JP2016075939A - 偏光板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が小さく、偏光フィルム等に貼合する際、割れやすい基材フィルムであっても、そこに表面プロテクトフィルムを貼合することで割れにくくし、貼合作業が安定的に行えるようにしたフィルムを提供する。【解決手段】シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2未満の基材フィルム12に表面プロテクトフィルム14が貼合し、貼合された状態でのシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2以上である表面プロテクトフィルム付きフィルム10を得、このフィルム10をその基材フィルム12側で偏光フィルム22に貼合して、表面プロテクトフィルム付き偏光板20を製造する方法が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、基材フィルムに表面プロテクトフィルムが貼合されている表面プロテクトフ
ィルム付きフィルムに関するものである。本発明はまた、その表面プロテクトフィルム付
きフィルムが保護フィルムとして偏光フィルムに積層されている偏光板及びその製造方法
にも関係している。
近年、消費電力が小さく、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電
話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、テレビなどの情報表示デバイスに広く用
いられている。このような情報表示デバイスは、用途によっては過酷な環境下における信
頼性が求められる。例えば、カーナビゲーションシステム用の液晶表示装置は、それが置
かれる車内の温度や湿度が非常に高くなることがあり、通常のテレビやパーソナルコンピ
ュータ用のモニターに比べると、要求される温度及び湿度条件が厳しい。そして液晶表示
装置には、その表示を可能とするために偏光板が用いられるところ、このような厳しい温
度及び/又は湿度条件が要求される液晶表示装置においては、それを構成する偏光板にも
高い耐久性を有するものが求められている。
偏光板は通常、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏
光フィルムの両面又は片面に透明な保護フィルムが積層された構造を有する。そして従来
からこの保護フィルムには、トリアセチルセルロースが広く用いられ、ポリビニルアルコ
ール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して偏光フィルムと接着されていた。ところが、
トリアセチルセルロースからなる保護フィルムが積層された偏光板は、トリアセチルセル
ロースの透湿度が高いことから、高湿熱環境下で長時間使用したときに、偏光性能が低下
したり、保護フィルムと偏光フィルムが剥離したりすることがある。
そこで、これまでにも、トリアセチルセルロースフィルムに比べて透湿度の低いアクリ
ル系樹脂フィルムを偏光板の保護フィルムとして用いることが試みられている。例えば、
特開 2007-25008 号公報(特許文献1)には、厚みが40μm 以下であるアクリル系樹脂
層の両面に、そのアクリル系樹脂層から剥離しうるように熱可塑性樹脂層を設けて光学フ
ィルムとすること、その光学フィルムから少なくとも一方の熱可塑性樹脂層を剥がして偏
光板の保護フィルムとすること、及びその保護フィルムのアクリル系樹脂層側をポリビニ
ルアルコール系樹脂から形成される偏光フィルムに貼り合わせて偏光板とすることが記載
されている。この文献で具体的には、3台の押出機を用いた共押出により、ポリエチレン
テレフタレート/ポリメタクリル酸メチル/ポリエチレンテレフタレートという三層構成
の光学フィルムや、ポリカーボネート/ポリメタクリル酸メチル/ポリカーボネートとい
う三層構成の光学フィルムが作製されている。
また、特開 2007-41563 号公報(特許文献2)には、アクリル系樹脂を主成分とする保
護フィルム、ポリエチレンイミン層、及びポリビニルアルコール系樹脂層をこの順に積層
して光学フィルムとすること、並びにその光学フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層
側をポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光フィルムに貼り合わせて偏光板とす
ることが記載されている。さらに、特開 2007-52404 号公報(特許文献3)には、ポリビ
ニルアルコール系樹脂から形成される偏光フィルム、接着剤層、金属塩層、及びアクリル
系樹脂からなる保護フィルムの順に積層して偏光板とすることが記載されている。
一方、アクリル系樹脂フィルムをはじめとする透湿度の低い樹脂フィルムをポリビニル
アルコール系偏光フィルムに接着するため、特開 2004-245925号公報(特許文献4)や特
開 2010-209126号公報(特許文献5)には、エポキシ化合物を主成分とする硬化性組成物
を用いることが提案されている。
特許文献1〜3のように、透湿度の低いアクリル系樹脂フィルムを偏光板の保護フィル
ムとして用いることで、偏光板の耐湿性を向上させることが見込まれる。また、アクリル
系樹脂フィルムとポリビニルアルコール系偏光フィルムとの貼合に、ポリビニルアルコー
ル系樹脂の水溶液からなる接着剤に代えて、エポキシ化合物を含む硬化性組成物からなる
接着剤を用いることにより、偏光板の耐熱性を向上させることが期待される。
ところが、アクリル系樹脂フィルムは靭性に劣り、割れやすいことが知られている。そ
して、アクリル系樹脂フィルムを保護フィルムとする偏光板を製造する際、アクリル系樹
脂フィルムが割れると、そもそもその部分は欠陥品として取り除かなければならないとと
もに、割れた破片が製造工程を汚染するおそれもあった。
特開 2008-213401号公報(特許文献6)には、このようなアクリル系樹脂フィルムの割
れやすさを利用して、溶融押出により製造されるアクリル系樹脂フィルムの機械的な押出
し方向(MD)の衝撃吸収エネルギーと、MDに直交する方向(TD)の衝撃吸収エネル
ギーとの差を小さくすることにより、MDで折り曲げてもTDで折り曲げても、容易に不
要部分を破断除去できるようにすることが提案されている。すなわち、溶融押出により製
造されるアクリル系樹脂フィルムは、押出し方向に配向することから、MDに比べてTD
のほうが割れにくいところ、この文献では、MDを長さ方向とする試験片のシャルピー衝
撃試験(この場合はTDで割れることになる)による衝撃吸収エネルギーの測定値を50
〜150kJ/m2とすることが提案されている。具体的には、適度な粒径を有するアクリル
系ゴム粒子が適量配合されたアクリル樹脂を溶融押出してフィルム化することにより、あ
るいは、適度な粒径を有するアクリル系ゴム粒子が適量配合されたアクリル樹脂を表層と
し、それよりゴム粒子の配合量が少ないか又はゴム粒子が配合されていないアクリル樹脂
を中間層とする三層構成とすることにより、TDの衝撃吸収エネルギーが上記の如く50
〜150kJ/m2の範囲に入り、MDの衝撃吸収エネルギーもその範囲内でTDと同じか又
はTDよりもやや小さくなるようにしたアクリル系樹脂フィルムが実現されている。
しかしながら現実には、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値がMD及び
TDのいずれか一方で50kJ/m2を下回るアクリル系樹脂フィルムを偏光板の保護フィル
ムとする場合もある。また、表面処理が施された樹脂フィルムを偏光板の保護フィルムと
することもあるが、このように表面処理が施された樹脂フィルムの場合、特に表面処理が
施されたアクリル系樹脂フィルムの場合には、一層割れやすくなり、偏光フィルムに貼合
するときの保護フィルムの割れ防止が大きな課題となっていた。
特開2007−25008号公報 特開2007−41563号公報 特開2007−52404号公報 特開2004−245925号公報 特開2010−209126号公報 特開2008−213401号公報
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、そ
れ自体ではシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が小さく、偏光フィルムを
はじめとする他のフィルムに貼合する際、割れやすい基材フィルムであっても、そこに表
面プロテクトフィルムを貼合することによって割れにくくし、偏光フィルムをはじめとす
る他のフィルムに貼合する作業が安定的に行えるようにしたフィルムを提供することにあ
る。本発明のもう一つの目的は、たとえ基材フィルムに割れが生じても、その破片の飛散
を抑制することが可能なフィルムを提供することにある。
本発明のもう一つ別の目的は、割れにくく、またたとえ割れても飛散しにくい保護フィ
ルムを用いることで、生産安定性を確保した偏光板を提供し、さらにはその有利な製造方
法を提供することにある。
本発明者らは、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2未満の
基材フィルムに表面プロテクトフィルムを貼合することにより、貼合された状態では格段
に割れにくくなることを見出し、この知見をもとにさらに種々の検討を加えて、本発明を
完成するに至った。
すなわち本発明によれば、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ
/m2未満の基材フィルムに表面プロテクトフィルムが貼合されており、貼合された状態で
のシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2以上である表面プロテ
クトフィルム付きフィルムが提供される。
この表面プロテクトフィルム付きフィルムにおいて、一つの好ましい形態では、上記の
基材フィルムは、アクリル系樹脂で構成される。もう一つの見地から好ましい形態では、
上記の基材フィルムは、その片面に表面処理が施されており、その表面処理された面に上
記の表面プロテクトフィルムが貼合されている。アクリル系樹脂フィルムに表面処理が施
されている場合、そのようなフィルムは一層割れやすくなることから、その表面処理され
た面に上記の表面プロテクトフィルムを貼合する形態は、特に有効である。
これらの表面プロテクトフィルム付きフィルムにおいて、この表面プロテクトフィルム
は、ポリエステル系樹脂フィルムの片面に粘着剤層を有するものであり、その粘着剤層側
で前記基材フィルムに貼合されていることが好ましい。特に、その表面プロテクトフィル
ムは、基材フィルムに対して0.03N/25mm以上0.15N/25mm以下の密着力を有
することが、基材フィルムの割れを防止し、その基材フィルム側を他の層、例えば偏光フ
ィルムに貼った後、さらにいくつかの工程を経て、最終的にはその表面プロテクトフィル
ムが基材フィルムから容易に剥がせるようにする観点から有利である。
また本発明によれば、上記したいずれかの表面プロテクトフィルム付きフィルムが、そ
の基材フィルム側で偏光フィルムに貼合されている表面プロテクトフィルム付き偏光板も
提供される。
さらに本発明によれば、一軸延伸され、当該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光フィ
ルムに基材フィルムを貼り合わせて偏光板を製造する方法も提供され、この方法において
は、上記の基材フィルムは、それ自体ではシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギー
の値が50kJ/m2未満であり、その基材フィルムに表面プロテクトフィルムを貼合して、
貼合された状態でのシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2以上
である表面プロテクトフィルム付きフィルムを作製し、次いでその表面プロテクトフィル
ム付きフィルムの基材フィルム側を上記の偏光フィルムに貼り合わせる。
本発明の表面プロテクトフィルム付きフィルムは、それを構成する基材フィルム自体で
は脆くて割れやすいものであるが、そこに表面プロテクトフィルムを貼合することにより
割れにくくし、他の層、例えば偏光フィルムに貼り合わせるときの生産安定性を高めるこ
とができる。
また、本発明の表面プロテクトフィルム付き偏光板は、上記の表面プロテクトフィルム
付きフィルムがその基材フィルム側で偏光フィルムに貼り合わされているので、基材フィ
ルムの割れが有効に防止されたものとなる。さらに本発明の方法によれば、かかる表面プ
ロテクトフィルム付き偏光板が、高い生産安定性をもって工業的有利に製造できる。
本発明に係る表面プロテクトフィルム付きフィルムの好ましい形態を示す断面模式図である。 本発明に係る表面プロテクトフィルム付き偏光板の好ましい形態を示す断面模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、図1に断面模式図で示すように、基材フ
ィルム12に表面プロテクトフィルム14を貼合して、表面プロテクトフィルム付きフィ
ルム10とする。この基材フィルム12は、偏光板の保護フィルムとして好適に用いられ
るものである。
[基材フィルム]
基材フィルム12を構成する樹脂材料は、透光性であれば特に限定されない。かかる樹
脂材料の例を挙げると、メタクリル酸メチル系樹脂を代表例とするアクリル系樹脂、ポリ
オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ア
クリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共
重合樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ
アセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ
エステル系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンテレフタレ
ート系樹脂)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹
脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂な
どがある。これらの樹脂は、透明性や偏光フィルムとの接着性を阻害しない範囲で、添加
物を含有することができる。特に、アクリル系樹脂を用いて製膜したアクリル系樹脂フィ
ルムは、透湿度が低いため、耐湿熱性に優れ、偏光フィルムの保護フィルムとして用いる
ことに優位性が見込まれる。
〈アクリル系樹脂フィルム〉
アクリル系樹脂は、通常、メタクリル酸アルキルを主体とする重合体である。具体的に
は、メタクリル酸アルキルの単独重合体又はメタクリル酸アルキルを2種以上用いた共重
合体であってもよいし、メタクリル酸アルキル50重量%以上とメタクリル酸アルキル以
外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。メタクリル酸アルキルとしては
通常、そのアルキル基の炭素数が1〜4のものが用いられ、なかでもメタクリル酸メチル
が好ましく用いられる。
また、メタクリル酸アルキル以外の単量体は、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結
合を有する単官能単量体であってもよいし、分子内に2個以上の重合性炭素−炭素二重結
合を有する多官能単量体であってもよいが、特に単官能単量体が好ましく用いられる。そ
の例としては、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルのようなアクリル酸アルキル、スチ
レンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニト
リルのような不飽和ニトリルなどが挙げられる。共重合成分としてアクリル酸アルキルを
用いる場合、そのアルキル基は通常、炭素数1〜8程度である。アクリル系樹脂の単量体
組成は、単量体全体の量を基準にして、メタクリル酸アルキルが、好ましくは70重量%
以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、また好
ましくは99重量%以下である。
このアクリル系樹脂は、グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水物誘導体、ラクトン環
構造などの環状構造を有しないことが好ましい。グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水
物誘導体、又はラクトン環構造のような環状構造を有するアクリル系樹脂は、光学フィル
ムとして十分な機械的強度及び耐湿熱性が得られにくくなる傾向にある。換言すれば、こ
のアクリル系樹脂は、単量体が実質的にメタクリル酸アルキルのみからなるか、又はメタ
クリル酸アルキルが単量体組成の例えば70重量%以上、好ましくは90重量%以上を占
め、それと、実質的にアクリル酸アルキル、スチレン系単量体及び不飽和ニトリルから選
ばれる単量体のみとの共重合体であるのが好ましい。
このアクリル系樹脂には、ゴム弾性体粒子を配合することが、その製膜性を上げるうえ
で好ましい。このために用いるゴム弾性体粒子は、ゴム弾性を示す層を含む粒子である。
このゴム弾性体粒子は、ゴム弾性を示す層のみからなる粒子であってもよいし、ゴム弾性
を示す層とともに他の層を有する多層構造の粒子であってもよい。ゴム弾性体としては、
例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合
体、アクリル系弾性重合体などが挙げられる。なかでも、基材フィルムの表面硬度、耐光
性、及び透明性の観点から、アクリル系弾性重合体が好ましく用いられる。
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする重合体で構成することがで
きる。これは、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル
50重量%以上とそれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。アクリ
ル酸アルキルとしては通常、そのアルキル基の炭素数が4〜8のものが用いられる。アク
リル酸アルキル以外の単量体を共重合させる場合、その例としては、メタクリル酸メチル
やメタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのよ
うなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル
などの単官能単量体、また、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルの
ような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、マレイン酸ジアリルのような二塩基酸の
ジアルケニルエステル、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコー
ル類の不飽和カルボン酸ジエステルなどの多官能単量体が挙げられる。
アクリル系弾性重合体を含むゴム弾性体粒子は、アクリル系弾性重合体の層を有する多
層構造の粒子であることが好ましい。具体的には、アクリル系弾性体の外側にメタクリル
酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する2層構造のものや、さらにアクリル系弾
性体の内側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する3層構造のもの
が挙げられる。アクリル系弾性体の外側又は内側に形成される硬質の重合体層を構成する
メタクリル酸アルキルを主体とする重合体における単量体組成の例は、先にアクリル系樹
脂の例として挙げたメタクリル酸アルキルを主体とする重合体の単量体組成の例と同様で
あり、特にメタクリル酸メチルを主体とする単量体組成が好ましく用いられる。このよう
な多層構造のアクリル系ゴム弾性体粒子は、例えば特公昭 55-27576 号公報に記載の方法
により、製造することができる。
ゴム弾性体粒子は、その中に含まれるゴム弾性体層の平均粒径が10〜300nmの範囲
にあることが好ましい。これにより、接着剤を用いて偏光フィルムに貼合したときに、接
着剤層から剥がれにくい保護フィルムを得ることができる。このゴム弾性体粒子の平均粒
径は、より好ましくは50nm以上であり、またより好ましくは250nm以下である。
アクリル系弾性重合体を含有するゴム弾性体粒子の平均粒径は、次のようにして測定さ
れる。すなわち、このようなゴム弾性体粒子をアクリル系樹脂に混合してフィルム化し、
その断面を酸化ルテニウムの水溶液で染色すると、ゴム弾性体層だけが着色してほぼ円形
状に観察され、母層のアクリル系樹脂は染色されない。そこで、このようにして染色され
たフィルム断面から、ミクロトームなどを用いて薄片を調製し、これを電子顕微鏡で観察
する。そして、無作為に100個の染色されたゴム弾性体粒子を抽出し、各々の粒子径を
算出した後、その数平均値を平均粒径とする。このような方法で測定するため、得られる
ゴム弾性体の平均粒径は、数平均粒径となる。
最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、その中にアクリル系弾
性重合体が包み込まれているゴム弾性体粒子を用いた場合、それを母体のアクリル系樹脂
に混合すると、ゴム弾性体粒子の最外層が母体のアクリル系樹脂と混和する。そのため、
その断面を酸化ルテニウムで染色し、電子顕微鏡で観察すると、そのゴム弾性体粒子が、
最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体
であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である2層構造のゴム弾性
体粒子を用いた場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子
として観察され、また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、
中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の
重合体である3層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、最内層の粒子中心部分が染色
されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察
されることになる。
かかるゴム弾性体粒子は、先述した透明なアクリル系樹脂との合計量を基準に、25〜
45重量%の割合で配合されることが好ましい。ゴム弾性体粒子をこの割合で配合するこ
とにより、フィルムへの製膜性を高め、得られる基材フィルムの耐衝撃性を高め、さらに
はフィルム表面にわずかな凹凸が形成されるため、すべり性を高める効果が発現される。
アクリル系樹脂にゴム弾性体粒子を所定量配合するとともに、さらに少量の滑剤を配合
し、基材フィルムとすることもできる。滑剤を配合したほうが、アクリル系樹脂フィルム
をロール状に巻いたときの巻き締まりを防ぐことができ、それにより、巻いた状態での荷
姿が改善される。滑剤は、アクリル系樹脂フィルム表面のすべり性を向上させる機能を有
するものであればよい。そのような機能を有する化合物の例を挙げると、ステアリン酸系
化合物、アクリル系化合物、エステル系化合物などがある。なかでも、ステアリン酸系化
合物が、滑剤として好ましく用いられる。
滑剤となるステアリン酸系化合物の例を挙げると、ステアリン酸自体のほか、ステアリ
ン酸メチルやステアリン酸エチル、ステアリン酸モノグリセライドのようなステアリン酸
エステル;ステアリン酸アミド;ステアリン酸ナトリウムやステアリン酸カルシウム、ス
テアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン
酸金属塩;12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、
12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−
ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムのような
12−ヒドロキシステアリン酸とその金属塩などが挙げられる。なかでも、ステアリン酸
が好ましく用いられる。
滑剤の配合量は、上記したアクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子の合計100重量部に対
して0.01〜0.09重量部の範囲とするのが好ましい。滑剤のより好ましい配合量は、
アクリル系樹脂及びゴム弾性体粒子の合計100重量部に対して 0.03重量部以上、ま
た 0.07重量部以下である。滑剤の配合量が少ないと、フィルム表面の十分なすべり性
が得られにくくなり、巻き締まりを生じやすくなる。一方、その配合量が多すぎると、滑
剤がフィルムからブリードアウトしたり、フィルムの透明性を低下させたりするおそれが
ある。
ゴム弾性体粒子及び滑剤が配合されたアクリル系樹脂は、最終的にこれまでに説明した
組成になっていればよく、その製造方法は任意である。例えば、まずゴム弾性体粒子を製
造し、それの存在下にアクリル系樹脂の原料となる単量体を重合させ、母体のアクリル系
樹脂を生成させて、アクリル系樹脂にゴム弾性体粒子が配合された組成とし、これに滑剤
を所定量添加する方法、ゴム弾性体粒子とアクリル系樹脂とを所定割合で混合し、これに
滑剤を所定量添加して、溶融混練等により混合する方法などが挙げられる。
基材フィルム12に好適に用いられるアクリル系樹脂は、必要に応じて、蛍光増白剤、
分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤な
どの各種添加剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収する化合物である。基材フィルムを
ポリビニルアルコール系偏光フィルムの保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤を
配合することで、偏光フィルムにこの保護フィルムが貼合された偏光板の耐久性を向上さ
せる効果が得られる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾト
リアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤など、公知のものが使用で
きる。具体例を挙げると、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチ
ルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2′−
ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ
ール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フ
ェノール、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,
4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどがある。これらのなかでも、2,2′−
メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリ
アゾール−2−イル)フェノール〕は、好ましい紫外線吸収剤の一つである。紫外線吸収
剤の配合量は、基材フィルムの波長370nm以下における透過率が、好ましくは10%以
下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる範囲で選択することがで
