以下、本発明を詳細に説明する。本発明においては、メタクリル系樹脂からなる保護フィルム、易接着層、接着剤層、及びポリビニルアルコール系偏光フィルムをこの順に積層して、偏光板を構成する。易接着層は、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムの表面に設けられ、この状態で接着剤を介してポリビニルアルコール系偏光フィルムに貼合され、偏光板になる。
[保護フィルム]
保護フィルムを構成するメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル酸メチルが90重量%以上及びメタクリル酸メチル以外の単量体が10重量%以下からなるメタクリル系重合体に、弾性体粒子が配合されている。ここでいうメタクリル系重合体は、上記組成の単量体を重合させることにより得られる。
(メタクリル系重合体)
メタクリル系重合体は、メタクリル酸メチルの単独重合体でもよいが、一般には上述のとおり10重量%以下の割合で他の単量体を共重合させたものであることが好ましい。メタクリル酸メチル以外の単量体は、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結合を有する単官能単量体や、分子内に2個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体でありうるが、ここでは単官能単量体が好ましく用いられる。その例としては、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルのようなアクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルが挙げられる。共重合成分としてアクリル酸アルキルを用いる場合、そのアルキルは、例えば炭素数1〜8程度であることができる。
(弾性体粒子)
メタクリル系重合体に配合される弾性体粒子は、弾性体を含有する粒子であり、弾性体のみからなる粒子でもよいし、弾性体の層を有する多層構造の粒子でもよい。弾性体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、及びアクリル系弾性重合体が挙げられる。中でも、偏光板の保護フィルムとして用いるときの表面硬度や耐光性、また透明性の点から、アクリル系弾性重合体が好ましく用いられる。
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする重合体で構成することができる。これは、アクリル酸アルキルの単独重合体でもよいし、アクリル酸アルキル50重量%以上とそれ以外の単量体50重量%以下との共重合体でもよい。アクリル酸アルキルとしては通常、そのアルキル基の炭素数が4〜8のものが用いられる。アクリル酸アルキル以外の単量体を共重合させる場合、その例としては、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルなどの単官能単量体、また、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、マレイン酸ジアリルのような二塩基酸のジアルケニルエステル、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステルなどの多官能単量体が挙げられる。
アクリル系弾性重合体を含有する弾性体粒子は、アクリル系弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であることが好ましい。具体的には、アクリル系弾性体の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する2層構造のものや、さらにアクリル系弾性体の内側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する3層構造のものが挙げられる。このような多層構造のアクリル系弾性体粒子は、例えば特公昭 55-27576 号公報に記載の方法により、製造することができる。
弾性体粒子は、平均粒径、特に弾性体層までの平均粒径が10〜300nmの範囲にあることが好ましい。このような平均粒径を有する弾性体粒子が配合されたメタクリル系樹脂組成物から保護フィルムを成形し、そこに易接着層を設けることにより、接着剤を介してその易接着層側で偏光フィルムに貼合したとき、接着剤層から剥がれにくいものとなる。この弾性体粒子の平均粒径は、好ましくは50nm以上であり、また好ましくは250nm以下である。
アクリル系弾性重合体を含有する弾性体粒子の平均粒径は、次のようにして測定することができる。すなわち、このような弾性体粒子を母体のメタクリル系重合体に混合してフィルム化し、その断面を酸化ルテニウムの水溶液で染色すると、弾性重合体層だけが着色してほぼ円形状に観察され、母相のメタクリル系重合体は染色されない。そこで、このようにして染色されたフィルム断面から、ミクロトームなどを用いて薄片を切り出し、これを電子顕微鏡で観察する。そして、無作為に100個の染色された弾性体粒子を抽出し、各々の粒子径を算出した後、その数平均値を平均粒径とする。このような方法で測定するため、ここでいう弾性体粒子の平均粒径は、数平均粒径となる。
最外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体であり、その中にアクリル系弾性重合体が包み込まれている弾性体粒子にあっては、それをメタクリル系樹脂組成物における母体のメタクリル系重合体に混合すると、弾性体粒子の最外層が母体のメタクリル系重合体と混和するため、その断面において、酸化ルテニウムによるアクリル系弾性重合体への染色を施し、電子顕微鏡で観察したとき、その弾性体粒子が、最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である2層構造の弾性体粒子を用いた場合には、内層のアクリル系弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察され、また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、中間層がアクリル系弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である3層構造の弾性体粒子を用いた場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
(メタクリル系樹脂組成物の調製)
保護フィルムを形成するメタクリル系樹脂組成物は、母体のメタクリル系重合体と弾性体粒子との合計量を基準に、母体のメタクリル系重合体が55〜75重量%、弾性体粒子が25〜45重量%となるように配合することが好ましい。このような割合で弾性体粒子が配合されたメタクリル系樹脂組成物から保護フィルムを成形し、そこに易接着層を設けることにより、接着剤を介してその易接着層側で偏光フィルムに貼合したとき、接着剤層から剥がれにくいものとなる。
このメタクリル系樹脂組成物は、例えば、弾性体粒子を調製した後、その存在下にメタクリル系重合体の原料となる単量体を重合させて、母体のメタクリル系重合体を生成させることにより製造してもよいし、弾性体粒子と母体のメタクリル系重合体とを別々に調製した後、両者を溶融混練などで混合することにより製造してもよい。
メタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤を含有させてもよい。
紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収することで、偏光板の耐久性を向上させるために添加される。紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、アクリロニトリル系化合物など、公知のものが使用できる。好適な紫外線吸収剤の例を挙げると、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−tert−ブチル−6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどがある。これらの中でも、比較的高分子量の2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕は、好ましい紫外線吸収剤の一つである。
紫外線吸収剤の配合量は、メタクリル系樹脂組成物から形成される保護フィルムの波長370nm以下における光線透過率が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる範囲で選択することができる。メタクリル系樹脂組成物に紫外線吸収剤を含有させるには、例えば、紫外線吸収剤を母体となるメタクリル系重合体中に予め配合しておく方法、溶融押出成形時に直接、メタクリル系樹脂組成物に紫外線吸収剤を添加する方法などが採用できる。
メタクリル系重合体にゴム弾性体粒子を所定量配合するとともに、さらに少量の滑剤を配合し、保護フィルムを形成するメタクリル系樹脂組成物とすることもできる。滑剤を配合した場合、得られる樹脂フィルムをロール状に巻いたときの巻き締まりを防ぐことができ、それにより、巻いた状態での荷姿が改善される。滑剤は、フィルムとしたときの表面のすべり性を向上させる機能を有するものであればよい。そのような機能を有する化合物の例を挙げると、高級飽和脂肪酸系化合物、アクリル系化合物、エステル系化合物などがある。なかでも、高級飽和脂肪酸系化合物が、滑剤として好ましく用いられる。
滑剤となる高級飽和脂肪酸系化合物の例を挙げると、高級飽和脂肪酸自体のほか、高級飽和脂肪酸エステル、高級飽和脂肪酸アミド、高級飽和脂肪酸塩、高級飽和脂肪族アルコールなどがある。具体的には、ステアリン酸やパルミチン酸のような飽和高級脂肪酸;パルミチン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、及びステアリン酸モノグリセライドのような高級脂肪酸エステル;ステアリン酸アミドやパルミチン酸アミドのような高級飽和脂肪酸アミド;パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、及びステアリン酸マグネシウムのような高級飽和脂肪酸塩; 12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、及び12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムのような、12−ヒドロキシステアリン酸とその金属塩;ステアリルアルコール、パルトイルアルコールなどが挙げられる。なかでも、ステアリン酸又はその誘導体が好ましく、特にステアリン酸又はステアリルアルコールが好ましく用いられる。
滑剤の配合量は、上記したメタクリル系重合体及び弾性体粒子の合計100重量部に対して 0.15重量部以下、好ましくは0.1重量部以下、さらに好ましくは0.07重量部以下の範囲とすればよい。滑剤の配合量が多すぎると、滑剤がフィルムからブリードアウトしたり、フィルムの透明性を低下させたりするおそれがある。
メタクリル系重合体に弾性体粒子及び必要に応じて紫外線吸収剤や滑剤などの他の配合剤が配合されたメタクリル系樹脂組成物は、最終的にこれまでに説明した組成になっていればよく、その製造方法は任意である。例えば、まず弾性体粒子を製造し、それの存在下にメタクリル系重合体の原料となる単量体を重合し、母体のメタクリル系重合体を生成させて、メタクリル系重合体に弾性体粒子が配合された組成とし、所望ならこれに他の配合剤を所定量添加する方法、弾性体粒子とメタクリル系重合体とを所定割合で混合し、所望ならこれに他の配合剤を所定量添加して、溶融混練等により混合する方法などが挙げられる。
(メタクリル系樹脂からなる保護フィルムの製膜)
以上説明したメタクリル系重合体に弾性体粒子が配合され、必要に応じてその他の成分が配合されたメタクリル系樹脂組成物を製膜することにより、保護フィルムとすることができる。製膜は公知の方法で行うことができ、例えば、溶融押出法が好適に使用できる。またこの保護フィルムは、延伸が施されていてもよい。メタクリル系樹脂組成物から形成される保護フィルムの厚さは、通常100μm以下であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下である。
(保護フィルムに関するその他の物性)
保護フィルムを形成するメタクリル系樹脂組成物は、そのガラス転移温度Tgが、80〜120℃の範囲内にあることが好ましい。また、この保護フィルムは、表面の硬度が高いこと、具体的には、JIS K5600-5-4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して荷重500gで測定される鉛筆硬度が2Hを超えるものであることが好ましい。
また、このメタクリル系樹脂組成物は、保護フィルムとしたときの柔軟性の観点から、JIS K7171:2008「プラスチック−曲げ特性の求め方」に準拠して測定される曲げ弾性率が1,500MPa以下であることが好ましい。この曲げ弾性率はより好ましくは1,300MPa以下であり、さらに好ましくは1,200MPa以下である。この曲げ弾性率は、メタクリル系樹脂組成物を構成する母体のメタクリル系重合体及び弾性体粒子の種類や量などによって変動し、例えば、弾性体粒子の含有量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。また、弾性体粒子として、前記した3層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いるよりも、前記した2層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いるほうが、一般に曲げ弾性率は小さくなり、単層構造のアクリル系弾性重合体粒子を用いるほうが、一般に曲げ弾性率はより一層小さくなる。さらに、弾性体粒子中、弾性体の平均粒径が小さいほど、又は弾性体の量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。そこで、メタクリル系重合体及び弾性体粒子の種類や量を前記所定の範囲で調整して、曲げ弾性率が1,500MPa以下になるようにすればよい。
[易接着層]
本発明においては、偏光フィルムに接着剤を介して保護フィルムを貼合するにあたり、保護フィルムの偏光フィルムと対向する面に易接着層を設けることで、易接着層を含む保護フィルム表面の接着剤層に対する親和性を高め、両者の密着性を向上させ、これにより偏光フィルムと保護フィルムとの接着強度を高めている。
保護フィルムの偏光フィルムと対向する面に設ける易接着層は、保護フィルムと接着剤との密着性を向上させることができるものであればよい。このような易接着層を形成する材料として、例えば、極性基を骨格に有し、比較的低分子量で比較的低いガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などを挙げることができる。骨格に存在する極性基は、その樹脂が親水性又は水分散性となるように選択されることが好ましく、例えば、親水性の置換基、エーテル結合、複数のエーテル結合などを挙げることができる。
