JP2016075899A - 表面微細凹凸体 - Google Patents

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Abstract

【課題】正面輝度と視野角を両方満足させる配光制御シートとして使用可能な表面微細凹凸体の提供。【解決手段】表面微細凹凸体であり、微細凹凸の形成面を通過する光を最も広く配光分布する方向YのFWHM(FWHMY)または方向Yに対して略直交する方向XのFWHM(FWHMX)の少なくとも一方が下記式(a)を満足し、FWHMの少なくとも一方が、FWHMと同方向における微細凹凸の断面の高さプロファイルにおいて、所定の間隔で接線を引き、その各接点のスロープ角(tan)の頻度分布が下記式(b)を満足する表面微細凹凸体。5≦FWHM≦30・・・(a)、Frqtan(within(20°−30°))/Frqtan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM+0.5・・・(b)、ここで、Frqtan(within(20°−30°))はスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度をあらわす。【選択図】図16

Description

本発明は、表面微細凹凸体に関し、特に配光制御機能を有する表面微細凹凸体に関する。
主に微細な波状の凹凸から構成される凹凸パターンが表面に形成されたシート状の表面微細凹凸体は、その光学的特性から、配光制御シート等の配光制御体として使用されることが知られている。
配光制御シートの製造方法として、例えば特許文献1には、加熱収縮性フィルムからなる樹脂製の基材上に、樹脂製の硬質層を設けた積層シートを加熱し、加熱収縮性フィルムを収縮させることにより、硬質層を折り畳むように変形させて凹凸状にして、硬質層の表面に凹凸パターンを形成する方法が開示されている。
また、特許文献1には、加熱収縮性フィルムを収縮させた後、延伸を行うことにより、配向のばらつきが小さな凹凸パターンを形成できることが記載されている。このようなシートが配光制御シートと好適に使用される。
特開2011−213051号公報
本発明者等の試行によると、テレビ、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、車載用表示装置等に使用されるプロジェクターやディスプレイの正面輝度と視野角は、配光制御シートのFWHM(Full Width at Half Maximum)と相関が高いことが分った。更に、FWHMが狭いと正面輝度が上昇するが、その一方、視野角は低下することが判明し、視野角を維持するためには、ある程度のFWHMを有することが望ましいことが分った。
本発明では、以上のような知見を元に、正面輝度と視野角を両方満足させる配光制御シートとして使用可能な表面微細凹凸体を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
[1]表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、前記微細凹凸が形成された面を通過する光を最も広く配光分布する方向YのFWHM(FWHM)または前記方向Yに対して略直交する方向XのFWHM(FWHM)の少なくとも一方が下記式(a)を満足し、該FWHMの少なくとも一方が、該FWHMと同方向における表面微細凹凸体の微細凹凸の断面の高さプロファイルにおいて、所定の間隔で接線を引き、その各接点のスロープ角(tan)の頻度分布が下記式(b)を満足する表面微細凹凸体。
5≦FWHM≦30 ・・・(a)
Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM+0.5 ・・・(b)
ここで、Frq tan(within(20°−30°))はスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度をあらわし、Frq tan(within(0°−5°))はスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度をあらわす。
[2]前記方向Xおよび方向YのFWHMが式(a)を満足する[1]の表面微細凹凸体。
[3]表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、前記微細凹凸が形成された面を通過する光を最も広く配光分布する方向YのFWHM(FWHM)または前記方向Yに対して略直交する方向XのFWHM(FWHM)の少なくとも一方が下記式(a)を満足し、該FWHMの少なくとも一方が、該FWHMと同方向における表面微細凹凸体の微細凹凸の断面の高さプロファイルにおいて、所定の間隔で接線を引き、その各接点のスロープ角(tan)の頻度分布が下記式(c)を満足する表面微細凹凸体。
5≦FWHM≦30 ・・・(a)
Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM−0.1 ・・・(c)
ここで、Frq tan(within(20°−30°))はスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度をあらわし、Frq tan(within(0°−5°))はスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度をあらわす。
[4]前記方向Xおよび方向YのFWHMが式(a)を満足する[3]の表面微細凹凸体。
[5][1]から[4]のいずれかに記載の表面微細凹凸体であって、前記式(b)または式(c)において、Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))の値が (0.07×FWHM−0.32)以上である表面微細凹凸体。
[6]前記微細凹凸は、互いに蛇行する複数の凸条部と、前記複数の凸条部間の凹条部を有する波状の凹凸パターンを有する[1]から[5]のいずれかに記載の表面微細凹凸体。
[7]前記微細凹凸は、互いに蛇行する複数の凸条部と、前記複数の凸条部間の凹条部を有し、さらに前記波状の凹凸パターン上に形成された複数の凹部または凸部を有する[1]から[5]に記載の表面微細凹凸体。
[8]前記所定の間隔が2.0μm未満である[1]から[7]のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
本発明の表面微細凹凸体によれば、配光制御体として用いた場合に、正面輝度と視野角を両方満足させる効果を奏する。
本発明の実施形態の一例である表面微細凹凸体の微細凹凸を観察した光学顕微鏡写真である。 本発明の実施形態の一例である表面微細凹凸体の微細凹凸を観察したその他のレーザー顕微鏡写真である。 図1の光学顕微鏡写真中のI−I’線に沿って切断した部分を模式的に示す拡大縦断面図である。 図1の表面微細凹凸体の光学顕微鏡写真からグレースケール画像を得て、前記画像をフーリエ変換したフーリエ変換画像である。 図4のフーリエ変換画像を模式的に示す模式図である。 図4の中心からA1の中で最大頻度となる点を通るように線L1−1を引き、線L1−1の頻度分布をプロットしたグラフである。 図4の中心からL1−1と直交する方向に線L1−2を引き、線L1−2の頻度分布をプロットしたグラフである。 図1の表面微細凹凸体の微細凹凸形成面を原子間力顕微鏡により観察し、その観察結果から得た、表面微細凹凸体の要部の縦断面図である。 凸部の平均高さを求める方法の説明図である。 凸部の平均高さを求める方法の説明図である。 従来の異方性が高い配光制御シートを用いた場合の出射光の投影像の形状を示すイメージ図である。 本発明による表面微細凹凸体を用いた場合の出射光の投影像の形状を示すイメージ図である。 図1の表面微細凹凸体を製造するための原版(表面微細凹凸体)の縦断面図である。 図13の原版(表面微細凹凸体)の製造方法を説明する断面図である。 (a)本発明の実施形態の一例である表面微細凹凸体(配光制御シート)のサンプルのレーザー顕微鏡画像である。(b)は図(a)の線α(図1中のY方向と平行)に沿って図中横方向に切断した表面微細凹凸体断面の高さプロファイルを示している。 (a)表面微細凹凸体断面の高さプロファイルの一部において、1.8μm間隔の各点において接線を引いた状態を示す図である。(b)は図(a)中の点Uを拡大して接線の傾きを説明するための拡大図である。 FWHM=20°を示す配光制御シートのサンプルのスロープ角の頻度分布グラフ。 FWHM=10°を示す配光制御シートのサンプルのスロープ角の頻度分布グラフ。 接線のスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度(Frq tan(within0°-5°))に対する、接線のスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度(Frq tan(within20°-30°))の比とFWHMの相関の一例を示すグラフ。 図19と同様に、接線のスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度(Frq tan(within(0°-5°))に対する、接線のスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度(Frq tan(within(20°-30°))の比とFWHMの相関をかなりの種類の配光制御シートサンプルについて集めて示したグラフ。 図20と同様に、接線のスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度(Frq tan(within(0°-5°))に対する、接線のスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度(Frq tan(within(20°-30°))の比とFWHMの相関をかなりの種類の配光制御シートサンプルについて集めて示したグラフ。
以下、本発明を詳細に説明する。
<表面微細凹凸体>
図1は、本発明の表面微細凹凸体の一実施形態例である配光制御シート(配光制御体)の片面の光学顕微鏡写真(平面視;縦0.4mm×横0.5mmの視野部分を示す)であり、図2は、実施例1の配光制御シートの微細凹凸をレーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK−8510」)で観察したレーザー顕微鏡写真である。図2中の線αは、前記配光制御シートを線βに沿って図中横方向に切断した切断面における高さプロファイルを示している。なお、図1と図2とでは、倍率が異なる。
図3は、図1の光学顕微鏡写真中のI−I’線(後述する凸条部と凹条部とが繰り返される方向に沿う線)に沿って切断した部分を模式的に示す拡大縦断面図である。なお、図3は、配光制御シートの縦断面形状の理解しやすさの観点から、単純化して示している。
