JP2016089017A - 柔軟性を有する高強度ポリイソプレン及びポリイソプレン組成物とその製造方法 - Google Patents

柔軟性を有する高強度ポリイソプレン及びポリイソプレン組成物とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加硫天然ゴムを用いた手袋などの浸漬製品では該製品との接触により生じる天然ゴム由来の蛋白質及び加硫促進剤によるI型及びIV型アレルギーと発がん性のN−ニトロソアミンの発生が問題。問題を解決し、医療及び衛生ゴム製品に相応しい高性能なポリイソプレンを提供する。
【解決手段】天然ゴム由来の蛋白質を含まず、加硫剤としての硫黄及び加硫促進剤等の硫黄元素量が100ppm以下であり、1,4−ジス構造が80当量%以上含有する合成ポリイソプレン、或いは抽出法による溶出蛋白質量が2,000ppm以下の天然ゴムにパラジウム化合物がPr元素量で100〜20,000ppm含有されるポリイソプレン組成物。前記組成物の加硫物は、加硫により強度が飛躍的し柔軟性が保持される上、従来の天然ゴム製品より生じていたI型及びIV型アレルギーを低減させ、発がん性のN−ニトロソアミンの発生を無くし、毒性の低い優れた性能を示す材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、従来の天然ゴム製品に代替し得る、力学特性の優れた高強度且つ柔軟性のあるポリイソプレン及びポリイソプレン組成物に関するものであり、また、I型及びIV型アレルギーの発症を低減させ、N−ニトロソアミンを形成させることの無い、低毒性な材料に関するものであり、更に、それらの簡易的且つ低コストによる製造方法に関するものである。
天然ゴム及び天然ゴムラテックスを原料に用いた手袋などの浸漬製品は従来より広く使用されている。それらは、高強度な上、弾性率や硬度が低く、伸び率の高い、他のエストラマー材料には無い優れた物理的特性を有する。
しかしながら、
(1)天然ゴムラテックス中には、蛋白質、脂質、及び微量成分からなる5%以下の非ゴム成分が含有されている。天然ゴムラテックスを主原料に用いたゴム製品を使用した場合、人体との接触により、蛋白質によるタイプI型の迅速型アレルギーを引き起こすことがある。
I型アレルギーの発症を低減させる為には、天然ゴムラテックス中からアレルギーの原因となる蛋白質を取り除いた、脱蛋白化天然ゴムが開発され、天然ゴムのアレルギー対策として、脱蛋白化天然ゴムは多く用いられている。
しかしながら、脱蛋白化された天然ゴムであっても、完全な蛋白質の除去は困難で、極少量の蛋白質は残留しており、I型アレルギー問題は完全に解決された訳では無かった。(非特許文献1)
一方、天然ゴムを加硫することで、破断点強度の著しく高い力学特性の優れた浸漬製品などの用途により相応しい材料として用いられている。
(2)天然ゴムを加硫するには、通常、加硫剤及び加硫促進剤を必要とする。
具体的には、加硫剤として硫黄や有機過酸化物があり、加硫剤又は加硫促進剤としてジチオカーバメート系のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)やチウラム系のテトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、更には、チアゾール系のメルカプトベンゾチアゾール(MBT)などを用いる。
加硫促進剤を用いることにより加硫反応が比較的容易に行われ、性能に優れたゴム材料を得ることができる。特に、天然ゴムラテックスの前加硫においては、40℃〜60℃程度の加熱反応により強度の高いゴムが得られるが、成型乾燥後に行う後加硫においては、100℃前後の加熱乾燥により行われ、より強度を増すことが可能である。特に、前加硫においては、1週間から数ヶ月程度の熟成期間を要することで、成型加工に適したラテックスを得ることができる。
しかしながら、加硫促進剤を用いた製品では、加硫促進剤が原因によるタイプIV型の遅延型アレルギー(過敏症)を引き起こすことがあった。それに加え、第二級アミンからなる加硫促進剤と、空気中に存在する窒素酸化物やゴム内に残留する窒素酸化物が反応し、発がん性のN−ニトロソアミンが生成する問題があり、加硫促進剤による健康被害問題を抱え、それらを改善する必要があった。
それ故、加硫促進剤を使用せず、天然ゴムの代替として、合成エストラマーを用いた手袋などの浸漬製品を製造する方法が求められている。即ち、I型及びIV型アレルギーの発症を低減させ、N−ニトロソアミンの生成させない為には、蛋白質を含有する天然ゴムを用いず、加硫促進剤を含有しないという条件であることが必須であり、更に、性能としては、高い強度や優れた伸縮性を持ち、従来の天然ゴム製品のような感触を示す材料を開発する必要があった。
一方、加硫促進剤を含まない配合において、硫黄のみによる天然ゴムの加硫を行うには、140℃以上の高温環境下で5時間以上の長時間を要する。その為、硫黄のみの加硫では加硫工程に非常に多くの時間やエネルギーを費し、作業効率が非常に悪く、従って加硫促進剤の使用は必要不可欠である。
近年では、IV型アレルギーを発症することが無い加硫促進剤や、第ニ級アミンを含まないN−ニトロソアミン対策の加硫促進剤が製品化されているが、それらは、従来の加硫促進剤に比べ、強度が不十分であったり、長時間の加硫時間を要するなど、実用化には至っておらず、やはり、従来の加硫促進剤を用いなければ、十分な性能を示す材料は無いのが現状である。
天然ゴムの代替として、主原料に合成エストラマーを用いた材料が多く開発されている。
その中でも特に、NBRを主原料に用いて製造された手袋は、天然ゴム製品の代替として広く使用され、NBR用いることにより、天然ゴム由来の蛋白質によるI型アレルギーの問題を解決することはできるが、その配合物の殆どには加硫促進剤を配合している。
NBRの配合物に加硫促進剤を含有しない例として、カルボキシル基含有NBRに金属酸化物を架橋し、カルボキシル基と金属酸化物の架橋反応により、イオン結合や金属結合を形成させ、力学特性を高めている。(特許文献1)
他方、合成コポリマー「商標名 BARRIERPRO BP2000」を用いた金属酸化物による架橋反応がある。(特許文献2)
これらの場合、天然ゴムや加硫促進剤を用いておいておらず、I型及びIV型アレルギーの問題には解決に至っているが、金属酸化物による架橋後は、天然ゴム加硫物に比べ弾性率が高く、伸長率が低い為に、柔軟性や伸びに欠けた硬いものとなり、天然ゴムの代替としては感触性能や物性において不十分であった。
従来の加硫促進剤を使用せず天然ゴムを主原料に、物性向上の目的で様々検討が行われている。
最近では、天然ゴムの物性向上に、ナノセルロースを活用しようという検討が行われている。(非特許文献2)
天然ゴムにナノセルロースを配合させることにより、強度を向上させることが可能となるが、この場合においても弾性率も高くなり、硬いゴムとなり、手触り感やフィット感に欠けたものとなる。
従来の加硫天然ゴムにおいては、天然ゴムの架橋に有機過酸化物を用いた架橋方法がある。有機過酸化物による架橋天然ゴムでは、硫黄や加硫促進剤を用いずに行うことができ、特に天然ゴムラテックスおいては、前加硫により強度を上げることが可能である。(非特許文献3)
具体的には、天然ゴムに有機過酸化物と還元剤を添加して、レドックス反応により発生したフリーラジカルが、ゴム分子中のアリル水素を引き抜き、炭素ー炭素結合を作製し、ゴム分子同士が結合し架橋させるという方法である。この場合、加硫促進剤を用いずに行われる為、加硫促進剤によるIV型アレルギーを発症させることが無く、硫黄加硫以外の架橋方法として一般的に確立されている。
しかしながら、有機過酸化物による架橋では、硫黄加硫に比べて強度はやや劣り、柔軟性や伸びに欠けるという欠点がある。
一方、合成ポリイソプレンラテックスを用いて有機過酸化物による架橋を行う場合、1,4−シス含量の高い、合成1,4−シスポリイソプレン(高シスタイプ)を用いて、天然ゴムラテックスと同様な反応を試みても、前加硫があまり進行せず、強度の向上が殆どなく、十分な力学特性が得られていないのが現状である。
その為、合成1,4−シスポリイソプレンを用いた有機過酸化物による反応では、固形化したゴムを有機溶媒に溶解させ、乾燥成型後に加熱により後加硫を行っている。この場合、架橋効率の良いポリブタジエンなどをブレンドして行われている。(特許文献3)
合成1,4−シスポリイソプレンラテックスを用いて過酸化物架橋を行ったものでは、浸漬後に行うホットエア炉による加熱と170℃以上の高温による溶融塩を用いた液浴、(場合によっては高エネルギー放射線照射)を用いた後加硫により強度を上げており、十分な物性を得るには溶融塩などの特殊な設備が必要であった。更に、その方法で製造されたものは、弾性率・伸長率・強度のバランスが悪く、高い伸長率や柔軟性を生み出す為に、硫黄や硫黄化合物を添加し、炭素−硫黄結合を形成させ、物性の改良を行っている。(特許文献4)
更に、特許文献5においては、「合成cis−1,4−ポリイソプレンを除くゴム」という限定的表現が多く記され、主に過酸化物架橋が容易に行われる天然ゴムやクロロプレンゴムを用いた方法で行われており、浸漬成型後に170℃以上の高温による溶融塩を用いた液浴による後加硫により強度を上げているが、この場合においても溶融塩のような特殊な設備が必要であった。その中でも、「合成cis−1,4−ポリイソプレン」を用いたものにおいては、得られた過酸化物架橋ラテックスは、浸漬を2回行う必要があり、1回の浸漬では不十分である上、架橋後の物性が記載されていなかった。(特許文献5)
一方、硫黄や硫黄化合物を用いずに合成1,4−シスポリイソプレンラテックスを用いた過酸化物架橋が行われているが、ディップ成型前に電子線の照射により前加硫を行い、硬化後の引張強度は低い値(最大7.3MPa)を示し、十分な加硫が進行していない。この場合も同じく、特殊な設備を必要とし、従来の浸漬ラインでは行うことができない。(特許文献6)
従って、シス含量の高い、合成1,4−シスポリイソプレンの過酸化物架橋では、柔軟性を保ちながら強度を上げることが困難であり、十分な物性を得るには、高エネルギー電子線やガンマ線などの放射線の照射や溶融塩による加硫工程が必要となる。
そのほかに、従来の加硫方法を用いずに、ケラチンなどのSH基を多量に有する化合物を導入し、合成ポリイソプレンや天然ゴムの架橋を行う方法がある。(特許文献7)
この場合、合成ポリイソプレンラテックスに、架橋剤(加硫剤)としてケラチンを5%添加し、前加硫を行っているが、破断点強度は3.6MPaにしか向上していない。カゼインを添加した場合も同程度である。
従って、以上における合成1,4−シスポリイソプレンの前加硫が可能となるのは、硫黄や加硫促進剤による前加硫と、放射線による前加硫であり、他の方法では十分な性能を示す前加硫が実現できていないのが現状である。
一方、ポリイソプレンやポリブタジエンにパラジウム化合物を添加して、力学特性を改良しようとする研究が、L.A.Belfiore等のグループによって行われている。(非特許文献4〜6)
多量のパラジウム化合物を合成ポリイソプレンやポリブタジエンなどに添加すると、弾性率と応力が大幅に向上することが記載されている。
しかしながら、彼等が用いた合成ゴムは、アタクチック1,2−ポリブタジエン、3,4−ポリイソプレン、1,4−シスポリブタジエンであり、それらの中で、アタクチック1,2−ポリブタジエン、3,4−ポリイソプレンの両者は、側鎖に二重結合を多く持ち、主鎖に二重結合をあまり多く持たない物質である。
一方、1,4−シスポリブタジエンは、側鎖としてメチル基などの電子供与性の置換基を持たない物質であり、電子供与性の置換基であるメチル基を多数有する天然ゴムや合成1,4−シスポリイソプレンとは大きく異なる物質であり、また反応性も大きく異なる物質である。
即ち、メチル基のような電子供与性置換基を有する1,4−ポリイソプレンは、アリルラジカルが生成しても、架橋反応よりも主鎖の切断が優先するのに対し、置換基の無い1,4−ポリブタジエンは、主鎖切断よりも架橋反応が優先するという特徴があるため、架橋させ易いという長所がある。また、1,4−ポリブタジエンは主鎖の切断が優先して行われる1,4−ポリイソプレンよりも反応性が高いと言える。
言い換えると、1,4−ポリイソプレンは架橋反応が容易に行われず、架橋し難いという欠点がある。また、1,4−ポリイソプレンは電子供与性の置換基があるが故に、1,4−ポリブタジエンより反応性が低いという欠点もある。
