JPWO2018155113A1 - 合成ポリイソプレンラテックスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
FT−IRによって測定した場合における、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAに対する、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBの比(IB/IA)が、0.4以下である合成ポリイソプレンを、有機溶媒に溶解してなる合成ポリイソプレン溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、前記合成ポリイソプレンのラテックスを得る工程を備える合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
Description
本発明は、ラテックスとしての安定性に優れ、かつ、引張強度および伸びに優れ、しかも、柔軟な風合いを備えるディップ成形体を与えることのできる合成ポリイソプレンラテックスの製造方法、ならびに、このような製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスを用いたラテックス組成物の製造方法、ディップ成形体の製造方法、および接着剤層形成基材の製造方法に関する。
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が得られることが知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体にアレルギーの症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜または臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そのため、天然ゴムのラテックスではなく、合成ゴムのラテックスを用いる検討がされてきている。
たとえば、特許文献1には、合成ポリイソプレンをシクロヘキサンに溶解させた溶液について、乳化および濃縮を行うことで、合成ポリイソプレンのラテックスを得る技術が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術においては、得られる合成ポリイソプレンのラテックスは、架橋剤を添加することでラテックス組成物とし、長期間保存すると、ラテックス組成物中に凝集物が発生しやすくなってしまう場合や、ラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体の引張強度が不十分なものとなってしまう場合があるという問題があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ラテックスとしての安定性に優れ、かつ、引張強度および伸びに優れ、しかも、柔軟な風合いを備えるディップ成形体を与えることのできる合成ポリイソプレンラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、合成ポリイソプレンとして、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によって測定される特定の2つのピークにおける強度比が、所定範囲に制御されたものを用い、この合成ポリイソプレンが有機溶媒に溶解してなる合成ポリイソプレン溶液について、乳化を行うことで合成ポリイソプレンラテックスを得ることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、FT−IRによって測定した場合における、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAに対する、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBの比(IB/IA)が、0.4以下である合成ポリイソプレンを、有機溶媒に溶解してなる合成ポリイソプレン溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、前記合成ポリイソプレンのラテックスを得る工程を備える合成ポリイソプレンラテックスの製造方法が提供される。
本発明においては、前記合成ポリイソプレン溶液が、有機溶媒に溶解させたイソプレンを含む単量体について溶液重合することで得られる重合体溶液を、凝固を行うことで固形物とした後、前記固形物を有機溶媒に再溶解させることで得られたものであることが好ましい。
この際においては、前記合成ポリイソプレン溶液が、前記重合体溶液に、前記重合体溶液中の前記重合体成分100重量部に対して、0.001〜0.3重量部の老化防止剤を添加した状態で、前記凝固および前記再溶解を行うことで得られたものであることが好ましい。
この際においては、前記合成ポリイソプレン溶液が、前記重合体溶液に、前記重合体溶液中の前記重合体成分100重量部に対して、0.001〜0.3重量部の老化防止剤を添加した状態で、前記凝固および前記再溶解を行うことで得られたものであることが好ましい。
あるいは、本発明においては、前記合成ポリイソプレン溶液が、有機溶媒に溶解させたイソプレンを含む単量体を溶液重合したものを、凝固せずに得られたものであることが好ましい。
この際においては、前記合成ポリイソプレン溶液が、前記合成ポリイソプレン溶液中の前記合成ポリイソプレン100重量部に対して、0.001〜0.3重量部の老化防止剤を添加した状態で、前記乳化を行うことで得られたものであることが好ましい。
この際においては、前記合成ポリイソプレン溶液が、前記合成ポリイソプレン溶液中の前記合成ポリイソプレン100重量部に対して、0.001〜0.3重量部の老化防止剤を添加した状態で、前記乳化を行うことで得られたものであることが好ましい。
本発明においては、有機アルカリ金属触媒の存在下で、溶液重合することが好ましい。
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスを用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成する工程を備える接着剤層形成基材が提供される。
さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスを用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成する工程を備える接着剤層形成基材が提供される。
本発明によれば、ラテックスとしての安定性に優れ、かつ、引張強度および伸びに優れ、しかも、柔軟な風合いを備えるディップ成形体を与えることのできる合成ポリイソプレンラテックスの製造方法、ならびに、このような製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスを用いたラテックス組成物の製造方法、ディップ成形体の製造方法、および接着剤層形成基材の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法は、FT−IRによって測定した場合における、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAに対する、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBの比(IB/IA)が、0.4以下である合成ポリイソプレンを、有機溶媒に溶解してなる合成ポリイソプレン溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、合成ポリイソプレンのラテックスを得る工程を備える。
ここで、FT−IRによって合成ポリイソプレンを測定した場合に、2,840〜3,000cm-1の範囲における最も強度が大きいピークは、合成ポリイソプレン中のC−H伸縮振動に由来するピークを示すと推測され、1,000〜1,200cm-1の範囲における最も強度が大きいピークは、合成ポリイソプレン中のC−O伸縮振動に由来するピークを示すと推測される。そのため、合成ポリイソプレンについては、このようなC−O伸縮振動に由来すると推測されるピークの強度(1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IB)の、C−H伸縮振動に由来すると推測されるピークの強度(2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IA)に対する比(IB/IA)が小さいほど、合成ポリイソプレンにおける酸化の程度が小さい(合成ポリイソプレンの酸化によって形成されるC−O結合が少ない)と考えられる。
本発明によれば、合成ポリイソプレンラテックスを構成する合成ポリイソプレンとして、上述したピークの強度の比(IB/IA)が上記範囲に制御されたものを用いることにより、得られる合成ポリイソプレンラテックスについて、凝集物の発生を抑制することができ、しかも、合成ポリイソプレンラテックスに架橋剤を配合してなるラテックス組成物について、長期間保管した場合における凝集物の発生を抑制して安定性を向上させることができるとともに、ラテックス組成物を用いて製造されるディップ成形体の引張強度を顕著に向上させることができる。
