以下に図面を参照して、改質装置、改質方法、改質プログラム、画像形成装置、および画像形成システムの実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、被処理物をプラズマ処理する。
本実施の形態において用いる被処理物は、例えば、非浸透性の記録媒体、緩浸透性の記録媒体、浸透性の記録媒体である。
非浸透性の記録媒体とは、実質的にインクなどの液滴が浸透しない記録媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。非浸透性の記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。また、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した基材も使用できる。また、普通紙などに、これらの非浸透性の層(たとえば、コート層)を形成した媒体を用いてもよい。
また、緩浸透性の記録媒体とは、10pl(ピコリットル)の液滴を記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100m秒以上である記録媒体をいい、具体的にはアート紙などが挙げられる。浸透性の記録媒体は、10plの液滴を記録媒体上に滴下した場合に全液量が浸透するまでの時間が100m秒以下である記録媒体であり、具体的には普通紙、多孔質紙などである。
本実施の形態では、被処理物として、非浸透性の記録媒体、または緩浸透性の記録媒体を適用した場合に、特に効果的である。
なお、以下では、被処理物を、記録メディア、または、記録媒体と称する場合がある。
被処理物の表面をプラズマ処理すると、被処理物表面の水接触角が下がり、濡れ性が向上する。被処理物表面の濡れ性が向上すると、プラズマ処理された被処理物に着弾したドットが素早く拡がる。このため、被処理物表面のインクを素早く乾燥させることが可能となる。このため、インク顔料の分散が防止されつつ顔料が凝集する。その結果、ビーディングやブリードなどの発生の抑制を図ることができる。また、顔料の凝集により、インク層の表面粗さを調整することができる。ビーディングとは、被処理物上で隣接するドットがつながり、不規則な隙間や、濃度の増大などが発生し、画質を損なう現象を示す。
詳細には、プラズマ処理では、プラズマで発生した酸素ラジカルや水酸ラジカル(−OH)、オゾンのような活性種によって表面の有機物が酸化反応し、親水性の官能基が形成される。
このため、プラズマ処理を用いることで、被処理物表面の濡れ性(親水性)を制御できるだけでなく、被処理物表面のpH値も制御(酸性化)することが可能になる。また、プラズマ処理を用いることで、プラズマ処理された被処理物上に形成されるインク層に含まれる顔料の凝集性をコントロールすることができる。
また、プラズマ処理を用いることで、浸透性をコントロールしてインクドット(以下、単にドットという)の真円度を向上させるとともに、ドットの合一を防止してドットの鮮鋭度や色域を拡げることも可能である。その結果、ビーディングやブリードといった画像不良を解決して、高品質な画像が形成された印刷物を得ることができる。また、被処理物上の顔料の凝集厚みを薄く均一にすることにより、インク液滴量を削減して、インク乾燥エネルギーの低減および印刷コストの低減を図ることも可能になる。
そして、本実施の形態では、更に、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物の表面を冷却する。この冷却により、本実施の形態では、プラズマ処理による改質効果の低下を抑制する(詳細後述)。なお、改質効果とは、上述したプラズマ処理による効果を示し、水接触角を下げる効果、濡れ性の向上、酸性化、などを示す。中でも、本実施の形態では、改質効果とは、水接触角を下げる効果を主に意味する。
図1は、本実施の形態で採用するプラズマ処理の概略の説明図である。図1に示すように、本実施の形態で採用されるプラズマ処理には、放電電極11と、アース電極14と、誘電体12と、電圧印加部15と、を備えたプラズマ処理部10を用いる。誘電体12は、放電電極11とアース電極14との間に配置される。アース電極14は、放電電極11に対向配置されている。
アース電極14は、例えば、表層にシリコンを塗布したローラー状電極としてもよいし、アルミナ系の材質で構成された電極としてもよい。放電電極11は、例えば、SUS材などを用いる。なお、放電電極11は、放電プラズマの生じる材質で構成すればよく、その材質は限定されない。放電電極11の形状は、限定されない。例えば、放電電極11の形状は、ブレード状、ワイヤー状、ローラ状などの何れであってもよい。
アース電極14の表面は、例えば、ポリイミド、シリコン、セラミック等の絶縁体で被覆されている。また、放電電極11は、金属部分を露出した構成であってもよいし、絶縁ゴムやセラミックなどの誘電体や絶縁体で被覆してもよい。
電圧印加部15は、放電電極11とアース電極14との間に高周波・高電圧のパルス電圧を印加する。
このパルス電圧の電圧値は、たとえば約10kV(キロボルト)(p−p)程度である。また、その周波数は、例えば、約20kHz(キロヘルツ)である。このような高周波・高電圧のパルス電圧を2つの電極間に供給することで、放電電極11と誘電体12との間に大気圧非平衡プラズマ13が発生する。被処理物20は、大気圧非平衡プラズマ13の発生中に放電電極11と誘電体12との間を通過する。これにより、被処理物20の表面がプラズマ処理される。
なお、図1には、一例として、プラズマ処理部10が、回転型のロール状の放電電極11とベルトコンベア型の誘電体12とを採用した場合を示した。例えば、被処理物20は、図示を省略する搬送機構、または回転する放電電極11と誘電体12との間で挟持搬送されることで、大気圧非平衡プラズマ13中を通過する。これにより、被処理物20が大気圧非平衡プラズマ13に接触し、プラズマ処理が施される。大気圧非平衡プラズマ13は、誘電体バリア放電を利用したプラズマである。
大気圧非平衡プラズマ13によるプラズマ処理は、電子温度が極めて高く、ガス温度が常温付近であるため、被処理物20に対するプラズマ処理方法として好ましい方法の1つである。
大気圧非平衡プラズマ13を広範囲に安定して発生させるには、ストリーマ絶縁破壊形式の誘電体バリア放電を採用した大気圧非平衡プラズマ処理を実行することが好ましい。ストリーマ絶縁破壊形式の誘電体バリア放電は、たとえば誘電体で被覆された電極間に交番する高電圧を印加することで得ることが可能である。
ただし、大気圧非平衡プラズマ13を発生させる方法としては、ストリーマ絶縁破壊形式の誘電体バリア放電以外にも、種々の方法を用いることができる。たとえば、電極間に誘電体等の絶縁物を挿入する誘電体バリア放電、細い金属ワイヤー等に著しい不平等電界を形成するコロナ放電、短パルス電圧を印加するパルス放電などを適用することが可能である。また、これらの方法を2つ以上組み合わせることも可能である。また、本実施の形態におけるプラズマ処理は、大気中で実施されているが、これに限らず、窒素や酸素等のガス雰囲気下で実施されてもよい。
また、図1に例示したプラズマ処理部10では、搬送方向に合わせて被処理物20を送り出すように回転可能な放電電極11が採用されているが、この構成に限られるものではない。たとえば、被処理物20の搬送方向に対して交差する方向に移動可能な1つ以上の放電電極が採用されてもよい。
次に、本実施の形態で用いるプラズマ処理について、更に具体的に説明する。
プラズマ処理では、被処理物20に大気中のプラズマ照射を行うことによって、被処理物20表面の高分子を反応させ、親水性の官能基を形成する。詳細には、放電電極から放出された電子eが電界中で加速されて、大気中の原子や分子を励起・イオン化する。イオン化された原子や分子からも電子が放出され、高エネルギーの電子が増加し、その結果、ストリーマ放電(プラズマ)が発生する。このストリーマ放電による高エネルギーの電子によって、被処理物20(たとえばコート紙)表面の高分子結合(コート紙のコート層は炭酸カルシウムとバインダとして澱粉で固められているが、その澱粉が高分子構造を有している)が切断され、気相中の酸素ラジカルO*や水酸ラジカル(―OH)、オゾンO3と再結合する。これにより、被処理物20の表面に水酸基やカルボキシル基等の極性官能基が形成される。その結果、被処理物20の表面に親水性や酸性が付与される。それにより、被処理物20表面の水接触角が低下し、濡れ性が向上すると共に、酸性化(pH値の低下)する。
なお、本実施の形態における酸性化とは、インクに含まれる顔料が凝集するpH値まで被処理物20における処理対象面側表面のpH値を下げることを意味する。pH値を下げるとは、物体中の水素イオンH+濃度を上昇させることである。被処理物20の処理対象面側表面に触れる前のインク中の顔料はマイナスに帯電し、ビヒクル中で顔料が分散している。
図2は、インクのpH値とインクの粘度との関係の一例を示す図である。図2に示すように、インクは、そのpH値が低いほど、その粘度が上昇する。これは、インクの酸性度が高くなるほど、インクのビヒクル中でマイナスに帯電している顔料が電気的に中和され、その結果、顔料同士が凝集するためである。したがって、たとえば図2に示すグラフにおいてインクのpH値が必要な粘度と対応する値となるように被処理物20の表面のpH値を下げることで、インクの粘度を上昇させることが可能である。これは、インクが、被処理物20の処理対象面側表面に付着した際、顔料が該処理対象面側表面の水素イオンH+によって電気的に中和された結果、顔料同士が凝集するためである。それにより、隣接したドット間の混色を防止するとともに、顔料が被処理物20の奥深く(さらには裏面まで)浸透するのを防止することが可能となる。ただし、必要な粘度と対応するpH値となるようにインクのpH値を下げるためには、被処理物20の処理対象面側表面のpH値を必要な粘度と対応するインクのpH値よりも低くしておく必要がある。
また、インクを必要な粘度とするためのpH値は、インクの特性によって異なる。すなわち、図2のインクAに示すように、比較的中性に近いpH値で顔料が凝集して粘度が上がるインクもあれば、インクAとは異なる特性を持つインクBに示すように、顔料を凝集させるためにインクAよりも低いpH値が必要なインクも存在する。
顔料がドット内で凝集する挙動や、ビヒクルの乾燥速度や被処理物20内への浸透速度は、ドットの大きさ(小滴、中滴、大滴)によって変わる液滴量や、被処理物20の種類や、インク種などによって異なる。そこで以下の実施の形態では、プラズマ処理におけるプラズマエネルギー量を、被処理物20の種類やインク量(液滴量)やインク種などに応じて最適な値に制御してもよい。