きる。紫外線吸収剤を含有させる方法としては、紫外線吸収剤を予めアクリル系樹脂中に
配合してペレット化しておき、これを溶融押出などによってフィルムに成形する方法、溶
融押出成形時に直接、紫外線吸収剤を添加する方法などが挙げられ、いずれの方法も使用
できる。
赤外線吸収剤は、波長800nm以上の赤外線を吸収する化合物である。例えば、ニトロ
ソ化合物、その金属錯塩、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケ
ル錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、トリアリールメ
タン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、ア
ントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、カーボンブラック、酸化
インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期律表の4A族、5A族若しくは6A族に属す
る金属の酸化物、炭化物又はホウ化物などを挙げることができる。これらの赤外線吸収剤
は、赤外線(波長約800nm〜1100nmの範囲の光)全体を吸収できるように選択する
ことが好ましく、2種類以上を併用してもよい。赤外線吸収剤の配合量は、例えば、基材
フィルムの波長800nm以上における光線透過率が10%以下となるように、適宜調整す
ることができる。
〈基材フィルムの多層構成〉
基材フィルム12は、適宜多層構造とすることもできる。例えば、アクリル系樹脂にゴ
ム弾性体粒子が所定量配合され、所望によりさらに滑剤が少量配合された組成から形成さ
れる層を一つの層として、他の組成から形成される層との多層構成とすることができる。
この場合、ゴム弾性体粒子が配合されたアクリル系樹脂の層以外に存在しうる層は、その
組成に特別な限定はなく、例えば、ゴム弾性体粒子を含有しないアクリル系樹脂の層であ
ってもよいし、ゴム弾性体粒子の含有量やゴム弾性体粒子中の弾性体の平均粒径が異なる
アクリル系樹脂からなる層であってもよい。典型的には、2層又は3層構成であって、例
えば、ゴム弾性体粒子を含有するアクリル系樹脂の層/ゴム弾性体粒子を含有しないアク
リル系樹脂の層からなる2層構成や、ゴム弾性体粒子を含有するアクリル系樹脂の層/ゴ
ム弾性体粒子を含有しないアクリル系樹脂の層/ゴム弾性体粒子を含有するアクリル系樹
脂の層からなる3層構成などが挙げられる。多層構成の基材フィルムを偏光フィルムに貼
り合わせて偏光板とする場合には、ゴム弾性体粒子を含有するアクリル系樹脂から形成さ
れる層を、偏光フィルムへの貼合面とするのが好ましい。
ゴム弾性体粒子や前記した添加剤の各層における含有量を互いに異ならせてもよい。例
えば、紫外線吸収剤及び/又は赤外線吸収剤を含有する層を挟んで、紫外線吸収剤及び赤
外線吸収剤を含有しない層が積層されているような構成も採用できる。また、ゴム弾性体
粒子を含有するアクリル系樹脂からなる層における紫外線吸収剤の含有量が、ゴム弾性体
粒子を含有しないアクリル系樹脂からなる層における紫外線吸収剤の含有量よりも、多く
なるようにしてもよく、これにより、偏光板の色調を悪化させることなく、紫外線を効率
的に遮断することができ、長期使用時の偏光度の低下を防ぐことができる。
〈基材フィルムの製膜〉
基材フィルムは、溶融押出法、溶剤キャスト法など、任意の方法で製膜できる。上記し
たアクリル系樹脂フィルムをポリビニルアルコール系偏光フィルムの保護フィルムとして
用いる場合、その厚さは、通常5〜200μm 程度の範囲から任意に選択することができ
る。その厚さは好ましくは10μm以上であり、また好ましくは150μm以下、より好ま
しくは100μm 以下である。
アクリル系樹脂を用いる場合は、そのアクリル系樹脂(ゴム弾性体粒子やその他の成分
が配合されている場合を含む)を溶融押出し、2本の金属製ロールで挟み込んだ状態で製
膜する方法が好ましく採用される。この場合、金属製ロールは、鏡面ロールであることが
好ましく、これにより、表面平滑性に優れる基材フィルムを得ることができる。アクリル
系樹脂フィルムを多層構成で製造する場合は、複数種のアクリル系樹脂を多層共押出し、
製膜すればよい。
〈基材フィルムに任意に付加しうる表面処理〉
基材フィルムに表面処理することで、基材フィルム単体では持ち合わせなかった機能を
付与することができる。例えば、基材フィルムには、液晶モジュールの組立工程における
表面の擦り傷防止の観点から、ハードコート処理を施すことができる。また、帯電防止処
理などの機能性表面処理を施すこともできる。なお、この基材フィルムを偏光フィルムの
保護フィルムとして用い、偏光板を形成する場合、帯電防止機能は、この基材フィルムに
表面処理を施すことによって付与することができるほか、粘着剤層など、この基材フィル
ムが組み込まれた偏光板の他の部分に付与することもできる。基材フィルムへの機能性表
面処理としてはその他、反射防止処理や防汚処理なども挙げることができる。さらには、
視認性向上、外光の映り込み防止、プリズムシートとカラーフィルターの干渉によるモア
レ低減などの観点から、防眩処理を施すこともできる。特にアクリル系樹脂フィルムにこ
のような表面処理を施すと、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が表面処
理を施す前に比べて極端に小さくなることがあり、このようにシャルピー衝撃試験による
衝撃吸収エネルギーの値が小さい基材フィルムに対して、本発明が適用される。防眩処理
を施して防眩性フィルムとする形態については、項を改めて説明することとし、ここでは
その他の表面処理層について、順を追って説明する。
(ハードコート層)
ハードコート層は、基材フィルムの表面硬度を高める機能を有し、表面の擦り傷防止な
どの目的で設けられる。ハードコート層は、JIS K 5600-5-4:1999 「塗料一般試験方法−
第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試
験(ハードコート層が形成された基材フィルムをガラス板の上に置いて測定する)で2H
又はそれより硬い値を示すことが好ましい。かかるハードコート層を形成する材料は、一
般に、熱や光によって硬化するものである。例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エ
ポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料や、二酸化
ケイ素などの無機ハードコート材料を挙げることができる。これらのなかでも、基材フィ
ルムがアクリル系樹脂フィルムである場合は、それに対する接着力が良好であり、生産性
に優れることから、ウレタンアクリレート系及び多官能アクリレート系ハードコート材料
が好ましい。
ハードコート層は、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定
化、さらには耐熱性、帯電防止性、防眩性などの向上を図る目的で、各種フィラーを含有
することができる。またハードコート層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電
防止剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
(帯電防止層)
帯電防止層は、基材フィルムの表面に導電性を付与し、静電気による影響を抑制するな
どの目的で設けられる。帯電防止層の形成には、例えば、導電性物質(帯電防止剤)を含
有する樹脂組成物を塗布する方法が採用できる。具体的には、上述したハードコート層の
形成に用いるハードコート材料に帯電防止剤を共存させておくことにより、帯電防止性の
ハードコート層を形成することができる。
(反射防止層)
反射防止層は、外光の反射を防止するための層であり、基材フィルムの表面(外部に露
出する面)に直接、又はハードコート層などの他の層を介して設けられる。反射防止層が
設けられた基材フィルムは、波長430〜700nmの光に対する入射角5°での反射率が
2%以下であることが好ましく、とりわけ、波長550nmの光に対する同じ入射角での反
射率が1%以下であることが好ましい。
反射防止層の厚さは、0.01〜1μm程度とすることができるが、0.02〜0.5μm
の範囲がより好ましい。反射防止層は、それが設けられる層(基材フィルムやハードコー
ト層など)の屈折率よりも小さい屈折率、具体的には1.30〜1.45の屈折率を有する
低屈折率層からなるもの、無機化合物からなる薄膜の低屈折率層と無機化合物からなる薄
膜の高屈折率層とを交互に複数積層したものなどであることができる。
上記の低屈折率層を形成する材料は、屈折率の小さいものであれば特に制限されない。
例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂のような樹脂材料、樹脂中にコロイダルシリカのよう
な無機微粒子を分散させたハイブリッド材料、アルコキシシランを含むゾル−ゲル材料な
どを挙げることができる。このような低屈折率層は、重合済みのポリマーを塗布すること
によって形成してもよいし、前駆体となるモノマー又はオリゴマーの状態で塗布し、その
後重合硬化させることによって形成してもよい。また、それぞれの材料は、防汚性を付与
するために、分子内にフッ素原子を有する化合物を含むことが好ましい。
低屈折率層を形成するためのゾル−ゲル材料としては、分子中にフッ素原子を有するも
のが好適に用いられる。分子内にフッ素原子を有するゾル−ゲル材料の典型的な例を挙げ
ると、ポリフルオロアルキルアルコキシシランがある。ポリフルオロアルキルアルコキシ
シランは、例えば、式:
CF3(CF2)nCH2CH2Si(OR)3
で示される化合物であることができ、ここで、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、n
は0〜12の整数を表す。なかでも、上記式中のnが2〜6である化合物が好ましい。
ポリフルオロアルキルアルコキシシランとして具体的には、次のような化合物を挙げる
ことができる。
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、
3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルト
リメトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルト
リエトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプ
タデカフルオロデシルトリメトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプ
タデカフルオロデシルトリエトキシシランなど。
低屈折率層は、熱硬化性含フッ素化合物又は活性エネルギー線硬化性含フッ素化合物の
硬化物で構成することもできる。この硬化物は、その動摩擦係数が0.03〜0.15の範
囲にあることが好ましく、水に対する接触角が90〜120°の範囲にあることが好まし
い。硬化性含フッ素化合物として、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、
上記した3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10
−ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなど)のほか、架橋性官能基を有する含
フッ素重合体を挙げることができる。
架橋性官能基を有する含フッ素重合体は、フッ素含有モノマーと架橋性官能基を有する
モノマーとを共重合する方法によって、又はフッ素含有モノマーと官能基を有するモノマ
ーとを共重合し、次いで重合体中の官能基に架橋性官能基を有する化合物を付加させる方
法によって、製造することができる。
ここで用いるフッ素含有モノマーとしては、例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフ
ルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,
2−ジメチル−1,3−ジオキソールのようなフルオロオレフィン類、その他、(メタ)
アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類や、完全又は部分フッ素化
ビニルエーテル類などが挙げられる。
架橋性官能基を有するモノマー又は架橋性官能基を有する化合物としては、グリシジル
アクリレートやグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基を有するモノマー;アク
リル酸やメタクリル酸のようなカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシアルキルア
クリレートやヒドロキシアルキルメタクリレートのような水酸基を有するモノマー;アリ
ルアクリレートやアリルメタクリレートのようなアルケニル基を有するモノマー;アミノ
基を有するモノマー;スルホン酸基を有するモノマーなどを挙げることができる。
低屈折率層を形成するための材料は、耐擦傷性を向上させうることから、シリカ、アル
ミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウムなどの無機化合物微粒子がアルコール
溶媒に分散しているゾルが含まれるもので構成することもできる。このために用いる無機
化合物微粒子は、反射防止性の観点から屈折率の小さいものほど好ましい。かかる無機化
合物微粒子は、空隙を有するものであってもよく、特にシリカの中空微粒子が好ましい。
中空微粒子の平均粒径は、5〜2,000nm の範囲にあることが好ましく、とりわけ20
〜100nmの範囲にあることがより好ましい。ここでいう平均粒径は、透過型電子顕微鏡
観察によって求められる数平均粒径である。
(防汚層)
防汚層は、撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性などを付与するために設けられる。防汚層
