JP2016078257A - 湿り顔料、これを用いたカラーマスターバッチ、乾燥顔料の混合方法及びマスターバッチの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(2)カラーマスターバッチの製造には、1次粒径が1000nm未満である超微粉末顔料のカラーの有機顔料が用いられているが、本発明によれば、超微粉末顔料の取り扱い性が向上し、製造時等に生じていた超微粉末顔料の周囲への飛散や、帯電による張り付き(片寄り)等の問題を低減した湿った状態の湿り顔料が提供され、さらに、この湿り顔料を用いることで、超微粉末顔料を結着樹脂中に均一な状態に分散させることが可能になる。
(3)従来のカラーマスターバッチには、顔料の分散に使用した分散剤やワックス類が混入しているのに対し、本発明ではこれらを使用しないので、これらの成分の混入による製品への影響をなくすことができる。具体的には、本発明によって提供されるカラーマスターバッチは、これらの成分に起因する、内部滑性・外部滑性の影響や、ブルーミング(分散剤の表面浮き出し)や、例えば、使用する樹脂がポリエステル樹脂等である場合に生じることがあった加水分解等の樹脂の劣化の問題を生じることがない。
(4)分散剤やワックス類にかかっていた原料コストを抑えることができる。
(5)本発明では、水のミストのみで顔料の表面状態を、マスターバッチを構成する樹脂中において高度な分散性を示すものにできるので、得られたマスターバッチを用いて展開される樹脂成形品は、従来の製品と比べて、成形外観上の不具合や、衝撃強度、引張・曲げモジュラス等の強度の指標での劣化が少ない良好なものになる。
(6)また、乾燥した超微粉末顔料を水で湿らせた状態としたことで、超微粉末であるカラーの有機顔料の取扱い性を向上させると共に、超微粉末顔料を溶融した結着樹脂中へ均一に分散させることを可能にした本発明の技術は、熱可塑性のあらゆる樹脂からなるマスターバッチに応用が可能であり、高い凡用性を有する実用性に優れた技術である。
(顔料)
本発明で混合して使用する顔料は、少なくともカラーの有機顔料を含有すればよく、特に、一次粒子の直径が1000nm未満の微粉体であるカラーの有機顔料を複数混合して調色する場合や、このような粒径のカラーの有機顔料と白色の白色顔料とを複数混合して調色して使用する場合に、特に本発明の顕著な効果が得られる。本発明で使用するカラーの有機顔料は、特に限定されず、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、ペリレン系、キノフタロン系、ペリノン系等が挙げられる。これらに分類される染料を併用してもよい。また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンなどの白色顔料を併用してもよい。
本発明で使用するマスターバッチ用樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合樹脂(AES樹脂)等の汎用の樹脂をいずれも使用することができる。
水は、水道水でもよいが、イオン交換水を用いることが好ましい。水と併用して界面活性剤を使用する場合の界面活性剤は、先に述べたように、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤であることが好ましく、種々の特性のものが市場から入手できる。中でも、水に可溶で、ミスト状にして水とともに添加できるものが好ましくこのようなものとしては、例えば、サフィノール465、サフィノール485、サフィノール82等(商品名、日信化学工業株式会社製)が挙げられる。
本発明の湿り顔料の製造には、カラーの有機顔料を含む複数の顔料を分散混合するための混合機を用いるが、迅速に、均一な混合を達成するためには、特に、高速回転する羽根によって強力な混合力を発揮するヘンシェルミキサーのような高性能流動式混合機を用いることが好ましい。ヘンシェルミキサーによれば、混合槽内で、微粉体の混合顔料は、下羽根によって回転力が与えられて上方に流動し、上羽根によって強力に剪断される結果、短時間での分散混合が可能になる。また、混合槽内の温度を上昇させる加熱手段を有するものを用いることが好ましい。例えば、混合機槽内の温度を50℃〜70℃に確実に上昇させて、複数種の顔料を強力な剪断力で分散混合させながらミスト状の水を添加することで、より確実に水を気化させることができ、その結果、気化(ガス化)した水によって顔料微粉同士の距離を適度な位置に保つことができ、分散に寄与し、より効果的な分散混合ができる。なお、ヘンシェルミキサーは、従来より顔料の処理に用いられている3本ロールやボールミル等の、重装備で且つ生産性の低い装置に比べて、小型で簡易な装置であるので、装置や設備にかかる費用の低減される。