図3は、本実施の形態にかかるプラズマエネルギーと被処理物表面の水接触角(濡れ性)、ビーディング、pH値、および浸透性と、の評価結果を示すグラフである。図3では、被処理物20としてコート紙へ印刷した場合の表面特性(水接触角(濡れ性)、ビーディング、pH値、浸透性(吸液特性))がプラズマエネルギーに依存してどのように変化するかを示した。なお、図3に示す評価を得るにあたり、インクには、顔料が酸により凝集する特性の水性顔料インク(マイナスに帯電した顔料が分散されているアルカリ性インク)を使用した。
図3に示すように、コート紙表面の水接触角は、プラズマエネルギーが低い値(たとえば0.2J/cm2程度以下)で急激に低下し(濡れ性が良くなり)、それ以上エネルギーを増加させてもあまり低下しなかった。一方、コート紙表面のpH値は、ある程度まではプラズマエネルギーを高めることにより低下した。ただし、プラズマエネルギーがある値(たとえば4J/cm2程度)を超えたところで飽和状態になった。また、浸透性(吸液特性)は、pHの低下が飽和したあたり(たとえば4J/cm2程度)から急激に良くなった。ただし、この現象は、インクに含まれている高分子成分に依存して異なると考えられる。
この結果として、浸透性(吸液特性)がよくなり始めて(例えば4J/cm2程度)からビーディング(粒状度)の値が非常に良い状態となっていることが判明した。ここでのビーディング(粒状度)とは、画像のざらつき感を数値で表したものであり、濃度のばらつきを平均濃度の標準偏差で表したものである。図3では、2色以上のドットからなる色のベタ画像の濃度を複数サンプリングし、その濃度の標準偏差をビーディング(粒状度)として表している。このように、本実施の形態にかかるプラズマ処理を施したコート紙に吐出されたインクは、真円状に広がり且つ凝集しながら浸透した。
また、被処理物20表面の濡れ性向上(水接触角の低下)や、被処理物20表面の酸性化(pHの低下)により、インク顔料の凝集、浸透性の向上、ビヒクルのコート層内部への浸透などが生じる。これらにより、被処理物20表面の顔料濃度が上昇するため、ドットが合一したとしても、顔料の移動を抑えることが可能となり、その結果、顔料の混濁を抑制し、顔料を均一に被処理物表面に沈降凝集させることが可能となる。
図4は、プラズマエネルギー量と、顔料凝集の均一性と、の観察結果を示す図である。図4に示すように、プラズマエネルギー量が大きいほど、顔料凝集の均一性が向上することがわかる。
図5は、各種非浸透性の記録媒体をプラズマ処理したときの純水の水接触角の測定結果を示すグラフである。図5において、横軸はプラズマエネルギーを示す。図5に示されるように、非浸透性の記録媒体であっても、プラズマ処理することで、水接触角が低下し、濡れ性が高くなることがわかる。水性顔料インクの場合、純水よりも表面張力が低いことから、より濡れ易いと考えられる。すなわち、プラズマ処理によって水性顔料インクが薄く濡れ広がり易くなった結果、水分の蒸発に有利な表面状態が得られる。なお、以下では塩化ビニルについて説明するが、本結果の通り、ポリエステルやアクリル等の熱可塑性樹脂からなる非浸透性の記録媒体に対しても、プラズマ処理による改質効果が見られた。
ここで、本発明者らは、プラズマ処理された被処理物20の表面温度が高くなると、プラズマ処理による改質効果が低下することを見出した。
図6は、被処理物20の表面温度と純水の水接触角との関係を示すグラフである。
詳細には、図6では、被処理物20として、オフセットコート紙のLumiArtGloss紙を用い、放電プラズマのプラズマエネルギー量を、7kJ/m2としたときの、表面温度と水接触角との関係を示す。そして、この条件でプラズマ処理する前のオフセットコート紙の水接触角は約70°であった。そして、この条件でプラズマ処理した後のオフセットコート紙の水接触角は約24°であり、かなり低い水接触角となった。このオフセットコート紙の表面を、ヒートガンにて各温度の水準に温度設定した温風にて暖め、また、温風をあてている時間を水準にとり、その際の表面温度をサーモメータで測定した。そして、各温度の各々に温めたオフセットコート紙の表面の水接触角の各々を測定した。
水接触角の測定は、本実施の形態では、接触角計(協和界面科学(株)製:PCA−1)を用い、50%RHの環境下で、純水を被処理物20の表面に1μl滴下し、1000ms後の接触角を求めた。
プラズマ処理直後のオフセットコート紙の水接触角は約24°であったが、図6に示すように、オフセットコート紙の表面温度が高くなるほど水接触角が高くなった。具体的には、プラズマ処理によって、水接触角が約24°になるまで改質処理されたオフセットコート紙の水接触角が、表面温度40度付近から急激に30°以上高くなった。
また、図7は、プラズマ処理された被処理物20の加熱前後のFT−IRの測定結果を示すグラフである。
詳細には、図7は、オフセットコート紙であるLumiArtGloss紙を被処理物20として用い、プラズマ処理により、オフセットコート紙の表面を改質処理した際のFT−IR(赤外分光装置)の測定結果である。
図7(A)は、このプラズマ処理直後のオフセットコート紙のFT−IRによる測定結果を示す。図7(B)は、このプラズマ処理後に熱を加えたオフセットコート紙のFT−IRによる測定結果を示す。
図7(A)および図7(B)に示すように、プラズマ処理された被処理物20に熱を加えると、熱を加える前に比べて、水酸基(−OH)のピークが低下していた。この結果は、プラズマ処理によって配位した水酸基(−OH)が、熱によって減少した事を示しており、そのため、濡れ性が低下し、水接触角が高くなることを意味する。
また、本発明者らは、プラズマ処理された被処理物20に熱を加えると、放電プラズマによって生じた親水官能基である水酸基(OH)、カルボニル基(>C=O)、アルデヒド基(−CHO)等が、熱により被処理物20から乖離することを見出した。すなわち、本発明者らは、熱による親水官能基の剥離により、プラズマ処理によって低下した水接触角が高くなり、改質効果が低下することを見出した。また、本発明者らは、図7の結果から、熱による水酸基(OH)の剥離により、プラズマ処理によって低下したpHが高くなり、改質効果が低下することを見出した。
図8は、水接触角とビーディングランクとの関係を示すグラフである。
詳細には、図8は、オフセットコート紙であるLumiArtGloss紙を被処理物20として用い、水接触角とビーディングランクとの関係を測定した結果である。ビーディングランクとは、被処理物20上で隣接するドット(インク滴によるドット)がつながるために、ドット間に不規則な隙間や、濃度の増大などが発生し、ドットにより形成される画像の画質を損なう現象を、官能評価に於いてランク化したものである。ビーディングランクが高いほど、画像品質は良好であるといえる。
図8に示すように、ビーディングランク4.75以上の高い画像品質を達成させる為には、被処理物20(ここではオフセットコート紙)表面の水接触角が30°以下とする必要がある。なお、このビーディングランクの仕様は、製品毎(処理対象の被処理物20の種別や、目的とする印刷物(インクによる画像の形成された被処理物20)毎)に決められている。
なお、図8には、水接触角とビーディングランクとの関係を示した結果のグラフを示した。上述したように、ビーディングを良好にする為には、被処理物20の表面のpH値も関係している。本実施の形態では、被処理物20に対するプラズマ処理によって与えられた改質効果の、熱による影響を問題としている。このため、熱に大きな影響の無いpH値に関しては、説明を省略する。
図6〜図8に示すように、本発明者らは、プラズマ処理によって被処理物20に与えられた改質効果が、熱の影響によって低下することを見出した。具体的には、被処理物20の表面温度が高くなるほど、プラズマ処理によって低くなった水接触角やpH値が上昇することを見出した。
プラズマ処理を施すための放電時には、熱が発生する。これは、放電時に放電電極11とアース電極14が発熱するためである。従来では、このプラズマ処理時に被処理物20に加わる熱の影響についての考慮がなされていなかった。このため、従来では、プラズマ処理によって被処理物20に与えた改質効果が、熱によって低下していた。すなわち、プラズマ処理された被処理物20の表面にインクが吐出されるときには、熱の影響によって改質効果が低下しており、画質劣化が生じていた。具体的には、従来では、熱の影響によって、プラズマ処理によって低下した水接触角が高くなる、プラズマ処理によって低下したpHが高くなる、などの改質効果の低下が生じていた。
そこで、本実施の形態では、プラズマ処理部10を備えた改質装置は、冷却部を備える。冷却部は、被処理物にインクが吐出される際の被処理物の表面温度が目標とする水接触角の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物の表面を冷却する。なお、以下では、目標とする水接触角を、目標水接触角と称して説明する。
本実施の形態の改質装置では、このような冷却部を備えた構成とすることによって、プラズマ処理によって低くなった水接触角の上昇を抑制し、改質効果の低下を抑制することができる。また、本実施の形態では、改質効果の低下を抑制することができるので、プラズマ処理された被処理物20の表面にインクを吐出することにより形成する画像の、画質劣化を抑制することができる。また、本実施の形態の改質装置では、上記冷却部を備えることによって、改質処理された被処理物に吐出されるインクの発色の向上や、濡れ性向上によるドット拡張や、インク付着量削減の効果も得ることができる。
次に、本実施の形態に係る印刷システムを具体的に説明する。
図9は、本実施の形態に係る印刷システム1の概略構成を示す模式図である。印刷システム1は、画像形成装置40を含む。画像形成装置40は、貯留部30と、改質装置100と、記録部170と、乾燥部50と、排出部60と、を含む。なお、画像形成装置40は、少なくとも改質装置100と、記録部170と、を備えた構成であればよい。
貯留部30は、処理対象の被処理物20を貯留する。印刷システム1で扱う被処理物20は、予め定めた大きさに切断されたカット紙であってもよいし、ロール紙であってもよい。ロール紙は、例えば、切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続紙(連帳紙、連続帳票)である。この場合、ロール紙におけるページ(頁)とは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域とする。
印刷システム1には、複数の搬送ローラが設けられている。搬送ローラは、被処理物20に貯留された貯留部30を順次、搬送経路Dに沿って搬送方向Xに搬送する。
改質装置100は、プラズマ処理部10、冷却部22、および制御部32を含む(詳細後述)。改質装置100によってプラズマ処理された被処理物20は、搬送経路Dに沿って搬送方向Xに搬送され、記録部170に到る。