合成ポリイソプレン溶液
まず、本発明の製造方法で用いる合成ポリイソプレン溶液について説明する。
本発明で用いる合成ポリイソプレン溶液に含まれる、合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体などの膜成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
まず、本発明の製造方法で用いる合成ポリイソプレン溶液について説明する。
本発明で用いる合成ポリイソプレン溶液に含まれる、合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体などの膜成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル(「アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチル」の意味であり、以下、(メタ)アクリル酸エチルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。これらのイソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
合成ポリイソプレン中のイソプレン単位としては、イソプレンの結合状態により、シス結合単位、トランス結合単位、1,2−ビニル結合単位、3,4−ビニル結合単位の4種類が存在する。得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度向上の観点から、合成ポリイソプレンに含まれるイソプレン単位中のシス結合単位の含有割合は、全イソプレン単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
合成ポリイソプレンの重量平均分子量は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは10,000〜5,000,000、より好ましくは500,000〜5,000,000、さらに好ましくは800,000〜3,000,000である。合成ポリイソプレンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体などの膜成形体の引張強度が向上するとともに、合成ポリイソプレンラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
また、合成ポリイソプレンのポリマー・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは50〜80、より好ましくは60〜80、さらに好ましくは70〜80である。
本発明で用いる合成ポリイソプレン溶液に含まれる、合成ポリイソプレンは、上述したように、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によって測定した場合における、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAに対する、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBの比(IB/IA)が、0.4以下であり、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。なお、上述した強度比(IB/IA)の下限は、特に限定されないが、一般的に0.005程度以上である。
上述した強度比(IB/IA)が上記範囲に制御された合成ポリイソプレンが含まれる合成ポリイソプレン溶液を製造する方法としては、特に限定されないが、たとえば、重合触媒の存在下、有機溶媒中で、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを溶液重合して得られる重合体溶液を、凝固を行うことで固形物とした後、該固形物を有機溶媒に再溶解させることで、合成ポリイソプレン溶液を得る方法が挙げられる。
特に、上述した強度比(IB/IA)を、より適切に上記範囲に制御する方法としては、合成ポリイソプレン溶液を製造する際に、合成ポリイソプレンに加わる熱履歴や、溶液重合に用いる重合触媒の種類および量などを制御したり、重合体溶液に老化防止剤を添加したりする方法などが挙げられる。
たとえば、合成ポリイソプレン溶液を製造する際における熱履歴の程度をより小さいものとすることにより、得られる合成ポリイソプレンの酸化を抑制し、その結果、合成ポリイソプレンについて、C−O伸縮振動に由来すると推測されるピークの強度(1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IB)を低下させて、強度比(IB/IA)を有効に低下させることができるようになる。特に、熱履歴の程度を小さくする方法としては、重合体溶液を凝固して固形物を得る際において、固形物を乾燥させる場合に、乾燥の条件を、より低温とし、より短時間とする方法が好ましい。
また、単量体(イソプレン、および必要に応じて用いられるイソプレンと共重合可能なエチレン性不飽和単量体)を溶液重合する際に用いる重合触媒の種類および量によっても、上述した強度比(IB/IA)を制御することができる。
重合触媒としては、特に限定されず、たとえば、チーグラー系重合触媒や有機アルカリ金属触媒などが挙げられるが、溶液重合の際における使用量をより少なくすることができ、その結果、得られる合成ポリイソプレン中に残留する重合触媒の量を低減させることができ、重合触媒の作用による合成ポリイソプレンの酸化を抑制し、上記の強度比(IB/IA)をより有効に低下させることができるようになるという観点からは、有機アルカリ金属触媒が好ましい。あるいは、得られる合成ポリイソプレンの重量平均分子量を比較的小さいものとすることができ、これにより、ラテックス組成物をディップ成形により製膜する際に、ラテックス組成物中の合成ポリイソプレンが、合成ポリイソプレンの粒子間を接着するように作用して、製膜性を向上させることができるという観点からは、チーグラー系重合触媒を用いることが好ましい。
有機アルカリ金属触媒としては、特に限定されないが、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機力リウム化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物を用いることが好ましく、n−ブチルリチウムを用いることがより好ましい。これらの有機アルカリ金属触媒は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機アルカリ金属触媒の添加方法としては、たとえば、単量体(イソプレン、および必要に応じて用いられるイソプレンと共重合可能なエチレン性不飽和単量体)を仕込んだ反応容器に、有機アルカリ金属触媒をそのまま添加してもよいし、有機アルカリ金属触媒をヘキサン等の不活性溶媒中に溶解させた状態で添加してもよい。
チーグラー系触媒としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、たとえば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、さらに各種電子供与体および電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物を組み合わせた触媒系、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種電子供与体とを接触させる担持型触媒系などが挙げられ、これらのなかでも、四塩化チタンおよび有機アルミニウム化合物を用いた触媒系が好ましく、四塩化チタンおよびトリアルキルアルミニウムを用いた触媒系が特に好ましい。
重合触媒の使用量は、高い生産性で合成ポリイソプレン溶液を製造することができるという観点より、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.0070〜0.085重量部、より好ましくは0.0076〜0.056重量部、さらに好ましくは0.0084〜0.042重量部である。
溶液重合に用いる有機溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、脂環族炭化水素溶媒が好ましく、シクロヘキサンが特に好ましい。
なお、有機溶媒の使用量は、溶液重合により得られる重合体成分(凝固を行う前の合成ポリイソプレン)100重量部に対して、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは20〜1,500重量部、更に好ましくは500〜1500重量部である。