他方、側鎖に多くの二重結合を有する場合は、架橋反応が優先して行われるという長所を有する。それらは、アタクチックなポリブタジエンであることや、3,4−シス含量の高いポリイソプレンであることは、1,4−シス含量の高いポリイソプレンとは異なり、結晶化し難く、非晶部分が多いため、架橋し易いという特徴・長所を有するものであった。
つまり、Belfiore等は、架橋し易いジエン系ポリマーを扱ったに過ぎず、架橋反応が容易に行われるのは当然のことであった。
Belfiore等の研究における製造方法については、ラテックスを用いずに、THFを中心とする有機溶媒に固形ゴムを溶解させて行い、そのゴム溶液と、有機溶媒に溶解させたパラジウム化合物を混合するという方法で行われており、ラテックスのようなエマルジョン状態における、不均一に分散されているような条件では検討を行っていない。
それ故、有機溶剤を用いて均一に分散された溶液状態での検討であり、固形ゴムを溶解させる為に、非常に低濃度(固形分濃度が2%程度)という条件で行われ、多量の有機溶剤を用いることから、作業環境に悪い上、生産コストが高く、生産効率の悪いものとなっている。
更に、研究で用いたパラジウム濃度は非常に高濃度(0.5モル%〜10モル%)の領域であり、パラジウム濃度として重量%換算すると、0.78重量%〜15.6重量%(7,800ppm〜156,000ppm)という驚くべき多量のパラジウムを用いた検討である。
従って、得られたポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性などを目指しており、目的とする物質は、柔軟性のあるゴムの領域を超え、樹脂・プラスチックのような非常に硬い物質であった。
即ち、弾性率は非常に高いものになり、場合によってはGPaレベルまで達しているが、高い破断点強度は得られておらず、破断点強度は4MPa以下である。但し、アニール処理を行うと破断点強度は向上するが、その場合、伸長率は100%以下と極端に悪くなっている。更に、非特許文献5に示された図では、生成物のTgは0℃以上であることからも、非常に硬い物質であるということが分かる。
従って、本発明が目指す柔軟性のあるゴムとは全く異なる材料及び分野であることが明確である。
一方、グリップ性能向上を目指して、天然ゴムをハロゲン化した後、クロスカップリング反応を利用して、フェニル基などの硬い官能基を付加させようとする試みがなされている。(特許文献8)
官能基を付加させ、天然ゴムの化学変性を目的としたものであり、性能面においては、力学特性の向上が目的ではなく、グリップ性能の向上を目的とし、本発明の目的とする物性とは大幅に異なる。
パラジウム触媒を用いて、天然ゴムや脱蛋白化天然ゴムとの反応という点では、本発明と共通するが、クロスカップリング反応により行われており、生成物はフェニル基のような嵩高い置換基を有するポリマーであった。その為、弾性率が高く、硬い物となり、ゴムの性質から大きく変化しており、更に、ガラス転移温度(Tg)は高く、Tgは−29℃であり、原料の脱蛋白化天然ゴムのTgは−62℃であることから、Tgは遥かに高くなっている。
反応は、有機溶媒を使用し、非常に低濃度の状態(固形分濃度2%程度)で行われている。
耐老化性に劣るという天然ゴムの欠点を克服するため、天然ゴムの耐老化性向上が求められている。耐老化性が劣る原因として、一つには天然ゴムに含まれる蛋白質の存在があるが、それ以外に、天然ゴムの基本構造であるイソプレン主鎖に二重結合を含み、その二重結合部が、光や熱に弱く、劣化を引き起こしている。
その為、近年において、天然ゴムの二重結合部を水素化するという研究が行われている。(非特許文献7、8)
これらの研究では、天然ゴム固形物を有機溶媒に溶解させて、有機溶媒中で反応する為、非常に低濃度の条件で行われている。
一方、前記のような溶液状態ではなく、ラテックス状態における天然ゴムの水素化が行われている。(特許文献9,10)
その中で、触媒に塩化パラジウムを用いて水素添加する方法が記載されている。
これらは、天然ゴムの水素化に重点を置き、実質上、パラジウム含有ラテックスが水素添加されていない場合や、水素化率10%以下である非常に低い水素化率においては、何ら言及されておらず、それらの力学特性においては全く記載されていなかった。
即ち、天然ゴムの水素化は強度の向上などの力学特性の改善を目的としたものではなく、耐劣化性を目的としたものであり、手袋などの浸漬ゴム製品の用途を目的とした本発明とは大きく異なるものである。
更に、水素化に関するこれらの文献では、原料として天然ゴムを用いており、合成ポリイソプレンを用いたものは皆無であった。
最近、完全脱蛋白質化した、完全脱蛋白化天然ゴムラテックスが開発されている。(非特許文献9)
この原料を用いた場合、蛋白質由来であるI型アレルギー問題を完全に解決することが可能となる。しかしながら、完全脱蛋白質化天然ゴムは、合成ポリイソプレンと同様に、破断点強度が非常に低いという問題があった。つまり、従来の加硫剤や加硫促進剤を用いずに完全脱蛋白質化天然ゴムの破断点強度の向上を行うのは困難であり、力学特性において合成ポリイソプレンと似た性質を持つと推定される。
国際公開番号WO2012−043893号公報 特表2004−526063号公報 特開平8−10317号公報 特表2006−502024号公報 特表2003−530255号公報 特開2011−067636号公報 特開平6−166771号公報 特開2012−097144号公報 特開2006−131807号公報 特開2011−213766号公報
J.Appl.Polym.Sci.,93巻,555−559頁(2004) 日本ゴム協会誌,85巻(12),376−381頁(2012) ポリマーダイジェスト,33巻(7),38−47頁(1981) Hybrid Organiuc―Inorganic Composites ACS Symposium Series,585巻,192−208頁(1995) Macromolecules ,28巻,6993−7004頁(1995) J.Polym. Sci. Part B,34巻,2675−2687頁(1996) J.Appl.Polym.Sci.,103巻,3957−3962頁(2007) J.Appl.Polym.Sci.,66巻,1647−1652頁(1997) Colloid Polym.Sci.,290巻,331−338頁(2012)
天然ゴム由来の蛋白質を含まず、硫黄及び加硫促進剤を用いずに、I型及び
IV型アレルギー発症問題と発がん性N−ニトロソアミン発生による問題の両方を解決し、手袋などの浸漬製品に相応しい高伸張で柔軟性のある高強度なポリイソプレンは無く、更に、それらにおいては、特殊な設備を用いずに、従来の浸漬ラインで前加硫を可能とするポリイソプレンは無かった。
従って、本発明の目的とする力学特性は、破断点強度の高い、柔軟性に優れた低弾性率且つ伸長率の高いポリイソプレンであり、更に、前加硫により加工特性の良い強度を得る必要があった。
製造方法に至っては、コストダウンを実現し、量産化を可能とする簡易的な工程により製造することが目的であり、そのような感覚性能の優れた低毒性なポリイソプレンを、手袋などの浸漬製品における医療及び衛生ゴム製品の用途として開発する必要があった。
上述した課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、以下の構成により解決することを見出した。
第1の発明として、
(a)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(b)蛍光エックス線法で測定したパラジウム元素量が100〜20,000ppm
(c)1,4−シス構造を80当量%以上含有し、
(d)破断点強度が7.5MPa以上、且つ伸長率が650%以上
であるポリイソプレン固形物(X)であり、
第2の発明として、
固形化時に、
(ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(イ)溶液法によるローリー法で測定した溶出蛋白質量が0〜2,000ppmであり、
(ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
ポリイソプレンラテックス(Y−0)と、
(エ)パラジウム化合物
からなる組成物であって、
ポリイソプレン固形分に対してパラジウム元素の含量が100〜20,000ppmであるポリイソプレンラテックス(X−0)であり、
第3の発明として、
原料のポリイソプレンラテックス(Y−0)とパラジウム化合物の水溶液とを混合した後、パラジウム化合物含有ポリイソプレンラテックス(X−0)を、水分を蒸発させることにより得られるポリイソプレン固形物(X−1)の製造方法に関するものである。
第4の発明として、
原料として用いるポリイソプレンは合成ポリイソプレンであることに限定し、請求項1〜9のような元素等の限定をしない条件であり、
即ち、1,4−シス含量が80当量%以上である合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)に、パラジウム化合物を混合した後、パラジウム含有合成ポリイソプレンラテックス(X'−0)を、水分を蒸発させることにより得られるポリイソプレン固形物(X'−1)に関するものである。
第5の発明として、
(ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(オ)ケルダール法で測定した窒素元素量が0〜400ppm
(ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)を前加硫によって、
(カ)破断点強度が7.5MPa以上、且つ伸長率が650%以上
を有するポリイソプレン固形物(Z)に関するものである。
尚、本発明で規定するポリイソプレン固形物及びポリイソプレンラテックスは以下の通りに区分する。
原料として用いるポリイソプレンにおいては、
原料のポリイソプレンラテックスを(Y−0)、
原料のポリイソプレン固形物を(Y−1)、
原料の合成ポリイソプレンラテックスを(Y'−0)、
原料の合成ポリイソプレン固形物を(Y'−1)とし、
パラジウム化合物含有後のポリイソプレンにおいては、
パラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物を(X)、
パラジウム化合物を添加したポリイソプレンラテックス組成物を(X−0)、
パラジウム化合物を添加したポリイソプレンラテックス組成物を固形化したポリイソプレン固形物を(X−1)、
パラジウム化合物を添加した合成ポリイソプレンラテックス組成物を(X'−0)、
パラジウム化合物を添加した合成ポリイソプレンラテックス組成物を固形化したポリイソプレン固形物を(X'−1)、
請求項11で規定する合成ポリイソプレンラテックスの前加硫体を固形化したポリイソプレン固形物を(Z)とする。
ここで規定する「ポリイソプレン」とは、天然ゴム(NR)及び合成ポリイソプレン(IR)を指し、天然又は合成という区分がなければ、その両方を指すこととする。
尚、上記のポリイソプレン固形物(X−1)は、パラジウム含有ポリイソプレン固形物(X)に含まれるものである。
以上の条件を満たしたポリイソプレンは、天然ゴム由来の蛋白質や加硫促進剤を含むことが無く、微量のパラジウム化合物を含有させることにより、非常に簡易的な方法により、高強度、低弾性且つ高伸張である優れた物性を実現した。
本発明は、バルーンや手袋のような高い伸縮性が求められる浸漬製品において相応しく、力学特性としては柔軟性に富んでいる上、高い破断点強度と高伸長率を保持した材料であり、更に、I型及びIV型によるアレルギーの発症を低減させ、発がん性のN−ニトロソアミンを生成しない、低毒性な材料であり、特に医療分野におけるゴム製品に有用である。
本発明を以下に詳細に述べる。
本発明の第1の発明であるポリイソプレン固形物(X)は、請求項1に記載の通り、
(a)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(b)蛍光エックス線法で測定したパラジウム元素量が100〜20,000ppm
(c)1,4−シス構造を80当量%以上含有し、
(d)破断点強度が7.5MPa以上、且つ伸長率が650%以上
であるポリイソプレン固形物(X)
尚、上記の条件を満たすポリイソプレン固形物(X)であれば、合成ポリイソプレン又は天然ゴムのどちらを選択しても構わない。
