JP2016084275A - ガラス基板の分断方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】このガラス基板の分断方法は、強化ガラスを分断するための方法であって、加工痕形成工程と、中間工程と、分断工程と、を含む。加工痕形成工程は、基板内部の引張応力を有する領域内の第1深さ位置にレーザを集光し分断予定ラインに沿ってレーザを走査して基板内部に加工痕を形成する。中間工程は、第1深さ位置より基板の表面又は裏面の面側の第2深さ位置にレーザを集光し、分断予定ラインに沿った一部領域にのみレーザを走査して基板内部に亀裂を形成する。分断工程は、中間工程の後に、直前のレーザ集光位置より基板の一方の面側の深さ位置にレーザを集光し、一部領域の少なくとも一部にのみレーザを走査して基板の一方の面に到達する亀裂を形成し、亀裂を分断予定ラインに沿って進展させて基板を分断する。
【選択図】図7
Description
図1に分断対象としてのガラス基板の断面構成の一例を示している。このガラス基板は、表面に圧縮応力を有するとともに内部に引張応力を有する強化ガラスである。具体的には、表面及び裏面の近傍において、表面及び裏面に近づくほど大きな圧縮応力(CS)を有している。そして、表面及び裏面から所定の深さに達する基板内部では、逆に引張応力(CT)を有している。図1において、「DOL」は基板表面の圧縮応力を有する強化層深さを示している。
以上のような強化ガラス(以下、単に「基板」と記す場合もある)を分断する場合は、以下のような工程を実行する。
基板内部の引張応力を有する領域の第1深さ位置にレーザを集光し、基板表面からレーザを照射して分断予定ラインに沿って走査する。これにより、分断予定ラインに沿って基板内部に加工痕を形成する。ここで加工痕は、レーザによって基板が一旦軟化または溶融し、再度固化した状態の領域である。
第1工程終了後に、第1深さ位置より浅い基板表面側の第2深さ位置にレーザを集光し、かつ基板端面(基板表面上のレーザ走査開始端)から所定の範囲のみに分断予定ラインに沿ってレーザを走査する。このときの第2深さ位置及びレーザ強度は、レーザ照射によって、先に形成された加工痕に亀裂が進展可能なように設定する。
第2工程終了後に、第2深さ位置よりさらに浅い基板表面側の第3深さ位置にレーザを集光し、かつ第2工程でレーザを照射した範囲あるいはそれより短い範囲において分断予定ラインに沿ってレーザを走査する。このときの第3深さ位置及びレーザ強度は、レーザ照射によって、亀裂が基板表面にまで到達し、かつ亀裂が分断予定ラインの全体進展可能なように設定する。
図2に第1工程におけるレーザ照射条件を設定するための実験結果を示している。図2に示す表は、1回のレーザ照射の加工結果を示すものであり、表中の各記号の意味は以下の通りである。なお、ここでは、基板の厚みは1.1mmである。
「△」 :1回のレーザ照射で分断
「△×」:分断予定ラインから逸れた分断
「××」:2回のレーザ照射で分断不可能(1回のレーザ照射で加工痕有り)
「−」 :2回のレーザ照射で分断不可能(1回のレーザ照射で加工痕無し)
また、レーザ照射条件は以下の通りである。
・レーザ出力:2.0〜8.0W
・走査速度:50〜500mm/s
・加工位置(集光位置):535μm
以上の実験1の結果から、第1工程の加工条件としては、レーザ出力を4Wとし、走査速度を200〜300mm/sの範囲に設定することが好ましいことがわかる。
図3は、第1工程のレーザ照射条件を以下のように設定し、第2工程におけるレーザ照射条件(走査速度、加工位置)を種々変更して分断可能な条件を調査した実験結果を示している。なお、この実験2では、第2工程において、分断予定ラインの一部ではなく全部にわたってレーザを走査した。また、基板の厚みは1.1mmである。
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:4.0W
・走査速度:300mm/s
・加工位置(焦点位置):535μm(基板表面が0μm)
なお、図3の表中の各記号の意味は以下の通りである。
「△」:分断可能(レーザ照射数分後、ラインに沿った分断)
「□」:分断可能(ラインから逸れた分断)
「×」:加工痕有 (分断不可能)
この実験2の結果から、第1工程でのレーザ照射条件を以上のように設定し、加工位置を535μmに設定した場合、第2工程では以下の条件で加工すれば、確実に分断が可能であることがわかる。
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:8.0W
・走査速度:500mm/s
・加工位置(焦点位置):140〜365μm(基板表面が0μm)
図4は基板の第2工程において、分断予定ラインの一部にのみレーザを照射した実験結果を示している。図4(a)は第1工程のレーザ走査開始端部から20mm離れた位置の分断予定ラインに沿ってレーザを照射した場合の分断面の様子を示している。図4(b)は第1工程のレーザ走査終了端部から20mm離れた位置の分断予定ラインに沿ってレーザを照射した場合の分断面の様子を示している。図4(c)は第1工程のレーザ走査開始端部から20mmの範囲に、分断予定ラインに沿ってレーザを走査した場合の分断面の様子を示している。加工条件は、実験2で得られた各条件と同じである。第2工程のレーザ照射位置を基板の中央部や第1工程でのレーザ走査終了端部に変えても分断が可能であった。
以上の実験1〜3の結果をもとに実験4を行った。その結果を図5に示している。図5(a)は切入部(レーザを2回照射した部分)の基板表面の顕微鏡写真(同図左)と、その分断面の顕微鏡写真(同図右)である。また、図5(b)は基板中央部(レーザを1回のみ照射した部分)の基板表面の顕微鏡写真(同図左)と、その分断面の顕微鏡写真(同図右)である。ここでの各工程での加工条件は以下の通りである。
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:4.0W
・走査速度:300mm/s
・加工位置(焦点位置):535μm(基板表面が0μm)
第2工程:
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:8.0W