また、溶液重合を行う際の重合温度は、高い生産性で合成ポリイソプレン溶液を製造することができるという観点より、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜75℃である。
本発明の製造方法においては、上述した溶液重合により得られる重合体溶液に対して、凝固を行うことで固形物とした後、該固形物を有機溶媒に再溶解させることで、合成ポリイソプレン溶液を得ることができる。本発明の製造方法によれば、重合体溶液について、凝固および再溶解を行うことにより、重合体溶液中に存在する不純物(たとえば、未反応の単量体など)を適切に除去することができ、これにより、得られる合成ポリイソプレンラテックスやラテックス組成物に凝集物が発生してしまうことをより有効に抑制することができるとともに、ラテックス組成物を用いて製造されるディップ成形体の引張強度をより向上させることができる。
重合体溶液に対して凝固を行う方法としては、特に限定されないが、たとえば、重合体溶液をメタノールなどのアルコールに代表される極性溶媒中で凝固した後、凝固により得られた固形分を乾燥させることで、固形物とする方法が挙げられる。この際においては、得られる合成ポリイソプレンに対する熱履歴の程度をより小さいものとすることができ、これにより、合成ポリイソプレンの酸化を抑制し、その結果、C−O伸縮振動に由来すると推測されるピークの強度(1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IB)を低下させて、強度比(IB/IA)をより適切に上記範囲に制御することができるという観点より、乾燥の条件を、より低温とし、より短時間とすることが好ましい。
重合体溶液の固形分を乾燥させる場合における乾燥温度は、好ましくは50〜105℃、より好ましくは60〜95℃、さらに好ましくは65〜80℃である。また、乾燥時間は、好ましくは30秒〜30分、より好ましくは1〜20分、さらに好ましくは1〜15分である。
なお、本発明の製造方法においては、このような凝固を行う前に、溶液重合により得られた重合体溶液に対して、予め、老化防止剤を添加しておくことが好ましい。これにより、重合体溶液に対して凝固を行う際に、固形分に対する乾燥により熱履歴が加わったとしても、合成ポリイソプレンの酸化を抑制することができ、これにより、得られる合成ポリイソプレンについて、強度比(IB/IA)をより適切に上記範囲に制御することができるようになる。
老化防止剤としては、特に限定されないが、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−((4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
老化防止剤の使用量は、重合体溶液中の重合体成分(凝固を行う前の合成ポリイソプレン)100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.3重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部である。老化防止剤の使用量を上記範囲とすることにより、重合体溶液を用いて合成ポリイソプレン溶液を製造する際に、合成ポリイソプレンの酸化を抑制することができ、これにより、合成ポリイソプレンについて、強度比(IB/IA)をより適切に上記範囲に制御することができるようになる。
また、本発明の製造方法においては、凝固により得られた固形物を、再溶解する方法としては、特に限定されないが、たとえば、固形物を、上述した溶液重合に用いるものと同様の有機溶媒に溶解させる方法が挙げられる。
本発明の製造方法においては、以上のようにして、FT−IRによって測定されるピークの強度比(IB/IA)が上記範囲に制御された合成ポリイソプレンが含まれる合成ポリイソプレン溶液を得ることができる。そして、本発明の製造方法においては、得られた合成ポリイソプレン溶液を用いて、合成ポリイソプレンラテックスを製造する。
なお、上述した例においては、ピークの強度比(IB/IA)が上記範囲に制御された合成ポリイソプレンが含まれる合成ポリイソプレン溶液を製造する方法として、単量体(イソプレン、および必要に応じて用いられるイソプレンと共重合可能なエチレン性不飽和単量体)を溶液重合することにより得られる重合体溶液を、一旦凝固して固形物を得た後、得られた固形物を再溶解する方法を例示したが、本発明の製造方法は、このような方法に限定されるものではない。
たとえば、本発明の製造方法においては、単量体を溶液重合することで、凝固を経ずに、直接、ピークの強度比(IB/IA)が上記範囲に制御された合成ポリイソプレンが含まれる合成ポリイソプレン溶液を得てもよい。これにより、溶液重合によって得られる合成ポリイソプレンに対して、凝固による熱履歴が加わることがなくなるため、得られる合成ポリイソプレンの酸化をより有効に抑制することができ、合成ポリイソプレンについて、強度比(IB/IA)をより適切に上記範囲に制御することができるようになる。なお、単量体を溶液重合することで、凝固を経ずに、ピークの強度比(IB/IA)が上記範囲に制御された合成ポリイソプレンが含まれる合成ポリイソプレン溶液を得た場合には、得られた合成ポリイソプレン溶液を、そのまま、合成ポリイソプレンラテックスの製造に用いることができる。
溶液重合により得られた合成ポリイソプレン溶液を、そのまま、合成ポリイソプレンラテックスの製造に用いる場合には、溶液重合に用いる重合触媒としては、特に限定されず、たとえば、チーグラー系重合触媒や有機アルカリ金属触媒などが挙げられるが、重合転化率をより高いものとすることができ、合成ポリイソプレン溶液中において不純物としての未反応の単量体の残留量を少なくすることができるという観点より、有機アルカリ金属触媒を用いることが好ましい。
溶液重合に用いる有機溶媒としては、上述したものと同様とすることができる。有機溶媒の使用量は、溶液重合により得られる合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは20〜1,500重量部、更に好ましくは500〜1500重量部である。
また、溶液重合を行う際の重合温度は、上述したものと同様とすることができる。
溶液重合により得られた合成ポリイソプレン溶液を、そのまま、合成ポリイソプレンラテックスの製造に用いる場合には、合成ポリイソプレンラテックスの製造を行う前に、合成ポリイソプレン溶液に老化防止剤を添加することが好ましい。
この際においては、使用する老化防止剤としては、上述したものと同様とすることができる。また、老化防止剤の使用量は、合成ポリイソプレン溶液中の合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.3重量部、より好ましくは0.002〜0.1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.05重量部である。老化防止剤の使用量を上記範囲とすることにより、合成ポリイソプレン溶液を用いて合成ポリイソプレンラテックスを製造する際に、合成ポリイソプレンの酸化をより適切に抑制することができるようになる。
合成ポリイソプレンラテックス
本発明の製造方法においては、上述した合成ポリイソプレン溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、合成ポリイソプレンラテックスを得ることができる。
本発明の製造方法においては、上述した合成ポリイソプレン溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、合成ポリイソプレンラテックスを得ることができる。
本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンラテックスは、上述したFT−IRによって測定されるピークの強度比(IB/IA)が上記範囲に制御された合成ポリイソプレンが含まれる合成ポリイソプレン溶液を用いて得られるものであるため、長期間保管した場合における凝集物の発生を抑制することができ、安定性に優れたものであるとともに、この合成ポリイソプレンラテックスを用いて得られるラテックス組成物により製造されるディップ成形体の引張強度を顕著に向上させることができる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、脂肪酸塩がさらに好ましく、ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩が特に好ましい。
また、合成ポリイソプレン由来の、微量に残留する重合触媒(特に、アルミニウムとチタニウム)をより効率的に除去でき、ラテックス組成物を製造する際における、凝集物の発生が抑制されることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩と、脂肪酸塩とを併用して用いることが特に好ましい。ここで、脂肪酸塩としては、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムが好ましく、また、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが好ましい。また、これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
