径値(n,m,2)とX線強度(n,m,2)のデータにより点を打っても、図7で示すように回折環が発生する箇所でピークが発生する曲線となる。すなわち、半径値(n,m,2)とX線強度(n,m,2)のデータの組は、回転角度(m)+180°の回転角度における回折環半径方向のX線強度分布に相当する。180°を加算するのは、回折環の中心(出射するX線の光軸位置)から見たX線検出センサ16の回転位置は、X線検出センサ15から180°回転した位置にあるためである。なお、本実施形態では回転角度は−180°〜180°で表すので180°を加算して180°を超えるときは360°を減算する。
(2)回転角度ごとの回折環半径算出
半径値(n,m,1)とX線強度(n,m,1)のデータの組、及び半径値(n,m,2)とX線強度(n,m,2)のデータの組から作成される、回折環半径方向のX線強度分布(曲線)においてピークが発生する位置の半径値(m,1)及び半径値(m,2)を計算する。回転角度(m)と半径値(m,1)の組、及び回転角度(m)+180°と半径値(m,2)の組が、回転角度ごとの回折環半径である。
(3)残留応力計算
回転角度ごとの回折環半径が得られたということは、回折環の形状が得られたということであるので、従来より知られているcosαを用いて残留応力を計算する。この計算には、回転角度ごとの回折環半径の他に、設定値であるX線照射点からX線検出センサ移動ラインまでの距離L、設定値であるX線の入射角度ψ及び鉄の格子面間隔、無ひずみのときの回折角、ヤング率、ポアソン比等の既定値が用いられる。この計算方法は、例えば特開2005−241308号公報の〔0026〕〜〔0044〕に詳細に説明されているので本願では省略する。
コントローラ91は、残留応力の計算が終了すると、ステップS66にて、残留応力の数値を表示装置93に表示する。これ以外に、回転角度ごとの回折環半径値、回折環の形状、半径方向のX線強度曲線等を表示してもよい。また、合否判定基準があるときは、合否判定を表示してもよい。作業者は表示された結果を見ることで、測定対象物OBの疲労度の評価や、ショットピーニングなどによる加工結果の評価等を行うことができる。次にコントローラ91は、ステップS68にてプログラムの実行を終了する。
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、X線回折測定システムは、測定対象物OBに向けてX線を出射するX線出射器10と、X線出射器10から出射されるX線が測定対象物OBに照射されたとき、測定対象物OBにて発生する回折X線の強度を検出するX線検出センサ15,16と、X線出射器10から出射されるX線を貫通させる円筒状パイプ27を有し、X線検出センサ15,16をX線出射器10から出射されるX線の光軸に対し垂直に交差するライン上を移動させるステージ移動機構20と、ステージ移動機構20によるX線検出センサ15,16の移動位置を検出する位置検出回路72と、ステージ移動機構20によりX線検出センサ15,16を回折X線により形成される回折環と回折環の中心に対して互いに対称になる2つの位置で交差するように移動させ、X線検出センサ15,16と位置検出回路72に回折X線の強度とX線検出センサ15,16の移動位置を同じタイミングで検出させ、検出させた強度と移動位置とを用いて、回折環の半径値を2つの位置で取得するコントローラ91の制御プログラム、演算プログラム及び各種回路とを備えている。これにより、ステージ移動機構20によりX線検出センサ15,16を移動させるのみで、回折環の中心に対して互いに対称になる2つの位置で回折環の半径値を取得することができ、取得された2つの回折環の半径値があれば、cosα法による計算を行って測定対象物OBの残留応力を計算することができる。すなわち、短時間で残留応力の計算に必要なデータを取得することができる。
また、上記実施形態においては、X線検出センサ15,16は、X線出射器10から出射されるX線の光軸に対しそれぞれ反対側となる位置に2つあり、ステージ移動機構20は、それぞれのX線検出センサ15,16を、X線の光軸に対し垂直に交差するライン上を移動させるようにしてある。これにより、X線検出センサ15,16の移動距離を短くすることができるので、さらに短時間で残留応力の計算に必要なデータを取得することができる。
