JP2015085527A - 改質装置、画像形成装置、画像形成システム、及び印刷物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置構成の簡略化を図ることができる記録媒体の改質装置、画像形成装置を提供する。【解決手段】改質装置は、第1方向Yに長い放電電極18と、対向電極22と、溝部25を有するカバー部材24と、を備える。対向電極22は、放電電極18の重力方向下流側に配置されると共に放電電極18に対向配置されている。カバー部材24は、対向電極22の重力方向上流側に配置されており、溝部25を備える。溝部25は、対向電極22側に開口すると共に第1方向Yに長く、且つ内側に挿入された放電電極18を開口縁Qを介して保持する。【選択図】図3
Description
本発明は、改質装置、画像形成装置、画像形成システム、及び印刷物の製造方法に関する。
記録媒体等の処理対象物をプラズマにより改質する技術が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、プラズマチャンバー内に放電用の放電電極を配置し、放電によって発生した活性種をプラズマチャンバー内に閉じ込める技術が開示されている。
しかし、従来では、放電電極単体では剛性が出ないため、放電電極と対向電極との距離を所定の距離に保つためには、放電電極に張力をかけて保持する必要があった。このため、従来では、放電電極の長尺方向の少なくとも一端部を、ばね部材等の張力機構を介して保持する必要があり、装置構成が複雑化するという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置構成の簡略化を図ることができる、改質装置、画像形成装置、画像形成システム、及び印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1方向に長い放電電極と、前記放電電極に対向配置された対向電極と、前記対向電極側に開口すると共に前記第1方向に長く且つ内側に挿入された前記放電電極を開口縁を介して保持する溝部を有するカバー部材と、を備える。
本発明によれば、装置構成の簡略化を図ることができる、という効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、改質装置、画像形成装置、画像形成システム、及び印刷物の製造方法の一の実施の形態を詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態の改質装置11の一例を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態では、改質装置11は、画像形成装置10に搭載されている。
図1は、本実施の形態の改質装置11の一例を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態では、改質装置11は、画像形成装置10に搭載されている。
改質装置11は、処理対象部材の表面をプラズマによって改質する装置である。
本実施の形態では、処理対象部材が、記録媒体Pである場合を説明する。なお、記録媒体Pは処理対象部材の一例であり、処理対象部材は記録媒体Pに限られない。
記録媒体Pの種類としては、例えば、普通紙、上質紙、再生紙、薄紙、厚紙、コート紙等を用いることができる。また、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面にインク等で画像を形成することができるものも、記録媒体Pとして用いることができる。また、記録媒体Pとして、ロール紙を用いてもよい。ロール紙としては、切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続紙(連帳紙、連続帳票)であってよい。その場合、ロール紙におけるページ(頁)とは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域とする。本実施の形態では、記録媒体Pとして、ロール紙を用いる場合を一例として説明する。
改質装置11は、改質部12、オゾン処理部14、電圧印加部16、搬送部19、及び制御部20を備える。
搬送部19は、図示を省略する複数の搬送ローラを備える。搬送部19は、記録媒体Pを搬送方向(図1中、矢印X方向、以下、搬送方向Xと称する)へ搬送する。給紙部(図示省略)に貯留されている記録媒体Pは、図示を省略する搬送ローラによって、搬送経路(図示省略)に沿って搬送され、改質装置11に至る。改質装置11では、搬送部19が、記録媒体Pを、たわみ領域Dを介して改質部12へ搬送する。たわみ領域Dは、改質部12による改質処理(詳細後述)と記録媒体Pの搬送速度との速度差を吸収する領域である。
制御部20は、改質装置11全体を制御する。制御部20は、改質装置11の各部に電気的に接続されており、これらの各部を制御する。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータである。
オゾン処理部14は、改質部12による改質処理(詳細後述)によって発生した高濃度オゾンを吸引し、フィルターによって低濃度に処理した後に、改質装置11の外部へ排出する。このフィルターには、例えば、活性炭素材のフィルターなどを用いる。
改質部12は、記録媒体Pの表面をプラズマによって改質する改質処理を行う。本実施の形態における改質処理とは、処理対象部材に親水性や酸性、浸透性を付与することを指す。
図2は、改質処理の説明図である。改質部12は、放電電極18及び対向電極22を備える。放電電極18及び対向電極22は、電圧印加部16に電気的に接続されている。電圧印加部16は、制御部20に電気的に接続されている。電圧印加部16は、対向電極22及び放電電極18に、これらの電極の間(以下、電極間と称する場合がある)にプラズマ形成可能な程度の周波数及び電圧値の電圧を印加する。この電圧の電圧値は、たとえば約10kV(キロボルト)程度である。また、その周波数は、たとえば約20kHz(キロヘルツ)である。このような高周波・高電圧の電圧を放電電極18と対向電極22に印加することで、放電電極18と対向電極22との電極間には、沿面放電によるプラズマが発生する。本実施の形態では、この電極間のプラズマの発生した領域を放電領域Sと称して説明する。
この放電領域Sに、搬送方向Xに搬送されてきた記録媒体Pが到ることで、記録媒体Pの放電電極18側の面がプラズマによって改質される。すなわち、改質処理では、記録媒体Pに大気中のプラズマ照射を行うことによって、記録媒体P表面の高分子を反応させ、親水性の官能基を形成する。詳細には、放電電極18から放出された電子eが電界中で加速されて、大気中の原子や分子を励起・イオン化する。イオン化された原子や分子からも電子が放出され、高エネルギーの電子が増加し、その結果、ストリーマ放電(プラズマ)が発生する。