本明細書において、「表面微細凹凸体」とは、表面に微細な凹凸構造を有する物品のことを意味する。またさらに詳しく説明すると、「表面微細凹凸体」は後述する2次転写品のことを意味する。
この例の配光制御シート10(表面微細凹凸体)は、図3に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)を材料とする透明な基材11と、前記基材11の一方の面上に設けられた電離放射線硬化性樹脂の硬化物を材料とする透明な表面層12との2層構造であり、表面層12の露出している側の面に、波状の凹凸パターン13と、前記凹凸パターン13の上に形成された多数の凸部14とから構成された微細凹凸が形成されている。凸部14は、この例では、概略半球状に形成されている。また、この例では、基材11の露出している面(表面層12が設けられた方とは反対側の面)は、平滑面となっている。
微細凹凸における波状の凹凸パターン13は、図1中では縦方向に延び、図3中では紙面に対して垂直な方向に延びる複数の筋状の凸条部13aと、前記複数の凸条部13a間の凹条部13bとが、一方向(図1および2中横方向)に交互に繰り返されたものである。
各凸条部13aの縦断面形状は、図3に示すように、それぞれが基端側から先端側に向かって細くなる先細り形状である。
複数の凸条部13aは、図1に示すとおり、それぞれが蛇行しており、かつ、互いに非平行であり、不規則に形成されている。すなわち、各凸条部13aにおいて、稜線が蛇行し、各凹条部13bにおいて、谷線が蛇行している。また、隣接する凸条部13aの稜線の間隔が一定しておらず、隣接する凹条部13bの谷線の間隔が一定していない。
本明細書において、不規則であるとは、配光制御シート10を基材に対して法線方向から見た際に、凸条部13aが蛇行し、かつ互いに非平行であること、各凸条部13aの稜線が蛇行し、各凹条部13bの谷線画蛇行していること、また隣接する凸条部13aの稜線の間隔が一定せず、隣接する凹条部13bの谷線の間隔が一定していないことを意味する。
また、各凸条部13aにおいて稜線の高さが一定しておらず、各凹条部13bにおいて谷線の高さが一定していない。そのため、図3に示すように、各凸条部13aの縦断面形状は、それぞれ異なっており一律ではなく、不規則である。
微細凹凸は、このような波状の凹凸パターン13と、ランダムに分布した多数の凸部14とで、構成されている。
ここで、「凸条部13a」の稜線とは、凸条部13aの頂部をつないで続く線のことを意味する。
凸条部13aの稜線の途中に、凸部14が存在する場合は、凸部14の頂部を通るように引かれた線のことを指す。
図3に記載の基材11としては、機械的強度、寸法安定性に優れたPETの他、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンアクリレート、ポリスチレンなどの樹脂およびガラスなど、透明性を有する材料を使用できる。基材11の厚みは、例えば30〜500μmである。
表面層12としては、電離放射線硬化性樹脂の硬化物の他、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂が挙げられる。表面層12の厚みは、波状の凹凸パターン13を形成するのに充分な厚みであればよく、最も厚い部分の厚みとして、10〜25μm程度であることが好ましい。また、表面層12の厚みは、表面層12を変形させる前の厚みのことを意味し、光学式非接触膜厚測定器を用いて測定することができる。
また、この例では、配光制御シート10の微細凹凸は、波状の凹凸パターン13と、多数の凸部14とから構成されているが、本発明の表面微細凹凸体の微細凹凸は、波状の凹凸パターンと、多数の凹部とから構成されていてもよい。
なお、配光制御シート10において、波状の凹凸パターン13の繰り返し方向(図1中横方向)を方向Y、前記方向Yと直交する方向(図1中縦方向)を方向Xという。
また本明細書では、このXY直交座標系において、第1の方向はY軸方向として、第2の方向はX軸方向という。また、XY軸に直交する方向を、第3の方向、または表面微細凹凸体の基材の法線方向と言うこともある。
図示例の配光制御シート10は、配光制御性能を発揮する観点から、波状の凹凸パターン13の最頻ピッチが3〜20μmとされている。波状の凹凸パターン13の最頻ピッチは、好ましくは7〜15μm、より好ましくは11〜13μmである。ピッチとは、隣り合う凸条部の頂部間の距離である。
最頻ピッチが上記範囲内であると、前記配光制御シート10に対して、微細凹凸が形成された面(以下、微細凹凸形成面という場合がある)または前記面と反対側の平滑面側から光を入射させた場合、入射面とは反対面からの出射光は、方向Y(広配光分布方向)に良好に配光する。
そして、図示例の配光制御シート10の微細凹凸は、上述のように広配光分布方向への配光を主に担う波状の凹凸パターン13に加えて、ランダムに形成された多数の凸部14を有している。そのため、波状の凹凸パターン13の異方性が凸部14により適度に弱められる。その結果、前記配光制御シート10に対して、いずれか一方の面から光を入射させた場合、反対面からの出射光は、方向X(広配光分布方向に直交する方向)にも配光し、方向Yよりも小さい。
凸部14の見かけの最頻径は、1〜10μmが好ましく、より好ましくは3〜6μm、さらに好ましくは4〜5μmである。ここで「見かけの」と形容する理由は、これらの最頻径は、例えば図3中で言えば、上方(基材の法線方向)から配光制御シート10を顕微鏡写真として観察して径として捉えているからである。
凸部14の見かけの最頻径が上記範囲内であると、波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱めることができ、方向Yおよび方向Xの両方のFWHMを上記範囲に制御しやすく、たとえば、方向Yは8〜30°、好ましくは18〜23°、方向Xは5〜30°好ましくは10〜15°に制御しやすい。
本明細書におけるFWHMは、配光特性測定装置(例えば、GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製))を用いて以下の方法により測定できる。
まず、配光制御シート10に対して微細凹凸形成面と反対側の平滑面側から光を照射、入射させる。その際に、入射面とは反対面側から垂直に出光する出射光(出光角度=0°)の照度を基準値とし、方向Yに沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を、上記基準値に対する相対値として、例えば1°おきに測定する。そして、各方向Yの出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。
前記照度曲線における半値幅(全半値幅)を広配光分布方向(方向Y)のFWHMという。また、方向Xに沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を上記基準値に対する相対値として、例えば1°おきに測定する。そして、各方向Xの出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。前記照度曲線における半値幅(全半値幅)を広配光分布方向に直交する方向(方向X)のFWHMとする。なお、本明細書では、上記の方向について図別する場合にX方向についてのFWHMは「FWHMX」と表示し、Y方向についてのFWHMは「FWHMY」と表示する。
本明細書において、波状の凹凸パターン13の最頻ピッチ、凸部14の見かけの最頻径は、以下のように測定、定義される。
まず、表面微細凹凸体について、図1のような光学顕微鏡写真を得る。その際の観察視野は、縦0.4〜1.6mm、横0.5〜2mmとする。この画像がjpeg等の圧縮画像である場合は、これをグレースケールのTif画像に変換する。そして、フーリエ変換を行い、図4のようなフーリエ変換画像を得る。
また、図4のフーリエ変換画像の模式図を図5として示す。
ここで、図4において符号A1およびA2の白色部は、その形状に方向性があることから、波状の凹凸パターンのピッチの情報を含む。白色の輝度は頻度を示す(ただし中心点は除く)。一方、図4の白色円環Bは、その形状に方向性がないことから、多数の凸部の径の情報を含む。
そこで、図4の中心からA1の中で最大頻度となる点を通るように線L1−1を引き、線L1−1の頻度分布をプロットすると、図6のグラフが得られる。
また、図4の中心からL1−1と直交する方向に線L1−2を引き、線L1−2の頻度分布をプロットすると、図7のグラフが得られる。
図6において、頻度が高い1/XAが、配光制御シート10における、波状の凹凸パターンの最頻ピッチとなる。
また、図6および図7において、頻度が高い1/XB、1/YBが、配光制御シート10における、多数の凸部のそれぞれL1−1方向、L1−2方向の最頻径となる。すなわち、1/XAは波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、(1/XB+1/YB)/2は多数の凸部の見かけの最頻径である。
なお、図4のフーリエ変換画像において、中心からの方位は、図1に存在する周期構造(凹凸パターン13)の方向を意味し、中心からの距離は、図1に存在する周期構造の周期の逆数を意味する。この例では、図1に示すように、波状の凹凸パターン13が図中横方向に繰り返されているため、フーリエ変換画像において中心からの図中横方向に延びる線L1−1において、最頻ピッチの逆数に相当する部分の輝度(頻度)が高くなっている。
また、図5中、XBは、線L1−1(図5では図示略)の円環を通る部分において、頻度が最大となる位置であり、また、図5中、YBは、線L1−2(図5では図示略)の円環を通る部分において、頻度が最大となる位置である。
図示例のような光学顕微鏡写真を少なくとも5枚撮影し、それぞれの写真について上記のように求めた最頻ピッチの平均値を波状の凹凸パターン13の「最頻ピッチ」と定義する。すなわち、「最頻ピッチ」とは、隣り合う凸条部の頂部間距離のうち、最も出現頻度が高い頂部間距離のことを指す。また、それぞれの写真について上記のように求めた見かけの最頻径の平均値を凸部14の「見かけの最頻径」と定義する。すなわち、「見かけの最頻径」とは、凹凸パターンの上に形成された凸部の直径のうち、最も出現頻度の高い直径のことを指す。
なお、表面微細凹凸体の微細凹凸は、凸部の代わりに、凹部を有していてもよく、凹部の「見かけの最頻径」も凸部の「見かけの最頻径」と同じ方法で求められる。すなわち言い換えれば、見かけの最頻径とは、微細凹凸が形成された表面の光学顕微鏡写真からフーリエ変換画像を得て、該フーリエ変換画像から多数の凹部または凸部についての直交する2方向の径の頻度分布を得て、該頻度分布に基づいて得られた多数の凹部または凸部についての最頻径の平均値のことである。
波状の凹凸パターン13を構成する凸条部13aの平均高さは、4〜7μmが好ましく、より好ましくは5〜6μmである。凸条部13aの平均高さが上記範囲であると、配光制御性能が充分に得られる。
本明細書において、波状の凹凸パターン13の凸条部13aの平均高さは、以下のように測定、定義される。