また、上記実施形態においては、ステージ移動機構20を、X線出射器10から出射されるX線の光軸と略一致する回転軸周りに回転させる回転機構51と、回転機構51によるステージ移動機構20の回転位置を検出する回転角度検出回路75とを備え、コントローラ91の制御プログラム及び各種回路は、ステージ移動機構20および回転機構51により、X線検出センサ15,16を回折環と2つの位置で複数交差するように移動および回転させ、回転角度検出回路75に回折X線の強度とX線検出センサ15,16の移動位置が検出されるときの回転角度を検出させ、回折環の半径値を複数の回転角度における2つの位置で取得している。これにより、複数の回転角度における、回折環の中心に対して互いに対称になる2つの位置の回折環半径で残留応力を計算することができるので、より高い精度で残留応力を計算することができる。
また、上記実施形態においては、X線出射器10、X線検出センサ15,16およびステージ移動機構20を含む筐体50と、筐体50に連結されたアーム式移動装置を備え、回転機構51は、筐体50とアーム式移動装置との連結部分に設けられているようにするとよい。これによれば、X線回折測定装置の筐体50の回転角度を測定対象物の周囲の物体に対して邪魔にならない位置にして、測定対象物OBにX線を照射することができるので、混み合った場所にある測定対象物OBを測定しやすくなる。また、X線回折測定装置の筐体50内に回転機構を設ける場合に比べ、筐体50をコンパクトにすることができるので、この点からも混み合った場所にある測定対象物OBを測定しやすくなる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
(変形例)
上記実施形態においては、回転機構51によりX線回折測定装置の筐体50を意図した回転角度まで回転させた後、ステージ移動機構20のステージ21を回折環の半径方向に移動させて、複数の回転角度で回折環半径を取得した。すなわち、回転と移動は別々に行うようにした。しかし、互いに対称になる2つの位置での回折環の半径値を2つの回転角度で取得するのみでよければ、これに代えて、回転と移動を同時に行い、2つの回転角度での回折環半径取得をさらに短時間で行うことができる。以下、本変形例において説明する。
本変形例においては、ステージ21は、図9に示すようにX線検出センサ15が取り付けられているステージ21−1と、X線検出センサ16が取り付けられているステージ21−2に分けられている。また、スクリューロッド23のねじの向きは円筒状パイプ27付近を境にして左右が逆になっており、フィードモータ22の回転によりステージ21−1とステージ21−2は互いに反対方向に移動するようになっている。さらに、スクリューロッド23のねじのピッチは左右等しく、ステージ21−1とステージ21−2の移動限界位置におけるX線検出センサ15,16の出射するX線の光軸位置からの距離が等しくなるよう調整されている。これにより、ステージ21−1とステージ21−2が移動してもX線検出センサ15,16から出射するX線の光軸位置までの距離は常に等しくなる。
また、この変形例においては、コントローラ91がフィードモータ制御回路73及び位置検出回路72へ出力する正側への移動指令は、ステージ21−1とステージ21−2が内側(出射するX線の光軸側)に向かって移動する指令であり、負側への移動指令は、ステージ21−1とステージ21−2が外側(フィードモータ22と軸受部24側)へ移動する指令である。そして、正側の移動限界位置は、ステージ21−1とステージ21−2が最も内側にある位置であり、このとき位置検出回路72が出力する移動距離wは最大になる。また、負側の移動限界位置は、ステージ21−1とステージ21−2が最も外側にある位置であり、このとき位置検出回路72が出力する移動距離wは「0」にリセットされる。また、このときのX線検出センサ15,16の中心点から出射するX線の光軸位置までの距離cは予めコントローラのメモリに記憶されており、コントローラは(c−w)を計算することで、X線検出センサ15,16の出射されるX線の光軸からの距離(半径位置)を計算する。