このストリーマ放電による高エネルギーの電子によって、記録媒体Pが、例えば、コート紙であったとしても、改質が行われる。コート紙は、炭酸カルシウムをバインダーとしての澱粉で固めた表面を有している。コート紙では、プラズマにより、この澱粉における高分子結合が切断され、気相中の酸素ラジカルO*やオゾンO3と再結合する。これにより、記録媒体Pの表面に水酸基やカルボキシル基等の極性官能基が形成される。コート紙の場合、コート層内部にも極性官能基が生成されるため、ビヒクルの浸透性が上がる。その結果、記録媒体Pの表面に、親水性や酸性、浸透性が付与される。すなわち、上述したように、改質処理とは、処理対象部材に親水性や酸性、浸透性を付与することを指す。
図3は、本実施の形態の改質部12の説明図である。図3(B)は、改質部12の斜視図である。図3(A)は、図3(B)に示す改質部12の第2方向Tの断面図である。
図3に示すように、本実施の形態の改質部12は、対向電極22と、放電電極18と、カバー部材24と、を備える。
放電電極18は、第1方向Yに長い電極である。本実施の形態では、放電電極18は、第1方向Yに長い円柱状であるとして説明する。なお、第2方向Tは、第1方向Yに直交する方向である。
本実施の形態では、改質部12は、複数の放電電極18(18A〜18G)を備える。なお、これらの複数の放電電極18A〜放電電極18Gを総称する場合には、単に放電電極18と称して説明する。複数の放電電極18(18A〜18G)は、円柱状の対向電極22の周方向に沿って、所定距離を隔てて互いに略平行に配列されている。
対向電極22は、放電電極18の重力方向下流側(図3中、矢印ZB方向参照)に配置されている。また、対向電極22は、放電電極18に対して対向配置されている。
なお、本実施の形態では、対向電極22は、放電電極18の重力方向下流側に配置されている場合を説明する。しかし、対向電極22は、放電電極18に対向配置されていればよく、重力方向下流側への配置に限られない。
本実施の形態では、対向電極22は、第1方向Yに長い円柱状である。対向電極22の、第1方向Yに直交する第2方向Tの断面の直径は、放電電極18の第2方向Tの断面の直径より大きい。本実施の形態では、対向電極22の第2方向Tの断面の直径は、複数の放電電極18(18A〜18G)を対向電極22の周方向に沿って所定距離を隔てて平行に配列可能な程度の大きさである。
カバー部材24は、対向電極22の外周面の少なくとも一部を覆うと共に、放電電極18を保持する部材である。カバー部材24は、対向電極22より重力方向上流側(図3中、矢印ZA方向参照)に配置されている。また、カバー部材24は、対向電極22に対して所定距離を隔てて配置されている。カバー部材24は、複数の放電電極18を介して対向電極22の外周面の一部を覆うように設けられている。また、カバー部材24は、絶縁性の材料によって構成されている。
なお、本実施の形態では、カバー部材24は、対向電極22より重力方向上流側に配置されている場合を説明する。しかし、カバー部材24の配置位置は、対向電極22の重力方向上流側に限られない。
具体的には、カバー部材24は、第1方向Yに長く、対向電極22の第1方向Yの一端部から他端部に渡る領域を覆う形状である。また、カバー部材24は、対向電極22の外周面の一部を周方向に覆うように、対向電極22の周方向に沿って湾曲した形状である。例えば、カバー部材24の第2方向の断面は、扇形状である。
対向電極22の周方向に沿って湾曲したカバー部材24の第2方向Tの曲率は、対向電極22の外周の曲率に応じて定まる。また、カバー部材24の第2方向Tの長さは、対向電極22の周方向に沿って配列した複数の放電電極18の全てを保持可能な長さであればよく、保持する放電電極18の本数や放電電極18の直径等によって定まる。
カバー部材24における、対向電極22との対向面側には、複数の溝部25が設けられている。すなわち、カバー部材24における、重力方向下流側の面には、複数の溝部25が設けられている。
溝部25は、対向電極22側に開口すると共に、第1方向Yに長く、内側に挿入された放電電極18を、開口縁Qを介して保持する。開口縁Qは、カバー部材24における溝部25による開口の縁の部分である。
カバー部材24には、保持する放電電極18の数に対応する数の溝部25が設けられている。本実施の形態では、溝部25における第2方向Tの断面は、円柱状の放電電極18の第2方向Tの断面の直径より大きく且つ対向電極22側に開口した円状である。
溝部25の直径(溝部25の第2方向Tの断面における直径)は、放電電極18を内側に挿入可能な程度の直径であればよい。具体的には、溝部25の直径は、放電電極18の直径(放電電極18の第2方向Tの断面における直径)より僅かに大きいことが好ましい。僅かに大きいとは、溝部25の直径が、放電電極18の直径の1.2倍以上1.8倍以下であることを示す。
図4は、カバー部材24の第2方向Tの断面図である。各溝部25の開口幅(溝部25の開口の第2方向Tの長さ)は、溝部25に挿入された放電電極18を、溝部25の開口縁Qによって保持可能な大きさであればよい。このため、溝部25の開口幅は、放電電極18の直径や溝部25の直径等に応じて調整すればよい。
具体的には、溝部25の開口幅は、溝部25における第2方向Tの断面中心(図4中、W参照)から30°以上50°以下の開口角度θの範囲内であることが好ましい。
図5は、放電電極18を溝部25内に挿入した状態のカバー部材24を示す、第2方向Tの断面図である。図5に示すように、各溝部25に挿入された放電電極18(18A〜18G)は、自重によって溝部25の開口の開口縁Qに接触した状態で保持される。すなわち、各放電電極18は、カバー部材24における溝部25による開口縁Qによって保持される。また、溝部25内に挿入された放電電極18は、開口縁Qによって保持されているため、溝部25内で周方向に回転可能に保持されている。
図1に戻り、本実施の形態の改質装置11は、移動部28を備える。移動部28は、カバー部材24によって保持された放電電極18が対向電極22に接触した接触状態、または放電電極18が対向電極22から所定距離離れた離間状態となるように、カバー部材24を移動させる。なお、接触状態は、カバー部材24によって保持された全ての放電電極18が、予め定められた押圧力で対向電極22に(または記録媒体Pを介して対向電極22に)接触した状態である。
この予め定めた押圧力は、放電電極18と対向電極22との対向領域を記録媒体Pが搬送方向X方向に搬送されたときに、接触状態のカバー部材24によって保持された放電電極18が対向電極22の回転または記録媒体Pの搬送に伴って回転する程度の押圧力であればよい。
図6は、カバー部材24の移動の説明図である。図6(A)は、カバー部材24が離間状態であるときを示す図である。図6(B)は、カバー部材24が接触状態であるときを示す図である。
移動部28は、制御部20に電気的に接続されている。移動部28は、制御部20の制御によって、放電電極18が接触状態または離間状態となるように、カバー部材24を重力方向(図6中、矢印ZB方向)または反重力方向(図6中、矢印ZA方向)に移動させる。移動部28は、公知の移動機構である。