を形成するための好適な材料は、フッ素含有有機化合物である。フッ素含有有機化合物と
しては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物などを挙げるこ
とができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着やスパッタリングを代表
例とする物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法などを用いることが
できる。防汚層の平均厚さは、通常1〜50nm程度、好ましくは3〜35nmである。
〈防眩性フィルム〉
基材フィルムは、その表面に防眩層を形成して、防眩性フィルムとすることができる。
すなわち防眩性フィルムは、基材フィルムとその表面に形成された微細な表面凹凸形状を
有する防眩層とからなる。防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有する層であり、好ましく
は、上述したハードコート材料から形成される。
表面に微細な凹凸形状を有する防眩層は、基材フィルムの表面に有機微粒子又は無機微
粒子を含有する塗膜を形成し、その微粒子に基づく凹凸を設ける方法や、有機微粒子又は
無機微粒子を含有するか、又は含有しない塗膜を形成した後、表面に凹凸形状が付与され
たロールに押し当てて凹凸形状を転写する方法(エンボス法とも呼ばれる)などによって
形成することができる。このような塗膜の形成は、例えば、基材フィルム表面に、硬化性
の透明樹脂に有機又は無機の微粒子が配合された組成物からなる塗布液を塗布する方法に
よって行うことができる。
(微粒子)
防眩層を形成するために微粒子を配合する場合、その微粒子は、平均粒径が 0.5〜5
μm で、透明樹脂との屈折率差が0.02〜0.2であるものを用いることが好ましい。平
均粒径及び透明樹脂との屈折率差がこの範囲にある微粒子を用いることにより、効果的に
ヘイズを発現させることができる。この微粒子の平均粒径は、動的光散乱法などによって
求めることができる。この場合の平均粒径は、重量平均粒径となる。
防眩層を形成するための無機微粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、
アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、
マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを用いることができる。また、有機微粒
子としては、一般に樹脂粒子が用いられ、例えば、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル
酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリ
レート粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリイミド粒子などが挙げられる。
(防眩層の形成に用いる透明樹脂)
無機微粒子又は有機微粒子を分散させるための透明樹脂は、高硬度(ハードコート)と
なる材料から選定されることが好ましい。かかる透明樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬
化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性や得られる被膜の硬度
などの観点から、光硬化性樹脂が好ましく使用される。光硬化性樹脂としては、一般に多
官能アクリレートが用いられる。その例を挙げると、トリメチロールプロパンのジ−又は
トリ−アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ−又はテトラ−アクリレート、分子内
に水酸基を少なくとも1個有するアクリレートとジイソシアネートとの反応生成物である
多官能ウレタンアクリレートなどがある。これらの多官能アクリレートは、それぞれ単独
で、又は必要に応じて2種以上組み合わせて用いることができる。
また、多官能ウレタンアクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、及び水酸基を
2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーの混合物を光硬化性樹脂とす
ることもできる。この光硬化性樹脂を構成する多官能ウレタンアクリレートは、例えば、
(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソ
シアネートを用いて製造される。具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)ア
クリル酸エステルとポリオールから、分子内に水酸基を少なくとも1個有するヒドロキシ
(メタ)アクリレートを調製し、これをジイソシアネートと反応させることにより、多官
能ウレタンアクリレートを製造することができる。このようにして製造される多官能ウレ
タンアクリレートは、先に掲げた光硬化性樹脂自体ともなるものである。その製造にあた
っては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種を
用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、ポリオール及びジイソシアネー
トも同様に、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能ウレタンアクリレートの一つの原料となる(メタ)アクリル酸エステルは、(メ
タ)アクリル酸の鎖状又は環状アルキルエステルであることができる。その具体例として
は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アク
リレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートのようなア
ルキル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのようなシク
ロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能ウレタンアクリレートのもう一つの原料となるポリオールは、分子内に水酸基を
少なくとも2個有する化合物である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオ
ペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリ
メチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキ
シピバリン酸のネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4
−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビ
スフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加
ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3−
メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリト
ール、トリペンタエリスリトール、グルコース類などを挙げることができる。
多官能ウレタンアクリレートのさらにもう一つの原料となるジイソシアネートは、分子
内に2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、芳香族、脂肪族又は脂環
式の各種ジイソシアネートを用いることができる。具体例としては、テトラメチレンジイ
ソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4
−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタ
レンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルジイソシアネート、
キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジ
フェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのうち芳香環を有するジイソシアネートの
核水添物などを挙げることができる。
多官能ウレタンアクリレートとともに上記した光硬化性樹脂を構成するポリオール(メ
タ)アクリレートは、分子内に少なくとも2個の水酸基を有する化合物(すなわち、ポリ
オール)の(メタ)アクリレートである。その具体例としては、ペンタエリスリトールジ
(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリス
リトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ
ート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのポ
リオール(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて用いて
もよい。ポリオール(メタ)アクリレートは、好ましくは、ペンタエリスリトールトリア
クリレート及び/又はペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む。
さらに、これらの多官能ウレタンアクリレート及びポリオール(メタ)アクリレートと
ともに、光硬化性樹脂を構成する水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アク
リルポリマーは、一つの構成単位中に水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものであ
る。例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを構成単位として含む
ポリマーや、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとともに、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマーなどが挙げられる。
以上、例示したようなアクリル系の光硬化性樹脂を用いることにより、基材フィルムと
の密着性が向上するとともに、機械的強度が向上し、表面の傷付きを効果的に防止できる
防眩性フィルムを得ることができる。
(光重合開始剤)
このような光硬化性樹脂は、光重合開始剤と組み合わせて、光硬化性樹脂組成物とされ
る。光重合開始剤には、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、
アミン系、ホスフィンオキサイド系など、各種のものがある。アセトフェノン系光重合開
始剤に分類される化合物の例を挙げると、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェ
ノン(別名ベンジルジメチルケタール)、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−(4
−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒド
ロキシシクロヘキシル フェニル ケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メ
チルチオフェニル)プロパン−1−オンなどがある。ベンゾフェノン系光重合開始剤に分
類される化合物の例を挙げると、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′
−ジメトキシベンゾフェノンなどがある。ベンゾインエーテル系光重合開始剤に分類され
る化合物の例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルなど
がある。アミン系光重合開始剤に分類される化合物の例を挙げると、N,N,N′,N′
−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(別名ミヒラーズケトン)などがあ
る。ホスフィンオキサイド系光重合開始剤の例を挙げると、2,4,6−トリメチルベン
ゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどがある。ほかに、キサントン系化合物やチオ
キサント系化合物なども、光重合開始剤として知られている。
これらの光重合開始剤は市販されている。代表的な市販品の例を商品名で挙げると、ス
イスのチバ社から販売されている“イルガキュアー 907”及び“イルガキュアー 184”、
ドイツのBASF社から販売されている“ルシリン TPO”などがある。
(光硬化性樹脂組成物に配合されるその他の成分)
光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶媒が添加される。この場合は、例えば、酢酸
エチル、酢酸ブチルなど、組成物を構成する各成分を溶解しうる任意の有機溶媒を用いる
ことができる。もちろん、2種以上の有機溶媒を混合して用いることもできる。
また光硬化性樹脂組成物は、レベリング剤を含有してもよく、例えば、フッ素系又はシ
リコーン系のレベリング剤を挙げることができる。シリコーン系のレベリング剤には、反
応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、
ポリメチルアルキルシロキサンなどがある。シリコーン系レベリング剤のなかでも好まし
いものは、反応性シリコーン及びシロキサン系のレベリング剤である。反応性シリコーン
からなるレベリング剤を用いれば、ハードコート層表面に滑り性が付与され、優れた耐擦