親水性の置換基のより具体的な例を挙げると、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基など、また、これらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などがある。エーテル結合又は複数のエーテル結合は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどから導かれる構造単位であることができる。これらの置換基又は構造単位を有するモノマーを、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂に導入することにより、易接着層を構成する材料とすることができる。
また、この易接着層を構成する材料には、必要に応じて、架橋剤、有機又は無機のフィラー、界面活性剤、滑剤などを配合することもできる。
易接着剤の形成は、例えば、上で説明した易接着層を構成する材料を含む溶液、あるいはこのような材料の前駆体と重合開始剤を含む溶液(以下、「易接着層用組成物」と呼ぶことがある)を、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムの片面に塗布した後、乾燥させるか、あるいは乾燥・硬化させる方法により、行うことができる。易接着層は、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムを製膜した直後に形成してもよいし、偏光フィルムに貼合する直前に形成してもよい。
易接着層の厚さは、乾燥後又は乾燥・硬化後に、0.01〜5μm、さらには 0.03〜0.6μmとなるようにすることが好ましい。易接着層が薄すぎると、偏光フィルムと保護フィルムとの接着強度が不充分になることがある。逆に、易接着層が厚すぎると、その親水性が過剰になり、得られる偏光板が耐水性に劣るものとなる可能性がある。
保護フィルムの偏光フィルムと対向する面に易接着層用組成物を塗布する方法は、ダイコーター、カンマコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター、エアドクターコーターなどを用いた通常のコーティング技術を採用すればよい。また、塗布した易接着層用組成物を乾燥させる方法や条件は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて、乾燥する方法が採用できる。また、易接着層用組成物として、易接着層を構成する材料の前駆体を含む溶液を用いた場合は、乾燥・硬化の後に養生工程を設けてもよい。養生工程を採用する場合でも、易接着層用組成物の乾燥に使用した熱で硬化もある程度進行し、その後の接着剤を用いた偏光フィルムと保護フィルムとの接着工程でもさらに硬化が進行するので、常温養生でも充分な物性が得られる。
易接着層が設けられた保護フィルム表面の接着剤に対する親和性を調整するため、保護フィルムに設けられた易接着層表面には、後で接着剤を介して偏光フィルムに貼合する前に、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他の従来公知の表面処理を施すこともできる。
[保護フィルムに任意に付加しうる機能]
保護フィルムには、液晶モジュールの組立工程における表面の擦り傷防止の観点から、ハードコート処理を施すことができる。また、帯電防止処理などの表面処理を施すこともできる。偏光板に付与される帯電防止機能は、上記の保護フィルムに表面処理を施すことによって付与することができるほか、粘着剤層など、この保護フィルムが組み込まれる偏光板の他の部分に付与することもできる。保護フィルムへの表面処理としてはその他、反射防止処理や防汚処理なども挙げることができる。さらには、視認性向上、外光の映り込み防止、プリズムシートとカラーフィルターの干渉によるモアレ低減などの観点から、防眩処理を施すこともできる。これらの機能を付与するための表面処理は、一般に、保護フィルムの易接着層が設けられていない側に施される。防眩処理を施して防眩性フィルムとする形態については、項を改めて説明することとし、ここではその他の機能層について、順を追って説明する。
(ハードコート層)
ハードコート層は、保護フィルムの表面硬度を高める機能を有し、表面の擦り傷防止などの目的で設けられる。ハードコート層は、JIS K5600-5-4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(ハードコート層が形成された保護フィルムをガラス板の上に置いて測定する)で、2H又はそれより硬い値を示すことが好ましい。かかるハードコート層を形成する材料は、一般に、熱や光によって硬化するものである。例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料や、二酸化ケイ素などの無機ハードコート材料を挙げることができる。これらのなかでも、基材のアクリル系樹脂フィルムに対する接着力が良好であり、生産性に優れることから、ウレタンアクリレート系及び多官能アクリレート系ハードコート材料が好ましい。
ハードコート層は、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、さらには耐熱性、帯電防止性、防眩性などの向上を図る目的で、各種フィラーを含有することができる。またハードコート層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
(帯電防止層)
帯電防止層は、フィルムの表面に導電性を付与し、静電気による影響を抑制するなどの目的で設けられる。帯電防止層の形成には、例えば、導電性物質(帯電防止剤)を含有する樹脂組成物を塗布する方法が採用できる。例えば、上述したハードコート層の形成に用いるハードコート材料に帯電防止剤を共存させておくことにより、帯電防止性のハードコート層を形成することができる。
(反射防止層)
反射防止層は、外光の反射を防止するための層であり、保護フィルムの表面(外部に露出する面)に直接、又はハードコート層などの他の層を介して設けられる。反射防止層が設けられた保護フィルムは、波長430〜700nmの光に対する入射角5°での反射率が2%以下であることが好ましく、とりわけ、波長550nmの光に対する同じ入射角での反射率が1%以下であることが好ましい。
反射防止層の厚さは、0.01〜1μm程度とすることができるが、0.02〜0.5μm の範囲がより好ましい。反射防止層は、それが設けられる層(保護フィルムやハードコート層など)の屈折率よりも小さい屈折率、具体的には1.30〜1.45の屈折率を有する低屈折率層からなるもの、無機化合物からなる薄膜の低屈折率層と無機化合物からなる薄膜の高屈折率層とを交互に複数積層したものなどであることができる。
上記の低屈折率層を形成する材料は、屈折率の小さいものであれば特に制限されない。例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂のような樹脂材料、樹脂中にコロイダルシリカのような無機微粒子を分散させたハイブリッド材料、アルコキシシランを含むゾル−ゲル材料などを挙げることができる。このような低屈折率層は、重合済みのポリマーを塗布することによって形成してもよいし、前駆体となるモノマー又はオリゴマーの状態で塗布し、その後重合硬化させることによって形成してもよい。また、それぞれの材料は、防汚性を付与するために、分子内にフッ素原子を有する化合物を含むことが好ましい。