まず、配光制御シート10の微細凹凸形成面を原子間力顕微鏡により観察し、その観察結果から、方向Yに沿って波状の凹凸パターン13を切断した面について、図8のような縦断面図を得る。そして、凸部14が存在していない部分の凸条部13aの断面図から、前記凸条部13の高さHを求める。具体的には、凸条部13aの高さHは、前記凸条部13aの頂部Tと前記凸条部13aの一方側に位置する凹条部13bの底部B1との垂直距離をH1とし、前記凸条部13aの頂部Tと前記凸条部13aの他方側に位置する凹条部13bの底部B2との垂直距離をH2とした場合に、H=(H1+H2)/2で求められる。
このような計測を凸部14が存在していない凸条部13aの50箇所に対して行い、50のデータの平均値を「凸条部の平均高さ」と定義する。
一方、凸部14の平均高さは、0.5〜3μmが好ましく、より好ましくは1〜2μm、さらに好ましくは1.1〜1.5μmである。凸部14の平均高さが上記範囲であると、波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱めることができ、方向Yおよび方向Xの両方のFWHMを上記範囲に制御しやすい。
本明細書において、凸部14の平均高さは、以下のように測定、定義される。
まず、上述のようにして図8の断面図を得る。そして、図9に示すように、波状の凹凸パターン13に由来する形状と、凸部14に由来する形状とに波形分離する。なお、波形分離は、波状の凹凸パターン13に由来する形状をサインカーブとして行う。ついで、図9の断面図から、波状の凹凸パターン13に由来する形状を差し引き、図10に示すように、凸部14に由来する形状のみの断面図を得る。そして、図10の断面図において、凸部14の高さH’を、H’=(H1’+H2’)/2として求める。H1’は、図10の断面図において、凸部14の頂部T’と前記凸部14の一方側のベースラインLαとの垂直距離であり、H2’は、凸部14の頂部T’と前記凸部14の他方側のベースラインLβとの垂直距離である。
このような計測を50個の凸部14に対して行い、50のデータの平均値を「凸部の平均高さ」と定義する。
配光制御シート10の微細凹凸における凸部14の占有面積割合は、30〜70%が好ましく、より好ましくは40〜60%、さらに好ましくは45〜55%である。凸部14の占有面積割合が上記範囲であると、波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱めることができ、方向Yおよび方向Xの両方のFWHMを上記範囲に制御しやすい。
本明細書において、配光制御シート10における凸部14の占有面積割合γ(%)は、以下のように測定、定義される。
まず、図1(a)のような光学顕微鏡写真を得て、視野全体の面積S2(例えば縦0.4〜1.6mm、横0.5〜2mm)中に認められる凸部14の個数nを数え、視野全体において、n個の凸部14によって占有されている面積S1=nrπを求める。占有面積割合γ(%)は以下の式により求められる。
γ(%)=S1×100/S2(ただし、式中のrは、凸部の見かけの最頻径の1/2(すなわち半径)である。)
このように図示例の配光制御シート10は、その片面に、方向Yへの配光を主に担う特定の波状の凹凸パターン13と、前記波状の凹凸パターン13上に形成され、前記波状の凹凸パターン13の異方性を適度に弱め、方向Xの配光を増加させる多数の凸部14とから主に構成される微細凹凸を有している。
また、図示例の配光制御シート10の波状の凹凸パターン13を構成している凸条部13aは、互いに非平行で、かつ、それぞれが蛇行していて、規則性がない。そのため、凹凸パターン13の異方性が適度に弱められていて、凸部14が形成されていることによる効果とあいまって、方向XのFWHMを増加させる効果がより顕著に発現するものと考えられる。
方向XのFWHMを広げる方法としては、高屈折率粒子等を添加する方法も考えられる。
しかしながら、高屈折率粒子等の添加は、配光制御シートの光透過率を下げる傾向にある。これに対して、本発明のように微細凹凸を特定に制御することで方向XのFWHMを増加させる方法では、高屈折率粒子等を添加する必要がなく、また、添加する場合でも、その添加量を少量とできる。そのため、光透過率を高く維持できる。
このような図示例の配光制御シート10は、例えば、プロジェクター用の配光制御部材;テレビ、モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話等のバックライト用の配光制御部材;等としても好適に使用される。
また、前記配光制御シート10は、コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源において、導光部材の出射面を構成する配光制御部材等としても好適に使用される。
本発明の1つの態様は、前述の表面微細凹凸体の配光制御シート、または配光制御部材としての使用、もしくはその使用方法である。また、本発明の表面微細凹凸体を配光制御シート、または配光制御部材として用いる場合、その応用先としては、前述の通り、プロジェクター用や、パソコンや携帯電話等のバックライト用、または導光部材の出射面等の配光制御部材等が挙げられる。
<表面微細凹凸体の製造方法>
図示例の配光制御シート10(表面微細凹凸体)は、微細凹凸を表面に有する配光制御シート形成用原版(配光制御体形成用原版)を型として用い、前記配光制御シート形成用原版(以下、「原版」ともいう)の微細凹凸を転写する転写工程を有する方法により製造できる。
本発明の1つの態様は、前記表面微細凹凸体の配光制御シートや、配光制御部材を製造するための原版としての使用である。
図示例の配光制御シート10は、原版の微細凹凸を転写して1次転写品を得て、ついで、前記1次転写品の微細凹凸をさらに転写して得た2次転写品である。1次転写品の有する微細凹凸は、原版の微細凹凸の反転パターンであるが、2次転写品の微細凹凸は、原版の微細凹凸と同じパターンである。よって、この例では原版として、図示例の配光制御シート10と同じ微細凹凸を有する表面微細凹凸体を製造し、これを転写の型として2次転写を行い、図示例の配光制御シート10を製造している。
また、n次転写品において、nが偶数である場合には、前記転写品の有する微細凹凸は原版の微細凹凸と同じパターンであるが、nが奇数である場合には、前記転写品の有する微細凹凸は原版の微細凹凸の反転パターンとなる。そして、nが奇数であるn次転写品であって、かつ、転写に用いた原版の微細凹凸が凸部を有するものである場合、そのn次転写品(nが奇数)の微細凹凸は、凸部が反転した凹部を有するものとなる。すでに述べたとおり、本発明の表面微細凹凸体の具備する微細凹凸は、凸部の代わりに凹部を有する形態であってもよい。よって、本発明の表面微細凹凸体には、上述の原版と、原版のn次転写品(nが偶数)だけでなく、原版のn次転写品(nが奇数)も含まれる。
以下、2次転写品である図示例の配光制御シート10の製造方法について説明する。
[原版]
図示例の配光制御シート10を製造するにあたっては、まず、図13に示す表面微細凹凸体20を製造し、これを原版として用いる。前記原版は、樹脂を材料とする基材21と、前記基材21の片面全体に設けられた硬質層22とを有し、硬質層22の露出した側の表面が、図示例の配光制御シート10と同様の微細凹凸に形成されたものである。
硬質層22は、この例では、マトリクス樹脂22aと前記マトリクス樹脂22a中に分散した粒子22bとからなり、折り畳まれたように変形しているとともに、硬質層22の厚みt(粒子が存在しない部分の厚み)は粒子の粒径dよりも小さく設定されている。そのため、前記硬質層22は、折り畳まれたように変形したことにより形成された波状の凹凸パターン13’(凸条部13a’および凹条部13b’)と、硬質層22に分散した各粒子22bが硬質層22の表面側に突出することにより形成された凸部14’とから構成される微細凹凸を有する。基材21における硬質層22との接触面は、折り畳まれたように変形した硬質層22の形状に追従した凹凸状となっている。
なお、硬質層22の厚みtとは、表面微細凹凸体20をその面方向に対して垂直に切った断面(縦断面)の顕微鏡写真から、硬質層22のうち粒子22bの存在しない部分を10カ所以上無作為に抽出して各部分の厚さを法線方向に測定した際の、得られた各数値の平均値である。
また、粒子22bの粒径dとは、均一に単分散している粒子について、レーザー回折・散乱式粒度分布分析装置で測定したモード径(最頻径)である。
このような図13の表面微細凹凸体20は、詳しくは後述するように、樹脂を材料とする基材フィルムの片面に、マトリクス樹脂中に粒子が分散した硬質層を設けて積層シートを形成する積層工程と、積層シートの少なくとも硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有する方法により製造できる。この方法によれば、それぞれが蛇行し、互いに非平行で、不規則な凸条部13a’を形成できる。また、各凸条部13a’の縦断面は、基端側から先端側に向かって先細り形状になる。
図13の表面微細凹凸体20においては、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1よりも、マトリクス樹脂22aのガラス転移温度Tg2が、10℃以上高いことが必要である。また、粒子22bは、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満の温度では、熱により粒子形状が変化しない材料から主に構成されることが必要である。
ここで「粒子形状が変化しない」とは、加熱前後で粒子の形、及び粒子径が変化しないことを意味する。
すなわち、基材21を構成する樹脂と、マトリクス樹脂22aとにおいては、これらのガラス転移温度の差(Tg2−Tg1)が10℃以上となるように選択されることが必要であり、前記差は20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。(Tg2−Tg1)が10℃以上であると、Tg2とTg1の間の温度で、容易に、後述の変形工程において加熱収縮などの加工が行える。また、Tg2とTg1の間の温度を加工温度とすると、基材のヤング率がマトリクス樹脂22aのヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、後述の変形工程において、硬質層22に波状の凹凸パターン13’を容易に形成できる。加工温度とは、変形工程で少なくとも硬質層22を折り畳むように変形させる際の温度(例えば熱収縮時の加熱温度。)のことである。
また、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用する必要性は経済面から乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。すなわち、本発明の1つの態様において、(Tg2−Tg1)は、10〜550℃が好ましく、30〜200℃がより好ましい。なお、後述の変形工程の加工温度における基材21とマトリクス樹脂22aとのヤング率の差は、波状の凹凸パターン13’を容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