傷性を長期間持続させることができる。また、シロキサン系のレベリング剤を用いれば、
膜成形性を向上させることができる。
(防眩層の形成)
防眩層の形成に上記のような光硬化性樹脂を用いる場合、以上説明した光硬化性樹脂組
成物を構成する各成分に無機又は有機の微粒子を分散させた後、この樹脂組成物を基材フ
ィルム上に塗布し、光を照射することにより、透明樹脂中に微粒子が分散されたハードコ
ート層(防眩層)を形成することができる。
一方、エンボス法により微細表面凹凸形状を有する防眩層を形成する場合には、微細凹
凸形状が形成された金型を用いて、金型の形状を基材フィルム上に形成された樹脂層に転
写すればよい。エンボス法により微細表面凹凸形状を形成する場合、凹凸形状が転写され
る樹脂層は、無機又は有機の微粒子を含有していてもよいし、含有しなくてもよい。エン
ボス法による凹凸形状の転写には、活性エネルギー線硬化性樹脂が好適に用いられる。特
に好ましくは、紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が採用される。
UVエンボス法では、基材フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層を形成し、その紫外線
硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が紫外線
硬化性樹脂層に転写される。具体的には、基材フィルム上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、
塗工した紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で、基材フィルム側から紫外
線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成さ
れた基材フィルムを金型から剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化性樹脂層に転
写する。紫外線硬化性樹脂の種類は特に制限されず、上述した各種のものを用いることが
できる。また、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光重合開始剤を適宜選択することにより、
紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いてもよい。
防眩層の厚さは特に限定されないが、一般には2μm以上30μm以下であり、好ましく
は3μm以上、また好ましくは20μm以下である。防眩層が薄すぎると、十分な硬度が得
られず、表面が傷付きやすくなる傾向にあり、一方で厚すぎると、割れやすくなったり、
防眩層の硬化収縮によりフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向にある。
防眩性フィルムは上述のとおり、防眩層によりヘイズが付与される。そのヘイズ値は、
5〜50%の範囲にあることが好ましい。ヘイズ値が小さすぎると、十分な防眩性能が得
られず、画面に外光の映り込みが生じやすくなる。一方、そのヘイズ値が大きすぎると、
外光の映り込みは低減できるものの、黒表示の画面のしまりが低下してしまう。ヘイズ値
は、全光線透過率に対する拡散透過率の割合であり、JIS K 7136:2000 「プラスチック−
透明材料のヘーズの求め方」に準じて測定される。
[フィルムの衝撃吸収エネルギー]
本発明では、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2未満の基
材フィルム12に表面プロテクトフィルム14を貼合し、貼合された状態でのシャルピー
衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2以上となるようにする。ここで、シ
ャルピー衝撃試験とは、JIS K 7111:2006 「プラスチック−シャルピー衝撃特性の求め方
−第1部:非計装化衝撃試験」に規定されているプラスチックの衝撃吸収エネルギーを測
定する手法である。シャルピー衝撃試験では、試験片を打ち抜くハンマー(振り子)が、
試験片をその長さ方向に直交する幅方向に打ち抜くようになっている。したがって、フィ
ルムの機械的な押出し方向(MD)を長辺とする試験片は、MDと直交する方向(TD)
の衝撃吸収エネルギーを与え、フィルムのTDを長辺とする試験片は、MDの衝撃吸収エ
ネルギーを与える。このように、長辺方向がフィルム内で直交する2種類の試験片を用い
ることにより、フィルムのMD及びTDの衝撃吸収エネルギーの値を測定することができ
る。なお、このJISでは、ノッチ付き試験片を用いる場合とノッチなし試験片を用いる
場合について規定されているが、ここではフィルムを対象とするので、ノッチなし試験片
を採用する。
より具体的には、フィルムの機械的な流れ方向(MDであって、押出フィルムの場合は
押出し方向)を長さ方向とする試験片についてシャルピー衝撃試験を行うと、試験片は、
その長さ方向に対して直交する打ち抜き線に沿ってハンマーで打ち抜かれる。このときの
打ち抜き線はMDと直交する方向、すなわちTDと平行であり、よってこの試験片を用い
ると、フィルムのTDの衝撃吸収エネルギーを測定することができる。一方、フィルムの
TDを長さ方向とする試験片についてシャルピー衝撃試験を行うと、試験片は、その長さ
方向に対して直交する打ち抜き線に沿ってハンマーで打ち抜かれる。このときの打ち抜き
線はMDと平行であり、よってこの試験片を用いると、フィルムのMDの衝撃吸収エネル
ギーを測定することができる。
シャルピー衝撃試験では、上記JIS K 7111:2006 に準拠して、試験片の衝撃吸収エネル
ギーを測定する。具体的には例えば、厚さ300μm 以下のフィルムから幅5〜15mm程
度、長さ70〜90mm程度の試験片を打ち抜くか又は切り出す。次に、ハンマーで打ち抜
くときの衝撃により試験片が動かないように、試験片の長辺方向両端を支持台に固定し、
シャルピー衝撃試験機にて試験片の破断に要するエネルギー(すなわち衝撃吸収エネルギ
ー)を測定する。この衝撃吸収エネルギーが大きいほど、試験片、すなわちフィルムが割
れにくいことを意味する。
本発明においては、上述したとおり、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの
値が50kJ/m2未満の基材フィルムを対象とする。ここでいう「シャルピー衝撃試験によ
る衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2未満の基材フィルム」とは、MD及びTDの少な
くとも一方における衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2未満のものである。もちろん、
MD及びTDとも衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2未満のフィルムも、有利に対象と
することができる。このようにシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50
kJ/m2未満のフィルムは、それを他のフィルムに積層するときに割れやすく、そのまま用
いたのでは生産効率が低下することになる。
そこで、このような割れやすい基材フィルムに対して、表面プロテクトフィルムを貼合
することにより、シャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が、MD及びTDと
も50kJ/m2以上になるようにする。これにより、他のフィルム、例えば偏光フィルムに
貼り合わせるときに割れるおそれがなくなり、偏光板などの積層フィルムを安定的に製造
できるようになる。
[表面プロテクトフィルム]
表面プロテクトフィルムには、一般に、その樹脂フィルム自体が他の物体に対して粘着
性を有する自己粘着性のものと、支持フィルムの表面に粘着剤層が形成されたものという
二種類がある。これらのなかでは、基材フィルムへの密着性の観点から、図1に断面模式
図で示すように、支持フィルム15の表面に粘着剤層16が形成されたものを表面プロテ
クトフィルム14とし、その粘着剤層16を基材フィルム12に貼合する形態が好ましく
用いられる。また、表面処理が施された基材フィルムを用いる場合、自己粘着性の表面プ
ロテクトフィルムは一般に、表面処理面に対する密着性が弱く、浮き剥がれが生じやすく
なる。この面からも、支持フィルム15の表面に粘着剤層16が形成されている表面プロ
テクトフィルム14を用いることが好ましい。
表面プロテクトフィルム14を構成する支持フィルム15は、透明樹脂からなるもので
あれば特に限定されない。かかる透明樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルに
代表されるアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン
系樹脂、ポリブチレンテフタレートやポリエチレンテフタレートに代表されるポリエステ
ル系樹脂などが挙げられる。特に、易検品性及びシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネ
ルギーの値の観点から、ポリエステル系樹脂を支持フィルム15とすることが好ましい。
基材フィルム12の厚みは特に制限されないが、加工性の観点から10μm 以上200
μm 以下の範囲とすることが好ましく、さらには15μm 以上100μm 以下、とりわけ
20μm 以上85μm 以下の範囲とすることがより好ましい。基材フィルム12が薄すぎ
ると、表面保護性やシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が小さくなる。一
方で、それがあまり厚すぎると、取扱い性やコスト面で不利になりやすい。
表面プロテクトフィルム14は、そのヘイズ値が5%以下であることが好ましく、より
好ましくは3%以下である。表面プロテクトフィルム14のヘイズが大きいと、易検品性
が損なわれるため、好ましくない。
表面プロテクトフィルム14は、基材フィルム12に対する密着力が 0.03N/25
mm以上0.2N/25mm以下の範囲にあることが好ましく、さらには、0.03N/25mm
以上0.15N/25mm以下の範囲、とりわけ 0.05N/25mm以上0.15N/25mm
以下の範囲にあることがより好ましい。基材フィルム12に対する密着力が小さいと、表
面プロテクトフィルム14の浮き(トンネリングとも呼ばれる)や剥がれが生じやすく、
基材フィルム12が破断したときに飛散してしまい、製造工程を汚染する可能性がある。
一方、基材フィルム12に対する密着力があまり大きくなると、表面プロテクトフィルム
14の剥離が困難になる。
表面プロテクトフィルム14の基材フィルム12に対する密着力は、次のようにして測
定することができる。すなわち、表面プロテクトフィルム14が基材フィルム12に貼合
された状態の表面プロテクトフィルム付きフィルム10を、機械的な流れ方向(MD)を
長辺として、幅が25mm又はその倍数で、長さが約150mmとなるように裁断して試験片
を作製し、その基材フィルム12側を、粘着剤を用いてガラス板に貼合し、固定する。次
に、引張試験機を用いて、表面プロテクトフィルム14の長さ方向端部(25mm幅又はそ
の倍数の幅を有する一辺)をつかみ、JIS K 6854-2:1999 「接着剤−はく離接着強さ試験
方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分にて180°剥
離試験を行う。そして、得られる力−つかみ移動距離曲線から最初の25mmつかみ移動距
離を除いた剥離長さにわたる平均剥離力を求める。この値が、この試験片における表面プ
ロテクトフィルム14の幅あたりの基材フィルム12に対する密着力となる。幅25mmの
試験片を用いた場合には、この値がそのまま、基材フィルム12に対する密着力(単位は
N/25mm)となる。一方、幅が25mmの倍数である試験片を用いた場合には、得られる
平均剥離力を25mm幅あたりに換算すればよい。例えば、100mm幅(25mmの4倍)の
試験片を用いた場合は、得られる平均剥離力に1/4を乗じて、表面プロテクトフィルム
14の基材フィルム12に対する密着力(N/25mm)とする。
表面プロテクトフィルム14は、基材フィルム12の少なくともいずれか一方の面に貼
合されていればよく、基材フィルム12の両面に貼合されてもよい。表面プロテクトフィ
ルム14を基材フィルム12の両面に貼合する場合、2枚の表面プロテクトフィルムは、
同種でも異種でもよいが、同種の表面プロテクトフィルムを用いるほうが、コスト的には
有利である。基材フィルム12の両面に表面プロテクトフィルムを貼った場合は、その後
偏光フィルムに貼合する直前に、偏光フィルムへの貼合面となる面に貼ってある表面プロ
テクトフィルムを剥がせばよい。
表面プロテクトフィルム14は、その幅が、基材フィルム12の幅と同じか、又は基材
フィルムの幅より狭いほうが好ましい。飛散防止の観点からは、基材フィルム12の幅と
同じにするのがより好ましく
[偏光板]
図1を参照して以上説明した表面プロテクトフィルム付きフィルム10は、図2に断面
模式図で示すように、その基材フィルム12側を偏光フィルム22に貼合して、表面プロ
テクトフィルム付き偏光板20とすることができる。この貼合には一般に接着剤が用いら
れ、図2では接着剤層23を介して貼合されている。表面プロテクトフィルム付きフィル
ム10の基材フィルム12側及び偏光フィルム22のいずれかの接着面に、接着剤を塗工
した後、両者を貼合すればよい。
偏光フィルム22の表面プロテクトフィルム付きフィルム10が貼合される面と反対側
の面には、やはり保護フィルムとなる透明樹脂フィルム26を貼合することができる。透
明樹脂フィルム26は、基材フィルム12と同じ材質のものであってもよいし、異なる材
質のものであってもよい。透明樹脂フィルム26も同様に、接着剤を用いて偏光フィルム
22に貼合することができ、図2ではやはり、接着剤層24を介して両者が貼合されてい
る。
〈偏光フィルム〉