記録部170は、インクを吐出することによって画像を形成する。記録部170は、公知のインクジェット記録装置である。例えば、記録部170は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色の吐出ヘッドを含む。そして、これらの各々の吐出ヘッドから、各色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の各々のインクを吐出する。なお、記録部170は、4色の吐出ヘッドを含む形態に限定されない。記録部170は、1色以上の吐出ヘッドを含む形態であればよい。
記録部170が吐出するインクのインク種は限定されない。例えば、顔料(例えば、約3wt%)と、界面活性剤少量と、スチレン・アクリル樹脂(例えば、粒径100nm〜300nm)(例えば、約5wt%)と、各種添加剤防腐剤、防かび剤、pH調整剤、染料溶解助剤、または酸化防止剤、導電率調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などと、を有機溶媒(例えば、エーテル系およびジオール系溶剤)(例えば、約50wt%)に分散させたものをインクとして用いる。
なお、スチレン・アクリル樹脂に代えて、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などの疎水性の樹脂を用いても良い。なお、何れの樹脂についても、分子量が比較的低く、エマルジョンを形成することが好ましい。
また、インクには、ノズルの目詰まりを有効に防止する成分として、グリコール類を添加することが好ましい。添加するグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等がある。また、他のチオジグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の単体及び混合物等が挙げられる。
有機溶媒の好ましい例としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等のグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、等が挙げられる。
また、インクの主成分は、水であってもよい。インクに、有機溶剤やモノマーやオリゴマーを使用しない場合、特別な部材でできたインクカートリッジや供給路を選定する必要が無いので、装置構成の簡略化を図ることができる。
インクに含まれるこれらの材料の混合比や含まれる成分の種類によって、インク種が定まる。
記録部170は、改質装置100(プラズマ処理部10)より搬送方向X下流側に配置されている。このため、記録部170は、プラズマ処理された被処理物20にインクを吐出可能な位置に配置されている。
なお、印刷システム1は、記録部170の搬送方向X下流側に、後処理部180を更に設けた構成としてもよい。後処理部180は、インクの吐出された被処理物20に対して、公知の後処理を行う装置であればよい。
記録部170の搬送方向X下流側には、乾燥部50が配置されている。乾燥部50は、被処理物20に吐出されたインクを乾燥させる。乾燥部50の搬送方向X下流側には、排出部60が設けられている。排出部60には、プラズマ処理され、インクを吐出された(画像形成された)被処理物20が排出される。
また、印刷システム1は、印刷システム1の装置各部を制御する制御部32を含む。なお、制御部32は、単一のコンピュータで構成されている必要はなく、複数のコンピュータがLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して接続された構成であってもよい。また、制御部32は、印刷システム1の各部に個別に設けられた制御部を含む構成であってもよい。
なお、印刷システム1を構成する各部(装置)は、別の筐体で存在させ、全体で印刷システム1を構成してもよいし、同じ筐体内に納められて印刷システム1を構成してもよい。
図10は、印刷システム1の詳細説明図である。
図10に示すように、印刷システム1は、画像形成装置40、および乾燥部50を含む。画像形成装置40は、記録部170および改質装置100を含む。
改質装置100、記録部170、および乾燥部50は、搬送経路Dに沿って、搬送方向X上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。印刷システム1には、被処理物20を搬送経路Dに沿って搬送する複数の搬送ローラ(搬送ローラ24、搬送ローラ26、搬送ローラ28など)が設けられている。これらの複数の搬送ローラは、被処理物20を搬送経路Dに沿って、搬送方向X上流側から下流側に沿って搬送させる。
改質装置100は、プラズマ処理部10と、冷却部22と、制御部32と、を含む。
プラズマ処理部10は、被処理物20の表面が所定の水接触角となるように、被処理物20をプラズマ処理する。所定の水接触角とは、プラズマ処理によって実現させる、プラズマ処理直後の被処理物20表面の水接触角である。所定の水接触角は、例えば、ユーザによって予め設定される。
プラズマ処理部10は、上述したように(図1参照)、放電電極11と、アース電極14と、誘電体12と、電圧印加部15と、を含む。なお、図1でも示したように、放電電極11と誘電体12との間には、隙間が設けられている。プラズマ処理部10の搬送方向X上流側から搬送されてきた被処理物20が、この放電電極11と誘電体12との隙間に到る事で、被処理物20の表面がプラズマ処理される。
なお、図1および図10には、プラズマ処理として誘電体バリア放電を採用した場合を例示したが、コロナ放電を採用した場合には、誘電体12を省略することができる。
電圧印加部15は、放電電極11に放電用(プラズマ処理用)のパルス電圧を印加することで、放電電極11とアース電極14との間に大気圧非平衡プラズマ13を発生させる。放電電極11とアース電極14(誘電体12)との間に搬送された被処理物20は、放電電極11とアース電極14(誘電体12)との間を通る際に、大気圧非平衡プラズマ13と接触することで、その表面がプラズマ処理される。
このプラズマ処理時に与えるプラズマエネルギー量は、電圧印加部15から放電電極11に供給するパルス電圧の周波数、電圧値、電圧を印加する放電電極11の数、電圧印加時間、などによって調整される。
具体的には、後述する制御部32が電圧印加部15を制御することで、プラズマエネルギー量を調整する。すなわち、制御部32は、被処理物20の表面が所定の水接触角となるように、電圧印加部15を制御することによって、プラズマエネルギー量を調整する。
例えば、放電電極11を、複数の放電電極11(放電電極11A〜放電電極11E)で構成する。そして、電圧印加部15は、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量となるように、必要な数の放電電極11(放電電極11A〜放電電極11E)を駆動、各放電電極11(放電電極11A〜放電電極11E)に与える電圧値、電圧印加時間などを調整する。また、改質装置100に湿度調整機構を設けることでもプラズマ処理の調整が可能である(特開2013−199017号公報)。ただし、プラズマエネルギー量の調整方法は、これらに限定されるものではなく、これらを組み合わせた方法や、その他の方法など、適宜変更することが可能である。
なお、改質装置100を、複数の放電電極11(放電電極11A〜放電電極11E)を備えた構成とすることは、被処理物20の表面を均一に酸性化する点においても有効である。すなわち、たとえば同じ搬送速度(または印刷速度)とした場合、1つの放電電極11でプラズマ処理を行う場合に比べて、複数の放電電極11を用いてプラズマ処理を行う場合の方が、被処理物20がプラズマの空間を通過する時間を長くすることが可能となる。その結果、より均一に被処理物20の表面にプラズマ処理を施すことが可能となる。
なお、図10(および図1)には、放電電極11とアース電極14(誘電体12)との間を通過する被処理物20に対して、放電電極11が数ミリ程度離間する構成を例示した。しかし、この構成に限定されない。たとえば、放電電極11を断面形状が円形のローラ電極とし、被処理物20が放電電極11と誘電体12(アース電極14)との間を通過する際に被処理物20と接触して連れ回りする構成としてもよい。また、放電電極11として、ワイヤー電極や、ブレード電極のように細い電極を用いることも可能である。
図10に示す例では、放電電極11に対向配置されたアース電極14は、ロール状である場合を示した。
本実施の形態では、ロール状に構成されたアース電極14は、図示を省略する搬送機構により、搬送方向Xに沿って回転可能に設けられている。このため、プラズマ処理部10より搬送方向X上流側から搬送方向Xに沿って搬送され、放電電極11とアース電極14との間の領域に到った被処理物20は、プラズマ処理されながらアース電極14の回転によって搬送され、プラズマ処理部10の搬送方向X下流側に排出される。
本実施の形態では、プラズマ処理部10は、第1領域P1、第2領域P2、および第3領域P3を覆う第1筐体42内に配置されている。
第1領域P1は、被処理物20の搬送経路Dにおける、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X上流側の領域である。第2領域P2は、搬送経路Dにおける、プラズマ処理部10によってプラズマ処理される領域である。すなわち、第2領域P2は、放電電極11とアース電極14(誘電体12)との間の領域である。第3領域P3は、搬送経路Dにおける、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X下流側で、且つ、記録部170によってインクを吐出される前までの領域である。
このため、第1筐体42は、第1領域P1、第2領域P2、および第3領域P3を覆い、且つ、内側にプラズマ処理部10を配置する。
第1筐体42の内側には、更に、第3筐体43、第2筐体41、および第4筐体44が設けられている。第3筐体43は、プラズマ処理部10の外側から、放電電極11および第2領域P2を覆うように設けられている。第2筐体41は、ロール状のアース電極14の外周面における、放電電極11の反対側の領域を覆うように設けられている。第4筐体44は、放電電極11による放電によって発生した活性種(酸素ラジカル等)を逃がさない機能を備えており、被処理物20の改質効果に影響を与える。第3筐体43は、放電電極11から発せられる電磁波のシールドや、放電によって生じたオゾン等が外部へ流出することを抑制する。
なお、これらの第1筐体42、第2筐体41、第3筐体43、および第4筐体44の各々は、搬送経路Dにおける被処理物20の搬送を妨げない位置に配置されている。