なお、上述したように、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることにより、得られるラテックスが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを含有するものとなる。
また、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を用いてもよく、このようなアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の界面活性剤が挙げられる。
さらに、ディップ成形する際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤も併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜30重量部である。なお、2種類以上の界面活性剤を用いる場合においては、これらの合計の使用量を上記範囲とすることが好ましい。すなわち、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用する場合には、これらの使用量の合計を上記範囲とすることが好ましい。界面活性剤の使用量が少なすぎると、乳化時に凝集物が多量に発生するおそれがあり、逆に多すぎると、発泡しやすくなり、得られるディップ成形体にピンホールが発生する可能性がある。
また、アニオン性界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用する場合には、これらの使用割合を、「脂肪酸塩」:「アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤の合計」の重量比で、1:1〜10:1の範囲とすることが好ましく、1:1〜7:1の範囲とすることがより好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤の使用割合が多すぎると、合成ポリイソプレンの取り扱い時に泡立ちが激しくなるおそれがあり、これにより、長時間の静置や、消泡剤の添加などの操作が必要になり、作業性の悪化およびコストアップに繋がるおそれがある。
合成ポリイソプレン溶液を乳化させる際に使用する水の量は、合成ポリイソプレン溶液100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは30〜500重量部、最も好ましくは50〜100重量部である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
有機溶媒に溶解または微分散した合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液を、界面活性剤の存在下、水中で乳化する装置は、一般に乳化機または分散機として市販されているものであれば特に限定されず使用できる。合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液に、界面活性剤を添加する方法としては、特に限定されず、予め、水もしくは合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化装置による乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
また、上述した方法により乳化を行う際には、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去することが望ましい。
乳化物から有機溶媒を除去する方法としては、得られる乳化物中における、有機溶媒(好ましくは脂環族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
乳化物から有機溶媒を除去する方法としては、得られる乳化物中における、有機溶媒(好ましくは脂環族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
また、有機溶媒を除去した後、必要に応じ、合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよく、特に、合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を上げるとともに、合成ポリイソプレンラテックス中の界面活性剤の残留量を低減することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100〜10,000G、遠心分離前の合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を、好ましくは2〜15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500〜1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03〜1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、合成ポリイソプレンラテックスを得ることができる。そして、これにより、合成ポリイソプレンラテックス中における、界面活性剤の残留量を低減することができる。
合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度は、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%である。固形分濃度が低すぎると、後述するラテックス組成物の固形分濃度が低くなるために、後述するディップ成形体の膜厚が薄くなり破れ易くなる。逆に固形分濃度が高すぎると、合成ポリイソプレンラテックスの粘度が高くなり、配管での移送や調合タンク内での撹拌が困難になる場合がある。
合成ポリイソプレンラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。この体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、合成ポリイソプレンラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
また、合成ポリイソプレンラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、架橋剤、キレート剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンラテックスに、架橋剤を添加してなるものである。
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンラテックスに、架橋剤を添加してなるものである。
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、カプロラクタム・ジスルフィド(N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋促進剤の含有量は、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜2重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含有することが好ましい。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、ラテックスとしての安定性を良好なものとしながら、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、ラテックスとしての安定性を良好なものとしながら、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤、分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
本発明のラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、合成ポリイソプレンラテックスに、架橋剤、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、合成ポリイソプレンラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を合成ポリイソプレンラテックスに混合する方法などが挙げられる。
本発明のラテックス組成物は、pHが7以上であることが好ましく、pHが7〜13の範囲であることがより好ましく、pHが8〜12の範囲であることがさらに好ましい。また、ラテックス組成物の固形分濃度は、15〜65重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体の引張強度が低下する場合がある。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体の引張強度が低下する場合がある。