Tg1は−150〜300℃であることが好ましく、−120〜200℃であることがより好ましい。Tg1が−150℃より低い樹脂は存在せず、Tg1が300℃以下であれば、上述の加工温度まで、容易に昇温、加熱できる。
上述の加工温度における、基材21を構成する樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。基材21を構成する樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層22が変形する際に同時に追従して変形することが可能な軟らかさである。
粒子22bを構成する材料には、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度未満では、熱により粒子形状が変化しない材料の1種以上を用いることができる。
例えば、粒子22bを構成する材料が、ガラス転移温度を有する樹脂およびガラス転移温度を有する無機材料からなる群から選ばれる1種以上である場合、そのガラス転移温度Tg3が、マトリクス樹脂のガラス転移温度Tg2と同様の条件を満たすこと、すなわち、(Tg3−Tg1)が10℃以上となるように選択されることが必要であり、(Tg3−Tg1)は20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。(Tg3−Tg1)が10℃以上であると、上述の加工温度において、粒子22bが変形した溶融したりせず、確実に凸部14’を形成する。
粒子22bを構成する材料が、ガラス転移温度を有さない材料、例えば内部架橋型樹脂などである場合には、そのビカット軟化温度(JIS K7206に規定)が、上述の条件を満たすこと、すなわち、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度より10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度Tg3についての好ましい温度範囲などの記載は、粒子22bがガラス転移温度を有さず、ビカット軟化温度を有する材料から主に構成される場合、そのビカット軟化温度にも該当するものとする。
さらに、粒子22bを構成する材料としては、ガラス転移温度、ビカット軟化温度が測定できないものであっても、基材21を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1より10℃高い温度未満において、熱により粒子形状が変化しない材料であれば、本発明において使用可能である。
Tg2およびTg3は、40〜400℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。Tg2およびTg3が40℃以上であれば、上述の加工温度を室温またはそれ以上にすることができて有用であり、Tg2が400℃を超えるようなマトリクス樹脂22aやTg3が400℃を超えるような粒子22bを使用することは、経済性の面から必要性に乏しい。
上述の加工温度におけるマトリクス樹脂22aのヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。マトリクス樹脂22aのヤング率が0.01GPa以上であれば、基材21を構成する樹脂の加工温度におけるヤング率より充分な硬さが得られ、波状の凹凸パターン13’が形成された後、前記凹凸パターン13’を維持するのに充分な硬さである。ヤング率が300GPaを超えるような樹脂をマトリクス樹脂22aとして使用することは、経済性の面から必要性に乏しい。
基材21を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
このうち、収縮後に所望の凹凸形状が得られやすいというから、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましい。
また、前記樹脂としては、質量平均分子量が、1000〜100万のものがより好ましい。1万〜10万のものがより好ましい。前記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、測定した値のことを指す。具体的な測定条件として、溶離液としては、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール等から適宜選択したものを用いることできる。また、分子量の標準物質としては、既知の分子量のポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等から適宜選択したものを用いることができる。また、測定温度としては、35〜50℃の範囲で適宜選択できる。
マトリクス樹脂22aとしては、そのガラス転移温度Tg2が上述の条件を満たすように、基材21の種類等に応じて選択され、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。
これらの中でも透明性の点では、アクリル樹脂が好ましい。
また、前記マトリクス樹脂としては、質量平均分子量が1000〜1000万のものが好ましく、1万〜200万のものがより好ましい。前記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、測定した値のことを指す。具体的な測定条件として、溶離液としては、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール等から適宜選択したものを用いることができる。また、分子量の標準物質としては、既知の分子量のポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等から適宜選択したものを用いることができる。また、測定温度としては、35〜50℃の範囲で適宜選択できる。
マトリクス樹脂22aは単独で使用してもよいが、波状の凹凸パターンの最頻ピッチ、平均高さおよび配向度を調整するなどの目的に応じて適宜併用してもよい。例えば、同種ではあるがガラス転移温度の異なる樹脂を併用したり、異なる種類の樹脂を併用したりできる。
粒子22bを構成する樹脂としては、そのガラス転移温度Tg3(またはビカット軟化点)が上述の条件を満たすように、基材21の種類等に応じて選択され、例えば、アクリル系熱可塑性樹脂粒子、ポリスチレン系熱可塑性樹脂粒子、アクリル系架橋型樹脂粒子、ポリスチレン系架橋型樹脂粒子などが挙げられる。また、無機材料としては、ガラスビーズなどが挙げられる。
基材21の厚みは30〜500μmであることが好ましい。基材の厚みが30μm以上であれば、製造された原版が破れにくくなり、500μm以下であれば、原版を容易に薄型化できる。なお、基材21の厚みとは、図13の表面微細凹凸体(原版)20をシート面に対して垂直に切った断面(縦断面)の顕微鏡写真から、10カ所以上無作為に抽出して基材21の厚さを測定した際の、得られた各数値の平均値である。
また、基材21を支持するために、厚さ5〜500μmの樹脂製の支持体を別途設けてもよい。
硬質層22の厚みtは、0.05μmを超え5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。硬質層22の厚みtが0.05μmを超え5μm以下であれば、配光制御体として好適な波状の凹凸パターン13’を形成できる。また、基材21と硬質層22との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。
粒子22bの粒径dは、硬質層22の厚みtより大きいことが必要であり、硬質層22の厚みtに応じて設定される。また、図13の表面微細凹凸体20を原版として用いて製造された図示例の配光制御シート10の凸部14の見かけの最頻径が、上述の好適な範囲となるように、適宜設定される。好ましい粒径dは、例えば、5〜10μmで、より好ましくは5〜8μmである。
なお、図13の表面微細凹凸体20は、原版ではなく配光制御体として使用することもできる。その場合には、前記表面微細凹凸体20が配光制御体としての機能を充分に奏するように、基材21、マトリクス樹脂22a、粒子22bに用いる材料に透明材料を用いる。
[原版の製造方法]
図13の表面微細凹凸体20は、図14のような積層シート30、すなわち、樹脂を材料とする基材フィルム31の片面(平坦な面)に、マトリクス樹脂、及び前記マトリクス樹脂中に分散した粒子22bからなり、0.05μmを超え5.0μm以下の厚みを有する硬質層32を設けた積層シート30を形成する積層工程と、積層シート30の少なくとも硬質層32を折り畳むように変形させる変形工程とを有する方法により製造できる。ここで基材フィルム31は、図13の表面微細凹凸体20の基材21に相当する。また、ここで平坦とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の面である。
(積層工程)
積層工程では、まず、マトリクス樹脂22aと粒子22bと溶媒とを含む塗工液(分散液または溶液)を調製し、前記塗工液を基材フィルム31の片面にスピンコーターやバーコーター等により塗工して乾燥させ、図14のように、厚みt’が0.05μmを超え、5.0μm以下である硬質層32を形成する。この時点での硬質層32は、折り畳むように変形していない。
硬質層32は、このように塗工液を基材フィルム31に直接塗工して設ける代わりに、あらかじめ作製した硬質層(マトリクス樹脂中に粒子が分散してなるフィルム)を基材フィルムに積層する方法で設けてもよい。
基材フィルム31は、樹脂を材料とする一軸方向加熱収縮性フィルムであることが好ましい。前記一軸方向加熱収縮性フィルムを用いると、次の変形工程において積層シート30を加熱することにより、容易に、硬質層32を折り畳むように変形し、波状の凹凸パターン13’を形成できる。また、この方法によれば、それぞれが蛇行し、互いに非平行となる不規則な凸条部13a’を形成できる。
一軸方向加熱収縮性フィルムを構成する樹脂としては、基材21を構成する樹脂としてすでに例示したとおりである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどのシュリンクフィルムが好ましく使用できる。
これらのシュリンクフィルムの中でも、一軸方向において、50〜70%収縮するものが好ましい。50〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を50%以上にでき、その結果、好適な最頻ピッチ、凸条部13a’の高さの波状の凹凸パターン13’を形成できる。
ここで、変形率とは、(変形前の長さ−変形後の長さ)×100/(変形前の長さ)(%)のことである。あるいは、(変形した長さ)×100/(変形前の長さ)(%)のことである。
また、このように基材フィルム31として一軸方向加熱収縮性フィルムを用い、次の変形工程でこれを熱収縮させる場合には、より容易に凹凸パターン13’を形成できることから、マトリクス樹脂22aのヤング率を0.01〜300GPaにすることが好ましく、0.1〜10GPaにすることがより好ましい。