請求項1(a)における硫黄含量は、蛍光エックス線装置を用いて測定し、更に一部はICP装置を用いて測定し、両者間で検量線化を行った値である。
請求項1(a)における硫黄含量は0〜100ppmが必須であるが、好ましくは50ppm以下、より好ましくは25ppm以下、最も好ましくは検出限界以下である。
硫黄含量が100ppmを超える場合は、加硫促進剤によるIV型アレルギーの発症を起こす可能性が高くなり、また、力学特性において、破断点強度の向上が不十分となり、柔軟性に欠けた、高弾性・高硬度な状態である為、好ましくない。
請求項1(b)におけるパラジウム含量は、硫黄含量測定時と同様に、蛍光エックス線装置を用いて測定し、更に一部はICP装置を用いて定量し、両者間で検量線化を行った値である。
添加したパラジウム化合物が、系から抜けない場合は、添加した量と含有量は、本質的に同一である。
パラジウム含量は100ppm〜20,000ppmであることが必須である。
100ppm未満の場合は、破断点強度の向上が不十分であるため、好ましくなく、一方、20,000ppmを超える場合は、弾性率が高く、柔軟性に欠けた硬いものとなり、好ましくない。
従って、パラジウムが多量に存在すると未反応物も多く、多量のパラジウムを用いることにより、非常に高価となり、工業的な量産化には不向きである。
好ましくは300ppm〜15,000ppmであり、より好ましくは1,000ppm〜10,000ppmであり、更に好ましくは1,500ppm〜7,500ppmであり、最も好ましくは1,500ppm〜6,000ppmである。
更に、パラジウムは0価のものでなく、2価のイオン状態のものが好ましい。
パラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X)において、有機溶媒に溶解し得る原料ポリイソプレン(Y−1)とは異なり、後述するように、架橋化が起こっているため、有機溶媒に不溶になるという特徴がある。そのため、請求項1(c)における原料ポリイソプレン(Y−1)のシス含量は以下のようにして求めた。
即ち、原料ポリイソプレン(Y−1)で測定した、固体H−NMRのシス含量の測定値と、更に、シート化した原料ポリイソプレン(Y−1)のFT−IRの対応から、833cm-1付近のスペクトルが1,4−シス3置換体のスペクトルに相当し、1,370cm-1付近のスペクトルと比較して検量線を作成し、その検量線を用いて1,4−シス含量を求めた。
ポリイソプレン固形物(X)の1,4−シス構造は、80当量%以上であることが必須である。
ポリイソプレンにおける立体規則性を規定するのは、適度な伸長結晶化と結晶化速度を有することが、破断点強度の向上には重要である。
1,4−シス構造が80当量%以上であることが必須であるが、好ましくは90当量%以上、より好ましくは92当量%以上、最も好ましくは92当量%以上〜99当量%未満である。1,4−シス構造が80当量%以下であると、破断点強度の大幅な向上は見られず、破断点強度、弾性率及び伸長率のバランスが悪く、好ましくない。
以上の条件を満たすポリイソプレン固形物(X)は、驚くべきことに、高い破断点強度がある上、伸縮性に富んだ、非常に柔らかい特性を有する材料である。
従って、本発明における物性として、(1)高い破断点強度(2)高伸長率(3)低弾性率(4)低い硬度という特徴が挙げられ、それらの力学特性を以下にパラメータ化する。
(1)高い破断点強度として、
破断点強度は7.5MPa以上であり、より好ましくは9MPa、更に好ましくは12MPa以上、最も好ましくは15MPa以上であるポリイソプレン固形物である。破断点強度が、7.5MPa未満の時は、十分な強度でなく、実使用時に破断する恐れがあり、好ましくない。
(2)高伸長率として、
伸長率は、650%以上あり、好ましくは800%以上、より好ましくは1,000%以上、更に好ましくは1,250%以上であり、更には1,500%以上が好ましく、最も好ましくは1,750%以上である。
(3)低弾性率として、
500%伸長時における弾性率は、4MPa以下が好ましく、より好ましくは3MPa以下、更に好ましくは、2MPa以下であり、最も好ましくは、1.5MPa以下である。
4MPa以下であれば、硫黄加硫天然ゴムと同程度又はそれ以下の弾性率であり、柔軟性において、硫黄加硫天然ゴムと同等な感触が得られる。4MPaを超えると、高弾性となり手触り感が硬く、感覚的に好ましくない。
(4)低い硬度として、
硬度は後述する装置を用いて測定した値が、55以上且つ68以下であるという特徴を有する。より好ましくは56〜66、最も好ましくは58〜64である。
以上におけるゴムの力学特性を表す物性(1)破断点強度(2)伸長率(3)500%弾性率をパラメータ化し、以下のような数式(1)を作成した。
Figure 2016089017
尚、数式(1)で示す、TS:破断点強度(MPa)、M:500%弾性率(MPa)、ε:初期の長さに対する破断点時の長さの比(=伸長率(%)×0.01)である。
力学特性パラメータ値(Ω)は、100以上が好ましい。力学特性が高度にバランス化されたポリイソプレン固形物(X)において、数式(1)で得られるパラメータ値を規定することにより、破断点強度、弾性率及び伸長率の最適な値を導き出すことができ、高い柔軟性と強度を必要とする浸漬製品においては重要である。
より好ましくは120以上、更に好ましくは150以上であり、最も好ましくは200以上である。力学特性パラメータ値が100未満であると、破断点強度、伸長率及び弾性率のバランスが悪く、好ましくない。
尚、本発明における力学特性値は、以下の引張試験及び硬度の評価条件によりポリイソプレン固形物(X)を測定したときの値である。
引張試験及び硬度の評価条件は、
厚さ0.5〜1.0mmのシート状のポリイソプレン固形物(X)を7号ダンベルで切り抜き、標点距離20mm、引張速度200mm/minの条件により引張試験を行い、硬度はデュロメータによる「アスカーゴム硬度計C2型」を用いて、厚さ10mm以上に重ねたゴムの硬度を求めたものである。
DSC法で測定したガラス転移温度(Tg)は、−40℃以下であるポリイソプレン固形物(X)であることが好ましい。
本発明のポリイソプレン固形物(X)は、原料ポリイソプレン固形物(Y−1)とガラス転移温度に殆ど差は無く、通常の天然ゴムや合成ポリイソプレンと同様に、極寒の場所でも使用できるという特徴を有する。
より好ましくは−45℃以下、更に好ましくは−50℃以下、最も好ましくはー55℃以下である。−40℃を超えると、寒冷下では硬くなり、使用できないという欠点を生ずる。
請求項1を満たしているポリイソプレン固形物(X)であれば、酸化防止剤、改質剤、等の添加剤が含まれている場合や、他のゴム成分、補強材、表面改質剤、等が少量含有する場合であっても、本発明の範囲内であり、即ち、他の成分が10重量%以下の量が含有する場合は、本発明の範囲内である。
以上のような高度にバランス化された力学強度を示すポリイソプレン固形物(X)は、本発明に至る様々な解析により、以下のような架橋形態を取ると推定される。
2価のパラジウム(イオン)による主鎖中、或いは側鎖にある二重結合(又はアリル基)への直接的な配位であるか、若しくは主鎖中、或いは側鎖にある二重結合とパラジウム及びパラジウム化合物分子内のハロゲン元素(又はハロゲンイオン)や陰イオンを介しての架橋が起こっているものと推定される。
その為、パラジウム含有量は、本発明で規定する量を必要とし、それを満たさない場合は、架橋が十分に行われず、強度の向上は見込めない。また、ポリイソプレンの立体規則性も配位し易さなどの点から、パラジウム含有量の規定は重要である。
尚、主鎖中に二重結合がある場合において、1,4−シスが多く含まれている方が、配位する場所が多くなり、その分強度が向上すると推定される。
一方、ハロゲンを通して、Heck反応類似の反応が起こり、C−C結合が生成することも考えられ、そのような現象から、破断点強度が大幅に向上したと推定される。
一般的な加硫ゴムである、硫黄や加硫促進剤などの硫黄化合物を用いた加硫による高強度のゴムにおいて、ゴム構造中に、S−C共有結合を形成することが高強度化への大きな要因である。また、そうした架橋の場合は、架橋点の数がより多く、1当量の架橋点の占める主鎖中の二重結合量は、100当量以下と非常に架橋密度の高い物となっている。
一方、パラジウムにおける架橋の場合、大きなパラジウム元素(又はパラジウムイオン)が、二重結合に配位すると推定される為、硫黄や硫黄化合物による架橋密度に比べ、パラジウムによる架橋密度は低いと考えられ、且つ、二重結合の立体規則性が重要になり、架橋点の数は、パラジウム1当量につき、100当量以上の二重結合量が必要と考えられる。
以上のように、パラジウム元素(又はパラジウムイオン)を含有することで、配位結合なのか共有結合なのか、又はその他の結合なのかは特定できないが、分子間で架橋していることは、明確である。その為、ポリイソプレン固形物(X)は、ゲル分は非常に高く、更に、膨潤度は、低い物になっている。即ち、架橋反応により灯油やトルエンのような非極性溶媒に浸漬しても、あまり膨潤せず、その為、ポリイソプレン固形物(X)は、ヒステリシスロスが小さく、回復性に優れ、ゴムとしての優れた特徴を有する。
膨潤度は、ポリイソプレン固形物(X)を灯油などの非極性溶媒に24時間浸し、膨潤前後の長さのから下記計算式により膨潤度を求めた。
膨潤度={膨潤後の長さ}/{膨潤前の長さ}
灯油における膨潤度の値が、2.5倍以下であることが好ましく、更に好ましくは2.0倍以下、最も好ましくは1.75倍以下である。
更に、架橋密度を判断する上で、膨潤度の他にゲル分(金網法によるゲル分率)を以下のように求めた。
ポリイソプレン固形物(X)又は原料ポリイソプレン固形物(Y−1)をトルエンなどの非極性溶媒に一定時間浸し、その後、その溶媒中に形成したゲルを金網を用いて濾過し、金網上に残ったゲルを含む乾燥後の金網の重量を求め、下記計算式よりゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)= {(ゲル濾過後に乾燥した金網の重量−金網の重量)/投入したポリイソプレン固形物の重量}×100
以上の方法によりトルエンによるゲル分率を求めた結果、架橋されたポリイソプレン固形物(X)はゲル分率が高く、60%以上のゲル分を含む。特に、ゲル分が多いとポリイソプレン固形物(X)の破断点強度が高い傾向があり、ゲル分率は70%以上が好ましく、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。
蛋白質に由来する窒素元素及び加硫促進剤による硫黄元素を含有しないことは、I型及びIV型によるアレルギーの発症を低減させ、更に、N−ニトロソアミンを生成させないことから、本発明では必須の条件である。
その中でもI型アレルギーは、天然ゴム中の水溶性の蛋白質が原因でアレルギー反応が起こることから、蛋白質の定量は、抽出法及び溶出法によるローリー法とケルダール法を用いて行った。
抽出法によるローリー法とは、ゴムシートを純水に浸し、水溶性の蛋白質を抽出させる方法であり、ポリイソプレン固形物の表面付近にある水溶性蛋白質のみを測定する為、実際に含有する蛋白質の総量を求めることは出来ない。
溶液法によるローリー法とは、有機溶媒を用いてポリイソプレン固形物を溶解させ、その溶解物を純水に分散し、蛋白質を抽出させる方法であり、有機溶媒に溶解させて行う為、蛋白質の全量を測定することが可能である。ただしこの場合、有機溶媒に可溶するポリイソプレンであれば蛋白質の全量を測定することは可能であるが、天然ゴムのようなゲル分が存在するポリイソプレンでは架橋している部分が有機溶媒に不溶となり、その為、蛋白質の全量を測定することが出来ない。
請求項2における蛋白質の定量は、抽出法によるローリー法で行った。
一方、ケルダール法では、全窒素量を求めることが出来るが、ローリー法はケルダール法に比べ簡易的な測定で求めることが出来る。
本発明では、それぞれの測定方法の欠点を補完する意味で、請求項2では、抽出による方法で得られた蛋白質量をローリー法で求め、請求項3では、ケルダール法で求めた窒素元素含有量を規定した。
尚、ケルダール法により全窒素量を測定する為、この方法を用いた場合は、蛋白質由来の窒素量のみならず、ポリイソプレンに含まれる添加剤(加硫剤や加硫促進剤、界面活性剤、等)の含有窒素量も含まれる。