図2に、乾燥した混合顔料に、ミスト状の水を添加するための方法の概略図を示した。注入タンク内には水が入っており、この注入タンク内には、液注入口から、先に述べたような界面活性剤を適宜に添加できる構造となっている。さらに、図2に示した装置では、注入タンク内に圧力をかけることができる構造をしており、適宜に圧力をかけることで、ミストノズルから、水、或いは、界面活性剤を添加した水をミスト状にして、所望する量、混合槽内の混合している状態の顔料に水を添加することで、乾燥した混合顔料に湿り気を与えて、複数の顔料が均一に分散混合された湿り顔料とすることができる。図1は、図2に示した装置を使用してミスト状にした水を、ヘンシェルミキサーのような混合機の混合槽内に添加している状態を示す概略図である。
本発明のマスターバッチは、マスターバッチの製造に一般的に用いられている二軸押出混練機を用い、上記で説明した、乾燥した混合顔料にミスト状の水を添加して混合機で分散混合した本発明を特徴づける湿り顔料と、通常のマスターバッチ用の樹脂とを、二軸押出混練機のホッパーから導入して混練することで容易に製造できる。すなわち、本発明のマスターバッチの製造方法は、着色剤として本発明の湿り顔料を用いた以外、何ら異なることはない。したがって、本発明のマスターバッチは、簡易なヘンシェルミキサーのような混合機と、混合槽内にミスト状で水を添加するための手段と、汎用の二軸押出混練機とを用意するだけで、簡便に得られるので、工業上、極めて有用である。先に述べたように、しかも、従来の製造方法で得たカラーマスターバッチと比較して、顔料濃度が高く、着色力を高めることができ、しかも分散剤やワックス類の残留による製品への影響についての問題も生じない。
下記に示したそれぞれの配合で、青色マスターバッチと赤色マスターバッチを製造した。その際に、マスターバッチ用の樹脂には、ペレット状の低密度ポリエチレン樹脂(サンテックLDPE 2270(商品名)、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
(1)青色マスターバッチ
・低密度ポリエチレン樹脂 76部
・白色顔料:TiO2ルチル型(R820 石原産業社製) 20部
・青色顔料:PB−15:3(4920Blue 大日精化工業社製) 4部
・低密度ポリエチレン樹脂 81部
・キナクリドンレッド(シンカシャレッドYRT759D BASF社製) 18部
・縮合アゾレッド(クロモフタールレッドR BASF社製) 1部
<本発明で規定する湿式の分散混合方法>
一次粒子の直径が70〜200nmである、上記した青色のマスターバッチと赤色のマスターバッチの配合中にそれぞれ記載した2種の乾燥した顔料を、上記した配合でそれぞれに用意し、図1に示した、大きさが20Lの混合槽を有するヘンシェルミキサーを有する装置を用い、下記のようにして混合試験を行った。
<従来の乾式の分散混合方法>
実施例で用いたと同様の乾燥した2種の顔料を混合する際に、比較例では、混合顔料100質量部に対し、表2に示した各量の分散剤或いはワックス類を配合して、実施例で用いたと同様の20Lヘンシェルミキサー(高速混合機)のみ、或いは、アトマイザー(高速粉砕機)にて分散混合して、比較例の乾式の顔料半製品をそれぞれに得た。
上記で得た実施例1〜6の湿り顔料である湿式の顔料半製品と、比較例1〜9の乾式の顔料半製品をそれぞれに用いて、下記の手順でカラーマスターバッチをそれぞれ製造した。
(a)まず、先に示したペレット状の低密度ポリエチレン樹脂と、上記で得たそれぞれの顔料半製品とを、先に示した所定の配合(顔料濃度)となるようにして50Lタンブラーに入れ、約15分間混合して、マスターバッチ組成の混合物を得た。
(b)次に、上記で得たマスターバッチ組成混合物を二軸押出混練機(26φ、L/D=42、東芝機械社製)に、重量式フィーダー(定量供給装置)から15kg/Hの供給速度で注入して、加工温度160〜200℃の下で混練して、顔料分散加工、脱気、造粒を行って、それぞれのカラーマスターバッチサンプルを得た。
(a)顔料の分散状態を正確に評価するために、質量基準で、上記で得たカラーマスターバッチ1に対し、マスターバッチの製造に用いたと同じ低密度ポリエチレン樹脂が4となる1:4の比率で混合して、約220℃に設定した25t射出成型機にて、バックプレッシャーを0.5MPa以下の条件下で希釈混合して、顔料濃度を1/5に落とした樹脂成形物を得た。
(b)そして、上記で得たマスターバッチを樹脂で希釈した樹脂成形物の同じ位置から、それぞれ0.05gの評価用の試料をカッターナイフで切り出した。
(c)切り出した評価用の試料をそれぞれ、約270℃のホットプレートで加熱したスライドグラス上において溶融した後、更にもう一枚のスライドグラスで押しつけて、未分散の顔料粒子が顕微鏡で見えるレベルまで薄く引き延ばして、結着樹脂中の顔料の分散状態を評価するための評価用試料を、それぞれに得た。
(d)スライドグラス上に展開した、マスターバッチを樹脂で希釈した評価用試料を、それぞれCCD付きマイクロスコープ(キーエンス社製)に掛けて、下記のようにして顔料の分散状態を評価した。具体的には、視野中に確認される粗粒子の数を、基準とする粗粒子サイズ(50μm、20μm)の基準に照らしてカウントして、0〜5の間の指標に換算して比較し、評価した。図3に換算に用いたスコアを示した。表1および2に、上記のようにして、評価用試料について測定して得た分散指標の結果を示した。この指標が5に近い方が分散に優れていることを示し、0に近いほど分散性に劣ることを示している。