また、この変形例においては、フィードモータ制御回路73に設定されているステージ21−1,21−2の移動速度(単位時間あたりのパルス数)をVとし、モータ制御回路74に設定されている回転機構51の回転速度(単位時間あたりのパルス数)をRとし、上記のようにX線検出センサ15,16の中心点から出射するX線の光軸位置までの距離をcとすると、以下の数1で示す関係式が成り立つように、ステージ21−1,21−2の移動速度及び回転機構51の回転速度が設定されている。
(数1)
180°/R = 2・(c/V)
この式は、X線回折測定装置の筐体50が半回転する間に、ステージ21−1,21−2が1往復することを意味する。また、コントローラ91は測定の際、図6に示すフローのプログラム代えて図8に示すフローのプログラムを実行する。これ以外の装置構成は上記実施形態と同じである。
この変形例におけるX線回折測定システムによる測定は、上記実施形態と同様、位置姿勢調整工程S1、回折X線強度分布検出工程S2及び残留応力計算工程S3からなる。作業者は位置姿勢調整工程S1として上記実施形態と同様の調整を行い、回折X線強度分布検出工程S2として入力装置92から、測定対象物OBの材質(本実施例では、鉄)を入力し、測定開始を入力する。これによりコントローラ91は、図8に示すフローのプログラムを実行する。以後、図8に示すフローに従って説明する。
まず、ステップS102にて、n、m及びTに0を入力する。nはそれぞれのデータごとに割り当てられる数値であり、mはデータ取込みのタイミングを決定するために使用される値であり、Tはステージ21−1,21−2の移動方向を示す数値であり、「0」は正側への移動を表し、「0」以外の値は負側への移動を表す。次にステップS104にて、フィードモータ制御回路73と位置検出回路72に負側への移動の指令信号を出力し、ステップS106,S108にて位置検出回路72から入力する移動距離wの値が「0」になるまで待つ。ステージ21−1,21−2が外側の移動限界位置に達したとき、上述したように位置検出回路72は移動距離wを「0」にリセットするので、ステップS108にて「YES」と判定されたとき、ステージステージ21−1,21−2は外側の移動限界位置にある。
次にコントローラ91は、ステップS110にて、X線制御回路71にX線出射の指令を出力してX線出射器10からX線を出射させ、ステップS112にて、X線強度検出回路65,66に強度出力の指令を出力して、X線検出センサ15,16が出力するX線強度に相当する強度の信号のデジタルデータの出力を開始させる。次にコントローラ91は、ステップS114にて、モータ制御回路74に180°の回転角度と回転開始の指令を出力して、X線回折測定装置の筐体50の回転機構51による回転を開始させる。次に、フィードモータ制御回路73と位置検出回路72に正側への移動指令を出力して、ステージ21−1,21−2の内側への移動を開始させる。
次にコントローラ91は、ステップS118にて、時間tの計測を開始する。そして、コントローラ91は、ステップS120乃至ステップS134の繰り返しにより、微少時間ΔtごとにX線強度検出回路65,66が出力するX線強度に相当する値、位置検出回路72が出力する移動距離w、及び回転角度検出回路75が出力する回転角度を取込み、X線強度(n,1),X線(n,2),移動距離(n),回転角度(n)(n=0,1,2・・・)として記憶していく。この繰り返しの最中にX線回折測定装置の筐体50は回転し続け、ステージ21−1,21−2は移動し続けるので、記憶されるデータは、X線検出センサ15,16の移動する軌跡におけるX線強度の分布に相当する。この点は後述する。なお、この段階ではTには「0」が入力されているので、この繰り返しにおいてステップS120における、(m・Δt+T)は、0,Δt,2・Δt・・・と変化していく。また、ステップS128にて「YES」と判定されてステップS130へ行く。
この繰り返しの最中にステージ21−1,21−2は正側の移動限界位置に向けて移動し続けるので、正側の移動限界位置に達すると、ステップS120にて「YES」と判定してステップS136へ行き、ステップS136にて、計測している時間tをリセットして「0」から時間計測を行う。次にコントローラ91は、ステップS138にて、時間tが時間ta経過するまで待つ。時間taは正側の移動限界位置(内側の移動限界位置)にあるX線検出センサ15,16の中心点から出射するX線の光軸位置までの距離をdとすると、ta=2・(d/V)で計算される値である。すなわち、時間taは、正側の移動限界位置(内側の移動限界位置)に達したX線検出センサ15,16がそのまま同じ移動速度で移動し続け、出射するX線の光軸位置に達した後、折り返して正側の移動限界位置まで戻ると仮定したとき、この往復移動にかかる時間である。