ここで、本実施の形態では、対向電極22は、放電電極18の重力方向下流側に配置されている。また、カバー部材24は、対向電極22より重力方向上流側に配置されている。このため、移動部28が、カバー部材24を重力方向または反重力方向に移動させることで、放電電極18は、接触状態または離間状態となる。
カバー部材24が離間状態(図6(A)参照)となるよう移動されると、改質部12によって改質処理がなされる。また、制御部20は、所定時間毎に、カバー部材24が接触状態となるように移動部28を制御する。
例えば、制御部20は、図示を省略する記憶部に、接触状態を実現するための、重力方向へのカバー部材24の移動量を予め記憶する。また、制御部20は、図示を省略する記憶部に、離間状態を実現するための、反重力方向へのカバー部材24の移動量を予め記憶する。そして、制御部20は、改質処理の実行時には、反重力方向へのカバー部材24の移動量を記憶部(図示省略)から読取り、接触状態にあるカバー部材24を離間状態へと移動させるように移動部28を制御する。また、制御部20は、所定時間毎に、記憶部から、重力方向へのカバー部材24の移動量を記憶部(図示省略)から読取り、離間状態にあるカバー部材24を接触状態へと移動させるように移動部28を制御する。
カバー部材24を接触状態となるように(図6(B)参照)移動させると、カバー部材24によって保持された全ての放電電極18は、対向電極22に上記所定の押圧力で接触した状態となる。この状態で対向電極22が回転することで、記録媒体Pが搬送方向Xに搬送され、この対向電極22の回転及び記録媒体Pの搬送に伴って、放電電極18が回転する(図6(B)中、矢印V方向参照)。この放電電極18の回転により、放電電極18の外周面に付着した放電生成物等の異物が放電電極18の外周面から除去される。
図1に戻り、記録媒体Pは、搬送部19によって搬送されて改質部12に至ることで、改質処理が施される。本実施の形態では、改質部12は、複数の対向電極22を備える。各対向電極22の各々には、カバー部材24が所定距離を隔てて配置されている。なお、カバー部材24は、図3を用いて説明したように、複数の放電電極18を溝部25に保持している。
記録媒体Pは、これらの複数の対向電極22と、複数のロール部材13と、に交互に架け渡された状態で搬送方向Xに搬送されることで、改質処理される。詳細には、カバー部材24によって保持された放電電極18における、溝部25の開口から露出した領域から対向電極22に向かって放電がなされ、プラズマが発生する。これにより、改質処理がなされる。
そして、記録媒体Pは、搬送部19によって、更に搬送方向Xへ搬送されて改質装置11の外部へと搬送される。なお、本実施の形態では、記録媒体Pの表面側に表面処理を行う場合を説明するが、記録媒体Pの裏面側に表面処理を行ってもよい。
ここで、従来では、放電電極18と対向電極22との間隔を所定の間隔に保つために、放電電極18に張力を与えた状態で支持していた。これは、放電電極18のたわみを抑制する必要があるためである。特に、放電電極18を第1方向Yの両端部で支持したときにたわみの生じる程度に剛性の低い、小径の放電電極18を用いた場合には、たわみの生じない程度の張力を放電電極18に加えた状態で保持する必要があった。
図7は、従来の改質部101の説明図である。図7(B)は、改質部101の斜視図である。図7(A)は、図7(B)に示す改質部101の第2方向Tの断面図である。
従来の改質部101は、本実施の形態におけるカバー部材24に代えてカバー部材240を備えると共に、張力機構242を備える。カバー部材240は、複数の放電電極18を介して対向電極22の外周面の一部を覆うように設けられている。張力機構242は、各放電電極18の第1方向Yの一端部または両端部に設けられ、放電電極18に第1方向Yへの張力を与えた状態で保持する。この張力機構242には、例えば、ばね部材が用いられていた。
従来では、このように、各放電電極18に第1方向Yの少なくとも一端部に、張力機構242を別途設けることで、放電電極18と対向電極22との間隔を所定距離に保持していた。このため、従来では、部品数の増加等による製造コストの増大が生じていた。また、従来では、ばね機構等の張力機構242を各放電電極18に取り付ける必要があり、放電電極18の組付け作業工数の増大も招いていた。また、改質部101に設ける放電電極18の数が増えるほど、製造コストの増大や、組付け作業工数の増大を招いていた。このため、従来では、装置構成が複雑化していた。
一方、本実施の形態の改質部12は、上述したように、カバー部材24を備える。カバー部材24は、対向電極22に対して所定間隔を隔てて配置されている。そして、カバー部材24における、対向電極22との対向面側には、複数の溝部25が設けられている。溝部25は、対向電極22側に開口すると共に第1方向Yに長く、内側に挿入された第1方向Yに長い放電電極18を、開口縁Qを介して保持する。
このため、本実施の形態の改質装置11では、放電電極18は、カバー部材24の溝部25に挿入されることで、剛性が低い場合であっても、第1方向Yへの張力を与えられることなく、対向電極22に対して所定距離を隔てた状態で保持される。
すなわち、改質装置11では、放電電極18を取り付けるための張力機構を必要とせず、放電電極18を対向電極22に対して所定距離を隔てた状態で容易に保持することができる。
従って、本実施の形態の改質装置11は、装置構成の簡略化を図ることができる。また、本実施の形態の改質装置11は、上記構成とすることによって、製造コストの低減を図ると共に、放電電極18の組み付け作業工数の短縮も図ることができる。
また、本実施の形態の改質装置11では、カバー部材24は、複数の放電電極18を介して対向電極22の外周面の一部を覆うように設けられている。このため、カバー部材24は、改質部12によるプラズマ放電によって生成されたラジカル等の活性種を、カバー部材24と対向電極22との対向領域に閉じ込めることができる。
すなわち、本実施の形態の改質装置11では、カバー部材24は、放電電極18を保持する機能と、活性種を閉じ込める機能と、の双方の機能を兼ね備える。よって、放電電極18を保持する部材と、活性種を閉じ込める部材と、を別々に用意する必要がない。このため、本実施の形態の改質装置11は、上記効果に加えて、更にコストの低減を図ることができる。
また、本実施の形態では、改質装置11は、移動部28を備える。移動部28は、カバー部材24によって保持された放電電極18が対向電極22に接触した接触状態、または放電電極18が対向電極22から所定距離離れた離間状態となるように、カバー部材24を移動させる。そして、制御部20が、所定時間毎に、カバー部材24を接触状態となるように移動部28を制御するため、放電電極18の従動回転により、放電電極18の外周面に付着した放電生成物等の異物が放電電極18の外周面から除去される。
このため、放電電極18の表面に異物が堆積することが抑制される。よって、本実施の形態の改質装置11では、上記効果に加えて、放電電極18の表面に異物が堆積して均一な放電を阻害する現象を抑制することができる。