塗工液に用いるマトリクス樹脂22aおよび粒子22bを構成する樹脂としては、それぞれすでに例示したものを使用できるが、マトリクス樹脂22aのガラス転移温度Tg2と、粒子22bのガラス転移温度Tg3とが、基材フィルム31のガラス転移温度Tg1よりも10℃以上高くなるように各材質を選択し、組み合わせることが重要である。このようにそれぞれの材質を選択したうえで、厚みt’が0.05μmを超え5.0μm以下である硬質層32を一軸方向加熱収縮性フィルム(基材フィルム31)の片面に設けた積層シート30を用いると、次の変形工程を経ることにより、最頻ピッチが3〜20μmであり、凸条部13a’の平均高さが4〜7μmである波状の凹凸パターン13’が形成さ
れやすい。
塗工液に用いる溶媒としては、マトリクス樹脂22aの種類にもよるが、マトリクス樹脂22aが例えばアクリル系樹脂の場合、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのうちの1種以上を使用できる。
塗工液中のマトリクス樹脂22aの濃度は、正味量(固形分量)として、5〜10質量%であることが塗工性の点で好ましい。また、粒子22bの量は、マトリクス樹脂22aの正味量100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることがより好ましい。このような範囲であると、形成される微細凹凸における凸部14a’または凹部の占有面積割合を上述の好適な範囲内に制御することができる。
ここで正味量(固形分量)とは、塗工液の質量(100質量%)に対して、前記塗工液中の溶媒が揮発した後に残る固形分の質量の比率のことをいう。
なお、積層工程で形成される硬質層32の厚みt’は、0.05μmを超え5.0μm以下の範囲内であれば、連続的に変化していても構わない。その場合、変形工程により形成される凹凸パターンのピッチおよび深さが連続的に変化するようになる。硬質層32の厚みt’は、次の変形工程を経てもほとんど変化せず、t’=tと考えることができる。
(変形工程)
上述のようにして得られた積層シート30を加熱して、積層シート30の基材フィルム31を熱収縮させることにより、図13の表面微細凹凸体20が得られる。なお、変形工程としては、例えば、日本国特許第4683011号公報等に開示の公知の方法を採用できる。
加熱方法としては、熱風、蒸気、熱水または遠赤外線中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱風または遠赤外線に通す方法が好ましい。
基材フィルム31を熱収縮させる際の加熱温度(加工温度)は、Tg2とTg1の間の温度とすることが好ましく、具体的には、使用する基材フィルム31の種類および目的とする凹凸パターン13’のピッチ、凸条部13a’の高さ等に応じて適宜選択することが好ましい。
この製造方法では、硬質層22の厚さが薄いほど、また、硬質層22のヤング率が低いほど、凹凸パターン13’の最頻ピッチが小さくなり、また、基材フィルム31の変形率が高いほど、凸条部13a’の高さが大きくなる。したがって、凹凸パターン13’の最頻ピッチおよび凸条部13a’の高さを所望の値にするためには、前記条件を適宜選択する必要がある。
なお、図13のような構成の表面微細凹凸体20は、下記(1)〜(4)の方法で製造することもできる。
(1)平坦な基材フィルムの片面の全部に、未変形の硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材フィルムのガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの圧縮は室温で行い、基材フィルムのガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの圧縮は、基材のガラス転移温度以上、硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(2)平坦な基材フィルムの片面の全部に、未変形の硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シートを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、硬質層を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材フィルムのガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの延伸は室温で行い、基材フィルムのガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの延伸は、基材フィルムのガラス転移温度以上、硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の電離放射線硬化性樹脂により形成された平坦な基材フィルムに、未変形の硬質層を積層して積層シートを形成し、電離放射線を照射して基材フィルムを硬化させることにより収縮させて、基材フィルムに積層された硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた平坦な基材フィルムに、未変形の硬質層を積層して積層シートを形成し、基材フィルム中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材フィルムに積層された硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(1)の方法において、積層シートを形成する方法としては、例えば、平坦な基材フィルムの片面に、粒子を含む樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、平坦な基材フィルムの片面に、あらかじめ作製した硬質層を積層する方法などが挙げられる。積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法としては、例えば、積層シートの一端部とその反対側の端部とを、万力等により挟んで圧縮する方法などが挙げられる。
(2)の方法において、積層シートを一方向に延伸する方法としては、例えば、積層シートの一端部とその反対側の端部とを、引っ張って延伸する方法などが挙げられる。
(3)の方法において、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は基材フィルムを構成する樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
(1)〜(4)の方法における硬質層においても、前述の方法で用いるものと同様の成分を用いることができ、同様の厚さとすることができる。また、積層シートの形成方法は、(1)の方法と同様に、基材フィルムの片面に塗工液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材フィルムの片面に、あらかじめ作製した硬質層を積層する方法を適用できる。
また、一軸方向加熱収縮性フィルムの代わりに、二軸方向加熱収縮性フィルムを用いて表面微細凹凸体の原版を製造してもよい。先に説明した積層工程で使用する一軸方向加熱収縮性フィルムの代わりに二軸方向加熱収縮性フィルムを使用すれば、工程的には同様にして製造することができる。二軸方向加熱収縮性フィルムを用いて得た表面微細凹凸体の凹凸パターンは、特定の方向に沿わない凹凸パターンとなる。二軸方向加熱収縮性フィルムを用いた場合、得られる表面微細凹凸体は、表面微細凹凸が形成された面を通過する光を最も広く配光分布する方向Yに対して、略直交する方向Xにもある程度のFWHMを有するため、必ずしも硬質層への粒子(参照:図13中の粒子22b)の添加を必要としない。このように粒子を添加しない場合は、先に説明した積層工程において、粒子(22b)を含まない塗工液を使用すれば、工程的には同様にして製造することができる。二軸加熱収縮フィルムで粒子無添加の場合、硬質層の厚みを厚く、例えば3μm以上にすると、後述する所望の凹凸形状が得られやすくなり、好ましい。このように二軸方向加熱収縮性フィルムを使用して、粒子の添加をしない表面微細凹凸体の原版製造方法を簡単に以後「二軸方向加熱収縮性フィルムと粒子無添加の製造方法」と略していう。
[原版を用いた転写による表面微細凹凸体の製法]
図13の表面微細凹凸体20を原版として用いて、図示例の配光制御シート10を製造する場合には、前記表面微細凹凸体(原版)20の微細凹凸を他の材料に転写する転写工程を行う。この例では、前記表面微細凹凸体(原版)20の硬質層22の表面に形成された微細凹凸を他の材料に転写し、原版の微細凹凸の反転パターンを表面に有する1次転写品を得て、次いで、前記1次転写品の反転パターンを他の材料に転写し、2次転写品である図示例の配光制御シート10を得る。転写工程としては、例えば、日本国特許第4683011号公報等に開示の公知の方法を採用できる。
本発明の1つの態様は、前述の表面微細凹凸体を原版として用いた、表面微細凹凸体の製造方法である。
具体的には、原版である図13の表面微細凹凸体20の微細凹凸に対して、離型剤を含む未硬化の電離放射線硬化性樹脂を例えば3〜30μmの厚さに収まるように、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーターなどのコーターで塗布し、電離放射線を照射して硬化させた後、原版を剥離して、1次転写品を得る。1次転写品は、原版の微細凹凸の反転パターンを有する。一方、PETを材料とする透明な基材11を用意し、その片面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂を微細凹凸を充分に覆う厚さで塗布する。そして、塗布された未硬化の電離放射線硬化性樹脂の層に対して、先に得られた1次転写品の反転パターンを有する面を押し当て、電離放射線を照射して硬化させた後、1次転写品を剥離する。電離放射線の照射は、1次転写品側、透明なPET基材側のうち、電離放射線透過性を有するいずれか一方側から行えばよい。これにより、PETを材料とする透明な基材11と、その片面上に形成された電離放射線硬化性樹脂硬化物の表面層12とからなり、表面層12の表面に微細凹凸が形成された図1および図3に示す配光制御シート(2次転写品)10が得られる。
電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。照射する電離放射線の種類は、樹脂の種類に応じて適宜選択する。電離放射線としては、一般には紫外線および電子線を意味することが多いが、本明細書においては、可視光線、X線、イオン線等も含む。