コントローラ91は、ステップS138にて時間tが時間ta経過したとき、「YES」と判定してステップS140へ行き、ステップS140にてnをインクリメントし、ステップS142にてmに「0」を入力し、ステップS144にてTに時間taを入力し、ステップS146にて負側への移動を開始する。そして、コントローラ91は、ステップS120乃至ステップS128、ステップS148、ステップS132及びステップS134の繰り返しにより、微少時間ΔtごとにX線強度(n,1),X線強度(n,2),移動距離(n),回転角度(n)を記憶していく。なお、この段階ではTには時間taが入力されているので、この繰り返しにおいてステップS120における、(m・Δt+T)は、ta,(Δt+ta),(2・Δt+ta)・・・と変化していく。また、ステップS128にて「NO」と判定されてステップS148へ行く。
この繰り返しの最中に、ステージ21−1,21−2は負側の移動限界位置に向けて移動し続けるので、負側の移動限界位置に達すると、ステップS148にて「YES」と判定してステップS150へ行く。ステップS120乃至ステップS148の処理は、要約するとステージ21−1,21−2が移動している間、微少時間Δtごとにデータを取込み、ステージ21−1,21−2が移動を停止している間はデータの取込みを中断する処理と、ステージ21−1,21−2が正側の移動限界位置に達した後、時間taだけ待って負側へ移動させる処理である。
上述したようにステージ21−1,21−2が正側への移動、停止、負側への移動を行っている間、X線回折測定装置の筐体50は設定された速度で回転している。これにより、X線検出センサ15,16の中心点が上面壁50f側から見て、どのような軌跡を描いて移動するかを示したものが図9である。丸の点はX線検出センサ15の中心点が回転が10°されるごとに存在する位置を示しており、三角の点はX線検出センサ16の中心点が回転が10°されるごとに存在する位置を示している。図9を見るとわかるように、X線検出センサ15,16の中心点は双方で8の字を描くように移動し、回折環が負側の移動限界位置におけるX線検出センサ15,16の位置と出射されるX線の光軸の中間位置に形成される場合は、X線検出センサ15,16が回折環と交差する位置は4箇所とも45°の位置(図9における×点の位置)になる。
コントローラ91は、ステージ21−1,21−2が負側の移動限界位置に達し、ステップS148にて「YES」と判定してステップS150へ行くと、ステップS150にて、X線出射器10からのX線の出射させ、ステップS152にて、X線強度検出回路65,66のデータ出力を停止させる。そして、ステップS154にて、モータ制御回路74に0°の回転角度と回転開始の指令を出力して、X線回折測定装置の筐体50を回転角度0°の姿勢(元の姿勢)に戻す。なお、ステージ21−1,21−2が負側の移動限界位置に達したタイミングで、X線回折測定装置の筐体50は回転角度180°に達し、回転は停止している。次にコントローラ91は、ステップS156にて残留応力を計算し、ステップS158にて計算結果を表示装置93に表示する。この処理は、上記実施形態と同じである。なお、本変形例ではX線強度分布(曲線)におけるピーク点から半径位置と回転角度とが検出される。次にコントローラ91は、ステップS160にてプログラムの実行を終了する。
なお、本変形例では図9に示すように、X線検出センサ15,16が回折環と交差する回転角度は4箇所とも45°の位置であるが、この位置は、ステージ21−1,21−2の移動開始位置を負側の移動限界位置とし、回折環が形成される位置を、負側の移動限界位置におけるX線検出センサ15,16の位置から出射されるX線の光軸位置までの中間点とした場合である。すなわち、X線検出センサ15,16が回折環と交差する回転角度は、ステージ21−1,21−2の移動開始位置と回折環が形成される位置との関係から、様々な値になる。よって、X線検出センサ15,16が回折環と交差する回転角度を意図した値にしたいときは、測定対象物の材質から回折環が形成される位置を算出し、算出した位置と意図する交差の回転角度とから、ステージ21−1,21−2の移動開始位置を算出し、測定において、その位置からステージ21−1,21−2の移動を開始させればよい。