また、接触状態における、放電電極18が対向電極22へ接触する押圧力は、ユーザによる図示を省略する入力部の操作指示等によって変更可能としてもよい。この場合、例えば、制御部20は、図示を省略する入力部から、放電電極18の対向電極22に対する予め定めた押圧力を示す情報を受け付ける。すると、制御部20は、該押圧力を実現するための、重力方向へのカバー部材24の移動量を算出し、該記憶部に記憶すればよい。制御部20は、接触状態への制御時には、該記憶部に記憶された該移動量を読取り、カバー部材24を重力方向へ移動させるように移動部28を制御すればよい。
このように、接触状態における、放電電極18が対向電極22へ接触する押圧力を変更可能とすることによって、例えば、経時変化によってカバー部材24に歪が生じ、放電電極18の回転状態が悪化した場合に、放電電極18が対向電極22へ接触する押圧力を大きくすることによって、回転状態の悪化を改善することができる。
なお、本実施の形態では、放電電極18が第1方向Yに長い円柱状である場合を説明した。しかし、放電電極18は、第1方向Yに長い電極であればよく、その形状は円柱状に限られない。また、対向電極22は、第1方向Yに長い電極であればよく、その形状は、円柱状に限られない。
また、本実施の形態では、カバー部材24が複数の放電電極18を保持する場合を説明したが、カバー部材24は、1つの放電電極18を保持した形態であってもよい。
また、本実施の形態では、カバー部材24は、対向電極22の外周面の一部を周方向に覆うように、対向電極22の周方向に沿って湾曲した形状である場合を説明したが、カバー部材24の形状は、このような形状に限られない。但し、上述したように、活性種を閉じ込める観点から、カバー部材24は、対向電極22の周方向に沿って湾曲した形状であることが好ましい。
また、本実施の形態では、溝部25における第2方向の断面は、円柱状の放電電極18の第2方向Tの断面の直径より大きく且つ対向電極22側に開口した円状である場合を説明した。しかし、溝部25は、内側に挿入された放電電極18を、開口縁Qを介して保持する形状であればよく、断面円状に限られない。
図1に戻り、本実施の形態では、改質装置11を、記録部17Aを備えた画像形成装置10に搭載している。詳細には、画像形成装置10は、改質装置11と、記録装置160と、制御部32と、を備える。記録装置160は、改質装置11より記録媒体Pの搬送方向X下流側に設けられている。
制御部32は、画像形成装置10の全体を制御する。記録装置160は、記録部17Aを備える。記録部17Aは、インクジェット記録方式の記録部であり、形成対象の画像に応じたインクを吐出することで、記録媒体Pに画像を形成する。
改質装置11を画像形成装置10に搭載し、記録部17Aによる画像の形成前に、改質装置11によって改質処理を行うことで、隣接ドットの合一(打滴干渉と称される場合もある)によるビーディングやブリードを抑制することができる。
ここで、図2を用いて説明したように、改質処理を行うことによって、記録媒体Pの表面に親水性や酸性、浸透性が付与される。記録媒体Pに吐出されたインクにより形成されたドットが、親水性が上がることにより濡れ拡がって合一することで、ドット間の混色が発生する場合がある。ドット間の混色の発生を防ぐためには、インクに含まれる着色剤(例えば顔料や染料)をドット内で凝集させることや、ビヒクルが濡れ拡がるよりも早くビヒクルを乾燥させたり記録媒体P内へ浸透させたりすることが重要であることが分かった。
このため、記録部17Aとして、インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録方式の記録部を用いる場合には、改質装置11によって表面を改質された記録媒体Pに対して、記録部17Aによりインクを吐出して画像形成することが好ましい。
すなわち、本実施の形態では、改質装置11で発生させたプラズマによって記録媒体Pの表面を酸性化した後に、記録部17Aによってインクを吐出して画像を形成する。これによって、記録部17Aによって記録媒体Pに吐出されたインクに含まれる着色剤を凝集させたり、ビヒクルを記録媒体P内へ浸透させたりすることができる。すなわち、本実施の形態の画像形成装置10では、インクジェット記録方式による画像形成の前に行う前処理として、改質装置11によって記録媒体Pを酸性化する。
なお、本実施の形態において、酸性化する、とは、インクに含まれる顔料が凝集するpH値まで記録媒体Pの表面のpH値を下げることを意味する。pH値を下げるとは、物体中の水素イオンH+濃度を上昇させることである。記録媒体Pの表面に触れる前のインク中の顔料はマイナスに帯電し、ビヒクル中で顔料が分散している。この酸性化は、上述したプラズマによる改質処理によって実現される。
図8に、インクのpH値とインクの粘度との関係の一例を示す。図8に示すように、インクは、そのpH値が低いほど、その粘度が上昇する。これは、インクの酸性度が高くなるほど、インクのビヒクル中でマイナスに帯電している顔料が電気的に中和され、その結果、顔料同士が凝集するためである。したがって、たとえば、図8に示すグラフにおいてインクのpH値が必要な粘度に対応する値となるように、改質装置11によって記録媒体Pの表面のpH値を下げることで、インクの粘度を上昇させることが可能である。これは、インクが酸性である記録媒体Pの表面に付着した際、顔料が記録媒体P表面の水素イオンH+によって電気的に中和された結果、顔料同士が凝集するためである。
それにより、隣接したドット間の混色を防止するとともに、顔料が記録媒体Pの奥深く(さらには裏面まで)浸透するのを防止することが可能となる。ただし、必要な粘度と対応するpH値となるようにインクのpH値を下げるためには、記録媒体P表面のpH値を必要な粘度と対応するインクのpH値よりも低くしておく必要がある。
また、インクを必要な粘度とするためのpH値は、インクの特性によって異なる。すなわち、図8のインクAに示すように、比較的中性に近いpH値で顔料が凝集して粘度が上がるインクもあれば、インクAとは異なる特性を持つインクBに示すように、顔料を凝集させるためにインクAよりも低いpH値が必要なインクも存在する。
そこで、本実施の形態では、記録媒体P表面の濡れ性、pH値の低下によるインク顔料の凝集性や浸透性を改質処理によってコントロールするとともに、改質処理による記録媒体P表面のpH値変化に応じてインクを使い分けても良い。
つづいて、記録媒体Pに改質処理を施した場合と施していない場合との印刷物の違いを、図9〜図12を用いて説明する。図9は、本実施の形態にかかる改質処理を施していない記録媒体Pに対してインクジェット記録処理を行うことで得られた印刷物の画像形成面を撮像して得られた画像の拡大図である。図10は、図9に示す印刷物における画像形成面に形成されたドットの例を示す模式図である。図11は、本実施の形態にかかる改質処理を施した記録媒体Pに対してインクジェット記録処理を行うことで得られた印刷物の画像形成面を撮像して得られた画像の拡大図である。図12は、図11に示す記録媒体Pにおける画像形成面に形成されたドットの例を示す模式図である。なお、図9および図11に示す印刷物を得るにあたり、デスクトップ型のインクジェット記録装置を用いた。また、記録媒体Pには、コート層21(図10参照)を備える一般的なコート紙を用いた。