未硬化の電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の電離放射線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。未硬化の電離放射線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。また、未硬化の電離放射線硬化性樹脂が紫外線硬化性である場合には、未硬化の電離放射線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
また、電離放射線硬化性樹脂の代わりに、例えば、未硬化のメラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を用いて転写を行ってもよく、微細凹凸が転写できる限り、その具体的方法、転写する材料に制限はない。
熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば液状の未硬化の熱硬化性樹脂を微細凹凸に塗布し、加熱により硬化させる方法が挙げられ、熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂のシートを用い、微細凹凸に押し当てながら加熱して軟化させた後、冷却する方法が挙げられる。
また、上述のように、2次転写品を製造する場合には、例えば日本国特許第4683011号公報などに記載されている、めっきロールを用いる方法も挙げられる。具体的には、まず、原版として長尺なシート状物を製造し、前記原版を丸めて円筒の内側に貼り付け、前記円筒の内側にロールを挿入した状態でめっきを行い、円筒からロールを取り出してめっきロール(1次転写品)を得る。ついで、前記めっきロールの微細凹凸を転写することにより、配光制御シート(2次転写品)を得る。
原版としては、枚葉タイプのものもウェブタイプのものも用いることができる。ウェブタイプの原版を用いると、ウェブタイプの1次転写品および2次転写品を得ることができる。枚葉タイプにおいては、前記枚葉タイプの原版を平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉タイプの原版をロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉タイプの原版を配置させてもよい。ただし、これら枚葉タイプの原版を用いる方法において、図示例のような光拡性散シートを大量生産するためには、転写を多数回繰り返す必要がある。転写性(離型性)が低い場合には、転写すべき微細凹凸に目詰まりが生じ、微細凹凸の転写が不完全になる場合がある。これに対して、原版をウェブタイプとすると、大面積で連続的に微細凹凸を転写でき、転写を多数繰り返さなくても、必要な量の配光制御シートを短時間に製造できる。
[原版の製造方法および原版を用いた転写による表面微細凹凸体の製法の変形例]
上述の[原版の製造方法]の積層工程においては、マトリクス樹脂22aと粒子22bと溶媒とを含む塗工液を用いた。しかしながら、粒子を含まず、マトリクス樹脂と溶媒とを含む塗工液を用いて硬質層を形成し、変形工程により波状の凹凸パターンとし、その後に、前記凹凸パターン上に、多数の凹部または凸部を形成してもよい。硬質層の形成方法は、粒子を用いない以外は、上述の方法と同様に行える。変形工程も、上述の方法と同様に行える。ついで行われる、形成された凹凸パターン上に、多数の凹部または凸部を形成する方法としては、後述の(5)〜(8)の方法が挙げられる。
(5)回転式精密切削加工機により切削加工する方法。
(6)凹部または凸部と同様な大きさ、径を有する突起物を前記波状の凹凸パターン上に押し付けて凹みを形成する方法。
(7)樹脂又は無機物の溶融物を微粒子化したものを前記波状の凹凸パターン上に付着させた後、冷却固化して前記樹脂又は無機物によって形成された凸部を形成する方法。
(8)樹脂又は無機物を分散媒に分散した液を前記波状の凹凸パターン上に付着させた後、分散媒を蒸発させて前記樹脂又は無機物によって形成された凸部を形成する方法。
なお、上記(7)又は(8)の方法においてインクジェット印刷方式を応用することにより、高精度で波状の凹凸パターン上に多数の凹部または凸部を形成することができる。
また、粒子を含まず、マトリクス樹脂と溶媒とを含む塗工液を用いて硬質層を形成し、変形工程により波状の凹凸パターンとしたもの(多数の凹部または凸部は未だ形成されていないもの)を原版として転写品を得て、前記転写品に対して、上記(5)〜(8)の方法により、凹凸パターン上に多数の凹部または凸部を形成してもよい。そして、これを原版として転写することにより、表面微細凹凸体を製造することもできる。
<その他の形態について>
以上の説明においては、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体を原版とし、前記表面微細凹凸体の微細凹凸を転写した1次転写品を得て、ついで、前記1次転写品の微細凹凸(原版の反転パターン)を転写した2次転写品を配光制御シート10とした。
しかしながら、本発明は、以上の形態に限定されない。
すなわち、上述の積層工程と変形工程により製造された図13のような表面微細凹凸体20そのものを配光制御シートとして使用することもできる。また、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体20を原版として得られた1次転写品や、n次転写品(nは3以上の整数。)を配光制御シートとして使用することもでき、転写品であれば、2次転写品に限定されない。
また、原版を用いて、曲面を有する成形体の前記曲面に、微細凹凸を転写してもよい。
また、積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体やそのn次転写品を原版として用いて、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明な熱可塑性樹脂を射出成形し、微細凹凸が表面の少なくとも一部に形成された射出成形品を製造してもよい。
なお、先に具体的に示した積層工程と変形工程により製造された表面微細凹凸体20を原版として得られたn次転写品において、nが奇数の場合には、微細凹凸として、特定の波状の凹凸パターン上に、凸部ではなく、凹部が形成されている。これは、nが奇数であるn次転写品においては、粒子に基づいて形成される凸部の反転パターン、すなわち、凹部が形成されるためである。このように微細凹凸として、特定の波状の凹凸パターンとともに凹部を有する表面微細凹凸体であっても、波状の凹凸パターンによる異方性が凹部により弱められているため、方向Yに充分なFWHMを有し、かつ、方向Xにもある程度のFWHMを示す。よって、nが奇数であるn次転写品であっても、nが偶数であるn次転写品と同等の配光制御性能を示す。
また、硬質層の形成に用いる粒子としては、樹脂粒子、無機粒子が使用でき、変形工程や、微細凹凸を転写する工程において、溶融したり変形したりしない限り、どのような材料を使用するものであってもよい。ただし、上述のとおり、図13のように粒子そのものを備えた表面微細凹凸体20を配光制御シートとして使用する場合には、粒子として、透明粒子、好適にはアクリル系架橋型樹脂粒子、ガラスビーズ、ポリスチレン系架橋型樹脂粒子などを用いることが好適である。
また、以上の例では、表面微細凹凸体、配光制御シートとして、シート状物を例示したが、シート状物に限定されず、立体成形体であってもよい。
また、微細凹凸は、表面微細凹凸体の表面の少なくとも一部であれば、目的に応じて、いかなる部分に形成されていてもよい。例えば、表面微細凹凸体がシート状物である場合、一方の面のみに形成されていても、両面に形成されていても、各面において一部のみに形成されていてもよいし、シート状物の周面(端面)の少なくとも一部に形成されていてもよい。
さらに、表面微細凹凸体が立体成形体である場合にも、全表面の全面に形成されていても、一部のみに形成されていてもよい。なお、表面微細凹凸体が立体成形体である場合、前記立体成形体は、配光制御シートについて例示した用途と同様の用途に使用できる。すなわち、プロジェクター用の配光制御部材;テレビ、モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話等のバックライト用の配光制御部材;コピー機等に使用される、LED光源を線状に配列したスキャナ光源において、導光部材の少なくとも出射面を構成する配光制御部材;等として好適に使用できる。
本発明者等は以上に説明した方法で作製した種々のFWHMを有する、それぞれの配光制御シート(2次転写品)サンプル、を使用して正面輝度や視野角を測定した。その結果の一部を表1に示した。表1は、各種の配光制御シート(2次転写品)サンプルについて得られたFWHM、正面輝度および視野角の状況を示す。表1から以下のことが分かる。配光制御シートのFWHMが5°を下回ると正面輝度は高くなるが、視野角が不十分になり、FWHMが30°を上回ると視野角は十分だが、正面輝度が低くなる。なお、正面輝度は配光制御シートなしの状態で測定した正面輝度の20%以上であれば十分だと本発明者等は考える。また、視野角は50%以上あれば十分だと本発明者等は考える。また、視野角をより好ましくは55%以上にするためにはFWHMは8°以上がより望ましい。また、正面輝度をより好ましくは25%以上にするためにはFWHMは25°以下がより望ましい。
さらに、FWHMがX,Yの両方向で式(a)を満足する、すなわち5°を上回ると、視野角も両方向でより大きな角度を確保しうるのでより好ましい。
(輝度および視野角の測定方法)
照射角120°のLEDを12mm間隔で直列に3個並べ、LEDの上に集光レンズを置き、さらに集光レンズの上に配光制御シートを置いてディスプレイを作製した。なお、集光レンズは集光レンズからの出射角度が40°になるものを使用した。また、集光レンズと配光制御シートの間隔は10mmとした。ディスプレイにFWHMが5°から60°の配光制御シートを使用したときに、ディスプレイの法線方向の輝度を輝度計(TOPCON社製「UA-1000」)を用いて測定した。正面輝度は、このときのディスプレイ面内における最大輝度を指す。なお、配光制御シートなしの状態の正面輝度は15000cd/m2であった。視野角は、ディスプレイにFWHMが5°から60°の配光制御シートを使用したときに、X方向あるいはY方向について、斜め10°からの輝度を輝度計で測定し、式(1)から算出した。斜め10°における輝度はディスプレイ面内の最大輝度を指す。
斜め10°の輝度/正面輝度×100…式(1)
正面輝度と視野角はFWHMに依存することは先に述べたが、本発明者等は様々なFWHMを有する配光制御シートサンプルの正面輝度や視野角を測定したところ、FWHMが5°以上30°以下の範囲であっても正面輝度が十分でないものを見出だした。
そこで本発明者等は、正面輝度を制御する因子がFWHM以外にも存在すると考え、上記配光制御シート、つまりFWHMが5°以上30°以下の範囲であっても正面輝度が十分でない配光制御シートを以下の方法でさらに詳しく解析した。
正面輝度を十分にする効果は、配光制御シートの光拡散機能によってもたらされるが、その光拡散のメカニズムは主に光の屈折の原理に従うと本発明者等は考えている。光の屈折は、配光制御シートの微細凹凸形状に依存するので、本発明者等は種々のFWHMを有する配光制御シートサンプルについて、下記の方法で凹凸形状の解析を行った。