また、本変形例は、互いに対称になる2つの位置での回折環半径を2つの回転角度で取得することを目的としたもので、筐体50の回転とステージ21−1,21−2の往復移動は1回とした。しかし、測定時間が増大してもよい場合は、ステージ21−1,21−2の移動開始位置を変化させながら、筐体50の回転とステージ21−1,21−2の往復移動を複数回行えば、複数の回転角度でX線検出センサ15,16と回折環を交差させることができ、回折環半径を複数の回転角度で得ることができる。
上記説明からも理解できるように、上記変形例においては、コントローラ91の制御プログラム及び各種回路は、ステージ移動機構20によりX線検出センサ15,16を往復するよう移動させると同時に、X線検出センサ15,16が回折環と互いに対称になる2つの位置で交差するよう、回転機構51によりステージ移動機構20を連続的に回転させ、回転角度検出回路75による回転角度の検出を、位置検出回路72による移動位置の検出と同じタイミングで行うようにさせている。 これにより、回転機構51による回転とステージ移動機構20による移動を同時に行うので、回転と移動を別々に行って複数の回転角度で回折環半径を取得する場合に比べ、測定時間を短くすることができる。
さらに、本発明は上記実施形態および変形例以外にも種々の変更が可能である。上記実施形態および上記変形例では、回転機構51によりX線回折測定装置の筐体50が回転するようにしたが、X線回折測定装置の筐体50を大きくしてもよいときは、これに代えて図10に示すようにステージ移動機構20が出射されるX線の光軸周りに回転する構成にしてもよい。この場合、回転機構はモータ55であり、モータ55の出力軸55aは円筒状に形成され、回転中心を中心軸とする断面円形の貫通孔55a1を有し、出力軸55aは円筒状パイプ27に中心軸位置を同一にして連結されている。モータ55は筐体50に取り付けられており、X線出射器10から出射されたX線は、貫通孔55a1を介して円筒状パイプ27に入射するようになっている。また、上記実施形態において円筒状パイプ27の端部2箇所の内部に設けられた貫通孔が開けられた通路部材28,29の内、通路部材28は貫通孔55a1のX線出射器10側の端部に設けられている。また、モータ55は、ストッパにより1回転以上回転しないようになっている。これはX線検出センサ15,16やフィードモータ22等から出ている電線が1回転以上よじれるのを防止するためである。
上記実施形態および変形例が筐体50を回転させるのに対し、本形態はステージ移動機構20を回転させる点のみが異なっており、これ以外の構成及びコントローラ91が実行するプログラムは上記実施形態および変形例と同じである。この形態によれば、X線回折測定装置の筐体50は大きくなるが、X線回折測定装置の筐体50は回転しないので、誤って筐体50を測定対象物OBの周辺にあるものにぶつける可能性を低くすることができる。
また、上記実施形態および変形例においては、X線回折測定装置の筐体50またはステージ移動機構20を回転させるようにしたが、ステージ移動機構20は測定対象物OBに対して回転するようになっていればよいので、測定対象物OBが略同じ大きさで、試料台に載置することができるものに限定されていれば、X線回折測定装置と試料台を一定の位置関係になるようにし、試料台が出射されるX線の光軸周りに回転するような構成にしてもよい。これによっても、上記実施形態および変形例と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態および変形例においては、X線回折測定装置の筐体50はアーム式移動装置により位置と姿勢を調整できる構成にし、X線と同じ光軸で平行光であるLED光を照射し、表示装置93に表示された撮像画面を見ながら、位置と姿勢を調整する構成にした。