本実施の形態にかかる改質処理を施していないコート紙は、コート紙表面にあるコート層21の濡れ性が悪い。そのため、改質処理を施していないコート紙に対してインクジェット記録処理にて形成した画像では、たとえば図9および図10に示すように、ドットの着弾時にコート紙の表面に付着したドットの形状(ビヒクルCT1の形状)が歪になる。また、表面の濡れ性が悪い場合、ビヒクルCT1の表面張力によってドットが高さのある形状となり、その乾燥に比較的長い時間を要してしまう。ドットの乾燥が十分でない状態で近接ドットを形成すると、図9および図10に示すように、コート紙への近接ドットの着弾時にビヒクルCT1およびCT2同士が合一し、これによりドット間で顔料P10およびP20の移動(混色)が起き、その結果、ビーディング等による濃度ムラが生じてしまう場合がある。
一方、本実施の形態にかかる改質処理を施したコート紙は、コート紙表面にあるコート層21の濡れ性が改善されている。そのため、改質処理を施したコート紙に対してインクジェット記録処理にて形成した画像では、たとえば図11に示すように、ビヒクルCT1がコート紙の表面に比較的平坦な真円状に広がる。これにより、図12のようにドットが平坦な形状となる。
また、改質処理で形成された極性官能基によってコート紙表面が酸性になるため、インク顔料が電気的に中和され、顔料P10が凝集してインクの粘性が上がる。これにより、図12のようにビヒクルCT1及びCT2が合一した場合にも、ドット間の顔料P10およびP20の移動(混色)が抑制される。さらに、コート層21内部にも極性官能基が生成されるため、ビヒクルCT1の浸透性が上がる。これにより、比較的短時間で乾燥することが出来る。濡れ性向上により真円状に広がったドットが、浸透しながら凝集することにより、顔料P10が高さ方向に均等に凝集され、ビーディング等による濃度ムラの発生を抑えることが可能となる。なお、図10、図12は模式図であり、実際には図12の場合にも顔料は層になって凝集している。
このように、本実施の形態にかかる改質処理を施した記録媒体Pでは、改質処理によって極性官能基が形成された結果、表面が酸性になる。それにより、マイナスに帯電した顔料が記録媒体P表面で中和されることにより、顔料が凝集して粘性が上がり、結果的にドットが合一したとしても顔料の移動を抑制することが可能となる。また、記録媒体P表面に形成されたコート層21内部にも極性官能基が生成されることで、ビヒクルが速やかに記録媒体P内部に浸透し、これにより、乾燥時間を短縮することが出来る。つまり、濡れ性が上がることで真円状に広がったドットは、凝集によって顔料の移動が抑えられた状態で浸透することで真円に近い形状を保つことが可能となる。
図13は、本実施の形態にかかるプラズマエネルギーと記録媒体P表面の濡れ性、ビーディング、pH値および浸透性との関係を示すグラフである。図13では、記録媒体Pとしてコート紙へ印刷した場合の表面特性(濡れ性、ビーディング、pH値、浸透性(吸液特性))がプラズマエネルギーに依存してどのように変化するかが示されている。なお、図13に示す評価を得るにあたり、インクには、顔料が酸により凝集する特性の水性顔料インク(マイナスに帯電した顔料が分散されているアルカリ性インク)を使用した。
図13に示すように、コート紙表面の濡れ性は、プラズマエネルギーが低い値(たとえば0.2J/cm2程度以下)で急激に良くなり、それ以上エネルギーを増加させてもあまり改善はしない。一方、コート紙表面のpH値は、ある程度まではプラズマエネルギーを高めることにより低下していく。ただし、プラズマエネルギーがある値(たとえば4J/cm2程度)を超えたところで飽和状態になる。また、浸透性(吸液特性)は、pH値の低下が飽和したあたり(たとえば4J/cm2程度)から急激に良くなっている。ただし、この現象は、インクに含まれている高分子成分に依存して異なる。
この結果として、浸透性(吸液特性)がよくなり始めて(例えば4J/cm2程度)からビーディング(粒状度)の値が非常に良い状態となっている。ここでのビーディング(粒状度)とは、画像のざらつき感を数値で表したものであり、濃度のばらつきを平均濃度の標準偏差で表したものである。図13では、2色以上のドットからなる色のベタ画像の濃度を複数サンプリングし、その濃度の標準偏差をビーディング(粒状度)として表している。このように本実施の形態にかかるプラズマ処理を施したコート紙に吐出されたインクは、真円上に広がりかつ凝集しながら浸透するため、画像のビーディング(粒状度)が改善される。
上述したように、記録媒体P表面の特性と画像品質との関係では、表面の濡れ性が向上することにより、ドットの真円度が向上している。この理由としては、改質処理により生成された親水性の極性官能基によって記録媒体P表面の濡れ性が向上するとともにこれが均一化したことに加え、ゴミや油分や炭酸カルシウムなどの撥水要因が改質処理によって除外されたことによると考えられる。記録媒体P表面の濡れ性が向上した結果、液滴が円周方向に均等に拡がり、ドットの真円度が向上する。
また、記録媒体P表面を酸性化(pH値の低下)させることにより、インク顔料の凝集、浸透性の向上、ビヒクルのコート層内部への浸透などが生じる。これらにより、記録媒体P表面の顔料濃度が上昇するため、ドットが合一したとしても、顔料の移動を抑えることが可能となり、その結果、顔料の混濁が抑制し、顔料を均一に印刷メディア表面に沈降凝集させることが可能となる。ただし、顔料混濁の抑制効果は、インクの成分やインクの滴量に依存して異なる。たとえばインクの滴量が小滴の場合、大滴の場合に比べて、ドットの合一による顔料の混濁は発生し難い。それは、ビヒクル量が小滴の場合の方が、ビヒクルがより早く乾燥・浸透するためであり、少しのpH値反応で顔料を凝集することができるためである。なお、改質処理の効果は、記録媒体Pの種類や環境(湿度など)によって変動する。そこで、改質処理の際のプラズマエネルギーを最適な値とすることで、記録媒体Pの表面改質効率が向上するため、さらなる省エネを達成することが可能となる。従って、改質装置11による効果に加えて更に、ビーディングやブリードを効果的に抑制することができる。
また、本実施の形態では、記録部17Aより搬送方向Xの上流側に改質装置11が設けられた構成である場合を説明した。しかし、記録部17Aより搬送方向Xの下流側に改質装置11を設けた構成であってもよい。
ここで、画像形成装置10に設けられた記録装置160が、搬送ベルト(図示省略)等を含む搬送部(図示省略)に、シリコンオイル等の疎水性を有する離型剤を塗布する構成である場合、離型剤が記録媒体Pに転移して記録媒体Pの表面が疎水性を有することとなる場合がある。また、記録部17Aが電子写真方式の構成である場合、記録媒体Pにおけるトナーの転写された領域が疎水性を有することとなる。このような記録媒体Pに、後処理として、親水性や酸性、浸透性を要する加工を良好に行うためには、改質処理を行う必要がある。記録装置160より搬送方向Xの下流側に改質装置11を設けると、記録装置160による画像形成の後に更に親水性や酸性、浸透性を要する加工を行う場合に、特に有効である。