低屈折率層を形成するためのゾル−ゲル材料としては、分子中にフッ素原子を有するものが好適に用いられる。分子内にフッ素原子を有するゾル−ゲル材料の典型的な例を挙げると、ポリフルオロアルキルアルコキシシランがある。ポリフルオロアルキルアルコキシシランは、例えば、式:
CF3(CF2)nCH2CH2Si(OR)3
で示される化合物であることができ、ここで、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0〜12の整数を表す。なかでも、上記式中のnが2〜6である化合物が好ましい。
ポリフルオロアルキルアルコキシシランとして具体的には、次のような化合物を挙げることができる。
3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、
3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなど。
低屈折率層は、熱硬化性含フッ素化合物又は電離放射線硬化性含フッ素化合物の硬化物で構成することもできる。この硬化物は、その動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲にあることが好ましく、水に対する接触角が90〜120°の範囲にあることが好ましい。硬化性含フッ素化合物としては、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、上記した3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなど)の他、架橋性官能基を有する含フッ素重合体を挙げることができる。
架橋性官能基を有する含フッ素重合体は、フッ素含有モノマーと架橋性官能基を有するモノマーとを共重合する方法によって、又はフッ素含有モノマーと官能基を有するモノマーとを共重合し、次いで重合体中の官能基に架橋性官能基を有する化合物を付加させる方法によって、製造することができる。
ここで用いるフッ素含有モノマーとしては、例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールのようなフルオロオレフィン類、その他、(メタ)
アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類や、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類などが挙げられる。
架橋性官能基を有するモノマー又は架橋性官能基を有する化合物としては、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのようなグリシジル基を有するモノマー;アクリル酸やメタクリル酸のようなカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシアルキルアクリレートやヒドロキシアルキルメタクリレートのような水酸基を有するモノマー;アリルアクリレートやアリルメタクリレートのようなアルケニル基を有するモノマー;アミノ基を有するモノマー;スルホン酸基を有するモノマーなどを挙げることができる。
低屈折率層を形成するための材料は、耐傷性を向上できる点で、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウムなどの無機化合物微粒子がアルコール溶媒に分散しているゾルが含まれるものであることができる。このために用いる無機化合物微粒子は、反射防止性の観点から、屈折率の小さいものほど好ましい。かかる無機化合物微粒子は、空隙を有するものであってもよく、特にシリカの中空微粒子が好ましい。中空微粒子の平均粒径は、5〜2,000nm の範囲にあることが好ましく、とりわけ20〜100nmの範囲にあることがより好ましい。ここでいう平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって求められる数平均粒径である。
(防汚層)
防汚層は、撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性などを付与するために設けられる。防汚層を形成するための好適な材料は、フッ素含有有機化合物である。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物などを挙げることができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着やスパッタリングを代表例とする物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法などを用いることができる。防汚層の平均厚さは、通常1〜50nm程度、好ましくは3〜35nmである。
[防眩性フィルム]
メタクリル系重合体に弾性体粒子が所定量配合され、必要によりさらに他の成分が配合された樹脂組成物から形成される保護フィルムは、その表面に防眩層を形成して、防眩性フィルムとすることができる。すなわち防眩性フィルムは、保護フィルムとその表面に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とからなる。防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有する層であり、好ましくは、上述したハードコート材料から形成される。
表面に微細な凹凸形状を有する防眩層は、保護フィルムの表面に有機微粒子又は無機微粒子を含有する塗膜を形成し、その微粒子に基づく凹凸を設ける方法や、有機微粒子又は無機微粒子を含有するか、又は含有しない塗膜を形成した後、表面に凹凸形状が付与されたロールに押し当てて凹凸形状を転写する方法(エンボス法とも呼ばれる)などによって形成することができる。上記の塗膜を形成する方法としては、例えば、保護フィルム表面に、硬化性の透明樹脂に有機又は無機の微粒子が配合された組成物からなる塗布液を塗布する方法を例示することができる。
(微粒子)
防眩層を形成するために微粒子を配合する場合、その微粒子は、平均粒径が 0.5〜5μm で、透明樹脂との屈折率差が0.02〜0.2であるものを用いることが好ましい。平均粒径及び透明樹脂との屈折率差がこの範囲にある微粒子を用いることにより、効果的にヘイズを発現させることができる。この微粒子の平均粒径は、動的光散乱法などによって求めることができる。本明細書では、微粒子の平均粒径は、メーカーから入手した値をそのまま用いた。この平均粒径は、重量平均粒径となる。
防眩層を形成するための無機微粒子としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ−シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを用いることができる。また、有機微粒子としては、一般に樹脂粒子が用いられ、例えば、架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリイミド粒子などが挙げられる。
(防眩層の形成に用いる透明樹脂)