また、プラズマ処理部10には、オゾン処理部34が設けられている。オゾン処理部34は、第3筐体43の外部に配置されている。オゾン処理部34は、第1筐体42および第3筐体43を貫通する孔部(図示省略)を介して、第3筐体43の内部に連通されている。オゾン処理部34は、プラズマ処理部10におけるプラズマ処理により発生したオゾンを処理する。オゾン処理部34は、オゾンを無害な状態にして外気中へ排出する機構であればよい。オゾン処理部34には、例えば、公知のオゾン処理装置を用いる。
冷却部22は、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する。目標水接触角は、インク吐出直前のタイミングにおける、被処理物20の目標とする水接触角である。目標水接触角は、ユーザによって予め設定される。目標水接触角は、上記所定の水接触角以下の値である。すなわち、冷却部22は、少なくとも、プラズマ処理部10によってプラズマ処理されてから、記録部170によってインクを吐出されるまでの期間の被処理物20を冷却することによって、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲温度となるように、冷却する。なお、目標水接触角の範囲温度とは、被処理物20の表面が目標水接触角を維持可能な温度の範囲を示す。
冷却部22は、被処理物20を直接、または、被処理物20に接触する部材や空気を冷却することで、被処理物20を冷却する。
本実施の形態では、冷却部22は、第1筐体42内の空気を冷却することで、第1領域P1、第2領域P2、および第3領域P3の少なくとも1箇所を冷却する。これによって、冷却部22は、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する。
具体的には、冷却部22は、制御部32によって冷却能力を調整される(詳細後述)。制御部32による冷却能力の調整により、冷却部22は、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する。
本実施の形態では、冷却部22は、第1冷却部22Aと、第2冷却部22Bと、第3冷却部22Cと、を含む。なお、冷却部22は、第1冷却部22Aと、第2冷却部22Bと、第3冷却部22Cと、の少なくとも1つを含む構成であればよい。
第1冷却部22Aは、第1領域P1および第3領域P3を冷却する。第1冷却部22Aは、第1筐体42に設けられえた孔部(図示省略)を介して第1筐体42内に連通されており、第1筐体42内の空気を冷却する。これによって、第1冷却部22Aは、第1筐体42内の領域である、第1領域P1および第3領域P3を冷却する。第1冷却部22Aは、第1筐体42内の空気を冷却可能な装置であればよい。
なお、第1筐体42内に設けられた、第3筐体43および第2筐体41は、放電電極11とアース電極14との間の領域(被処理物20をプラズマ処理する領域)に、第1領域P1内の空気が直接流れ込む事を抑制する構成となっている。このため、プラズマ処理する領域に、該領域外から空気が流れ込むことによる、プラズマ処理のばらつき等を抑制することができる。
第2冷却部22Bは、アース電極14を内側から冷却することによって、第2領域P2を冷却する。例えば、第2冷却部22Bは、アース電極14の中央部に棒状の冷却機構を配置した構成であり、アース電極14を内側から冷却する。なお、第2冷却部22Bは、アース電極14を内側から冷却可能な構成であればよく、その構成は限定されない。例えば、第2冷却部22Bは、空冷方式、油冷方式、の何れであってもよい。
このように、第2冷却部22Bは、第2領域P2に直接冷却した空気を流すのではなく、アース電極14を内側から冷却することで、第2領域P2を冷却する。このため、第2冷却部22Bは、第2領域P2、すなわちプラズマ処理される領域に、領域外から空気が流れ込むことによる、プラズマ処理のばらつきを抑制しつつ、第2領域P2を冷却することができる。また、第2冷却部22Bは、アース電極14を冷却することで、プラズマ処理中の被処理物20を冷却することができ、被処理物20の温度上昇を抑制することができる。
第3冷却部22Cはアース電極14を外側から冷却することによって、第2領域P2を冷却する。本実施の形態では、第3冷却部22Cは、アース電極14の外側の第2筐体41によって囲まれた領域内の空気を冷却する。すなわち、第3冷却部22Cは、アース電極14の外周面の、放電電極11とは反対側の領域の空気を冷却する。なお、第3冷却部22Cは、アース電極14を外側から冷却可能な構成であればよく、その構成は限定されない。
このように、第3冷却部22Cは、第2領域P2に直接冷却した空気を流すのではなく、アース電極14を外側(且つ、放電電極11とは反対側)から冷却することで、第2領域P2を冷却する。このため、第3冷却部22Cは、第2領域P2、すなわちプラズマ処理される領域に、領域外から空気が流れ込むことによる、プラズマ処理のばらつきを抑制しつつ、第2領域P2を冷却することができる。また、第3冷却部22Cは、アース電極14を冷却することで、プラズマ処理中の被処理物20を冷却することができ、被処理物20の温度上昇を抑制することができる。
すなわち、第3冷却部22Cおよび第2冷却部22Bは、プラズマ処理によって発生する熱によるアース電極14の温度上昇を抑制し、アース電極14と放電電極11との間を搬送される被処理物20の温度上昇を抑制する機能を有する。
これらの第1冷却部22A、第2冷却部22B、および第2冷却部22Bの各々の冷却能力や、何れの冷却部22(第1冷却部22A、第2冷却部22B、第3冷却部22C)を駆動させるかは、制御部32による制御によって調整される。
また、改質装置100は、検出部36を備える。検出部36は、搬送経路Dを搬送される被処理物20の表面温度を検出する。検出部36は、被処理物20の表面温度を検出可能な装置であればよい。なお、検出部36は、非接触で被処理物20の表面温度を検出可能な公知の装置を用いることが好ましい。また、検出部36は、被処理物20におけるプラズマ処理された側の表面を検出可能な位置に設けられ、且つ、非接触で被処理物20の表面温度を検出可能であることが好ましい。
検出部36の、搬送経路Dにおける位置は、搬送経路Dにおける、記録部170より被処理物20の搬送方向X上流側であればよい。なお、検出部36の位置は、搬送経路Dにおける、記録部170より被処理物20の搬送方向X上流側で、且つ、プラズマ処理部10より搬送方向X下流側であることが好ましい。また、検出部36の位置は、搬送経路Dにおける、記録部170より被処理物20の搬送方向X上流側で、プラズマ処理部10より搬送方向X下流側であり、且つ、プラズマ処理部10によるプラズマ処理直後の被処理物20の表面温度を検出可能な位置であることが特に好ましい。プラズマ処理部10によるプラズマ処理直後の被処理物20の表面温度を検出可能な位置とは、具体的には、搬送経路Dにおける、放電電極11とアース電極14との対向領域に連続する、該対向領域より搬送方向X下流側の位置、または、該位置に最も近く、且つ検出部36を設置可能な位置である。
プラズマ処理部10によってプラズマ処理され、冷却部22によって冷却された被処理物20は、複数の搬送ローラ(搬送ローラ24など)によって搬送され、記録部170へ至る。
記録部170に搬送された被処理物20のプラズマ処理された側の表面には、記録部170によってインクが吐出される。インクが吐出されることによって、被処理物20に画像が形成される。画像形成された被処理物20は、搬送ローラ28および搬送ローラ26によって内側から支持されて搬送される搬送ベルト29によって搬送され、乾燥部50へ到達する。乾燥部50に到達した被処理物20は、乾燥部50によって表面を乾燥された後に、排出部60(図10では図示省略)へ排出される。
次に、制御部32について説明する。
図11は、制御部32の機能ブロック図である。制御部32は、取得部32Aと、調整部32Bと、記録制御部32Eと、を含む。調整部32Bは、プラズマ制御部32Cと、冷却制御部32Dと、を含む。取得部32A、プラズマ制御部32C、冷却制御部32D、および記録制御部32Eの一部またはすべては、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
本実施の形態では、制御部32は、画像形成装置40を制御するものとして説明する。しかし、制御部32は、改質装置100を制御するための制御部と、記録部170を制御するための制御部と、画像形成装置40に設けられた他の構成部の各々を制御するための制御部と、を別体として含む構成であってもよい。この場合、改質装置100を制御するための制御部は、少なくとも、後述する取得部32Aおよび調整部32Bを含んだ構成であればよい。
取得部32Aは、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を取得する。本実施の形態では、検出部36で検出された表面温度を、被処理物20の表面温度として取得する。
なお、本実施の形態では、検出部36は、プラズマ処理部10より搬送方向X下流側で、且つ記録部170より搬送方向X上流側に設けられている場合を説明する(図10参照)。この場合、取得部32Aは、検出部36で検出された表面温度を、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度として取得する。
しかし、検出部36は、プラズマ処理部10より搬送方向X下流側で、且つ記録部170より搬送方向X上流側に設けられた構成に限定されない。検出部36は、例えば、放電電極11より搬送方向X上流側に配置されていてもよい。この場合、取得部32Aは、検出部36の設けられた位置で検出される被処理物20の表面温度と、取得部32Aが取得する対象の、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度と、の相関を示す相関情報を予め記憶する。そして、取得部32Aは、検出部36から取得した表面温度と、相関情報と、を用いて、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を算出することで、該表面温度を取得してもよい。
調整部32Bは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面が目標水接触角を維持するように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の少なくとも一方を調整する。