・走査速度:500mm/s
・加工位置(焦点位置):213μm(基板表面が0μm)
・レーザ照射部分:走査開始端部(切入部)10mmの範囲(それ以外は遮蔽)
この実験4の結果から、レーザを2回照射した部分は、基板表面に200μm程度のサイズの欠けが発生しているが、遮蔽された部分(レーザは1回のみ照射)は基板表面に欠けが発生していないことがわかる。なお、亀裂の直進性(分断予定ラインからのズレ)は遮蔽部において、±50μm以内(測定サンプル:n=3)であった。
第1工程におけるレーザの加工位置を365〜998μm(基板表面が0μm)の範囲で変更し、第2工程におけるレーザ加工位置140〜998μm(基板表面が0μm)の範囲で変更して基板分断可能な条件を調査した実験結果を図6に示している。ここでの各加工条件は以下の通りである。
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:4.0W
・走査速度:300mm/s
第2工程:
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:8.0W
・走査速度:500mm/s
図6の表中における各記号の意味は以下の通りである。
「□」:ラインから逸れた分断
「×」:加工痕有 (分断不可能)
この実験結果から、第1工程での加工位置を365〜685μmにした場合、第2工程の加工位置を、基板表面から365μm以下にすれば、第2工程において自然分断することがわかる。また、第2工程での加工位置を、第1工程での加工位置より225(365−140)μm以上、472(685−213)μm以下だけ表面側に移動させる必要があることがわかる。
以上の実験においては、すべて基板の厚みは1.1mmである。したがって、以上の実験結果から、基板の厚みが1.1mm以上の場合は、図7に示すように、第2工程の加工条件で第2工程と同様の工程(第3工程:分断工程)を繰り返して実行すればよいことがわかる。
レーザ照射条件について、各工程では、以下の条件であれば、本発明の方法で分断が可能である。
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:4.0W(4W以上8W以下でも可)
・走査速度:200〜300mm/s(150mm/s以上500mm/sでも可)
第2工程及び第3工程:
・繰り返し周波数:3MHz
・レーザ出力:8.0W(6W以上8W以下でも可)
・走査速度:500mm/s(300mm/s以上800mm/s以下でも可)
<加工位置>
加工位置について、各工程では、以下の条件であれば、本発明の方法で分断が可能である。
基板中央位置(0μm)から+185〜−135μmの範囲。
(1)分断工程において、基板の一部領域にレーザを照射することによって基板を分断することができる。したがって、意図せずに基板が自然分断されるのを防止でき、安定した分断処理を実行できる。
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
Claims (11)
- 表面に圧縮応力を有するとともに内部に引張応力を有する強化ガラスを分断するためのガラス基板の分断方法であって、
基板内部の引張応力を有する領域内の第1深さ位置にレーザを集光し分断予定ラインに沿ってレーザを走査することによって、基板内部に加工痕を形成する加工痕形成工程と、
前記第1深さ位置より基板の表面又は裏面の一方の面側の第2深さ位置にレーザを集光し、前記分断予定ラインに沿った一部領域にのみレーザを走査して基板内部に亀裂を形成する中間工程と、
前記中間工程の後に、直前のレーザ集光位置より基板の前記一方の面側の深さ位置にレーザを集光し、前記一部領域の少なくとも一部にのみレーザを走査して基板の前記一方の面に到達する亀裂を形成するとともに、形成された亀裂を前記分断予定ラインに沿って進展させて基板を分断する分断工程と、
を含むガラス基板の分断方法。 - 前記分断工程では、前記第2深さ位置より基板の前記一方の面側の第3深さ位置にレーザを集光する、請求項1に記載のガラス基板の分断方法。
- 前記基板の板厚は1.1mm以上である、請求項1又は2に記載のガラス基板の分断方法。
- 前記加工痕形成工程における第1深さ位置は、基板の厚み方向の中央位置からレーザ照射面側に185μm以下で、逆側に135μm以下の範囲内である、請求項1から3のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 隣接する前記各深さ位置の間隔は225μm以上472μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 前記分断工程における最も基板のレーザ照射面側のレーザ集光位置は、基板のレーザ照射面から140μm以上365μm以下の範囲内である、請求項1から5のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 前記中間工程において、レーザ照射される一部領域は、走査開始側の基板端縁から10mm以内の部分である、請求項1から6のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 前記中間工程及び前記分断工程において、レーザ照射される領域以外は、レーザの基板への照射を停止する、請求項1から7のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 前記分断工程におけるレーザ照射領域は、前記中間工程における一部領域よりも狭い領域である、請求項1から9のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 前記加工痕形成工程において、レーザ出力は4W以上8W以下であり、走査速度は150mm/s以上500mm/s以下である、請求項1から9のいずれかに記載のガラス基板の分断方法。
- 前記中間工程及び前記分断工程において、レーザ出力は6W以上8W以下であり、走査速度は300mm/s以上800mm/s以下である、請求項10に記載のガラス基板の分断方法。
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