無機微粒子又は有機微粒子を分散させるための透明樹脂は、高硬度(ハードコート)となる材料から選定することが好ましい。かかる透明樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性や得られる被膜の硬度などの観点から、光硬化性樹脂が好ましく使用される。光硬化性樹脂としては、一般に多官能アクリレートが用いられる。その例を挙げると、トリメチロールプロパンのジ−又はトリ−アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ−又はテトラ−アクリレート、分子内に水酸基を少なくとも1個有するアクリレートとジイソシアネートとの反応生成物である多官能ウレタンアクリレートなどがある。これらの多官能ウレタンアクリレートは、それぞれ単独で、又は必要に応じて2種以上組み合わせて用いることができる。
また、多官能ウレタンアクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、及び水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーの混合物を光硬化性樹脂とすることもできる。この光硬化性樹脂を構成する多官能ウレタンアクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソシアネートを用いて製造される。具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとポリオールから、分子内に水酸基を少なくとも1個有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを調製し、これをジイソシアネートと反応させることにより、多官能ウレタンアクリレートを製造することができる。このようにして製造される多官能ウレタンアクリレートは、先に掲げた光硬化性樹脂自体ともなるものである。その製造にあたっては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、ポリオール及びジイソシアネートも同様に、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能ウレタンアクリレートの一つの原料となる(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸の鎖状又は環状アルキルエステルであることができる。その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのようなシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能ウレタンアクリレートのもう一つの原料となるポリオールは、分子内に水酸基を少なくとも2個有する化合物である。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸のネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類などを挙げることができる。
多官能ウレタンアクリレートのさらにもう一つの原料となるジイソシアネートは、分子内に2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物であり、芳香族、脂肪族又は脂環式の各種ジイソシアネートを用いることができる。具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのうち芳香環を有するジイソシアネートの核水添物などを挙げることができる。
多官能ウレタンアクリレートとともに上記した光硬化性樹脂を構成するポリオール(メタ)アクリレートは、分子内に少なくとも2個の水酸基を有する化合物(すなわち、ポリオール)の(メタ)アクリレートである。その具体例としては、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのポリオール(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。ポリオール(メタ)アクリレートは、好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む。
さらに、これらの多官能ウレタンアクリレート及びポリオール(メタ)アクリレートとともに、光硬化性樹脂を構成する水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーは、一つの構成単位中に水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものである。例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマーや、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとともに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマーなどが挙げられる。
以上、例示したようなアクリル系の光硬化性樹脂を用いることにより、保護フィルムとの密着性が向上するとともに、機械的強度が向上し、表面の傷付きを効果的に防止できる防眩性フィルムを得ることができる。
(光重合開始剤)
このような光硬化性樹脂は、光重合開始剤と組み合わせて、光硬化性樹脂組成物とされる。光重合開始剤には、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、アミン系、ホスフィンオキサイド系など、各種のものがある。アセトフェノン系光重合開始剤に分類される化合物の例を挙げると、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(別名ベンジルジメチルケタール)、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オンなどがある。ベンゾフェノン系光重合開始剤に分類される化合物の例を挙げると、ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどがある。ベンゾインエーテル系光重合開始剤に分類される化合物の例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルなどがある。アミン系光重合開始剤に分類される化合物の例を挙げると、N,N,N′,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(別名ミヒラーズケトン)などがある。ホスフィンオキサイド系光重合開始剤の例を挙げると、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどがある。他に、キサントン系化合物やチオキサント系化合物なども、光重合開始剤として知られている。
これらの光重合開始剤は市販されている。代表的な市販光重合開始剤の例を商品名で挙げると、いずれもドイツのBASF社から販売されている“イルガキュア 907”、“イルガキュア 184”、“ルシリン TPO”などがある。
(光硬化性樹脂組成物に配合されるその他の成分)
光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶媒が添加される。この場合は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど、組成物を構成する各成分を溶解しうる任意の有機溶媒を用いることができる。もちろん、2種以上の有機溶媒を混合して用いることもできる。