また、調整部32Bは、被処理物20の種類、被処理物20に吐出されるインクのインク種の少なくとも一方と、取得部32Aで取得した表面温度と、に基づいて、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面が目標水接触角を維持するように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の少なくとも一方を調整することが好ましい。
本実施の形態では、一例として、調整部32Bが、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面が目標水接触角を維持するように、冷却部22の冷却能力を調整する場合を説明する。
調整部32Bは、プラズマ制御部32Cと、冷却制御部32Dと、を含む。
プラズマ制御部32Cは、被処理物20の表面を、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10を調整する。具体的には、プラズマ制御部32Cは、上述したように、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10の電圧印加部15に印加する電圧値、電圧印加時間、駆動する放電電極11の数などを調整する。
まず、プラズマ制御部32Cは、被処理物20の表面を、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量を算出する。所定の水接触角は、処理対象の被処理物20ごとに定められていてもよいし、形成対象の画像の画像データを含む印刷データから取得してもよい。例えば、印刷データを、形成対象の画像の画像データと、所定の水接触角および目標水接触角を含む設定情報と、を含んだ構成とする。そして、プラズマ制御部32Cは、設定情報を読取ることで、所定の水接触角を読取ればよい。
例えば、記憶部38に、水接触角と、水接触角を実現するために必要なプラズマエネルギー量と、を対応づけた第1情報を予め記憶する。この第1情報は、印刷システム1を用いて予め測定し、予め対応づけて記憶しておけばよい。そして、プラズマ制御部32Cは、読取った所定の水接触角に対応するプラズマエネルギー量を第1情報から読みとることで、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量を算出すればよい。
そして、プラズマ制御部32Cは、算出したプラズマエネルギー量を実現するように、電圧印加部15から放電電極11へ印加する電圧値、電圧印加時間、駆動する放電電極11の数などを調整すればよい。
なお、プラズマ制御部32Cは、被処理物20の種類、被処理物20の吐出するインク種の少なくとも1つに応じて、所定の水接触角を実現するために必要なプラズマエネルギー量を算出してもよい。
この場合には、例えば、記憶部38に、水接触角と、被処理物20の種類と、インク種と、対応する種類の被処理物20およびインク種を用いる場合に対応する水接触角を実現するために必要なプラズマエネルギー量と、を対応づけた第2情報を予め記憶すればよい。そして、プラズマ制御部32Cは、読取った所定の水接触角と、処理対象の被処理物20の種類と、インク種と、に対応するプラズマエネルギー量を第2情報から読取ることによって、プラズマエネルギー量を算出すればよい。
なお、この場合、印刷データに含まれる設定情報を、所定の水接触角と、目標水接触角と、処理対象の被処理物20の種類と、インク種と、を含む構成とすればよい。そして、プラズマ制御部32Cは、印刷データに含まれる設定情報に含まれる、所定の水接触角と、被処理物20の種類と、インク種と、に対応するプラズマエネルギー量を第2情報から読取ればよい。
冷却制御部32Dは、冷却部22の冷却能力を調整する。本実施の形態では、冷却制御部32Dは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、被処理物20にインクが吐出される際に目標水接触角の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却するための、冷却部22の冷却能力を調整する。
冷却制御部32Dは、冷却部22を構成する、第1冷却部22A、第2冷却部22B、第3冷却部22Cの少なくとも1つの冷却能力を調整することで、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように、冷却部22の冷却能力を調整する。
例えば、冷却部22が、駆動電圧が高くなるほど、また、電圧印加時間が長いほど、冷却能力(すなわち、より低温とする能力)が大きくなる構成であるとする。この場合、冷却制御部32Dは、冷却部22に印加する駆動電圧および電圧印加時間の少なくとも一方を調整することで、冷却能力を調整する。
例えば、記憶部38に、目標水接触角と、目標水接触角の範囲温度(被処理物20の表面温度)と、対応する表面温度(範囲温度)を実現するために必要な冷却部22の冷却能力と、を対応づけた第3情報を予め記憶する。冷却能力は、上述したように、第1冷却部22A、第2冷却部22B、第3冷却部22Cの内、駆動する冷却部22の識別情報、各第1冷却部22A、第2冷却部22B、第3冷却部22Cの各々に印加する駆動電圧および電圧印加時間の少なくとも一方によって示される。なお、冷却能力は、冷却部22の冷却能力を制御可能な情報であればよく、これら以外の制御情報を含んでいてもよい。
そして、冷却制御部32Dは、印刷データに含まれる設定情報から目標水接触角を読取り、取得部32Aから表面温度を取得する。そして、冷却制御部32Dは、読取った目標水接触角および取得した表面温度(目標水接触角の範囲温度)に対応する冷却能力を、第3情報から読取る。そして、冷却制御部32Dは、読取った冷却能力となるように、冷却部22の冷却能力を調整する。
なお、冷却制御部32Dは、目標水接触角と、取得した表面温度と、被処理物20の種類および被処理物20の吐出するインク種の少なくとも一方と、に応じて、冷却部22の冷却能力を算出してもよい。
この場合には、例えば、記憶部38に、目標水接触角と、目標水接触角の範囲温度(被処理物20の表面温度)と、被処理物20の種類と、インク種と、対応する表面温度(範囲温度)の対応する種類の被処理物20およびインク種を用いる場合に、対応する目標水接触角を実現するために必要な冷却能力と、を対応づけた第4情報を予め記憶すればよい。そして、冷却制御部32Dは、取得部32Aで取得した表面温度と、目標水接触角と、処理対象の被処理物20の種類と、インク種と、に対応する冷却能力を第4情報から読取ることによって、冷却能力を算出すればよい。
なお、この場合、印刷データに含まれる設定情報を、所定の水接触角と、目標水接触角と、処理対象の被処理物20の種類と、インク種と、を含む構成とすればよい。そして、冷却制御部32Dは、印刷データに含まれる設定情報に含まれる、目標水接触角と、被処理物20の種類と、インク種と、取得部32Aで取得した表面温度と、に対応する冷却能力を、第4情報から読取ればよい。
なお、冷却制御部32Dは、取得部32Aで取得した表面温度が高いほど、冷却能力が高くなるように、冷却部22の冷却能力を調整する。このため、第3情報および第4情報に含まれる、表面温度と冷却能力との関係は、表面温度が高いほど、冷却能力が高く(すなわち、より低温となるように冷却)なるように、予め対応づけられていればよい。
記録制御部32Eは、印刷データに含まれる画像データの画像を形成するように、記録部170を制御する。
次に、画像形成装置40で実行する画像形成処理の手順を説明する。画像形成処理は、プラズマ処理、冷却処理、インク吐出による記録処理、を含む。
図12は、画像形成装置40が実行する画像形成処理の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部32が、外部装置などから印刷データを受信する(ステップS100)。次に、制御部32は、受信した印刷データを、記憶部38に記憶する(ステップS102)。
次に、調整部32Bが、所定の水接触角、および目標水接触角を取得する(ステップS104)。調整部32Bは、ステップS100で受信した印刷データに含まれる設定情報から、所定の水接触角、および目標水接触角を読取ることによって、所定の水接触角、および目標水接触角を取得する。
次に、調整部32Bが被処理物20の種類を取得する(ステップS106)。調整部32Bは、ステップS100で受信した印刷データに含まれる設定情報から、被処理物20の種類を読取ることによって、被処理物20の種類を取得する。
次に、調整部32Bがインク種を取得する(ステップS108)。調整部32Bは、ステップS100で受信した印刷データに含まれる設定情報から、インク種を読取ることによって、インク種を取得する。
次に、プラズマ制御部32Cが、ステップS104で取得した所定の水接触角を実現するための、プラズマエネルギー量を算出する(ステップS110)。なお、上述したように、プラズマ制御部32Cは、ステップS104で取得した所定の水接触角、ステップS106で取得した被処理物20の種類、及びステップS108で取得したインク種に応じて、プラズマエネルギー量を算出してもよい。
次に、冷却制御部32Dが、初期値としての冷却能力を算出する(ステップS112)。ステップS112では、例えば、冷却制御部32Dは、ステップS104で取得した目標水接触角と、予め定めた基準温度の表面温度と、に対応する冷却能力を算出する。基準温度は、例えば、プラズマ処理部10がプラズマ処理を行ったときの、放電電極11とアース電極14との間の領域の温度の予測値を予め設定し、この予測値を基準温度として予め設定すればよい。なお、この基準温度は、ユーザによる図示を省略する入力部等の操作によって、適宜変更可能であるとする。
なお、冷却制御部32Dは、ステップS104で取得した目標水接触角、ステップS106で取得した被処理物20の種類、ステップS108で取得したインク種、および基準温度としての表面温度に対応する冷却能力を算出してもよい。
次に、冷却制御部32Dが、ステップS112で算出した冷却能力となるように、冷却部22を制御する。これによって、冷却部22が冷却を開始する(ステップS114)。
次に、プラズマ制御部32Cが、ステップS110で算出したプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10を調整する。これによって、プラズマ処理部10は、ステップS110で算出したプラズマエネルギー量、すなわち、ステップS104で取得した目標水接触角を実現するためのプラズマエネルギー量で被処理物20をプラズマ処理する(ステップS116)。
次に、取得部32Aが、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を取得する(ステップS118)。例えば、取得部32Aは、検出部36で検出された表面温度を、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度として取得する。