なお、記録部17Aとして、インクを吐出することで画像を形成するインクジェット記録方式の記録部17Aを用いる場合には、上述のように、改質装置11は、記録部17A(記録装置160)より搬送方向Xの上流側に配置することが好ましい。
また、記録部17Aの、搬送方向Xの上流側と、搬送方向Xの下流側と、の双方に、上記改質装置11を配置した構成であってもよい。
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、上記第1の実施の形態で説明した、改質装置11を、画像形成システム1に搭載した形態を説明する。
本実施の形態では、上記第1の実施の形態で説明した、改質装置11を、画像形成システム1に搭載した形態を説明する。
図14は、本実施の形態にかかる画像形成システム1の概略構成を示す模式図である。画像形成システム1は、記録媒体Pを搬送経路Eに沿って搬送する搬送部30と、記録媒体Pに対して改質処理を施す改質装置11と、改質処理された記録媒体Pの表面に画像を形成する画像形成部40とを有する。改質装置11は、第1の実施の形態の改質装置11と同様である。
画像形成部40は、改質処理された記録媒体Pにインクを吐出するインクジェット記録方式により画像を形成する記録部17Aを含む。記録部17Aは、第1の実施の形態の記録部17Aと同様である。
本実施の形態では、記録部17Aは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色の吐出ヘッド(記録ヘッド、インクヘッド)を有する場合を説明する。なお、これらの吐出ヘッドに限定されない。すなわち、グリーン(G)、レッド(R)及びその他の色に対応する吐出ヘッドを更に有してもよいし、ブラック(K)のみの吐出ヘッドを有していてもよい。ここで、K、C、M及びYは、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの夫々に対応するものとする。
画像形成部40は、画像が形成された記録媒体Pを後処理する後処理部をさらに含んでもよい。また、改質装置11と画像形成部40との間には、改質装置11による改質処理後の記録媒体P表面のpH値を検出するためのpH値検出部180が設けられている。なお、画像形成システム1は、後処理された記録媒体Pを乾燥する乾燥部50と、画像形成された(場合によってはさらに後処理された)記録媒体Pを搬出する搬出部60とを有してもよい。
また、画像形成システム1は、記録媒体Pに対して前処理を施す前処理部として、改質装置11の他に、記録媒体Pの表面に高分子材料を含む先塗り剤と呼ばれる処理液を塗布する先塗り処理部(不図示)をさらに備えてもよい。さらに、画像形成システム1は、各部の動作を制御する制御部(図示省略)を有する。この制御部は、たとえば、形成対象の画像データからラスタデータを生成する印刷制御装置に接続されてもよい。印刷制御装置は、画像形成システム1の内部に設けられてもよいし、外部に設けられていてもよい。外部に設けられている場合、印刷制御装置と画像形成システム1の制御部(図示省略)とは、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して接続されていればよい。
図15は、画像形成システム1の一部を拡大して示した模式図である。改質装置11は、対向電極22と、複数の放電電極18(18A〜18G)と、カバー部材24と、を備える。また、対向電極22と複数の放電電極18とに電圧を印加する電圧印加部16(16A〜16G)を備える。電圧印加部16は、制御部200に電気的に接続されている。
対向電極22、放電電極18、カバー部材24、及び電圧印加部16は、上記第1の実施の形態と同様である。なお、第1の実施の形態と同様に、移動部(図15では図示省略)を更に備えた構成であってもよい。
制御部200は、複数の電圧印加部16(16A〜16G)の各々のオン/オフを個別に制御する。また、制御部200は、各電圧印加部16(16A〜16G)へ印加する電圧の電圧値及び周波数を制御する。複数の電圧印加部16(16A〜16G)は、各々制御部200からの制御にしたがって、カバー部材24によって保持された放電電極18A〜18Gに電圧を印加する。電圧は、全ての放電電極18に印加されてもよいし、放電電極18A〜18Gの内、記録媒体Pの表面を所定のpH値以下とするのに必要な数の放電電極に供給されてもよい。または、制御部200は、各電圧印加部16(16A〜16G)から供給される電圧の周波数および電圧値(プラズマエネルギーに相当)を、記録媒体Pの表面を所定のpH値以下とするのに必要となるプラズマエネルギーに調整してもよい。
pH値検出部131は、改質装置11によって改質された記録媒体P(図15では図示省略)の表面のpH値を検出して制御部200へ出力する。制御部200は、入力されたpH値に基づいて、駆動する放電電極18(18A〜18G)の数、および/または、複数の電圧印加部16(16A〜16G)から各放電電極18(18A〜18G)へ供給する電圧のプラズマエネルギーを調整する。
ここで、インクの顔料が凝集するpH値はインクの種類(特性等)によって異なる。すなわち、本実施の形態では、制御部200は、使用するインクの種類(特性等)に応じて、複数の電圧印加部16(16A〜16G)の内の駆動する電圧印加部16の個数を選択する。また、制御部200は、複数の電圧印加部16(16A〜16G)から各放電電極18(放電電極18A〜放電電極18G)に印加する電圧の電圧値及び周波数を調整する。なお、制御部200は、これらの調整を組み合わせて調整してもよい。
また、制御部200は、pH値検出部131で検出されたpH値に基づいて、改質装置11をフィードバック制御することで、改質処理後の記録媒体P表面のpH値を調整してもよい。
ここで、記録媒体Pの表面を必要なpH値まで低下させる方法の1つとしては、プラズマによる改質処理の時間を長くすることが考えられる。これは、たとえば記録媒体Pの搬送速度を遅くすることやキャリッジの速度を遅くすることで実現可能である。ただし、記録媒体Pへ高速で画像記録を行う場合には、改質処理の時間を短くすることが望まれる。改質処理時間を短くする方法としては、改質装置11を、複数の放電電極18(放電電極18A〜放電電極18G)を備えた構成とし、印刷速度および必要なpH値に応じて必要な数の放電電極18を駆動する方法や、各放電電極18に与えるプラズマエネルギーの強度を調整する方法などが考えられる。ただし、これらに限定されるものではなく、これらを組み合わせた方法や、その他の方法など、適宜変更することが可能である。
そこで、本実施の形態による制御部200は、たとえば印刷速度情報に比例して、電圧印加部16(16A〜16G)のうちの駆動する個数を選択してもよいし、各電圧印加部16(16A〜16G)へ供給する電圧の電圧値及び周波数を調整してもよいし、これらの制御を組み合わせて実行してもよい。なお、印刷速度情報とは、印刷モード(カラー印刷およびモノクロ印刷や解像度等)などの情報であってもよいし、このような情報から導き出された記録媒体Pの搬送速度やスループットなどの情報であってもよい。