また光硬化性樹脂組成物は、レベリング剤を含有してもよく、例えば、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を挙げることができる。シリコーン系のレベリング剤には、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンなどがある。シリコーン系レベリング剤のなかでも好ましいものは、反応性シリコーン及びシロキサン系のレベリング剤である。反応性シリコーンからなるレベリング剤を用いれば、ハードコート層表面に滑り性が付与され、優れた耐擦傷性を長期間持続させることができる。また、シロキサン系のレベリング剤を用いれば、膜成形性を向上させることができる。
(防眩層の形成)
防眩層の形成に上記のような光硬化性樹脂を用いる場合、以上説明した光硬化性樹脂組成物を構成する各成分に無機又は有機の微粒子を分散させた後、この樹脂組成物を保護フィルム上に塗布し、光を照射することにより、透明樹脂中に微粒子が分散されたハードコート層(防眩層)を形成することができる。
一方、エンボス法により微細表面凹凸形状を有する防眩層を形成する場合には、微細凹凸形状が形成された金型を用いて、金型の形状を保護フィルム上に形成された樹脂層に転写すればよい。エンボス法により微細表面凹凸形状を形成する場合、凹凸形状が転写される樹脂層は、無機又は有機の微粒子を含有していてもよいし、含有しなくてもよい。エンボス法による凹凸形状の転写は、好ましくは、紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が採用される。
UVエンボス法では、保護フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層を形成し、その紫外線硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が紫外線硬化性樹脂層に転写される。具体的には、保護フィルム上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で、保護フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成された保護フィルムを金型から剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化性樹脂に転写する。紫外線硬化性樹脂の種類は特に制限されず、上述した各種のものを用いることができる。また、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光重合開始剤を適宜選択することにより、紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いてもよい。
防眩層の厚さは特に限定されないが、一般には2μm以上30μm以下であり、好ましくは3μm以上、また好ましくは20μm以下である。防眩層の厚さが2μm を下回ると、十分な硬度が得られず、表面が傷付きやすくなる傾向にあり、また、30μm より厚くなると、割れやすくなったり、防眩層の硬化収縮により防眩性フィルムがカールして生産性が低下したりする傾向にある。
防眩性フィルムは上述のとおり、防眩層によりヘイズが付与される。そのヘイズ値は、5〜50%の範囲にあることが好ましい。ヘイズ値が5%を下回ると、十分な防眩性能が得られず、外光が画面に映り込みを生じやすくなる。一方、そのヘイズ値が50%を上回る領域では、外光の映り込みは低減できるものの、黒表示の画面のしまりが低下してしまう。ここでヘイズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の割合であり、JIS K7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準じて測定される。
[接着剤層]
メタクリル系樹脂からなる保護フィルムと偏光フィルムとの積層に用いる接着剤は、公知の接着剤から適宜選択すればよいが、活性エネルギー線硬化型接着剤であるのが好ましく、溶剤含有量が0〜2重量%と低いものがより好ましい。接着剤中の溶剤含有量は、ガスクロマトグラフィーなどによって測定できる。
溶剤としては、n−ヘキサンやシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びn−ブタノールのようなアルコール類;アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのようなエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及びブチルセロソルブのようなセロソルブ類;塩化メチレンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤は、23℃においてB型粘度計により測定される粘度が 50〜2,000mPa・sの範囲にあると、接着剤の塗布性に優れるので、好適である。活性エネルギー線硬化型接着剤は、無色透明であれば、特に制限なく公知のものを使用することができる。活性エネルギー線硬化型接着剤の主成分となる活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などを官能基として有し、活性エネルギー線によりラジカル重合を起こして硬化する化合物(光ラジカル重合性化合物)や、エポキシ基、ビニルエーテル基、水酸基、エピスルフィド基などを官能基として有するか、あるいは、オキセタン環又はエチレンイミンの構造を有し、活性エネルギー線により光カチオン重合を起こして硬化する化合物(光カチオン重合性化合物)が挙げられる。
光ラジカル重合性化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリレートや2−ヒドロキシプロピルアクリレートのようなヒドロキシアルキルアクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートのような芳香環を有するヒドロキシアルキルアクリレート;2−アクリロイロキシエチルコハク酸や2−アクリロイロキシエチルフタル酸のようなアクリル変性カルボン酸;トリエチレングリコールジアクリレートやテトラエチレングリコールジアクリレートのようなポリエチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレートやトリプロピレングリコールジアクリレートのようなポリプロピレングリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド変性ジアクリレート、及びジメチロールトリシクロデカンジアクリレートのようなその他の2官能アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのような3官能以上の多官能アクリレート;また、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、及びネオペンチルグリコールのアクリル酸安息香酸混合エステルのようなその他のアクリレート;これらのメタクリレート体などが挙げられる。