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
本発明のディップ成形体は、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
次いで、加熱して、型上に形成された沈着物を架橋させる。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
また、ラテックス組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは50℃〜70℃である。
架橋後のディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。架橋途中のディップ成形体が脱着に対する十分な強度を有していれば、架橋途中で脱着し、引き続き、その後の架橋を継続してもよい。
本発明のディップ成形体は、上記本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンラテックスを用いて得られるものであるため、引張強度に優れ、しかも、柔軟な風合いを備えるものであり、手袋として特に好適に用いることができる。ディップ成形体が手袋である場合、ディップ成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
また、本発明のディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
接着剤層形成基材
本発明の接着剤層形成基材は、基材上に、上述した本発明の合成ポリイソプレン溶液を用いて形成される接着剤層を備える、基材と、接着剤層との複合材料である。
本発明の接着剤層形成基材は、基材上に、上述した本発明の合成ポリイソプレン溶液を用いて形成される接着剤層を備える、基材と、接着剤層との複合材料である。
基材としては、特に限定されないが、たとえば繊維基材を用いることができる。繊維基材を構成する繊維の種類は、特に限定されず、たとえば、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド繊維、ガラス繊維、綿、レーヨン等が挙げられる。これらは、その用途に応じて、適宜選定することができる。繊維基材の形状は特に限定されず、たとえば、ステープル、フィラメント、コード状、ロープ状、織布(帆布等)等を挙げることができ、その用途に応じて適宜選定することができる。
また、接着剤層は、上述した本発明の合成ポリイソプレン溶液を用いて形成すればよく、上述した本発明の合成ポリイソプレン溶液に、配合剤等を配合することなくそのまま用いてもよいし、あるいは、各種配合剤を配合することで、接着剤組成物とし、このような接着剤組成物を用いて接着剤層を形成してもよい。
接着剤組成物に含有させる配合剤としては、たとえば、接着剤樹脂が挙げられる。接着剤樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびイソシアネート樹脂を好適に使用することができ、これらのなかでも、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂は、公知のもの(例えば、特開昭55−142635号公報に開示のもの)が使用できる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの反応比率は、「レゾルシン:ホルムアルデヒド」のモル比で、通常、1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3である。
また、接着剤組成物には、接着力をさらに高めるために、従来から使用されている2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール又は類似の化合物、イソシアネート、ブロックイソシアネート、エチレン尿素、ポリエポキシド、変性ポリ塩化ビニル樹脂等を含有させることができる。
さらに、接着剤組成物には、加硫助剤を含有させることができる。加硫助剤を含有させることにより、接着剤層形成基材の機械的強度を向上させることができる。加硫助剤としては、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム;ラウリルメタクリレートやメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)等のアリル化合物;ビスマレイミド、フェニルマレイミド、N,N−m−フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物;硫黄;等を挙げることができる。
接着剤組成物中における合成ゴムの含有量(固形分量)は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
本発明の接着剤層形成基材は、たとえば、基材表面に、本発明の合成ポリイソプレン溶液、またはこれを含有する接着剤組成物を塗布する方法、あるいは、基材を、本発明の合成ポリイソプレン溶液、またはこれを含有する接着剤組成物中に浸漬する方法などにより、基材上に、接着剤層を形成することにより得ることできる。
このような本発明の接着剤層形成基材は、たとえば、接着剤層を介して、ゴムと接着することにより、基材−ゴム複合体として用いることができる。基材−ゴム複合体としては、特に限定されないが、たとえば、繊維基材としてコード状のものを用いた芯線入りのゴム製歯付きベルト、帆布等の基布状の繊維基材を用いたゴム製歯付きベルト等が挙げられる。
基材−ゴム複合体を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、塗布法や浸漬処理等により、本発明の合成ポリイソプレン溶液、またはこれを含有する接着剤組成物を基材に付着させて接着剤層形成基材を得て、接着剤層形成基材をゴム上に載置し、これを加熱および加圧する方法が挙げられる。加圧は、圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行なうことができる。加圧の圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaである。加熱の温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。加熱および加圧の処理時間は、好ましくは1〜180分、より好ましくは5〜120分である。加熱および加圧する方法により、ゴムの成形、および接着剤層形成基材とゴムとの接着を、同時に行なうことができるようになる。なお、加圧に用いる圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とする基材−ゴム複合体のゴムに所望の表面形状を付与するための型を形成させておくことが好ましい。
また、基材−ゴム複合体の一態様として、基材−ゴム−基材複合体を挙げることができる。基材−ゴム−基材複合体は、たとえば、基材(2種以上の基材の複合体であってもよい。)と基材−ゴム複合体とを組み合わせて形成することができる。具体的には、基材としての芯線、ゴムおよび基材としての基布を重ね(このとき、芯線および基布には、本発明の合成ポリイソプレン溶液、またはこれを含有する接着剤組成物を適宜付着させて接着剤層形成基材としておく)、加熱しながら加圧することにより、基材−ゴム−基材複合体を得ることができる。
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、機械的強度、耐摩耗性および耐水性に優れたものであり、そのため、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルト等のベルトとして好適に用いることができる。また、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、耐油性に優れ、油中ベルトとして好適に用いることができる。さらに、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、ホース、チューブ、ダイアフラム等にも好適に使用できる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホース等が挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラム等が挙げられる。