しかし、測定対象物OBが試料台に載置することができるものに限定されていれば、X線回折測定装置の筐体50はアーム式移動装置に替えて、回転機構51による回転以外は位置と姿勢が変化しない支持機構に連結させ、試料台に位置と姿勢を変化させることができる機構を設けてもよい。この場合は、LED光を照射し、表示装置93に表示される撮像画面を見ながら、試料台の位置と姿勢を調整することになる。これによっても、上記実施形態および変形例と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態および変形例においては、X線回折測定装置の筐体50を回転させて、複数の回転角度で回折環半径を取得することができるようにしたが、残留応力は互いに対称になる2つの位置での回折環半径が得られれば計算することができるので、高い測定精度を必要としないときは、回転機構51は備えず、ステージ移動機構20によりステージ21を移動させるのみで残留応力の測定を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態および変形例においては、X線検出センサを2つ設け、ステージ21の1回の移動により2つの回折環半径が得られるようにしたが、測定時間が増えてもよければ、X線検出センサを1つにして、ステージ21の1回の移動により1つの回折環半径が得られるのみにしてもよい。この場合、上記実施形態においては回転角度の設定回数が倍になり、上記変形例においては、回転は0から180°までと0から−180°までの2回行う必要があるが、X線検出センサを1つにするため、装置のコストを抑制することができる。
また、上記実施形態および変形例においては、X線検出センサを2つ設け、1つのX線検出センサの移動限界位置は出射されるX線の光軸の近傍までとしたが、X線回折測定装置の筐体50が大きくなり、測定時間が増えてもよければ、X線検出センサを1つにし、1つのX線検出センサが出射されるX線の光軸位置を中心して移動開始前と対称となる位置まで移動するようにしてもよい。この場合、ステージ21が円筒状パイプ27に衝突しないように、円筒状パイプ27の先端近傍をステージ21の底面が通過する構成にする必要があるが、X線検出センサを1つにするため、装置のコストを抑制することができる。
また、上記実施形態および変形例では、取得したデータから回転角度ごとの回折環半径を算出し、cosα法により測定対象物の残留応力を計算するようにしたが、取得したデータから計算が可能な数値であればどのような数値を計算してもよい。例えば、回折環の半価幅や積分値幅を計算してもよいし、測定対象物OBの材質が鉄であれば、オーステナイトの割合を計算してもよい。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、対象とする測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、X線出射器から出射されるX線が測定対象物に照射されたとき、測定対象物にて発生する回折X線の強度を検出する2つのX線検出センサであって、X線出射器から出射されるX線の光軸に対し互いに対称となる位置にある2つのX線検出センサと、X線出射器から出射されるX線を貫通させる孔と、2つのX線検出センサをX線出射器から出射されるX線の光軸からの距離が常に等しくなるように、X線の光軸に対し垂直に交差するライン上を互いに反対方向に移動させる移動手段と、移動手段により移動されるX線検出センサの、X線の光軸からの距離である移動位置を検出する移動位置検出手段と、移動手段を、X線出射器から出射されるX線の光軸と略一致する回転軸周りに少なくとも半回転させる回転手段と、回転手段による移動手段の回転位置を検出する回転位置検出手段と、移動手段により2つのX線検出センサを、X線の光軸に対し最も遠い位置からX線の光軸に対し最も近い位置までを往復移動させるとともに、往復移動させる期間に回転手段により移動手段を半回転させることで、X線検出センサを回折X線により形成される回折環に、回折環の中心に対して互いに対称になる2組の2つの位置で交差するように移動させ、X線検出センサと移動位置検出手段と回転位置検出手段に、回折X線の強度とX線検出センサの移動位置と移動手段の回転位置を同じタイミングで検出させ、検出させた強度と移動位置と回転位置とを用いて、回折環の半径値を2組の2つの位置で取得する制御手段とを備えたことにある。