本発明者等は、種々の配光制御シートサンプルの凹凸形状をレーザー顕微鏡を用いて詳細に観察した。図15(a)(配光制御シートのレーザー顕微鏡画像)は配光制御シートサンプルの微細凹凸をレーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK-X110」)で観察したレーザー顕微鏡写真である(横;260μm、縦;200μm)。図15(b)(配光制御シートサンプルの高さプロファイル)は図15(a)の線αに沿って図中横方向に切断した高さプロファイルを示している。図15(b)の高さプロファイルにおいて1.8μm間隔の各点において接線を引く、その状況を図16(a)に示した。図16(a)は表面微細凹凸体断面の高さプロファイルの一部において、1.8μm間隔の各点(接点)において接線を引いた例の状態を示す。図(a)中の点Uにおける接線の傾きを、その部分を拡大した図(b)について説明する。点Uでの接線の傾きAU(=高さ/1.8)からU地点でのスロープ角θUを下式(2)により定義する(図16(b))(スロープ角θUの算出方法)。
)A=tanθU…式(2)
観察対象サンプルが、微細凹凸体の最頻ピッチが8〜20μm、最頻高さが3〜10μmである配光制御シートの場合、接線Iを1.8μm間隔で引くことが適切であった。接線Iを1.8μmより大きい間隔、例えば2.0μm以上で引いた場合、微細凹凸体を正確に解析できないため好ましくない。また逆に1.7μm以下の小さい間隔で接線を引いた場合、より精密に解析できる方向になるはずであるが、本発明者等の試行によれば数値的な影響は殆どなかった。なお、最頻ピッチが8μmを下回るときは、接線Iの間隔を1.8μm以下にすることが好ましい。例えば、接線Iの間隔を最頻ピッチの1/4倍以下程度に設定することが好ましい。なお、接線の傾きAが負の値のときは、正の値に返してからスロープ角θUを求める。
以降の計算は、図15(a)(配光制御シートのレーザー顕微鏡画像)の線αに平行に0.13μm間隔でとった線毎に高さプロファイルをとり、各高さプロファイルについて1.8μm間隔でスロープ角を算出して、図15(a)(配光制御シートのレーザー顕微鏡画像)の視野内の全てのスロープ角を算出してその頻度(Aの値の頻度)を求めるためのデータを蓄積した。
図17にFWHM=20°を示す配光制御シートのサンプルのスロープ角の頻度分布グラフの一例を示す。Y方向のFWHMが20°である配光制御シートを上記方法で解析したときの接線のスロープ角の頻度分布グラフである。
図18にFWHM=10°を示す配光制御シートのサンプルのスロープ角の頻度分布グラフの一例を示す。Y方向のFWHMが10°である配光制御シートを上記方法で解析したときの接線のスロープ角の頻度分布グラフである。
図17(FWHM=20°のスロープ角の頻度分布グラフ)及び図18(FWHM=10°のスロープ角の頻度分布グラフ)より、FWHMが広いと、スロープ角の大きい地点の頻度が高くなり(図17)、FWHMが狭いと、スロープ角の小さい地点の頻度が高くなることを見出した(図18)。
上記の知見から本発明では図15(a)に現れる視野内の全てのスロープ角データの平均値とFWHMの間に相関関係があることを見出した。すなわち、グラフの横軸にFWHMをとり、スロープ角の平均値を縦軸にとった場合、FWHMとスロープ角の平均値との間に正の相関関係があることを見出した。
本発明者等はスロープ角の頻度分布を、スロープ角の角度の範囲を、適宜分割区分化して詳細に解析した。解析の考え方を下記する。
配光制御シートに光が入射すると、微細凹凸体の形状に応じて、光の屈折の原理により光が屈折し、様々な方向に光が拡散する。光の屈折が最も起こりにくいのは、出射角が0°付近の部分である。この部分を出射した光は屈折の影響が少なく最も効率よく正面方向に出射する。これらの光は照度曲線のピークトップ付近に相当する。すなわち照度曲線のピークトップ付近における照度は、微細凹凸体の平坦な部分、つまりスロープ角が0°−5°の部分に由来するので、本発明者等はスロープ角が0°−5°の範囲の頻度を基準にして、接線のスロープ角が特定の範囲の頻度、例えば、10°−20°、あるいは15°−25°、あるいは35°−40°などとの頻度の比を、まず正面輝度の性質が良好な配光制御シートについて試した。
その結果、範囲20°−30°の接線のスロープ角の頻度が最もFWHMの広狭と相関が高かった。例えば、範囲10°−20°のそれとの比の場合、相関係数の2乗r2は0.7程度だが、範囲20°−30°のそれの場合は0.96程度あった。
本発明者等はいくつかの正面輝度の性質が良好な配光制御シートについて、横軸にFWHM、縦軸に、接線のスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度(Frq tan(within(0°-5°))に対する、接線のスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度(Frq tan(within(20°-30°))の比をとったところ、良好な正の相関を示すことがわかった(図19参照)。図19は、接線のスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度(Frq tan(within (0°-5°))であらわす)に対する、接線のスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度(Frq tan(within(20°-30°))であらわす)の比とFWHMの相関の一例を示すグラフである。
次に本発明者等は、正面輝度の評価が低い配光制御シートについても上記方法で凹凸形状を解析し、横軸にFWHM、縦軸に頻度(Frq tan(within(0°-5°))に対する、接線の頻度(Frq tan(within(20°-30°))の比をとったところ、これらの配光制御シートは図19の相関を示す一次直線から大きく外れているデータを示すことがわかった。
図20はFWHMが5°以上30°以下を満足するかなりの種類の配光制御シートサンプルについて、FWHMとFrq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))の相関を調べたものの一例である。本発明者等は相関を調べた全サンプルを数学的に処理することにより、式(0.13×FWHM+0.5)を得た。なお、図20において、●で示したプロットをとる配光制御シートは正面輝度がより好ましい範囲、具体的には4000cd/m2以上であり、○で示したプロットをとる配光制御シートは正面輝度が好ましい範囲、具体的には3000cd/m2以上である。なお、×で示したプロットをとる配光制御シートは、正面輝度が好ましい範囲から逸脱しているサンプルとなる。
本発明者等はFrq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))が式(0.13×FWHM+0.5)を上回ると、配光制御シートの正面輝度が好ましい範囲より低下することを見出した。
Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))が大きくなる、つまりスロープ角が20°−30°の範囲の頻度が高くなると、配光制御シートに光が入射したとき、比較的大きい角度に出射する光が増加すると本発明者等は考えている。そうすると正面輝度に寄与する光が減少して、正面輝度が低下すると推定している。
以上説明したように、図20から、望ましい正面輝度と視野角を実現する配光制御シートは下記式(a)及び(b)を満たすことを見出した。
5≦FWHM≦30・・・(a)
Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM+0.5 ・・・(b)
またさらに好ましくは、望ましい正面輝度と視野角を実現する配光制御シートは、下記式(a)および(c)を満たすことを本発明者等は見出した。特にこの範囲にある配光制御シートは、正面輝度が優れることになる。
5≦FWHM≦30・・・(a)
Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM−0.1 ・・・(c)
以上説明したFWHM及び接線の傾きを得る配光制御シート切断面の方向はいずれもY方向のデータに基づいていた。なお、上記試行に用いた配光制御シートはいずれも、X方向のFWHMが同程度のものを使用した。また、該配光制御シートはいずれも、X方向のFWHMが上記式(a)を満たすが、上記式(b)を満たさないものを使用した。一方、本発明者等の試行によれば、Y方向がいずれも同程度のFWHMを有し、上記式(a)を満たすが、上記式(b)を満たさない、種々の配光制御シートについても、X方向のデータを使用して同様の結果が得られた。すなわち、本発明者等はX方向およびY方向が上記式(a)を満たし、X方向あるいはY方向の少なくとも一方が、上記式(b)を満たす配光制御シートは、望ましい正面輝度と視野角を実現することを見出した。
また本発明者等は、種々の配光制御シートサンプルについて上記試行をしたが、先出の二軸方向加熱収縮性フィルムと粒子無添加の製造方法による原版を元に製造したサンプルの方がFrq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))が小さくなり、正面輝度の上昇に有利であることを見出した。その理由は、粒子構造を有すると、微細凹凸体のスロープ角の大きい地点の頻度が高くなり、Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))が大きくなるためと本発明者等は考えている。
また、粒子無添加か粒子添加であるかにかかわらず、二軸方向加熱収縮フィルムを使用した原版を元に製造した配光制御シートの中でも、原版に使用される硬質層の厚みが厚い場合、例えば3μm以上の場合、特にFrq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))が小さくなり、正面輝度の上昇に有利であることを本発明者等は見出した。この理由は硬質層の厚みが厚いと収縮の過程でスロープ角の小さい滑らかな構造が形成されやすいためと推定している。
また、テレビ、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、車載用表示装置等に使用されるプロジェクターやディスプレイにおいては、白色ダイオードを使用し、白色ダイオードからの出射光を集光レンズにより集光する技術が用いられている場合がある。このような場合、集光レンズからの出射光を白い紙等に投影した際に、投影像の中心部と外周部で色合いが異なる現象が観察されることがある。そのような投影位置による色合いの差違があるとディスプレイに白色以外の色が映るので見苦しいとみなされる恐れがある、従って、これを均一な白色に戻すことがより好ましい。本明細書ではこれを以降省略して「白色戻し」という。