偏光板20を構成する偏光フィルム22は、公知の方法に従って、ポリビニルアルコー
ル系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色
素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニ
ルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処
理後に水洗する工程を経て製造されるものであることができる。こうして得られる偏光フ
ィルムは、上記の一軸延伸された方向に吸収軸を有するものとなる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用い
ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢
酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げら
れる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オ
レフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリル
アミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましく
は98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、
例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども
用いることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常 1,000〜
10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィル
ムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるもの
ではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は特に
制限されないが、例えば、10μm〜150μm程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色前、染色と
同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸
延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で
一軸延伸を行うこともできる。
一軸延伸は、周速度の異なる離間したロール間を通すことにより行ってもよいし、熱ロ
ールで挟むことにより行ってもよい。また、この一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延
伸であってもよいし、水や有機溶剤などの溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィ
ルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍
程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素
を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行うこ
とができる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビ
ニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好
ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する
水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部
程度である。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量
部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この
水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染
料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用
される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1
×10-4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10-3〜1重量部程度である。この水
溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有してもよい。染色に用いる二
色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間
(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィ
ルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により行うことができる。ホウ酸含有水溶液にお
けるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは
5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶
液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウ
ムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜
12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度であ
り、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含
有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは
60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗
処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する
ことにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度である。また浸
漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠
赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度
であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度で
あり、好ましくは120〜600秒である。
乾燥処理により、偏光フィルムの水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、
通常5〜20重量%であり、好ましくは8〜15重量%である。水分率が5重量%を下回
ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光フィルムがその乾燥後に損傷したり、破断し
たりすることがある。一方、水分率が20重量%を超えると、偏光フィルムの熱安定性が
不足する傾向にある。
こうして得られる二色性色素が吸着配向している偏光フィルムの厚みは、通常5〜40
μm 程度とすることができる。
〈偏光フィルムのもう一方の面に貼合される透明樹脂フィルム〉
図2を参照して先に説明したとおり、偏光フィルム22の基材フィルム12が貼合され
る面と反対側の面には、透明樹脂フィルム26を貼合することができる。透明樹脂フィル
ム22は、偏光板の保護フィルム又は位相差フィルムとして機能するものであれば特に限
定されないが、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、
ポリエチレンテレフタレートフィルム、オレフィン系樹脂フィルムなどで構成することが
できる。中でも、オレフィン系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
(オレフィン系樹脂)
オレフィン系樹脂とは、例えば、エチレンやプロピレンのような鎖状オレフィンモノマ
ー、又はノルボルネンや他のシクロペンタジエン誘導体のような環状オレフィンモノマー
を、重合用触媒を用いて重合して得られる樹脂である。
鎖状オレフィンモノマーから得られるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂
やポリプロピレン系樹脂が挙げられる。中でも、プロピレンの単独重合体であるポリプロ
ピレン系樹脂が好ましい。また、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマー
を、通常1〜20重量%の割合で、好ましくは3〜10重量%の割合で共重合させたポリ
プロピレン系共重合樹脂も好ましい。
プロピレンと共重合可能なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、又は1−ヘキ
センが好ましい。中でも、透明性や延伸加工性に比較的優れることから、エチレンが好ま
しく用いられ、エチレンを1〜20重量%、とりわけ3〜10重量%の割合で共重合させ
たポリプロピレン系共重合樹脂は、好ましいものの一つである。エチレンの共重合割合を
1重量%以上とすることで、透明性や延伸加工性を上げる効果が現れる。一方、その割合
が20重量%を超えると、樹脂の融点が下がり、保護フィルム又は位相差フィルムに要求
される耐熱性が損なわれることがある。
ポリプロピレン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞ
れ商品名で、株式会社プライムポリマーから販売されている“プライムポリプロ”、日本
ポリプロ株式会社から販売されている“ノバテック”及び“ウィンテック”、住友化学株
式会社から販売されている“住友ノーブレン”、サンアロマー株式会社から販売されてい
る“サンアロマー”などが挙げられる。
環状オレフィンモノマーを重合させてなるオレフィン系樹脂は、一般に、環状オレフィ
ン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、又はノルボルネン系樹脂とも称される。ここでは環
状オレフィン系樹脂と称する。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエンとオレフィン類とからデ
ィールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして
開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエ
ンと、オレフィン類又は(メタ)アクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応
によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス
重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセ
ン、それらの誘導体類、又はその他の環状オレフィンモノマーを2種以上用いて同様に開
環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;前記ノルボルネン、
テトラシクロドデセン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン
と、ビニル基を有する脂肪族又は芳香族化合物とを付加共重合させて得られる樹脂などが
挙げられる。
環状オレフィン系樹脂も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞ
れ商品名で、ドイツの TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラ
スチックス株式会社から販売されている“TOPAS ”(トーパス)、JSR株式会社から製
造・販売されている“アートン”、日本ゼオン株式会社から製造・販売されている“ゼオ
ノア”及び“ゼオネックス”、三井化学株式会社から製造・販売されている“アペル”な
どが挙げられる。
(オレフィン系樹脂フィルム)
前記の鎖状オレフィン系樹脂又は環状オレフィン系樹脂を製膜してフィルム化すること
により、偏光フィルム22の一方の面に貼合される透明樹脂フィルム26とすることがで
きる。フィルム化する方法は特に限定されないが、先に述べたアクリル系樹脂フィルムの
製膜と同様、溶融押出製膜法が好ましく採用される。
オレフィン系樹脂フィルムも、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、ポ
リプロピレン系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、FILMAX社から販売されてい
る“FILMAX CPP フィルム ”、サン・トックス株式会社から販売されている“サントック
ス”、東セロ株式会社から販売されている“トーセロ”、東洋紡績株式会社から販売され
ている“東洋紡パイレンフィルム”、東レフィルム加工株式会社から販売されている“ト
レファン”、日本ポリエース株式会社から販売されている“ニホンポリエース”、フタム
ラ化学株式会社から販売されている“太閤FC”などが挙げられる。また、環状オレフィ
ン系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼ
オノアフィルム”、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”などが挙げ
られる。