ケルダール法は、非特許文献1の方法に準じて測定した。(JIS−6352に準じた方法)
一般に蛋白質量と窒素元素含有量の関係は、
窒素量(ppm)≒蛋白質量(ppm)/6
の関係があり、ケルダール法により求めた窒素量から蛋白質量として上記式により換算して求めた。
抽出法によるローリー法の定量において、蛋白質量は0(検出限界以下)〜2000ppmであることが必須である。
尚、ppmの単位は、〔蛋白質量〕/〔ポリイソプレン固形物の重量〕である。
蛋白質量が2000ppmを超えて検出されると、I型アレルギーが発生する傾向が高く、更に、蛋白質の含有量が多いと、強度の向上が無く、好ましくない。
従って、好ましくは0〜1000ppmであり、より好ましくは0〜300ppmであり、更に好ましくは0〜100ppmであり、最も好ましくは0又は検出限界以下である。
ケルダール法による窒素元素含有量において、窒素元素含有量は0(検出限界以下)〜400ppmであることが必須である。
400ppmを超えると、I型アレルギーを発症する傾向が高く、更に、加硫促進剤によるIV型アレルギーの発症及びN−ニトロソアミンの生成する恐れがあり、好ましくない。
好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは0又は検出限界以下である。
本発明の第2の発明であるパラジウム含有ポリイソプレンラテックス(X−0)は、請求項4に記載の通り、
固形化時に、
(ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(イ)溶液法によるローリー法で測定した溶出蛋白質量が0〜2,000ppmであり、
(ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
ポリイソプレンラテックス(Y−0)と、
(エ)パラジウム化合物
からなる組成物であって、
ポリイソプレン固形分に対してパラジウム元素の含有量が100〜20,000ppmであるポリイソプレンラテックス(X−0)である。
上記を満たす原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)であれば、天然ゴムラテックス又は合成ポリイソプレンラテックスのどちらを選択しても構わない。
天然ゴムは、Hevea brasiliensis(ヘベア種、パラゴムノキ)、Parthenium argentatum(グアユールゴムノキ)、Ficus elastica (インドゴムノキ)、ゴムタンポポ(ロシアタンポポ)、等から採取される。
代表的なパラゴムノキでは、採取された後、貯蔵安定剤としてアンモニアを加える他に、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)や酸化亜鉛(ZnO)を加え、遠心分離を行い固形分濃度60%程度まで濃縮する。その後、アンモニアやTMTDとZnOを追加し、ハイアンモニアラテックス(HANR)、ローアンモニアラテックス(LANR)などが製造される。それらの天然ゴムラテックスは、蛋白質、脂質、及び微量成分からなる非ゴム成分を5%以下を含む。
請求項4に記載の範囲内である、硫黄含有量、蛋白質量、及び1,4−シス構造を含有するラテックスであれば、どのタイプの天然ゴムを用いても良い。特に、近年開発の著しいグアユールやロシアンタンポポは請求項4の条件を満たしていれば用いることは可能である。
即ち、請求項4に記載の条件を満たすには、貯蔵安定剤として用いたTMTDを含まないタイプのラテックスや、天然ゴムラテックス中の蛋白質を取り除いた脱蛋白化天然ゴムなどを用いることがより適切であるが、従来の脱蛋白化天然ゴムは、添加剤として硫酸エステル塩などの界面活性剤を用いることにより、多くの硫黄化合物を含有し、更に、極少量の蛋白質が残留している場合があり、I型アレルギーを発症させる可能性があり、請求項4で規定する条件を満たすものでなければならない。
最近では、「Colloid. Polym. Sci., 290巻 331−338頁(2012)」(非特許文献9)に記載された方法で製造された完全脱蛋白化タイプの天然ゴムがあり、それを用いることも可能である。
一方、合成ポリイソプレン(IR)は、重合条件により1,4−シス付加体、1,4−トランス付加体、3,4付加体、1,2付加体の4種類に分類され、1,4−シス付加体を多く含むものとして、リチウム触媒を用いたアニオン重合法で製造されたものやチーグラー触媒を用いた配位重合法で製造されたものがある。最近では、メタロセン系触媒を用いたものや、希土類を用いた触媒系で製造されたものがあり、工業的に入手可能なものとして、リチウム触媒とチーグラー触媒が挙げられる。
リチウム触媒を用いた重合では、1,4−シス付加体を約92%程度含有し、一方、チーグラー触媒を用いた重合では、1,4−シス付加体を約98%程度含有する。
一般的に、チーグラー触媒を使用して製造したものは、リチウム触媒に比べ、反応機構などの違いにより、1,4−シス付加体を高比率で含む傾向がある。
立体規則性においては、1,4−シス付加体の比率が高い程、立体規則性が高く、且つ結晶化が高いと考えられ、本発明において、1,4−シス構造を80%当量以上含有することは必須である。
立体規則性の観点から、好ましくは90当量%以上、より好ましくは92当量%以上、最も好ましくは92当量%以上〜99当量%未満である。1,4−シス構造が80当量%以下であると、破断点強度の大幅な向上は見られず、破断点強度、弾性率及び伸長率のバランスが悪く、好ましくない。
合成ポリイソプレンは、固形ゴム又はラテックスの状態での入手が可能である。
固形ゴムにおいて、固形の合成1,4−シスポリイソプレンは、JSR(株)社製の製品名IR2200や日本ゼオン(株)社製の製品名Nipol IR2200、クレイトンポリマー社製の製品名Cariflex IR0307で販売されているものが挙げられる。
これらのポリイソプレンは、1,4−シス構造が90%以上含有することは既知である。尚、これらの固形ゴムを乳化し、エマルジョン化して使用することが可能であり、請求項4ではラテックス状態での条件として規定している。
一方、ラテックスの場合、合成1,4−シスポリイソプレンラテックス(IR LATEX)として、住友精化(株)社製のセポレックスIR−100Kやクレイトンポリマー社製のCariflex IR0401、日本ゼオン(株)社製のNipol MEシリーズ(開発品)などが利用できる。
これらのポリイソプレンは、1,4−シス構造が90%以上含有することは既知である。特に日本国内で入手可能な製品では、住友精化(株)製のIR−100Kとクレイトンポリマー社製のIR0401が好ましく、医療用ポリイソプレンラテックスとして使用の制約の無い住友精化(株)製のIR−100Kの使用が最も好ましい。
尚、固形状態のものより、ラテックス状態のポリイソプレンを用いた方が乳化の手間がかからず、高濃度で使用を可能とする為、合成1,4−シスポリイソプレンラテックス(Y'−0)を用いることが好ましく、また、I型アレルギーの要因となる蛋白質を含むことが無く、硫黄元素を含有することが無い為、天然ゴムラテックスよりも合成1,4−シスポリイソプレンラテックスを用いた方が好ましい。
請求項4(ウ)における1,4−シスポリイソプレンのシス含量の測定は、原料ポリイソプレン固形物(Y−1)を有機溶媒(CDCl)に溶解させ、溶液を測定するH−NMRを使用して、ポリイソプレンのシス含量を測定した。
更に、FT−IRを使用して、833cm−1付近のスペクトルが、1,4−シス3置換体のスペクトルに相当し、1,370cm−1付近のスペクトルと比較して、1,4−シス含量を測定した。
従って、本発明において、H−NMRの測定値とFT−IRの測定値との対比により、より正確なシス含量を求めた。
請求項4(イ)における溶液法によるローリー法の蛋白質含有量は、0〜2,000ppmの範囲内であることが必須であり、2,000ppmを超えると、I型アレルギーが発症する可能性が高く、更に、パラジウムを混合した場合に架橋阻害が起こる恐れがあり、好ましくない。
より好ましくは0〜1,000ppmであり、更に好ましくは0〜100ppmであり、最も好ましくは検出限界以下である。
請求項4(ア)における硫黄含量は、0〜100ppmであることが必須であり、硫黄含量が100ppmを超える場合は、パラジウムを混合した場合に架橋阻害を起こす恐れがあり、パラジウムの添加による破断点強度の向上が著しく悪くなる。また、加硫促進剤によるIV型アレルギーを防ぐ目的でも、硫黄含有量が少ない程、好ましい。
好ましくは0〜80ppm、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは25ppm以下、最も好ましくは0ppm〜検出限界以下である。
パラジウム含量は、100ppm〜20,000ppmであることが必須である。
好ましくは300ppm〜15,000ppm、より好ましくは1,000ppm〜10,000ppm、更に好ましくは1,500ppm〜7.500ppmであり、最も好ましくは1,500ppm〜6,000ppmである。
請求項5におけるポリイソプレン固形物(X−1)は、請求項1の範囲内となるポリイソプレン固形物(X)であるが、請求項4によって得られたラテックス(X−0)を用いることにより、原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)が限定される。つまり、有機溶媒に溶解し得る原料ポリイソプレン固形物(Y−1)は破断点強度の低い状態であるが、請求項5によって得られたパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)は、有機溶媒に不溶となり、破断点強度の高い、柔軟性に富んだポリイソプレンである。
従って、請求項5により得られるポリイソプレン固形物(X−1)の力学特性は以下の条件であることが好ましい。
請求項5により得られるポリイソプレン固形物(X−1)の破断点強度は、7.5MPa以上になる。
更に、破断点強度は9MPaを超える組成物の場合がより好ましく、更に12MPa以上が好ましく、最も好ましくは、15MPa以上である組成物である。破断点強度が、7.5MPa未満の時は、強度が不十分であり、使用時に破裂する恐れがあり、好ましくない。
特にパラジウムを含有する前後のポリイソプレン固形物(Y−1)と(X−1)の破断点強度の比率において、原料ポリイソプレン固形物(Y−1)に比べて、パラジウム含んだ後のポリイソプレン固形物(X−1)の強度が2倍以上になるのが好ましく、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上、最も好ましくは30倍以上である。
尚、ポリイソプレン固形物(X−1)における力学特性値の評価条件は、ポリイソプレン固形物(X)の引張試験及び硬度の評価条件と同一である。
例えば、パラゴムノキのような通常の天然ゴムとして用いられているポリイソプレンは、脱蛋白化処理を施してないものであれば、請求項4の範囲外となるが、このような通常の天然ゴムを用いた場合に、パラジウムを含有しても、破断点強度は殆ど向上しないという現象も認められた。
即ち、硫黄元素を多く含むと、パラジウムの配位が硫黄元素に阻害され、硫黄元素による架橋阻害が起こると推定される。
硫黄元素が100ppmを超えた原料ポリイソプレン(Y−1)においては、パラジウム化合物が存在しても破断点強度はあまり向上せず、硫黄元素が200ppmを超えた場合は、殆ど向上せず、400ppmを超えると全く向上しなかった。
蛋白質の場合も同様に、蛋白質が多く存在すればパラジウムイオンの配位が蛋白質に阻害され、蛋白質などの非ゴム成分による架橋阻害が起こると推定される為、蛋白質が2,000ppm以上あると破断点強度の向上が認められない。
請求項5により得られるポリイソプレン固形物(X−1)の弾性率においては、500%の伸長時の弾性率は4MPa以下が好ましく、より好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下、最も好ましくは1.5MPa以下である。
4MPa以下であれば天然ゴムの加硫品と同程度ないしはそれ以下の弾性率であり、柔軟性において、同等の感触が得られる。4MPaを超えると、高弾性となり手触り感が硬く、感覚的に好ましくない。
伸長率においては、伸長率650%以上であることが必須であり、好ましくは800%以上、より好ましくは1,000%以上、更に好ましくは1,500%以上、最も好ましくは1,750%以上である。