本発明者等は、種々の配光制御シートについて、白色戻しが望ましいディスプレイにおいて、白色戻しを測定したところ、白色戻しとFWHMは相関関係があり、FWHMが5°以上を満たすとき、十分な白色戻しが得られることを見出した(表2)。なお、白色戻しの測定方法は後に詳述する。
しかし、さらに試行を繰り返し、様々なFWHMを有する配光制御シートサンプルの白色戻しを測定したところ、FWHMが5°以上であっても白色戻しが十分でないものを本発明者等は見出した。
そこで本発明者等は、FWHMが5°以上を満たし、かつ白色戻しを満足するかなりの種類の配光制御シートについて、FWHMとFrq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))の相関関係を調べ、全サンプルを数学的に処理することにより(図21)、式(0.07×FWHM−0.32)を得た。
本発明者等は、式(0.07×FWHM−0.32)を下回ると、白色戻しが不十分になることを見出した。
以上のことから、白色戻しを満足させることがより望ましいディスプレイにおいては、望ましい正面輝度および白色戻しを実現する配光制御シートは下記式(a)及び(d)を満たすことを見出した。
5≦FWHM≦30・・・(a)
0.07×FWHM−0.32≦Frq tan(within(20°−30°))/Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM+0.5 ・・・(d)
さらに、FWHMがX,Yの両方向で式(a)を満足する、すなわち5°を上回ると、白色戻しも両方向において確保しうるのでより好ましい。
白色戻しは、ディスプレイにFWHMが5°から60°の配光制御シートを使用したときに、ディスプレイ面内を複数箇所に分割し、各箇所での色彩を輝度計(TOPCON社製「UA-1000」)を用いて測定し、最も高い箇所と低い箇所の差Δについて以下の基準に従い判断した。
「○」:10%以下
「△」:20%より小さく10%より大きい
「×」:20%以上
(各サンプル)
以上の説明したように、本発明では種々のFWHMを有する配光制御シートサンプルを作製して試行を繰り返したが、配光制御シートのFWHMは先に説明した実施例における硬質層の厚みや粒子の含有率および粒子径、加熱収縮フィルムの収縮率等を変化させることにより任意に変化させて、各種サンプルを作製した。
以下、本発明について、実施例を例示して具体的に説明する。
(実施例1)
下記塗工液(1)をポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルム(東洋紡株式会社製「SC807」、厚さ:30μm、ガラス転移温度Tg1=80℃)の片面に、 塗工乾燥後の硬質層の厚みt’が4μmになるようにバーコーター(メイヤーバー♯22)により塗工し、積層シートを得た。
(塗工液(1))
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg2=128℃)と、粒径dが5μmであるアクリル系架橋型樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製「SSX105」、ビカット軟化温度200℃以上)とを、固形分質量比60:40で混合し、トルエンに加え、固形分濃度7.7質量%の塗工液(1)を得た。なお、上記アクリル樹脂Aは固形分濃度20質量%であるが、本例での質量比および濃度は、正味量(固形分量)で計算した値である。以下の例についても、正味量で計算している。
次いで、該積層シートを熱風式オーブンを用いて180℃で1分間加熱することにより、ポリエチレンテレフタレート一軸方向加熱収縮性フィルムを一軸方向において、加熱前の長さの43%に熱収縮させ(変形率として45%)、硬質層を折り畳むように変形させた。これにより、波状の凹凸パターンと、その上に形成された多数の凸部とを有する微細凹凸が硬質層の表面に形成された表面微細凹凸シート(原版)を得た。また、形成された凸条部は、それぞれが蛇行して、不規則に形成されていた。
得られた表面微細凹凸シート(原版)の微細凹凸形成面に、離型剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂A(綜研化学社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化させ、硬化後、剥離して、表面微細凹凸シートの微細凹凸の反転パターンを有する1次転写品を得た。ついで、透明PET基材(東洋紡株式会社製「A4300」、厚さ:188μm)の片面に未硬化の紫外線硬化性樹脂B(ソニーケミカル社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、塗布された紫外線硬化性樹脂Bに対して、1次転写品の上記反転パターンを有する面を押し当て、紫外線を照射して硬化させ、硬化後、1次転写品を剥離して、透明PET基材上に、紫外線硬化性樹脂の硬化物を材料とする表面層が形成され、該表面層の表面に、上記の表面微細凹凸シート(原版)と同じ微細凹凸が形成された配光制御シート(2次転写品)を得た。なお、本実施例1の各製造条件の中で、硬質層の厚みや粒子の含有率および粒子径、一軸方向加熱収縮フィルムの収縮率等を替えて種々の実施例のサンプルを作製して前出の各配光制御シートサンプルを製造したものである。
(実施例2)
下記塗工液(2)をポリエチレテレフタレート二軸方向加熱収縮性フィルム(東洋紡株式会社製「PX-40S」)、厚さ:25μm、ガラス転移温度Tg1=75℃)の片面に、 塗工乾燥後の硬質層の厚みt’が4μmになるようにバーコーター (メイヤーバー♯22)により塗工し、積層シートを得た。
(塗工液(2))
アクリル樹脂B(ガラス転移温度Tg2=100℃)、トルエンに加え、固形分濃度10質量%の塗工液(2)を得た。なお、上記アクリル樹脂Bは固形分濃度21質量%であるが、本例での質量比および濃度は、正味量(固形分量)で計算した値である。以下の例についても、正味量で計算している。
次いで、該積層シートを熱風式オーブンを用いて120℃で0.5分間加熱することにより、ポリエチレンテレフタレート二軸方向加熱収縮性フィルムを一方向において、加熱前の長さの43%に熱収縮させ(変形率として45%)、一方向に略直交する他方向において、加熱前の長さの38%に熱収縮させ(変形率として40%)、硬質層を折り畳むように変形させた。これにより、波状の凹凸パターンが層の表面に形成された表面微細凹凸シート(原版)を得た。また、形成された凸条部は、それぞれが蛇行して、不規則に形成されていた。
得られた表面微細凹凸シート(原版)を用いて、実施例1と同様にして、配光制御シート(2次転写品)を得た。なお、本実施例2の各製造条件の中で、硬質層の厚みや粒子の含有の有無、粒子の含有率および粒子径、二軸方向加熱収縮フィルムの収縮率等を替えて種々の実施例のサンプルを作製して前出の各配光制御シートサンプルを製造したものである。
(評価)
上記の各例で得られた配光制御シートについて、FWHMおよび正面輝度、視野角、Frq tan(within(20°−30°))/Frq tan(within(0°−5°))を上述した方法で測定した。
その結果を表3に示す。
10:配光制御シート、13:波状の凹凸パターン、13a:凸条部、13b:凹条部、14:凸部、20:表面微細凹凸体(原版)、21:基材、22:硬質層、22a:マトリクス樹脂、22b:粒子、31:基材フィルム、32:硬質層(未変形)

Claims (8)

  1. 表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、前記微細凹凸が形成された面を通過する光を最も広く配光分布する方向YのFWHM(FWHM)または前記方向Yに対して略直交する方向XのFWHM(FWHM)の少なくとも一方が下記式(a)を満足し、該FWHMの少なくとも一方が、該FWHMと同方向における表面微細凹凸体の微細凹凸の断面の高さプロファイルにおいて、所定の間隔で接線を引き、その各接点のスロープ角(tan)の頻度分布が下記式(b)を満足する表面微細凹凸体。
    5≦FWHM≦30 ・・・(a)
    Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM+0.5・・・(b)
    ここで、Frq tan(within(20°−30°))はスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度をあらわし、Frq tan(within(0°−5°))はスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度をあらわす。
  2. 前記方向Xおよび方向YのFWHMが式(a)を満足する請求項1記載の表面微細凹凸体。
  3. 表面の少なくとも一部に微細凹凸が形成された表面微細凹凸体であって、前記微細凹凸が形成された面を通過する光を最も広く配光分布する方向YのFWHM(FWHM)または前記方向Yに対して略直交する方向XのFWHM(FWHM)の少なくとも一方が下記式(a)を満足し、該FWHMの少なくとも一方が、該FWHMと同方向における表面微細凹凸体の微細凹凸の断面の高さプロファイルにおいて、所定の間隔で接線を引き、その各接点のスロープ角(tan)の頻度分布が下記式(c)を満足する表面微細凹凸体。
    5≦FWHM≦30 ・・・(a)
    Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))≦0.13×FWHM−0.1・・・(c)
    ここで、Frq tan(within(20°−30°))はスロープ角が特定範囲(20°以上30°以下)の頻度をあらわし、Frq tan(within(0°−5°))はスロープ角が特定範囲(0°以上5°以下)の頻度をあらわす。
  4. 前記方向Xおよび方向YのFWHMが式(a)を満足する請求項3に記載の表面微細凹凸体。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体であって、
    前記式(b)または式(c)において、Frq tan(within(20°−30°))/ Frq tan(within(0°−5°))の値が (0.07×FWHM−0.32)以上である表面微細凹凸体。
  6. 前記微細凹凸は、互いに蛇行する複数の凸条部と、前記複数の凸条部間の凹条部を有する波状の凹凸パターンを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
  7. 前記微細凹凸は、互いに蛇行する複数の凸条部と、前記複数の凸条部間の凹条部を有する波状の凹凸パターンを有し、さらに前記波状の凹凸パターン上に形成された複数の凹部または凸部を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
  8. 前記所定の間隔が2.0μm未満である請求項1から7のいずれか一項に記載の表面微細凹凸体。
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