透明樹脂フィルム26には、その表面に光学機能性フィルムを積層したり、光学機能層
をコーティングしたりすることもできる。このような光学機能性フィルム及び光学機能層
としては、例えば、易接着層、導電層、ハードコート層などが挙げられる。
(位相差フィルム)
以上説明したオレフィン系樹脂フィルムを延伸し、フィルムに屈折率異方性を持たせる
ことにより、位相差フィルムとすることができる。延伸方法は、必要とされる屈折率異方
性に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、縦一軸延伸、横一軸延伸
又は縦横逐次二軸延伸が採用される。
オレフィン系樹脂は正の屈折率異方性を有し、応力が加えられた方向で最も屈折率が大
きくなるので、それが一軸延伸されたフィルムは、通常nx>ny≒nz の屈折率異方性を
与える。ここで、nx はフィルムの面内遅相軸方向(面内で屈折率が最大になる方向で、
正の屈折率異方性を有する樹脂では延伸方向)の屈折率であり、ny はフィルムの面内進
相軸方向(面内で進相軸と直交する方向)の屈折率であり、nz はフィルムの法線方向の
屈折率である。オレフィン系樹脂が逐次二軸延伸されたフィルムは、通常nx>ny>nz
の屈折率異方性を与える。
また、所望の屈折率特性を付与するために、熱収縮性フィルムを目的とするフィルムに
貼合し、延伸加工に代えて、又は延伸加工とともにフィルムを収縮させる方法により位相
差フィルムを製造することもできる。この操作は通常、屈折率異方性がnx>nz>ny
はnz>nx≧ny となる位相差フィルムを得るために行われる。
オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムも、市販品を容易に入手することが可能であ
る。例えば、環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムなら、それぞれ商品名で、日
本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”、JSR株式会社から販売さ
れている“アートンフィルム”、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ
位相差フィルム”などが挙げられる。
[偏光フィルムと基材フィルムの接着及び偏光フィルムと透明樹脂フィルムの接着]
表面プロテクトフィルム付きフィルム10を構成する基材フィルム12と偏光フィルム
22との貼合、また偏光フィルム22と透明樹脂フィルム26との貼合には、先述のとお
り接着剤が用いられる。貼合に先立って、表面プロテクトフィルム付きフィルム10を構
成する基材フィルム12の偏光フィルム22への貼合面及び偏光フィルム22の基材フィ
ルム12への貼合面の少なくとも一方、並びに偏光フィルム22の透明樹脂フィルム26
への貼合面及び透明樹脂フィルム26の偏光フィルム22への貼合面のうちの少なくとも
一方には、コロナ放電処理、プラズマ照射処理、電子線照射処理、その他の表面活性化処
理を施しておくことが好ましい。
図2に示した接着剤層23,24を形成するための接着剤は、二つの部材に対して接着
力を発現するものから、任意に選択して用いることができる。典型的には、水系接着剤、
すなわち、接着剤成分を水に溶解又は接着剤成分を水に分散させたものや、活性エネルギ
ー線の照射により硬化する成分を含む活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができ
る。生産性の観点からは、活性エネルギー線硬化性接着剤が好ましく用いられる。
まず水系接着剤について説明すると、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹
脂やウレタン樹脂を用いた組成物が、好ましい接着剤として挙げられる。
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、そのポリビニル
アルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコー
ルのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニル
アルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコー
ルのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。接着剤成分として
ポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、その接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂
の水溶液として調製されることが多い。接着剤水溶液におけるポリビニルアルコール系樹
脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量
部である。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、接着性を向上させるため
に、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分又は架橋剤を添加することが
好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレン
テトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反
応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリア
ミドポリアミンエポキシ樹脂を挙げることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキ
シ樹脂の市販品としては、例えば、住化ケムテックス株式会社から販売されている“スミ
レーズレジン 650”及び“スミレーズレジン 675”、日本PMC株式会社から販売されて
いる“WS-525”などがあり、これらを好適に用いることができる。これら硬化性成分又は
架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100
重量部、好ましくは1〜50重量部である。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小
さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなる傾向にある。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合は、適当な接着剤組成物の例とし
て、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物と
の混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂
は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親
水成分)が導入されたものである。アイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに
直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエ
ステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光フィルムと保護フィルムとの接着に用いるこ
とは、例えば、特開 2005-70139 号公報、特開 2005-70140 号公報、特開 2005-181817号
公報などにより公知である。
一方、活性化エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、それを構成する活性エネルギー
線の照射により硬化する成分(以下、単に「硬化性成分」と呼ぶことがある)は、エポキ
シ化合物、オキタセン化合物、アクリル系化合物などでありうる。エポキシ化合物やオキ
タセン化合物のようなカチオン重合性の化合物を用いる場合には、カチオン重合開始剤が
配合される。また、アクリル系化合物のようなラジカル重合性化合物を用いる場合にはラ
ジカル重合開始剤が配合される。なかでも、エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接
着剤が好ましく、とりわけ、飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ
化合物を硬化性成分の一つとする接着剤が好ましい。また、それにオキセタン化合物を併
用するのも有効である。このような、エポキシ化合物を硬化性成分の一つとし、必要に応
じてオキセタン化合物が配合された活性エネルギー線硬化性接着剤は、前記した特許文献
4(特開 2004-245925号公報)や、特許文献5(特開 2010-209126号公報)に記載されて
いる。
エポキシ化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品
名で、ジャパンエポキシレジン株式会社から販売されている“エピコート”シリーズ、
DIC株式会社から販売されている“エピクロン”シリーズ、東都化成株式会社から販売
されている“エポトート”シリーズ、株式会社ADEKAから販売されている“アデカレ
ジン”シリーズ、ナガセケムテックス株式会社から販売されている“デナコール”シリー
ズ、ダウケミカル社から販売されている“ダウエポキシ”シリーズ、日産化学工業株式会
社から販売されている“テピック”などがある。
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物も、市販品を容易に
入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、ダイセル化学工業株式会社から
販売されている“セロキサイド”シリーズ及び“サイクロマー”シリーズ、ダウケミカル
社から販売されている“サイラキュア”シリーズなどがある。
オキセタン化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商
品名で、東亞合成株式会社から販売されている“アロンオキセタン”シリーズ、宇部興産
株式会社から販売されている“ETERNACOLL”シリーズなどがある。
カチオン重合開始剤も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ
商品名で、日本化薬株式会社から販売されている“カヤラッド”シリーズ、ユニオンカー
バイド社から販売されている“サイラキュア”シリーズ、サンアプロ株式会社から販売さ
れている光酸発生剤“CPI”シリーズ、ミドリ化学株式会社から販売されている光酸発
生剤“TAZ”、“BBI”及び“DTS”、 株式会社ADEKAから販売されている
“アデカオプトマー”シリーズ、ローディア社から販売されている“RHODORSIL ”シリー
ズなどがある。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて光増感剤を含有することができる。光
増感剤を用いることで、反応性が向上し、硬化物層の機械強度や接着強度をさらに向上さ
せることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過
硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、アントラセン系化合物、ハロゲン
化合物、光還元性色素などが挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性接着剤には、その接着性を損なわない範囲で各種の添加
剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、
連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙
げられる。さらに、その接着性を損なわない範囲で、カチオン重合とは別の反応機構で硬
化する硬化性成分を配合することもできる。
以上説明した活性エネルギー線硬化性接着剤は、表面保護フィルム付きフィルム10を
構成する基材フィルム12又は偏光フィルム22の貼合面に塗布され、その塗布層を介し
て両者を貼合した後、そこに活性エネルギー線を照射して硬化され、偏光フィルム22と
基材フィルム12を接合する接着剤層23となる。また、偏光フィルム22又は透明樹脂
フィルム26の貼合面に塗布され、その塗布層を介して両者を貼合した後、そこに活性エ
ネルギー線を照射して硬化され、偏光フィルム22と透明樹脂フィルム26を接合する接
着剤層24となる。接着剤層23を形成するための接着剤、及び接着剤層24を形成する
ための接着剤は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよいが、両者を硬化させる
ための活性エネルギー線の照射は、同時に行うことが好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、例えば、波長
が1pm〜10nmのX線、波長が10〜400nmの紫外線、波長が400〜800nmの可視
光線などでありうる。中でも、利用の容易さ、並びに活性エネルギー線硬化性接着剤の調
製の容易さ、安定性及び硬化性能の点で、紫外線が好ましく用いられる。紫外線の光源に
は、例えば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀
灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀
灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて得られる接着剤層の厚さは、通常1〜50μm
程度であるが、特に1〜10μm の範囲にあることが好ましい。
[偏光板の製造方法]
図2に示した構成を代表例とする表面プロテクトフィルム付き偏光板20は、先に説明