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロール等の工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動等の運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータ等が挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケット等が挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器等のOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロール等の繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロール等の製鉄用ロール;等が挙げられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
重量平均分子量(Mw)
試料を固形分濃度が0.1重量%となるように、テトラヒドロフランで希釈し、この溶液について、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を算出した。
試料を固形分濃度が0.1重量%となるように、テトラヒドロフランで希釈し、この溶液について、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を算出した。
ピークの強度比(I B /I A )
合成ポリイソプレン溶液を用いて、合成ポリイソプレンのフィルムを作製し、作製したフィルムについて、FT−IR(型式「IG−1000」、大塚電子社製)を用いて、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAと、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBとを測定し、これらのピークの強度比(IB/IA)を算出した。
合成ポリイソプレン溶液を用いて、合成ポリイソプレンのフィルムを作製し、作製したフィルムについて、FT−IR(型式「IG−1000」、大塚電子社製)を用いて、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAと、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBとを測定し、これらのピークの強度比(IB/IA)を算出した。
固形分濃度
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
凝集物含有割合
合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を測定し、その合成ポリイソプレンラテックス約100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、合成ポリイソプレンラテックスを除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、下記式に基づいて凝集物含有割合(単位:重量%)を求めた。
凝集物含有率={(α−β)/(γ×Δ)}×10,000
ここで、αは乾燥後の金網及び乾燥凝集物の重量、βは金網の重量、γは合成ポリイソプレンラテックスの重量、Δは合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度をそれぞれ示す。
合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を測定し、その合成ポリイソプレンラテックス約100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、合成ポリイソプレンラテックスを除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、下記式に基づいて凝集物含有割合(単位:重量%)を求めた。
凝集物含有率={(α−β)/(γ×Δ)}×10,000
ここで、αは乾燥後の金網及び乾燥凝集物の重量、βは金網の重量、γは合成ポリイソプレンラテックスの重量、Δは合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度をそれぞれ示す。
ラテックス組成物の安定性
ラテックス組成物を30℃の条件下で熟成させ、熟成を開始してから所定日数後に、上記の方法にしたがってラテックス組成物の凝集物含有割合を測定し、凝集物含有割合が0.2重量%となった日数を求めることで、ラテックス組成物の安定性を評価した。なお、凝集物含有割合が0.2重量%となった日数が長いほど、ラテックス組成物の安定性に優れる。
ラテックス組成物を30℃の条件下で熟成させ、熟成を開始してから所定日数後に、上記の方法にしたがってラテックス組成物の凝集物含有割合を測定し、凝集物含有割合が0.2重量%となった日数を求めることで、ラテックス組成物の安定性を評価した。なお、凝集物含有割合が0.2重量%となった日数が長いほど、ラテックス組成物の安定性に優れる。
ディップ成形体の引張強度、破断時伸び、500%引張応力
ASTM D412に基づいて、膜厚が約0.2mmのフィルム状のディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK−100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG−1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)、破断直前の伸び(単位:%)および伸び率が500%の時の引張応力(単位:MPa)を測定した。なお、引張強度および破断時伸びは高いほど好ましい。また、500%の時の引張応力が小さいほど、ディップ成形体は柔軟性に優れたものとなり、好ましい。
ASTM D412に基づいて、膜厚が約0.2mmのフィルム状のディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK−100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG−1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)、破断直前の伸び(単位:%)および伸び率が500%の時の引張応力(単位:MPa)を測定した。なお、引張強度および破断時伸びは高いほど好ましい。また、500%の時の引張応力が小さいほど、ディップ成形体は柔軟性に優れたものとなり、好ましい。
実施例1
(合成ポリイソプレンラテックスの製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレーブに、ノルマルヘキサン1150部と、イソプレン100部とを仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の温度を30℃にし、撹拌しながら、四塩化チタン0.03部、トリイソブチルアルミニウム0.03部およびノルマルブチルエーテル0.005部を加えて2時間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.05部を添加し、反応を停止させて、重合体溶液(A−1)を得た。重合体溶液(A−1)中の重合体成分(後述する凝固を行う前の合成ポリイソプレン)の重量平均分子量は1,320,000であった。さらに、得られた重合体溶液(A−1)に、重合体溶液中に含まれる重合体成分100部に対し、老化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(中央化成品社製)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX565」)を重量比22:3で混合した混合物)を0.2部添加し、撹拌下、室温で溶解することで、老化防止剤を添加してなる重合体溶液(B−1)を得た。
(合成ポリイソプレンラテックスの製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレーブに、ノルマルヘキサン1150部と、イソプレン100部とを仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の温度を30℃にし、撹拌しながら、四塩化チタン0.03部、トリイソブチルアルミニウム0.03部およびノルマルブチルエーテル0.005部を加えて2時間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.05部を添加し、反応を停止させて、重合体溶液(A−1)を得た。重合体溶液(A−1)中の重合体成分(後述する凝固を行う前の合成ポリイソプレン)の重量平均分子量は1,320,000であった。さらに、得られた重合体溶液(A−1)に、重合体溶液中に含まれる重合体成分100部に対し、老化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(中央化成品社製)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX565」)を重量比22:3で混合した混合物)を0.2部添加し、撹拌下、室温で溶解することで、老化防止剤を添加してなる重合体溶液(B−1)を得た。