以上のような請求項5を満たしているポリイソプレン固形物(X−1)であれば、酸化防止剤、改質剤、等の添加剤が含まれている場合や、他のゴム成分、補強材、表面改質剤、等が少量含有する場合であっても、本発明の範囲内である。即ち、他の成分が10重量%以下の量が含有する場合でも、本発明の範囲内である。
次に、本発明の第3の発明であるパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)の製造方法は、請求項6に記載の通り、
固形化時に、
(ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(イ)溶液法によるローリー法で測定した溶出蛋白質量が0〜2,000ppmであり、
(ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
ポリイソプレンラテックス(Y−0)とパラジウム化合物を混合した後、
パラジウム化合物含有ポリイソプレンラテックス(X−0)を、水分を蒸発させることにより得られる
ポリイソプレン固形物(X−1)の製造方法に関するものである。
請求項6(ア)における硫黄含量は、前記と同じ方法で求め、ここで用いる原料ポリイソプレン(Y−1)における硫黄含量は、
0〜100ppmであることが必須であり、硫黄含量が100ppmを超える場合は、パラジウムを混合した場合に架橋阻害を起こす恐れがあり、パラジウムの添加による破断点強度の向上が著しく悪くなる。また、加硫促進剤によるIV型アレルギーを防ぐ目的でも、硫黄含有量が少ない程、好ましい。
好ましくは0〜80ppm、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは25ppm以下、最も好ましくは0ppm〜検出限界以下である。
合成ポリイソプレンは、硫黄成分が殆ど含まれず検出限界以下となるが、稀に、20ppm〜10ppm程度含有する場合があった。これはラテックス化する際に用いられる例えば硫酸エステル塩のような界面活性剤などの添加剤から硫黄元素が検出された為である。
天然ゴムにおける硫黄成分は、一般的に以下のような理由により含有する。
通常、パラゴムノキから採取される天然ゴムは、土壌の養分として硫黄成分を吸収することがあり、その微量の硫黄分を検出することがあり、その硫黄成分は、ゴムの生合成において必須成分でもある。
また、ゴムの樹から採取した後、貯蔵安定剤としてアンモニアの他にテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)と酸化亜鉛(ZnO)を用いて天然ゴムラテックスに混合される。その後、遠心分離を行い固形分濃度60%程度まで濃縮し、添加したTMTDやZnOなどは殆どが取り除かれるものの、それらは微量含まれていることがある。
また、ローアンモニアタイプの天然ゴムラテックス(LATZ)においては、遠心分離後に貯蔵安定性を保つ為にTMDTとZnOを更に添加する工程がある。
以上の理由により、蛍光エックス線を用いた測定では、天然ゴムを用いた測定では微量の硫黄が検出される。
尚、蛍光エックス線の測定のみでは、加硫工程で添加する加硫剤や加硫促進剤に由来する硫黄成分とは区別をつけることが出来ない。従って、蛍光エックス線を用いた測定によると、ハイアンモニアタイプの天然ゴムラテックス(HANR)では約200ppm程度の硫黄が検出され、ローアンモニアタイプの天然ゴムラテックス(LATZ)では、それ以上の硫黄が検出される。
但し、前記の通り、パラジウムによる架橋の反応阻害や、加硫促進剤によるIV型アレルギー問題があり、硫黄含有量は少ない程好ましく、従って、本発明の硫黄含量は0〜100ppmであることが必須である。
即ち、アレルギーを発生させることが無い硫黄単体や硫黄化合物が、硫黄元素として含まれていたとしても、硫黄元素が100ppmを超えた場合は本発明の範囲外とし、0〜100ppmの場合は、本発明の範囲内とする。
請求項6(イ)における溶液法によるローリー法の蛋白質含有量は、0〜2,000ppmの範囲内であることが必須であり、2,000ppmを超えると、I型アレルギーが発生する可能性が高く、更に、パラジウムを混合した場合に架橋阻害が起こる恐れがあり、好ましくない。
好ましくは0〜1,000ppmであり、より好ましくは0〜300ppmであり、更に好ましくは0〜100ppmであり、最も好ましくは検出限界以下である。
尚、合成ポリイソプレンの場合は、蛋白質は存在しないので、明らかに検出限界以下である。
請求項6(ウ)におけるシス含量は、1,4−シス構造を80%当量以上含有することは必須である。
好ましくは90当量%以上、より好ましくは92当量%以上、最も好ましくは92当量%以上〜99当量%未満である。1,4−シス構造が80当量%以下であると、破断点強度の大幅な向上は見られず、破断点強度、弾性率及び伸長率のバランスが悪く、好ましくない。
合成ポリイソプレンの場合において、特にLi触媒を用いて製造された高シスタイプの合成1,4−シスポリイソプレンでは、一般に破断点強度は、非常に低く0.4MPa程度である。天然ゴムは、一般に破断点強度は、5〜9MPa程度あるが、天然ゴムに含まれる蛋白質量が2,000ppm以下において、特に500ppm以下の場合は、破断点強度は4MPa以下と低く、エステル交換法でリン脂質や脂肪酸を取り除いたり、蛋白質を完全に取り除いたものでは、2MPa以下となる。(非特許文献9、他)
つまり、蛋白質を含有しない合成1,4−シスポリイソプレンに比べ、天然ゴムは蛋白質含量が多くなる程、破断点強度は高い傾向にある。
一方、請求項6の製造方法により得られるパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)の破断点強度は、7.5MPa以上になる。
更に、破断点強度は9MPaを超える組成物の場合がより好ましく、更に12MPa以上が好ましく、最も好ましくは、15MPa以上である。破断点強度が、7.5MPa未満の時は、強度が不十分であり、使用時に破裂する恐れがあり、好ましくない。
特にパラジウムを含有する前後のポリイソプレン固形物(Y−1)と(X−1)の破断点強度の比率において、原料ポリイソプレン固形物(Y−1)に比べて、パラジウム含んだ後のポリイソプレン固形物(X−1)の強度が2倍以上になるのが好ましく、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上、最も好ましくは30倍以上である。
また、弾性率においては、500%の伸長時の弾性率は4MPa以下が好ましく、より好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下、最も好ましくは1.5MPa以下である。
4MPa以下であれば天然ゴムの加硫品と同程度ないしはそれ以下の弾性率であり、柔軟性において、同等の感触が得られる。4MPaを超えると、高弾性となり手触り感が硬く、感覚的に好ましくない。
伸長率においては、伸長率650%以上であることが必須であり、好ましくは800%以上、より好ましくは1,000%以上、更に好ましくは1,500%以上、最も好ましくは1,750%以上である。
一方、原料のポリイソプレン(Y−0)又は(Y−1)において、既に架橋が起こっているようなゲル分率の高いポリイソプレンは、パラジウムによる配位がし難くなる恐れがあり、好ましくない。更に、後述する方法で求めた原料のポリイソプレン(Y−1)におけるゲル分は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは3%以下、最も好ましくはゲル分が存在しないことである。ゲル分率と破断点強度は相関し、破断点強度が低い程、ゲル分は少ない傾向である。
特に、合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)を用いてパラジウムと混合する場合は、合成ポリイソプレンは蛋白質を含有せず、また、貯蔵安定剤としてのTMTDを含有しない為、架橋反応の阻害となる可能性が低く、好ましい。
それ故、第4の発明として請求項10に記載の通り、合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)とパラジウム化合物の水溶液を混合したパラジウム化合物含有合成ポリイソプレンラテックス(X'−0)から、水分を蒸発させたポリイソプレン固形物(X'−1)であることを挙げ、原料として用いる合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)と限定された条件が、パラジウムとの反応性などの点から最も好ましい。
製造方法として、請求項6に記載の通り、原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)にパラジウム水溶液を混合した後、水分を蒸発させるという極めて簡易的な製造法である。
原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)とパラジウム水溶液は共に水性であるので、有機溶媒を用いることなく、更に原料のラテックスを用いることで固形分濃度も高められ、低粘度である為に作業性に優れる。
詳細な製造方法に関して以下の通りに述べる。
本発明において用いるパラジウム化合物は、均一系触媒としては、PdCl(塩化パラジウム)、臭化パラジウム、酢酸パラジウムやPd(acac)、硝酸パラジウムなどの金属塩又は金属を含む(イオン性)のMPdCl4(M=Li、Na、K)化合物やPd(PPh、Pd(PPhX 、Pd(PPh(X=I、Br、Cl、OAc)、π−アリルPd錯体のような金属錯体触媒などが挙げられる。
一方、不均一系触媒としては、Pd/CaCOやPd/炭素、等の担持型のパラジウム固体触媒などが挙げられる。
これらの中で水溶性にできるという点での使い易さ、価格などの観点から、PdCl(塩化パラジウム)、臭化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウムを利用するのが好ましく、配位力の点から、PdCl、PdBrが好ましく、コスト面からPdClが最も好ましい。
また、配位に関与できるパラジウムは、主に2価のパラジウムであり、0価のパラジウムは配位し難いと推定されることや、陰イオンの関与であるとも推定されることから、塩化パラジウム、臭化パラジウム、硝酸パラジウムが好ましく、特にコスト面からも塩化パラジウムが好ましい。
これらのパラジウム化合物の使用量は、固形のゴム量に対し、パラジウム量として100ppm〜20,000ppmであることが必須である。
好ましくは300ppm〜15,000ppm、より好ましくは1,000ppm〜10,000ppm、更に好ましくは1,500ppm〜7.500ppmであり、最も好ましくは1,500ppm〜6,000ppmである。
100ppm未満の場合は、破断点強度の向上が不十分であるため、好ましくなく、一方、20,000ppmを超える場合は、弾性率が高く、柔軟性に欠けた硬いものとなり、好ましくない。
また、パラジウムが多量に存在すると未反応物も多く、多量のパラジウムを用いることにより、非常に高価となり、工業的な量産化には不向きである。
塩化パラジウムを使用する場合は、水に溶解し難く、塩化パラジウムのみでは水に溶解させることは困難である為、NaClを加えることで、溶解性を高めることが可能であり、その他には、塩酸や王水のような強酸を用いて溶解性を高めることが可能である。
特に、NaClを加えて溶解させる方法は、安全且つ簡易的な上、強酸を用いる場合と異なり、pHの変化が少なく、ポリイソプレンや天然ゴムなどpHが高いラテックスに混合する時には最適であり、更に破断点強度が高くなり易いので好ましい。
一方、強酸を使用する方法では、ポリイソプレン固形物(X−1)の着色が少なく、天然ゴムと同系統の色調となり、色調の面からは好ましいが、強酸であり、ポリイソプレンラテックス(Y−0)と混合する場合はpH調整を必要とし、pH調整の添加剤によりパラジウム化合物の挙動が変わることもあり、NaClを用いて溶解する方が好ましい。
尚、パラジウム触媒を原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)に添加する際、ラテックス中に凝固物が発生することもあり、凝固物の発生を防ぐために、ラテックスに界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系などがあり、いずれを使用してもよいが、アニオン系が望ましい。