した基材フィルム12に表面プロテクトフィルム14を貼合して、貼合された状態でのシ
ャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m2以上である表面プロテクト
フィルム付きフィルム10を作製し、次いで、その表面プロテクトフィルム付きフィルム
10の基材フィルム12側を、先に説明した偏光フィルム22に貼り合わせる方法によっ
て製造することができる。必要により、偏光フィルム22の基材フィルム12が貼合され
る面の反対側には、やはり先に説明した透明樹脂フィルム26を貼り合わせることができ
る。偏光フィルム22と基材フィルム12の貼合、また偏光フィルム22と透明樹脂フィ
ルム26との貼合には、先に説明した接着剤が用いられる。
[偏光板の用途]
図2に示した構成を代表例とする表面プロテクトフィルム付き偏光板20は、液晶セル
の視認側に貼り合わせて、液晶表示装置に用いられる液晶パネルとすることができる。液
晶セルの反対側には、別の偏光板が貼り合わされる。液晶セルへの貼合のため、透明樹脂
フィルム26の外側、すなわち偏光フィルム22への貼合面と反対側に、粘着剤層を設け
ることができる。この粘着剤層は、アクリル酸エステルを主成分とし、官能基含有アクリ
ル系単量体が共重合されたアクリル樹脂を粘着剤成分とするアクリル系粘着剤によって形
成するのが一般的である。このようにして液晶セルに貼り合わされた後は、表面プロテク
トフィルム付き偏光板20から表面プロテクトフィルム14が剥離されて、基材フィルム
12が視認側に配置された液晶パネルとなる。液晶パネルを構成する液晶セルは、この分
野で使用されている各種のものであることができる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によっ
て限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り
重量基準である。
[対照例]
(A)アクリル系樹脂フィルムの作製
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチルの重量比96/4の共重合体を、アクリル系樹
脂とした。また、最内層が、メタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重
合された硬質の重合体、中間層が、アクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレン及び
少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性体、最外層が、メタクリル酸メ
チルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質の重合体からなる三層構造の弾性
体粒子であって、中間層である弾性体までの平均粒径が240nmのものを、アクリル系弾
性重合体粒子とした。
上記のアクリル系樹脂とアクリル系弾性重合体粒子が前者/後者=70/30の重量比
で配合され、さらにそれらの合計100部あたり滑剤であるステアリン酸が 0.05部配
合されているペレットを65mmφの一軸押出機に投入し、設定温度275℃のT型ダイか
ら押出した。押出されたフィルム状溶融樹脂の両面を、45℃に温度設定された鏡面を有
する2本のポリシングロールで挟み込んで冷却し、厚さ80μm のアクリル系樹脂フィル
ムをロール状で作製した。
(A1)アクリル系樹脂フィルムのシャルピー衝撃試験
上で得られたアクリル系樹脂フィルムから、幅10mm×長さ82mmの長方形の試験片を
切り出した。試験片は、フィルムの機械的な押出し方向(MD)を長さ方向(一辺82mm
の方向)とする第一の試験片、及びMDと直交する方向(TD)を長さ方向(一辺82mm
の方向)とする第二の試験片の2種類とした。そして、ハンマーにより打ち抜くときの衝
撃で試験片が動かないように試験片の長辺方向両端を支持台に固定して、株式会社安田精
機製作所製のシャルピー衝撃試験機により、ハンマーをその刃先長手方向が試験片の長さ
方向中央部で幅方向と平行になるように打ち当てて、フィルムの破断に要するエネルギー
(すなわち衝撃吸収エネルギー)を測定した。このとき、フィルムのMDを長さ方向とす
る第一の試験片は、MDと直交する方向、すなわちTDに沿って破断するので、TDの衝
撃吸収エネルギーを与え、フィルムのTDを長さ方向とする第二の試験片は、MDに沿っ
て破断するので、MDの衝撃吸収エネルギーを与える。このアクリル系樹脂フィルムは、
第一の試験片から得られたTDの衝撃吸収エネルギーが229kJ/m2であり、第二の試験
片から得られたMDの衝撃吸収エネルギーが187kJ/m2であった。
(B)防眩層形成用塗布液の調製
ペンタエリスリトールトリアクリレート及び多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメ
チレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物)を含
有し、前者/後者の重量比が60/40で、両者の合計濃度が60%となるように酢酸エ
チルに溶解され、さらにレベリング剤が配合されている光硬化性樹脂組成物を用意した。
この光硬化性樹脂組成物を構成する上記ペンタエリスリトールトリアクリレート及び多官
能ウレタン化アクリレートをまとめて、「硬化性アクリレート」と呼ぶ。この光硬化性樹
脂組成物の硬化性アクリレート100部に対し、平均粒径が2.7μmのメタクリル酸メチ
ル/スチレン共重合体樹脂粒子を5部加えて分散させ、さらに硬化性アクリレートと樹脂
粒子の合計濃度が30%となるように酢酸エチルで希釈した。その後、この液中の硬化性
アクリレート100部に対し、光重合開始剤である“イルガキュアー 184”(チバ社製)
を1部加えて、防眩層形成用塗布液を調製した。
ここで用いた光硬化性樹脂組成物(メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子を
配合しない状態)に、上記の光重合開始剤を加えて製膜し、紫外線照射して硬化させた樹
脂の屈折率は 1.53であり、一方、上記のメタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂
粒子の屈折率は1.49であった。そこで、両者の屈折率差は0.04であった。
(C)防眩性フィルムの作製
上記(A)で作製したアクリル系樹脂フィルムの片面に、上記(B)で調製した防眩層
形成用塗布液を乾燥後の塗膜厚さが3.4μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥
機中で3分間保持してその塗膜を乾燥させた。乾燥後、フィルムの塗膜側より、強度20
mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射し、光硬
化性樹脂組成物の塗膜層を硬化させて、アクリル系樹脂フィルムの表面に凹凸を有する防
眩層が形成された防眩性フィルムを作製した。得られた防眩性フィルムは、直径6インチ
(約15cm)のコアに巻き取った。ヘイズメータを用いてこの防眩性フィルムのヘイズ値
を測定したところ、11.5% であった。またこの防眩性フィルムに対し、先の(A1)
に示したのと同様の方法で、ただし、防眩層側からハンマーを当ててシャルピー衝撃試験
を行い、衝撃吸収エネルギーを測定した。その結果、TDの衝撃吸収エネルギーが8kJ/
m2であり、MDの衝撃吸収エネルギーが5kJ/m2であった。
(E)偏光板の作製
ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚さ約30μm の偏光フィルムの片
面に、エポキシ化合物を主成分とする紫外線硬化性接着剤を介して、上記(C)で作製し
た防眩性フィルムをそのアクリル系樹脂フィルム側で貼合し、偏光板の作製を試みたが、
貼合時に防眩性フィルムが割れてしまい、偏光板を作製できなかった。
[実施例1]
(D)表面プロテクトフィルム付きフィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に粘着剤層が設けられており、全体の厚さ
が50μm の表面プロテクトフィルムをロール状で用意した。この表面プロテクトフィル
ムは、1.8% のヘイズを有していた。そして、上記対照例の(A)〜(C)と同様の方
法で作製した防眩性フィルムの防眩層側に、この表面プロテクトフィルムの粘着剤面を、
両者のロール長手方向(MD)が同じになるように貼合して、表面プロテクトフィルム付
きフィルムを作製した。得られた表面プロテクトフィルム付きフィルムに対して、先に示
した対照例の(A1)と同様の方法で、ただし、表面プロテクトフィルム側からハンマー
を当ててシャルピー衝撃試験を行い、このフィルムの衝撃吸収エネルギーを測定した。そ
の結果、TDの衝撃吸収エネルギーが113kJ/m2であり、MDの衝撃吸収エネルギーが
243kJ/m2であった。
(D1)表面プロテクトフィルムの防眩性フィルムに対する密着力の測定
上で作製した表面プロテクトフィルム付きフィルムから、そのMDを長さ方向として幅
100mm×長さ150mmの試験片を切り出し、その防眩性フィルムを構成するアクリル系
樹脂フィルム面を、粘着剤を用いてガラスに貼合した。この状態で、引張試験機を用いて
表面プロテクトフィルム(すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルム+粘着剤層)
の長さ方向端部(幅100mmの一辺)をつかみ、 JIS K 6854-2:1999「接着剤−はく離接
着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分にて
180度剥離試験を行った。そして、得られる力−つかみ移動距離曲線から最初の25mm
つかみ移動距離を除いた剥離長さにわたる平均剥離力を求め、この値は100mm幅あたり
なので、これを25mm幅あたりに換算して、すなわちこの値に1/4を乗じて、表面プロ
テクトフィルムの基材フィルムに対する密着力とした。この表面プロテクトフィルムは、
上記防眩性フィルムの防眩層面に対して 0.08N/25mmの密着力を示した。
(E)偏光板の作製
ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚さ約30μm の偏光フィルムの片
面に、上記(D)で作製した表面プロテクトフィルム付きフィルムをそのアクリル系樹脂
フィルム側で、エポキシ化合物を主成分とする紫外線硬化性接着剤を介して貼合し、偏光
フィルムの他面には、シクロオレフィン系樹脂の二軸延伸品である位相差フィルムを、エ
ポキシ化合物を主成分とする別の紫外線硬化性接着剤を介して貼合し、その後紫外線を照
射して紫外線硬化性接着剤を硬化させ、防眩性偏光板を作製した。このとき、表面プロテ
クトフィルム付きフィルムが割れることはなく、偏光板が製造できた。
ここで用いたシクロオレフィン系樹脂の二軸延伸品である位相差フィルムに代え、トリ
アセチルセルロースフィルム又はポリプロピレン系樹脂フィルム(それぞれ位相差が付与
されていてもよい)を用いても、同様に防眩性偏光板を作製することができる。
10……表面プロテクトフィルム付きフィルム、
12……基材フィルム、
14……表面プロテクトフィルム、
15……支持フィルム、
16……粘着剤、
20……表面プロテクトフィルム付き偏光板、
22……偏光フィルム、
23,24……接着剤層、
26……透明樹脂フィルム。
さらに本発明によれば、一軸延伸され、当該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光フィルムに基材フィルムを貼り合わせて偏光板を製造する方法も提供され、この方法においては、上記の基材フィルムは、それ自体ではシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m未満であり、その基材フィルムに表面プロテクトフィルムを貼合して、貼合された状態でのシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m以上である表面プロテクトフィルム付きフィルムを作製し、次いでその表面プロテクトフィルム付きフィルムをそのままの状態で基材フィルム側上記の偏光フィルムに貼り合わせる。

Claims (5)

  1. 一軸延伸され、該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光フィルムに、基材フィルムを貼り合わせて偏光板を製造する方法であって、
    前記基材フィルムは、それ自体ではシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m未満であり、
    前記基材フィルムに表面プロテクトフィルムを貼合して、貼合された状態でのシャルピー衝撃試験による衝撃吸収エネルギーの値が50kJ/m以上であり、前記表面プロテクトフィルムは、前記基材フィルムに対して0.03N/25mm以上0.2N/25mm以下の密着力を有する表面プロテクトフィルム付きフィルムを作製し、
    次いで前記表面プロテクトフィルム付きフィルムの基材フィルム側を前記偏光フィルムに貼り合わせることを特徴とする偏光板の製造方法。
  2. 前記表面プロテクトフィルムが、自己粘着性のフィルムであるか、または支持フィルムの表面に粘着剤層が形成された表面プロテクトフィルムである請求項に記載の製造方法。
  3. 前記表面プロテクトフィルムは、ポリエステル系樹脂フィルムの片面に粘着剤層を有するものであり、その粘着剤層側で前記基材フィルムに貼合されている請求項に記載の製造方法。
  4. 前記基材フィルムは、アクリル系樹脂で構成される基材フィルムである請求項〜請求項のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記表面プロテクトフィルムは、基材フィルムに対して0.03N/25mm以上0.15N/25mm以下の密着力を有する請求項〜請求項のいずれかに記載の製造方法。
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