次いで、得られた重合体溶液(B−1)についてメタノールで凝固した後、100℃、25分の条件で乾燥して固体の合成ポリイソプレン(C−1)を得た。その後、合成ポリイソプレン(C−1)を、シクロヘキサンに再溶解して、濃度が8重量%である合成ポリイソプレン溶液(D−1)を得た。得られた合成ポリイソプレン溶液(D−1)の一部を用いて、上記方法に従って、ピークの強度比(IB/IA)を求めた。結果を表1に示す。
次いで、合成ポリイソプレン溶液(D−1)1250部を60℃に加熱し、60℃に加熱した濃度1.0重量%のロジン酸ナトリウム水溶液1250部と、重量比で1:1となるように流量を調整してラインミキサーを用いて混合し、続いて、ホモジナイザーを用いて乳化することで乳化液(E−1)を得た。
さらに、上記乳化液(E−1)を減圧下で80℃に加温してシクロヘキサンを留去し、合成ポリイソプレンの水分散液を得た。得られた水分散液を、連続遠心分離機を用いて遠心分離し、軽液として固形分濃度59.5重量%の合成ポリイソプレンラテックス(F−1)を得た。得られた合成ポリイソプレンラテックス(F−1)の一部を用いて、上記方法にしたがって、凝集物含有割合を測定した。結果を表1に示す。
(ラテックス組成物の調製)
上記にて得られた合成ポリイソプレンラテックス(F−1)を攪拌しながら、ラテックス中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で1部になるように濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを添加した。そして、得られた混合物を攪拌しながら、混合物中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名:Wingstay L、グッドイヤー社製)3部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、およびメルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩0.7部を、水分散液の状態で添加した後、水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10.5に調整することで、ラテックス組成物を得た。得られたラテックス組成物の一部を用いて、上記方法にしたがって、ラテックス組成物の安定性を評価した。一方で、ラテックス組成物の安定性の評価に使用しなかったラテックス組成物については、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。
上記にて得られた合成ポリイソプレンラテックス(F−1)を攪拌しながら、ラテックス中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で1部になるように濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを添加した。そして、得られた混合物を攪拌しながら、混合物中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名:Wingstay L、グッドイヤー社製)3部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、およびメルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩0.7部を、水分散液の状態で添加した後、水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10.5に調整することで、ラテックス組成物を得た。得られたラテックス組成物の一部を用いて、上記方法にしたがって、ラテックス組成物の安定性を評価した。一方で、ラテックス組成物の安定性の評価に使用しなかったラテックス組成物については、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。
(ディップ成形体の製造)
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)からなる凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。次いで、凝固剤で被覆された手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥した。
次いで、凝固剤で被覆された手型をオーブンから取り出し、上記にて得られた熟成後のラテックス組成物に10秒間浸漬した。その後、室温で10分間風乾してから、この手型を60℃の温水中に5分間浸漬し、次いで、フィルム状の合成ポリイソプレンで被覆された手型を130℃のオーブン内に置いて、30分間加熱することで、架橋を行った。次いで、架橋されたフィルムで被覆された手型を室温まで冷却した後、タルクを散布してから手型から剥離することで、ディップ成形体(手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(手袋)について、上記方法に従って、引張強度、破断時伸びおよび500%引張応力を測定した。結果を表1に示す。
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)からなる凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。次いで、凝固剤で被覆された手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥した。
次いで、凝固剤で被覆された手型をオーブンから取り出し、上記にて得られた熟成後のラテックス組成物に10秒間浸漬した。その後、室温で10分間風乾してから、この手型を60℃の温水中に5分間浸漬し、次いで、フィルム状の合成ポリイソプレンで被覆された手型を130℃のオーブン内に置いて、30分間加熱することで、架橋を行った。次いで、架橋されたフィルムで被覆された手型を室温まで冷却した後、タルクを散布してから手型から剥離することで、ディップ成形体(手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(手袋)について、上記方法に従って、引張強度、破断時伸びおよび500%引張応力を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、83℃、18分に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−2)、合成ポリイソプレン溶液(D−2)、合成ポリイソプレンラテックス(F−2)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、83℃、18分に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−2)、合成ポリイソプレン溶液(D−2)、合成ポリイソプレンラテックス(F−2)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
重合体溶液に添加する老化防止剤の量を、0.2部から0.05部に変更するとともに、重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、65℃、13分に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−3)、合成ポリイソプレン溶液(D−3)、合成ポリイソプレンラテックス(F−3)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
重合体溶液に添加する老化防止剤の量を、0.2部から0.05部に変更するとともに、重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、65℃、13分に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−3)、合成ポリイソプレン溶液(D−3)、合成ポリイソプレンラテックス(F−3)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4
重合体溶液を製造する際に、四塩化チタン0.03部、トリイソブチルアルミニウム0.03部およびノルマルブチルエーテル0.005部に代えて、ノルマルブチルリチウム0.006部を使用するとともに、反応温度を30℃から60℃に変更した以外は、実施例3と同様にして、合成ポリイソプレン溶液(D−4)、合成ポリイソプレンラテックス(F−4)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