光カチオン重合性化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂のようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;異節環状型エポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のようなアルコール型エポキシ樹脂;臭素化エポキシ樹脂のようなハロゲン化エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、及びエポキシ基含有アクリル樹脂のようなエポキシ基を有するオリゴマー;フェノキシメチルオキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−〔{3−(トリエトキシシリル)プロポキシ}メチル〕オキセタン、ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル〕エーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、及び1,4−ビス〔{(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ}メチル〕ベンゼンのようなオキセタン化合物などが挙げられる。
これらの活性エネルギー線硬化性化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線硬化型接着剤には、その硬化反応効率を上げる目的で、重合開始剤を配合することができる。重合開始剤は、使用する活性エネルギー線の種類に応じて選択される。重合開始剤には、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、ベンゾインアルキルエーテル系などを包含する光ラジカル重合開始剤と、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステルなどを包含する光カチオン重合開始剤がある。これらは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシ−ジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
ベンゾインアルキルエーテル系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノンなどが挙げられる。
光カチオン重合開始剤は、イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤であってもよいし、非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤であってもよい。
イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤には、例えば、芳香族スルホニウム塩をはじめとするオニウム塩類;芳香族ジアゾニウム塩類;鉄−アレーン錯体、チタノセン錯体及びアリールシラノール−アルミニウム錯体のような有機金属錯体類;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのような嵩高い対アニオンを有する光カチオン重合開始剤などがある。これらのイオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤の市販品の例を挙げると、(株)ADEKAから販売されている商品名“アデカオプトマー SP150”及び“アデカオプトマー SP170”をはじめとする“アデカオプトマー”シリーズや、ゼネラルエレクトロニクス社から販売されている商品名“UVE-1014”、サートマー社から販売されている商品名“CD-1012”、ローディア社から販売されている商品名“Photoinitiator 2074”などがある。
非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤には、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドホスホナートなどがある。これらの非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤も、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線硬化型接着剤における重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性化合物100重量部に対し、通常 0.5〜20重量部の範囲であり、好ましくは1重量部以上、また好ましくは10重量部以下である。その量が少なすぎると、硬化が不十分になり、接着剤層の機械強度や接着強度が低下する傾向にある。またその量が多すぎると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、接着剤層の耐久性能が低下する可能性があるので、好ましくない。
さらに活性エネルギー線硬化型接着剤には、光増感剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機系粒子、無機酸化物粒子、金属粉末、顔料、染料などを配合することもできる。
光増感剤を使用することで、反応性が向上し、接着剤硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤の例を挙げると、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などがある。
光増感剤の具体例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、及び2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、及び2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、及びN−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。光増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物を100重量部としたとき、0.1〜20重量部の範囲で含有されるのが好ましく、さらには0.1〜5重量部の範囲で含有されるのがより好ましい。
[偏光フィルム]
偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものである。偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルポリマールやポリビニルアセタールなども使用できる。また、偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、通常1,000〜10,000であり、好ましくは1,500〜5,000である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂をフィルム状に製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば10〜150μm とすることができる。
偏光フィルムは通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造される。