添加量としては、ラテックス濃度の0.05〜3%程度である。
また、原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)の濃度としては、いずれでもよいが、凝固しないようにするため、15〜60%程度に希釈しておくことが好ましい。特に20〜55%にしておくと扱い易く、凝集することもないので、好ましい。但し、後程固形化して浸漬製品を作製する際は、乾燥時間が短縮できる面からも、高濃度の方が都合がよい。30〜50%が、性能が向上する上、コスト的にも有利であるので、好ましい。
触媒を添加後のpH値は、いずれでもよいが、後処理などを考慮して、pH4〜12程度が好ましい。酸を使用してパラジウム化合物を水溶液化する場合は、水溶液になった後で、水酸化カリウム等でpH値を高めておくとよい。
界面活性剤以外にも、他の樹脂・ゴムやシリカなどの無機物のラテックス、エマルジョンや固形物をポリイソプレン固形物(X−1)に対して固形物として、10重量%以下の量を混ぜて組成物とすることも本特許内である。そのような成分は5重量%以下が望ましい。
希釈した原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)に界面活性剤を添加後、パラジウム化合物を撹拌しながら添加する。撹拌時における液温は10〜80℃が必須である。より好ましくは10〜60℃、更に好ましくは10〜45℃であり、最も好ましくは、10〜30℃である。低温における反応の方が好ましく、優れた性能を発揮する。
パラジウム化合物の水溶液の添加速度は、いずれでもよいが、ゆっくり添加した方が、均一化し易いので好ましい。添加速度は、全量を30分以上かけて添加するのが好ましい。
また、パラジウム化合物の水溶液は、パラジウムの濃度として、均一性の点から、0.05重量%〜8重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%〜5重量%、最も好ましくは0.5重量%〜3重量%である。
撹拌時間は、特に制限はないが反応を進行させるため、0.5時間〜数時間以上行うことが好ましい。
得られたパラジウム化合物含有ポリイソプレンラテックス(X−0)は、従来の成型設備で行うことが可能であり、工程においても従来の加工工程により行われる。成型方法は、浸漬(ディッピング)成型、キャスティング成型などの方法があり、好ましくは浸漬成型により行われる。浸漬成型により製造する場合、既知の凝固剤を使用せずに製造することも可能であるが、低濃度の原料ポリイソプレン(Y−0)で製造を行う場合は使用した方が凝固させ易い上、表面性状が安定し、美しく仕上がるので好ましい。浸漬製品化する場合は、「エマルジョンラテックスハンドブック」等に記載されている従来の公知な方法により浸漬成型品を得ることができる。
乾燥温度は、比較的低温で行うことが好ましく、室温〜60℃以下の温度で行うことが好ましい。より好ましくは20℃〜50℃である。
60℃を超えると、熱劣化する場合があるため、60℃を超える乾燥を行うには、酸化防止剤を加え、耐熱性を向上させたもので行うことが好ましい。酸化防止剤としては特に限定されないが、非汚染性の酸化防止剤で、特にフェノール系酸化防止剤が好ましい。
得られた成型物は、自着性の低減を目的として、塩素化による表面処理加工を施してもよい。
尚、原料に合成ポリイソプレン(Y'−0)を用いる場合、成型加工によって得られたポリイソプレン固形物(X'−1)は塩素化などの表面処理を施してもよいが、自着性が少ない為、表面処理工程を施す必要が無い。
以上のような、請求項6を満たしている原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)とパラジウムを用いて製造する場合、酸化防止剤などの添加剤を使用したり、他のゴムラテックスや強化材や表面改質剤などを少量使用しても、本特許内である。具体的には、10重量%以下の量を混合して製造することも、本発明の範囲内である。その場合も5重量%以下が好ましい。
一方、固形ゴムである原料ポリイソプレン固形物(Y−1)を用いて有機溶媒に溶解させ、パラジウム化合物を混合する方法であっても、請求項1の範囲内であれば、固形ゴムを用いて製造することは可能である。
更に、固形ゴムにおいては、混練工程として製造することも可能である。
例えば、ロールでの練りこみ、バンバリーミキサーや加圧ニーダー、通常のニーダーや、プラベンダーや、連続生産用の押出機、特に二軸押出機などで、原料ポリイソプレン固形物(Y−1)とパラジウム化合物を一緒に練りこんで、均一に分散された状態の組成物として請求項1項に該当すれば、本発明の範囲内に属する。これらの場合においては、他の成分を10重量%以下含有させてもよく、その他の成分は5重量%以下が、より望ましい。
リーチングや遠心分離により、不要な成分を取り除くことにより、ポリイソプレン固形物(X)の強度をより向上させることが実現できる。リーチングとは、水又は温水中に所定の時間浸漬し、ゴム固形物中における可溶性の非ゴム成分を除去する方法である。
パラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X)の成形体・シート・フィルム・チューブなどの形態の浸漬製品は、このまま使用されても特に問題はないが、リーチングにより、界面活性剤や可溶性の不純物、更には未反応のパラジウム化合物を抽出することができ、それらを浸漬製品から取り除き、その後、乾燥させることにより、特に力学特性において破断点強度は向上する。また、リーチングにより温水による後加硫が行われ、強度が向上することも想定される。
リーチングの条件としては、熱湯の温度は、40〜100℃であるが、あまりに高温であると、浸漬製品自体が劣化する可能性があるので、50〜70℃が好ましい。
厚さ1mm程度の場合、リーチング時間は30分〜1日行えばよい。30分未満では充分に不純物が排除されず、1日を超える時間で浸漬を続けると、劣化する可能性もあり、好ましくない。1〜12時間が好ましい。更に2〜8時間が好ましい。
リーチングの結果、初期弾性率は、ほぼ変化することなく、伸長率が向上する傾向にあり、破断点強度が大幅に向上する。
一方、請求項9において、ポリイソプレンラテックス(Y−0)とパラジウム含有水溶液とを混合し、得られるパラジウム化合物含有ラテックス(X−0)を遠心分離することによって得られる、請求項1のポリイソプレン固形物(X)を得ることは、不要で未反応なパラジウム化合物を分離し、回収することを可能とする。更に、そのパラジウム化合物を再生し、再利用することが可能である。
その場合、パラジウムの使用量を大幅に削減することが可能であり、高価なパラジウムの使用量を削減することにより、低コストによる製造方法を実現する。
その上、不要な成分が取り除かれたポリイソプレンラテックスを固形化すると、破断点強度が大幅に向上し、低弾性率を保持する優れたポリイソプレンが得られる。
遠心分離を行うことにより、前記の通り、未反応で不要なパラジウムを回収できるが、遠心分離を行う前に脱蛋白を行う処理剤(例えば、非特許文献9に記載されているような尿素、たんぱく質分解酵素、アセトン、エタノール等)を含有し、それらと共に遠心分離を行うことにより、蛋白質成分が完全に除去することも可能である。
この場合、請求項9に記載の通り、遠心分離の操作を行う場合に使用される原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)は、蛋白質や硫黄元素が含有していてもよく、遠心分離後に得られるパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X)は請求項1や請求項3を満たしていればよい。原料ポリイソプレンラテックス(Y−0)は、合成ポリイソプレン又は天然ゴムのどちらも選択することは可能であり、脱蛋白化されていない通常の天然ゴムラテックスを用いることも可能である。
従って、遠心分離の操作を行う場合は、請求項9に記載の通り、
固形化時に、
(ウ)1,4−シス構造を80当量%以上有するポリイソプレンラテックス(Y−0)と、
(エ)パラジウム化合物からなる組成物であって、
ポリイソプレン固形分に対してパラジウム元素の量が100〜20,000ppmであるポリイソプレンラテックス(X−0)を遠心分離することによって得られる請求項1に記載のポリイソプレン固形物(X)
を満たすことが条件であり、遠心分離を行うことで、硫黄成分や蛋白質に基づく窒素成分が除去される場合があるので、原料として用いるポリイソプレンラテックス(Y−0)は、硫黄成分や窒素成分の制約がなくてもよく、最終製品としてのポリイソプレンが請求項1を満たせばよい。
遠心分離の回転数は、5,000rpm〜150,000rpmの範囲が好ましい。
5,000rpm未満では、分離がうまく進まず、150,000rpmを超える場合は、遠心分離にかかるコストが高く、好ましくは30,000rpm以下であり、更に好ましくは20,000rpm以下であり、最も好ましくは15,000rpm以下である。
但し、回転数は、あくまでも目安で、遠心力(kg)で規定する。
遠心力としては5kg以上〜1,000kg未満の範囲が好ましい。5kg未満であると分離が上手くいかず、1,000kg以上ではコストがかかり好ましくない。
より好ましくは10kg〜500kgであり、更に好ましくは10kg〜100kgである。
遠心分離する時間は、5分以上〜24時間以下が好ましい。より好ましくは10分以上〜8時間以下であり、更に好ましくは10分以上〜3時間以下であり、最も好ましくは30分〜2時間である。
遠心分離の回数は、1回でもよいが、2回以上では硫黄成分や蛋白質成分を大幅に削減することが可能であり、前記の通り、原料として従来の天然ゴムラテックスを用いることも可能であり、その場合は2回以上行うことが好ましい。
得られたパラジウム化合物含有ポリイソプレンラテックス(X−0)を遠心分離することにより、未反応のパラジウム化合物が削減され、色調が良好なポリイソプレンラテックスを得ることが可能である。即ち、褐色であるパラジウム化合物水溶液を混合することで、ポリイソプレンラテックス(X−0)は同じく褐色に近い色調となるが、遠心分離を行うことで色調が改善される。
具体的には、パラジウム水溶液(ii)を用いた場合は遠心分離を行わなくても比較的色調が良好であり、一方、パラジウム水溶液(i)を用いた場合は、色調が褐色や黒褐色となるが、遠心分離により未反応のパラジウムを除去することにより、色調が改善される。
ところで、加硫には前加硫と後加硫があり、本発明において以下の通りに定義する。
(1)前加硫とは、乾燥固形化前のラテックス状態で行う加硫のことであり、(2)後加硫とは、乾燥固形化後に行う加硫のことである。
具体的には、(1)前加硫においては、硫黄や加硫促進剤による前加硫、有機過酸化物による前加硫、及び、放射線による前加硫があり、硫黄や加硫促進剤を用いた前加硫では、40℃〜60℃程度の加熱により加硫反応を行い、有機過酸化物による前加硫ではレドックス反応により行われ、放射線による前加硫では、放射線の照射により行われる。
(2)後加硫においては、主に加熱による後加硫があり、乾燥機を用いて高温で加熱する後加硫、温水で行われる後加硫、及び、溶融塩の液浴を用いた後加硫がある。
本発明における、パラジウム含有ポリイソプレンラテックス(X−0)は前加硫体であることを特徴とし、ラテックス状態から水分を蒸発させることにより得られる固形物は高い強度を示し、その後の後加硫工程においても強度が向上する。
背景技術で述べた通り、特に合成ポリイソプレンラテックスにおける有機過酸化物による前加硫では、放射線の照射を行わなければ強度を上げることができないが、その強度は不十分な値を示しており、従って、硫黄や窒素元素を実質的に含まず、高強度且つ高伸張である合成ポリイソプレンラテックスの前加硫は実現できていなかった。
しかしながら、本発明におけるパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X)は前加硫により強度を向上させることに成功した。
従って、本発明における第5の発明は、請求項11に記載の通り、