次に、冷却制御部32Dが、ステップS118で取得した表面温度と、ステップS104で取得した目標水接触角と、に対応する冷却能力を算出する。そして、冷却制御部32Dは、算出した冷却能力で冷却するように、冷却部22を調整する(ステップS120)。ステップS120の処理によって、冷却制御部32Dは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、冷却部22の冷却能力を調整する。
なお、上述したように、冷却制御部32Dは、ステップS118で取得した表面温度と、ステップS104で取得した目標水接触角と、ステップS106で取得した被処理物20の種類と、ステップS108で取得したインク種と、に対応する冷却能力を算出し、冷却部22を調整してもよい。
ステップS118〜ステップS120の処理によって、プラズマ処理部10によってプラズマ処理された被処理物20は、少なくとも、搬送経路Dに沿って記録部170へ搬送されるまでの期間、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標とする水接触角の範囲となる温度であるように、冷却される。このため、プラズマ処理による改質効果の低下が抑制される。
そして、記録制御部32Eが、ステップS100で受信した印刷データに含まれる、画像データによって示される各画素の濃度値に応じたインク滴を対応する位置に吐出するように、記録部170を制御する(ステップS122)。
そして、制御部32は、印刷データに含まれる画像データの画像の形成が終了するまで(ステップS124:Yes)、ステップS116〜ステップS122の処理を繰り返し実行する(ステップS124:No)。そして、ステップS124で肯定判断すると(ステップS124:Yes)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態の改質装置100は、プラズマ処理部10と、冷却部22と、を備える。プラズマ処理部10は、被処理物20の表面が所定の水接触角となるように被処理物20をプラズマ処理する。冷却部22は、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標とする水接触角(目標水接触角)の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する。
このように、冷却部22を備えた構成とすることによって、本実施の形態の改質装置100では、プラズマ処理によって低くなった水接触角の上昇を抑制することができる。
従って、本実施の形態の改質装置100は、改質効果の低下を抑制することができる。
また、本実施の形態では、改質効果の低下を抑制することができるので、プラズマ処理された被処理物20の表面にインクを吐出することにより形成する画像の、画質劣化を抑制することができる。
また、本実施の形態の改質装置100では、上述のように、冷却部22を備えた構成である。このため、記録部170における、インクを吐出するノズルの乾燥を抑制することも可能である。
また、冷却部22は、被処理物20の搬送経路Dにおける、第1領域P1、第2領域P2、および第3領域P3の少なくとも1箇所を冷却することによって、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却することが好ましい。
第1領域P1は、搬送経路Dにおける、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X上流側の領域である。第2領域P2は、搬送経路Dにおける、プラズマ処理部10により被処理物20がプラズマ処理される領域である。第3領域P3は、搬送経路Dにおける、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X下流側で且つインクを吐出される前までの領域である。
また、プラズマ処理部10は、放電電極11と、アース電極14と、電圧印加部15と、を備えた構成であることが好ましい。放電電極11は、被処理物20に放電する。アース電極14は、放電電極11に対向配置されている。電圧印加部15は、放電電極11とアース電極14とに電圧を印加する。冷却部22は、第1冷却部22A、第2冷却部22B、および第3冷却部22Cの少なくとも1つを含む。第1冷却部22Aは、第1領域P1および第3領域P3を冷却する。第2冷却部22Bは、アース電極14を内側から冷却することによって第2領域P2を冷却する。第3冷却部22Cは、アース電極14を外側から冷却することによって第2領域P2を冷却する。
また、改質装置100は、取得部32Aと、調整部32Bと、をさらに備えた構成であることが好ましい。取得部32Aは、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を取得する。調整部32Bは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の少なくとも一方を調整する。
また、調整部32Bは、被処理物20の種類、被処理物20に吐出されるインクのインク種の少なくとも一方と、取得した表面温度と、に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の少なくとも一方を調整することが好ましい。
また、調整部32Bは、取得した表面温度が高いほど、冷却能力が高くなるように、冷却部22の冷却能力を調整することが好ましい。
また、改質装置100は、さらに、検出部36を備えることが好ましい。検出部36は、被処理物20の搬送経路Dにおける、被処理物20にインクを吐出する記録部170より、被処理物20の搬送方向X上流側に設けられ、搬送経路Dを搬送される被処理物20の表面温度を検出する。記録部170は、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X下流側に設けられ、被処理物20にインクを吐出する。取得部32Aは、検出部36によって検出された表面温度に応じて、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を取得する。
また、検出部36は、搬送経路Dにおける、記録部170より被処理物20の搬送方向X上流側で、且つ、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X下流側に配置されていることが好ましい。
また、検出部36は、搬送経路Dにおける、記録部170より被処理物20の搬送方向X上流側であって、プラズマ処理部10より被処理物20の搬送方向X下流側で、且つ、プラズマ処理部10によってプラズマ処理された直後の被処理物20の表面温度を検出可能な位置に配置されていることが好ましい。
なお、本実施の形態では、改質装置100は、検出部36を備えた構成である場合を説明した。しかし、改質装置100は、検出部36を備えない構成であってもよい。この場合には、冷却部22は、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の予め定めた範囲温度を保つように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却するよう、予め冷却能力を設定すればよい。そして冷却部22は、予め設定されたこの冷却能力で被処理部20を冷却すればよい。
この場合、例えば、プラズマ処理部10のプラズマエネルギーごとに、冷却部22による冷却能力を予め設定する。この冷却能力は、対応するプラズマエネルギーでプラズマ処理されたときに、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面が目標水接触角を維持するように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却可能な冷却能力であればよい。そして、調整部32Bは、プラズマ処理部10のプラズマエネルギーに対応する冷却能力となるように、冷却部22の冷却能力を調整すればよい。
なお、本実施の形態では、印刷システム1(および画像形成装置40)は、1つの改質装置100を備えた構成を説明したが、複数の改質装置100を備えた構成であってもよい。また、印刷システム1は、両面印刷に対応可能な構成としてもよい。
(第2の実施の形態)
上記実施の形態では、印刷システム1(および画像形成装置40)は、一例として、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、冷却部22の冷却能力を調整する場合を説明した。
しかし、印刷システム(および画像形成装置)は、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の少なくとも一方を調整すればよい。
本実施の形態では、印刷システム(および画像形成装置)が、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の双方を調整する場合を説明する。
図9および図10は、本実施の形態の印刷システム1Bの模式図である。なお、印刷システム1Bは、画像形成装置40に代えて、画像形成装置40Bを備えた以外は、印刷システム1と同じ構成である。
画像形成装置40Bは、改質装置100Bと、記録部170と、を備える。改質装置100Bは、プラズマ処理部10と、冷却部22と、制御部33と、を備える。画像形成装置40Bは、改質装置100に代えて改質装置100Bを備えた以外は、画像形成装置40と同じ構成である。また、改質装置100Bは、制御部32に代えて制御部33を備えた以外は、改質装置100と同じ構成である。
なお、本実施の形態では、制御部33は、画像形成装置40Bを制御するものとして説明する。しかし、制御部33は、改質装置100Bを制御するための制御部と、記録部170を制御するための制御部と、画像形成装置40Bに設けられた他の構成部の各々を制御するための制御部と、を別体とした構成であってもよい。
図13は、制御部33の機能ブロック図である。制御部33は、取得部32Aと、調整部33Bと、記録制御部32Eと、を含む。取得部32Aと、記録制御部32Eは、第1の実施の形態と同様である。調整部33Bは、プラズマ制御部33Cと、冷却制御部33Dと、を含む。
取得部32A、プラズマ制御部33C、冷却制御部33D、および記録制御部32Eの一部またはすべては、例えば、CPUなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、ICなどのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