重合体溶液を製造する際に、四塩化チタン0.03部、トリイソブチルアルミニウム0.03部およびノルマルブチルエーテル0.005部に代えて、ノルマルブチルリチウム0.006部を使用するとともに、反応温度を30℃から60℃に変更した以外は、実施例3と同様にして、合成ポリイソプレン溶液(D−4)、合成ポリイソプレンラテックス(F−4)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例5
四塩化チタン0.03部、トリイソブチルアルミニウム0.03部およびノルマルブチルエーテル0.005部に代えて、ノルマルブチルリチウム0.006部を使用し、反応温度を30℃から60℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体溶液(A−5)を得た。なお、この重合体溶液(A−5)は、後述するように、そのまま、合成ポリイソプレン溶液(D−5)として、合成ポリイソプレンラテックス(F−5)の製造に用いた。この合成ポリイソプレン溶液(D−5)中の重合体成分(合成ポリイソプレン)の重量平均分子量は1,240,000であった。また、合成ポリイソプレン溶液(D−5)の一部について、上記方法に従って、ピークの強度比(IB/IA)を求めた。結果を表1に示す。
四塩化チタン0.03部、トリイソブチルアルミニウム0.03部およびノルマルブチルエーテル0.005部に代えて、ノルマルブチルリチウム0.006部を使用し、反応温度を30℃から60℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合体溶液(A−5)を得た。なお、この重合体溶液(A−5)は、後述するように、そのまま、合成ポリイソプレン溶液(D−5)として、合成ポリイソプレンラテックス(F−5)の製造に用いた。この合成ポリイソプレン溶液(D−5)中の重合体成分(合成ポリイソプレン)の重量平均分子量は1,240,000であった。また、合成ポリイソプレン溶液(D−5)の一部について、上記方法に従って、ピークの強度比(IB/IA)を求めた。結果を表1に示す。
次いで、合成ポリイソプレン溶液(D−5)を直接乳化することで、乳化液(E−5)を得た。具体的には、合成ポリイソプレン溶液(D−5)1250部に対して老化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(中央化成品社製)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX565」)の重量比22:3の混合物)0.007部を添加したものを60℃に加熱し、60℃に加熱した濃度1.0重量%のロジン酸ナトリウム水溶液1250部と、重量比で1:1となるように流量を調整してラインミキサーを用いて混合し、続いて、ホモジナイザーを用いて乳化することで乳化液(E−5)を得た。
さらに、上記乳化液(E−5)を減圧下で80℃に加温してノルマルヘキサンを留去し、合成ポリイソプレンの水分散液を得た。得られた水分散液を、連続遠心分離機を用いて遠心分離し、軽液として固形分濃度62.8重量%の有機アルカリ金属系合成ポリイソプレンラテックス(F−5)を得た。得られた合成ポリイソプレンラテックス(F−5)の一部を用いて、上記方法にしたがって、凝集物含有割合を測定した。結果を表1に示す。
次いで、合成ポリイソプレンラテックス(F−5)を用いて、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例5においては、ラテックス組成物の安定性を評価したところ、20日経過したところで、凝集物含有割合が0.2重量%未満であったため、そこで評価を中止した。そのため、表1においては、ラテックス組成物の安定性の評価結果を「>20」と記載した。
比較例1
重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、120℃、45分に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−6)、合成ポリイソプレン溶液(D−6)、合成ポリイソプレンラテックス(F−6)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、120℃、45分に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−6)、合成ポリイソプレン溶液(D−6)、合成ポリイソプレンラテックス(F−6)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、110℃、35分に変更した以外は、実施例3と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−7)、合成ポリイソプレン溶液(D−7)、合成ポリイソプレンラテックス(F−7)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
重合体溶液についてメタノールで凝固した後に行う乾燥の条件を、110℃、35分に変更した以外は、実施例3と同様にして、固体の合成ポリイソプレン(C−7)、合成ポリイソプレン溶液(D−7)、合成ポリイソプレンラテックス(F−7)、ラテックス組成物およびディップ成形体を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、FT−IRによって測定されるピークの強度比(IB/IA)が0.4以下に制御された合成ポリイソプレンを用いた場合には、得られる合成ポリイソプレンラテックスは、凝集物含有割合が小さく、ラテックス組成物とした場合における安定性にも優れるものであり、しかも、このラテックス組成物を用いて製造されるディップ成形体は、引張強度および伸びに優れ、かつ、柔軟な風合いを備えるものであった(実施例1〜5)。
一方、FT−IRによって測定されるピークの強度比(IB/IA)が大きすぎる合成ポリイソプレンを用いた場合には、得られる合成ポリイソプレンラテックスは、凝集物含有割合が大きく、ラテックス組成物とした場合における安定性にも劣るものであり、しかも、このラテックス組成物を用いて製造されるディップ成形体は、引張強度に劣るものであった(比較例1,2)。
Claims (9)
- フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によって測定した場合における、2,840〜3,000cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IAに対する、1,000〜1,200cm-1の範囲において最も強度が大きいピークの強度IBの比(IB/IA)が、0.4以下である合成ポリイソプレンを、有機溶媒に溶解してなる合成ポリイソプレン溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、前記合成ポリイソプレンのラテックスを得る工程を備える合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
- 前記合成ポリイソプレン溶液が、有機溶媒に溶解させたイソプレンを含む単量体について溶液重合することで得られる重合体溶液を、凝固を行うことで固形物とした後、前記固形物を有機溶媒に再溶解させることで得られたものである請求項1に記載の合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
- 前記合成ポリイソプレン溶液が、前記重合体溶液に、前記重合体溶液中の前記重合体成分100重量部に対して、0.001〜0.3重量部の老化防止剤を添加した状態で、前記凝固および前記再溶解を行うことで得られたものである請求項2に記載の合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
- 前記合成ポリイソプレン溶液が、有機溶媒に溶解させたイソプレンを含む単量体を溶液重合したものを、凝固せずに得られたものである請求項1に記載の合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
- 前記合成ポリイソプレン溶液が、前記合成ポリイソプレン溶液中の前記合成ポリイソプレン100重量部に対して、0.001〜0.3重量部の老化防止剤を添加した状態で、前記乳化を行うことで得られたものである請求項4に記載の合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
- 有機アルカリ金属触媒の存在下で、溶液重合する請求項2〜5のいずれかに記載の合成ポリイソプレンラテックスの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法。
- 請求項7に記載の製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた合成ポリイソプレンラテックスを用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成する工程を備える接着剤層形成基材の製造方法。
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