1,4−シス構造を80当量%以上有する合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)を前加硫により、水分を蒸発させて得られるポリイソプレン固形物(X'−1)は、
(ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
(オ)ケルダール法で測定した窒素元素量が0〜400ppm
(カ)破断点強度が7.5MPa以上、且つ伸長率が650%以上である
ポリイソプレン固形物(X'−1)に関するものである。
尚、パラジウム化合物含有ポリイソプレンラテックス(X−0)においては、放射線装置など特殊な装置を必要とせず、従来の浸漬ラインを用いて、非常に簡易的な工程により行うことが可能である。
以上で述べた通り、
本発明において得られるポリイソプレン固形物(X)は、高い破断点強度と優れた柔軟性、伸長率の高い材料であり、更にはアレルギーの発生を低減させ、N−ニトロソアミンの発生が無く、低毒性であり、医療及び衛生用材料としては特に相応しく、主に手袋やバルーン、指サック、コンドーム、カテーテル、注射針用栓には最適であり、高い伸長率と柔軟性という特長から、手袋とバルーンの用途には最も適している。
その他、人の皮膚や臓器に直接接触する製品には、低毒性であることから、非常に有用である。
更には、産業用途、特に電子材料分野、医療用途、化粧品用途、建設分野、形状記憶ゲル、人工筋肉のようなソフトなアクチュエーターなどの高性能な材料を必要とする分野で利用可能である。
これらは請求項6に記載の方法で非常に簡易的に製造することが可能である。
以下に、実施例、比較例を挙げて、本発明について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例及び比較例における評価方法を以下に説明する。
(1)硫黄元素、パラジウム元素の蛍光エックス線測定及びICP測定
蛍光エックス線装置は日本電子(株)社製JSX−3200を使用した。
ポリイソプレンラテックス(Y−0)を用いて、膜厚約0.7mmのポリイソプレン固形物(Y−1)のシートを作製し、蛍光エックス線の強度からFP法(ファインダメンタルパラメーター法)により、試料を構成している元素の強度読み取り、強度と含有量の関係は、標準試料を用いるか、又は規定量の試料を加えたシートを作成し、検量線を作成して求めた。
パラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)の場合は、リーチングを行い抽出する前後での検量線をそれぞれ作成した。
一方、一部のシートにおいて、ICP法でも測定し、蛍光エックス線法との対比により、より正確な検量線化を行った。特に遠心分離したものは、ICP法でも測定を行った。
ICP装置は、リガク製CIROS Mark IIを使用した。
前処理は、シートの一部を切り出し、硫酸・硝酸で分解させた。
尚、蛍光エックス線は、シート厚みを一定にし、系の同等性などが保証されていると、FP法に比べ、検量線法により求めたものの方がが、より精度よく求めることができる。
(2)ローリー法を用いた蛋白質の定量
ローリー法において使用した装置は、Qubit社製のFluorometerである。
(2−i)抽出法によるローリー法の測定
約1mmの厚さの原料ポリイソプレン固形物(Y−1)を一定量の純水を用いて全面が浸るように、24時間、室温にて放置し、純水中に水溶性の蛋白質成分を抽出させ、その抽出水溶液を用いて、ローリー法で測定を行った。
尚、実施例6で得られた最終製品である指サックでは、リーチングを行ったもので測定を行い、それ以外はリーチング前の状態で測定を行った。
(2−ii)溶液法によるローリー法の測定
約1mmの厚さの原料ポリイソプレン固形物(Y−1)をトルエンに溶解させ、そのトルエン溶液を水に分散させた。この操作により、トルエン溶液中の水溶性蛋白質が水に溶解し、その後、加圧濾過により、透明液体部分を分離した。その透明液体を用いてローリー法で測定を行った。
蛋白質量の測定結果から、換算し、実際の蛋白質量を求めた。
尚、ローリー法を用いる場合、その測定機構上、蛋白質としては、部分的に分解されたオリゴマー状態にあるものもカウントする。
(2')窒素元素の定量
ケルダール法による測定を行い、全窒素量を測定し、全量に対する割合(ppm)として求めた。
(3)1,4−シス含量の定量
原料ポリイソプレン固形物(Y−1)又はパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)の1,4−シス含量を測定した。
日本電子(株)社製500MHz H−NMRを用いて、CDClに溶解後、1,4−シス含量を測定し、(株)島津製作所社製のFT−IRを用いた測定と対比させて、FT−IRの検量線を作成した。
833cm-1付近のスペクトルが、1,4−シス3置換体のスペクトルに相当し、1,370cm-1付近のスペクトルと比較して、1,4−シス含量を測定した。
一方、日本電子(株)社製400MHz固体NMRを用いて、パラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)の一部を1,4−シス含量を測定した。
上記と同じ方法でFT−IRを用いた測定を行い、H−NMRの測定値と対比し、1,4−シス含量を求めた。
(4)DSC測定によるガラス転移点
DSC測定は、マック・サイエンス(株)社製のDSC−3100を使用した。
一旦マイナス100℃まで降温し−100℃から10℃/minの速度で昇温しながら測定し、変曲点として現れた温度をガラス転移温度とした。
(5)力学特性
力学特性の測定は、(株)島津製作所社製のオートグラフAGS-1kgNGを使用した。
厚さ約1mmの原料ポリイソプレン固形物(Y−1)又はパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)を、7号ダンベルを用いて試験片を得た。引張試験法により、速度200mm/minで測定し、弾性率については500%弾性率の値を採用した。
(6)硬度
硬度の測定は、高分子計器(株)社製のASKER−C2を使用した。
一般的なASKER−JAでの測定は、JIS−K−6301に準じた硬度値が求まるが、いずれも硬度値は20前後となり、精度がない。そこで、より柔らかいゴムを測定できるASKER−C2を使用して、ポリイソプレン固形物(X−1)の厚みを10mm以上にし、室温にて、測定した。デュロメータ・タイプEに近い値であるが、ここでの測定値は、この装置での測定値であって、相互比較は可能である。
(7)ゲル分率/金網法
厚さ約1mmの原料ポリイソプレン固形物(Y−1)又はパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)を5mm四方にカットし、室温で48時間トルエン100mlに浸漬させる。その後100メッシュのステンレス製金網にトルエン溶液を濾過させ、ゲル分とトルエンを分離する。濾した金網を乾燥し、乾燥後の重量を測定してゲル分率として求めた。
(8)膨潤度
厚さ約1mmのパラジウム化合物含有ポリイソプレン固形物(X−1)を円盤型のダンベルで切り出し、室温で24時間、灯油に浸漬させ、膨潤した長さを測定し、その前後の長さから膨潤度を求めた。
(9)アレルギー性反応の有無/アレルゲン蛋白質の測定
(9−i)パッチテスト法
パラジウム含有ポリイソプレン固形物(X−1)のシート片を皮膚に付着させ、48時間、昼夜連続放置したのちの皮膚の変化を調べた。比較として、原料ポリイソプレン固形物(Y−0)も同様に行った。
それらの差から、全く問題の無いと判定した場合:◎/問題ないと判定した場合:〇/問題となる可能性があると判定した場合:△/問題ありと判定した場合:×
と規定し、評価を行った。
(9−ii)ELISA法(ASTM D5712法に準拠)
ELISA法(酵素免疫測定法)の測定を行った。即ち、水溶性の蛋白質を抽出するASTM D 5712の方法に準拠し、測定を行った。
水溶性の蛋白質量(アレルゲン蛋白質量)を求め、そこから、全く問題の無いと判定した場合:◎/問題ないと判定した場合場合:〇/問題となる可能性があると判断した場合:△/問題ありと判定した場合:×
と規定し、評価を行った。
(10)ニトロソアミンの評価
欧州指令に基づくEN 12868及び、JIS−T−9010に準じて行い、検出はGC法で行った。
ニトロソアミンの存在が認められたとしても、極僅かな量である為、検出限界以下かどうかの有無により判定を行った。(検出限界10ppb)
尚、ニトロソアミンはジメチルニトロソアミンとジエチルニトロソアミンに限定して測定した。
検出した場合:×/検出限界以下:〇 とした。
(11)遠心分離
遠心分離機はベックマンコールター(株)社製、Optima XPN−100を使用した。
遠心分離は約20,000prmの回転数により約1時間行った。
以下に、参考例及び実施例について説明する。
尚、参考例は、原料ポリイソプレン固形物(Y−1)の物性値として記載した。
また、表1に参考例における諸性能を記載し、表2〜表4に実施例における諸性能を記載、表5に比較例における諸性能を記載した。
<パラジウム化合物水溶液の製造>
(i)(NaCl含有)塩化パラジウム水溶液(A)の調製
PdCl=2.64g、NaCl=4.4gを秤量してガラス容器に投入し、次いでイオン交換水を約82g投入し、室温にて撹拌を約24時間行った。これをパラジウム水溶液:(A)とする。Pd濃度は、1.78重量%であった。
PdCl=5.0g、NaCl=8.8gを秤量してガラス容器に投入し、次いでイオン交換水を約86g投入し、室温にて撹拌を約24時間行った。これをパラジウム水溶液:(A')とする。Pd濃度は、3.0重量%であった。
(ii)(塩酸含有)塩化パラジウム水溶液(B)の調製
PdCl =2.10gを秤量してガラス容器に投入し、次いで塩酸をイオン交換水で希釈したものを約60g投入し、室温にて撹拌を約5時間行い、溶解させた。これをパラジウム水溶液:(B)とする。Pd濃度は、2.03重量%であった。
(iii)臭化パラジウム水溶液(C)の調製
PdBr=1.51gを秤量してガラス容器に投入し、次いで塩酸をイオン交換水で希釈したものを約25g投入し、(i)と同様な方法で溶解させた。これをパラジウム水溶液:(C)とする。Pd濃度は、1.85重量%であった。
(iv)硝酸パラジウム水溶液(D)の調製
硝酸パラジウム=1.24gを秤量してガラス容器に投入し、次いで塩酸をイオン交換水で希釈したものを約30g投入し、(i)と同様な方法で溶解させた。これをパラジウム水溶液:(D)とする。Pd濃度は、1.85重量%であった。
(参考例1)及び(比較例1)
原料合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)として、住友精化(株)社製セポレックスIR−100Kを用い、ラテックスをガラス板上に流し込み、約40℃に加熱したホットプレート上に、24時間放置し、水分を蒸発させ、合成ポリイソプレン固形物(Y'−1)のシートを得た。
引張試験値は、500%弾性率=0.21MPa、破断点強度=0.4MPa、伸長率=2,000%である。
ゲル分率≒0%、クロロホルムに対しても完全に溶解した。
1,4−シス含量は92当量%であった。
硫黄は検出限界以下、抽出法によるローリー法で求めた蛋白質量は検出限界以下であった。
一方、クレイトンポリマー社製Cariflex IR-0401SUは、IR−100Kとほぼ同一の性能を示した。
(参考例2)
通常の天然ゴムラテックスとして用いられているハイアンモニアタイプの天然ゴムラテックスを上記と同様の方法で固形シート化した。
硫黄及び蛋白質含有量は、硫黄=220ppm、抽出法によるローリー法で求めた蛋白質量=1.2%であった。
破断点強度=5.8MPa、1,4−シス含量は>99%であった。
(参考例3)
遠心分離を2回行った天然ゴムラテックスを上記と同様の方法により固形シート化した。
破断点強度=4.2MPaであり、
硫黄及び蛋白質含有量は、硫黄=90ppm、抽出法によるローリー法で求めた蛋白質量=1900ppmであった。
(参考例4)
住友ゴム工業(株)製脱蛋白天然ゴムラテックスであるセラテックス3821を用いて、上記と同様の方法で固形シート化した。
破断点強度=4.6MPa、硫黄含有量=400ppm、1,4−シス含量は>99%であった。
(参考例5)
非特許文献1を参考に、脱蛋白質天然ゴムラテックスを作製し、上記と同様の方法で固形シート化した。