調整部33Bは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面が目標水接触角を維持するように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の双方を調整する。
また、調整部33Bは、被処理物20の種類、被処理物20に吐出されるインクのインク種の少なくとも一方と、取得部32Aで取得した表面温度と、に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の双方を調整することが好ましい。
調整部33Bは、プラズマ制御部33Cと、冷却制御部33Dと、を含む。
プラズマ制御部33Cは、被処理物20の表面を、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10を調整する。具体的には、プラズマ制御部33Cは、所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10の電圧印加部15に印加する電圧値、電圧印加時間、駆動する放電電極11の数などを調整する。プラズマ制御部33Cによる、被処理物20の表面を所定の水接触角とするためのプラズマエネルギー量となるように調整する調整方法は、第1の実施の形態のプラズマ制御部32Cと同様である。すなわち、プラズマ制御部33Cによる、被処理物20の表面を所定の水接触角とするためのプラズマエネルギーの算出方法は、プラズマ制御部32Cと同様である。
本実施の形態では、プラズマ制御部33Cは、更に、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標水接触角を示すように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整する。
具体的には、プラズマ制御部33Cは、取得部32Aで取得した表面温度が高いほど、プラズマエネルギー量が大きくなるように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整する。この調整により、プラズマ制御部33Cは、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標水接触角を示すように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整する。
なお、プラズマ制御部33Cは、このプラズマエネルギー量の調整時には、目標水接触角とするためのプラズマエネルギー量以上で、且つ、取得部32Aで取得した表面温度が高いほどプラズマエネルギー量が大きくなるように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整する。
まず、プラズマ制御部33Cは、取得部32Aで取得した表面温度に応じたプラズマエネルギー量の調整値を算出する。
例えば、記憶部38に、目標水接触角と、目標水接触角の範囲温度(被処理物20の表面温度)と、対応する表面温度を実現するために必要な冷却部22の冷却能力と、対応する目標水接触角からの水接触角の上昇を相殺するために必要なプラズマエネルギー量の調整値と、を対応づけた第5情報を予め記憶する。冷却能力の定義は、第1の実施の形態と同様である。
このプラズマエネルギー量の調整値は、少なくともインクを吐出される直前の被処理物20の水接触角が目標水接触角を示すように、予めプラズマ処理部10で加えておくべきプラズマエネルギー量と、プラズマ処理時(処理直後)の被処理物20の水接触角を目標水接触角とするためのプラズマエネルギー量と、の差分である。
第5情報における、このプラズマエネルギー量の調整値は、対応する冷却能力と、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の搬送時間と、目標水接触角と、の相関に応じて、予め測定し、設定すればよい。すなわち、この第5情報は、印刷システム1Bを用いて予め測定し、予め対応づけて記憶しておけばよい。なお、第5情報における、冷却能力は、対応する目標水接触角と、被処理物20の表面温度と、に対応して一意の値が決定されているものとするが、これに限定されない。また、第5情報における、プラズマエネルギー量の調整値は、対応する目標水接触角と、被処理物20の表面温度と、に対応して一意の値が決定されているものとするが、これに限定されない。
そして、プラズマ制御部33Cは、目標水接触角と、取得部32Aで取得した表面温度と、に対応するプラズマエネルギー量の調整値を第5情報から読取る。そして、プラズマ制御部33Cは、先に決定した目標水接触角に対応するプラズマエネルギー量に、読取ったプラズマエネルギーの調整値を加算したプラズマエネルギー量を算出する。
そして、プラズマ制御部33Cは、算出したプラズマエネルギー量を実現するように、電圧印加部15から放電電極11へ印加する電圧値、電圧印加時間、駆動する放電電極11の数などを調整すればよい。この処理により、プラズマ制御部33Cは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標水接触角を示すように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整する。すなわち、プラズマ制御部33Cは、対応する目標水接触角とするためのプラズマエネルギー量以上で、且つ、取得部32Aで取得した表面温度が高いほどプラズマエネルギー量が大きくなるように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整する。
なお、プラズマ制御部33Cは、目標水接触角を実現するために必要なプラズマエネルギー量の算出時と同様に、被処理物20の種類、被処理物20の吐出するインク種の少なくとも1つに応じて、プラズマエネルギー量の調整値を算出してもよい。
この場合には、例えば、記憶部38に、目標水接触角と、被処理物20の種類と、インク種と、に対応する上記第5情報を、予め記憶すればよい。そして、プラズマ制御部33Cは、被処理物20の種類と、インク種と、に対応する第5情報における、目標水接触角と、取得部32Aで取得した表面温度と、対応するプラズマエネルギー量の調整値を読取ればよい。
冷却制御部33Dは、冷却部22の冷却能力を調整する。冷却制御部33Dは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように、冷却部22の冷却能力を調整する。
冷却制御部33Dは、第1の実施の形態の冷却制御部32Dと同様に、冷却部22を構成する、第1冷却部22A、第2冷却部22B、第3冷却部22Cの少なくとも1つの冷却能力を調整することで、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標とする水接触角の範囲となる温度であるように、冷却能力を調整する。
例えば、冷却部22が、駆動電圧が高くなるほど、また、電圧印加時間が長いほど、冷却能力(すなわち、より低温とする能力)が大きくなる構成であるとする。この場合、冷却制御部33Dは、冷却部22に印加する駆動電圧および電圧印加時間の少なくとも一方を調整することで、冷却能力を調整する。
本実施の形態では、冷却制御部33Dは、印刷データに含まれる設定情報から目標水接触角を読取り、取得部32Aから表面温度を取得する。そして、冷却制御部33Dは、読取った目標水接触角および取得した表面温度に対応する冷却能力を、上記第5情報から読取る。そして、冷却制御部33Dは、読取った冷却能力となるように、冷却部22の冷却能力を調整する。
なお、冷却制御部33Dは、目標水接触角と、表面温度と、被処理物20の種類および被処理物20の吐出するインク種の少なくとも一方と、に応じて、冷却部22の冷却能力を算出してもよい。
この場合には、上記と同様に、例えば、記憶部38に、目標水接触角と、被処理物20の種類と、インク種と、に対応する上記第5情報を、予め記憶すればよい。そして、プラズマ制御部33Cは、被処理物20の種類と、インク種と、に対応する第5情報における、目標水接触角と、取得部32Aで取得した表面温度と、対応する冷却能力を読取ればよい。
なお、冷却制御部33Dは、取得部32Aで取得した表面温度が高いほど、冷却能力が高くなるように、冷却部22の冷却能力を調整する。このため、第5情報に含まれる、表面温度と冷却能力との関係は、表面温度が高いほど、冷却能力が高く(すなわり、より低温となるように冷却)なるように、予め対応づけられていればよい。
次に、本実施の形態の画像形成装置40Bで実行する画像形成処理の手順を説明する。画像形成処理は、プラズマ処理、冷却処理、インク吐出による記録処理、を含む。
図14は、画像形成装置40Bが実行する画像形成処理の手順を示すフローチャートである。
まず、制御部33が、外部装置などから印刷データを受信する(ステップS200)。次に、制御部33は、受信した印刷データを、記憶部38に記憶する(ステップS202)。
次に、調整部33Bが、所定の水接触角および目標水接触角を取得する(ステップS204)。調整部33Bは、ステップS200で受信した印刷データに含まれる設定情報から、所定の水接触角および目標水接触角を読取ることによって、所定の水接触角および目標水接触角を取得する。
次に、調整部33Bが被処理物20の種類を取得する(ステップS206)。調整部33Bは、ステップS200で受信した印刷データに含まれる設定情報から、被処理物20の種類を読取ることによって、被処理物20の種類を取得する。
次に、調整部33Bがインク種を取得する(ステップS208)。調整部33Bは、ステップS200で受信した印刷データに含まれる設定情報から、インク種を読取ることによって、インク種を取得する。
次に、プラズマ制御部33Cが、ステップS204で取得した所定の水接触角を実現するための、プラズマエネルギー量を算出する(ステップS210)。なお、上述したように、プラズマ制御部33Cは、ステップS204で取得した所定の水接触角、ステップS206で取得した被処理物20の種類、及びステップS208で取得したインク種に応じて、プラズマエネルギー量を算出してもよい。
次に、冷却制御部33Dが、初期値としての冷却能力を算出する(ステップS212)。ステップS212では、例えば、冷却制御部33Dは、ステップS204で取得した目標水接触角と、予め定めた基準温度の表面温度と、に対応する冷却能力を算出する。基準温度は、例えば、プラズマ処理部10がプラズマ処理を行ったときの、放電電極11とアース電極14との間の領域の温度の予測値を予め設定し、この予測値を基準温度として予め設定すればよい。なお、この基準温度は、ユーザによる図示を省略する入力部等の操作によって、適宜変更可能であるとする。