また、インクに含まれる着色剤がドット内で凝集する挙動や、ビヒクルの乾燥速度や記録媒体P内への浸透速度は、ドットの大きさ(小滴、中滴、大滴)によって変わる液滴量や、記録媒体Pの種類などによって異なる。そこで、本実施の形態では、改質処理におけるプラズマエネルギーを、記録媒体Pや印刷モード(液滴量)などに応じて最適な値に制御してもよい。
図15に戻り、記録部17Aは、インクジェットヘッドを含む。インクジェットヘッドとしては、複数の同色ヘッド(4色×4ヘッド)を備えてもよい。これにより、インクジェット記録処理の高速化が可能になる。その際、たとえば高速で1200dpiの解像度を達成するためには、インクジェットヘッドにおける各色のヘッドは、インクを吐出するノズルとノズルとの間隔を補正するようにずらして固定されている。さらに、各色のヘッドには、そのノズルから吐出されるインクのドットが大滴/中滴/小滴と呼ばれる3種類の容量に対応するように、いくつかのバリエーションを持った駆動周波数の駆動パルスが入力される。
制御部200は、複数の電圧印加部16(16A〜16G)を個別にオン/オフすることが可能であり、たとえば印刷速度情報に比例して複数の電圧印加部16(16A〜16G)の駆動数を選択するか、各放電電極18(18A〜18G)に与える電圧のプラズマエネルギーの強度を調整する。また、制御部200は、記録媒体Pの種類(たとえばコート紙やPETフィルムなど)に応じて、複数の電圧印加部16(16A〜16G)の駆動数、および/または、各放電電極18(18A〜18G)に与えるプラズマエネルギーを調整してもよい。
また、複数の放電電極18(18A〜18G)を備えることは、記録媒体Pの表面を均一に酸性化する点においても有効である。すなわち、たとえば同じ搬送速度(または印刷速度)とした場合、1つの放電電極18で改質処理を行う場合よりも複数の放電電極18で改質処理を行う場合の方が、記録媒体Pがプラズマの空間を通過する時間を長くすることが可能となる。その結果、より均一に記録媒体Pの表面に酸性化処理を施すことが可能となる。
また、図16は、本実施の形態にかかるプラズマエネルギーとpH値との関係を示すグラフである。通常、pH値は溶液中で測定するのが一般的であるが、近年では、固体表面のpH値の測定が可能である。その測定器としては、たとえば堀場製作所製のpH値メーターB−211等が存在する。
図16において、実線はコート紙のpH値のプラズマエネルギー依存性を示し、点線はPETフィルムのpH値のプラズマエネルギー依存性を示す。図16に示すように、コート紙と比べてPETフィルムは、少ないプラズマエネルギーで酸性化する。ただし、コート紙においても、酸性化する際のプラズマエネルギーは3J/cm2程度以下であった。そして、pH値が5以下となった記録媒体Pにアルカリ性の水性顔料インクを吐出する記録部17Aで画像記録した場合、形成された画像のドットは真円に近い形状となった。また、ドットの合一による顔料の混濁もなく、にじみのない良好な画像が得られた(図11参照)。
そこで、本実施の形態では、上述したように、改質装置11の搬送方向X下流側に、pH値検出部131を設け、記録媒体P表面のpH値に関する情報をpH値検出部131で読み取っても良い。また、読み取ったpH値に関する情報に基づいて改質装置11をフィードバック制御またはフィードフォワード制御することで、記録媒体Pの表面のpH値を所定の値(たとえばpH値=5)以下としても良い。
なお、事前に改質処理後の記録媒体PのpH値が既知である場合には、pH値検出部131を省略してもよい。
<第3の実施の形態>
本実施の形態では、上記第2の実施の形態を先塗り処理と併用した場合の効果について説明する。
本実施の形態では、上記第2の実施の形態を先塗り処理と併用した場合の効果について説明する。
図17は、先塗り処理を施した記録媒体Pと改質処理を施した記録媒体Pとのインク付着量に対する画像(ドット)濃度の測定結果を示す。先塗り処理とは、上述したように、記録媒体Pの表面に酸性の先塗り剤と呼ばれる処理液を塗布する処理である。なお、図17では、記録媒体Pとして普通紙を用い、インクとして黒色のインクを用いた。図17に示すように、記録媒体Pとして普通紙を用いた場合、改質処理が施された普通紙のドット濃度は、改質処理が何も施されていない普通紙(以下、未処理の普通紙という)に比べて全体的に高めであるものの、先塗り処理が施された普通紙と比較すると、その飽和濃度が低かった。
また、濃度平衡状態になる前のドット濃度(中間調濃度)は、改質処理の方が先塗り処理よりも効率的に上昇している。これは、中間調のドットを形成する場合、同じドット濃度を得るためのインク付着量は、先塗り処理が施された普通紙よりも改質処理が施された普通紙の方が少なくて済むことを示している。具体的には、改質処理が施された普通紙では、未処理の普通紙と比較してインク付着量を1%〜18%低減でき、また、先塗り処理が施された普通紙と比較して15%〜29%低減できた。
改質処理が施された普通紙での飽和濃度が先塗り処理が施された普通紙の飽和濃度よりも低くなる理由としては、先塗り処理が施された普通紙では、セット効果によってドット濃度が高くなるためであると考えられる。すなわち、改質処理を施した普通紙では着弾したドットが広がるため、同じ付着量でも広がった分顔料が分散してピーク濃度が落ちるが、先塗り処理を施した普通紙ではドットが広がり難いため、その分飽和濃度が高くなると考えられる。
以上の結果から、浸透し難い記録媒体Pと浸透し易い記録媒体Pとでは、改質処理と先塗り処理とでそれぞれ異なった効果が得られた。このことから、改質処理と先塗り処理とを併用することで、記録媒体Pの画像形成に対する対応能力を向上させることが可能であることがわかる。また、改質処理と先塗り処理との併用は、たとえば、プラズマエネルギーを改質処理単体の1/20程度、塗布量を先塗り処理単体の約3/5程度に減らすことを可能にする。このことは、低消費エネルギーおよび低塗布量で高画質の印刷物を得られることを意味する。さらに、高いドット濃度を得ることが可能であるため、付着させるインク量を減らすことが可能となる。その結果、印刷コストの更なる削減が可能となる。
さらにまた、図17に示す結果からは、浸透し難い記録媒体Pには改質処理が効果的に作用し、浸透し易い記録媒体Pには先塗り処理が効果的に作用していることが判る。これは、記録媒体Pの性状に応じて改質処理と先塗り処理との実施条件を適宜調整することで、記録媒体Pに対して最適な改質処理を実現することが可能であることを示している。