破断点強度=3.3MPa、硫黄含量=38ppm、蛋白質量=970ppm、1,4−シス含量は>99%であった。
(参考例6)
非特許文献9を参考に、完全脱蛋白質天然ゴムラテックスを作製し、上記と同様の方法で固形シート化した。
破断点強度=1.3MPa、硫黄含量=16ppm、蛋白質量=検出限界以下、1,4−シス含量=>99%であった。
(実施例1)
原料合成ポリイソプレンラテックス(Y'−0)である住友精化(株)社製セポレックスIR−100K:250gと水:230gを混合し、液温18℃に保ち、撹拌しながら、硫黄成分を含有しないアニオン型界面活性剤を4g添加した。その後、触媒(A)を25gを徐々に添加し、1時間撹拌を続けた。
得られたパラジウム含有ポリイソプレンラテックス(X'−0)をガラス板上に流し込み、約40℃に加熱したホットプレート上に、24時間放置し、水分を蒸発させ、ポリイソプレン固形物(X'−1)のシートを得た。
蛍光エックス線によるPd含有量=0.27%(2700ppm)であった。
DSC法によるガラス転移温度(Tg)は、Tg=−55.8℃であった。
力学特性は500%弾性率=1.28MPa、破断点強度=14.8MPa、伸長率=1720%であった。
特に破断点強度は、(Y'−1)比べて(X'−1)は37倍と非常に増大した。
その他、硬度=62、膨潤度(灯油)=1.67、ゲル分率=86.5%、色調=薄い黒褐色であった。
アレルギーの原因ともなる蛋白質は含有せず、硫黄は検出限界以下であり、パッチテストでは反応は無く、アレルギー発生の可能性は極めて低い。
(実施例2)
実施例1で得られたシートを、55℃の湯に約3時間浸漬し、リーチングを行ったものを用いた。
力学特性値は、破断点強度=16.5MPa、伸長率=1830%と、実施例1に比べ大幅に向上し、弾性率は実施例1と同等の値を示した。
その他物性では、硬度=62.5、膨潤率=1.63、パラジウム含有量=2670ppmであった。
リーチングにより未反応のパラジウム及び界面活性剤が抽出され、物性が向上し、更に、色調は改善された。
(実施例3)
実施例1の条件に触媒(A')を変え、50℃の加熱条件で撹拌混合を行った。
セポレックスIR−100K=340g、水=165g、を添加後、30℃で撹拌し、実施例1と同じ界面活性剤=5g添加した。その後、触媒(A')=28gを徐々に添加し、1時間撹拌を行った。このラテックスをラテックス(i)とする。
シート化は実施例1と同じ条件で行った。
Pd含有量=3830ppm、硫黄及び窒素含有量は検出限界以下であった。
(実施例4)
実施例3で得られたシートを、60℃のお湯に10時間浸漬させリーチングを行ったものを用いた。
力学特性値は、破断点強度=15.6MPaと実施例3に比べ大幅に向上し、弾性率は実施例3と同等の値を示した。
(実施例5)
実施例3で得られたラテックス(i)を水で希釈し、ベックマン・コールター社の遠心分離器、Optima XPN100を用いて20,000rpmの回転数(遠心力:41.2kg)で、25℃、1時間遠心分離を行った。遠心分離後、上層に分離した白色に近い色調の濃縮されたラテックスを採り、シート化は実施例1と同じ条件で行った。
得られたシートにおける力学特性値は、実施例4と同等の破断点強度であった。
Pd含有量及び硫黄含有量において、Pd=2,870ppm、硫黄=検出限界以下であり、Pd含有量は遠心分離により低減された。更に、遠心分離により色調は改善され、天然ゴム加硫物に近い色調となった。
(実施例6)
実施例5と同じく、遠心分離したラテックスを用いて、指サックの浸漬加工を行った。
遠心分離したラテックス液に加温させた指サックの金型を浸漬し、浸漬したものを取り出した後、乾燥機で60℃、2分間乾燥させ、その作業を4回行い、約0.6mmの厚さの指サックを得た。乾燥性に優れる為、凝固液を用いずに行うことができた。
得られた指サックは、ムラが無く、表面は均一で、柔軟性のある成型物に仕上がった。
(実施例7)
セポレックスIR−100Kをクレイトンポリマー社製のIR0401SUに変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(実施例8)
パラジウム水溶液を(B)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。(パラジウム添加量は異なる)
この水溶液を使用すると、水溶液(A)に比べ、ポリイソプレン固形物の色調が改善され、天然ゴムに近い色調となった。
(実施例9〜11)
実施例3〜5と同様に、セポレックスIR−100Kを200g、水を100g、界面活性剤を6g添加し、50℃で撹拌を行い、その後、触媒(A)21gを徐々に添加しながら撹拌し、液温50℃で5時間撹拌を続けた。このラテックスをラテックス(ii)とする。
実施例9は、ラテックス(ii)を実施例1と同じ方法でシートを作成した。
蛍光エックス線より、Pd含量は、0.290%(2,900ppm)であった。
実施例10は、実施例9のシートをリーチングしたものである。リーチングの条件は、実施例4と同じである。
実施例11は、ラテックス(ii)を、実施例5と同一条件下で、遠心分離操作を行い、固形化したものである。
(実施例12〜13)
パラジウム水溶液(A')の添加量を変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(実施例14)
パラジウム水溶液を(C)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(実施例15)
パラジウム水溶液を(D)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(実施例16)
参考例3の遠心分離を2回行った天然ゴムラテックスを使用し、パラジウム水溶液と混合し、パラジウム添加量=0.65%であった。
得られたポリイソプレン固形物の硫黄及び窒素含有量は、硫黄=96ppm、窒素=320ppmであった。
(実施例17)
参考例5に記載の脱蛋白質化された天然ゴムラテックスを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(実施例18)
参考例6に記載の完全脱蛋白質化された天然ゴムラテックスを使用した以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(実施例19)
原料のポリイソプレンとして参考例2に記載のハイアンモニア天然ゴムラテックスを用いた以外は実施例1と同じ方法でパラジウム含有ポリイソプレンラテックスを得た。このラテックス(iii)とする。
ラテックス(iii)を用いて、非特許文献9に記載されている方法を参考に、尿素とアセトンを加えて撹拌した後、実施例5と同じ方法で遠心分離を行った。
遠心分離の操作により、硫黄元素や窒素元素が大きく低減したため、破断点強度などの性能は大幅に向上した。
(比較例2)
パラジウム水溶液(A)を使用して、Pd含有量が、80ppmのポリイソプレンシートを作製し、その力学特性等を評価した。
(比較例3)
パラジウム水溶液(A')を使用して、Pd含有量が、2.5%のポリイソプレンシートを作製し、その力学特性等を評価した。
(比較例4)
住友ゴム工業(株)製の脱蛋白天然ゴムラテックス「セラテックス3821」を用いた。セラテックス3821固形物の硫黄含量は、420ppmである。
実施例1と同じ方法でパラジウム水溶液を混合し、シート化した。
破断点強度は、参考例4の原料のセラテックス3821とほぼ同じ4.5MPaであった。
(比較例5)
参考例2のハイアンモニアタイプの天然ゴムラテックスを使用し、パラジウムの添加量を変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
破断点強度は5.2MPaと原料とほぼ同じ値であった。この場合、アレルギーの原因となる水溶性の蛋白質の含有が認められた。
(比較例6)
塩化パラジウム水溶液の代わりに、塩化ニッケル水溶液を用いて、実施例1と同様に行った。
破断点強度は、原料のポリイソプレンと同等で、全く向上しなかった。
(比較例7)
ポリイソプレンラテックスに既知の加硫剤(硫黄、加硫促進剤(PX)及び分散剤)を配合し、ポリイソプレンの硫黄加硫物を得た。
(比較例8)
合成ポリイソプレンラテックスであるセポレックスIR−100Kに有機過酸化物(tHBPO)とテトラエチレンペンタミンを投入して、有機過酸化物による架橋体を得た。破断点強度は2.1MPaしか発現しなかった。
(比較例9)
参考例5に記載の脱蛋白化天然ゴムラテックスを用いて、同様にして得られた組成物のラテックスをオートクレーブに投入し、窒素ガスで置換した後、水素ガスを導入して圧力を1MPaにし、65℃で、8時間反応させた。その後、採り出し、シート化した後、評価した。水添率は20%であった。
Figure 2016089017
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Claims (11)

  1. (a)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
    (b)蛍光エックス線法で測定したパラジウム元素量が100〜20,000ppm
    (c)1,4−シス構造を80当量%以上含有し、
    (d)破断点強度が7.5MPa以上、且つ伸長率が650%以上
    であるポリイソプレン固形物
  2. 抽出法によるローリー法で測定した溶出蛋白質量が0〜2,000ppmであることを特徴とする請求項1に記載のポリイソプレン固形物
  3. ケルダール法で測定した窒素元素量が0〜400ppmであることを特徴とする請求項1に記載のポリイソプレン固形物
  4. 固形化時に、
    (ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
    (イ)溶液法によるローリー法で測定した溶出蛋白質量が0〜2,000ppmであり、
    (ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
    ポリイソプレンラテックスと、
    (エ)パラジウム化合物
    からなる組成物であって、
    ポリイソプレン固形分に対してパラジウム元素の含量が100〜20,000ppmであるポリイソプレンラテックス
  5. 請求項4に記載のポリイソプレンラテックスから水分を蒸発させることにより得られるポリイソプレン固形物
  6. 固形化時に、
    (ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
    (イ)溶液法によるローリー法で測定した溶出蛋白質量が0〜2,000ppmであり、
    (ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
    ポリイソプレンラテックスとパラジウム化合物を混合した後、水分を蒸発させることを特徴とするポリイソプレン固形物の製造方法
  7. 請求項1に記載のポリイソプレンを用いた浸漬製品を含む医療及び衛生用ゴム製品
  8. 請求項6に記載の方法で製造された浸漬製品を含む医療及び衛生用ゴム製品
  9. 固形化時に、
    (ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
    ポリイソプレンラテックスと、
    (エ)パラジウム化合物
    からなる組成物であって、
    ポリイソプレン固形分に対してパラジウム元素の量が100〜20,000ppmであるポリイソプレンラテックスを遠心分離することによって得られる請求項1に記載のポリイソプレン固形物
  10. 1,4−シス構造を80当量%以上含有する合成ポリイソプレンラテックスに、パラジウム化合物を混合した後、水分を蒸発させることにより得られるポリイソプレン固形物
  11. (ア)蛍光エックス線法で測定した硫黄元素量が0〜100ppm
    (オ)ケルダール法で測定した窒素元素量が0〜400ppm
    (ウ)1,4−シス構造を80当量%以上含有する
    合成ポリイソプレンラテックスを前加硫によって、
    (カ)破断点強度が7.5MPa以上、且つ伸長率が650%以上
    を有するポリイソプレン固形物
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