次に、冷却制御部33Dが、ステップS212で算出した冷却能力となるように、冷却部22を制御する。これによって、冷却部22が冷却を開始する(ステップS214)。
次に、プラズマ制御部33Cが、ステップS210で算出したプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10を調整する。これによって、プラズマ処理部10は、ステップS210で算出したプラズマエネルギー量、すなわち、ステップS204で取得した目標水接触角を実現するためのプラズマエネルギー量で被処理物20をプラズマ処理する(ステップS216)。
次に、取得部32Aが、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を取得する(ステップS218)。例えば、取得部32Aは、検出部36で検出された表面温度を、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度として取得する。
次に、冷却制御部33Dが、ステップS218で取得した表面温度と、ステップS204で取得した目標水接触角と、に対応する冷却能力を、第5情報を用いて算出する。そして、冷却制御部33Dは、算出した冷却能力で冷却するように、冷却部22を調整する(ステップS220)。
次に、プラズマ制御部33Cが、ステップS218で取得した表面温度と、ステップS204で取得した目標水接触角と、に対応するプラズマエネルギー量の調整値を、第5情報を用いて算出する。そして、プラズマ制御部33Cは、ステップS210で算出したプラズマエネルギー量に、該算出したプラズマエネルギー量の調整値を加算したプラズマエネルギー量となるように、プラズマ処理部10を制御する(ステップS222)。
そして、記録制御部32Eが、ステップS200で受信した印刷データに含まれる、画像データによって示される各画素の濃度値に応じたインク滴を対応する位置に吐出するように、記録部170を制御する(ステップS224)。
ステップS218〜ステップS222の処理によって、プラズマ処理部10によってプラズマ処理された被処理物20は、少なくとも、搬送経路Dに沿って記録部170へ搬送されるまでの期間、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように、冷却される。このため、プラズマ処理による改質効果の低下が抑制される。また、ステップS218〜ステップS222の処理によって、プラズマ処理部10によるプラズマエネルギー量が、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標水接触角を示すように、表面温度に応じて調整される。
そして、制御部33は、印刷データに含まれる画像データの画像の形成が終了するまで(ステップS226:Yes)、ステップS216〜ステップS226の処理を繰り返し実行する(ステップS226:No)。そして、ステップS226で肯定判断すると(ステップS226:Yes)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態の改質装置100Bでは、取得部32Aが、プラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を取得する。調整部33Bは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の双方を調整する。
このため、本実施の形態の改質装置100Bでは、プラズマ処理によって低くなった水接触角の上昇を抑制することができる。
従って、本実施の形態の改質装置100Bは、改質効果の低下を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、調整部33Bは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量、および冷却部22の冷却能力の双方を調整する場合を説明した。
しかし、調整部33Bは、冷却部22の冷却能力を固定とし、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量のみを調整してもよい。
この場合、冷却部22の冷却能力は、例えば、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面温度を、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように冷却する冷却能力で、固定とすればよい。そして、調整部33Bは、取得部32Aで取得した表面温度に基づいて、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標水接触角を示すように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整してもよい。
この場合についても、プラズマ制御部33Cは、取得した表面温度が高いほど、プラズマエネルギー量が大きくなるように、プラズマ処理部10のプラズマエネルギー量を調整すればよい。
(第3の実施の形態)
なお、上記実施の形態では、プラズマ処理部10は、被処理物20の表面が所定の水接触角となるように被処理物20をプラズマ処理し、冷却部22は、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面温度が目標水接触角の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する場合を説明した。
ここで、上述したように、本発明者らは、図7などの結果から、熱による水酸基(OH)の剥離により、プラズマ処理によって低下したpHが高くなり、改質効果が低下することを見出した。
そこで、本実施の形態では、プラズマ処理部10は、被処理物20の表面が所定のpH値となるように、被処理物20をプラズマ処理する。プラズマ処理部10およびプラズマ制御部32C、33C(図11、図13参照)は、上記所定の水接触角に代えて、所定のpH値を用いる以外は、上記実施の形態と同様の処理を行えばよい。所定のpH値とは、プラズマ処理によって実現させる、プラズマ処理直後の被処理物20表面のpH値である。所定のpH値は、例えば、ユーザによって予め設定される。
また、本実施の形態では、冷却部22は、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標とするpH値の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する。
目標とするpH値の範囲は、インク吐出直前のタイミングにおける、被処理物20の目標とするpH値の範囲である。目標とするpH値の範囲は、ユーザによって予め設定される。目標とするpH値の範囲は、上記所定のpH値以下の値である。なお、目標とするpH値の範囲となる温度とは、被処理物20の表面が目標とするpH値の範囲を維持可能な、温度範囲を示す。
本実施の形態では、冷却部22および冷却制御部32D、33D(図11、図13参照)は、上記目標水接触角に代えて目標とするpH値を用い、目標水接触角の範囲温度に代えて、目標とするpH値の範囲となる温度を用いる以外は、上記実施の形態と同様の処理を行えばよい。
このように、プラズマ処理部10が、被処理物20の表面が所定のpH値となるように被処理物20をプラズマ処理し、冷却部22が、被処理物20にインクが吐出される際の被処理物20の表面が目標とするpH値の範囲となる温度であるように、少なくともプラズマ処理されてからインクを吐出されるまでの被処理物20の表面を冷却する。
このため、本実施の形態の改質装置100Bでは、このような冷却部22を備えた構成とすることによって、プラズマ処理によって低くなったpH値の上昇を抑制し、改質効果の低下を抑制することができる。また、本実施の形態では、改質効果の低下を抑制することができるので、プラズマ処理された被処理物20の表面にインクを吐出することにより形成する画像の、画質劣化を抑制することができる。
(第4の実施の形態)
次に、上述した改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bのハードウェア構成について説明する。
図15は、改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bのハードウェア構成図である。改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bは、ハードウェア構成として、装置全体を制御するCPU2901と、各種データや各種プログラムを記憶するROM2902と、各種データや各種プログラムを記憶するRAM2903と、キーボードやマウス等の入力装置2905と、ディスプレイ装置等の表示装置2904と、を主に備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
駆動部2906は、改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bの各々における、CPU2901によって制御される装置各部(例えば、プラズマ処理部10、冷却部22、検出部36など)に相当する。
上記実施の形態の改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供される。
また、上記実施の形態の改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上記実施の形態の改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
また、上記実施の形態の改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bで実行されるプログラムを、ROM2902等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
上記実施の形態の改質装置100、改質装置100B、画像形成装置40、および画像形成装置40Bで実行されるプログラムは、上述した各部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)2901が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、上記各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
なお、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、種々の変形が可能である。