図18は、改質処理と先塗り処理とを併用したときの浸透し難い記録媒体Pの粒状度を示すグラフである。図18に示すグラフでは、粒状度が低い値ほど良好な画像であることを示している。なお、図18において、破線は、プラズマエネルギーを0J/cm2とした場合(すなわち、改質処理を施さなかった場合)の先塗り処理における処理液の塗布量に対する結果を示し、実線は、プラズマエネルギーを0.14J/cm2とした場合(すなわち、改質処理と先塗り処理とを併用した場合)の先塗り処理における処理液の塗布量に対する結果を示している。図18に示すように、たとえば粒状度0.5以下を達成するためには、先塗り処理のみでは約0.2mg/cm2の塗布量が必要であるのに対し、改質処理との併用では約0.1mg/cm2と、およそ半分の塗布量で済むことがわかる。
なお、図18から導き出した上記最適化制御は、記録媒体Pに対するものである。画像の最適化を考えると、実際に印刷して得られた印刷物に基づき最適化制御を行うことがより好ましい。たとえば画像形成システム1に反射濃度計を組み込み、記録媒体Pに対して改質処理のエネルギーや先塗り処理の塗布量を連続的に変化させ、基準となる印刷パターンを記録部17Aで印刷し、得られた印刷物の印刷濃度を反射濃度計で測定する。そして、最も高い印刷濃度を得た処理条件を最適条件としてこれを維持するように最適化制御を実行しつつ、インクジェット記録を行う。これにより、短時間で測定や処理条件の変更等が行えるため、画像形成処理のスループットを向上することが可能となる。また、反射濃度計から取り込んだ濃度情報に基づき特定された最適条件をデータベースとして蓄積することも可能となる。
ただし、インクの成分や種類、記録媒体Pの種類が変更された場合、最適条件も変化する可能性がある。その場合、最適条件をインクの成分や種類や記録媒体Pの種類に対応づけて蓄積および管理しておくことで、様々な条件に応じた最適化制御を実現することが可能となる。
さらに、改質処理前に例えば記録媒体Pの電気抵抗を測定して記録媒体Pの厚さや性状をある程度特定しておいた上で、上記の検討を行って最適条件を導き出すことも容易に考えられる。
さらにまた、記録媒体Pがカット紙である場合、改質装置11の排出部と先塗り処理装置の排出部とにそれぞれセンサを設けて各処理の状態を把握し、必要に応じて別の搬送経路を経て再処理を行うように構成してもよい。その場合、制御部200は、センサからの情報に基づき改質装置11および先塗り処理装置の処理条件をそれぞれフィードバック制御またはフィードフォワード制御してもよい。
以上のように、改質処理と先塗り処理との併用処理は、改質処理にかかるエネルギーを減らしつつ画像形成システム1の小型化が可能になるとともに、先塗り処理による塗布量を減らしつつ処理液やビヒクルの乾燥時間および乾燥エネルギーを減らすことが可能になる。また、インクの使用量を減らすことも可能になる。さらに、改質処理と先塗り処理との併用処理を実施してインクジェット記録した場合、ドットを真円に近い形状とすることができるとともに、ドットが合一しても顔料が混ざることを防止できるため、にじみの発生の少ない、良好な画像を得ることが可能となる。
従って、上記第1の実施の形態〜第2の実施の形態に、本実施の形態の技術を組み合わせることにより、更に、上記実施の形態と同様の効果が得られると共に、更に画質向上も図ることができる。
また、本実施の形態では、記録媒体Pとして、コート紙のような非浸透、緩浸透紙の場合に、特に効果的に画質向上を図ることができる。
以上、実施の形態を具体的に説明したが、本発明は、上記の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。
1 画像形成システム
10 画像形成装置
11 改質装置
17A 記録部
18、18A〜18G 放電電極
20 制御部
22 対向電極
10 画像形成装置
11 改質装置
17A 記録部
18、18A〜18G 放電電極
20 制御部
22 対向電極
Claims (12)
- 第1方向に長い放電電極と、
前記放電電極に対向配置された対向電極と、
前記対向電極側に開口すると共に前記第1方向に長く且つ内側に挿入された前記放電電極を開口縁を介して保持する溝部を有するカバー部材と、
を備えた改質装置。 - 複数の前記放電電極を備え、
前記カバー部材は、複数の前記溝部を有する、
請求項1に記載の改質装置。 - 前記溝部における前記第1方向に直交する第2方向の断面は、円柱状の前記放電電極の前記第2方向の断面の直径より大きく且つ前記対向電極側に開口した円状である、請求項1または請求項2に記載の改質装置。
- 前記対向電極は円柱状であり、且つ該対向電極における前記第2方向の断面が前記放電電極の前記第2方向の断面の直径より大きく、
前記カバー部材は、前記対向電極の外周面の少なくとも一部を周方向に覆うように、前記対向電極の周方向に沿って湾曲した形状である、請求項3に記載の改質装置。 - 前記溝部の前記開口の開口幅は、該溝部における前記第2方向の断面中心から30°以上50°以下の開口角度の範囲内である、請求項3または請求項4に記載の改質装置。
- 前記対向電極は、前記放電電極の重力方向下流側に配置され、
前記カバー部材は、前記対向電極の重力方向上流側に配置され、
前記溝部は、前記放電電極を回転可能に保持する、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の改質装置。 - 前記放電電極が前記対向電極に予め定めた押圧力で接触した接触状態、または前記放電電極が前記対向電極から所定距離離れた離間状態となるように、前記カバー部材を移動させる移動部を備えた、請求項6に記載の改質装置。
- 前記カバー部材が前記接触状態または前記離間状態となるように、前記移動部を制御する制御部を備え、前記制御部は、ユーザから前記押圧力を受け付け、受け付けた該押圧力で前記放電電極が前記対向電極に接触した前記接触状態となるように、前記移動部を制御する、請求項7に記載の改質装置。
- 前記カバー部材は、絶縁性の材料によって構成されている、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の改質装置。
- 請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の改質装置と、
前記改質装置より処理対象部材の搬送方向下流側に設けられ、前記処理対象部材にインクを吐出して画像を形成する記録部と、
を備えた画像形成装置。 - 請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の改質装置と、
前記改質装置より処理対象部材の搬送方向下流側に設けられ、前記処理対象部材にインクを吐出して画像を形成する記録部と、
を備えた画像形成システム。 - 処理対象部材にインクを吐出することにより画像形成された印刷物を製造するための製造方法であって、
請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の改質装置によって前記処理対象部材を改質するステップと、
改質された前記処理対象部材に、インクを吐出して画像を形成するステップと、
を含む印刷物の製造方法。
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2013
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