Y=4.93−0.054X
[Y:顔料分散スコア X:視野中の粗粒子数]
表1、2に示した色調*1は、下記のようにして評価した。
まず、実施例及び比較例のカラーマスターバッチをそれぞれ使って、質量基準で、カラーマスターバッチ1に対し、マスターバッチの製造に用いたと同じ低密度ポリエチレン樹脂が9となるように1:9の比率で混合して希釈してカラーの樹脂を調製した。上記で調製したそれぞれのカラー樹脂を用い、製膜してカラーフィルムを作製し、色調を調べるための試験用の樹脂製フィルムとした。そして、この樹脂製フィルムを、目視による官能試験で、従来法によって得た樹脂製フィルムと比べて明らかに色の差が認められるか否かで、「正常」と「色変化」を判断したのに加えて、客観的な判断を下記の方法により行った。透過色カラーコンピュータ(コニカミノルタ製、商品名:CM3600d)を使って試験用フィルムを透過した光の、各波長毎の透過率、色差を測定してL*、a*、b*の数値で、従来法によって得た樹脂製フィルムと比べて5ポイント以上の差があった場合を「色変化」があると判断し、差が無い場合を「正常」と判定した。そして、官能試験の結果と、客観的な判断結果とを総合して判定した評価結果を表1、2に示した。評価基準を下記に示した。上記で比較のために用いた従来法によって得た樹脂製フィルムには、使用する顔料を同様にし、乾燥顔料100部に対してポリエチレンワックス50部を使用して予め分散処理した処理顔料を使用すること以外は同様の方法でマスターバッチを得、これを用いて上記と同様にして得た試験用フィルムを用いた。
正常:使用する顔料が同様である従来法によって得た、従来の樹脂製フィルムと比較して、目視、色差、各波長毎の光線透過率がいずれも遜色ない状態であった。
色変有:従来の樹脂製フィルムと比較して、目視で明らかに色が異なり、色差、各波長毎の光線透過率の数値も大きく基準からはずれている。
表1、2に示した押出加工性は、先に述べたようにしてマスターバッチを作製する過程で、二軸押出混練機で押し出す際の様子を観察し、「良好」と「不良」とを下記の基準で評価した。
良好:二軸押出混練機の加工で何の異常も無く加工ができる。
不良:二軸押出混練機による押出し加工の中で、ベントアップ(ベント部からの吹き出し)、押出し量の変動、原料の供給不良等の製造継続に障害となるいずれかが生じる。
Claims (11)
- 一次粒子の直径が1000nm未満である、カラーの有機顔料を含む複数の乾燥顔料が均一に混合されており、且つ、質量基準で、乾燥した混合顔料100部が、0.5部以上4部未満の量の水で湿り気を帯びた状態にされていることを特徴とする湿り顔料。
- 前記水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されている請求項1に記載の湿り顔料。
- 前記乾燥顔料が、白色顔料を含む請求項1又は2に記載の湿り顔料。
- 有機顔料を含む顔料が、熱可塑性樹脂中に均一に分散されてなるマスターバッチを製造する際の着色剤に用いるためのものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿り顔料。
- 分散剤及びワックス類を含有せず、熱可塑性の結着樹脂中にカラーの有機顔料が均一に分散されてなるカラーマスターバッチであって、前記着色剤が、請求項4に記載の湿り顔料であることを特徴とするカラーマスターバッチ。
- 予め顔料を分散剤或いはワックス類による分散処理することなく、一次粒子の直径が1000nm未満である、カラーの有機顔料を含む、複数の乾燥顔料を混合機内で高速で混合し、さらに、高速で混合している混合状態の顔料にミスト状態の水を吹き付けて、質量基準で、乾燥した混合顔料100部に0.5部以上4部未満の量の水で乾燥顔料に湿り気を与え、均一に混合されたまとまりのある湿り顔料を得る工程を有することを特徴とする乾燥顔料の混合方法。
- 前記ミスト状態の水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されている請求項6に記載の乾燥顔料の混合方法。
- 前記乾燥顔料が、白色顔料を含む請求項6又は7に記載の乾燥顔料の混合方法。
- 更に、前記ミスト状態の水を吹き付ける際の混合機内の温度が50〜70℃である請求項6〜8のいずれか1項に記載の乾燥顔料の混合方法。
- 前記混合機が、ヘンシェルミキサーである請求項6〜9のいずれか1項に記載の乾燥顔料の混合方法。
- 熱可塑性の結着樹脂を溶融してカラーの有機顔料を分散させたカラーマスターバッチの製造方法であって、分散剤及びワックス類を使用することなく、熱可塑性の結着樹脂からなる粉体樹脂又はペレット樹脂と、請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿り顔料とを二軸押出混練機で混練する工程を有することを特徴とするカラーマスターバッチの製造方法。
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