一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後に行ってもよい。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬すればよい。二色性色素として具体的には、ヨウ素又は二色性の有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1800秒である。
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。
乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒータなどを用いて行われる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒であり、好ましくは120〜600秒である。
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色及びホウ酸処理が施されて、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、通常5〜40μmの範囲内、好ましくは10〜35μmの範囲内である。
[偏光板]
本発明の偏光板は、上で説明したメタクリル系重合体に弾性体粒子が配合されたメタクリル系樹脂組成物から形成されている保護フィルム、易接着層、接着剤層、及びポリビニルアルコール系偏光フィルムがこの順に積層されたものである。この偏光板は、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムに易接着層を形成し、その易接着層側に、接着剤を介して偏光フィルムを貼合し、その接着剤を硬化させることにより、製造できる。接着剤として活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合は、この接着剤を介して保護フィルムの易接着層と偏光フィルムとを貼合した後、活性エネルギー線を照射することによって接着剤を硬化させ、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムが偏光フィルムに固定される。
偏光フィルムの接着面又は保護フィルムの易接着層に接着剤を塗布し、その接着剤を介して偏光フィルムと保護フィルムの易接着層を貼り合わせる。接着剤の塗工は、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式により行うことができる。
活性エネルギー線の照射により接着剤を硬化させる場合、活性エネルギー線として、通常は光が用いられる。硬化反応に用いられる光の例を挙げると、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線などがある。特に取り扱いが簡便であり、比較的高いエネルギーが得られることから、紫外線が好適に用いられる。
紫外線の照射には、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを、光源として用いることができる。紫外線の照射強度は、接着剤が適度に硬化して接着力が得られるようにすればよいが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜100mW/cm2となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、また光照射強度が大きすぎると、ランプからの輻射熱や重合反応熱などにより、接着剤が黄変したり、偏光フィルム自体が劣化したりするおそれがある。光照射時間は、硬化状況に応じて適宜選択されるものであるが、照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。
本発明の偏光板は、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムの偏光フィルムに貼合されている面とは反対側の面、すなわち露出面に、ハードコート層、反射防止層、及び防汚層のような機能層が形成されていてもよい。
また、本発明の偏光板は、偏光フィルムの一方の面に前述のメタクリル系樹脂からなる保護フィルムが積層されたものであるが、偏光フィルムの他方の面には、同様にメタクリル系樹脂からなるか、又は他の樹脂からなる保護フィルムを積層することができる。
他方の保護フィルムを構成する樹脂としては、ポリカーボネート系、ポリエーテルスルホン系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリイミド系、ポリメチルメタクリレート系、ポリスルホン系、ポリアリレート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、セルロースエステル系、脂環式オレフィンポリマーなどを挙げることができる。脂環式オレフィンポリマーは、例えば、特開平 5-310845 号公報や米国特許第 5179171号明細書に記載されているものを代表例とする環状オレフィンランダム多元共重合体、特開平 5-97978号公報や米国特許第 5202388号明細書に記載されているものを代表例とするノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物、特開平 11-124429号公報や国際公開第 99/20676 号パンフレットに記載されているものを代表例とする熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物などであることができる。
偏光フィルムの他方の面に他の保護フィルムを積層する方法は、例えば、他方の面に設ける当該保護フィルムを必要に応じて接着剤などを介して偏光フィルムに貼り合わせる一般的な方法が採用できる。このために用いる接着剤は、前述した活性エネルギー線硬化型接着剤であってもよいし、他の、例えば水系などの接着剤であってもよい。
偏光フィルムの他方の面に設ける保護フィルムは、1mm厚あたり、波長400〜700nmの可視領域の光線透過率が80%以上の材料で形成するのが好ましく、さらには85%以上、とりわけ90%以上の材料で形成するのが一層好ましい。
偏光フィルムの他方の面に設ける保護フィルムは、複屈折性を示し、位相差フィルム又は光学補償フィルムの機能を有するものであってもよい。また、この保護フィルム自体は複屈折性を示さないもので構成し、その上に複屈折性を示すフィルムを積層することもできる。
複屈折性を示すフィルムは、例えば、熱可塑性樹脂を含有するフィルムを延伸して得られるもの、無延伸の熱可塑性樹脂フィルム上に光学異方性層を形成して得られるもの、熱可塑性樹脂を含有するフィルム上に光学異方性層を形成した後、さらに延伸して得られるものなどであることができる。複屈折性を示すフィルムは、単層フィルムであっても、多層フィルムであってもよい。
[液晶パネル及び液晶表示装置]
本発明の偏光板は、液晶セルと組み合わせて、液晶パネル、さらには液晶表示装置とすることができる。この液晶表示装置は、典型的には、光源と、光入射側偏光板と、液晶セルと、光出射側偏光板とが、この順に配置されたものである。光入射側偏光板と液晶セルと光出射側偏光板との積層体が、液晶パネルを構成する。本発明の偏光板は、少なくともこの液晶表示装置における光出射側偏光板として好適に用いられる。その際、メタクリル系樹脂からなる保護フィルムが、光出射側最表面、すなわち液晶セルから遠い側となるように配置されるのが好適である。この液晶表示装置はさらに、位相差板、輝度向上フィルム、導光板、光拡散板、光拡散シート、集光シート、反射板などを備えていてもよい。